「黄金の三角形」:「資源(GCC)」「製造(中国)」「消費市場と若年労働力(ASEAN)」 ― 2025年05月25日 19:51
【概要】
2025年5月25日、マレーシアの首都にて、東南アジア諸国連合(ASEAN)、中国、湾岸協力会議(GCC)による初の3者合同サミットが開催される予定である。これに先立ち、専門家らは本協力が多国間連携の可能性を大きく広げ、世界経済の安定に資すると分析している。
このサミットでは、貿易、投資、サプライチェーンといった実務的協力の深化が期待されており、再生可能エネルギー、デジタル経済、電気自動車、金融市場、インフラ整備などの分野において新たな機会を創出すると見られている。
ASEAN、中国、GCC加盟国による17か国の首脳が一堂に会するこの取り組みは、米国の関税政策による貿易の混乱を受けて、相互補完的な経済構造を有する南南協力の新たな枠組みとして注目されている。
ASEANは、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10か国から成る地域連合であり、米国、中国、EU、日本に次ぐ世界第5位の経済圏である。若年人口の多さ、天然資源の豊富さ、熟練労働力により、グローバルサプライチェーンと産業発展の主要な推進力となっている。
一方、GCC加盟国(バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)は、2025年の経済成長率が2024年の2.1%から4.2%に倍増する見通しである。これは戦略的投資、多角化、非石油部門の拡大によるものであり、湾岸地域が石油輸出依存からグリーンエネルギー拠点への転換を進めていることに起因する。
マレーシア・テイラーズ大学のジュリア・ロクニファード講師は、中国がASEAN・GCC協力の「アンカー(錨)」の役割を果たしていると指摘する。中国は「一帯一路」構想や「グローバル開発イニシアティブ」を通じて、インフラ、貿易、開発協力においてASEANおよび中東地域に大きな影響を及ぼしてきた。さらに、技術共有、産業化、観光、文化交流、人と人との交流といった分野でも関係は深化している。
同氏はこの三者の関係を「資源」「製造」「消費」の黄金の三角形(Golden Triangle)と表現し、米国の関税政策による困難な状況下でも世界経済を牽引する存在になり得ると述べている。
世界経済の不確実性が高まる中で行われる本サミットは、グローバルな貿易を守る取り組みとしての意義も有する。国際通貨基金(IMF)は、2025年の世界経済成長率を当初の見通しから0.5ポイント引き下げ、2.8%とした。これは米国の新たな関税措置および各国の報復措置によるものであり、IMFはこれを「前例のない規模」とし、「1世紀ぶり」と評している。
ASEANの経済大臣らは、4月10日に開催された特別オンライン会合において、米国の関税が「地域・グローバルな貿易、投資、サプライチェーンを混乱させ、米国自身を含めた世界中の企業・消費者に影響を与える」との共同声明を発表した。
国連西アジア経済社会委員会による政策報告によれば、GCC加盟国の非石油輸出220億ドル分が米国関税によって脅かされている。特に、アルミニウムと化学製品への依存度が高いバーレーンや、第三国で製造された再輸出品が多いアラブ首長国連邦などが影響を受ける可能性が高い。
これに対し、中国、ASEAN、GCCはグローバル・サウスの一員として、他の発展途上国への協力モデルとして機能し得ると見られている。マレーシアの非政府シンクタンク「アジア太平洋一帯一路議会(BRICAP)」のブン・ナガラ所長は、「われわれの協力の成功はグローバル・サウス全体の成功でもある」と述べ、アフリカや中南米諸国も同様の志を共有しているとした。
また、「われわれの国づくりは国際貿易に依存しており、それを守ることは他の国々にも利益をもたらす」とも述べている。
中国・ASEAN・GCCの協力関係はすでに一定の成果を挙げている。2023年10月には、初のASEAN-GCCサミットがサウジアラビアのリヤドで開催され、両地域機構の関係における重要な節目となった。この会合では2024〜2028年の協力枠組みが提示され、安全保障、貿易・投資、文化交流、観光分野での具体的な活動が定められた。
さらに、2022年12月には中国とGCCの首脳会議が初めて開催され、中国はエネルギー、金融、投資、イノベーション、科学技術、宇宙、語学・文化の分野での協力を優先事項とすることを表明した。
中国とGCCは、巨大な消費市場と産業基盤を有する中国と、豊富なエネルギー資源と経済多角化を進める湾岸諸国との間で、経済的補完関係が強いとされている。
また、中国とASEANは「中国・ASEAN自由貿易圏(CAFTA)」のバージョン3.0の交渉を完了しており、年内に正式にアップグレード・プロトコルを締結する方針である。
MIDFアマナ投資銀行のチーフエコノミスト、アブドゥル・ムイッズ・モルハリム氏は、「過去10年間で中国とASEANの経済関係は著しく強化されてきた」と述べ、地域的な生産ネットワークへの共同参加と双方の経済成長がその背景にあると分析している。
