サウジアラビア:BRICS正式加盟への逡巡 ― 2025年02月05日 19:47
【桃源寸評】
政治は正しく"風見鶏"か。そう云えば"政界の風見鶏"という決まり文句があった。
【寸評 完】
【概要】
サウジアラビアがBRICS正式加盟を保留している理由は、多極的な外交戦略の維持、地政学的リスクの回避、そして経済的利益の確保にある。
第一に、西側諸国からの見方に配慮する必要がある。BRICSは反西側のブロックと見なされることがあり、サウジアラビアが正式加盟すれば、そのイメージを固定化する可能性がある。特に、サウジアラビアは過去に西側と緊密な関係を築いてきたが、近年はインドのように多方面と協調する「マルチアライメント(多極的戦略)」を採用している。この外交路線を崩すことは、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)の戦略にとって望ましくない。
第二に、BRICSの加盟国であるイランとの関係が障害となっている。現在、イランはフーシ派(フーシー派)を支援しており、彼らは紅海での攻撃を活発化させている。この状況下で、サウジアラビアがイランと同じ国際組織に正式加盟することは、外交的な整合性を損ないかねない。また、イランはハマスを支援しており、2023年10月7日の攻撃により、サウジアラビアが重要な役割を担う予定だった「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」の進行が遅れている。
第三に、米国とイスラエルの影響が強く関係している。IMECの主要投資国である両国は、サウジアラビアがイランと同じBRICSに加盟することを歓迎しない可能性が高い。特に、米国のドナルド・トランプ前大統領が再び政権を握る場合、イランに対する「最大限の圧力」政策を再開するとされており、この状況下でBRICS加盟を決定すれば、米国との関係が悪化する恐れがある。IMECは「ビジョン2030」にとって重要なプロジェクトであり、サウジアラビアはその進展を優先するため、米国とイスラエルとの協調を維持する必要がある。
また、BRICS自体が加盟国に明確な経済的利益を提供していない点も考慮される。BRICSはドルに対抗する新通貨を創設するとの誤解があるが、インド外相スブラマニヤム・ジャイシャンカルはこの主張を否定している。それにもかかわらず、トランプ政権がそのような見方をする可能性があり、サウジアラビアがBRICS正式加盟に踏み切れば、経済的な制裁や投資の減少を招く危険がある。
結論として、サウジアラビアはBRICSの知識共有やネットワーク構築の恩恵を受けつつも、正式加盟による政治的・経済的リスクを回避するという合理的な戦略を採っている。この「曖昧な立場」を維持することで、西側諸国と「世界多数派(World Majority)」の間で柔軟に外交関係を調整することが可能となる。このため、サウジアラビアが正式加盟を無期限に先送りする可能性は高い。
【詳細】
サウジアラビアがBRICS正式加盟を保留する理由とその背景
サウジアラビアは、2023年にBRICSから正式な加盟招待を受けたものの、2024年時点でまだ決定を下していない。この遅延は偶然ではなく、サウジアラビアの外交・経済・地政学的な戦略に基づいた慎重な判断である。以下、主な理由を詳述する。
1. 西側諸国との関係維持と「マルチアライメント」戦略
1.1 BRICSの「反西側」イメージを避ける
BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカに加え、新たにエジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、アルゼンチンが加盟予定)は、特にロシアや中国によって「グローバル・サウス(世界多数派)」を代表する勢力として位置づけられている。しかし、米国や欧州諸国はこれを「反西側ブロック」と見なしている。
サウジアラビアは、長年にわたり西側諸国と強固な関係を築いてきたが、近年は「マルチアライメント(多極外交)」を採用し、米国やEUとの関係を維持しつつ、中国やロシアとも協力を深めている。BRICSに正式加盟すれば、サウジアラビアが「反西側ブロック」に属するとの誤解を招き、西側との関係に悪影響を及ぼす可能性がある。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)は、このようなリスクを避けるため、加盟を慎重に検討している。
1.2 インドの戦略を参考にした柔軟な外交政策
