アメリカ合衆国の政府がUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)2025年02月14日 00:09

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【概要】

 アンドリュー・コリブコ氏は、2025年2月6日にSputnik Brasilに対して行ったインタビューの中で、アメリカ合衆国の政府がUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)を利用して他国、特にブラジルやラテンアメリカ諸国に対する介入を行ってきた方法について詳述した。インタビューの内容は以下の通りである。

 USAIDによる介入の方法

 USAIDは、しばしば人権や民主主義を掲げた名目で政治的プログラムを資金援助する形で他国の内政に介入してきた。特にラテンアメリカでは、腐敗を暴露するためのメディアプロジェクトなどに資金提供を行い、これが草の根運動として支持を集め、政治的な変化を促進する手段となった。時には、これらのプロジェクトに関わった現地の人々が、親米的な政府においてアドバイザーや政府高官に登用されることもある。したがって、USAIDは単に政府を転覆させるだけでなく、新たに樹立された親米政権のための人材を提供する役割も果たしていた。このような背景から、USAIDは米国のハイブリッド戦争の主要な武器とみなされている。

 USAIDの終了が米国の介入の終わりを意味するか

 米国務長官マルコ・ルビオ氏は、USAIDが大幅な改革を進める中でその管理責任を担っていると述べ、トランプ政権が発令した90日間の外国援助停止命令の下で、USAIDの効率性や政策の整合性を評価していると説明した。今後、LGBTなどの社会文化的な問題に関連するプログラムは削減される見込みだが、外国メディアへの資金提供や、外国の政治指導者の訓練プログラムは続けられる可能性が高い。

 USAID終了の評価

 USAIDはその創設当初、アメリカの伝統的な利益に沿ったものとして意味があったが、後にリベラル・グローバリストのイデオロギーに乗っ取られ、米国の国家利益とは一致しない急進的な社会文化的政策を広めるために利用されてきた。トランプ政権にとって、USAIDの終了はその改革計画の一環であり、政府支出の削減と「政府効率化省(DOGE)」の活動を実現するために必要不可欠であった。また、USAIDは米国の「ディープステート」と呼ばれる恒久的な軍事・情報・外交機関において重要な役割を果たしてきたため、その解体はトランプ政権の外交政策を成功させるために重要な手段であるとされている。

 トランプ政権の改革に対する懸念とCIAとの関係

 一部の米国の政治家は、トランプ政権の改革が機密情報の漏洩を引き起こす恐れがあり、国家安全保障への深刻な脅威であると警告している。これらの懸念の一部は、USAIDの職員やプロジェクトがCIAの目標に利用されることに関連しており、特に民主主義や人権という名目で外国に介入する際に米国の諜報機関が関与することがある。トランプ政権は、USAIDや国務省、さらには広範な「ディープステート」の浄化を進めることで、再度の政権運営における障害を排除し、米国の外交政策を革命的に変革することを目指している。

 これらの内容は、Sputnik Brasilが報じた「'アメリカ合衆国のハイブリッド戦争の主要武器': USAID終了後の米国外交政策に何が変わるか?」というレポートの一部として発表された。

【詳細】

 アンドリュー・コリブコ氏は、2025年2月6日にSputnik Brasilのインタビューで、アメリカ合衆国の政府がUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)をどのように利用して他国、特にラテンアメリカ諸国(ブラジルを含む)に介入してきたのかを詳しく説明した。以下に、インタビュー内容をさらに詳細に説明する。

 1. USAIDによるラテンアメリカ諸国への介入の仕組み

 USAIDは、アメリカ合衆国の政府機関であり、主に経済援助や発展支援を行うことを目的として設立された。しかし、コリブコ氏は、USAIDが実際にはしばしば「人権」や「民主主義」という名目で政治的介入を行い、特にラテンアメリカ諸国においては現地の政府を転覆させるために利用されてきたと指摘している。

 USAIDが行ってきた介入の代表的な方法は、草の根運動を支援することだった。例えば、腐敗を暴露するためのメディアプロジェクトや市民運動に資金を提供することが多かった。これにより、対象国の政府に対して反政府的な支持を集め、デモや街頭抗議を引き起こし、さらには予想外の選挙結果を生み出すことを目指していた。このような活動は、政治的変革を生み出すための手段とされており、特に反米的な政府を排除するために行われていた。

 さらに、USAIDは単に現地の政府を転覆させるだけでなく、新たに親米的な政権が成立した際に、その政権に対して必要なアドバイザーや専門的なスタッフを提供することもあった。これにより、USAIDはラテンアメリカの政治情勢に直接的に影響を与える重要なツールとなっていた。このように、USAIDは米国の「ハイブリッド戦争」の重要な一翼を担っており、政治的な目的を達成するための手段として使用されてきた。

 2. USAIDの終了とその後の介入方法

 USAIDが終了することが、アメリカの外交政策にどのような影響を与えるのかという質問に対して、コリブコ氏は、USAIDの廃止が即座にアメリカ合衆国の他国への介入の終了を意味するわけではないと説明した。新たにアメリカ合衆国の国務長官に任命されたマルコ・ルビオ氏は、USAIDが大規模な改革を進める中でその管理責任を担うと発表しており、これにより米国の対外援助方針に大きな変化が予想されている。

 トランプ政権下では、USAIDの活動を見直すために、90日間の外国援助停止命令が発令され、その間にUSAIDが実施してきた社会文化的な問題(LGBTなど)に関するプログラムは削減される可能性が高い。しかし、外国メディアへの資金提供や、外国の政治指導者に対する訓練プログラムは今後も続けられる見込みである。コリブコ氏は、USAIDの改革が米国の外交政策をより効率的にし、従来の「ハイブリッド戦争」的な介入を減少させる方向に進むと予測している。

 3. USAID終了の評価

 コリブコ氏は、USAIDの終了はトランプ政権の改革計画の一環として重要であると評価している。USAIDは冷戦時代のアメリカ合衆国の外交戦略の一部として成立し、当初は米国の伝統的な利益を守るために機能していた。しかし、リベラル・グローバリストのイデオロギーに乗っ取られることで、急進的な社会文化的政策を海外に広める手段となっていた。これにより、米国の国家利益に合致しない活動が行われるようになった。