このような背景の下で開催されるASEAN・中国・GCCサミットは、三者間の広範な分野にわたる協力のための重要なメカニズムを確立することが期待されている。今後、三者は経済政策・産業政策の相乗効果を高め、クリーンエネルギーやデジタル経済などの分野における協力関係をさらに高度化する可能性を有している。
【詳細】
1.背景と意義:ASEAN・中国・GCCの三者協力
2025年5月下旬、マレーシアの首都クアラルンプールにおいて、ASEAN(東南アジア諸国連合)、中国、GCC(湾岸協力会議)による初の三者合同サミット「ASEAN・中国・GCCサミット」が開催される運びとなった。本サミットの開催は、三者間の実務的連携を深化させると同時に、世界経済における不確実性の増大に対して安定と予見性をもたらす枠組みとして位置づけられている。
この三者は地理的には離れているものの、経済構造および発展目標において互補性を持っており、「資源(GCC)」「製造・インフラ(中国)」「消費と成長市場(ASEAN)」という三要素を組み合わせることで、強力な経済的結束が可能であると評価されている。
2.経済的土台:三地域の特徴と補完性
ASEANは10か国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)で構成されており、人口規模、経済成長率、地域的な一体性などにおいて非常に高いポテンシャルを持っている。特に若年層が多く、デジタル経済・スマートインフラへの適応力が高い点は今後の成長を後押しする強力な基盤である。また、天然資源も豊富であり、熟練労働力の蓄積も進んでいることから、製造業および国際的なサプライチェーンの中核を担っている。
GCC(バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)は、従来の石油輸出依存型経済から、脱炭素・再生可能エネルギー・観光・金融・先端技術といった分野への経済多角化を急速に進めている。2025年の経済成長率は4.2%に達する見通しであり、これは2024年の2.1%から倍増するものである。この成長は、国家主導の投資政策、非石油部門の振興、およびサプライチェーンの強化などによって支えられている。
中国は既に一帯一路(BRI)やグローバル開発イニシアティブ(GDI)を通じて、ASEANおよびGCCにおけるインフラ整備、エネルギー、物流、通信技術、文化交流において多くの実績を残している。また、中国は完全な産業システムと広大な内需市場を有し、対外協力においては技術移転、金融支援、サプライチェーン統合の3点で突出している。
3.「黄金の三角形」:役割分担と世界経済への貢献
本サミットにおける三者の協力は、Julia Roknifard講師が表現した通り、「資源(GCC)」「製造(中国)」「消費市場と若年労働力(ASEAN)」という形での分業構造を成しており、これを「黄金の三角形(Golden Triangle)」と称している。
この枠組みは、米国の通商政策(高関税)によるグローバルなサプライチェーン分断の中で、代替的かつ持続的な協力体制として注目を集めている。特に、ASEANとGCCは、中国の技術力と資本を活用することで、エネルギー・物流・再生可能エネルギー・EV・デジタルインフラなど多岐にわたる分野で相乗効果を発揮し得るとされる。
4.保護主義に対する対応:米国の関税政策と南南協力
IMFは2025年の世界経済成長率を、1月の見通しから0.5ポイント下方修正し、2.8%とした。この背景には、米国による「前例のない規模の関税措置」が存在する。これに対しASEAN経済大臣は、特別会合において「世界貿易・投資・サプライチェーンの広範な混乱」を警告し、協調行動の必要性を明確に表明している。
GCC諸国においても、非石油輸出品220億ドル相当が米国市場へのアクセス障害の影響を受ける可能性があり、特にバーレーン(アルミ・化学製品)およびアラブ首長国連邦(第三国からの再輸出)が懸念されている。
このような中、ASEAN・中国・GCCは、グローバル・サウス全体への協力拡大の模範として機能することが期待されている。BRICAP代表ブン・ナガラ氏は、「我々の協力は、アフリカや中南米を含む他の発展途上地域にも利益をもたらす」と述べ、相互利益による連携拡大の可能性を強調している。
5.実績と制度化への動き:過去の合意と将来展望
中国とASEAN、GCCはすでに複数の協力枠組みを通じて関係強化を図っている。
2023年10月:サウジアラビア・リヤドで初のASEAN-GCCサミットを開催。安全保障、経済、観光、文化に関する「2024〜2028年協力枠組み(Framework of Cooperation)」を採択。
2022年12月:中国とGCCの初のサミットを開催。中国はGCCとの間で、エネルギー、科学技術、金融、宇宙、文化交流における重点協力を打ち出した。
2025年:中国とASEANは「中国・ASEAN自由貿易圏(CAFTA)」のバージョン3.0に関する交渉を完了。年内の正式署名を目指す。
