米国の歴史教育:「事実の積み上げ」ではなく、「政治的道具」として使われている2025年04月06日 11:15

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【概要】

 ➡️歴史の記憶と闘争の意義

 歴史において、抑圧された人々が血を流して勝ち取った権利や自由は、忘却されれば二度と再現されることはない。ゆえに、歴史の抹消は不平等や不正義への抵抗の再発を防ぐための手段として、権力者にとって都合が良いのである。

 ヘッジズの主張:歴史改ざんは支配の戦略

 クリス・ヘッジズは、ドナルド・トランプによる大統領令が、客観性や愛国心の名の下に歴史の改ざんを推進するものであり、実態としては権威主義的な支配戦略の一環であると非難している。

 この命令は、米国を「神に選ばれた正義の国家」として描き、過去の罪を抹消することで現在の不正義を正当化するものである。教育は真実の探究ではなく、国家神話を繰り返すプロパガンダと化している。

 ➡️中核的主張:歴史は真実ではなくイデオロギーに奉仕している

 ヘッジズの中心的な主張は、歴史が真実を伝えるものではなく、イデオロギーに奉仕する道具にされているという点である。

 先住民へのジェノサイド、奴隷制度の残虐性、構造的人種差別、労働運動の弾圧、帝国主義といった「不都合な真実」は、米国の偉大さを称える神話の形成のために意図的に削除されている。

 抑圧された人々の声を奪う企図

 このような歴史の再構成は、単なる記念碑や教科書の問題ではない。
それは、抑圧された人々の声そのものを封じ、彼らの闘争の正当性を否定することで、社会的記憶の中から消し去ろうとする試みである。

 ➡️民主主義への脅威

 記憶とアイデンティティの改ざんは、民主主義そのものへの重大な脅威である。
過去に対する誠実な向き合い(reckoning)なくして正義はなく、正義なくして民主主義は成立しない。

 したがって、歴史をめぐる闘いは過去だけでなく、未来をも賭けた闘争であり、真実を消し去ろうとする者たちは、過去が現在を変える力を持つことを恐れているのである。
 
【詳細】

 ジャーナリストであり社会批評家のクリス・ヘッジズによる米国歴史認識の改変に対する強烈な批判である。彼は、ドナルド・トランプ元大統領による「アメリカ史の真実と健全性の回復(RESTORING TRUTH AND SANITY TO AMERICAN HISTORY)」と題された大統領令を、権威主義体制の典型的なプロパガンダ手法と位置づけている。

 以下、各要素についてさらに詳しく解説する。

 1. 権威主義と歴史の捏造

 ヘッジズは、歴史の捏造はあらゆる権威主義体制の「常套手段」であると指摘する。例えば、過去の支配層(多くが白人男性)を神聖化し、彼らの暴力的・抑圧的な行動を隠蔽することで、現代の支配層の正当性を補強する構造を批判している。

 例:ジョージ・ワシントンが奴隷を所有し、先住民への軍事行動を行った事実が無視され、「英雄」としてのみ語られる。

 2. 教育の支配と「反教育」

 彼が特に警鐘を鳴らすのは、教育制度を利用した「思考の支配」である。ジェイソン・スタンリーの著作を引用しつつ、教育の掌握が政治文化を形成し、市民の無知と分断を生み出すと述べている。

 目的は「自ら考える力の剥奪」と「統一的な行動の不可能性の創出」、つまり、支配への無抵抗と狂信の同時育成である。

 3. 記念碑と象徴の再構築

 ヘッジズは、記念碑や祝日の利用が「市民宗教(civil religion)」の構築に使われていると論じる。これらは歴史の教育というよりも、忠誠の誓約であり、国家神話の維持装置である。

 例:南部連合指導者を讃えるストーンマウンテン、感謝祭、独立記念日などが「白人至上主義の象徴」として機能していると分析。

 4. 社会運動と歴史的記憶の抹消

 民衆による抵抗や改革運動――奴隷制度廃止、労働運動、公民権運動、反戦運動など――が、今や「危険」あるいは「不適切」とされ、教育や公共の場から排除されつつある。

 マーティン・ルーサー・キングJr.が「I Have a Dream」スピーチだけに限定され、急進的な社会批判者としての側面は忘れ去られることが象徴的。

 5. 記念碑破壊と象徴的対抗行動

 2020年のBlack Lives Matter運動を例に、過去の記念碑(ワシントン像、コロンブス像など)を破壊する行動は、単なる暴力ではなく、歴史の神話に対する「記憶の解体」として位置づけている。

 これらは「過去の嘘を解体する行為」であり、新たな歴史認識の構築を求めるものである。

 6. トランプの政治的象徴化と個人崇拝

 ヘッジズは、トランプに関する象徴的提案――ラシュモア山に顔を刻む、誕生日を祝日にする、新紙幣に肖像を載せる――を列挙し、それが民主主義の否定、そして権威主義的個人崇拝に通じると警告している。

 7. 真の歴史教育の必要性

 批判的歴史教育(例:クリティカル・レース・セオリー)は、白人支配の構造が偶然や努力の結果ではなく、制度的に構築され維持されてきたことを明らかにするものであり、それこそが民主主義に不可欠な「自己批判能力」であると強調している。

 8. 結語:歴史への恐怖

 最後にヘッジズは「抑圧者は常に被抑圧者の歴史を消し去ろうとする」と述べる。読み書きの禁止、記憶の破壊、英雄像の塗り替えは、過去に対する恐怖の表れである。

 歴史を知れば、人は現状の支配構造に疑問を持つ。だからこそ支配者は歴史を塗り替え、封じ込めようとする。

 総括

 このエッセイは、アメリカの歴史教育が「事実の積み上げ」ではなく、「政治的道具」として使われている現状を明らかにし、教育・記念碑・祝祭といった日常に潜む権力のイデオロギー装置への深い警鐘となっている。特に、トランプ政権の「健全な歴史観」の押し付けは、民主主義の根幹である自己批判能力と記憶を奪うものであり、真の意味での「アメリカの病巣」に迫る鋭い分析である。
  
