中国海警局:艦隊編成によるパトロール執行訓練を実施 ― 2024年11月12日 21:50
【概要】
2024年11月11日、Global Timesによる報道で、中国海警局(China Coast Guard, CCG)が南シナ海の黄岩島(Huangyan Dao)周辺海域において、艦隊編成によるパトロール執行訓練を実施したことが確認された。この訓練の様子を映した映像が公開され、CCGの数隻の巡視船がこの地域で活動していることが示された。
この訓練では、大型の千トンクラスの巡視船と、より機動性の高い百トンクラスの小型船が使用された。千トンクラスの船は、巡航および補給能力が強く、長期間にわたり黄岩島周辺の海域でパトロールや法執行活動を行うことが可能であると説明されている。一方、百トンクラスの巡視船は機動性が高く、迅速に移動する目標を追跡し、船上検査などの対応が柔軟に行える点が特徴である。
CCGは、黄岩島が中国固有の領土であり、中国は長年にわたり平和的に同地域における主権と管轄権を行使してきたと強調している。さらに、中国は11月10日(日曜日)に黄岩島に隣接する領海の基線を発表し、今後も同地域でのパトロールや法執行活動を強化することを表明した。
この発表の背景には、フィリピンが11月8日に「フィリピン海域法」および「フィリピン群島航路法」を導入したことがある。この動きに対し、中国はフィリピンの駐中国大使を召喚し、厳重抗議を行ったとされる。
CCGはまた、フィリピン当局が漁船に対し黄岩島のラグーン内での違法操業を奨励していると批判し、一部のフィリピン漁民が毒を用いた漁や絶滅危惧種の捕獲、脆弱な海洋生態系を損なう行為に従事していると非難している。
CCGは、今後も黄岩島周辺の領海および関連する海域で、海警法、漁業法、海洋環境保護法などの法律、および国際法である国連海洋法条約に基づき、海洋生態環境と生物資源の保護を徹底するとしている。また、CCGはこれらの海域における秩序を維持し、国家の領土主権と海洋権益を断固として守ると表明している。
中国南シナ海研究院の海洋法政策研究所副所長であるDing Duo氏は、黄岩島の領海基線が設定されたことで、フィリピンによる侵入行為に対して、より明確で具体的な対応が可能になると述べた。これまで、中国はフィリピンとの友好関係を考慮し、同地域でのフィリピン漁民に対し、運用上の一時的な措置を取ってきた。しかし、フィリピンが挑発行為を続ける場合は、同地域でのフィリピン漁業活動に対する管理を強化するとしている。
Ding氏はまた、これまでフィリピンの船舶が中国の水域に侵入しているかどうかの判断が難しかったが、今後は排他的経済水域、領海、内水への侵入がより明確に識別できるため、それに応じた対抗措置もより具体的になると説明している。
【詳細】
中国海警局(CCG)は、黄岩島(Huangyan Dao)周辺海域でのパトロール執行訓練を実施し、この活動の様子がGlobal Timesにより映像として報道された。映像には、CCGの巡視船が同地域で隊列を組んでパトロール活動を行っている姿が映されている。黄岩島は南シナ海に位置し、中国はこの島が自国の「固有の領土」であると主張しており、これに基づき管轄権の行使と海上パトロールを長期にわたり続けていると強調している。
巡視船の構成と特徴
この訓練には、大型の千トンクラスの巡視船と百トンクラスの小型巡視船が動員された。千トンクラスの船は大型であり、航行距離が長く、補給能力に優れているため、長期的な海域監視や法執行活動に適している。これにより、CCGは黄岩島周辺に長期間滞在し、広範囲にわたるパトロールを実施することが可能となっている。一方で、百トンクラスの巡視船はサイズが小さく機動力が高いため、迅速に移動し、対象を追跡したり、動きの早い目標を追うことに適している。また、これらの船は柔軟な法執行のためのボーディング検査(船上での検査活動)にも対応可能である。
黄岩島の領有権と海域基線の設定
黄岩島の領有権について中国は、「歴史的かつ法的に固有の領土である」と主張しており、実際に長年にわたって平和的かつ効果的にその周辺海域での主権と管轄権を行使していると説明している。2024年11月10日、中国政府は新たに黄岩島に隣接する領海の基線を設定し発表した。この基線設定は、同地域での海域境界を明確にするものであり、今後の法執行活動や領土主権の主張を支える重要な措置とされている。
フィリピンとの摩擦と抗議
