トランプ新関税措置に対する台湾の対応策 ― 2025年04月12日 11:47
【概要】
アメリカのトランプ政権による新たな輸入関税措置に対し、台湾がその影響を和らげるための対米対応策を急いで進めている状況を詳述している。
報道によれば、台湾はアメリカ産品への関税撤廃(ゼロ関税)や、対抗措置を取らないとの誓約、さらにアメリカへの投資増加を含む包括的なパッケージを準備しており、これらを通じてワシントンとの協議の土台を整えようとしている。
台湾は2024年にアメリカに対して740億米ドルの貿易黒字を計上しており、今回の新関税による打撃が特に大きいと見られている。こうした事情を踏まえ、台湾は非公式な外交ルート(バックチャネル)を通じて影響緩和の可能性を探っている。
ただし、専門家によれば、トランプ大統領は国際問題に対して取引的かつ強硬な姿勢を取っており、台湾のこうした「善意の措置」がどこまで効果を持つかは不透明であると指摘されている。
また、台湾の頼清徳(William Lai Ching-te)総統は、台湾とアメリカの関係を「これまでで最も良好」と評価しており、先月には数十億ドル規模の半導体関連投資をアメリカ国内で実施することを承認している。このように、台湾は米国との経済的・政治的関係をさらに強化しようとしている。
全体として、台湾は米中対立や米国保護主義の高まりの中で、米国との関係維持・強化のために柔軟かつ積極的な対応策を講じているが、トランプ政権下での成果は予断を許さない状況である。
【詳細】
台湾が直面する背景と問題
2025年に入り、ドナルド・トランプ米大統領は、再び「アメリカ第一主義」に基づく強硬な通商政策を推進しており、複数の国に対して新たな輸入関税を課す方針を打ち出した。この中で、台湾は特に影響を受ける国の一つである。というのも、台湾は2024年にアメリカに対して約740億米ドル(約11兆円)という大幅な貿易黒字を計上しており、対米輸出に大きく依存しているからである。
この大きな貿易黒字は、特に半導体や電子部品、IT機器の輸出によって形成されたものであり、台湾経済にとって対米貿易は極めて重要である。したがって、アメリカが関税を引き上げることで、台湾の輸出企業はコスト増や競争力低下に直面し、その影響は国内経済全体にも波及するおそれがある。
台湾の対応:譲歩と協調の提示
このような事態に直面した台湾政府は、米国との摩擦を避け、関係を維持するために、いくつかの包括的な対策を講じている。主な内容は以下の通りである:
アメリカ産品に対するゼロ関税措置の提案
台湾は、アメリカからの農産物や工業製品などに対する関税を引き下げ、最終的にはゼロ関税とする提案を検討している。これはアメリカの輸出業者にとってメリットとなる施策であり、トランプ政権にとっても国内支持層へのアピール材料となり得る。
報復関税の不行使の誓約(non-retaliation)
多くの国が米国の関税措置に対して対抗措置を取る中、台湾は報復を控える姿勢を明確にし、「摩擦回避」の姿勢を示している。この柔軟な姿勢は、トランプ政権との交渉で心理的優位を得る可能性がある。
アメリカへの直接投資の強化
台湾政府は、特に半導体産業において、アメリカ国内での製造拠点設置や研究開発施設の拡充を推進しており、頼清徳総統も先月、そのための数十億米ドルに上る投資を承認している。これはアメリカ側にとって雇用創出や技術導入につながるため、双方にとって「win-win」となる要素である。
バックチャネルによる外交努力
報道によれば、台湾はこれらの措置を正式な政府間交渉の枠外でも、水面下でアメリカ側に伝達しており、外交官や民間企業などを通じた非公開の「バックチャネル」を活用して、トランプ政権の反応を探っている。
こうした裏交渉の活用は、公式ルートでは困難な意思疎通を補完する手段として、近年多用される傾向にある。特に台湾のように、外交的に正式な国家承認を受けていない場合、こうした非公式ルートが重要な役割を果たす。
懸念と限界:アメリカ側の受け止め方
しかし、専門家の分析によれば、トランプ大統領の外交・通商スタイルは「取引志向的(transactional)」かつ「単発的成果重視(deal-based)」であるため、台湾の一方的な善意や譲歩が必ずしも評価されるとは限らない。
加えて、トランプ政権の通商政策はしばしば政治的パフォーマンスとして国内向けに用いられる傾向があり、貿易黒字の大きさそのものが制裁の根拠とされることもある。したがって、台湾の措置がどこまで効果を持つかは依然として不確実である。
総合評価
現在のところ、台湾は対米関係の維持を最優先とし、極めて柔軟かつ協調的な対応をとっている。しかしながら、トランプ政権の政策運営が強硬で変動性も高いため、台湾の外交努力がどこまで功を奏するかは、アメリカ側の判断次第であり、今後の交渉の進展が注目される。
【要点】
1. 背景:トランプ政権による新関税措置
・トランプ米大統領は2025年、新たな輸入関税措置を発表し、複数国を対象に制限を強化。
・台湾は2024年に米国に対して約740億米ドルの貿易黒字を計上しており、制裁対象として特に影響を受けやすい立場にある。
・台湾の輸出は半導体・電子機器などが中心であり、対米依存度が高い。
2. 台湾の対応策:包括的な譲歩パッケージ
・アメリカ産品に対するゼロ関税措置の提案を準備。
・アメリカの関税措置に対して報復措置を取らないことを表明(non-retaliation pledge)。
・アメリカ国内への直接投資、特に半導体分野における数十億ドル規模の投資を推進。
3. 頼清徳総統の方針
・頼清徳(William Lai Ching-te)総統は、米台関係を「これまでで最良」と評価。
・アメリカ国内での半導体製造拠点の建設や研究開発投資を承認し、協力関係の深化を図る。
4. 外交手法:バックチャネルの活用
・正式な政府間交渉に先立ち、**非公式ルート(バックチャネル)**を通じてアメリカ側と調整を開始。
・政府関係者や産業界を通じた水面下での働きかけが行われている。
5. 分析と見通し
・トランプ大統領の外交スタイルは**「取引志向的」かつ「成果主義的」**であり、台湾の譲歩が即座に成果に結びつく保証はない。
・トランプ政権は貿易黒字そのものを問題視する傾向があるため、善意の措置だけでは効果が限定的となる可能性がある。
・今後の交渉はアメリカ側の政治判断に大きく左右される。
【参考】
☞ 台湾の対米輸出構造(主に2024年時点の構成に基づく)
1. 半導体・電子部品(全体の中核)
・最重要輸出品目であり、台湾の対米輸出の約30〜40%を占める。
・輸出企業の中心はTSMC(台湾積体電路製造)、UMC(聯華電子)、ASEなど。
・アメリカのIT・軍需・自動車産業などから高い需要がある。
2. ICT製品(情報通信機器)
・ノートパソコン、ルーター、ネットワーク機器など。
・台湾企業が設計・製造を請け負い、米ブランド(Apple、HP、Dellなど)向けに出荷。
・EMS(電子機器受託生産)大手のFoxconn(鴻海精密工業)やCompalなどが担う。
3. 機械・工具類
・精密加工機械、CNC工作機械、工具部品など。
・アメリカの製造業や航空宇宙分野での需要に支えられている。
4. 自動車部品
・センサー、電子制御装置、照明器具、バッテリー制御モジュール等。
・電気自動車(EV)関連の部品も増加傾向にある。
5. プラスチック・化学品
・工業用樹脂や高機能プラスチック素材など。
・アメリカの製造業や建材産業向け。
6. 光学機器・医療機器
・カメラレンズ、顕微鏡部品、X線装置部品など。
・特に光学分野は長年の強みで、医療用途での輸出も近年拡大。
補足:輸出構造の特徴とリスク
・高度な技術集約型製品が多く、単価が高い反面、アメリカの需要に強く依存。
・中国本土とアメリカの対立構造の中で、台湾の半導体は「戦略物資」として注目されている。
・輸出品目の多くは米中摩擦や関税政策に敏感で、政治的な不確実性がリスク要因である。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Taiwan lines up sweeteners for US after Trump tariff blow. But how far will they go? SCMP
https://www.scmp.com/news/china/politics/article/3305695/taiwan-lines-sweeteners-us-after-trump-tariffs-blow-how-far-will-they-go?utm_medium=email&utm_source=cm&utm_campaign=enlz-china&utm_content=20250408&tpcc=enlz-china&UUID=5147fda4-c483-4061-b936-ccd0eb7929aa&next_article_id=3305692&article_id_list=3305695,3305692&tc=3
アメリカのトランプ政権による新たな輸入関税措置に対し、台湾がその影響を和らげるための対米対応策を急いで進めている状況を詳述している。
報道によれば、台湾はアメリカ産品への関税撤廃(ゼロ関税)や、対抗措置を取らないとの誓約、さらにアメリカへの投資増加を含む包括的なパッケージを準備しており、これらを通じてワシントンとの協議の土台を整えようとしている。
台湾は2024年にアメリカに対して740億米ドルの貿易黒字を計上しており、今回の新関税による打撃が特に大きいと見られている。こうした事情を踏まえ、台湾は非公式な外交ルート(バックチャネル)を通じて影響緩和の可能性を探っている。
ただし、専門家によれば、トランプ大統領は国際問題に対して取引的かつ強硬な姿勢を取っており、台湾のこうした「善意の措置」がどこまで効果を持つかは不透明であると指摘されている。
また、台湾の頼清徳(William Lai Ching-te)総統は、台湾とアメリカの関係を「これまでで最も良好」と評価しており、先月には数十億ドル規模の半導体関連投資をアメリカ国内で実施することを承認している。このように、台湾は米国との経済的・政治的関係をさらに強化しようとしている。
全体として、台湾は米中対立や米国保護主義の高まりの中で、米国との関係維持・強化のために柔軟かつ積極的な対応策を講じているが、トランプ政権下での成果は予断を許さない状況である。
【詳細】
台湾が直面する背景と問題
2025年に入り、ドナルド・トランプ米大統領は、再び「アメリカ第一主義」に基づく強硬な通商政策を推進しており、複数の国に対して新たな輸入関税を課す方針を打ち出した。この中で、台湾は特に影響を受ける国の一つである。というのも、台湾は2024年にアメリカに対して約740億米ドル(約11兆円)という大幅な貿易黒字を計上しており、対米輸出に大きく依存しているからである。
この大きな貿易黒字は、特に半導体や電子部品、IT機器の輸出によって形成されたものであり、台湾経済にとって対米貿易は極めて重要である。したがって、アメリカが関税を引き上げることで、台湾の輸出企業はコスト増や競争力低下に直面し、その影響は国内経済全体にも波及するおそれがある。
台湾の対応:譲歩と協調の提示
このような事態に直面した台湾政府は、米国との摩擦を避け、関係を維持するために、いくつかの包括的な対策を講じている。主な内容は以下の通りである:
アメリカ産品に対するゼロ関税措置の提案
台湾は、アメリカからの農産物や工業製品などに対する関税を引き下げ、最終的にはゼロ関税とする提案を検討している。これはアメリカの輸出業者にとってメリットとなる施策であり、トランプ政権にとっても国内支持層へのアピール材料となり得る。
報復関税の不行使の誓約(non-retaliation)
多くの国が米国の関税措置に対して対抗措置を取る中、台湾は報復を控える姿勢を明確にし、「摩擦回避」の姿勢を示している。この柔軟な姿勢は、トランプ政権との交渉で心理的優位を得る可能性がある。