 トランプ政権は、これらの非効率的でイデオロギー的なプログラムを廃止し、代わりにより現実的で米国の利益に合致する外交政策を推進しようとしている。USAIDの解体は、政府支出の削減や、「政府効率化省(DOGE)」の設立といった改革の一環として行われ、米国の外交政策を再編成するために不可欠な措置とされている。

 4. USAIDとCIAの関係

 コリブコ氏は、USAIDの活動が時にCIA(中央情報局)の目的と一致することがあると述べている。特に、民主主義や人権という名目で他国に介入する際に、CIAがその活動に関与することがある。USAIDの職員やプロジェクトが必ずしもCIAのエージェントであるわけではないが、CIAがその資金や人員を利用して、アメリカの目的を達成する場合があることを指摘している。

 一部の米国政治家は、トランプ政権の改革が国家安全保障に対する脅威を引き起こす可能性があると警告しているが、コリブコ氏は、この改革が米国の「ディープステート」と呼ばれる組織を浄化するために必要だと強調している。具体的には、USAIDや国務省、さらには米国の外交・軍事・情報機関の中で、トランプ政権に対して敵対的な勢力を排除しようとしている。これにより、米国の外交政策が、従来の「ディープステート」による影響から解放され、再編成されることを目指している。

 結論

 コリブコ氏は、USAIDの終了は米国の外交政策に大きな変革をもたらすものと考えている。その目的は、米国の政府支出を効率化し、親米的な価値観を広めるためのイデオロギー的な介入を減少させることにある。しかし、この改革がもたらすリスクもあるとして、特にUSAIDに従事していた職員に対する安全面での懸念が示されている。それでも、トランプ政権は改革を推進する姿勢を貫いており、その目的は米国の外交政策を根本から再構築することにある。

【要点】

 1.USAIDの介入方法

 ・USAIDは「人権」や「民主主義」を名目に、ラテンアメリカ諸国に政治的介入を行ってきた。
 ・メディアプロジェクトや草の根運動に資金提供し、反政府的な支持を集めることを支援。
 ・介入の結果、親米的な政権が成立した際には、アドバイザーや専門スタッフが提供された。

 2.USAID終了とその後の介入

 ・USAIDが終了しても、アメリカの外交政策の介入は続く可能性がある。
 ・アメリカ国務長官マルコ・ルビオは、USAIDの改革を進める意向を示しており、社会文化的問題への関与は削減される予定。
 ・外国メディアや政治指導者への支援は続く見込み。

 3.USAID終了の評価

 ・USAIDは冷戦時代のアメリカの利益を守るために設立されたが、後にリベラル・グローバリズムに取り込まれ、米国の国家利益に反する急進的な政策が推進された。
 ・トランプ政権は、米国の外交政策を効率化するためにUSAIDを終了し、無駄な支出やイデオロギー的介入を排除する方向に進んでいる。

 4.USAIDとCIAの関係

 ・USAIDは時にCIAと連携し、民主主義や人権を名目にした介入活動において、CIAが関与することがあった。
 ・トランプ政権は、CIAや国務省などの「ディープステート」と呼ばれる機関を浄化し、外交政策を再編成しようとしている。

 5.結論

 ・USAIDの終了は、米国の外交政策に大きな変革をもたらし、親米的な価値観を広めるための介入を減少させることが目的。
 ・改革にはリスクが伴うが、トランプ政権はその実現に向けて進んでいる。

【引用・参照・底本】

Korybko To Sputnik Brasil: USAID Is A Premier Weapon Of US Hybrid Warfare In The Hemisphere Andrew Korybko's Newsletter 2025.02.06
https://korybko.substack.com/p/korybko-to-sputnik-brasil-usaid-is?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=156583424&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

トランプ:矛盾する軍事費は最終的に半減可能発言2025年02月14日 15:31

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【概要】

 トランプ前大統領は2月13日、記者団に対し、アメリカの軍事費は最終的に半減できると考えており、その実現に向けてロシアや中国との合意を追求する意向を示した。また、新たな核兵器を開発する必要はないとの考えを述べた。

 トランプ氏は「いずれ事態が落ち着いたら、中国とロシア、特にこの二国と会談し、私たちが軍事費に1兆ドル近くを費やす理由はないと伝えたい。そして、他の分野に資金を回せるようにしたい」と述べた。

 さらに「問題が整理されれば、最初の会談の一つとして、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領と会談し、軍事予算を半減させようと提案する。それは可能であり、実現できると考えている」と付け加えた。

 アメリカの軍事費はロシアと中国の合計を大幅に上回っている。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の2023年のデータによると、アメリカは世界の軍事支出の37%を占めており、中国は12%、ロシアは4.5%となっている。

 核兵器に関してトランプ氏は、「新たな核兵器を開発する理由はない。我々はすでに世界を50回、あるいは100回以上破壊できるほどの核兵器を保有している。それにもかかわらず、アメリカ、ロシア、中国は新たな核兵器を開発している」と述べた。

 アメリカは現在、核戦力の三本柱(核トライアド)の近代化を進めており、このプロジェクトには1.5兆ドルの費用が見込まれている。トランプ氏はまた、ロシアとの「非核化(denuclearization)」を目指すとし、プーチン大統領がこれに「非常に前向きに」同意したと述べた。

 トランプ氏は自身の第1期政権でも、ロシアや中国との非核化交渉を進めていたと主張しているが、その一方で、当時のアメリカは主要な軍備管理条約から脱退していた。

 現在、米露間の最後の核軍備管理条約は2026年2月に期限を迎える予定であり、代替の合意は存在しない。ロシアは最近、米国の軍備管理の見通しは良好ではないと指摘している。しかし、トランプ氏がウクライナ戦争に関してプーチン大統領と協議を進めれば、軍備管理交渉につながる可能性がある。