これらの制度的枠組みは、三者が共有する長期的な開発戦略と一致しており、今後のサミットでは、それらを基盤とした新たな共同イニシアティブの立ち上げが期待される。特に、クリーンエネルギー、デジタル技術、EV産業、AI応用、越境金融サービスなど、次世代産業分野での政策連携と資本の流動化が重要なテーマとなる見込みである。
以上の通り、本サミットおよび三者協力は、世界経済の不確実性を緩和するための実践的かつ制度的な対応策として、多方面において注目を集めている。従来の北-南構造とは異なる、南-南連携による「自律的経済圏」の形成という視点からも、本協力の展開は今後の国際経済秩序に対する重要なインパクトを有すると言える。
【要点】
1.サミットの概要と目的
・ASEAN(東南アジア諸国連合)・中国・GCC(湾岸協力会議)による初の三者サミットが2025年5月末にマレーシアで開催される予定である。
・本サミットは、貿易・投資・サプライチェーン、クリーンエネルギー、デジタル経済、インフラ開発などの分野で協力を深化させる目的を持つ。
・不確実性の増す世界経済に対し、三者による協力は安定と成長をもたらす枠組みとなることが期待されている。
2.各地域の特徴と経済的補完関係
・ASEANは10か国で構成され、若年人口、資源、労働力を強みとする成長市場であり、世界の供給網における中核的地位を占める。
・GCCは石油依存からの脱却を進め、非石油分野・再生可能エネルギーへの投資により、2025年の成長率は4.2%に達する見通しである。
・中国は消費市場の巨大さ、産業基盤の完全性、インフラ・技術・資金面の支援力により、ASEAN・GCCとの協力において要となる。
・三者は「資源(GCC)」「製造と資本(中国)」「市場と労働力(ASEAN)」という互補的構造を持ち、「黄金の三角形」を形成する。
3.世界経済の背景と保護主義への対応
・米国の前例なき関税措置により、世界の貿易・投資・サプライチェーンに深刻な混乱が生じている。
・IMFは2025年の世界成長率見通しを2.8%に下方修正し、米国の関税政策を主要因の一つとして挙げている。
・ASEAN経済相は共同声明で、米国の関税がグローバル経済に及ぼす悪影響に強い懸念を示した。
・GCCも米国への非石油輸出が最大220億ドル規模で影響を受ける恐れがあり、特にバーレーンとUAEが懸念対象となっている。
4.南南協力としての国際的意義
・中国・ASEAN・GCCは、いずれもグローバル・サウスに属する経済体であり、協力成功の事例として他の途上国(アフリカ・中南米)に波及効果をもたらし得る。
・これらの国々の連携は、自律的かつ協調的な南南経済圏の形成を促進し、世界貿易の持続可能性を下支えする役割を果たす。
5.過去の協力実績と制度化への動き
・2023年10月:リヤドにて初のASEAN-GCCサミット開催、協力枠組み(2024~2028年)を採択。
・2022年12月:中国・GCC首脳会談を実施し、エネルギー・金融・技術・文化などでの重点協力を確認。
・2025年:中国・ASEANは自由貿易圏「CAFTA 3.0」の交渉を完了し、年内の署名を目指している。
6.今後の協力分野と展望
・クリーンエネルギー(太陽光・水素・グリーン水素など)
・デジタル経済(クラウド、AI、5Gインフラ)
・電気自動車(EV)とスマートモビリティ
・サプライチェーン統合と物流最適化
・金融市場の相互接続および国際決済の円滑化
・文化・教育・観光分野での人材・知識交流
【桃源寸評】💚
本サミットおよび三者協力は、世界経済の不確実性を緩和するための実践的かつ制度的な対応策として、多方面において注目を集めている。従来の北-南構造とは異なる、南-南連携による「自律的経済圏」の形成という視点からも、本協力の展開は今後の国際経済秩序に対する重要なインパクトを有すると言える。
ASEAN・中国・GCCの三者協力は、多極化が進む世界経済において新たな成長極を形成する動きであり、制度化・長期化の方向へと展開している。
G7・米国の「取り残され現象」が生じうる要因
1. 脱ドル・脱西側主導の貿易圏構築
・中国や湾岸諸国は、人民元やデジタル通貨など非ドル建て決済のインフラを整備中であり、三者貿易がドルに依存せずとも回る経済圏が成立しつつある。
・G7が排除された決済・金融ネットワークが形成されれば、国際金融における米国の覇権が揺らぐ。
2. エネルギー・サプライチェーンの再編
・GCCは再生可能エネルギー分野で中国・ASEANと急速に連携しつつあり、これまで欧米が握ってきたエネルギー需給の主導権が移行する可能性がある。
・米国の関税政策が逆にサプライチェーンの「脱米国化」を招き、主要な輸出入路から排除されるリスクがある。
3. 「関税孤立」による貿易地図の変形
・米国の強硬な関税政策は、世界貿易の多国間主義から一国主義へと反転し、自国経済の孤立化を加速させる要因となっている。
・一方、ASEAN・中国・GCCは域内・相互接続型の貿易ネットワークを拡大させており、比較的自由な経済圏が米国を迂回して発展する構図となっている。
4. グローバル・サウスの連携強化