アメリカへの直接投資の強化
台湾政府は、特に半導体産業において、アメリカ国内での製造拠点設置や研究開発施設の拡充を推進しており、頼清徳総統も先月、そのための数十億米ドルに上る投資を承認している。これはアメリカ側にとって雇用創出や技術導入につながるため、双方にとって「win-win」となる要素である。
バックチャネルによる外交努力
報道によれば、台湾はこれらの措置を正式な政府間交渉の枠外でも、水面下でアメリカ側に伝達しており、外交官や民間企業などを通じた非公開の「バックチャネル」を活用して、トランプ政権の反応を探っている。
こうした裏交渉の活用は、公式ルートでは困難な意思疎通を補完する手段として、近年多用される傾向にある。特に台湾のように、外交的に正式な国家承認を受けていない場合、こうした非公式ルートが重要な役割を果たす。
懸念と限界:アメリカ側の受け止め方
しかし、専門家の分析によれば、トランプ大統領の外交・通商スタイルは「取引志向的(transactional)」かつ「単発的成果重視(deal-based)」であるため、台湾の一方的な善意や譲歩が必ずしも評価されるとは限らない。
加えて、トランプ政権の通商政策はしばしば政治的パフォーマンスとして国内向けに用いられる傾向があり、貿易黒字の大きさそのものが制裁の根拠とされることもある。したがって、台湾の措置がどこまで効果を持つかは依然として不確実である。
総合評価
現在のところ、台湾は対米関係の維持を最優先とし、極めて柔軟かつ協調的な対応をとっている。しかしながら、トランプ政権の政策運営が強硬で変動性も高いため、台湾の外交努力がどこまで功を奏するかは、アメリカ側の判断次第であり、今後の交渉の進展が注目される。
【要点】
1. 背景:トランプ政権による新関税措置
・トランプ米大統領は2025年、新たな輸入関税措置を発表し、複数国を対象に制限を強化。
・台湾は2024年に米国に対して約740億米ドルの貿易黒字を計上しており、制裁対象として特に影響を受けやすい立場にある。
・台湾の輸出は半導体・電子機器などが中心であり、対米依存度が高い。
2. 台湾の対応策:包括的な譲歩パッケージ
・アメリカ産品に対するゼロ関税措置の提案を準備。
・アメリカの関税措置に対して報復措置を取らないことを表明(non-retaliation pledge)。
・アメリカ国内への直接投資、特に半導体分野における数十億ドル規模の投資を推進。
3. 頼清徳総統の方針
・頼清徳(William Lai Ching-te)総統は、米台関係を「これまでで最良」と評価。
・アメリカ国内での半導体製造拠点の建設や研究開発投資を承認し、協力関係の深化を図る。
4. 外交手法:バックチャネルの活用
・正式な政府間交渉に先立ち、**非公式ルート(バックチャネル)**を通じてアメリカ側と調整を開始。
・政府関係者や産業界を通じた水面下での働きかけが行われている。
5. 分析と見通し
・トランプ大統領の外交スタイルは**「取引志向的」かつ「成果主義的」**であり、台湾の譲歩が即座に成果に結びつく保証はない。
・トランプ政権は貿易黒字そのものを問題視する傾向があるため、善意の措置だけでは効果が限定的となる可能性がある。
・今後の交渉はアメリカ側の政治判断に大きく左右される。
【参考】
☞ 台湾の対米輸出構造(主に2024年時点の構成に基づく)
1. 半導体・電子部品(全体の中核)
・最重要輸出品目であり、台湾の対米輸出の約30〜40%を占める。
・輸出企業の中心はTSMC(台湾積体電路製造)、UMC(聯華電子)、ASEなど。
・アメリカのIT・軍需・自動車産業などから高い需要がある。
2. ICT製品(情報通信機器)
・ノートパソコン、ルーター、ネットワーク機器など。
・台湾企業が設計・製造を請け負い、米ブランド(Apple、HP、Dellなど)向けに出荷。
・EMS(電子機器受託生産)大手のFoxconn(鴻海精密工業)やCompalなどが担う。
3. 機械・工具類
・精密加工機械、CNC工作機械、工具部品など。
・アメリカの製造業や航空宇宙分野での需要に支えられている。
4. 自動車部品
・センサー、電子制御装置、照明器具、バッテリー制御モジュール等。
・電気自動車(EV)関連の部品も増加傾向にある。
5. プラスチック・化学品
・工業用樹脂や高機能プラスチック素材など。
・アメリカの製造業や建材産業向け。
6. 光学機器・医療機器
・カメラレンズ、顕微鏡部品、X線装置部品など。
・特に光学分野は長年の強みで、医療用途での輸出も近年拡大。
補足:輸出構造の特徴とリスク
・高度な技術集約型製品が多く、単価が高い反面、アメリカの需要に強く依存。
・中国本土とアメリカの対立構造の中で、台湾の半導体は「戦略物資」として注目されている。
・輸出品目の多くは米中摩擦や関税政策に敏感で、政治的な不確実性がリスク要因である。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Taiwan lines up sweeteners for US after Trump tariff blow. But how far will they go? SCMP
https://www.scmp.com/news/china/politics/article/3305695/taiwan-lines-sweeteners-us-after-trump-tariffs-blow-how-far-will-they-go?utm_medium=email&utm_source=cm&utm_campaign=enlz-china&utm_content=20250408&tpcc=enlz-china&UUID=5147fda4-c483-4061-b936-ccd0eb7929aa&next_article_id=3305692&article_id_list=3305695,3305692&tc=3
北朝鮮の核・認知戦略 ― 2025年04月12日 15:20
【概要】
北朝鮮の核・認知戦略
2025年、トランプ大統領の二期目が始動したことで、米朝間の対話再開の可能性が取り沙汰されている。しかし、仮に両国間の対話が再開されたとしても、非核化に向けた実質的な進展が得られる可能性は低い。金正恩政権は、核問題においてほとんど譲歩せずに、朝鮮半島での優位を確保することを目指すと見られる。
大韓民国(以下、韓国)は、北朝鮮の核の脅威に長年注目してきた。北朝鮮は核実験やミサイル発射を繰り返し、2022年9月には「核戦力政策」を法制化し、核部隊の訓練も実施している。これにより北朝鮮は軍事的な即応態勢を整え、韓国との相対的な軍事的優位を追求してきた。韓国および米国の当局は、これらの動きを北朝鮮の核開発戦略の一環として、また短期的な交渉上の優位を狙った戦術と分析している。
だが北朝鮮は、単に短期的な譲歩を引き出すためだけに核を活用しているわけではない。今日、認知領域(cognitive domain)が新たな戦場として浮上する中で、北朝鮮は核兵器を用いた認知戦(cognitive warfare)を戦略の中核に据えようとしている。これは、韓国および米国の意思決定者の認知プロセスに錯誤や歪みを生じさせ、北朝鮮に有利な判断や行動を導くことを目的とするものである。すなわち、北朝鮮は核兵器を単なる軍事的抑止手段にとどめず、心理戦・情報戦・サイバー戦と融合させることで、より包括的かつ長期的な成果を狙っている。
【詳細】
1.核・認知戦略の概念と意図
核・認知戦略とは、従来の「核による威嚇(nuclear coercion)」に加えて、認知戦(cognitive warfare)の要素を組み合わせるものである。この戦略は、単に核兵器の使用やその脅威によって相手の行動を制限・抑止することにとどまらず、相手の意思決定や判断過程そのものに働きかけ、誤った認識・決定を誘導することで、自国に有利な戦略的状況を創出することを目的としている。
北朝鮮の核・認知戦略は、核の存在そのものがもたらす抑止効果に依存する第一段階(実存的抑止)から、核に関する物語や情報を活用する段階、さらにはサイバー戦・心理戦と統合された複合的な作戦段階へと発展している。
2.核・認知戦争の4段階構造
本戦略は以下の4段階に分類される。
(1) 実存的核抑止(Existential Nuclear Coercion)
核兵器を保有しているという事実だけで敵に物理的攻撃を思いとどまらせる段階。北朝鮮にとって、この段階は核戦力の基礎的な意義を担い、金体制の安全保障の根幹である。
(2) 核ナラティブの構築(Nuclear Narratives)
核兵器の意義を認知領域にまで拡張し、核兵器の保有や使用に関する情報を管理・操作することで、敵対国の国民や指導層に恐怖や不安、混乱をもたらす段階。ここではサイバー技術やAIを用いたプロパガンダが活用される。
(3) 多領域統合作戦との統合(Integration into Multi-Domain Operations)
核・認知戦を、従来の軍事行動(陸海空・宇宙・サイバー)と結合させ、ハイブリッド戦として展開する段階。この段階では、物理的行動と非物理的行動の融合が図られる。
(4) 認知領域における作戦(Operations within the Cognitive Domain)
最終段階では、核兵器を単なる脅威手段としてではなく、認知戦における「情報操作の核」として活用し、敵の判断や反応そのものを先制的に攪乱・支配する。
3.北朝鮮の核・認知戦の戦略的目的
北朝鮮がこのような戦略を追求する背景には、以下のような意図があると考えられる。
・韓国および米国の指導層による核関連の判断や反応の遅延、無効化
・ROK-US同盟の信頼性と結束の分断
・韓国国民に対する恐怖・絶望感の植え付け、心理的士気の低下
・政治的譲歩の誘導、特に制裁緩和や軍事的譲歩
これにより、北朝鮮は軍事的な衝突を回避しつつ、非対称的に戦略的優位を確保しようとしている。
4.核・認知戦に必要な能力と組織
核・認知戦の実施には、以下のような複合的な能力が必要である。
・核戦力の開発と維持:第一撃に耐える「第二撃能力(second-strike capability)」の確保。
・サイバー戦能力:相手の指揮系統や通信網に対する侵入・妨害。
・心理戦および情報操作:プロパガンダ、AI生成情報、偽情報拡散など。
・専門機関の運用:北朝鮮では「朝鮮労働党中央委員会宣伝扇動部」が中心的役割を果たすとみられる。
これらを統合的に活用することで、北朝鮮は従来の軍事衝突を避けながら、戦略目標の達成を図っている。
5.三つの戦略的アプローチ
核・認知戦は、以下の三つの対象グループに対して異なるアプローチを用いる。
(1) 一般国民層(韓国・米国)
恐怖・無力感を与えることで民主的意思決定に圧力を加える。例:核ミサイルのデモ発射、SNS上の偽情報拡散など。
(2) ROK-US同盟関係者
不信・分断を引き起こす情報操作。例:米国の拡大抑止に対する信頼性を意図的に揺るがせるキャンペーン。
(3) 核政策決定層
意思決定を遅延させたり誤らせたりする複雑な情報戦。例:サイバー攻撃による情報操作、指揮系統への攪乱。
北朝鮮は、このように「核の物理的抑止力」と「情報・心理領域への攻撃力」を組み合わせ、戦争を回避しつつ最大限の戦略成果を引き出すという高度な戦略構想を展開している。これに対し、韓米同盟は単なる軍事的抑止にとどまらず、認知・心理・情報領域を含む総合的な防衛構想の再構築を迫られている。
【要点】
1.核・認知戦略の全体像
・核兵器と認知戦(情報・心理戦)を組み合わせた戦略。
・相手の行動だけでなく、意思決定・認識・判断過程そのものに干渉することが目的。
・物理的攻撃を行わずに戦略的優位を得るための非対称的手段。
2.北朝鮮の核・認知戦の4段階構造
(1)実存的核抑止(Existential Nuclear Coercion)
・核兵器を保有している事実自体で相手の攻撃を思いとどまらせる。