【要点】 

 ➡️歴史改ざんの目的と構造

 ・権威主義体制では歴史の捏造が常套手段である。

 ・トランプ政権の「歴史の正常化」政策は、真実の隠蔽であり、白人支配層の正当化を目的とする。

 ・歴史から抑圧や不正を消し去り、「栄光ある国家神話」を形成することが支配の手段である。

 ➡️教育の支配と思想統制

 ・権威主義の第一歩は教育の掌握である。

 ・子どもたちに国家神話を教え、批判的思考を奪うことが狙い。

 ・教育の役割は真実の探求から忠誠の訓練へとすり替えられる。

 ➡️公共記念碑と祝祭による歴史の神話化

 ・記念碑や祝祭日は国家の神話を再確認させる装置として機能している。

 ・ストーンマウンテンなど南部連合を讃える像が今なお存在し、白人至上主義の象徴となっている。

 ・感謝祭や独立記念日も、植民地主義の暴力を隠す役割を果たしている。

 ➡️民衆の抵抗史の抹消

 ・奴隷解放、労働運動、公民権運動などの歴史が意図的に削除・軽視されている。

 ・民衆運動は「秩序破壊者」として扱われ、英雄の一面しか教えられない(例:キング牧師の過激な側面の無視)。

 ➡️記念碑破壊は歴史修正ではなく「歴史の回復」

 ・2020年のBLM運動による像の破壊は、神話に抗する記憶の回復行動である。

 ・国家が記憶を制御しようとするのに対し、民衆は忘却に抗っている。

 ➡️トランプによる個人崇拝の演出

 ・トランプをラシュモア山に加える、紙幣に肖像を載せる、祝日化するなどの提案がなされている。

 ・これらは独裁者的な個人崇拝の兆候であり、民主主義を危機にさらす。

 ➡️批判的歴史教育の重要性

 ・クリティカル・レース・セオリーのような教育は、制度的人種差別の構造を明らかにする。

 ・歴史教育は国家の正当性ではなく、過去の不正を理解し、現実を変える力を育てるべきである。

 ➡️歴史への恐怖が歴史の弾圧を生む

 ・権力は、過去の真実を知ることで民衆が目覚めることを恐れる。

 ・よって、記憶を破壊し、歴史の語り手を沈黙させようとする。

【参考】

 クリス・ヘッジスの著作について、批判的分析や各主張の裏付けとなる具体例を以下に示す。

 ✅『帝国の終焉』

 ・主張: ヘッジスは、現代社会においてメディアやエンターテイメントがいかにして実際の事実や教育から目を背けさせ、幻想を作り上げているかを批判している。彼は特に、アメリカにおける消費主義、虚構、そして無関心を指摘している。

 ・具体例: ヘッジスは、アメリカの大衆文化が戦争や貧困といった現実を隠蔽し、感情的で直感的な娯楽を提供することで、実際の社会的・政治的問題から目をそらせていると批判する。彼は、例えば「アメリカン・アイドル」のようなテレビ番組を取り上げ、これが視聴者に無意味な現実を見せ、彼らを「虚構の世界」に閉じ込める手段として機能していると説明している。

 ・批判的分析: ヘッジスのこの分析は、アメリカの文化が消費主義とメディアに支配される中で、知識と批判的思考が次第に無視されている点を鋭く指摘している。しかし、実際には、メディアとエンターテイメントが全て悪であるという過度な一般化には問題もあり、これらのメディアが時には社会問題に対する認識を深める場合もある。例えば、報道番組やドキュメンタリー映画などは、しばしば現実問題に対して深刻な議論を提供している。

 ✅『アメリカの終わり』

 ・主張: クリス・ヘッジスは、アメリカにおけるキリスト教右派の影響力が強まり、ファシズム的な傾向が広がっていると警告している。彼は、キリスト教右派が道徳的な絶対主義をもとに政治を左右し、民主主義の基本的な価値を脅かしていると論じている。

 ・具体例: ヘッジスは、ジョージ・W・ブッシュ政権下でのイラク戦争を例に挙げ、キリスト教右派が戦争支持を正当化するために「神の意思」を持ち出す様子を批判している。彼は、アメリカの宗教右派が戦争を「神の義務」として扱い、そのイデオロギーが広がることで、政治的・道徳的な価値観が歪められていると指摘している。

 ・批判的分析: ヘッジスのこの主張は、アメリカの政治における宗教の役割を批判しており、特にキリスト教右派の活動がどのように民主主義と政治的自由を危うくしているかに焦点を当てている。しかし、宗教と政治が絡み合う現象を完全に否定するのではなく、アメリカにおけるキリスト教の影響力を評価する視点が欠けている。例えば、宗教的な価値観が選挙活動や社会運動においても積極的な役割を果たしていることを考慮する必要がある。

 ✅『戦争の終わり』

 ・主張: 戦争は人々に意味を与える力を持つが、その代償として人間の精神を破壊する。ヘッジスは、戦争が人々を犠牲にし、無意味で無情な暴力を拡大し、結果的に社会に深刻な傷を残すことを強調している。

 ・具体例: ヘッジスは、自身がジャーナリストとしてイラク戦争に従事した経験を基に、戦争が人々にどのような心理的影響を及ぼすかを描いている。例えば、戦争を経験した兵士が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患う様子や、戦争によって人々が「何かを成し遂げた感覚」を抱く一方で、精神的な崩壊に直面する過程を詳細に述べている。

