プーチン:「一部欧州諸国による最後通牒に等しい要求は受け入れられない」2025年05月11日 16:47

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【概要】

 プーチン氏、5月15日にウクライナとの直接交渉をトルコで提案

 欧州

 3年にわたる戦争を経て、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は5月11日(日)、トルコのイスタンブールにおいて、5月15日(木)にウクライナとの「直接交渉」を実施するよう提案した。これは、キーウおよび欧州の首脳らが、翌5月12日(月)から30日間の無条件停戦を求めた直後の発言である。

 ロシア国家通信社スプートニクを通じて配信されたプール写真では、プーチン大統領が同日メディアに対して発言する様子が報じられている。

 プーチン大統領は、戦争の根本原因を取り除き、持続可能な平和の実現を目指すためとして、イスタンブールでの直接交渉を提案した。

 ロシアは2022年2月にウクライナへ軍を侵攻させ、数十万人規模の兵士が死亡する戦争を引き起こした。この戦争は、1962年のキューバ危機以来、ロシアと西側諸国との最も深刻な対立をもたらしている。

 プーチン大統領は、「対立の根本的原因を排除し、長期的かつ持続可能な平和の回復を実現する」ために交渉を行う意向を示した。また、「再軍備のための一時停止」ではないことを強調した。

 「我々は、キーウに対して、いかなる前提条件もなしに直接交渉を再開することを提案する」と述べ、「木曜日にイスタンブールで交渉を再開するよう、キーウ当局に申し出ている」と語った。

 アメリカのドナルド・トランプ大統領や欧州諸国からの公私にわたる圧力や警告にもかかわらず、プーチン大統領はこれまで終戦に向けてほとんど譲歩していない。

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、「今回の提案は一歩ではあるが不十分である」と述べた。マクロン大統領は、ウクライナ訪問後にポーランドのプシェミシル駅に到着した際、「無条件停戦は、交渉の前提ではない」と述べ、「プーチンは出口を模索しているが、時間稼ぎをしている」とも語った。

 プーチン大統領は、交渉実現に向け、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と同日中に会談する予定であると述べた。

 「我々の提案は、いわばテーブルの上にある。あとは、ウクライナ当局とその後見人たちの判断に委ねられる。彼らは、国民の利益ではなく、自身の政治的野心に基づいて行動しているように見える」と述べた。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の事務所およびウクライナ外務省は、この提案に対してロイターのコメント要請にすぐには応じなかった。

 停戦は実現するか?

 プーチン大統領による直接交渉の提案は、主要な欧州諸国がキーウでロシアに対して「無条件の30日間停戦」への同意を求め、応じなければ「大規模な制裁」に直面するとした要請の数時間後に出された。

 これに対してプーチン大統領は、「一部欧州諸国による最後通牒に等しい要求は受け入れられない」と述べた。

 ロシアは、エネルギー施設への攻撃停止を含む複数の停戦案、復活祭に関連した停戦、そして直近では第2次世界大戦勝利80周年記念(5月8~10日)に合わせた72時間の休戦案などを提示してきたと主張している。

 しかし、ロシアとウクライナ双方がこれら一時停戦を互いに破ったと非難し合っている。

 11日(日)、ロシアはキーウおよび他地域に対してドローン攻撃を実施したとウクライナ当局は発表した。現時点で負傷者や被害の報告はない。

 プーチン大統領は、トルコでの提案交渉において「新たな休戦や停戦」が合意される可能性を否定せず、それが「持続可能な平和」へ向けた第一歩となる可能性に言及した。

 和平の可能性

 過去1年間で戦果を上げてきたとされるプーチン大統領は、和平に向けて譲歩しない姿勢を維持している。

 2024年6月、同氏は「ウクライナがNATO加盟を正式に断念し、ロシアが領有を主張するウクライナ4州全域から軍を撤退させること」が終戦条件であると述べた。

 また、ロシア政府はアメリカに対して、ロシアによるウクライナ領土の約5分の1に対する支配を認めるよう求めており、ウクライナがEU加盟を目指すことには反対しないとしつつも、「中立国」であることを要求している。

 プーチン大統領は2022年に交渉された草案に言及した。ロシアの侵攻直後にロシアとウクライナが協議したものであり、その草案(ロイターが確認)は、「ウクライナが恒久的中立を宣言する代わりに、国連安保理常任理事国(英・中・仏・露・米)による安全保障の提供」が含まれていた。

 「2022年に交渉を打ち切ったのはロシアではない。キーウ側である」と述べ、「ロシアは無条件で交渉に応じる用意がある」と改めて強調した。

 さらに、和平仲介の努力に対し、中国、ブラジル、アフリカ、中東諸国、アメリカに感謝の意を表明した。

 トランプ米大統領は「和平の立役者として歴史に名を残したい」と繰り返し語っており、同政権はウクライナ戦争を「米ロ間の代理戦争」と位置づけている。

 一方、バイデン前大統領、西欧諸国、ウクライナは、今回の侵攻を「帝国主義的な領土侵略」として非難し、ロシア軍の撃退を誓っている。

 プーチン大統領は、この戦争を「西側によるロシアへの屈辱的な対応に対する転換点」であると捉えており、NATO拡大やウクライナなど旧ソ連圏への介入が、ロシアの勢力圏を脅かしてきたと主張している。