・北朝鮮体制の安全保障の土台。
(2)核ナラティブの構築(Nuclear Narratives)
・核兵器に関する言説を操作し、敵国世論や意思決定を揺さぶる。
・偽情報・誇張・演出を含むプロパガンダが中心。
(3)多領域統合作戦との統合(Integration with Multi-Domain Operations)
・陸・海・空・宇宙・サイバーなど、複数の作戦領域と連携。
・認知領域と軍事行動を同時展開する複合作戦。
(4)認知領域における作戦(Cognitive Domain Operations)
・相手の心理・知覚・判断力そのものを操作対象とする段階。
・AIやサイバー戦を活用し、反応を誤らせる。
3.戦略的目的
・韓米同盟の分断と信頼性の低下。
・韓国社会に不安と無力感を浸透させ、対北強硬姿勢の弱体化。
・米国の「拡大抑止(extended deterrence)」の信頼性を損なう。
・北朝鮮に有利な交渉条件(制裁緩和など)を引き出す。
4.必要とされる能力・手段
・核戦力:弾道ミサイル、戦術核、潜水艦発射型など。
・サイバー能力:攻撃・防御・情報収集。
・情報操作・心理戦技術:フェイクニュース、SNS拡散、AI生成プロパガンダ。
・専門機関の存在:朝鮮労働党宣伝扇動部、軍諜報機関、ハッカー部隊(例:ラザルス・グループ)。
5. 三つの主要ターゲットと手法
(1)一般国民(韓国・米国)
・恐怖・混乱を煽る情報操作。
・例:核実験・ミサイル発射映像の演出、誇張報道。
(2)韓米同盟関係者
・同盟に対する不信感・疑念を拡大。
・例:「米国は本当に韓国を守るのか?」という情報拡散。
(3)政策決定層(軍・政府中枢)
・意思決定を遅延・攪乱させるサイバー/心理戦。
・例:偽の核攻撃警報、指揮系統への侵入。
6.その他の特徴
・戦争をせずに相手を支配する「戦略的威圧」の手段。
・相手の「情報過多」「判断麻痺」を誘発する。
・実際の核使用を前提としない戦争観の展開。
【引用・参照・底本】
North Korea’s Nuclear-Cognitive Warfare Strategy 38NORTH 2025.04.10
https://www.38north.org/2025/04/north-koreas-nuclear-cognitive-warfare-strategy/
北朝鮮の核・認知戦略
2025年、トランプ大統領の二期目が始動したことで、米朝間の対話再開の可能性が取り沙汰されている。しかし、仮に両国間の対話が再開されたとしても、非核化に向けた実質的な進展が得られる可能性は低い。金正恩政権は、核問題においてほとんど譲歩せずに、朝鮮半島での優位を確保することを目指すと見られる。
大韓民国(以下、韓国)は、北朝鮮の核の脅威に長年注目してきた。北朝鮮は核実験やミサイル発射を繰り返し、2022年9月には「核戦力政策」を法制化し、核部隊の訓練も実施している。これにより北朝鮮は軍事的な即応態勢を整え、韓国との相対的な軍事的優位を追求してきた。韓国および米国の当局は、これらの動きを北朝鮮の核開発戦略の一環として、また短期的な交渉上の優位を狙った戦術と分析している。
だが北朝鮮は、単に短期的な譲歩を引き出すためだけに核を活用しているわけではない。今日、認知領域(cognitive domain)が新たな戦場として浮上する中で、北朝鮮は核兵器を用いた認知戦(cognitive warfare)を戦略の中核に据えようとしている。これは、韓国および米国の意思決定者の認知プロセスに錯誤や歪みを生じさせ、北朝鮮に有利な判断や行動を導くことを目的とするものである。すなわち、北朝鮮は核兵器を単なる軍事的抑止手段にとどめず、心理戦・情報戦・サイバー戦と融合させることで、より包括的かつ長期的な成果を狙っている。
【詳細】
1.核・認知戦略の概念と意図
核・認知戦略とは、従来の「核による威嚇(nuclear coercion)」に加えて、認知戦(cognitive warfare)の要素を組み合わせるものである。この戦略は、単に核兵器の使用やその脅威によって相手の行動を制限・抑止することにとどまらず、相手の意思決定や判断過程そのものに働きかけ、誤った認識・決定を誘導することで、自国に有利な戦略的状況を創出することを目的としている。
北朝鮮の核・認知戦略は、核の存在そのものがもたらす抑止効果に依存する第一段階(実存的抑止)から、核に関する物語や情報を活用する段階、さらにはサイバー戦・心理戦と統合された複合的な作戦段階へと発展している。
2.核・認知戦争の4段階構造
本戦略は以下の4段階に分類される。
(1) 実存的核抑止(Existential Nuclear Coercion)
核兵器を保有しているという事実だけで敵に物理的攻撃を思いとどまらせる段階。北朝鮮にとって、この段階は核戦力の基礎的な意義を担い、金体制の安全保障の根幹である。
(2) 核ナラティブの構築(Nuclear Narratives)
核兵器の意義を認知領域にまで拡張し、核兵器の保有や使用に関する情報を管理・操作することで、敵対国の国民や指導層に恐怖や不安、混乱をもたらす段階。ここではサイバー技術やAIを用いたプロパガンダが活用される。
(3) 多領域統合作戦との統合(Integration into Multi-Domain Operations)
核・認知戦を、従来の軍事行動(陸海空・宇宙・サイバー)と結合させ、ハイブリッド戦として展開する段階。この段階では、物理的行動と非物理的行動の融合が図られる。
(4) 認知領域における作戦(Operations within the Cognitive Domain)
最終段階では、核兵器を単なる脅威手段としてではなく、認知戦における「情報操作の核」として活用し、敵の判断や反応そのものを先制的に攪乱・支配する。
3.北朝鮮の核・認知戦の戦略的目的
北朝鮮がこのような戦略を追求する背景には、以下のような意図があると考えられる。
・韓国および米国の指導層による核関連の判断や反応の遅延、無効化
・ROK-US同盟の信頼性と結束の分断
・韓国国民に対する恐怖・絶望感の植え付け、心理的士気の低下
・政治的譲歩の誘導、特に制裁緩和や軍事的譲歩
これにより、北朝鮮は軍事的な衝突を回避しつつ、非対称的に戦略的優位を確保しようとしている。
4.核・認知戦に必要な能力と組織
核・認知戦の実施には、以下のような複合的な能力が必要である。
・核戦力の開発と維持:第一撃に耐える「第二撃能力(second-strike capability)」の確保。
・サイバー戦能力:相手の指揮系統や通信網に対する侵入・妨害。
・心理戦および情報操作:プロパガンダ、AI生成情報、偽情報拡散など。
・専門機関の運用:北朝鮮では「朝鮮労働党中央委員会宣伝扇動部」が中心的役割を果たすとみられる。
これらを統合的に活用することで、北朝鮮は従来の軍事衝突を避けながら、戦略目標の達成を図っている。
5.三つの戦略的アプローチ
核・認知戦は、以下の三つの対象グループに対して異なるアプローチを用いる。
(1) 一般国民層(韓国・米国)
恐怖・無力感を与えることで民主的意思決定に圧力を加える。例:核ミサイルのデモ発射、SNS上の偽情報拡散など。
(2) ROK-US同盟関係者
不信・分断を引き起こす情報操作。例:米国の拡大抑止に対する信頼性を意図的に揺るがせるキャンペーン。
(3) 核政策決定層
意思決定を遅延させたり誤らせたりする複雑な情報戦。例:サイバー攻撃による情報操作、指揮系統への攪乱。
北朝鮮は、このように「核の物理的抑止力」と「情報・心理領域への攻撃力」を組み合わせ、戦争を回避しつつ最大限の戦略成果を引き出すという高度な戦略構想を展開している。これに対し、韓米同盟は単なる軍事的抑止にとどまらず、認知・心理・情報領域を含む総合的な防衛構想の再構築を迫られている。
【要点】
1.核・認知戦略の全体像
・核兵器と認知戦(情報・心理戦)を組み合わせた戦略。
・相手の行動だけでなく、意思決定・認識・判断過程そのものに干渉することが目的。
・物理的攻撃を行わずに戦略的優位を得るための非対称的手段。
2.北朝鮮の核・認知戦の4段階構造
(1)実存的核抑止(Existential Nuclear Coercion)
・核兵器を保有している事実自体で相手の攻撃を思いとどまらせる。
・北朝鮮体制の安全保障の土台。
(2)核ナラティブの構築(Nuclear Narratives)
・核兵器に関する言説を操作し、敵国世論や意思決定を揺さぶる。
・偽情報・誇張・演出を含むプロパガンダが中心。
(3)多領域統合作戦との統合(Integration with Multi-Domain Operations)
・陸・海・空・宇宙・サイバーなど、複数の作戦領域と連携。
・認知領域と軍事行動を同時展開する複合作戦。
(4)認知領域における作戦(Cognitive Domain Operations)
・相手の心理・知覚・判断力そのものを操作対象とする段階。
・AIやサイバー戦を活用し、反応を誤らせる。
3.戦略的目的
・韓米同盟の分断と信頼性の低下。
・韓国社会に不安と無力感を浸透させ、対北強硬姿勢の弱体化。
・米国の「拡大抑止(extended deterrence)」の信頼性を損なう。
・北朝鮮に有利な交渉条件(制裁緩和など)を引き出す。
4.必要とされる能力・手段
・核戦力:弾道ミサイル、戦術核、潜水艦発射型など。
・サイバー能力:攻撃・防御・情報収集。
・情報操作・心理戦技術:フェイクニュース、SNS拡散、AI生成プロパガンダ。
・専門機関の存在:朝鮮労働党宣伝扇動部、軍諜報機関、ハッカー部隊(例:ラザルス・グループ)。
5. 三つの主要ターゲットと手法
(1)一般国民(韓国・米国)
・恐怖・混乱を煽る情報操作。
・例:核実験・ミサイル発射映像の演出、誇張報道。
(2)韓米同盟関係者
・同盟に対する不信感・疑念を拡大。
・例:「米国は本当に韓国を守るのか?」という情報拡散。
(3)政策決定層(軍・政府中枢)
・意思決定を遅延・攪乱させるサイバー/心理戦。
・例:偽の核攻撃警報、指揮系統への侵入。
6.その他の特徴
・戦争をせずに相手を支配する「戦略的威圧」の手段。
・相手の「情報過多」「判断麻痺」を誘発する。
・実際の核使用を前提としない戦争観の展開。
【引用・参照・底本】
North Korea’s Nuclear-Cognitive Warfare Strategy 38NORTH 2025.04.10
https://www.38north.org/2025/04/north-koreas-nuclear-cognitive-warfare-strategy/
米国内の批判:「人類史における愚かな時期」 ― 2025年04月12日 16:02
【概要】
トランプの発言と政策の動向
米国大統領ドナルド・トランプは、ドル安と株式市場の混乱が続く中、自らの関税政策が「非常にうまくいっている」と述べ、「急速に進行している」と強調した。また、中国との通商合意についても楽観的な見方を維持していると、ホワイトハウスの報道官カロライン・レヴィットが語った。
中国の報復関税
中国政府は米国製品に対する関税を最大125%まで引き上げると発表した。これは、トランプがすべての米国貿易相手に対し10%の関税を課すという方針を示したことに対する対抗措置である。
株式市場の混乱と疑惑
トランプが関税を一部「90日間停止」すると発表したことにより、株式市場は急反発し、S&P500は2008年の金融危機後で最高の上昇を記録した。この直前に「今は買い時だ」と自身のSNS(Truth Social)で発言していたため、民主党上院議員団はSEC(証券取引委員会)に対し、インサイダー取引の疑いで調査を要求した。
国際的な反応
・中国の呼びかけ:習近平国家主席は欧州連合(EU)に対し、米国の「一方的ないじめ」に対抗して共闘するよう呼びかけた。