 ・批判的分析: ヘッジスの分析は戦争の破壊的影響に焦点を当てており、戦争の人間的代償を鮮明に描写している。しかし、戦争が人々に「意味」を与えるという点には、すべての兵士が同じ感覚を抱くわけではないという点を考慮する必要がある。戦争に参加した者の中には、家族や国家のために戦っていると感じる者も多く、これが精神的な強さや帰属意識を生むこともある。

 ✅『無知の帝国』

 ・主張: 現代アメリカ社会における無知とその政治的な影響を批判している。ヘッジスは、教育の崩壊と、それに伴う無知が社会や政治を動かす力を持っていると指摘している。

 ・具体例: ヘッジスは、アメリカの学校教育が競争主義と経済的利益に縛られており、真の知識や批判的思考を養うことが少なくなっている現状を批判する。彼は、アメリカの学生が世界史や政治についてほとんど知識を持たないままで卒業し、また一般市民が基本的な政治的知識を欠いていることが、民主主義の危機を生んでいると警告している。

 ・批判的分析: ヘッジスは、無知がアメリカの社会構造を支配していると断言しているが、教育の改革と改善を求める声も多く存在する。例えば、個々の教育機関やオンライン学習プラットフォームでは、批判的思考や分析的能力を養うプログラムが充実しており、ヘッジスの主張が必ずしも全体を代表しているわけではないことに留意すべきである。

 ✅結論

 クリス・ヘッジスは、アメリカ社会の様々な問題に鋭い批判を加えているが、その視点は必ずしも一面的ではない。彼の主張はしばしば深刻で影響力のある問題を扱っているが、そのアプローチには一部過度に一般化されている部分もあり、反証的な観点からの議論も重要である。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Chris Hedges: Restoring Lies to US History Consortium News 2025.04.05
https://consortiumnews.com/2025/04/05/chris-hedges-restoring-lies-to-us-history/?eType=EmailBlastContent&eId=1d5c2976-53bb-4a1f-a426-3a1dad883f43

株価は新型コロナウイルス感染拡大時以来の下落率を記録2025年04月06日 15:08

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【概要】

 米国の株式市場は4日、2日連続で急落した。トランプ米大統領の相互関税措置に対する中国の報復として、米国製品に関税が課されたことが影響した。この結果、株価は新型コロナウイルス感染拡大時以来の下落率を記録した。

 イランのペゼシュキヤーン大統領は3日、サウジアラビアのムハンマド皇太子との電話会談で、現在は戦争状態にないが、自国防衛においては一切躊躇しないと述べ、イランの防衛能力は最高水準にあると強調した。

 ガザ戦争における最大の犠牲者は子供であると、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の報道官が警告した。ガザの総人口の51%が子供であり、イスラエルの空爆による被害が最も深刻であるという。

 EUのマロシュ・シェフチョビッチ貿易担当委員は4日、米国による相互関税を「破壊的で不当」だと批判し、EUは自らの利益を守る準備があると語った。また、EUと米国の貿易関係には新たなアプローチが必要であると指摘した。

 イスラエルのネタニヤフ首相が治安機関であるシンベトを悪用し、法廷での証言を回避しようとしたことが明らかになった。シンベトのロネン・バー長官によれば、ネタニヤフ首相は安全保障上の理由で法廷出席が不可能だという報告書を作成させたという。

 パキスタン軍司令官らは4日、会合でイスラエルによるガザでの犯罪と人権侵害を非難し、パレスチナの人々に対する支援を継続することを強調した。

 モロッコでは数千人の市民が金曜礼拝後にデモを行い、イスラエルによるパレスチナ人のガザ地区からの強制退去計画に強く抗議した。

 イエメン軍のヤフヤー・サリーウ報道官は、アンサーロッラーの無人機がイスラエル占領地ヤファを攻撃したことを発表した。また、イエメン北部サアダ州では敵の無人機が撃墜された。
 
【詳細】

 アメリカの株式市場は4日、トランプ米大統領が発表した相互関税措置に対する報復として、中国が米国製品に対して関税を課したことを受けて急落した。これにより、米国株式市場は2日連続で下落し、新型コロナウイルス感染拡大時の株価急落以来、最も大きな下落率を記録した。トランプ政権下での貿易摩擦が続き、特に中国との貿易戦争の影響が強く現れている状況である。

 イランのペゼシュキヤーン大統領は、3日、サウジアラビアのムハンマド皇太子との電話会談の中で、イランの防衛能力が最高水準にあると述べ、世界のいずれの国とも戦争状態にないことを強調した。しかし、イランは自国防衛において一切の躊躇をしないとし、軍事的な態勢についても非常に高い水準にあることをアピールした。これは、イランが米国やサウジアラビアとの対立の中で自己防衛の準備を整えていることを示している。

 ガザ地区の人道的危機が続く中、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、ガザの総人口の51%が子供であり、イスラエルの空爆による最大の犠牲者も子供たちであると警告した。これにより、ガザの人々の困難な状況が浮き彫りになり、国際社会への支援の必要性が高まっている。UNRWAは、ガザにおける人道的状況の悪化を懸念しており、特に子供たちが巻き込まれていることに深刻な懸念を表明している。

 EUのマロシュ・シェフチョビッチ貿易担当委員は、米国による相互関税措置を「破壊的で不当」と批判した。EUはこのような措置に対抗する準備があり、独自の利益を守るために行動する意志を示した。シェフチョビッチ委員は、EUと米国の貿易関係が新たなアプローチを必要としていると述べ、現状の貿易戦争が双方にとって有益ではないことを強調した。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、総保安庁(シンベト)を悪用して法廷での証言を回避しようとしたとされ、シンベトのロネン・バー長官がその実態を公表した。ネタニヤフ首相は、安全保障上の理由により法廷出席が不可能だという報告書をシンベトにまとめさせ、証言を回避しようとしたという。この行動は、イスラエル国内の政治的な緊張をさらに高め、首相の信頼性に疑問を投げかけている。