サウジアラビアは、インドの外交政策を参考にしている可能性がある。インドはBRICSの創設メンバーでありながら、米国との防衛・経済協力を拡大しており、バランスの取れた外交を展開している。サウジアラビアも、BRICSとの協力を強化しながら、西側との関係を維持することで、最適なポジションを確保しようとしている。
2. イランとの対立と紅海危機
2.1 BRICS加盟国にイランが含まれることへの懸念
サウジアラビアとイランは歴史的に対立関係にあるが、2023年には中国の仲介により国交を正常化した。しかし、両国の根本的な対立は解消されておらず、サウジアラビアがBRICSに加盟すれば、イランと同じ経済・政治グループに属することになる。この状況は、サウジアラビア国内の保守派や安全保障関係者の間で懸念を生んでいる。
2.2 フーシ派(フーシー派)との対立と紅海危機
イランはフーシ派を支援しており、フーシ派は2023年末から紅海での攻撃を活発化させている。サウジアラビアは長年にわたりフーシ派と戦ってきたが、BRICSに加盟すれば、イランと同じ国際組織に属することになり、外交的な整合性を損なう可能性がある。また、紅海危機が継続する中で、サウジアラビアがBRICS加盟を決定すれば、西側諸国からの圧力が強まる可能性もある。
3. 米国とイスラエルの圧力とIMEC(インド・中東・欧州経済回廊)
3.1 米国の対BRICS政策とトランプ政権の影響
ドナルド・トランプ前大統領が2024年に再選される可能性が高まる中、サウジアラビアは米国の対BRICS政策を考慮せざるを得ない。トランプはBRICSを「反米組織」と見なし、特に「BRICSによるドル支配への挑戦」と捉えている。インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相は、BRICSが新通貨を創設する計画はないと明言しているが、トランプがこれを信じない可能性がある。サウジアラビアがBRICSに正式加盟すれば、トランプ政権は報復措置を取る可能性があり、これがサウジアラビアの経済・安全保障政策に影響を及ぼす可能性がある。
3.2 IMEC(インド・中東・欧州経済回廊)の重要性
サウジアラビアにとってIMECは、経済戦略の中心的なプロジェクトである。この回廊は、インドから中東を経由して欧州へと至る経済・物流ネットワークであり、サウジアラビアが主要なハブとなる予定だった。しかし、2023年10月7日のハマスの攻撃により、IMECの進行が遅れている。IMECの成功には、米国とイスラエルの協力が不可欠であり、サウジアラビアがBRICSに加盟すれば、米国とイスラエルの反発を招き、IMECが頓挫する可能性がある。
4. BRICS加盟の経済的利益が不透明
4.1 BRICS加盟国に対する具体的な経済的利益がない
BRICSは経済協力を掲げているが、現時点では加盟国に明確な経済的メリットを提供していない。例えば、BRICS銀行(新開発銀行)は存在するものの、資金供給の規模は限定的であり、サウジアラビアが期待するような大規模投資の支援は期待できない。
4.2 サウジアラビアの経済戦略との整合性
サウジアラビアは「ビジョン2030」に基づき、エネルギー産業の多角化、観光産業の発展、大規模インフラ投資を推進している。BRICSに加盟しても、これらの戦略目標を達成するための直接的な支援は得られない。一方、米国や欧州との経済関係を維持すれば、より確実な投資と技術支援を受けることができる。
結論:サウジアラビアは加盟決定を無期限に先送りする可能性が高い
サウジアラビアがBRICS加盟を決定しない理由は、外交・安全保障・経済の各分野で慎重なバランスを取る必要があるからである。BRICSとの関係を維持しながらも、西側との関係を損なわないようにすることで、最大限の利益を確保しようとしている。MBSはこの戦略を継続し、正式加盟を無期限に先送りする可能性が高い。
【要点】
サウジアラビアがBRICS正式加盟を保留する理由
1. 西側諸国との関係維持と「マルチアライメント」戦略
・BRICSの「反西側」イメージを避ける
⇨ BRICSは中国・ロシア主導で「反西側ブロック」と見なされる傾向がある。
⇨ 加盟すれば、米国やEUとの関係悪化を招く可能性がある。
・インドの戦略を参考にした柔軟な外交政策
⇨ インドはBRICS加盟国でありながら米国とも協力関係を維持している。
⇨ サウジアラビアも同様にバランス外交を志向している。
2. イランとの対立と紅海危機
・BRICS加盟国にイランが含まれることへの懸念
⇨ サウジアラビアとイランは歴史的に対立関係にある。