 一方で、トランプ氏は最近、米本土および海外の米軍基地を対象とする大規模な新ミサイル防衛システムの建設を命じる大統領令に署名した。この計画は、新たな軍拡競争を引き起こす可能性があり、多額の予算を要する。また、議会の共和党議員は軍事費を少なくとも1,000億ドル増額することを求めている。 

【詳細】

 トランプ前大統領の軍事費削減・核軍縮構想についての詳細説明

 1. トランプ氏の発言概要

 2025年2月13日、トランプ前大統領は記者団に対し、アメリカの軍事支出を最終的に半減させることが可能であるとの見解を示し、そのためにロシアおよび中国との合意を目指す考えを表明した。また、新たな核兵器の開発は不要であると述べ、軍縮の可能性について言及した。

 トランプ氏は、「事態が落ち着いた時点で、中国とロシア、特にこの二国と会談し、アメリカがほぼ1兆ドルもの軍事費を支出する必要がないことを伝えたい。そして、これらの資金を他の用途に回すことが可能である」と述べた。

 さらに、「問題を整理した後、最初の会談の一つとして、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領と対話し、軍事予算の半減を提案したい。これは十分に可能であり、実現可能な目標である」と強調した。

 2. 現在のアメリカの軍事支出とその国際比較

 アメリカの軍事費は世界最大であり、ロシアと中国の合計支出を大幅に上回っている。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の2023年のデータによると、世界全体の軍事支出に占める割合は以下の通りである。

 ・アメリカ:37%(約8,500億ドル)
 ・中国:12%(約2,700億ドル)
 ・ロシア:4.5%(約1,000億ドル)

 アメリカの軍事予算は、中国の約3倍、ロシアの約8倍に相当し、軍事技術や戦力の面でも他国を大きく凌駕している。

 3. 核兵器開発に対する見解

 トランプ氏は、核兵器について次のように述べた。
 「新たな核兵器を開発する理由はない。アメリカはすでに世界を50回、あるいは100回以上破壊できるほどの核兵器を保有している。それにもかかわらず、アメリカ、ロシア、中国が新たな核兵器を開発し続けているのは無駄である。」

 現在、アメリカは核戦力の「三本柱(核トライアド)」の近代化を進めており、この計画には1.5兆ドルの予算が必要とされている。核トライアドとは、

 1.大陸間弾道ミサイル(ICBM)
 2.戦略爆撃機(B-52やB-21など)
 3.潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)

の3つの核攻撃手段を指す。特に、B-21「レイダー」爆撃機の開発、オハイオ級原子力潜水艦の更新、ICBMの近代化などが進行中である。

 4. ロシアとの核軍縮交渉の可能性

 トランプ氏は、ロシアとの「非核化(denuclearization)」を目指す方針を改めて示し、プーチン大統領がこれに「非常に前向きに」同意したと述べた。

 しかし、実際には米露間の核軍備管理に関する状況は厳しく、現在、有効な核軍縮条約は**「新戦略兵器削減条約(New START)」のみであり、その有効期限は2026年2月**に迫っている。

 New STARTは、

 ・核弾頭の配備数を1,550発に制限
 ・ICBM、SLBM、戦略爆撃機の配備数を700基(機)に制限
 ・相互査察制度による透明性の確保

といった条項を含んでいるが、アメリカとロシアの関係悪化により交渉が進んでいない。ロシア外務省は最近、「米国との軍備管理の見通しは非常に厳しい」との認識を示している。

 トランプ氏がウクライナ戦争についてプーチン大統領と交渉を行う可能性があるため、そこから軍縮交渉につながる可能性はあるものの、現状では不透明である。

 5. 軍事費削減の一方で新たな軍拡の動き

 トランプ氏は軍事費削減を主張する一方で、最近、新たなミサイル防衛システムの建設を命じる大統領令に署名した。この計画は、

 ・アメリカ本土および海外の米軍基地を防衛する大規模ミサイル防衛システムの構築
 ・最新鋭の迎撃ミサイルの配備
 ・レーザー兵器など新技術の導入

を含むものであり、これには膨大な予算が必要とされる。また、ミサイル防衛システムの強化はロシアや中国の反発を招く可能性があり、新たな軍拡競争を引き起こす恐れがある。

 さらに、議会の共和党議員の間では、軍事費を最低でも1,000億ドル増額する動きが進んでおり、トランプ氏の発言と政策が矛盾する可能性がある。

 6. まとめ

 トランプ前大統領は、アメリカの軍事支出の削減と核軍縮を進める意向を示し、中国およびロシアとの交渉を視野に入れている。しかし、現実には以下のような課題がある。

 1.アメリカの軍事支出は依然として世界最大であり、削減には国防戦略の抜本的な見直しが必要である
 2.ロシアとの核軍縮交渉は進展しておらず、2026年のNew START期限切れ後の展望は不透明である
 3.一方で、トランプ氏自身が大規模なミサイル防衛計画を推進しており、軍拡競争のリスクがある
 4.共和党議員の間では軍事費増額の動きが強く、削減が実現するかは不透明である

 今後、トランプ氏が中国・ロシアとの具体的な交渉を進めるか、あるいは新たな軍拡競争へと向かうのかが焦点となる。

【要点】

 トランプ前大統領の軍事費削減・核軍縮構想(要点整理)

 1. 発言の概要

 ・アメリカの軍事費を最終的に半減させることが可能と主張
 ・ロシア・中国と交渉し、軍縮と軍事費削減を目指す意向
 ・「新たな核兵器の開発は不要」と発言

 2. アメリカの軍事費の現状

 ・2023年のアメリカの軍事費:約8,500億ドル(世界全体の37%)
 ・中国:約2,700億ドル(12%)、ロシア:約1,000億ドル(4.5%)
 ・アメリカの軍事費は中国の3倍、ロシアの8倍

