アジア金融危機と類似状況2024年05月25日 12:02

国立国会図書館デジタルコレクション「青楼美人合 第2冊」を加工して作成
 現在のアジア経済のシナリオは、1997-98年のアジア金融危機と類似しており、その主な原因は、米連邦準備制度理事会(FRB)の「長期にわたる利上げ」スタンスによる資本流出である。

 米国の金融政策と資本流出

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、これまでの利下げ予想に反して、根強いインフレに対抗するために高金利を維持しており、2024年4月時点で現在3.4%となっている。

 その結果、アジアから米国への資本流入は、より高いリターンに牽引され、アジア市場から重要な資金を奪い、現地通貨に圧力をかけている。

 アジア通貨への影響

 投資家がドルを好むため、アジア通貨は下落している。例えば、マレーシアリンギットは最近、1997-98年の危機水準を彷彿とさせる26年ぶりの安値を記録した。

 インドネシアなどアジアの中央銀行は、自国通貨を支えるために金利を引き上げることで対応している。インドネシアはルピアを安定させるために基準金利を6.25%に引き上げた。

 1997-98年の危機との比較分析

 1997年から1998年にかけてのアジア金融危機は、ドル高とアジアからの急速な資本流出が一因であり、この動きは繰り返されているように思われる。

 現在の状況は、地政学的な緊張や進行中の米中貿易戦争など、世界経済の不確実性によって悪化しており、経済情勢に複雑さを加えている。

 経済戦略と課題

 アジア経済は、こうした圧力の中で経済の安定を維持するという課題に直面している。例えば、中国の中央銀行は利下げを検討しているが、そのような行動はドルに対する大幅な通貨安につながり、経済見通しをさらに複雑にする可能性がある。

 インフレ抑制と通貨の安定のバランスに引き続き焦点が当てられており、資本逃避の悪化を防ぐために、フィリピンやタイなどいくつかのアジア諸国で利下げが延期された。

 世界の経済的および政治的要因:

 中国製品に対する関税の可能性など、米国の国内政治や経済政策は、世界の経済環境にさらなる影響を与え、アジア市場が直面する不確実性を高めている。

 米国の高水準の国家債務と政治的二極化はさらなるリスクをもたらし、アジア諸国が多額の投資を行う米国債に対する世界的な信認に影響を与える可能性がある。

 結論として、アジアは1997-98年の金融危機と同様の金融ストレスに見舞われており、米国の高金利の持続による資本流出が引き金となっている。このような状況は、世界的な不確実性の中で通貨を安定させ、経済成長を管理するために、慎重な金融・財政戦略を必要としている。

【視点】

現在のアジアの経済状況は、1997-98年のアジア金融危機と類似した点が多く見られ、特にアメリカ連邦準備制度(FRB)の「長期にわたる高金利」政策による資本流出が大きな要因となっている。

1. アメリカの金融政策と資本流出

FRBの高金利政策

アメリカのインフレ率が高止まりしているため、FRBは金利を高い水準に維持している。2024年4月のインフレ率は前年比3.4%で、FRBの目標である2%を大きく上回っている。

市場は当初、FRBが今年5回から7回の利下げを行うと予想していたが、これは実現しておらず、逆に金利が高止まりする見通しが強まっている。

資本流出の影響

高金利が維持されることで、アメリカの債券市場や他の投資先が魅力的となり、アジアから資本が流出している。これにより、アジアの金融市場は資金不足に陥り、通貨にも圧力がかかっている。

2. アジア通貨への影響

通貨の下落

資本流出により、アジアの通貨は価値を下げている。例えば、マレーシアのリンギットは26年ぶりの低水準に達した。これは1997-98年の危機時と同様の状況である。

インドネシア中央銀行は、ルピアの下落を防ぐために基準金利を6.25%に引き上げた。

3. 1997-98年の危機との比較

共通点

1997-98年のアジア金融危機は、強いドルと資本の急激な流出が一因でした。現在の状況も同様で、ドルの強さが資本流出を引き起こし、アジアの通貨と経済に圧力をかけている。