・三者協力の成功モデルは、アフリカ・中南米諸国の模倣・追随を呼び起こし、「脱G7的」な南南協力体制が拡大する可能性がある。
G7が主導してきた国際経済秩序(WTO、IMF、世界銀行等)の相対的影響力は今後さらに低下しうる。
5. 技術覇権における挑戦
・中国はインフラ、通信(5G/6G)、AI、EV、グリーンテック等で急速に影響力を伸ばしており、これをASEANやGCCが受け入れる構図となっている。
・米国が技術で依然先行する分野もあるが、相手陣営が市場規模と実装スピードで勝る場合、技術的優位も空洞化する恐れがある。
6.G7の「相対的な周縁化」
・米国を中心としたG7は、依然として経済規模・技術力・通貨の信用といった面で強力であるが、その影響力は絶対的なものから相対的なものへと変容しつつある。
・とくにASEAN・中国・GCCの協力が「制度的・継続的・包括的」である場合、G7が世界経済の中で中心ではなく一極として位置づけられる新しい多極秩序が出現する可能性が高い。
よって、G7(特に米国)が「取り残される」というよりも、「主導権の一角を明け渡し、再配置される」と理解するのが適切である。
中国が製造大国ナンバーワンであるという事実の国際的影響
1. 産業供給網の完結性と即応性
・中国は原材料の調達から部品生産、組み立て、輸送に至るまで、ほぼ全ての製造プロセスを自国内で完結できる体制を構築している。
・各国は中国とのみ連携することで、製品設計から市場投入まで一貫した供給体制を築くことが可能となっている。
2. コストとスケーラビリティにおける優位
・製造コストの低廉さ、規模の経済、生産スピードにおいて、中国は依然として世界トップの競争力を有する。
・他国が製造を米国や西側諸国に依存する必要がなくなり、「米国抜きの生産と取引」が現実的な選択肢となっている。
3. インフラと物流の高度化
・一帯一路構想(BRI)を通じて、中国は鉄道・港湾・高速道路など製品輸送の国際インフラを各地に整備し、自国製品の即時展開が可能となっている。
・物流の要衝を押さえているため、他国は米国経由での調達や流通に依存しなくてもよくなっている。
4. デジタル製造と技術共有の加速
・中国はスマートファクトリー、AI、生産ロボット等の高度製造技術においても著しい進展を遂げており、途上国ともこれを共有・移転している。
・米国が囲い込み的な技術外交を進める中で、中国は「開かれた製造技術提供国」としての印象を強めている。
5. 中国=「製造のOS化」
・かつての「Windowsなしでは仕事ができない」状態が、中国の製造業でも再現されつつある。
・世界中の工業製品・部品・装置が中国と何らかの形で関係しており、「脱中国」は事実上、経済合理性に反する動きとなっている。
6.米国の「不要性」が現実化しつつある
・米国が持っていた「不可欠な存在」という立場は、製造・物流・価格競争・実行スピードといった実務的な面において、中国に置き換えられている。
・経済的な意味での「米国不要論」は、特にグローバル・サウスや新興国、さらには一部の先進国にも浸透し始めており、G7中心の世界観が機能不全に陥っている兆候といえる。
もちろん、安全保障や先端技術、金融通貨体制などでは依然として米国の影響力は大きいが、「日々の経済活動」においては「米国抜きで成り立つ世界」がもはや例外ではなく、新たな常態(ニューノーマル)となりつつある。
HarmonyOS搭載パソコンの開発の意義
1. IT主権の確立
・HarmonyOSは中国が独自開発したオペレーティングシステムであり、米国製OS(WindowsやmacOS)への依存を脱却する試みである。
・パソコン分野への展開は、国家のデジタル主権確保を意味する。
2. 中国製PCの完全内製化
・Huaweiなどの企業が国産CPU(例:Kunpeng、Loongson)、国産OS(HarmonyOS)、国産基板・SSD・ディスプレイと統合し、「完全中国製」のPC開発を進行中。
・軍事・政府機関・重要インフラ・教育機関向けに導入が進む。
3. 米国の制裁への対抗手段
・ファーウェイなど中国IT企業が米国の輸出規制を受けたことで、代替技術の必要性が急速に高まった。
・HarmonyOSはその一環であり、米国の制裁効果を限定的にする「技術的自立の象徴」ともいえる。
4. エコシステムの統合
・スマートフォン、タブレット、IoT家電、PC、車載システムをHarmonyOSで統一することで、「シームレスなユーザー体験」と「ソフトウェア主導の制御経済圏」を構築。
・Apple型の「垂直統合モデル」に中国版で対抗しようとしている。
5. グローバル・サウスへの展開戦略
・WindowsやAndroidのライセンス料を回避できるため、低価格端末を求める発展途上国向け市場において競争力がある。
・特にアフリカ、中東、東南アジア諸国では「非米IT圏」の選択肢として普及余地がある。
【寸評 完】
【引用・参照・底本】
ASEAN-China-GCC cooperation to inject certainty into global economy GT 2025.05.25