⇨ BRICS加盟で同じ枠組みに属することは安全保障上のリスクになり得る。
・フーシ派(フーシー派)との対立と紅海危機
⇨ イランが支援するフーシ派が紅海で攻撃を続けており、サウジと緊張関係にある。
⇨ BRICS加盟は、この問題を複雑化させる可能性がある。
3. 米国とイスラエルの圧力とIMEC(インド・中東・欧州経済回廊)
・米国の対BRICS政策とトランプ政権の影響
⇨ トランプ前大統領が再選された場合、BRICS加盟国への圧力を強める可能性がある。
⇨ サウジが加盟すれば、米国の制裁や報復措置を招くリスクがある。
・IMEC(インド・中東・欧州経済回廊)の重要性
⇨ 米国・インド・欧州が推進するIMECはサウジの経済戦略にとって重要。
⇨ BRICS加盟で米国・イスラエルの反発を招けば、IMECの推進が難しくなる。
4. BRICS加盟の経済的利益が不透明
・BRICS加盟国に対する具体的な経済的利益がない
⇨ BRICS銀行(新開発銀行)の資金供給は限定的で、サウジの期待する投資支援は得られにくい。
⇨ 米欧との経済関係を維持したほうが安定した投資と技術支援を確保できる。
・サウジアラビアの経済戦略との整合性
⇨ 「ビジョン2030」に基づくエネルギー多角化や観光業振興とBRICS加盟の直接的な関連が薄い。
⇨ 西側諸国との関係を重視する方が経済発展に資する可能性が高い。
結論
・サウジアラビアはBRICSとの関係を維持しつつ、正式加盟は無期限に先送りする可能性が高い。
・MBSは「マルチアライメント戦略」に基づき、BRICSと西側の両方との関係を慎重に管理している。
【引用・参照・底本】
Saudi Arabia Has Good Reason To Dillydally On Formally Joining BRICS Andrew Korybko's Newsletter 2025.02.05
https://korybko.substack.com/p/saudi-arabia-has-good-reason-to-dillydally?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=156508453&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
政治は正しく"風見鶏"か。そう云えば"政界の風見鶏"という決まり文句があった。
【寸評 完】
【概要】
サウジアラビアがBRICS正式加盟を保留している理由は、多極的な外交戦略の維持、地政学的リスクの回避、そして経済的利益の確保にある。
第一に、西側諸国からの見方に配慮する必要がある。BRICSは反西側のブロックと見なされることがあり、サウジアラビアが正式加盟すれば、そのイメージを固定化する可能性がある。特に、サウジアラビアは過去に西側と緊密な関係を築いてきたが、近年はインドのように多方面と協調する「マルチアライメント(多極的戦略)」を採用している。この外交路線を崩すことは、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)の戦略にとって望ましくない。
第二に、BRICSの加盟国であるイランとの関係が障害となっている。現在、イランはフーシ派(フーシー派)を支援しており、彼らは紅海での攻撃を活発化させている。この状況下で、サウジアラビアがイランと同じ国際組織に正式加盟することは、外交的な整合性を損ないかねない。また、イランはハマスを支援しており、2023年10月7日の攻撃により、サウジアラビアが重要な役割を担う予定だった「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」の進行が遅れている。
第三に、米国とイスラエルの影響が強く関係している。IMECの主要投資国である両国は、サウジアラビアがイランと同じBRICSに加盟することを歓迎しない可能性が高い。特に、米国のドナルド・トランプ前大統領が再び政権を握る場合、イランに対する「最大限の圧力」政策を再開するとされており、この状況下でBRICS加盟を決定すれば、米国との関係が悪化する恐れがある。IMECは「ビジョン2030」にとって重要なプロジェクトであり、サウジアラビアはその進展を優先するため、米国とイスラエルとの協調を維持する必要がある。
また、BRICS自体が加盟国に明確な経済的利益を提供していない点も考慮される。BRICSはドルに対抗する新通貨を創設するとの誤解があるが、インド外相スブラマニヤム・ジャイシャンカルはこの主張を否定している。それにもかかわらず、トランプ政権がそのような見方をする可能性があり、サウジアラビアがBRICS正式加盟に踏み切れば、経済的な制裁や投資の減少を招く危険がある。