・EUの対応:ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁は、金融安定が脅かされる場合には対応する用意があると表明し、EUは7月に中国と首脳会談を行う予定である。
・ドイツ経済への影響:IAB(雇用研究所)の分析によれば、25%の関税が継続されれば、ドイツのGDPは1年後に1.2%減少し、雇用者数も9万人減少するとの見通しが示された。
・メキシコとの水資源問題:米国が水供給条約違反を理由に関税の可能性を示唆しており、メキシコは対応策を模索中である。
・韓国および日本:韓国の通商代表団によると、米国側は合意に向けて前向きな姿勢を示している。
企業・業界への影響
・米国半導体業界:製造を海外に委託している米国のチップ企業は、中国の報復関税の対象外となる見通しである。CSIA(中国半導体産業協会)の通知によると、課税対象は「製造された国」で判断されるためである。
・スペインとの取引:中国はスペイン産の豚肉やサクランボに関する新たな貿易協定を締結し、EUとの関係強化を図っている。
世論と批判
・米国内では、トランプの発言と政策変更のタイミングが市場操作に当たるとの批判が高まっており、「人類史における愚かな時期」との厳しい論評も見られる。
【詳細】
1. 中国の報復関税:125%に引き上げ
中国政府はアメリカからの輸入品に対し最大125%の関税を課すと発表した。これは、アメリカが4月2日に発表したすべての輸入品に一律10%の関税を課すという方針への報復措置である。
・背景:トランプ大統領は「米国の製造業を保護し、貿易不均衡を是正する」として、すべての貿易相手に対し関税を導入。
・影響:この関税合戦により、米ドルはユーロに対して3年ぶりの安値、円に対しても1.3%の下落を記録。株式市場も大混乱に陥った。
2. トランプの反応と主張
トランプ大統領はこうした混乱にもかかわらず、自らの関税政策は「非常にうまくいっている」「非常にエキサイティングだ」とSNSで強調した。
・また、ホワイトハウス報道官カロライン・レヴィットは「大統領は中国との合意に前向きである」と述べたが、同時に「報復を続けるなら中国の利益にならない」とも牽制した。
3. 内部取引疑惑:SECに調査要請
6名の民主党上院議員(エリザベス・ウォーレンら)は、トランプ大統領と政権内部者がインサイダー取引を行った疑いがあるとして、SEC(証券取引委員会)に調査を要請した。
・トランプは株価暴落の最中に「今が買い時だ!」とTruth Socialに投稿し、その数時間後に90日間の関税停止を発表。これにより市場は歴史的な回復を見せた。
・議員らは「大統領とその側近が、株式取引で利益を得た可能性がある」と主張している。
4. 他国の対応と広がる影響
(1)EUと中国の接近
・習近平国家主席はスペイン首相に対し、「一方的な圧力に共に抵抗しよう」と呼びかけ、7月にEU・中国首脳会談を開催予定。
(2)欧州中央銀行(ECB)の危機感
・ラガルド総裁は「アメリカの関税政策が金融の安定を脅かす場合、ECBは行動を取る」と警告。
(3)ドイツ経済への影響
・経済研究所IABの試算によると、25%の関税が導入され続ければドイツのGDPは1.2%減少、雇用は9万人減少する可能性がある。
(4)メキシコと水資源条約
・米墨間の81年続く水資源協定の履行をめぐり、米国は関税で圧力。メキシコ側は「数日内に解決見込み」と発言。
5. 日韓の対応
・韓国の通商代表チョン・インギョは、米国代表と「前向きな交渉姿勢」を確認したと報告。
・日本にも類似の協議の打診が行われている模様。
6. 経済専門家の見解と市場への影響
・経済学者モシェ・ランダーは「自己破壊的な経済危機」と批判し、「人類史における愚かな時期の到来」と指摘。
・一方で、中国はスペイン産豚肉・サクランボの輸入を拡大し、EUとの貿易を強化。米国との対立に備える姿勢を見せている。
まとめ:現在の状況の評価
要素 状況
米中関係 関税戦争激化、合意の見通し不透明
世界経済 為替・株式市場ともに不安定
トランプ政権 国内外で批判と疑惑が高まる
EU・中国 米国に対抗するため接近傾向
国際秩序 貿易ルールと協調体制に深刻な影響
【要点】
1.中国の報復関税
・中国政府が米国製品に最大125%の関税を発表
・アメリカの「すべての輸入品に10%関税」への報復措置
・対象品目にはアメリカ産自動車・豚肉・果物などが含まれる
2.米国の対応とトランプ大統領の主張
・トランプ大統領は「非常にうまくいっている」「エキサイティングだ」とSNSで表明
・ホワイトハウス報道官は「合意に前向き」としつつ、「報復は中国の不利益」と牽制
・一時的に90日間の関税停止措置を発表、市場回復の引き金に
3.インサイダー取引疑惑
・民主党上院議員6名(ウォーレンら)がSECに正式な調査要請
・トランプ氏が株価暴落中に「買い時」と投稿 → 数時間後に関税停止発表 → 株価急騰
・政権内部で事前に株を購入していた可能性が疑われている
4.世界経済への影響
・米ドルがユーロに対して3年ぶりの安値、円に対して1.3%下落
・株式市場に大きな乱高下、投資家の不安が高まる
・米国の関税が世界的リセッションの火種となる懸念
5.各国の反応・外交動向
・中国とEUが接近:習近平が「一方的圧力に共に反対」とスペイン首相に提案
・EU・中国首脳会談を7月に開催予定
6.欧州中央銀行(ECB)の警告
・ラガルド総裁が「金融安定が損なわれれば介入する」と表明
・ユーロ圏でもインフレと通商不安定が懸念される
7.ドイツ経済への影響(IAB試算)
・関税が長期化するとGDP1.2%減少、9万人の雇用喪失と予測
8.メキシコとの関係悪化
・米墨水資源条約(81年続く)に関し、米国が関税圧力をかける
・メキシコ政府は「数日内に解決できる見込み」と発言
9.日韓への影響と動向
・韓国の通商代表が米国と「前向きな交渉姿勢」を確認
・日本にも同様の協議の打診が行われている模様
10.その他
・中国はスペイン産豚肉・サクランボの輸入増加を発表し、米国依存からの脱却を図る
・経済学者モシェ・ランダーは「人類史における愚かな時期の始まり」と非難
【参考】
☞ トランプ政権 国内外で批判と疑惑
1.国内での批判・疑惑
(1)インサイダー取引の疑惑
・トランプ氏が株価下落中に「今が買い時」とSNS投稿
・その数時間後に関税停止措置を発表し、株価が急騰
・一部政権関係者がそのタイミングで株取引を行った可能性
・民主党議員6名が証券取引委員会(SEC)に調査を要請
(2)経済政策の一貫性への疑念
・「すべての輸入品に関税→一転して90日間の停止」と、方針が場当たり的と批判
・米産業界・農業団体から「貿易戦争による打撃が大きすぎる」との声
(3)メディア・野党の非難
・各種報道機関が「政策の私物化」「市場操作の可能性」と報道
・民主党は「再選のために市場を操作している」と主張
2.国外での批判・不信
(1)同盟国からの不満
・EU、カナダ、日本、韓国などの同盟国が「一方的な関税は国際秩序を損なう」と非難
・米国の保護主義がルールに基づく貿易体制への脅威と見なされる
(2)中国・新興国の反発
・中国は報復関税とともに「米国はWTO精神に違反している」と国際世論に訴える
・メキシコやアジア諸国も「米国の圧力外交には応じない」と発言
(3)国際市場での信頼低下
・トランプ氏の一連の言動が「市場を不安定化させるリスク因子」として認識される
・ドルが下落し、各国の中央銀行が警戒姿勢を強めている
以上のように、国内では倫理性や一貫性を問われ、国外では信頼性と秩序破壊の懸念が高まっていることが、「批判と疑惑が高まる」という表現の内容である。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Trump says tariff policy 'doing really well' after China hits US with 125% levy FRANCE24 2025.04.11
https://www.france24.com/en/economy/20250411-live-eu-china-must-resist-unilateral-bullying-xi-tells-spain-s-sanchez?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020250411&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
トランプの発言と政策の動向
米国大統領ドナルド・トランプは、ドル安と株式市場の混乱が続く中、自らの関税政策が「非常にうまくいっている」と述べ、「急速に進行している」と強調した。また、中国との通商合意についても楽観的な見方を維持していると、ホワイトハウスの報道官カロライン・レヴィットが語った。
中国の報復関税
中国政府は米国製品に対する関税を最大125%まで引き上げると発表した。これは、トランプがすべての米国貿易相手に対し10%の関税を課すという方針を示したことに対する対抗措置である。
株式市場の混乱と疑惑
トランプが関税を一部「90日間停止」すると発表したことにより、株式市場は急反発し、S&P500は2008年の金融危機後で最高の上昇を記録した。この直前に「今は買い時だ」と自身のSNS(Truth Social)で発言していたため、民主党上院議員団はSEC(証券取引委員会)に対し、インサイダー取引の疑いで調査を要求した。
国際的な反応
・中国の呼びかけ:習近平国家主席は欧州連合(EU)に対し、米国の「一方的ないじめ」に対抗して共闘するよう呼びかけた。
・EUの対応:ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁は、金融安定が脅かされる場合には対応する用意があると表明し、EUは7月に中国と首脳会談を行う予定である。
・ドイツ経済への影響:IAB(雇用研究所)の分析によれば、25%の関税が継続されれば、ドイツのGDPは1年後に1.2%減少し、雇用者数も9万人減少するとの見通しが示された。
・メキシコとの水資源問題:米国が水供給条約違反を理由に関税の可能性を示唆しており、メキシコは対応策を模索中である。
・韓国および日本:韓国の通商代表団によると、米国側は合意に向けて前向きな姿勢を示している。
企業・業界への影響
・米国半導体業界:製造を海外に委託している米国のチップ企業は、中国の報復関税の対象外となる見通しである。CSIA(中国半導体産業協会)の通知によると、課税対象は「製造された国」で判断されるためである。
・スペインとの取引:中国はスペイン産の豚肉やサクランボに関する新たな貿易協定を締結し、EUとの関係強化を図っている。
世論と批判
・米国内では、トランプの発言と政策変更のタイミングが市場操作に当たるとの批判が高まっており、「人類史における愚かな時期」との厳しい論評も見られる。
【詳細】
1. 中国の報復関税:125%に引き上げ
中国政府はアメリカからの輸入品に対し最大125%の関税を課すと発表した。これは、アメリカが4月2日に発表したすべての輸入品に一律10%の関税を課すという方針への報復措置である。
・背景:トランプ大統領は「米国の製造業を保護し、貿易不均衡を是正する」として、すべての貿易相手に対し関税を導入。
・影響:この関税合戦により、米ドルはユーロに対して3年ぶりの安値、円に対しても1.3%の下落を記録。株式市場も大混乱に陥った。
2. トランプの反応と主張
トランプ大統領はこうした混乱にもかかわらず、自らの関税政策は「非常にうまくいっている」「非常にエキサイティングだ」とSNSで強調した。
・また、ホワイトハウス報道官カロライン・レヴィットは「大統領は中国との合意に前向きである」と述べたが、同時に「報復を続けるなら中国の利益にならない」とも牽制した。
3. 内部取引疑惑:SECに調査要請
6名の民主党上院議員(エリザベス・ウォーレンら)は、トランプ大統領と政権内部者がインサイダー取引を行った疑いがあるとして、SEC(証券取引委員会)に調査を要請した。