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1334758.shtml
2025年5月25日、マレーシアの首都にて、東南アジア諸国連合(ASEAN)、中国、湾岸協力会議(GCC)による初の3者合同サミットが開催される予定である。これに先立ち、専門家らは本協力が多国間連携の可能性を大きく広げ、世界経済の安定に資すると分析している。
このサミットでは、貿易、投資、サプライチェーンといった実務的協力の深化が期待されており、再生可能エネルギー、デジタル経済、電気自動車、金融市場、インフラ整備などの分野において新たな機会を創出すると見られている。
ASEAN、中国、GCC加盟国による17か国の首脳が一堂に会するこの取り組みは、米国の関税政策による貿易の混乱を受けて、相互補完的な経済構造を有する南南協力の新たな枠組みとして注目されている。
ASEANは、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10か国から成る地域連合であり、米国、中国、EU、日本に次ぐ世界第5位の経済圏である。若年人口の多さ、天然資源の豊富さ、熟練労働力により、グローバルサプライチェーンと産業発展の主要な推進力となっている。
一方、GCC加盟国(バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)は、2025年の経済成長率が2024年の2.1%から4.2%に倍増する見通しである。これは戦略的投資、多角化、非石油部門の拡大によるものであり、湾岸地域が石油輸出依存からグリーンエネルギー拠点への転換を進めていることに起因する。
マレーシア・テイラーズ大学のジュリア・ロクニファード講師は、中国がASEAN・GCC協力の「アンカー(錨)」の役割を果たしていると指摘する。中国は「一帯一路」構想や「グローバル開発イニシアティブ」を通じて、インフラ、貿易、開発協力においてASEANおよび中東地域に大きな影響を及ぼしてきた。さらに、技術共有、産業化、観光、文化交流、人と人との交流といった分野でも関係は深化している。
同氏はこの三者の関係を「資源」「製造」「消費」の黄金の三角形(Golden Triangle)と表現し、米国の関税政策による困難な状況下でも世界経済を牽引する存在になり得ると述べている。
世界経済の不確実性が高まる中で行われる本サミットは、グローバルな貿易を守る取り組みとしての意義も有する。国際通貨基金(IMF)は、2025年の世界経済成長率を当初の見通しから0.5ポイント引き下げ、2.8%とした。これは米国の新たな関税措置および各国の報復措置によるものであり、IMFはこれを「前例のない規模」とし、「1世紀ぶり」と評している。
ASEANの経済大臣らは、4月10日に開催された特別オンライン会合において、米国の関税が「地域・グローバルな貿易、投資、サプライチェーンを混乱させ、米国自身を含めた世界中の企業・消費者に影響を与える」との共同声明を発表した。
国連西アジア経済社会委員会による政策報告によれば、GCC加盟国の非石油輸出220億ドル分が米国関税によって脅かされている。特に、アルミニウムと化学製品への依存度が高いバーレーンや、第三国で製造された再輸出品が多いアラブ首長国連邦などが影響を受ける可能性が高い。
これに対し、中国、ASEAN、GCCはグローバル・サウスの一員として、他の発展途上国への協力モデルとして機能し得ると見られている。マレーシアの非政府シンクタンク「アジア太平洋一帯一路議会(BRICAP)」のブン・ナガラ所長は、「われわれの協力の成功はグローバル・サウス全体の成功でもある」と述べ、アフリカや中南米諸国も同様の志を共有しているとした。
また、「われわれの国づくりは国際貿易に依存しており、それを守ることは他の国々にも利益をもたらす」とも述べている。
中国・ASEAN・GCCの協力関係はすでに一定の成果を挙げている。2023年10月には、初のASEAN-GCCサミットがサウジアラビアのリヤドで開催され、両地域機構の関係における重要な節目となった。この会合では2024〜2028年の協力枠組みが提示され、安全保障、貿易・投資、文化交流、観光分野での具体的な活動が定められた。
さらに、2022年12月には中国とGCCの首脳会議が初めて開催され、中国はエネルギー、金融、投資、イノベーション、科学技術、宇宙、語学・文化の分野での協力を優先事項とすることを表明した。
中国とGCCは、巨大な消費市場と産業基盤を有する中国と、豊富なエネルギー資源と経済多角化を進める湾岸諸国との間で、経済的補完関係が強いとされている。
また、中国とASEANは「中国・ASEAN自由貿易圏(CAFTA)」のバージョン3.0の交渉を完了しており、年内に正式にアップグレード・プロトコルを締結する方針である。
MIDFアマナ投資銀行のチーフエコノミスト、アブドゥル・ムイッズ・モルハリム氏は、「過去10年間で中国とASEANの経済関係は著しく強化されてきた」と述べ、地域的な生産ネットワークへの共同参加と双方の経済成長がその背景にあると分析している。