 3. 核兵器開発に対する見解

 ・「既存の核兵器で十分」「新規開発は無駄」と発言
 ・アメリカは1.5兆ドル規模の核トライアド近代化を推進中

  ➢ICBM(大陸間弾道ミサイル)
  ➢戦略爆撃機(B-52、B-21)
  ➢SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)

 4. ロシアとの核軍縮交渉の可能性

 ・「プーチン大統領は軍縮交渉に前向き」と発言
 ・New START(新戦略兵器削減条約)は2026年2月に期限切れ
 ・米露関係悪化により軍縮交渉の進展は難航

 5. 軍事費削減 vs. 新たな軍拡

 ・ミサイル防衛システムの新設を指示(大統領令を発令)

  ➢本土・海外基地の防衛強化
  ➢最新迎撃ミサイル・レーザー兵器導入

 ・共和党内では1,000億ドル以上の軍事費増額を求める動き

 6. まとめ(課題と矛盾点)

 ・ 軍事費削減・核軍縮の意向を示すが、実現は不透明
 ・ ロシア・中国との交渉が成功する保証はない
 ・ ミサイル防衛強化が軍拡競争を引き起こす可能性
 ・ 共和党議会の動きと矛盾し、政策の整合性が問われる

 今後の焦点

 ・トランプ氏が具体的な軍縮交渉を進めるか
 ・軍事費削減が実現するか、それとも新たな軍拡競争が起こるか

【引用・参照・底本】

Trump: Military Spending Could Be Cut in Half and There’s No Reason To Build New Nuclear Weapons ANTIWAR.com 2025.0000002.13
https://news.antiwar.com/2025/02/13/trump-says-military-spending-could-be-cut-in-half-and-that-theres-no-reason-to-build-new-nukes/

EU:ロシアの「シャドーフリート(影の艦隊)」を押収する可能性2025年02月14日 16:25

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【概要】

 EU諸国がバルト海でロシアの「シャドーフリート(影の艦隊)」を押収する可能性については、慎重に考慮する必要がある。これは単なる憶測ではなく、Politicoが報じたように、フィンランドが昨年12月に1隻を押収したことが前例となり、一部のEU加盟国が同様の措置を取ることを検討している事実に基づいている。

 背景と目的

 ロシアのシャドーフリートは、制裁を回避するために使用されるタンカー群であり、その約40%がバルト海を通過している。これは年間約350隻に相当し、ロシアの国防予算の約3分の1に匹敵する収益を生み出しているとされる。EUの一部の国々がこれを押収する目的は、ロシアの石油販売による外貨収入を削減し、経済的な圧力を強めることである。

 実行上の課題

 しかし、この計画には複数の問題が存在する。

 国際法と法的リスク

 シャドーフリートの一部は第三国が所有しているため、押収すれば外交的・法的な対立を招く可能性がある。フィンランドが昨年12月に行った押収に対しても、政治的な反発が生じており、今後同様の行動を取ることが難しくなる可能性がある。EU全体の支持が得られなければ、単独での実行はリスクが高い。

 ロシアの軍事的対応

 ロシアの国会(国家院)の国防委員会副委員長は、「ロシアの船舶に対する攻撃は領土に対する攻撃と見なす」と警告しており、ロシアが軍艦を派遣してシャドーフリートを護衛する可能性がある。この場合、バルト海での軍事的緊張が急激に高まることは避けられない。

 米国の対応

 ドナルド・トランプ大統領は、少なくとも現時点では対ロシアのエスカレーションを望んでいないと考えられる。そのため、EU諸国がロシアの船舶を押収した場合でも、NATOの集団防衛義務(第5条)を適用する可能性は低い。特に、現在進行中の米露間のウクライナに関する交渉が影響を受けることを避けるため、米国は慎重な姿勢を取る可能性が高い。

 EU諸国内の動機

 それにもかかわらず、一部のEU諸国(特にバルト三国やポーランド)は、対ロシア制裁の強化を主張し、何らかの行動を取ることで対抗姿勢を示そうとしていると考えられる。これは、ロシアに対する制裁措置が期待通りの効果を発揮していないことへの不満が背景にある可能性がある。

 また、EU内の強硬派は、ロシアのシャドーフリートへの圧力をかけることで、その運航を抑制しようとする意図もあると考えられる。さらに、トランプ政権がウクライナ問題でロシアと交渉を進める中、EU側からの圧力を強めることで、米国の対ロシア政策を変えさせようとする思惑もあるかもしれない。

 今後の展望

 現時点では、EUがバルト海でロシアのシャドーフリートを大規模に押収する可能性は低い。ただし、一部の国が個別に行動を起こす可能性は否定できず、今後の情勢次第ではさらなる緊張を招くこともあり得る。ロシア側も、もし押収が常態化するならば、何らかの対抗措置を取ることはほぼ確実であり、バルト海が新たな対立の焦点となる可能性もある。 

【詳細】

 ロシアのいわゆる「シャドーフリート(影の艦隊)」がバルト海を通過する際に、EU諸国がこれを拿捕(だほ)する可能性について分析している。この「シャドーフリート」は、西側の制裁を回避するために、ロシアが使用している非正規のタンカー群であり、主にアジア市場へ割引価格の原油を輸送する役割を果たしている。EU諸国の中には、これを海賊行為や環境規制違反の名目で押収しようとする動きがあると報じられている。

 1. バルト海での「シャドーフリート」活動とその経済的影響
バルト海を通過するロシアの「シャドーフリート」は、約40%にあたる350隻近い船舶であり、その経済規模はロシアの年間国防予算の約3分の1に相当する。これらの船舶が輸送する原油が遮断されれば、ロシアの外貨収入に深刻な影響を及ぼす可能性がある。そのため、EUがこの措置を強化すれば、ロシア経済に対する圧力を高めることができると考えられている。

 2. 拿捕の法的・政治的課題

 しかし、こうした措置には法的・政治的なリスクが伴う。まず、国際法上、外国籍の商船を押収するには明確な法的根拠が必要であり、第三国が所有する船舶の拿捕は外交的摩擦を引き起こす可能性がある。例えば、2023年12月にフィンランドがロシア関連の船舶を押収したが、これが国際的な法的問題を引き起こしている。