さらに、現在の状況は地政学的緊張や米中貿易戦争といったグローバルな経済不確実性によって複雑化している。

4. 経済戦略と課題

金融政策の対応

アジア各国は、通貨安と経済の安定を図るために、慎重な金融政策を取る必要がある。例えば、中国人民銀行(PBOC)は利下げを検討しているが、これにより人民元が大幅に下落する可能性があり、さらなる経済的な不確実性を生む恐れがある。

フィリピンやタイでは、資本流出を防ぐために利下げの計画を再考する動きが見られる。

5. グローバルな経済および政治的要因

アメリカの国内政治と経済政策

アメリカ国内の政治状況や経済政策もグローバルな経済環境に影響を与えている。例えば、米中間の関税戦争はアジア市場にさらなる不確実性をもたらしている。

アメリカの国家債務が約35兆ドルに達し、政治的な分断が深まる中、信頼性が低下していることもリスクとなっている。

潜在的なリスク

アメリカの極端な政治的分断や、債務上限問題に関する政争は、アジアにとっても懸念材料である。アメリカの債務が中国の年間GDPの2倍以上であり、日本の8倍以上であることは、アジア経済にとって大きな不安要因である。

まとめ

総じて、アジアは1997-98年の金融危機と似た状況に直面している。FRBの高金利政策による資本流出が、アジアの通貨と経済に大きな圧力をかけている。このような状況下で、アジアの政策立案者は慎重な金融政策と経済戦略を駆使して、通貨の安定と経済成長の両立を図る必要がある。また、グローバルな経済および政治の動向も注意深く監視することが求められる。

【要点】

・アメリカの金融政策と資本流出

高金利維持: FRBはインフレ抑制のために金利を高い水準に維持(2024年4月のインフレ率は3.4%)。

資本流出: 高金利によりアメリカの投資先が魅力的となり、アジアから資本が流出。アジアの金融市場は資金不足に陥る 。

・アジア通貨への影響

通貨の下落: 資本流出によりアジアの通貨が価値を下げる。例えば、マレーシアのリンギットは26年ぶりの低水準に達する 。

中央銀行の対応: インドネシアはルピアの下落を防ぐために基準金利を6.25%に引き上げ 。

・1997-98年の危機との比較

共通点: 強いドルと急激な資本流出が、1997-98年のアジア金融危機の一因であり、現在も同様の状況 。

複雑化: 地政学的緊張や米中貿易戦争など、グローバルな経済不確実性が現在の状況をさらに複雑化 。

・経済戦略と課題

慎重な金融政策: アジア各国は通貨安と経済の安定を図るために慎重な金融政策を採用。中国は利下げを検討するが、人民元の大幅な下落を懸念 。

利下げの再考: フィリピンやタイでは、資本流出を防ぐために利下げの計画を再考 。

・グローバルな経済および政治的要因

アメリカの国内政治: 米中間の関税戦争など、アメリカの経済政策がアジア市場に不確実性をもたらす 。

国家債務のリスク: アメリカの国家債務が約35兆ドルに達し、政治的な分断が信頼性を低下させる 。

・潜在的なリスク

政治的分断と債務上限問題: アメリカの極端な政治的分断や債務上限問題がアジアに懸念材料 。

グローバルな影響: アメリカの債務が中国の年間GDPの2倍以上、日本の8倍以上であることがアジア経済に不安をもたらす 。

・まとめ

類似点と対策: 現在の状況は1997-98年のアジア金融危機と似ており、FRBの高金利政策による資本流出がアジアの通貨と経済に大きな圧力をかけている。

経済戦略の重要性: アジアの政策立案者は慎重な金融政策と経済戦略を駆使し、通貨の安定と経済成長の両立を図る必要がある。

グローバル動向の監視: グローバルな経済および政治の動向を注意深く監視することが求められる。

【参考】

1997年から1998年にかけてのアジア金融危機

概要

アジア通貨危機は、1997年7月のタイ・バーツ切り下げを発端として、1997年から1998年にかけてタイ及び周辺のアジア諸国において発生した通貨危機及び金融危機である。この危機は、東アジア、東南アジアの各国経済に甚大な被害をもたらした。