このような背景の下で開催されるASEAN・中国・GCCサミットは、三者間の広範な分野にわたる協力のための重要なメカニズムを確立することが期待されている。今後、三者は経済政策・産業政策の相乗効果を高め、クリーンエネルギーやデジタル経済などの分野における協力関係をさらに高度化する可能性を有している。
【詳細】
1.背景と意義:ASEAN・中国・GCCの三者協力
2025年5月下旬、マレーシアの首都クアラルンプールにおいて、ASEAN(東南アジア諸国連合)、中国、GCC(湾岸協力会議)による初の三者合同サミット「ASEAN・中国・GCCサミット」が開催される運びとなった。本サミットの開催は、三者間の実務的連携を深化させると同時に、世界経済における不確実性の増大に対して安定と予見性をもたらす枠組みとして位置づけられている。
この三者は地理的には離れているものの、経済構造および発展目標において互補性を持っており、「資源(GCC)」「製造・インフラ(中国)」「消費と成長市場(ASEAN)」という三要素を組み合わせることで、強力な経済的結束が可能であると評価されている。
2.経済的土台:三地域の特徴と補完性
ASEANは10か国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)で構成されており、人口規模、経済成長率、地域的な一体性などにおいて非常に高いポテンシャルを持っている。特に若年層が多く、デジタル経済・スマートインフラへの適応力が高い点は今後の成長を後押しする強力な基盤である。また、天然資源も豊富であり、熟練労働力の蓄積も進んでいることから、製造業および国際的なサプライチェーンの中核を担っている。
GCC(バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)は、従来の石油輸出依存型経済から、脱炭素・再生可能エネルギー・観光・金融・先端技術といった分野への経済多角化を急速に進めている。2025年の経済成長率は4.2%に達する見通しであり、これは2024年の2.1%から倍増するものである。この成長は、国家主導の投資政策、非石油部門の振興、およびサプライチェーンの強化などによって支えられている。
中国は既に一帯一路(BRI)やグローバル開発イニシアティブ(GDI)を通じて、ASEANおよびGCCにおけるインフラ整備、エネルギー、物流、通信技術、文化交流において多くの実績を残している。また、中国は完全な産業システムと広大な内需市場を有し、対外協力においては技術移転、金融支援、サプライチェーン統合の3点で突出している。
3.「黄金の三角形」:役割分担と世界経済への貢献
本サミットにおける三者の協力は、Julia Roknifard講師が表現した通り、「資源(GCC)」「製造(中国)」「消費市場と若年労働力(ASEAN)」という形での分業構造を成しており、これを「黄金の三角形(Golden Triangle)」と称している。
この枠組みは、米国の通商政策(高関税)によるグローバルなサプライチェーン分断の中で、代替的かつ持続的な協力体制として注目を集めている。特に、ASEANとGCCは、中国の技術力と資本を活用することで、エネルギー・物流・再生可能エネルギー・EV・デジタルインフラなど多岐にわたる分野で相乗効果を発揮し得るとされる。
4.保護主義に対する対応:米国の関税政策と南南協力
IMFは2025年の世界経済成長率を、1月の見通しから0.5ポイント下方修正し、2.8%とした。この背景には、米国による「前例のない規模の関税措置」が存在する。これに対しASEAN経済大臣は、特別会合において「世界貿易・投資・サプライチェーンの広範な混乱」を警告し、協調行動の必要性を明確に表明している。
GCC諸国においても、非石油輸出品220億ドル相当が米国市場へのアクセス障害の影響を受ける可能性があり、特にバーレーン(アルミ・化学製品)およびアラブ首長国連邦(第三国からの再輸出)が懸念されている。
このような中、ASEAN・中国・GCCは、グローバル・サウス全体への協力拡大の模範として機能することが期待されている。BRICAP代表ブン・ナガラ氏は、「我々の協力は、アフリカや中南米を含む他の発展途上地域にも利益をもたらす」と述べ、相互利益による連携拡大の可能性を強調している。
5.実績と制度化への動き:過去の合意と将来展望
中国とASEAN、GCCはすでに複数の協力枠組みを通じて関係強化を図っている。
2023年10月:サウジアラビア・リヤドで初のASEAN-GCCサミットを開催。安全保障、経済、観光、文化に関する「2024〜2028年協力枠組み(Framework of Cooperation)」を採択。
2022年12月:中国とGCCの初のサミットを開催。中国はGCCとの間で、エネルギー、科学技術、金融、宇宙、文化交流における重点協力を打ち出した。
2025年:中国とASEANは「中国・ASEAN自由貿易圏(CAFTA)」のバージョン3.0に関する交渉を完了。年内の正式署名を目指す。