・トランプは株価暴落の最中に「今が買い時だ!」とTruth Socialに投稿し、その数時間後に90日間の関税停止を発表。これにより市場は歴史的な回復を見せた。
・議員らは「大統領とその側近が、株式取引で利益を得た可能性がある」と主張している。
4. 他国の対応と広がる影響
(1)EUと中国の接近
・習近平国家主席はスペイン首相に対し、「一方的な圧力に共に抵抗しよう」と呼びかけ、7月にEU・中国首脳会談を開催予定。
(2)欧州中央銀行(ECB)の危機感
・ラガルド総裁は「アメリカの関税政策が金融の安定を脅かす場合、ECBは行動を取る」と警告。
(3)ドイツ経済への影響
・経済研究所IABの試算によると、25%の関税が導入され続ければドイツのGDPは1.2%減少、雇用は9万人減少する可能性がある。
(4)メキシコと水資源条約
・米墨間の81年続く水資源協定の履行をめぐり、米国は関税で圧力。メキシコ側は「数日内に解決見込み」と発言。
5. 日韓の対応
・韓国の通商代表チョン・インギョは、米国代表と「前向きな交渉姿勢」を確認したと報告。
・日本にも類似の協議の打診が行われている模様。
6. 経済専門家の見解と市場への影響
・経済学者モシェ・ランダーは「自己破壊的な経済危機」と批判し、「人類史における愚かな時期の到来」と指摘。
・一方で、中国はスペイン産豚肉・サクランボの輸入を拡大し、EUとの貿易を強化。米国との対立に備える姿勢を見せている。
まとめ:現在の状況の評価
要素 状況
米中関係 関税戦争激化、合意の見通し不透明
世界経済 為替・株式市場ともに不安定
トランプ政権 国内外で批判と疑惑が高まる
EU・中国 米国に対抗するため接近傾向
国際秩序 貿易ルールと協調体制に深刻な影響
【要点】
1.中国の報復関税
・中国政府が米国製品に最大125%の関税を発表
・アメリカの「すべての輸入品に10%関税」への報復措置
・対象品目にはアメリカ産自動車・豚肉・果物などが含まれる
2.米国の対応とトランプ大統領の主張
・トランプ大統領は「非常にうまくいっている」「エキサイティングだ」とSNSで表明
・ホワイトハウス報道官は「合意に前向き」としつつ、「報復は中国の不利益」と牽制
・一時的に90日間の関税停止措置を発表、市場回復の引き金に
3.インサイダー取引疑惑
・民主党上院議員6名(ウォーレンら)がSECに正式な調査要請
・トランプ氏が株価暴落中に「買い時」と投稿 → 数時間後に関税停止発表 → 株価急騰
・政権内部で事前に株を購入していた可能性が疑われている
4.世界経済への影響
・米ドルがユーロに対して3年ぶりの安値、円に対して1.3%下落
・株式市場に大きな乱高下、投資家の不安が高まる
・米国の関税が世界的リセッションの火種となる懸念
5.各国の反応・外交動向
・中国とEUが接近:習近平が「一方的圧力に共に反対」とスペイン首相に提案
・EU・中国首脳会談を7月に開催予定
6.欧州中央銀行(ECB)の警告
・ラガルド総裁が「金融安定が損なわれれば介入する」と表明
・ユーロ圏でもインフレと通商不安定が懸念される
7.ドイツ経済への影響(IAB試算)
・関税が長期化するとGDP1.2%減少、9万人の雇用喪失と予測
8.メキシコとの関係悪化
・米墨水資源条約(81年続く)に関し、米国が関税圧力をかける
・メキシコ政府は「数日内に解決できる見込み」と発言
9.日韓への影響と動向
・韓国の通商代表が米国と「前向きな交渉姿勢」を確認
・日本にも同様の協議の打診が行われている模様
10.その他
・中国はスペイン産豚肉・サクランボの輸入増加を発表し、米国依存からの脱却を図る
・経済学者モシェ・ランダーは「人類史における愚かな時期の始まり」と非難
【参考】
☞ トランプ政権 国内外で批判と疑惑
1.国内での批判・疑惑
(1)インサイダー取引の疑惑
・トランプ氏が株価下落中に「今が買い時」とSNS投稿
・その数時間後に関税停止措置を発表し、株価が急騰
・一部政権関係者がそのタイミングで株取引を行った可能性
・民主党議員6名が証券取引委員会(SEC)に調査を要請
(2)経済政策の一貫性への疑念
・「すべての輸入品に関税→一転して90日間の停止」と、方針が場当たり的と批判
・米産業界・農業団体から「貿易戦争による打撃が大きすぎる」との声
(3)メディア・野党の非難
・各種報道機関が「政策の私物化」「市場操作の可能性」と報道
・民主党は「再選のために市場を操作している」と主張
2.国外での批判・不信
(1)同盟国からの不満
・EU、カナダ、日本、韓国などの同盟国が「一方的な関税は国際秩序を損なう」と非難
・米国の保護主義がルールに基づく貿易体制への脅威と見なされる
(2)中国・新興国の反発
・中国は報復関税とともに「米国はWTO精神に違反している」と国際世論に訴える
・メキシコやアジア諸国も「米国の圧力外交には応じない」と発言
(3)国際市場での信頼低下
・トランプ氏の一連の言動が「市場を不安定化させるリスク因子」として認識される
・ドルが下落し、各国の中央銀行が警戒姿勢を強めている
以上のように、国内では倫理性や一貫性を問われ、国外では信頼性と秩序破壊の懸念が高まっていることが、「批判と疑惑が高まる」という表現の内容である。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Trump says tariff policy 'doing really well' after China hits US with 125% levy FRANCE24 2025.04.11
https://www.france24.com/en/economy/20250411-live-eu-china-must-resist-unilateral-bullying-xi-tells-spain-s-sanchez?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020250411&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
トランプの関税戦略:為替安・株安・国際的な孤立・市場操作疑惑等多方面でのリスク ― 2025年04月12日 16:50
【概要】
事実関係の整理
・中国が対米報復関税を125%に引き上げ:これは米国からの輸入に対する大幅な関税であり、米中貿易が事実上停止するレベルの制裁である。
・トランプ大統領は「関税政策は非常にうまくいっている」と主張:しかし同時に、株式市場の混乱やドル安といった経済的悪化が見られる。
・トランプ氏の「関税一時停止」発表による市場急反発:S&P500は金融危機以降最大の上昇。だが、この前に「今が買い時」と投稿していたことからインサイダー取引の疑惑が浮上。
・民主党議員がSEC(証券取引委員会)に調査を要請:大統領や関係者が市場操作に関与した可能性があるとの懸念。
・中国はEUとの共闘を呼びかけ:習近平国家主席が「単独主義に対抗せよ」とEU首脳に訴え。
・ECB(欧州中央銀行)や独IAB研究所なども懸念を表明:関税が続けばドイツGDPは1%以上落ち込むという予測。
観察される特徴
・トランプ政権の関税政策は「経済ナショナリズム」の典型だが、そのコストが国際的にも顕在化している。
・一方、中国は報復するだけでなく、EUとの連携を強め、対米包囲網の形成を模索。
・市場は非常に敏感に反応しており、政権の発言一つで数兆ドル規模の資産が動く極度の不安定状態にある。
考察
トランプ大統領の「関税戦略」は短期的な交渉圧力としては効果があるが、為替安・株安・国際的な孤立・市場操作疑惑といった多方面でのリスクを高めている。特にSECによる調査が実際に始まれば、経済政策の信頼性だけでなく政治的正統性そのものが問われる可能性もある。
また、中国のEU接近は、米国の一国主義的政策がグローバルサウスや伝統的同盟国に亀裂を生じさせていることを示唆している。
【詳細】
1. 背景:トランプ大統領の新たな関税政策
2025年4月2日、米国のドナルド・トランプ大統領は、すべての貿易相手国に対して10%の関税を課すという前例のない方針を打ち出し、さらに一部の国(中国、EU、日本など)には20%以上の追加関税を適用した。この突然の発表により、世界の株式市場は混乱し、主要指標は急落。
しかし、トランプは4月9日(水)に突如としてこれらの関税のうち一部(主に同盟国向け)を90日間一時停止すると発表した。結果として市場は反発し、S&P500は2008年の金融危機以来最大の上昇率を記録した。
2. 中国の対応:報復関税125%
中国政府はこれを受けて、4月11日に米国製品に対する報復関税を125%まで引き上げると発表した。これは事実上、米中間の貿易を停止させる水準の関税であり、農産品やエネルギー、製造部品など幅広い品目が対象になっている。
習近平国家主席はこの日、スペイン首相との会談で「一方的な強制(unilateral coercion)には中国とEUが共に対抗すべきだ」と発言。これは米国のやり方に対する国際的な連携を呼びかけるものである。
3. トランプの発言とホワイトハウスの見解
中国の報復にもかかわらず、トランプ大統領は「関税政策は非常にうまくいっている。非常にエキサイティングな展開だ」と主張した。
ホワイトハウス報道官カロライン・レヴィットも「大統領は中国との合意に前向き」と述べつつ、「中国が報復を続ければ、中国自身にとって不利益である」と釘を刺した。
4. 市場操作疑惑:民主党上院議員がSECに調査要求
トランプが自らのSNS(Truth Social)に「今が買い時だ!」と投稿した数時間後に、彼は関税の一時停止を発表し、市場は急反発した。この一連の動きに対して、エリザベス・ウォーレン議員ら民主党の上院議員6名は、証券取引委員会(SEC)に対して、内部情報を利用したインサイダー取引の疑いを調査するよう要請した。
特に、大統領本人やその家族、政権内部の関係者が市場に関する情報を事前に把握して利益を得た可能性が焦点となっている。
5. 欧州・韓国などの反応
・EUと中国は7月に首脳会談を予定しており、米国の「経済的威圧」に対抗する姿勢を強めている。
・ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁は「関税交渉が失敗した場合には行動する用意がある」と明言。
・韓国の通商交渉本部長(チョン・インギョ氏)は、米側に妥協の余地があるとし、韓日ともに合意の道を模索している。
6. 経済への影響
・ドイツのIAB経済研究所によれば、米国の関税政策によってドイツのGDPは1.2%縮小し、雇用者数が9万人減る可能性がある。
・ドルはユーロに対して3年ぶりの安値、円に対しても1.3%下落しており、米国経済の先行きに対する懸念が強まっている。
7. トランプの狙い
トランプ大統領は、貿易交渉の圧力手段として関税政策を使用しており、交渉相手に譲歩を迫る一方で、自らの発言やSNSを通じて市場を動かす手法を取っている。この戦略は短期的な効果をもたらしているが、政策の一貫性や信頼性を損ね、長期的には米国経済に負荷を与える危険性も指摘されている。
【要点】
1.トランプの関税政策と市場の動き
・トランプ大統領が全貿易相手国に10%、一部に20%以上の追加関税を発表(4月2日)
・市場が急落し、世界的な株安が発生
・4月9日、一部の関税を90日間一時停止すると発表し、市場は反発
・S&P500は2008年のリーマンショック以来の最大上昇率を記録
2.中国の報復措置
・中国政府が米国製品に125%の報復関税を発表(4月11日)
・対象は農産品・エネルギー・製造部品など広範囲
・習近平は「一方的な強制に中国とEUは連携して対抗すべき」と発言
3.トランプとホワイトハウスの反応
・トランプ:「関税はうまくいっている。エキサイティングな展開」
・ホワイトハウス報道官:「合意には前向きだが、中国の報復は自らに不利益」
4.市場操作疑惑と調査要求