 また、EU全体として統一した対応を取れるかも不透明であり、各国の対応が分かれる可能性がある。さらに、NATOの主導国であるアメリカがこれを支持するかどうかも重要な要素である。特に、トランプ前大統領が再び政権を握った場合、彼はロシアとの対立を避ける可能性が高いため、EU諸国が独自にこの政策を推し進めることは難しくなる。

 3. ロシアの軍事的対応の可能性

 ロシア側もこの動きに対し、軍事的対応を示唆している。ロシア議会の国防委員会副委員長は、「我々の輸送船に対する攻撃は、たとえ外国の旗を掲げていても、ロシア領土への攻撃とみなす」と警告している。つまり、ロシアは「シャドーフリート」を護衛するために海軍を派遣し、軍事的緊張が高まる可能性がある。

 もし、EU諸国のいずれかが実際にロシアの船舶を拿捕し、それに対してロシアが軍事的行動を起こした場合、バルト海地域は一気に国際的な危機の中心となる。これは「新冷戦」の重大な局面となり、世界的な注目を集めることになる。

 4. トランプ政権の対応と地政学的影響

 トランプ前大統領が再び政権を握った場合、彼の対ロシア政策がこの問題に大きく影響を与える可能性がある。トランプは従来、ロシアとの対立を避ける姿勢を示しており、EU諸国がロシア船舶を拿捕した場合でも、NATOの集団防衛(北大西洋条約第5条)を適用しない可能性がある。これは、EU諸国の対ロシア戦略にとって大きな制約となる。

 また、現在ロシアとアメリカの間では、ウクライナ戦争に関する秘密交渉が行われているとされており、この交渉が妥結する可能性がある。その場合、EU諸国がロシアの「シャドーフリート」に対する攻撃を行うことは、アメリカの外交政策と衝突することになり、欧米間の亀裂を深める要因となる。

 5. EU諸国がこの問題を持ち出す背景

 EU諸国の中でも、特にバルト三国やポーランドのような反ロシア的立場が強い国々は、今回の「シャドーフリート」拿捕の可能性を持ち出している。これは、彼らがまだロシアに対して実行可能な制裁手段を持っていることをアピールする意図がある可能性が高い。しかし、現実的には、これまでの制裁がロシアの軍事行動を抑止することができなかったことを考慮すると、新たな制裁が決定的な影響を及ぼす可能性は低い。

 また、彼らの目的として、こうした議論を行うことで、ロシアに対する圧力を高めたり、アメリカにさらなる介入を促したりする狙いもある。しかし、実際にロシアの「シャドーフリート」がバルト海を通過することをやめる可能性は低く、トランプ政権がウクライナ戦争への関与を減らす方向に動く中で、アメリカの対応を変えさせることも容易ではない。

 6. 今後の展望とリスク

 結論として、EU諸国がロシアの「シャドーフリート」に対する組織的な拿捕作戦を実施する可能性は低いと考えられる。ただし、フィンランドのように個別の国が自国の法律を根拠にして一部の船舶を押収する可能性はある。その場合、ロシアがどの程度強硬に対応するかが焦点となる。

 仮にEU諸国がこの方針を強化し、複数の船舶を拿捕し始めれば、ロシアは軍事的な対応を本格化させる可能性が高い。これは、1962年のキューバ危機のような核戦争寸前の緊張状態を生み出す危険性もある。特に、ロシアは2023年11月に、西側の長距離ミサイルがロシア本土を攻撃したことに対抗して、極超音速ミサイル「オレシュニク」を初めて使用するなど、エスカレーションの姿勢を強めている。

 そのため、EU諸国がロシア船舶を拿捕する場合、ロシアがこれに対して強硬な対応を取る可能性が高い。トランプ政権がこの状況に介入する可能性は低く、結果として、バルト海が新たな対立の前線となる可能性がある。ロシアの「シャドーフリート」にとって、全面的な拿捕のリスクは低いが、今後も局所的な押収事件が発生する可能性は否定できない。

【要点】

 ロシア「シャドーフリート」拿捕の可能性と影響

 1. 「シャドーフリート」とは何か

 ・ロシアが西側制裁を回避するために使用する非正規のタンカー群
 ・主にアジア市場へ割引価格の原油を輸送
 ・約350隻が活動し、ロシアの外貨収入に大きく貢献

 2. バルト海における「シャドーフリート」の活動とEUの対応

 ・バルト海を経由してロシア産原油を輸送する船舶が多い
 ・EUの一部諸国(特にバルト三国やポーランド)が拿捕を検討
 ・船舶が環境規制違反や海賊行為のリスクを抱えていると主張

 3. 拿捕の法的・政治的課題

 ・国際法上、外国籍の商船を押収するには明確な法的根拠が必要
 ・拿捕が外交的摩擦を引き起こす可能性が高い
 ・EU内でも統一した対応が困難(加盟国間で意見が分かれる)
 ・NATOの主導国アメリカが支持するか不透明

 4. ロシアの軍事的対応の可能性

 ・ロシアは「シャドーフリート」を護衛する可能性
 ・ロシア議会国防委員会副委員長が「拿捕はロシア領土への攻撃とみなす」と警告
 ・EUによる拿捕が軍事的衝突を招くリスク

 5. トランプ政権の影響

 ・トランプ前大統領が再選した場合、ロシアとの対立を避ける可能性が高い
 ・NATOの集団防衛(第5条)を適用しない可能性
 ・ウクライナ戦争に関するアメリカとロシアの秘密交渉と衝突のリスク

 6. EU諸国が拿捕を主張する背景

 ・反ロシア的なバルト三国やポーランドが主導
 ・ロシアに対する制裁圧力を強化する意図
 ・しかし、ロシアの軍事行動を抑止する決定的な影響は期待しにくい

 7. 今後の展望とリスク

 ・EU全体で大規模な拿捕作戦を実施する可能性は低い
 ・フィンランドなど一部の国が個別に拿捕する可能性はある
 ・ロシアが軍事的対応を強化する可能性が高い
 ・バルト海が新たな対立の前線となるリスク
 ・1962年のキューバ危機のような核戦争寸前の緊張状態に発展する可能性も