結論として、サウジアラビアはBRICSの知識共有やネットワーク構築の恩恵を受けつつも、正式加盟による政治的・経済的リスクを回避するという合理的な戦略を採っている。この「曖昧な立場」を維持することで、西側諸国と「世界多数派(World Majority)」の間で柔軟に外交関係を調整することが可能となる。このため、サウジアラビアが正式加盟を無期限に先送りする可能性は高い。
【詳細】
サウジアラビアがBRICS正式加盟を保留する理由とその背景
サウジアラビアは、2023年にBRICSから正式な加盟招待を受けたものの、2024年時点でまだ決定を下していない。この遅延は偶然ではなく、サウジアラビアの外交・経済・地政学的な戦略に基づいた慎重な判断である。以下、主な理由を詳述する。
1. 西側諸国との関係維持と「マルチアライメント」戦略
1.1 BRICSの「反西側」イメージを避ける
BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカに加え、新たにエジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、アルゼンチンが加盟予定)は、特にロシアや中国によって「グローバル・サウス(世界多数派)」を代表する勢力として位置づけられている。しかし、米国や欧州諸国はこれを「反西側ブロック」と見なしている。
サウジアラビアは、長年にわたり西側諸国と強固な関係を築いてきたが、近年は「マルチアライメント(多極外交)」を採用し、米国やEUとの関係を維持しつつ、中国やロシアとも協力を深めている。BRICSに正式加盟すれば、サウジアラビアが「反西側ブロック」に属するとの誤解を招き、西側との関係に悪影響を及ぼす可能性がある。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)は、このようなリスクを避けるため、加盟を慎重に検討している。
1.2 インドの戦略を参考にした柔軟な外交政策
サウジアラビアは、インドの外交政策を参考にしている可能性がある。インドはBRICSの創設メンバーでありながら、米国との防衛・経済協力を拡大しており、バランスの取れた外交を展開している。サウジアラビアも、BRICSとの協力を強化しながら、西側との関係を維持することで、最適なポジションを確保しようとしている。
2. イランとの対立と紅海危機
2.1 BRICS加盟国にイランが含まれることへの懸念
サウジアラビアとイランは歴史的に対立関係にあるが、2023年には中国の仲介により国交を正常化した。しかし、両国の根本的な対立は解消されておらず、サウジアラビアがBRICSに加盟すれば、イランと同じ経済・政治グループに属することになる。この状況は、サウジアラビア国内の保守派や安全保障関係者の間で懸念を生んでいる。
2.2 フーシ派(フーシー派)との対立と紅海危機
イランはフーシ派を支援しており、フーシ派は2023年末から紅海での攻撃を活発化させている。サウジアラビアは長年にわたりフーシ派と戦ってきたが、BRICSに加盟すれば、イランと同じ国際組織に属することになり、外交的な整合性を損なう可能性がある。また、紅海危機が継続する中で、サウジアラビアがBRICS加盟を決定すれば、西側諸国からの圧力が強まる可能性もある。
3. 米国とイスラエルの圧力とIMEC(インド・中東・欧州経済回廊)
3.1 米国の対BRICS政策とトランプ政権の影響
ドナルド・トランプ前大統領が2024年に再選される可能性が高まる中、サウジアラビアは米国の対BRICS政策を考慮せざるを得ない。トランプはBRICSを「反米組織」と見なし、特に「BRICSによるドル支配への挑戦」と捉えている。インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相は、BRICSが新通貨を創設する計画はないと明言しているが、トランプがこれを信じない可能性がある。サウジアラビアがBRICSに正式加盟すれば、トランプ政権は報復措置を取る可能性があり、これがサウジアラビアの経済・安全保障政策に影響を及ぼす可能性がある。
3.2 IMEC(インド・中東・欧州経済回廊)の重要性