 パキスタン軍司令官らは、4日の会合で、イスラエルによるガザでの犯罪と人権侵害を強く非難し、パレスチナの人々に対するパキスタンの支援を継続することを表明した。パキスタンは、イスラエルの行動に対して強い批判を示しており、パレスチナ問題に関しては一貫して支持を表明している。

 モロッコでは、数千人の市民が金曜礼拝後にデモを行い、イスラエルによるパレスチナ人のガザ地区からの強制退去計画に反対の声を上げた。デモ参加者は、イスラエルの政策に対する抗議の意を示し、パレスチナ問題への関心を高めるとともに、モロッコ国内での反イスラエル感情を強調した。

 イエメンの無人機攻撃に関しては、イエメン軍の報道官ヤフヤー・サリーウ氏が、アンサーロッラーの無人機がイスラエル占領地ヤファを攻撃したことを発表した。また、イエメン北部のサアダ州では、敵の無人機が撃墜されたことも報じられた。イエメンは、サウジアラビア主導の連合軍と戦っており、無人機攻撃を通じて戦闘の激化を示している。

 これらの出来事は、国際社会における政治的、経済的、軍事的な緊張を反映しており、それぞれの地域での状況は引き続き注視されるべきである。
  
【要点】 

 ・米国株式市場の急落: 4日、米国の株式市場が急落。トランプ米大統領の相互関税措置に対する中国の報復として、米国製品に関税が課された影響で、株価は新型コロナウイルス感染拡大時以来の下落率を記録。

 ・イラン大統領の防衛能力発言: イランのペゼシュキヤーン大統領は、サウジアラビアのムハンマド皇太子との電話会談で、イランの防衛能力が最高水準にあると強調。現在は戦争状態にないが、自国防衛には一切躊躇しないと述べる。

 ・ガザ戦争の犠牲者は子供: 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、ガザの総人口の51%が子供であり、イスラエルの空爆による最大の犠牲者も子供であると警告。

 ・EU貿易担当委員の発言: EUのマロシュ・シェフチョビッチ貿易担当委員は、米国の相互関税を「破壊的で不当」と批判。EUは自国の利益を守る準備があり、新たな貿易アプローチが必要であると述べる。

 ・ネタニヤフ首相の証言回避疑惑: イスラエル総保安庁(シンベト)のロネン・バー長官は、ネタニヤフ首相がシンベトを悪用して法廷での証言を回避しようとしたことを公表。

 ・パキスタン軍のパレスチナ支持: パキスタン軍司令官らは、イスラエルによるガザでの犯罪と人権侵害を非難し、パレスチナ人への支援を継続することを強調。

 ・モロッコでのデモ: モロッコで数千人の市民が、イスラエルによるガザ地区からのパレスチナ人の強制退去計画に抗議するデモを行った。

 ・イエメンの無人機攻撃: イエメン軍は、アンサーロッラーの無人機がイスラエル占領地ヤファを攻撃し、イエメン北部で敵の無人機を撃墜したことを発表。

【引用・参照・底本】

米株式市場が続落/パキスタン軍司令官らがパレスチナを支持/イラン大統領「我が国の防衛能力は最高水準」:国際ニュース ParsToday 2025.04.05
https://parstoday.ir/ja/news/world-i127432-%E7%B1%B3%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E5%B8%82%E5%A0%B4%E3%81%8C%E7%B6%9A%E8%90%BD_%E3%83%91%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E8%BB%8D%E5%8F%B8%E4%BB%A4%E5%AE%98%E3%82%89%E3%81%8C%E3%83%91%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%8A%E3%82%92%E6%94%AF%E6%8C%81_%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%B3%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98_%E6%88%91%E3%81%8C%E5%9B%BD%E3%81%AE%E9%98%B2%E8%A1%9B%E8%83%BD%E5%8A%9B%E3%81%AF%E6%9C%80%E9%AB%98%E6%B0%B4%E6%BA%96_%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9eType=EmailBlastContent&eId=1d5c2976-53bb-4a1f-a426-3a1dad883f43

「人類は最も暗澹たる時期にある」2025年04月06日 15:45

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【概要】

 アントニオ・グテーレス国連事務総長は、パレスチナ・ガザにおける即時停戦を求める声明を発表した。グテーレス氏は、2025年4月2日、ガザでの即時停戦の復活、人質の無条件釈放、そしてガザ全域での支障ない人道支援へのアクセスを改めて求めた。特に、過去2日間にわたるイスラエル軍の大規模な空爆と地上作戦の結果、ガザ南部ラファから10万人以上のパレスチナ人難民が生じ、これらの人々は複数回避難を強いられ、わずかな家財道具のみを持っていることを指摘した。

 グテーレス事務総長は、イスラエル軍による医療・救急隊への攻撃を批判した。2023年10月23日には、ガザ地区で医療・援助活動に従事していた15人の職員が死亡し、そのうち多くは国連職員であった。これに関連して、2023年10月以来、ガザ地区で少なくとも408人の支援活動従事者が殺害され、そのうち280人が国連職員であることも報告された。

 さらに、イラン外務省のバガーイー報道官は、国連人権理事会の食料権に関する報告者が発表した報告書に触れ、兵糧攻め政策の停止をイスラエルに求めるとともに、英国、カナダ、ドイツ、フランスなどの西側諸国がガザでの重大な人権侵害に対して無策であることに遺憾の意を表明した。バガーイー報道官はこれらの国々が人権や法の支配に対する誠実さを欠いていると指摘した。