【詳細】

 2025年5月11日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、トルコのイスタンブールにおいて、同年5月15日(木)にウクライナとの「直接交渉」を行う用意があると提案した。この発言は、ウクライナおよび欧州諸国が5月12日(月)から30日間の無条件停戦を求めた数時間後に発表されたものである。

 プーチン大統領は、同交渉の目的を「紛争の根本原因の排除」と「長期的かつ持続可能な平和の実現」と定義している。単なる戦闘の一時停止や再武装の機会ではなく、恒久的な解決を目指すと述べた。

 ロシアは、2022年2月にウクライナに軍を派遣し、これにより多数の兵士が死亡し、1962年のキューバ危機以来最も深刻なロシアと西側諸国の対立を引き起こした。

 プーチン大統領は、「我々は、いかなる前提条件も設けず、キエフ(ウクライナ政府)に対して直接交渉を再開するよう提案する」と述べ、5月15日にイスタンブールでの交渉を呼びかけた。

 さらに、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と交渉の実現に向けて連絡を取る意向も示した。

 一方、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、この提案について「第一歩ではあるが、十分ではない」とし、無条件の停戦は交渉に先立つものであり、プーチン氏は「時間稼ぎをしている」との見方を示した。

 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領府および外務省は、この提案に関して即時のコメントを発表していない。

 前日の5月10日、欧州主要国はキエフにおいて、プーチン大統領に対して30日間の無条件停戦を受け入れなければ「大規模な制裁」を科すとする要求を提示していた。

 プーチン大統領はこれを「最後通牒」として退け、ロシアがこれまでに複数の一時停戦(エネルギー施設への攻撃停止、復活祭期間中の停戦、第二次世界大戦勝利80周年記念期間中の72時間停戦など)を提案してきたことを強調した。

 しかし、ロシアとウクライナ双方がそれぞれ、これらの一時停戦の違反を非難し合っている。5月8日から10日にかけての停戦中にも、ロシア軍によるドローン攻撃がキエフおよびその他の地域で確認されており、人的被害は報告されていない。

 プーチン大統領は、トルコでの交渉の場において新たな停戦や休戦が合意されるか能性も否定しなかったが、それは持続可能な平和に向けた第一歩であるとした。

 なお、プーチン大統領は、2024年6月に提示した和平条件として、ウクライナがNATO加盟を正式に断念し、ロシアが領有を主張する4つのウクライナ地域から完全に軍を撤退させることを求めている。

 加えて、ロシア当局は、アメリカに対してウクライナ領の約5分の1におけるロシアの統治権を認めるよう要求しており、ウクライナが中立的立場を維持することを求めている。ただし、ウクライナの欧州連合(EU)加盟については反対しないとしている。

 プーチン大統領は、2022年の侵攻直後にロシアとウクライナの間で交渉された草案に言及し、その内容は「ウクライナが永世中立国となる代わりに、国連安全保障理事会の常任理事国(イギリス、中国、フランス、ロシア、アメリカ)による国際的な安全保障の保証を受ける」というものであったと説明した。彼は「交渉を打ち切ったのはロシアではなくキエフである」と主張し、「ロシアは無条件で交渉に応じる用意がある」と再確認した。

 また、和平に向けた調停努力に尽力しているとして、中国、ブラジル、アフリカおよび中東の諸国、さらにアメリカに対して謝意を示した。

 ドナルド・トランプ米大統領は、ウクライナ戦争を「流血の惨事」と位置付けており、自身を「和平をもたらす指導者」として歴史に残すことを望むと公言している。

 一方、ジョー・バイデン前米大統領を含む西欧諸国の指導者およびウクライナ政府は、この侵攻を帝国主義的な領土拡張行為と位置付け、ロシア軍を撃退する方針を堅持している。

 プーチン大統領は、今回の戦争を1991年のソ連崩壊以降、西側諸国がロシアを屈辱にさらし、NATOを拡大させ、モスクワの勢力圏(ウクライナを含む)に侵食してきたことに対する転換点と見なしている。