サウジアラビアにとってIMECは、経済戦略の中心的なプロジェクトである。この回廊は、インドから中東を経由して欧州へと至る経済・物流ネットワークであり、サウジアラビアが主要なハブとなる予定だった。しかし、2023年10月7日のハマスの攻撃により、IMECの進行が遅れている。IMECの成功には、米国とイスラエルの協力が不可欠であり、サウジアラビアがBRICSに加盟すれば、米国とイスラエルの反発を招き、IMECが頓挫する可能性がある。
4. BRICS加盟の経済的利益が不透明
4.1 BRICS加盟国に対する具体的な経済的利益がない
BRICSは経済協力を掲げているが、現時点では加盟国に明確な経済的メリットを提供していない。例えば、BRICS銀行(新開発銀行)は存在するものの、資金供給の規模は限定的であり、サウジアラビアが期待するような大規模投資の支援は期待できない。
4.2 サウジアラビアの経済戦略との整合性
サウジアラビアは「ビジョン2030」に基づき、エネルギー産業の多角化、観光産業の発展、大規模インフラ投資を推進している。BRICSに加盟しても、これらの戦略目標を達成するための直接的な支援は得られない。一方、米国や欧州との経済関係を維持すれば、より確実な投資と技術支援を受けることができる。
結論:サウジアラビアは加盟決定を無期限に先送りする可能性が高い
サウジアラビアがBRICS加盟を決定しない理由は、外交・安全保障・経済の各分野で慎重なバランスを取る必要があるからである。BRICSとの関係を維持しながらも、西側との関係を損なわないようにすることで、最大限の利益を確保しようとしている。MBSはこの戦略を継続し、正式加盟を無期限に先送りする可能性が高い。
【要点】
サウジアラビアがBRICS正式加盟を保留する理由
1. 西側諸国との関係維持と「マルチアライメント」戦略
・BRICSの「反西側」イメージを避ける
⇨ BRICSは中国・ロシア主導で「反西側ブロック」と見なされる傾向がある。
⇨ 加盟すれば、米国やEUとの関係悪化を招く可能性がある。
・インドの戦略を参考にした柔軟な外交政策
⇨ インドはBRICS加盟国でありながら米国とも協力関係を維持している。
⇨ サウジアラビアも同様にバランス外交を志向している。
2. イランとの対立と紅海危機
・BRICS加盟国にイランが含まれることへの懸念
⇨ サウジアラビアとイランは歴史的に対立関係にある。
⇨ BRICS加盟で同じ枠組みに属することは安全保障上のリスクになり得る。
・フーシ派(フーシー派)との対立と紅海危機
⇨ イランが支援するフーシ派が紅海で攻撃を続けており、サウジと緊張関係にある。
⇨ BRICS加盟は、この問題を複雑化させる可能性がある。
3. 米国とイスラエルの圧力とIMEC(インド・中東・欧州経済回廊)
・米国の対BRICS政策とトランプ政権の影響
⇨ トランプ前大統領が再選された場合、BRICS加盟国への圧力を強める可能性がある。
⇨ サウジが加盟すれば、米国の制裁や報復措置を招くリスクがある。
・IMEC(インド・中東・欧州経済回廊)の重要性
⇨ 米国・インド・欧州が推進するIMECはサウジの経済戦略にとって重要。
⇨ BRICS加盟で米国・イスラエルの反発を招けば、IMECの推進が難しくなる。
4. BRICS加盟の経済的利益が不透明
・BRICS加盟国に対する具体的な経済的利益がない
⇨ BRICS銀行(新開発銀行)の資金供給は限定的で、サウジの期待する投資支援は得られにくい。
⇨ 米欧との経済関係を維持したほうが安定した投資と技術支援を確保できる。
・サウジアラビアの経済戦略との整合性
⇨ 「ビジョン2030」に基づくエネルギー多角化や観光業振興とBRICS加盟の直接的な関連が薄い。
⇨ 西側諸国との関係を重視する方が経済発展に資する可能性が高い。
結論
・サウジアラビアはBRICSとの関係を維持しつつ、正式加盟は無期限に先送りする可能性が高い。
・MBSは「マルチアライメント戦略」に基づき、BRICSと西側の両方との関係を慎重に管理している。
【引用・参照・底本】
Saudi Arabia Has Good Reason To Dillydally On Formally Joining BRICS Andrew Korybko's Newsletter 2025.02.05
https://korybko.substack.com/p/saudi-arabia-has-good-reason-to-dillydally?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=156508453&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email