 また、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は、ガザ地区で3週間にわたって人道支援物資が届いていないことを明らかにし、人類が最も暗澹たる時期にあると強調した。

 イスラエルは2023年10月7日からガザ地区に対して戦争を開始し、この戦争によって5万人以上の死者と数万人の負傷者が出ている。

【詳細】

 アントニオ・グテーレス国連事務総長は、2025年4月2日に声明を発表し、ガザにおける即時停戦の実現を強く求めた。彼は、イスラエル軍による空爆と地上作戦が続いている中で、ガザ南部ラファから逃げる10万人以上のパレスチナ人難民が発生し、その多くが避難を余儀なくされていると指摘した。避難民は、複数回にわたり家を失い、わずかな家財道具のみを持って難民キャンプに移動している状況であると述べた。これにより、ガザ地区における人道的危機がさらに悪化していると警告している。

 また、グテーレス氏は、ガザでの支援活動を行っていた国連職員が殺害されたことを批判した。特に、2023年10月23日には、イスラエル軍による医療・救急隊への攻撃が行われ、15人の支援活動従事者が命を落とした。この攻撃を受け、ガザ地区では支援活動が制限され、医療や救援物資が不足する事態が続いている。グテーレス事務総長は、このような攻撃が人道的支援活動の実施に深刻な障害を与えていると強調し、支援従事者への攻撃の停止を求めた。

 グテーレス氏はさらに、2023年10月以降、少なくとも408人の支援活動従事者がガザ地区で命を落とし、そのうち280人が国連職員であったことを伝えた。国連職員がこれほど多く犠牲となる事態は、ガザでの人道的危機がいかに深刻かを示している。

 イラン外務省の報道官バガーイー氏は、3日に発表した声明で、イスラエルによる兵糧攻め政策を非難し、これを停止するよう強く求めた。兵糧攻めとは、住民に食料や生活必需品を供給しないことで、その地域を圧迫し、戦争の手段として使用するものだ。バガーイー報道官は、このような行為が大量虐殺に等しいとし、国際社会に対して即時の対応を促した。さらに、ガザでの人道的危機に対する西側諸国の無策を厳しく批判した。特に、英国、カナダ、ドイツ、フランスなどが人権を擁護していると主張しながら、ガザで起こっている人権侵害に対して無策であることを指摘した。バガーイー氏は、これらの国々が人権や法の支配を守る誠実さに欠けていると述べた。

 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は、4月28日、ガザ地区への人道支援物資が3週間にわたり届いていない状況を発表した。この事実は、ガザ地区での人道的危機の深刻さをさらに浮き彫りにし、支援物資の不足が命に関わる問題であることを強調した。ラザリーニ氏は、世界が今、最も暗澹たる時期を迎えていると警告し、国際社会の即時の介入と支援が必要であると訴えた。

 また、イスラエルは2023年10月7日、ガザ地区に対して大規模な軍事作戦を開始した。この戦争は、最初の衝突から数ヶ月を経て、5万人以上の死者を出し、数万人が負傷していると報告されている。この戦争は、ガザ地区における都市の破壊、民間人の犠牲者、インフラの崩壊を引き起こし、地域の安定をさらに悪化させている。

 このような状況に対し、国際社会、特に人権を擁護する立場を取る国々に対して、ガザ地区における即時の停戦と人道的支援のアクセス確保が求められている。国連事務総長やイラン、国連機関は、現地の人道支援活動の再開と支援物資の供給を強く呼びかけている。
  
【要点】 

 1.アントニオ・グテーレス国連事務総長の声明(2025年4月2日):

 ・ガザ地区での即時停戦、無条件の人質釈放、支障ない人道支援へのアクセス確保を求めた。

 ・イスラエル軍による空爆と地上作戦の結果、ガザ南部ラファから10万人以上のパレスチナ人難民が発生。

 ・これらの難民は複数回避難を余儀なくされ、わずかな家財道具のみを持っている。

 2.支援活動従事者への攻撃:

 ・2023年10月23日、イスラエル軍の攻撃で医療・救急隊に従事していた15人が死亡。

 ・2023年10月以降、ガザ地区で支援活動従事者408人が死亡、そのうち280人が国連職員。

 3.イラン外務省の発言(2025年4月3日)

 ・兵糧攻め政策の停止をイスラエルに求める。

 ・西側諸国(英国、カナダ、ドイツ、フランス)がガザでの人権侵害に対して無策であることを批判。

 ・西側諸国の誠実さの欠如を指摘。

 4.国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の声明

 ・ガザ地区で3週間にわたり人道支援物資が届いていないことを発表。

 ・「人類は最も暗澹たる時期にある」と強調。

 5.イスラエルの軍事作戦

 ・2023年10月7日、イスラエルはガザ地区に対して大規模な軍事作戦を開始。

 ・これまでに5万人以上が死亡、数万人が負傷。

 6.国際社会への呼びかけ

 ・国際社会は即時停戦と人道的支援の提供を求められている。

【引用・参照・底本】

大量虐殺手段としての兵糧攻めから英仏独の欺瞞まで:国連事務総長がイスラエルの難民化政策に抗議 ParsToday 2025.04.05
https://parstoday.ir/ja/news/world-i127430-%E5%A4%A7%E9%87%8F%E8%99%90%E6%AE%BA%E6%89%8B%E6%AE%B5%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E5%85%B5%E7%B3%A7%E6%94%BB%E3%82%81%E3%81%8B%E3%82%89%E8%8B%B1%E4%BB%8F%E7%8B%AC%E3%81%AE%E6%AC%BA%E7%9E%9E%E3%81%BE%E3%81%A7_%E5%9B%BD%E9%80%A3%E4%BA%8B%E5%8B%99%E7%B7%8F%E9%95%B7%E3%81%8C%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%81%AE%E9%9B%A3%E6%B0%91%E5%8C%96%E6%94%BF%E7%AD%96%E3%81%AB%E6%8A%97%E8%AD%B0