原因

アジア通貨危機の主な原因は以下の通り。

短資流入の急増と脆弱な金融システム: アジア各国は、1980年代後半から1990年代前半にかけて、高金利政策と経済成長により、海外からの短資流入が急増した。しかし、これらの国々の金融システムは脆弱であり、急増した短資流入に対応しきれなかった。

経常赤字と財政赤字: アジア各国は、貿易赤字と財政赤字を抱えていた。特に、タイは経常収支の赤字が大きかったため、通貨への投機攻撃を受けやすくなっていた。

為替レート制度の問題: 当時、多くのアジア諸国は固定為替レート制度を採用していた。固定為替レート制度は、通貨の安定性を保つ効果がある一方で、為替市場の変動に対応することが難しく、投機攻撃を受けやすいという弱点がある。

経過

1997年7月、タイ政府は、短資流入の急増によるバーツの暴落を防ぐために、バーツの固定為替レート制度を放棄し、バーツを大幅に切り下げた。これが、アジア通貨危機の始まりとなった。

その後、タイの通貨危機は、インドネシア、韓国、マレーシアなど他のアジア諸国にも波及し、これらの国々でも通貨が大幅に下落した。通貨下落は、これらの国々の経済に深刻な打撃を与え、企業の倒産や失業率の急増を引き起こした。

影響

アジア通貨危機は、アジア各国に大きな経済的、社会的影響を与えた。主な影響は以下の通り。

経済成長の停滞: アジア各国は、アジア通貨危機の影響で、経済成長が大幅に停滞した。特に、タイ、インドネシア、韓国などの影響は大きかった。

企業の倒産: アジア通貨危機の影響で、多くの企業が倒産した。特に、金融機関や不動産会社などの倒産が多かった。

失業率の急増: アジア通貨危機の影響で、失業率が急増しました。特に、若者の失業率が著しく高まった。

貧困の拡大: アジア通貨危機の影響で、貧困層が拡大した。特に、都市部の貧困層が増加した。

社会不安の増大: アジア通貨危機の影響で、社会不安が増大した。各地でデモや暴動が発生した。

復興

アジア通貨危機は、アジア各国にとって大きな試練であったが、各国は国際通貨基金(IMF)などの支援を受けながら、徐々に経済を復興させてきた。

復興過程においては、以下の政策が重要であった。

金融システム改革: 金融システムの脆弱性を解消するために、金融機関の規制強化や不良債権処理などが進められた。

財政改革: 財政赤字を削減するために、財政支出の削減や税制改革などが進められた。

構造改革: 経済の競争力を強化するために、労働市場改革や企業改革などが進められた。

アジア通貨危機は、アジア各国に大きな教訓を与えた。この危機を教訓として、アジア各国は、経済の健全性を強化し、危機への対応力を高めてきた。

日本への影響

アジア通貨危機は、日本経済にも大きな影響を与えた。具体的には、以下の影響があった。

輸出の減少: アジア通貨危機の影響で、輸出が減少した。特に、自動車や電機製品などの輸出が大きく減少した。

金融機関の不良債権増加: アジア通貨危機の影響で、日本の金融機関の不良債権が増加した。

株価の暴落: アジア通貨危機の影響で、日本の株価が暴落した。日経平均株価は、1997年12月に史上最高値を更新した後、1998年10月に史上最安値を記録した。

日本政府は、アジア通貨危機の影響に対処するために、財政出動や金融政策の緩和などの対策を講じた。しかし、これらの対策は十分な効果を発揮しなかった。

(【参考】はブログ作成者が付記した。)

引用・参照・底本

Asia starting to feel like 1997-98 all over again ASIATIMES 2024.05.23

https://asiatimes.com/2024/05/asia-starting-to-feel-like-1997-98-all-over-again/?mc_cid=f9692cc125&mc_eid=69a7d1ef3c

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