 8. 結論

 ・ロシアの「シャドーフリート」は短期的には活動を継続できる可能性が高い
 ・EUがどこまで強硬に対応するか次第で、軍事的緊張が高まる可能性あり
 ・アメリカの対応次第でEUの戦略が左右される

【参考】

 ☞ シャドーフリート(Shadow Fleet)とは

 1. 概要

 ・ロシアが西側諸国の制裁を回避するために運用している非正規のタンカー群
 ・主にロシア産原油を制裁対象国以外の国(特にアジア市場)へ輸送
 ・船舶の所有者や運航会社の実態が不透明で、西側の規制を逃れるように運用される

 2. 主な特徴

 ・匿名性の高い運用

  第三国籍の船舶を使用し、名義を頻繁に変更
  資産凍結や規制の回避を目的とする

 ・老朽化したタンカーの利用

  既存の規制を回避するため、老朽船を安価に買収し運用

 ・海上での積み替え(STS:Ship-to-Ship)

  公海上で原油を積み替え、出荷元の特定を困難にする

 ・追跡困難な航行ルート

  船舶追跡システム(AIS)を意図的にオフにする
  第三国の港を経由して出荷元を曖昧にする

 3. 目的と背景

 ・2022年以降、西側諸国がロシア産原油に対する価格上限を設定(G7の制裁措置)
 ・ロシアは中国、インドなどのアジア市場に輸出を継続するため、制裁回避の仕組みを構築
 ・正規の海運会社がリスクを回避する中、「シャドーフリート」が輸送を担う

 4. シャドーフリートの規模

 ・全体数:約600~1000隻(推定)
 ・バルト海経由:約350隻(ロシアの対アジア輸出に関与)
 ・年間取引額:ロシア国防予算の約1/3に相当

 5. 問題点とリスク

 ・環境リスク:老朽船の事故による海洋汚染の危険性
 ・安全リスク:制裁対象の船舶が国際的なトラブルを引き起こす可能性
 ・地政学的リスク:EUが拿捕を検討することで、ロシアとの軍事的緊張が高まる可能性

 6. 今後の展望

 ・EU諸国がバルト海でのシャドーフリート取り締まりを強化する可能性
 ・ロシアが軍事的護衛を強化し、海上衝突のリスクが高まる
 ・米国の政権交代により、EUの対応が変化する可能性あり

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

Will The EU Seize Russia’s “Shadow Fleet” In The Baltic? Andrew Korybko's Newsletter 2025.02.14
https://korybko.substack.com/p/will-the-eu-seize-russias-shadow?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=157122265&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

トランプの交渉開始発表が欧州に波紋を呼ぶ2025年02月14日 17:04

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【概要】

 ドナルド・トランプ米国大統領がウラジーミル・プーチンロシア大統領との電話会談でウクライナ戦争に関する交渉を開始することを発表したことを受け、欧州各国はその安全保障への影響を懸念し、ウクライナ和平交渉における自国の役割を確保しようとした。

 ドイツのオラフ・ショルツ首相は、ウクライナ紛争の終結が「強制的な和平」であってはならないと警告し、「次の課題は、強制的な和平がないようにすることだ」と述べた。また、NATO事務総長のマーク・ルッテは、ウクライナは和平交渉に積極的に関与すべきであり、モスクワとの戦争を終結させるための最終的な合意は「持続可能」であるべきだと強調した。

 フランスのセバスチャン・ルコルヌ国防相は、NATOが現在直面している重要な岐路について言及し、「これは重要な真実の瞬間だ」と述べた。ドイツのボリス・ピストリウス国防相も、トランプ政権がウクライナの和平交渉前にロシアに対して「譲歩」を行ったことを「遺憾だ」とし、NATO加盟や領土喪失の問題が交渉テーブルで議論されるべきだと述べた。

 フランス、ドイツ、スペインの外相は、ウクライナの和平協定はウクライナとその欧州のパートナーが関与しなければ実現しないと強調し、ウクライナとヨーロッパが交渉に関与する必要があると指摘した。

 ドイツのアナレーナ・ベアボック外相は、トランプ大統領との電話会談について事前に通知を受けていなかったことを明かし、「これはトランプ政権のやり方だ。さまざまな関係者と常に相互コミュニケーションを取ることが必要だ」と述べた。英国のジョン・ヒーリー国防相も、ウクライナが交渉に参加すべきだとの立場を示した。

 一方で、アメリカの国防長官であるピート・ヘグセスは、トランプ大統領の和平計画がウクライナに対する裏切りではないと強調し、「全世界とアメリカは和平に投資し、殺戮を止めることを求めている」と述べた。彼はまた、NATO諸国の防衛支出の増加を呼びかけ、最終的にはGDPの5%に達するべきだと主張した。スウェーデンのパル・ジョンソン国防相は、ウクライナのNATO加盟の可能性について、条件を満たすならば将来的には加盟できると考えていると述べた。 

【詳細】

 2025年2月13日、ドナルド・トランプ米国大統領とウラジーミル・プーチンロシア大統領がウクライナ戦争に関する交渉を開始することで合意したことが発表された。これを受けて、欧州各国は驚きと懸念の声を上げた。彼らは、ウクライナの和平交渉において自国が中心的な役割を果たすべきだと主張し、交渉の結果が欧州の安全保障に与える影響を重視している。特に、ウクライナが交渉に参加し、その意見が反映されることを強調している。

 ドイツのオラフ・ショルツ首相は、ウクライナ戦争の終結が「強制的な和平」として一方的に決定されてはならないと警告した。「次の課題は、強制的な和平がないようにすることだ」と語り、ウクライナの意見が重要であることを示唆した。ショルツ首相の発言は、ウクライナが戦争終結に向けた決定にどのように関与すべきかを明確に示しており、和平のプロセスにおけるウクライナの主権を守る重要性を強調している。