・トランプがSNSに「今が買い時だ!」と投稿した直後に関税の一時停止を発表
・議会民主党6名がSECにインサイダー取引の調査を要求
・対象はトランプ、家族、政権内部の関係者を含む可能性
5.国際的な反応と連携
・EUと中国が7月に首脳会談を予定、米国に対抗する姿勢
・ECBラガルド総裁:「交渉が失敗すれば行動する用意がある」
・韓国(チョン・インギョ氏):米側に妥協の兆しがあると見て、韓日連携を模索
6.経済的影響
・ドイツ経済研究所:GDP1.2%減、雇用9万人減の可能性
・ドル安が進行:ユーロに対して3年ぶり安値、円に対しても下落
・投資家の間で米国の政策一貫性への不信感が拡大
7.トランプの戦略的意図
・関税を交渉圧力と市場操作の手段として活用
・SNS発言で市場に影響を与え、自身の政策成果を演出
・短期的には効果ありだが、長期的には不信と混乱を招くリスク
【参考】
☞ 経済ナショナリズム
「経済ナショナリズム(Economic Nationalism)」とは、自国の経済的利益を最優先し、国家主導で経済政策を展開する立場を指す。以下に、その定義、特徴、背景、事例、利点と問題点を箇条書きで整理する。
1.定義
・経済ナショナリズム
国家の主権と利益を経済政策の中心に据え、外国依存を減らし、国内産業を保護・育成しようとする思想・政策。
2.主な特徴
・保護主義的関税政策:輸入品に高関税をかけて国内産業を守る
・外国資本規制:外国企業の買収や投資への制限
・戦略産業の育成と補助金:製造業、エネルギー、農業などに国家支援
・通貨安誘導や為替介入:輸出競争力の確保
・移民制限:労働市場の保護と社会不安の回避
3.歴史的背景と現代的復活
・19世紀〜20世紀前半:植民地帝国や新興国で一般的(例:メルカンティリズム)
・戦後期:自由貿易体制(GATT/WTO)が主流となり後退
・2008年リーマン危機以降〜:グローバル化の弊害や国内産業の空洞化への反発から復活傾向
・2020年代:パンデミック・米中対立・ウクライナ戦争・半導体危機などで再び加速
4.代表的事例
・アメリカ(トランプ政権)
⇨ 「アメリカ・ファースト」政策
⇨ 中国への関税戦争(米中貿易戦争)
⇨ NAFTAの再交渉(USMCA)
⇨ 製造業の国内回帰推進
・中国(習近平体制)
⇨ 「国内大循環戦略」・対外依存の低減
⇨ 自国技術開発支援(例:半導体、AI)
・インド
⇨ 「Make in India」政策
⇨ 中国アプリや製品の排除
・日本(戦前)
⇨ 昭和初期のブロック経済体制構築(満州経済圏)
5.利点
・雇用創出:製造業の国内回帰により雇用増加
・産業の再活性化:空洞化した基幹産業の再建
・国家安全保障の強化:エネルギー・食料・技術の自給体制
・政治的独立性の確保:外国依存の排除
6.問題点・批判
・貿易報復・摩擦:関税導入は報復関税を招き、貿易量が縮小
・物価上昇:関税によって輸入品価格が上昇、消費者負担増
・競争力の低下:保護された産業の国際競争力が鈍化
・国際協調の後退:WTOなど多国間体制への不信と弱体化
・国家資本主義化の懸念:市場メカニズムの形骸化
7.関連用語との違い
用語 内容 経済ナショナリズムとの違い
保護主義 主に関税で自国産業を守る政策 経済ナショナリズムの一部にすぎない
経済愛国主義 国家に対する経済的忠誠心の表明 より感情的・象徴的側面が強い
国家資本主義 国家が企業や資本を支配する経済体制 経済ナショナリズムと目的が一致しやすいが、手法は異なる場合もある
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Trump says tariff policy 'doing really well' after China hits US with 125% levy FRANCE24 2025.04.11
https://www.france24.com/en/economy/20250411-live-eu-china-must-resist-unilateral-bullying-xi-tells-spain-s-sanchez?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020250411&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
事実関係の整理
・中国が対米報復関税を125%に引き上げ:これは米国からの輸入に対する大幅な関税であり、米中貿易が事実上停止するレベルの制裁である。
・トランプ大統領は「関税政策は非常にうまくいっている」と主張:しかし同時に、株式市場の混乱やドル安といった経済的悪化が見られる。
・トランプ氏の「関税一時停止」発表による市場急反発:S&P500は金融危機以降最大の上昇。だが、この前に「今が買い時」と投稿していたことからインサイダー取引の疑惑が浮上。
・民主党議員がSEC(証券取引委員会)に調査を要請:大統領や関係者が市場操作に関与した可能性があるとの懸念。
・中国はEUとの共闘を呼びかけ:習近平国家主席が「単独主義に対抗せよ」とEU首脳に訴え。
・ECB(欧州中央銀行)や独IAB研究所なども懸念を表明:関税が続けばドイツGDPは1%以上落ち込むという予測。
観察される特徴
・トランプ政権の関税政策は「経済ナショナリズム」の典型だが、そのコストが国際的にも顕在化している。
・一方、中国は報復するだけでなく、EUとの連携を強め、対米包囲網の形成を模索。
・市場は非常に敏感に反応しており、政権の発言一つで数兆ドル規模の資産が動く極度の不安定状態にある。
考察
トランプ大統領の「関税戦略」は短期的な交渉圧力としては効果があるが、為替安・株安・国際的な孤立・市場操作疑惑といった多方面でのリスクを高めている。特にSECによる調査が実際に始まれば、経済政策の信頼性だけでなく政治的正統性そのものが問われる可能性もある。
また、中国のEU接近は、米国の一国主義的政策がグローバルサウスや伝統的同盟国に亀裂を生じさせていることを示唆している。
【詳細】
1. 背景:トランプ大統領の新たな関税政策
2025年4月2日、米国のドナルド・トランプ大統領は、すべての貿易相手国に対して10%の関税を課すという前例のない方針を打ち出し、さらに一部の国(中国、EU、日本など)には20%以上の追加関税を適用した。この突然の発表により、世界の株式市場は混乱し、主要指標は急落。
しかし、トランプは4月9日(水)に突如としてこれらの関税のうち一部(主に同盟国向け)を90日間一時停止すると発表した。結果として市場は反発し、S&P500は2008年の金融危機以来最大の上昇率を記録した。
2. 中国の対応:報復関税125%
中国政府はこれを受けて、4月11日に米国製品に対する報復関税を125%まで引き上げると発表した。これは事実上、米中間の貿易を停止させる水準の関税であり、農産品やエネルギー、製造部品など幅広い品目が対象になっている。
習近平国家主席はこの日、スペイン首相との会談で「一方的な強制(unilateral coercion)には中国とEUが共に対抗すべきだ」と発言。これは米国のやり方に対する国際的な連携を呼びかけるものである。
3. トランプの発言とホワイトハウスの見解
中国の報復にもかかわらず、トランプ大統領は「関税政策は非常にうまくいっている。非常にエキサイティングな展開だ」と主張した。
ホワイトハウス報道官カロライン・レヴィットも「大統領は中国との合意に前向き」と述べつつ、「中国が報復を続ければ、中国自身にとって不利益である」と釘を刺した。
4. 市場操作疑惑:民主党上院議員がSECに調査要求
トランプが自らのSNS(Truth Social)に「今が買い時だ!」と投稿した数時間後に、彼は関税の一時停止を発表し、市場は急反発した。この一連の動きに対して、エリザベス・ウォーレン議員ら民主党の上院議員6名は、証券取引委員会(SEC)に対して、内部情報を利用したインサイダー取引の疑いを調査するよう要請した。
特に、大統領本人やその家族、政権内部の関係者が市場に関する情報を事前に把握して利益を得た可能性が焦点となっている。
5. 欧州・韓国などの反応
・EUと中国は7月に首脳会談を予定しており、米国の「経済的威圧」に対抗する姿勢を強めている。
・ECB(欧州中央銀行)のラガルド総裁は「関税交渉が失敗した場合には行動する用意がある」と明言。
・韓国の通商交渉本部長(チョン・インギョ氏)は、米側に妥協の余地があるとし、韓日ともに合意の道を模索している。
6. 経済への影響
・ドイツのIAB経済研究所によれば、米国の関税政策によってドイツのGDPは1.2%縮小し、雇用者数が9万人減る可能性がある。
・ドルはユーロに対して3年ぶりの安値、円に対しても1.3%下落しており、米国経済の先行きに対する懸念が強まっている。
7. トランプの狙い
トランプ大統領は、貿易交渉の圧力手段として関税政策を使用しており、交渉相手に譲歩を迫る一方で、自らの発言やSNSを通じて市場を動かす手法を取っている。この戦略は短期的な効果をもたらしているが、政策の一貫性や信頼性を損ね、長期的には米国経済に負荷を与える危険性も指摘されている。
【要点】
1.トランプの関税政策と市場の動き
・トランプ大統領が全貿易相手国に10%、一部に20%以上の追加関税を発表(4月2日)
・市場が急落し、世界的な株安が発生
・4月9日、一部の関税を90日間一時停止すると発表し、市場は反発
・S&P500は2008年のリーマンショック以来の最大上昇率を記録
2.中国の報復措置
・中国政府が米国製品に125%の報復関税を発表(4月11日)
・対象は農産品・エネルギー・製造部品など広範囲
・習近平は「一方的な強制に中国とEUは連携して対抗すべき」と発言
3.トランプとホワイトハウスの反応
・トランプ:「関税はうまくいっている。エキサイティングな展開」
・ホワイトハウス報道官:「合意には前向きだが、中国の報復は自らに不利益」
4.市場操作疑惑と調査要求
・トランプがSNSに「今が買い時だ!」と投稿した直後に関税の一時停止を発表
・議会民主党6名がSECにインサイダー取引の調査を要求
・対象はトランプ、家族、政権内部の関係者を含む可能性
5.国際的な反応と連携
・EUと中国が7月に首脳会談を予定、米国に対抗する姿勢
・ECBラガルド総裁:「交渉が失敗すれば行動する用意がある」
・韓国(チョン・インギョ氏):米側に妥協の兆しがあると見て、韓日連携を模索
6.経済的影響
・ドイツ経済研究所:GDP1.2%減、雇用9万人減の可能性
・ドル安が進行:ユーロに対して3年ぶり安値、円に対しても下落
・投資家の間で米国の政策一貫性への不信感が拡大
7.トランプの戦略的意図
・関税を交渉圧力と市場操作の手段として活用
・SNS発言で市場に影響を与え、自身の政策成果を演出
・短期的には効果ありだが、長期的には不信と混乱を招くリスク
【参考】
☞ 経済ナショナリズム
「経済ナショナリズム(Economic Nationalism)」とは、自国の経済的利益を最優先し、国家主導で経済政策を展開する立場を指す。以下に、その定義、特徴、背景、事例、利点と問題点を箇条書きで整理する。
1.定義
・経済ナショナリズム
国家の主権と利益を経済政策の中心に据え、外国依存を減らし、国内産業を保護・育成しようとする思想・政策。
2.主な特徴
・保護主義的関税政策:輸入品に高関税をかけて国内産業を守る
・外国資本規制:外国企業の買収や投資への制限
・戦略産業の育成と補助金:製造業、エネルギー、農業などに国家支援
・通貨安誘導や為替介入:輸出競争力の確保
・移民制限:労働市場の保護と社会不安の回避
3.歴史的背景と現代的復活
・19世紀〜20世紀前半:植民地帝国や新興国で一般的(例:メルカンティリズム)
・戦後期:自由貿易体制(GATT/WTO)が主流となり後退
・2008年リーマン危機以降〜:グローバル化の弊害や国内産業の空洞化への反発から復活傾向
・2020年代:パンデミック・米中対立・ウクライナ戦争・半導体危機などで再び加速