ネタニヤフ政権に対する市民の不満と早期選挙要求2025年04月06日 17:17

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【概要】

 2025年4月5日時点において、イスラエル国内ではベンヤミン・ネタニヤフ首相の政権運営に対する市民の不満が高まっており、早期選挙を求める声が広がっている。

 イスラエルのテレビ局「第13チャンネル」による最新の世論調査によれば、占領地に居住する市民のうち59.2%が、ネタニヤフ首相が個人的な動機により、イスラエル総保安庁(シンベト)長官であり、内閣の法律顧問も務めるロネン・バー氏の解任を求めたと考えている。また、同調査では回答者の55.7%が早期選挙の実施を求めており、その主要な理由の一つとして、ネタニヤフ政権がハマスに拘束されたイスラエル人人質の帰還を実現できていない点が挙げられている。

 こうした中、イスラエルの各メディアは、2025年4月3日夜、テルアビブ市内で人質家族と警察との間に衝突が発生したと報じた。報道によれば、人質の家族らはテルアビブ市内にて抗議デモを実施し、ハマスとの人質交換協定の完了を求めた。これに対し、警察はこのデモを非合法と判断し、強制排除を実施したとされるが、それ以上の詳細については公表されていない。

 また、同様の抗議活動は過去にも複数回発生しており、たとえば3月31日には議会付近において警察とデモ隊が衝突したほか、3月30日にはネタニヤフ政権に対し人質交換合意の早期履行を要求するとともに、ロネン・バー氏の解任に反対する大規模デモがテルアビブで展開された。

 このような抗議活動の背景には、2023年10月7日にハマスが開始した「アクサーの嵐」作戦がある。同作戦開始以来、イスラエル国内では人質の家族を中心に、現政権の政策と対応に対する批判が強まっている。特に、ガザ地区での軍事行動を継続するネタニヤフ首相と与党連合に対し、戦況管理における指導力不足を指摘する声が高い。

 人質の家族らは、現政権が人質問題に十分な関心を払っておらず、閣僚の意思決定の中で人質救出が優先されていないことを繰り返し主張している。彼らの抗議行動は警察との衝突や逮捕者の発生につながっており、政権に対する市民の不満と不信感の象徴となっている。

 以上の状況は、イスラエル国内における政治的不安定さと社会的緊張を如実に反映しており、今後の政権運営や選挙の動向に大きな影響を与える可能性がある。

【詳細】

 イスラエルにおけるネタニヤフ政権に対する市民の不満と早期選挙要求の動きについて、関連する要素を分野別に整理し、忠実かつ詳述する。

 1.世論調査の結果とその意味

 イスラエルのメディア「第13チャンネル」が実施した世論調査によれば、占領地に居住するイスラエル市民の59.2%が、ベンヤミン・ネタニヤフ首相がイスラエル総保安庁(Shin Bet/シンベト)の長官であり、内閣の法律顧問でもあるロネン・バー氏の解任を、国家的理由ではなく「私的な動機」に基づいて行おうとしていると考えている。この認識は、首相の行動が政権維持や個人的利益に偏っているとする市民の不信感を表しており、政権の正統性や透明性に対する疑念が高まっていることを示している。

 また、同調査において55.7%が早期選挙の実施を望んでおり、その理由として特に強調されているのが、ネタニヤフ政権がハマスに拘束されたイスラエル人人質の救出に失敗しているという事実である。人質問題は国家の安全保障および人道的問題であり、対応を誤れば政権の信頼性を損なう重大事である。この結果は、国民の多数が現政権による戦時指導と危機管理に対し深刻な不満を持っていることを意味する。

 2.テルアビブにおける抗議活動と警察の対応

 2025年4月3日、テルアビブ市内ではハマスに拘束されている人質の家族らによるデモが発生し、警察と衝突した。抗議者らは、人質交換交渉の迅速な完了と合意履行を政府に求めたが、警察はこのデモを合法とは認めず、強制排除に踏み切った。この対応は、表現の自由および市民の政治的意思表示に対する抑圧的手段と見なされる可能性がある。

 詳細は報じられていないが、政府および警察当局が市民の不満に対して対話ではなく排除で応じている点は、政府の危機対応能力や民主的統治への姿勢に対するさらなる批判を招くものである。

 3.過去のデモとその継続性

 3月30日には、ロネン・バー氏の解任の動きに反対し、人質交換合意の履行を求める大規模デモがテルアビブで行われた。さらに翌31日には、議会付近にて警察とデモ隊との間で衝突が生じている。これらの連日の抗議は一過性のものではなく、国民の間に広範かつ継続的な不満が存在することを示している。

 特に注目すべきは、デモの主導層に人質の家族が多く含まれている点である。彼らは、政 権が人質の命に対し「無関心」であり、政策決定においても「人質の救出が優先されていない」と訴えており、その声が広く国民的な共感を得ている。

 4.背景:ハマスの「アクサーの嵐」作戦

 2023年10月7日にハマスが開始した「アクサーの嵐」作戦は、イスラエルに対する大規模奇襲であり、これにより多数のイスラエル市民が拉致された。以後、ガザ地区を巡る軍事衝突は継続しており、ネタニヤフ政権は強硬路線を維持している。

 しかしながら、軍事行動の長期化と人質奪還の失敗は、政府の戦略に対する信頼を損ない、市民の間での政権批判の材料となっている。また、このような状況下でのロネン・バー氏解任の動きは、政権内部の対立や政治的思惑が絡んでいるとの印象を与え、事態を一層複雑化させている。