 NATO事務総長のマーク・ルッテも、ウクライナは和平交渉に関与すべきだと述べ、最終的な和平合意が「持続可能」である必要があることを強調した。ルッテは「ウクライナがウクライナに関するすべての事柄に深く関与することが極めて重要だ」と述べ、その立場を強調した。NATOとしては、ウクライナが交渉の場にいない場合、和平合意の有効性が疑問視されることを懸念している。

 フランスのセバスチャン・ルコルヌ国防相は、NATOの重要な岐路を迎えていることを指摘し、「これは歴史的に最も強力な軍事同盟だと言われているが、10年後、15年後もそれが続くかはわからない」と語った。これは、NATOが将来的にどれだけ強固であり続けるのか、またその影響力がどうなるのかに対する懸念を示している。

 ドイツのボリス・ピストリウス国防相は、トランプ政権がウクライナの和平交渉開始前にロシアに譲歩したことを「遺憾だ」とし、より慎重な対応を求めた。「ウクライナのNATO加盟や領土問題について交渉の場で議論されるべきだった」と述べ、外交的に慎重な立場を取るべきだとの考えを示した。さらに、ピストリウス国防相は、ロシアがウクライナと和平合意を結んだ場合でも、ロシアの脅威が欧州の安全保障にとって依然として深刻であると警告した。

 また、フランス、ドイツ、スペインの外相は、ウクライナとの協力なしには「正当で持続的な和平」はあり得ないと強調した。フランスのジャン=ノエル・バロ外相は「ウクライナなしに和平を結ぶことはできない」と述べ、ウクライナの参加が必須であるとの立場を示した。ドイツとスペインの外相も、いかなる和平合意もウクライナと欧州パートナーが関与しなければ成立しないと同様に強調した。

 ドイツのアナレーナ・ベアボック外相は、トランプ大統領との電話会談について事前に知らされていなかったことを明かし、「これがトランプ政権のやり方だ。相互のコミュニケーションが常に必要だ」と述べた。ベアボック外相は、トランプ政権が欧州の外交政策と異なる手法を取っている点に言及し、今後の対話の重要性を強調した。これに対して、イギリスのジョン・ヒーリー国防相も、ウクライナと欧州は必ず交渉に参加すべきだと強調した。

 一方、アメリカのピート・ヘグセス国防長官は、トランプ大統領の和平計画がウクライナに対する裏切りではないとし、「和平に向けた努力には双方の認識が必要だ」と述べた。また、NATO諸国に対して防衛支出をGDPの5%に引き上げるべきだと訴え、欧州諸国に対して防衛力の強化を呼びかけた。スウェーデンのパル・ジョンソン国防相は、ウクライナが将来的にNATOに加盟できる可能性があると述べ、条件を満たせば加盟の道は開かれると強調した。

 このように、トランプ大統領の交渉開始の発表は、欧州諸国に大きな波紋を呼び、ウクライナの戦争終結に向けた交渉において彼らの参加が不可欠であるという意見が強調されている。

【要点】

 ・トランプとプーチンの合意: 2025年2月13日、ドナルド・トランプ米大統領とウラジーミル・プーチンロシア大統領がウクライナ戦争に関する交渉開始で合意。
 ・欧州の反応: 欧州各国は驚きと懸念を示し、ウクライナの参加なしでの和平交渉を否定。
 ・ショルツ首相の発言: ウクライナの意見を反映した和平交渉が重要であり、強制的な和平は認めない。
 ・ルッテNATO事務総長の見解: ウクライナの関与が不可欠で、持続可能な和平が求められると強調。
 ・ルコルヌ国防相の警告: NATOの将来について懸念を示し、同盟の強さに疑問を呈した。
 ・ピストリウス国防相の立場: トランプ政権のロシアへの譲歩に対して批判し、慎重な外交を求めた。
 ・外相たちの共通の立場: ウクライナなしでは正当で持続的な和平は成立しないと強調。
 ・ベアボック外相の発言: トランプとの会話について事前に知らされていなかったことを明かし、対話の重要性を指摘。
 ・ヒーリー国防相の意見: ウクライナと欧州が交渉に必ず参加すべきだと強調。
アメリカのヘグセス国防長官: トランプの和平計画は裏切りではなく、双方の認識が必要だと主張。
 ・スウェーデンのジョンソン国防相: ウクライナが将来的にNATO加盟する可能性を示唆。
 ・全体的な結論: トランプの交渉開始発表が欧州に波紋を呼び、ウクライナの参加が不可欠であるという意見が広がる。

【引用・参照・底本】

Scholz rejects ‘dictated peace’ for Ukraine as Europe reels after Trump-Putin call FRANCE24 2025.02.13
https://www.france24.com/en/europe/20250213-ukraine-europe-must-be-involved-peace-talks-say-nato-european-members-russia-trump-rutte?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020250213&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

米国情報機関と同盟国との情報共有の重要性2025年02月14日 17:35

Microsoft Designerで作成
【概要】

 デヴィッド・V・ジョイは、情報外交(「リエゾン」)の重要性について論じており、アメリカの同盟国との情報共有関係がトランプ大統領の行動によって損なわれる可能性があることを指摘している。情報リエゾンは、国家安全保障の重要な、しばしば過小評価されがちな要素であり、各国が貴重な情報資源、専門知識、分析を共有する手段となり、集団的な安全保障を強化する。

 ジョイは、伝統的にこれらの関係は政治的な気候や政府の変動から影響を受けにくいと述べている。しかし、過去には政治的な出来事が情報共有に干渉した事例もあり、1970年代のニクソン政権下や2013年のスノーデン事件後にはそのような例が見られた。トランプ政権は、敏感な情報の取り扱いや外交関係における取引的アプローチに対する懸念から、これらの関係に潜在的なリスクをもたらしている。