【要点】

 プーチンの提案と発言内容

 ・プーチン大統領は、2025年5月15日にトルコ・イスタンブールでウクライナとの「直接交渉」を行う用意があると表明した。

 ・この発言は、ウクライナおよび欧州諸国が30日間の無条件停戦を要請した直後に行われた。

 ・プーチンは交渉の目的を、「戦闘の停止」ではなく、「紛争の根本原因の排除」および「持続可能な平和の構築」であると主張した。

 ・トルコのエルドアン大統領とも交渉実現に向けて連絡を取る意向を示した。

 欧州・ウクライナ側の反応

 ・フランスのマクロン大統領は「これは第一歩にすぎず、十分ではない」と発言し、プーチンは時間稼ぎをしていると非難した。

 ・ウクライナ政府からの公式コメントは現時点で出ていない。

 背景:停戦と制裁

 ・欧州諸国は5月10日にプーチンに対して無条件停戦を求め、拒否すれば「大規模な制裁」を科すと警告していた。

 ・プーチンはこれを「最後通牒」として退け、ロシアがこれまでに何度か一時停戦を提案してきた事実を強調した。

 ・例として、エネルギー施設への攻撃停止、復活祭、第二次大戦勝利記念(5月8日~10日)における停戦提案などが挙げられる。

 ・ただし、双方がこれらの停戦違反を非難し合っており、完全な停戦の実効性は疑問視されている。

 交渉内容・和平案

 ・プーチンは、2024年6月に以下の和平条件を提示したとされる:

  ⇨ウクライナがNATO加盟を放棄すること。

  ⇨ロシアが主張するウクライナ東南部4州からウクライナ軍が完全撤退すること。

 ・加えてロシアは、アメリカに対して、ウクライナ領の20%でのロシア支配を承認するよう求めている。

 ・ただし、ウクライナのEU加盟には反対しないと述べている。

 2022年の和平草案

 ・プーチンは、2022年侵攻直後の交渉でウクライナが「永世中立国」となる案が存在したと主張。

 ・その案では、国連安保理常任理事国によるウクライナの安全保障が提案されていた。

 ・プーチンは、「交渉を打ち切ったのはキエフであり、ロシアではない」と繰り返し主張している。

 各国の立場と調停活動

 ・プーチンは、中国、ブラジル、アフリカ諸国、中東諸国、アメリカなどの調停努力に謝意を表明した。

 ・トランプ大統領は、自らを「和平をもたらす人物」として歴史に残したいと語っている。

 ・バイデン政権および欧州諸国は、今回の戦争をロシアによる侵略・領土拡張と見なし、撃退を目指している。

 プーチンの歴史観と戦争の位置付け

 ・プーチンはこの戦争を、冷戦後のロシアに対する西側諸国の「侮辱」とNATO拡大への対抗として正当化している。

 ・特に、ウクライナを含む旧ソ連圏へのNATO進出を「レッドライン」と見なしている。

【桃源寸評】

 1.プーチンが30日間の停戦を“偽装”と見なしているという見方について

 ・実際にプーチンは、欧米やウクライナによる「30日間の無条件停戦」要求を即座に拒否しており、それを「最後通牒」として退けている。

 ・また、彼は過去の停戦提案(復活祭停戦、5月記念停戦)を持ち出して、「ロシアこそ停戦を提案してきたが、相手側が応じなかった」と主張している。

 ・これは、ミンスク合意(2014・2015年)において停戦合意が十分に履行されず、結果的にウクライナ側が軍備強化の猶予を得たとされる経緯を想起させるとする見方もある。

➢ 欧州指導者自身の証言(重要)

 ・2022年以降、独元首相メルケル、仏元大統領オランド、そしてウクライナ元大統領ポロシェンコらは、次のような趣旨の発言を行っている:

 「ミンスク合意はウクライナに時間を与えるためのものだった。軍を再建し、西側との協力を進める時間を稼ぐ意図があった。」

 ・これに対しロシア側は激しく反発し、「合意が西側の策略だった」との認識を強めた。

 ・よって、プーチンは停戦提案そのものを“相手の欺瞞”と捉え、自身は「根本原因の除去」を強調している。

 2. ゼレンスキーがトランプの和平案に乗らない可能性について

 ・ゼレンスキー大統領は、「領土の割譲」や「NATO断念」を含む和平案にはこれまで一貫して反対してきた。

 ・トランプ大統領は、再選された場合には「24時間以内に戦争を終わらせる」と宣言していたが、その中身は不透明であり、実質的にロシア寄りの条件を容認する形になっているとの懸念もある。

 ・ゼレンスキーにとって、こうした和平案を受け入れることは、

  ⇨国家主権の放棄

  ⇨ロシアによる侵略の既成事実化

  ⇨国民からの強い反発

  ⇨自らの政治的正統性の崩壊

を意味するため、和平=政治生命の終わりという見方には一定の説得力がある。

 ・戦争指導者はしばしば、「戦争継続こそが自らの延命策」となりがちである。

 ・ロシア側も、「和平を望んでいるのは我々で、ウクライナが拒否している」との印象操作を継続している。

 ・逆にウクライナ側は、「和平交渉とはロシアによる再侵略の口実である」とみなしており、戦争継続=国家存続の条件と認識している。

【寸評 完】

【引用・参照・底本】

Putin wants Russia to hold direct talks with Ukraine on May 15 FRANCE24 2025.05.11
https://www.france24.com/en/europe/20250511-putin-wants-russia-to-hold-direct-talks-with-ukraine-on-may-15?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020250511&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

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