 5.結論:市民の不満と政治的帰結

 以上の状況を総合すると、イスラエルでは現在、以下のような政治的課題が顕在化しているといえる。

 ・政権の危機管理能力に対する不信

 ・人質問題への対応に対する深刻な批判

 ・警察による抗議活動への強硬姿勢

 ・政権内の権力闘争とその不透明性

 ・国民による民主的手段(選挙)への強い要望

 このような中、早期選挙の実施は、政権の正当性回復および市民の政治的意思の反映に向けた現実的手段と見なされており、今後の政治日程において中心的な争点となる可能性が高い。
  
【要点】 

 1.世論調査の結果

 ・第13チャンネルの世論調査によると

  ⇨ 59.2%が「ネタニヤフ首相は私的な理由でシンベト長官ロネン・バー氏の解任を求めた」と考えている。

  ⇨ 55.7%が「早期選挙を望む」と回答。

 ・早期選挙を望む理由の主な一つは:

  ⇨ 人質救出の失敗(ハマスに拘束されたイスラエル人人質の未帰還)。

 2.人質問題に関する抗議行動

 ・2025年4月3日:テルアビブで人質家族によるデモが発生。

  ⇨ ハマスとの人質交換協定の完了を要求。

  ⇨ 警察はデモを非合法と判断し、強制排除。

 ・2025年3月30日:同様の要求を掲げた大規模デモがテルアビブで発生。

 ・2025年3月31日:議会付近でデモ隊と警察が衝突。

 3.抗議活動の特徴

 ・主導層は人質の家族であり、彼らの訴えは感情的かつ人道的側面を含む。

 ・繰り返されるデモは一過性ではなく、継続的な抗議運動。

 ・参加者は、政府が「人質の命に無関心」「救出が政策の優先事項でない」と強調。

 4.ロネン・バー氏の解任問題

 ・ロネン・バー氏はシンベト長官であり、内閣の法律顧問も兼任。

 ・解任の動きは、政権内部の政治的圧力や対立の現れとみられている。

 ・国民の多くは、解任が国家利益ではなく私的動機によるものと認識。

 5.背景:ハマスによる「アクサーの嵐」作戦

 ・2023年10月7日、ハマスがイスラエルに対して「アクサーの嵐」作戦を開始。

 ・多数のイスラエル市民が拉致され、ガザ戦争が激化。

 ・ネタニヤフ政権は強硬対応を継続する一方、人質の救出には成果を上げていない。

 6.ネタニヤフ政権への批判

 ・政権の戦況管理と危機対応能力への不信が拡大。

 ・人質救出の失敗、権力乱用、対話拒否的な警察対応が批判の焦点。

 ・政治的正当性の回復と民意の反映のため、早期選挙が現実的な要求となっている。

【引用・参照・底本】

イスラエル市民の間に広がる不満:早期選挙実施を要求 ParsToday 2025.04.05
https://parstoday.ir/ja/news/west_asia-i127436-%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB%E5%B8%82%E6%B0%91%E3%81%AE%E9%96%93%E3%81%AB%E5%BA%83%E3%81%8C%E3%82%8B%E4%B8%8D%E6%BA%80_%E6%97%A9%E6%9C%9F%E9%81%B8%E6%8C%99%E5%AE%9F%E6%96%BD%E3%82%92%E8%A6%81%E6%B1%82

ガザ戦争:戦争におけるジャーナリスト殺害数として史上最悪2025年04月06日 17:41

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【概要】

 米国のシンクタンクであるブラウン大学ワトソン研究所の「戦争のコスト(Costs of War)」プロジェクトは、2023年10月に開始されたガザ戦争において、ジャーナリスト232人が殺害されたとする報告書を発表した。同報告書によれば、この数は第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、ユーゴスラビア内戦、ならびに2001年以降のアフガニスタン戦争において殺害されたジャーナリストの合計数を上回っており、戦争におけるジャーナリスト殺害数として史上最悪であるとされている。

 具体的には、ガザ戦争開始以降、平均して毎週13人のジャーナリストが殺害されている計算となる。ただし、報告書は、これらのジャーナリストのうち何人が標的として直接攻撃されたのか、あるいは市民とともに空爆などで巻き添えになったのかについて、詳細を明らかにしていない。

 この件に関連して、国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団(Reporters Without Borders, RSF)」は、2023年末までに「ジャーナリストとしての活動を理由に」イスラエル軍による攻撃を受けた事例が35件確認されていると発表している。

 報告書はまた、イスラエルが外国人ジャーナリストによるガザ地区での現地取材をほとんど認めておらず、殺害された232人のジャーナリストの大多数が、外国メディアに比較的低賃金で雇用されていたパレスチナ人の現地ジャーナリストであったと指摘している。

 さらに、報道の経済的困難、メディアに対する検閲、ならびに取材活動の制限などにより、世界の紛争地帯が「ニュースの墓場」と化しており、ガザ地区はその最たる例であると警告している。

【詳細】

 米ブラウン大学ワトソン研究所の「戦争のコスト」プロジェクトによる報告の内容を、より詳しく説明する。

 1.報告の概要と出典

 本報告は、米国ロードアイランド州の名門ブラウン大学に設置されたワトソン国際・公共問題研究所(Watson Institute for International and Public Affairs)の「戦争のコスト(Costs of War)」プロジェクトによるものである。同プロジェクトは、戦争の人的・経済的・社会的影響について長年にわたり研究を行ってきた学術的かつ非党派的な取り組みであり、米国の対テロ戦争を含むさまざまな武力紛争に関する独立調査と統計分析で知られている。

