ウクライナ:独力で戦う準備を進める2025年03月05日 19:20

Ainovaで作成
【概要】

 2025年3月4日、デヴィッド・キリチェンコによる記事「アメリカの軍事援助削減で、ウクライナは独力で戦う準備を進める」では、ウクライナが軍事的自立に向けた取り組みを強化している様子が詳述されている。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、アメリカのトランプ前大統領とのホワイトハウスでの対立後、ウクライナがNATOに加盟できないならば、自国の領土でNATOを築く必要があると述べた。この発言は、トランプ政権がウクライナのNATO加盟を否定する意向を示していたことに反応したものであり、現在、アメリカからの全軍事援助が中止され、ロシアに対する圧力を自力でかけることの重要性が増している。

 ウクライナは2022年以降、ロシア領内への長距離攻撃能力を着実に拡大してきた。ゼレンスキー大統領は、新年の挨拶で、ウクライナが年間100万機以上のドローンを生産し、ミサイルの製造も強化していることを強調し、それらを「正義の平和のための議論」と位置付けた。

 現在、ウクライナは戦争の4年目に突入しており、長距離攻撃能力は防衛戦略の要となっている。ウクライナは自国でのミサイル生産に力を入れ、これがロシアに対する抑止力の柱となりつつある。西側の軍事支援が依然として重要である一方で、ウクライナが自らミサイルを製造する能力は、ロシアに対する経済的負担を増大させるための重要な手段となっている。

 スウェーデンは最近、ウクライナに12億ドルの軍事援助を提供し、そのうち9000万ドルをウクライナのミサイルとドローン生産に充てることを決定した。このような支援がトランプ政権による軍事援助の中断後、さらに重要な役割を果たすことになる。

 ウクライナは、ロシアのエネルギーインフラ、特に石油精製所をターゲットにした攻撃を強化しており、これによりロシアの精製能力は10%以上減少し、戦争経済に深刻な影響を与えている。さらに、ウクライナは石油輸送ハブ、爆薬工場、弾薬倉庫などにも攻撃を拡大しており、ロシア経済に対する圧力を強めている。

 ウクライナのミサイル生産の強化は、2025年末までに3000発の長距離ミサイルを製造するという目標に向かって進んでいる。ウクライナは、ドローン製造の成功に続き、精密な製造ラインと安全な製造施設を必要とするミサイル開発にも取り組んでいる。ウクライナ軍はすでに、ネプチューン(元々は対艦ミサイル)やHrim-2(ハイパーソニック弾道ミサイル)など、自国製のミサイルを実戦で使用しており、これらの進展は戦力の向上に寄与している。

 現在、ウクライナの最大の課題は、米国の軍事援助が中止された中で、独自のミサイルとドローンの生産能力をさらに拡大し、ロシアに対する戦力を維持することにある。  

【詳細】 
 
 ウクライナは、アメリカからの軍事援助が停止され、ヨーロッパからの支援も不確実な状況の中で、自国の防衛能力を強化するための戦略を積極的に進めている。特に、長距離攻撃能力を拡充し、ミサイルやドローンの国内生産を増加させることが、ウクライナの戦略における重要な柱となっている。

 ゼレンスキー大統領は、2025年2月12日に『エコノミスト』とのインタビューで、「もしNATOに招待されないのであれば、ウクライナ国内でNATOを作らなければならない」と述べた。この発言は、アメリカのトランプ政権がウクライナのNATO加盟に反対しているという背景を踏まえており、ウクライナは自国の防衛力を独自に高め、ロシアに対する抑止力を強化する必要があるというメッセージを発信している。特に、トランプ政権がウクライナへの軍事援助を完全に断つことを決定した後、ウクライナは自国の武器生産に注力することを強化している。

 ウクライナは、長距離攻撃能力を高めることで、ロシア領内の重要なインフラをターゲットにする戦術を採用している。ゼレンスキー大統領は、新年の演説で、ウクライナが年間100万機以上のドローンを生産し、ミサイル製造も強化していることを明言し、これらを「正義の平和のための議論」として位置付けた。ウクライナは、2022年から2023年にかけて、ロシア領内の石油精製所や石油輸送ハブ、弾薬倉庫などを攻撃し、ロシア経済への影響を与えている。このような攻撃は、ロシアの戦争経済に深刻な打撃を与え、特にロシアの精製能力を減少させることで、戦争維持に必要な資源を削減させている。

 ウクライナが実施したドローン攻撃は、ロシアの石油精製能力を少なくとも10%減少させ、ロシアの平均的な石油生産量を20年ぶりの低水準に押し下げるなど、ロシアの戦争経済に多大な影響を与えた。また、ウクライナはこれらの攻撃を精製所だけでなく、爆薬工場や弾薬倉庫、さらには石油の輸送インフラにも広げ、ロシアの戦争遂行能力を削減している。