これらの制度的枠組みは、三者が共有する長期的な開発戦略と一致しており、今後のサミットでは、それらを基盤とした新たな共同イニシアティブの立ち上げが期待される。特に、クリーンエネルギー、デジタル技術、EV産業、AI応用、越境金融サービスなど、次世代産業分野での政策連携と資本の流動化が重要なテーマとなる見込みである。
以上の通り、本サミットおよび三者協力は、世界経済の不確実性を緩和するための実践的かつ制度的な対応策として、多方面において注目を集めている。従来の北-南構造とは異なる、南-南連携による「自律的経済圏」の形成という視点からも、本協力の展開は今後の国際経済秩序に対する重要なインパクトを有すると言える。
【要点】
1.サミットの概要と目的
・ASEAN(東南アジア諸国連合)・中国・GCC(湾岸協力会議)による初の三者サミットが2025年5月末にマレーシアで開催される予定である。
・本サミットは、貿易・投資・サプライチェーン、クリーンエネルギー、デジタル経済、インフラ開発などの分野で協力を深化させる目的を持つ。
・不確実性の増す世界経済に対し、三者による協力は安定と成長をもたらす枠組みとなることが期待されている。
2.各地域の特徴と経済的補完関係
・ASEANは10か国で構成され、若年人口、資源、労働力を強みとする成長市場であり、世界の供給網における中核的地位を占める。
・GCCは石油依存からの脱却を進め、非石油分野・再生可能エネルギーへの投資により、2025年の成長率は4.2%に達する見通しである。
・中国は消費市場の巨大さ、産業基盤の完全性、インフラ・技術・資金面の支援力により、ASEAN・GCCとの協力において要となる。
・三者は「資源(GCC)」「製造と資本(中国)」「市場と労働力(ASEAN)」という互補的構造を持ち、「黄金の三角形」を形成する。
3.世界経済の背景と保護主義への対応
・米国の前例なき関税措置により、世界の貿易・投資・サプライチェーンに深刻な混乱が生じている。
・IMFは2025年の世界成長率見通しを2.8%に下方修正し、米国の関税政策を主要因の一つとして挙げている。
・ASEAN経済相は共同声明で、米国の関税がグローバル経済に及ぼす悪影響に強い懸念を示した。
・GCCも米国への非石油輸出が最大220億ドル規模で影響を受ける恐れがあり、特にバーレーンとUAEが懸念対象となっている。
4.南南協力としての国際的意義
・中国・ASEAN・GCCは、いずれもグローバル・サウスに属する経済体であり、協力成功の事例として他の途上国(アフリカ・中南米)に波及効果をもたらし得る。
・これらの国々の連携は、自律的かつ協調的な南南経済圏の形成を促進し、世界貿易の持続可能性を下支えする役割を果たす。
5.過去の協力実績と制度化への動き
・2023年10月:リヤドにて初のASEAN-GCCサミット開催、協力枠組み(2024~2028年)を採択。
・2022年12月:中国・GCC首脳会談を実施し、エネルギー・金融・技術・文化などでの重点協力を確認。
・2025年:中国・ASEANは自由貿易圏「CAFTA 3.0」の交渉を完了し、年内の署名を目指している。
6.今後の協力分野と展望
・クリーンエネルギー(太陽光・水素・グリーン水素など)
・デジタル経済(クラウド、AI、5Gインフラ)
・電気自動車(EV)とスマートモビリティ
・サプライチェーン統合と物流最適化
・金融市場の相互接続および国際決済の円滑化
・文化・教育・観光分野での人材・知識交流
【桃源寸評】💚
本サミットおよび三者協力は、世界経済の不確実性を緩和するための実践的かつ制度的な対応策として、多方面において注目を集めている。従来の北-南構造とは異なる、南-南連携による「自律的経済圏」の形成という視点からも、本協力の展開は今後の国際経済秩序に対する重要なインパクトを有すると言える。
ASEAN・中国・GCCの三者協力は、多極化が進む世界経済において新たな成長極を形成する動きであり、制度化・長期化の方向へと展開している。
G7・米国の「取り残され現象」が生じうる要因
1. 脱ドル・脱西側主導の貿易圏構築
・中国や湾岸諸国は、人民元やデジタル通貨など非ドル建て決済のインフラを整備中であり、三者貿易がドルに依存せずとも回る経済圏が成立しつつある。
・G7が排除された決済・金融ネットワークが形成されれば、国際金融における米国の覇権が揺らぐ。
2. エネルギー・サプライチェーンの再編
・GCCは再生可能エネルギー分野で中国・ASEANと急速に連携しつつあり、これまで欧米が握ってきたエネルギー需給の主導権が移行する可能性がある。
・米国の関税政策が逆にサプライチェーンの「脱米国化」を招き、主要な輸出入路から排除されるリスクがある。
3. 「関税孤立」による貿易地図の変形
・米国の強硬な関税政策は、世界貿易の多国間主義から一国主義へと反転し、自国経済の孤立化を加速させる要因となっている。
・一方、ASEAN・中国・GCCは域内・相互接続型の貿易ネットワークを拡大させており、比較的自由な経済圏が米国を迂回して発展する構図となっている。
4. グローバル・サウスの連携強化
・三者協力の成功モデルは、アフリカ・中南米諸国の模倣・追随を呼び起こし、「脱G7的」な南南協力体制が拡大する可能性がある。