 2.ガザ戦争におけるジャーナリストの死者数

 報告によると、2023年10月に始まったイスラエルとハマスの間のガザ戦争において、2025年初頭までに少なくとも232人のジャーナリストが殺害されたとされる。これは、これまでに記録されたどの戦争と比較しても最も多いジャーナリスト死者数であり、同研究所は「史上最悪」と明言している。

 この数値は、以下の歴史的な戦争でのジャーナリスト死者数の合計をも上回るとされる。

 ・第一次世界大戦

 ・第二次世界大戦

 ・朝鮮戦争

 ・ベトナム戦争

 ・ユーゴスラビア内戦

 ・アフガニスタン戦争(2001年以降)

 このことから、本戦争が報道関係者にとって極めて危険かつ前例のない事態となっていることが浮き彫りとなる。

 3.死者の背景と構成

 殺害されたジャーナリスト232人の大多数はパレスチナ人であり、外国報道機関に低賃金で契約されていた現地ジャーナリストであったとされる。イスラエル政府はガザ地区への外国人記者の立ち入りをほぼ全面的に制限しており、現地の情報伝達の多くはガザ在住の記者によって担われている。このため、外国メディアがガザ情勢を伝える上で、パレスチナ人記者に大きく依存せざるを得ない構造が存在している。

 報告はまた、これらジャーナリストの死について、「意図的に標的とされたものか、それとも空爆などの軍事作戦の巻き添えであったかは明確でない」としている。殺害の状況については、正確な調査が困難であることも指摘されている。

 4.他の調査機関による補足情報

 国際的な報道の自由を擁護する団体「国境なき記者団(RSF)」も、ガザ戦争におけるジャーナリスト殺害について独自に調査を行っており、2023年末時点で少なくとも35件において、記者が「報道活動を理由に」イスラエル軍による攻撃を受けたことを確認したと報告している。

 これは、報道の自由と国際人道法の観点から重大な懸念を生じさせるものであり、戦時における報道機関とその従事者の保護義務について再考を促すものである。

 5.構造的問題と警告

 今回の報告書は、単に殺害数の多さを記録するにとどまらず、より広範な構造的問題にも警鐘を鳴らしている。具体的には、以下のような要素が指摘されている:

 ・紛争地での報道に対する制度的・物理的な制限

 ・現地記者の劣悪な労働条件と人命の軽視

 ・外国メディアによる報道の外注化とリスク転嫁

 ・情報遮断と検閲によって形成される「ニュースの墓場(news graveyard)」化

 報告はとくに、ガザ地区がその典型であり、国際社会が報道機関に対する保護体制を再構築しなければ、今後の紛争地もまた同様の状況に陥る危険があると強調している。

 以上のように、同報告書は、ガザ戦争におけるジャーナリスト殺害という事象を、単なる数値的記録ではなく、報道の自由・国際人権・メディア倫理・戦争の実相といった多層的な視点から総合的に分析しており、深刻な人道的・制度的課題を提起している。
  
【要点】 

 基本情報

 ・報告機関:米ブラウン大学ワトソン国際・公共問題研究所「戦争のコスト」プロジェクト

 ・対象:2023年10月から続くイスラエルとハマスの「ガザ戦争」

 ・発表日:2025年4月上旬

 主な内容

 1. ジャーナリスト殺害数

 ・殺害されたジャーナリストの数は232人に上る

 ・これは過去の主要戦争すべてと比較して史上最悪の数である

 ・平均すると毎週13人のジャーナリストが死亡している計算になる

 2. 比較対象との関係

 以下の戦争でのジャーナリストの死者数合計を単独で上回る。

 ・第一次世界大戦

 ・第二次世界大戦

 ・朝鮮戦争

 ・ベトナム戦争

 ・ユーゴスラビア内戦

 ・アフガニスタン戦争(2001年以降)

 3. 死亡の要因と未確定事項

 ・ジャーナリストが直接標的とされたのか、あるいは民間人と共に空爆等で巻き添えになったのかは不明

 ・殺害の詳細な経緯についての情報は限定的である

 構造的・背景的な要素

 1.犠牲者の多くがパレスチナ人

 ・殺害された記者の大多数はパレスチナ人の現地記者

 ・彼らは外国メディアに低賃金で雇用されていた

 ・イスラエルは外国人記者によるガザ取材をほぼ認めていないため、外国報道機関は現地記者に依存していた

 2.国境なき記者団(RSF)の指摘

 ・RSFは2023年末までに**少なくとも35件の「報道活動を理由とする攻撃」**を確認

 ・これは報道の自由に対する重大な脅威と見なされている

 警告と指摘

 1. 情報遮断と報道危機

 ・ガザは「ニュースの墓場(news graveyard)」と化している

 ・要因は以下の通り

  ⇨ 報道機関の財政難

  ⇨ 現地記者の劣悪な待遇と高リスク

  ⇨ 外国メディアの情報収集能力の低下

  ⇨ 報道検閲と取材制限の強化

 2. 国際社会への警鐘

 ・紛争地におけるジャーナリストの保護体制の強化が必要であると警告

 ・現状を放置すれば、今後の戦争でも同様の情報遮断と人命軽視が繰り返される恐れがある

 この報告書は、ガザ戦争におけるジャーナリスト殺害の実態を記録するとともに、報道の自由・メディア倫理・紛争地報道の構造的問題に深く切り込んでいるものである。

【引用・参照・底本】

米シンクタンク「ガザ戦争でのジャーナリスト殺害は史上最悪」 ParsToday 2025.04.03
https://parstoday.ir/ja/news/world-i127426-%E7%B1%B3%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%AF_%E3%82%AC%E3%82%B6%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%A7%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88%E6%AE%BA%E5%AE%B3%E3%81%AF%E5%8F%B2%E4%B8%8A%E6%9C%80%E6%82%AA