 ロシア政府は、このウクライナのドローン攻撃に強く反発しており、ロシア外相セルゲイ・ラヴロフは、ウクライナのドローン攻撃がロシア経済に与える影響を強調し、ウクライナ側を非難している。しかし、ウクライナはドローン攻撃を強化し、さらなる戦術的優位性を確保しようとしている。ウクライナのドローン部隊の指揮官は、ウクライナ軍が最前線の圧力を軽減するために、物流ハブや弾薬倉庫の攻撃を優先していると説明している。

 ウクライナは、アメリカのATACMS(地上発射型長距離弾道ミサイル)や英国のストームシャドウ(巡航ミサイル)などの長距離ミサイルの供給に頼ることが困難になる中で、国内生産を強化している。ウクライナ政府は、2025年末までに3000発の長距離ミサイルを生産するという目標を掲げている。ウクライナ副首相ミハイロ・フェドロフは、2025年を「ウクライナ巡航ミサイルの年」と宣言し、この目標に対するコミットメントを強調している。

 ミサイルの製造は、ドローン製造に比べて複雑であり、精密な製造ラインと高い技術力を必要とする。ミサイル開発には、専門的な製造施設と高度なエンジニアリングが求められるため、戦時中にこれらを整備することは困難である。しかし、ウクライナはその困難にもかかわらず、独自の武器開発を進めており、ネプチューン(元々は対艦ミサイル)を地上発射型巡航ミサイルに転用し、ロシアのモスクワ号を沈めるなど、実戦で成果を上げている。また、Hrim-2(ハイパーソニック弾道ミサイル)は2024年末にテストを通過し、Peklo(「地獄」を意味するウクライナ語)という新たなミサイルドローンは、既に戦闘で使用されている。

 ウクライナはこれらの自国製武器を駆使し、ロシアに対して効果的な圧力をかけ続けており、特にドローンやミサイルを用いた攻撃は、ウクライナの戦争の主力として今後ますます重要な役割を果たすと予想されている。ウクライナが独自の防衛能力を強化し、ロシアの戦争遂行能力を削減するために、ドローンやミサイルの生産能力をさらに拡大していくことが、ウクライナの戦争戦略における重要な要素となっている。

【要点】

 ・ウクライナの戦略強化: 自国の防衛能力を高めるため、特に長距離攻撃能力やミサイル・ドローンの国内生産を強化している。

 ・ゼレンスキー大統領の発言: 2025年2月12日、『エコノミスト』とのインタビューで、「ウクライナがNATOに招待されない場合、独自にNATOを作るべき」と述べ、独立した防衛力強化の意向を示した。

 ・アメリカの支援停止後: トランプ政権がウクライナへの軍事支援を停止したため、ウクライナは自国で武器を生産し、ロシアに対抗する能力を高めている。

 ・ドローンとミサイルの攻撃: ウクライナはロシア領内の石油精製所、弾薬倉庫、インフラをターゲットにし、ロシア経済に影響を与え続けている。

 ・ドローン攻撃の効果: ドローン攻撃により、ロシアの精製能力が10%減少、石油生産が20年ぶりの低水準に。これにより、ロシアの戦争維持能力が削減されている。

 ・ウクライナの新年の演説: ゼレンスキー大統領は、年間100万機以上のドローンとミサイルの生産強化を宣言。

 ・ロシアの反応: ロシア外相セルゲイ・ラヴロフは、ウクライナの攻撃がロシア経済に与える影響を強調して非難。

 ・ウクライナのミサイル生産計画: 2025年末までに3000発の長距離ミサイル生産を目標とし、「ウクライナ巡航ミサイルの年」として製造計画を進めている。

 ・ミサイルとドローンの技術開発: ウクライナは、ネプチューン(対艦ミサイル)やHrim-2(弾道ミサイル)、Peklo(新型ミサイルドローン)など、自国製武器の開発を進め、戦闘で使用している。

 ・戦略的意図: ドローンとミサイルによる攻撃はウクライナの戦争戦略の中心となり、今後さらに重要な役割を果たすと見込まれている。

【引用・参照・底本】

With US military aid cut, Ukraine prepares to fight alone ASIA TIMES 2025.03.04
https://asiatimes.com/2025/03/developing-asia-in-a-trump-tariff-china-dumping-squeeze/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=857a031491-DAILY_04_03_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-857a031491-16242795&mc_cid=857a031491&mc_eid=69a7d1ef3c#

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