G7が主導してきた国際経済秩序(WTO、IMF、世界銀行等)の相対的影響力は今後さらに低下しうる。
5. 技術覇権における挑戦
・中国はインフラ、通信(5G/6G)、AI、EV、グリーンテック等で急速に影響力を伸ばしており、これをASEANやGCCが受け入れる構図となっている。
・米国が技術で依然先行する分野もあるが、相手陣営が市場規模と実装スピードで勝る場合、技術的優位も空洞化する恐れがある。
6.G7の「相対的な周縁化」
・米国を中心としたG7は、依然として経済規模・技術力・通貨の信用といった面で強力であるが、その影響力は絶対的なものから相対的なものへと変容しつつある。
・とくにASEAN・中国・GCCの協力が「制度的・継続的・包括的」である場合、G7が世界経済の中で中心ではなく一極として位置づけられる新しい多極秩序が出現する可能性が高い。
よって、G7(特に米国)が「取り残される」というよりも、「主導権の一角を明け渡し、再配置される」と理解するのが適切である。
中国が製造大国ナンバーワンであるという事実の国際的影響
1. 産業供給網の完結性と即応性
・中国は原材料の調達から部品生産、組み立て、輸送に至るまで、ほぼ全ての製造プロセスを自国内で完結できる体制を構築している。
・各国は中国とのみ連携することで、製品設計から市場投入まで一貫した供給体制を築くことが可能となっている。
2. コストとスケーラビリティにおける優位
・製造コストの低廉さ、規模の経済、生産スピードにおいて、中国は依然として世界トップの競争力を有する。
・他国が製造を米国や西側諸国に依存する必要がなくなり、「米国抜きの生産と取引」が現実的な選択肢となっている。
3. インフラと物流の高度化
・一帯一路構想(BRI)を通じて、中国は鉄道・港湾・高速道路など製品輸送の国際インフラを各地に整備し、自国製品の即時展開が可能となっている。
・物流の要衝を押さえているため、他国は米国経由での調達や流通に依存しなくてもよくなっている。
4. デジタル製造と技術共有の加速
・中国はスマートファクトリー、AI、生産ロボット等の高度製造技術においても著しい進展を遂げており、途上国ともこれを共有・移転している。
・米国が囲い込み的な技術外交を進める中で、中国は「開かれた製造技術提供国」としての印象を強めている。
5. 中国=「製造のOS化」
・かつての「Windowsなしでは仕事ができない」状態が、中国の製造業でも再現されつつある。
・世界中の工業製品・部品・装置が中国と何らかの形で関係しており、「脱中国」は事実上、経済合理性に反する動きとなっている。
6.米国の「不要性」が現実化しつつある
・米国が持っていた「不可欠な存在」という立場は、製造・物流・価格競争・実行スピードといった実務的な面において、中国に置き換えられている。
・経済的な意味での「米国不要論」は、特にグローバル・サウスや新興国、さらには一部の先進国にも浸透し始めており、G7中心の世界観が機能不全に陥っている兆候といえる。
もちろん、安全保障や先端技術、金融通貨体制などでは依然として米国の影響力は大きいが、「日々の経済活動」においては「米国抜きで成り立つ世界」がもはや例外ではなく、新たな常態(ニューノーマル)となりつつある。
HarmonyOS搭載パソコンの開発の意義
1. IT主権の確立
・HarmonyOSは中国が独自開発したオペレーティングシステムであり、米国製OS(WindowsやmacOS)への依存を脱却する試みである。
・パソコン分野への展開は、国家のデジタル主権確保を意味する。
2. 中国製PCの完全内製化
・Huaweiなどの企業が国産CPU(例:Kunpeng、Loongson)、国産OS(HarmonyOS)、国産基板・SSD・ディスプレイと統合し、「完全中国製」のPC開発を進行中。
・軍事・政府機関・重要インフラ・教育機関向けに導入が進む。
3. 米国の制裁への対抗手段
・ファーウェイなど中国IT企業が米国の輸出規制を受けたことで、代替技術の必要性が急速に高まった。
・HarmonyOSはその一環であり、米国の制裁効果を限定的にする「技術的自立の象徴」ともいえる。
4. エコシステムの統合
・スマートフォン、タブレット、IoT家電、PC、車載システムをHarmonyOSで統一することで、「シームレスなユーザー体験」と「ソフトウェア主導の制御経済圏」を構築。
・Apple型の「垂直統合モデル」に中国版で対抗しようとしている。
5. グローバル・サウスへの展開戦略
・WindowsやAndroidのライセンス料を回避できるため、低価格端末を求める発展途上国向け市場において競争力がある。
・特にアフリカ、中東、東南アジア諸国では「非米IT圏」の選択肢として普及余地がある。
【寸評 完】
【引用・参照・底本】
ASEAN-China-GCC cooperation to inject certainty into global economy GT 2025.05.25
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1334758.shtml