4.代表的事例
・アメリカ(トランプ政権)
⇨ 「アメリカ・ファースト」政策
⇨ 中国への関税戦争(米中貿易戦争)
⇨ NAFTAの再交渉(USMCA)
⇨ 製造業の国内回帰推進
・中国(習近平体制)
⇨ 「国内大循環戦略」・対外依存の低減
⇨ 自国技術開発支援(例:半導体、AI)
・インド
⇨ 「Make in India」政策
⇨ 中国アプリや製品の排除
・日本(戦前)
⇨ 昭和初期のブロック経済体制構築(満州経済圏)
5.利点
・雇用創出:製造業の国内回帰により雇用増加
・産業の再活性化:空洞化した基幹産業の再建
・国家安全保障の強化:エネルギー・食料・技術の自給体制
・政治的独立性の確保:外国依存の排除
6.問題点・批判
・貿易報復・摩擦:関税導入は報復関税を招き、貿易量が縮小
・物価上昇:関税によって輸入品価格が上昇、消費者負担増
・競争力の低下:保護された産業の国際競争力が鈍化
・国際協調の後退:WTOなど多国間体制への不信と弱体化
・国家資本主義化の懸念:市場メカニズムの形骸化
7.関連用語との違い
用語 内容 経済ナショナリズムとの違い
保護主義 主に関税で自国産業を守る政策 経済ナショナリズムの一部にすぎない
経済愛国主義 国家に対する経済的忠誠心の表明 より感情的・象徴的側面が強い
国家資本主義 国家が企業や資本を支配する経済体制 経済ナショナリズムと目的が一致しやすいが、手法は異なる場合もある
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Trump says tariff policy 'doing really well' after China hits US with 125% levy FRANCE24 2025.04.11
https://www.france24.com/en/economy/20250411-live-eu-china-must-resist-unilateral-bullying-xi-tells-spain-s-sanchez?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020250411&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
米パ鉱物協力に内在する5つの戦略的リスク ― 2025年04月12日 18:20
【概要】
米国がパキスタンと進めようとしている「重要鉱物協力」について、5つの戦略的リスクを挙げてその危険性を指摘している。
米国は、いわゆる「第四次産業革命」に必要とされる重要鉱物の確保に向け、ウクライナやコンゴ民主共和国、パキスタンなど、世界各国との協力を模索している。先週、米国の南アジア担当高官がイスラマバードで開催された「パキスタン鉱物投資フォーラム」に出席し、パキスタンの政治・軍事高官らと面会した。その際、トランプ政権がパキスタンとの鉱物協力に関心を持っている旨が伝えられた。
しかし、この協力には以下の5つの戦略的リスクが伴うと指摘されている。
1.米国企業・国民がテロの標的になるリスク
パキスタンにおける主要な鉱物資源の多くは、テロ組織「パキスタン・ターリバーン運動(TTP)」が活動するカイバル・パクトゥンクワ州および、分離独立を求める「バローチスターン解放軍(BLA)」が活動するバローチスターン州に位置している。両組織は米国によりテロ組織に指定されており、BLAは既に中国人技術者などを攻撃している実績があることから、米国の企業や関係者も同様に標的になる可能性が高いとされている。
2.パキスタンによる軍事的便宜要求のリスク
米国がこれらのテロリスクに対応するためとして、パキスタン側から武器供与や軍事協力を要請される恐れがある。だが、パキスタンは既に中国と深い軍事関係を有しており、それでも治安状況が改善されていない。仮に米国が優遇措置を講じた場合、インドとの関係に悪影響を与える可能性がある。これは「アジア回帰」政策を掲げる米国にとっては重大な懸念となる。
3.パキスタン軍による政治的意図のリスク
パキスタン側が鉱物協力を持ちかけた背景には、同国の軍事政権が、米国の「アメリカ・ファースト」派からの圧力をかわす意図がある可能性がある。この派閥は文民主導の民主主義こそが中国牽制に有効と見なしており、軍主導の現政権とは相容れない立場を取っている。そのため、鉱物協力によって米国の政治的圧力を和らげようとする思惑があるとの指摘である。
4.約束不履行のリスク
米国が、鉱物協力の見返りとしてパキスタンに対し、中国との関係を調整することや、アフガニスタンからの鉱物輸送支援、さらにはイランを監視・威圧するCIA拠点の設置といった条件を提示する可能性がある。しかし、これらは一時的な方便であり、実際にはパキスタン側が約束を果たさず、軍部の一部が経済的利益を得るだけに終わるリスクも想定される。
5.米国の「テロとの戦い」への巻き込まれリスク
米国が鉱物権益を守るためにパキスタンと協力し、結果としてTTPやBLAとの戦闘に巻き込まれるおそれがある。「ミッション・クリープ(任務の逸脱拡大)」や「サンクコスト効果(既に投じた資源を無駄にしたくない心理)」により、米国が新たな戦争に深く関与する可能性がある。これによりインドとの関係も悪化し、「アジア回帰」政策の土台が揺らぐ恐れもある。
以上より、パキスタンとの重要鉱物協力は、一見して経済的に魅力があるように見えても、実際には数々の戦略的リスクを伴っており、結果として米国にとって「毒杯(poisoned chalice)」となる可能性があると、筆者は警告している。
【詳細】
1.テロ組織による米国人・企業への攻撃リスク
パキスタンにおける有望な鉱物資源(リチウム、銅、レアアースなど)は、主にカイバル・パクトゥンクワ州およびバローチスターン州に集中している。これらの地域は治安上極めて不安定であり、
・カイバル・パクトゥンクワ州では「ターリバーン運動(TTP)」が、
・バローチスターン州では「バローチスターン解放軍(BLA)」が、
それぞれ国家に対して武装闘争を続けている。
両組織ともに米国政府からテロ組織として指定されており、BLAはこれまで中国人労働者や企業を「資源搾取の象徴」として標的にしてきた。したがって、米国企業がこれらの鉱山開発に参入すれば、中国人と同様に「外部から来た収奪者」と見なされ、攻撃の対象となる蓋然性は高い。
米国国民に人的被害が出た場合、政府として対応を迫られ、結果的に軍事的介入や治安支援といった形でより深く関与せざるを得なくなる危険がある。
2.米国が軍事支援を要請されるリスク
上記の治安リスクに対応する名目で、パキスタン政府や軍が米国に対し、武器や監視技術、情報支援などを要求する可能性がある。これは表向きには「投資保護のための安全措置」であっても、実態としては米国による軍事的関与の拡大を招きかねない。
パキスタンは既に中国から多大な軍事支援を受けており、それでもなお反政府武装勢力の活動は衰えていない。この事実は、追加的な軍備供与が実質的な安全保障には繋がらないことを示している。にもかかわらず、米国が兵器や軍事訓練を提供すれば、インドから「パキスタン寄り」と受け取られ、インドとの関係が冷却化するリスクがある。
インドは米国の「アジア回帰(またはインド太平洋戦略)」における中核的パートナーであるため、その関係が揺らぐことは戦略的に大きな打撃となる。
3.パキスタン軍が米国の対中戦略を妨害する意図を持つリスク
パキスタンの政治構造は、民政と軍部の対立的共存に特徴がある。米国の「アメリカ・ファースト」派や対中強硬派は、民政主導の民主化が対中戦略に有利であると認識している。理由は、文民政府の方が親米であり、中国との関係を再構成しやすいと見なされているためである。
これに対し、パキスタン軍部は長年にわたり中国との戦略的関係を維持してきた。したがって、米国からの政治的圧力が強まる中、軍部がその圧力を和らげるために、「重要鉱物」という経済的利益を提示し、取引材料とする可能性がある。
このような動機に基づく提案は、実質的には米国の対中戦略を鈍らせる結果となる。表面的には協力関係に見えても、実際には米国の戦略的立場を弱体化させる方向に働くリスクがある。
4.米国との合意をパキスタンが反故にするリスク
仮に米国がパキスタン軍部と交渉し、以下のような戦略的譲歩を引き出したとしても、それが誠実に履行される保証はない。
・中国との距離を取る
・アフガニスタンからの鉱物輸送を支援する
・イラン監視のためにCIAの拠点を提供する
これらの条件は、米国が鉱物開発という経済的見返りを得るための前提条件となる可能性があるが、パキスタン側が形式的に同意したのみで、実行に移さない可能性がある。特に、腐敗した軍上層部が鉱物利権により私的利益を得ることを優先した場合、米国側が一方的に不利益を被る構図となる。
5.米国が新たな対テロ戦争に巻き込まれるリスク
上記の要因が複合的に作用した場合、米国が「鉱物権益の保護」という名目で、TTPやBLAとの戦闘に関与するようになる可能性がある。このような軍事関与は、当初は限定的であっても、「ミッション・クリープ(任務の拡大)」や「サンクコスト効果(途中で撤退すると損失が大きいとの心理)」によって、長期化・拡大化する恐れがある。
これは、過去のアフガニスタンやイラクでの米軍の関与と同様のパターンに陥るリスクを内包している。さらに、米国がパキスタン軍とともにバローチ分離主義者やイスラム過激派と戦う構図は、イスラム世界における米国の対テロ政策に対する不信をさらに深め、国際的反発を招く可能性もある。
結論
以上の5つの戦略的リスクを総合的に評価すると、パキスタンとの重要鉱物協力は、経済的メリットが期待される一方で、地政学的・軍事的・外交的コストが極めて大きい。とりわけ、インドとの関係悪化、対中戦略の停滞、対テロ戦争の再燃といった影響は、米国全体のインド太平洋政策を根底から揺るがす可能性がある。ゆえに、コリブコ氏はこの協力関係を「毒杯(poisoned chalice)」と形容し、その慎重な取り扱いを強く促している。
【要点】
1.テロ攻撃の対象となるリスク
・鉱物資源の多くが**武装勢力が活発な地域(カイバル・パクトゥンクワ州、バローチスターン州)**に存在。
・ターリバーン運動(TTP)やバローチスターン解放軍(BLA)は外国資本を敵視しており、中国企業に対する攻撃実績あり。
・米国企業が進出すれば、同様にテロの標的となる可能性が高い。
・米国人に被害が出れば、軍事的・政治的対応を迫られる展開となり得る。
2.米国の軍事支援拡大リスク
・パキスタン側は米国企業の鉱山保護名目で兵器・監視技術などの軍事支援を要請する可能性あり。
・支援に応じれば、パキスタン軍の行動を事実上正当化することになりかねない。
・これにより、インドとの関係悪化(「米国がパキスタン側に偏る」との認識)を招く恐れがある。
・結果的に、米国のインド太平洋戦略全体に悪影響を及ぼす可能性。
3.パキスタン軍による対中戦略の妨害リスク
・パキスタン軍は中国との長年の戦略的関係を維持しており、民政よりも親中傾向が強い。
・米国の対中封じ込め戦略にとって、軍部主導のパキスタンは不安定要因となる。
・鉱物協力を通じて、パキスタン軍が経済的利益と引き換えに表面的協力を装う可能性あり。
・結果として、米国の対中戦略を骨抜きにするリスクがある。
4.合意不履行のリスク
・米国が「鉱物協力」と引き換えに、
⇨ CIAの対イラン活動拠点、
⇨ アフガン経由の鉱物輸送、
⇨ 中国との距離確保
などを要求しても、パキスタン側が約束を守らない可能性が高い。
・とくに軍上層部が鉱物利権を私的利益化すれば、米国は戦略的に裏切られる構図となる。
・過去にもパキスタンは米中双方との間で巧妙に立ち回った歴史がある。
5.新たな対テロ戦争への巻き込まれリスク
・米国企業や資産が攻撃された場合、軍事介入・治安維持部隊派遣といった関与が始まる可能性。