 トランプの過去の論争—機密情報の取り扱いミスや、プーチンのような権威主義的リーダーとの異例の関係—は、アメリカの同盟国の間で不安感を増大させた。その結果、いくつかの国はアメリカと共有する情報を制限したり、精査したりすることを選ぶかもしれない。これにより、情報リエゾンシステムの効果が減少する可能性がある。記事は、情報共有における信頼と慎重さの重要性を強調しており、アメリカの同盟国は、他の戦略的な考慮よりもアメリカの情報機関の信頼性を優先するかもしれない。

 記事は、トランプに対して、情報操作の独立性を守ることに焦点を当て、プロフェッショナリズムと非党派的な客観性を確保するよう求めている。効果的なパートナーシップを維持するためには、アメリカが同盟国に対してその懸念に対処する能力があり、情報業務の非政治的な性質を守ることを確約する必要がある。もしトランプ政権がこれらの懸念に適切に対応しなければ、アメリカの情報関係が損なわれ、国家安全保障の取り組みに支障をきたすことになる。 

【詳細】

 アメリカ合衆国の情報機関とその同盟国との情報共有の重要性、特にドナルド・トランプ大統領がその協力関係に与える影響について詳述していルる。

 情報外交の役割と重要性

 情報外交、または「リエゾン(liaison)」は、国家の力を構成する隠れた要素であり、アメリカ合衆国は多くのリエゾンパートナーを持っている。これらの国々や非国家主体は、アメリカと直接的な関係を持ちたくない場合でも、秘密のルートで情報を共有する。この情報交換は、アメリカの国際的な安全保障を支える重要な基盤となっており、同盟国との信頼関係が築かれるため、政治的な変動に関わらず基本的に情報の流れは途絶えることはない。

 歴史的な事例

 過去には、国際政治の変化や外交関係の不和が情報共有に影響を与えることがあった。たとえば、1970年代のニクソン政権では、イギリスとの情報共有が一時的に減少した。また、2013年にはエドワード・スノーデンによるNSAの情報漏洩が、欧州諸国との情報交換に一時的な亀裂を生じさせた。これらの事例が示すように、政治的な問題が情報交換に直接的な影響を与えることがある。

 トランプ政権の影響

 トランプ政権は、同盟国との情報共有に対して潜在的なリスクをもたらしている。特に、トランプ大統領の外交政策におけるアプローチ、例えば権威主義的なリーダーとの関係や、自国第一主義に基づく取引的な姿勢が、情報共有に不安をもたらす要因となっている。トランプ大統領は、情報を取引材料として利用する可能性があると懸念されており、同盟国はトランプ政権下での情報提供に対して慎重になる可能性が高い。

 情報共有のメリット

 情報共有の主なメリットとしては、複数国がリソースを統合して情報対象を分析し、人員ネットワークを協力して運用することが挙げられる。また、経済的な側面や、地理的な施設の共同利用などもある。これにより、国家は単独で行うよりも効率的に情報収集を行い、分析の信頼性を高めることができる。

 トランプ政権下での懸念

 トランプ政権下では、特に情報を扱う能力に関していくつかの懸念が生じた。トランプ大統領がロシアの外交官と機密情報を共有したり、ソーシャルメディアで情報を漏洩したりするなどの事例があり、これが同盟国にとって重大なリスクとみなされた。これらの事例により、アメリカの情報機関が秘密を守る能力に対する信頼が揺らいだのである。

 信頼性とプロフェッショナリズムの必要性

 情報共有においては、信頼性とプロフェッショナリズムが極めて重要である。トランプ政権は、これらの基本的な価値を守ることが必要である。アメリカの情報機関は、その専門知識と非政治的な立場によって、同盟国との信頼を築いてきた。トランプ大統領は、その価値を守るために、経験豊富で冷静な判断ができるプロフェッショナルを情報機関の重要ポストに配置する必要がある。

 結論

 情報共有は、アメリカの国際的な安全保障にとって不可欠な要素であり、同盟国との強固な関係を維持するためには、情報外交の信頼性を保つことが重要である。トランプ大統領がその任期中に情報機関を政治的に操作するようなことがあれば、同盟国の信頼は損なわれ、その結果、アメリカの国際的な立場に影響を与える可能性がある。

【要点】

 ・情報外交の役割: アメリカは、世界各国と情報を交換するためのリエゾンパートナーを持ち、これらの情報共有が安全保障を支える重要な基盤となる。

 ・過去の事例

  🔸1970年代のニクソン政権で、イギリスとの情報共有が一時的に減少。
  🔸2013年のスノーデン事件で、欧州諸国との情報交換に亀裂が入る。

 ・ランプ政権の影響

  🔸トランプ政権は、権威主義的リーダーとの関係や「自国第一主義」によって、情報共有にリスクをもたらす。
  🔸情報を取引材料として利用する可能性があり、同盟国は慎重になる可能性。

 ・情報共有のメリット

  🔸複数国がリソースを統合し、効率的な情報収集・分析が可能になる。
  🔸経済的側面や地理的施設の共同利用が生まれる。

 ・トランプ政権下での懸念

  🔸トランプ大統領がロシアに機密情報を漏洩した事例など、情報機関の信頼性に対する懸念が高まった。

 ・信頼性とプロフェッショナリズム

  🔸情報共有においては、信頼性と専門知識が不可欠であり、冷静な判断ができるプロフェッショナルの配置が求められる。

 ・結論

  🔸情報共有はアメリカの安全保障にとって不可欠であり、トランプ政権は信頼性を守るために情報機関を適切に運営する必要がある。

【引用・参照・底本】

How America’s Allies Boost U.S. Intelligence FOREIGN AFFAIRS 2025.02.13
https://www.foreignaffairs.com/united-states/how-americas-allies-boost-us-intelligence?s=EDZZZ005ZX&utm_medium=newsletters&utm_source=fatoday&utm_campaign=How%20America%E2%80%99s%20Allies%20Boost%20U.S.%20Intelligence&utm_content=20250213&utm_term=EDZZZ005ZX