・限定的な支援から始まっても、**任務拡大(ミッション・クリープ)**が発生し、長期化の危険あり。
・結果として、アフガニスタンやイラクと同様の泥沼化に陥る可能性。
・対テロ戦争の再開は、国際的反発・イスラム世界での反米感情悪化を招く懸念もある。
以上が、米パ鉱物協力に内在する5つの戦略的リスクである。コリブコ氏は、これらのリスクが複合的に米国の国益を損なう可能性があると警告しており、安易な協力関係の構築は戦略的失敗に繋がる恐れがあると論じている。
【引用・参照・底本】
Critical Mineral Cooperation With Pakistan Carries With It Five Strategic Risks For The US Andrew Korybko's Newsletter 2025.04.11
https://korybko.substack.com/p/critical-mineral-cooperation-with?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=161160025&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
米国がパキスタンと進めようとしている「重要鉱物協力」について、5つの戦略的リスクを挙げてその危険性を指摘している。
米国は、いわゆる「第四次産業革命」に必要とされる重要鉱物の確保に向け、ウクライナやコンゴ民主共和国、パキスタンなど、世界各国との協力を模索している。先週、米国の南アジア担当高官がイスラマバードで開催された「パキスタン鉱物投資フォーラム」に出席し、パキスタンの政治・軍事高官らと面会した。その際、トランプ政権がパキスタンとの鉱物協力に関心を持っている旨が伝えられた。
しかし、この協力には以下の5つの戦略的リスクが伴うと指摘されている。
1.米国企業・国民がテロの標的になるリスク
パキスタンにおける主要な鉱物資源の多くは、テロ組織「パキスタン・ターリバーン運動(TTP)」が活動するカイバル・パクトゥンクワ州および、分離独立を求める「バローチスターン解放軍(BLA)」が活動するバローチスターン州に位置している。両組織は米国によりテロ組織に指定されており、BLAは既に中国人技術者などを攻撃している実績があることから、米国の企業や関係者も同様に標的になる可能性が高いとされている。
2.パキスタンによる軍事的便宜要求のリスク
米国がこれらのテロリスクに対応するためとして、パキスタン側から武器供与や軍事協力を要請される恐れがある。だが、パキスタンは既に中国と深い軍事関係を有しており、それでも治安状況が改善されていない。仮に米国が優遇措置を講じた場合、インドとの関係に悪影響を与える可能性がある。これは「アジア回帰」政策を掲げる米国にとっては重大な懸念となる。
3.パキスタン軍による政治的意図のリスク
パキスタン側が鉱物協力を持ちかけた背景には、同国の軍事政権が、米国の「アメリカ・ファースト」派からの圧力をかわす意図がある可能性がある。この派閥は文民主導の民主主義こそが中国牽制に有効と見なしており、軍主導の現政権とは相容れない立場を取っている。そのため、鉱物協力によって米国の政治的圧力を和らげようとする思惑があるとの指摘である。
4.約束不履行のリスク
米国が、鉱物協力の見返りとしてパキスタンに対し、中国との関係を調整することや、アフガニスタンからの鉱物輸送支援、さらにはイランを監視・威圧するCIA拠点の設置といった条件を提示する可能性がある。しかし、これらは一時的な方便であり、実際にはパキスタン側が約束を果たさず、軍部の一部が経済的利益を得るだけに終わるリスクも想定される。
5.米国の「テロとの戦い」への巻き込まれリスク
米国が鉱物権益を守るためにパキスタンと協力し、結果としてTTPやBLAとの戦闘に巻き込まれるおそれがある。「ミッション・クリープ(任務の逸脱拡大)」や「サンクコスト効果(既に投じた資源を無駄にしたくない心理)」により、米国が新たな戦争に深く関与する可能性がある。これによりインドとの関係も悪化し、「アジア回帰」政策の土台が揺らぐ恐れもある。
以上より、パキスタンとの重要鉱物協力は、一見して経済的に魅力があるように見えても、実際には数々の戦略的リスクを伴っており、結果として米国にとって「毒杯(poisoned chalice)」となる可能性があると、筆者は警告している。
【詳細】
1.テロ組織による米国人・企業への攻撃リスク
パキスタンにおける有望な鉱物資源(リチウム、銅、レアアースなど)は、主にカイバル・パクトゥンクワ州およびバローチスターン州に集中している。これらの地域は治安上極めて不安定であり、
・カイバル・パクトゥンクワ州では「ターリバーン運動(TTP)」が、
・バローチスターン州では「バローチスターン解放軍(BLA)」が、
それぞれ国家に対して武装闘争を続けている。
両組織ともに米国政府からテロ組織として指定されており、BLAはこれまで中国人労働者や企業を「資源搾取の象徴」として標的にしてきた。したがって、米国企業がこれらの鉱山開発に参入すれば、中国人と同様に「外部から来た収奪者」と見なされ、攻撃の対象となる蓋然性は高い。
米国国民に人的被害が出た場合、政府として対応を迫られ、結果的に軍事的介入や治安支援といった形でより深く関与せざるを得なくなる危険がある。
2.米国が軍事支援を要請されるリスク
上記の治安リスクに対応する名目で、パキスタン政府や軍が米国に対し、武器や監視技術、情報支援などを要求する可能性がある。これは表向きには「投資保護のための安全措置」であっても、実態としては米国による軍事的関与の拡大を招きかねない。
パキスタンは既に中国から多大な軍事支援を受けており、それでもなお反政府武装勢力の活動は衰えていない。この事実は、追加的な軍備供与が実質的な安全保障には繋がらないことを示している。にもかかわらず、米国が兵器や軍事訓練を提供すれば、インドから「パキスタン寄り」と受け取られ、インドとの関係が冷却化するリスクがある。
インドは米国の「アジア回帰(またはインド太平洋戦略)」における中核的パートナーであるため、その関係が揺らぐことは戦略的に大きな打撃となる。
3.パキスタン軍が米国の対中戦略を妨害する意図を持つリスク
パキスタンの政治構造は、民政と軍部の対立的共存に特徴がある。米国の「アメリカ・ファースト」派や対中強硬派は、民政主導の民主化が対中戦略に有利であると認識している。理由は、文民政府の方が親米であり、中国との関係を再構成しやすいと見なされているためである。
これに対し、パキスタン軍部は長年にわたり中国との戦略的関係を維持してきた。したがって、米国からの政治的圧力が強まる中、軍部がその圧力を和らげるために、「重要鉱物」という経済的利益を提示し、取引材料とする可能性がある。
このような動機に基づく提案は、実質的には米国の対中戦略を鈍らせる結果となる。表面的には協力関係に見えても、実際には米国の戦略的立場を弱体化させる方向に働くリスクがある。
4.米国との合意をパキスタンが反故にするリスク
仮に米国がパキスタン軍部と交渉し、以下のような戦略的譲歩を引き出したとしても、それが誠実に履行される保証はない。
・中国との距離を取る
・アフガニスタンからの鉱物輸送を支援する
・イラン監視のためにCIAの拠点を提供する
これらの条件は、米国が鉱物開発という経済的見返りを得るための前提条件となる可能性があるが、パキスタン側が形式的に同意したのみで、実行に移さない可能性がある。特に、腐敗した軍上層部が鉱物利権により私的利益を得ることを優先した場合、米国側が一方的に不利益を被る構図となる。
5.米国が新たな対テロ戦争に巻き込まれるリスク
上記の要因が複合的に作用した場合、米国が「鉱物権益の保護」という名目で、TTPやBLAとの戦闘に関与するようになる可能性がある。このような軍事関与は、当初は限定的であっても、「ミッション・クリープ(任務の拡大)」や「サンクコスト効果(途中で撤退すると損失が大きいとの心理)」によって、長期化・拡大化する恐れがある。
これは、過去のアフガニスタンやイラクでの米軍の関与と同様のパターンに陥るリスクを内包している。さらに、米国がパキスタン軍とともにバローチ分離主義者やイスラム過激派と戦う構図は、イスラム世界における米国の対テロ政策に対する不信をさらに深め、国際的反発を招く可能性もある。
結論
以上の5つの戦略的リスクを総合的に評価すると、パキスタンとの重要鉱物協力は、経済的メリットが期待される一方で、地政学的・軍事的・外交的コストが極めて大きい。とりわけ、インドとの関係悪化、対中戦略の停滞、対テロ戦争の再燃といった影響は、米国全体のインド太平洋政策を根底から揺るがす可能性がある。ゆえに、コリブコ氏はこの協力関係を「毒杯(poisoned chalice)」と形容し、その慎重な取り扱いを強く促している。
【要点】
1.テロ攻撃の対象となるリスク
・鉱物資源の多くが**武装勢力が活発な地域(カイバル・パクトゥンクワ州、バローチスターン州)**に存在。
・ターリバーン運動(TTP)やバローチスターン解放軍(BLA)は外国資本を敵視しており、中国企業に対する攻撃実績あり。
・米国企業が進出すれば、同様にテロの標的となる可能性が高い。
・米国人に被害が出れば、軍事的・政治的対応を迫られる展開となり得る。
2.米国の軍事支援拡大リスク
・パキスタン側は米国企業の鉱山保護名目で兵器・監視技術などの軍事支援を要請する可能性あり。
・支援に応じれば、パキスタン軍の行動を事実上正当化することになりかねない。
・これにより、インドとの関係悪化(「米国がパキスタン側に偏る」との認識)を招く恐れがある。
・結果的に、米国のインド太平洋戦略全体に悪影響を及ぼす可能性。
3.パキスタン軍による対中戦略の妨害リスク
・パキスタン軍は中国との長年の戦略的関係を維持しており、民政よりも親中傾向が強い。
・米国の対中封じ込め戦略にとって、軍部主導のパキスタンは不安定要因となる。
・鉱物協力を通じて、パキスタン軍が経済的利益と引き換えに表面的協力を装う可能性あり。
・結果として、米国の対中戦略を骨抜きにするリスクがある。
4.合意不履行のリスク
・米国が「鉱物協力」と引き換えに、
⇨ CIAの対イラン活動拠点、
⇨ アフガン経由の鉱物輸送、
⇨ 中国との距離確保
などを要求しても、パキスタン側が約束を守らない可能性が高い。
・とくに軍上層部が鉱物利権を私的利益化すれば、米国は戦略的に裏切られる構図となる。
・過去にもパキスタンは米中双方との間で巧妙に立ち回った歴史がある。
5.新たな対テロ戦争への巻き込まれリスク
・米国企業や資産が攻撃された場合、軍事介入・治安維持部隊派遣といった関与が始まる可能性。
・限定的な支援から始まっても、**任務拡大(ミッション・クリープ)**が発生し、長期化の危険あり。
・結果として、アフガニスタンやイラクと同様の泥沼化に陥る可能性。
・対テロ戦争の再開は、国際的反発・イスラム世界での反米感情悪化を招く懸念もある。
以上が、米パ鉱物協力に内在する5つの戦略的リスクである。コリブコ氏は、これらのリスクが複合的に米国の国益を損なう可能性があると警告しており、安易な協力関係の構築は戦略的失敗に繋がる恐れがあると論じている。
【引用・参照・底本】
Critical Mineral Cooperation With Pakistan Carries With It Five Strategic Risks For The US Andrew Korybko's Newsletter 2025.04.11
https://korybko.substack.com/p/critical-mineral-cooperation-with?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=161160025&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email