この基線設定とパトロールの強化は、フィリピン政府が11月8日に「フィリピン海域法」(Philippine Maritime Zones Act)および「フィリピン群島航路法」(Philippine Archipelagic Sea Lanes Act)を制定したことを背景としている。この法律はフィリピンが独自の海域境界を主張し、群島国家としての海上航行ルールを定めるものであり、南シナ海における黄岩島周辺での権益を巡る中国との摩擦を引き起こしている。この動きに対して中国政府は、フィリピンの駐中国大使を召喚し、強い抗議を表明した。
フィリピン漁業活動に対する批判と対策
CCGは、フィリピン当局が自国の漁民に対し、黄岩島ラグーン内での違法な漁業活動を奨励していると非難している。具体的には、一部のフィリピン漁民が毒を使用した漁法や絶滅危惧種の捕獲、さらにラグーンの生態系を損なう行為に従事しているとされている。このため、CCGは同地域における生態環境および海洋生物資源の保護を強化し、秩序の維持に努めると表明している。これらの取り組みは、中国の「海警法」や「漁業法」、「海洋環境保護法」などの国内法、さらに国際法である「国連海洋法条約(UNCLOS)」に基づいて行われるとしている。
今後の法執行強化と具体的対抗措置
中国南シナ海研究院の丁多(Ding Duo)副所長は、黄岩島の領海基線の設定によって、今後はフィリピン船舶がどの区域に侵入しているかを明確に判断できるようになると述べている。基線設定により、排他的経済水域(EEZ)、領海、内水といった各区域が明確に識別され、フィリピンの船がこれらの水域に侵入した場合の対抗措置も具体化できるようになるという。
さらにDing氏は、これまで中国はフィリピンとの友好関係を考慮し、同地域でのフィリピン漁民に対し、運用上の一時的な措置として寛容な対応を取ってきたと説明する。しかし、フィリピン側が挑発行為を続ける場合、中国は黄岩島周辺でのフィリピン漁民の活動を一層厳しく管理し、取り締まりを強化する可能性があるとしている。このように、中国側は黄岩島周辺においてフィリピン船舶に対しより厳密なパトロールと法執行を行い、領有権や海洋権益を断固として保護する姿勢を示している。
【要点】
1.訓練の実施: 中国海警局(CCG)は、南シナ海の黄岩島(Huangyan Dao)周辺でパトロール執行訓練を行った。
2.参加船舶の特徴:
・千トンクラス: 長距離航行と補給能力が高く、長期間のパトロールが可能。
・百トンクラス: 高い機動力と柔軟な法執行が可能で、迅速な追跡と船上検査に適している。
3.領有権の主張: 中国は黄岩島を「固有の領土」としており、長年にわたり同地域での主権と管轄権を行使してきたと主張している。
4.海域基線の設定: 2024年11月10日に黄岩島の領海基線を新たに設定し、今後の法執行強化に備える措置とした。
5.フィリピンの法律制定と摩擦: フィリピンが「フィリピン海域法」および「フィリピン群島航路法」を制定したことを受け、中国は駐中国フィリピン大使に抗議した。
6.フィリピン漁民の活動への批判: CCGはフィリピン当局が自国漁民に黄岩島ラグーン内での違法操業を奨励しているとし、一部の漁民が環境を損なう漁業活動を行っていると非難している。
7.生態系保護の表明: CCGは海警法や海洋環境保護法、UNCLOSに基づき、黄岩島周辺での海洋生態系と生物資源の保護に取り組むとした。
8.具体的対策と対応強化: 領海基線の設定により、フィリピン船の侵入に対し領海やEEZ内での法執行を明確化し、対抗措置を強化する予定。
9.今後の管理強化: 中国側は、挑発行為が続く場合、黄岩島周辺でのフィリピン漁民の活動への管理と取締りを強化する方針を示している。
【引用・参照・底本】
China Coast Guard conducts patrol enforcement drill in Huangyan Dao waters GT 2024.11.11
https://www.globaltimes.cn/page/202411/1322855.shtml
2024年11月11日、Global Timesによる報道で、中国海警局(China Coast Guard, CCG)が南シナ海の黄岩島(Huangyan Dao)周辺海域において、艦隊編成によるパトロール執行訓練を実施したことが確認された。この訓練の様子を映した映像が公開され、CCGの数隻の巡視船がこの地域で活動していることが示された。
この訓練では、大型の千トンクラスの巡視船と、より機動性の高い百トンクラスの小型船が使用された。千トンクラスの船は、巡航および補給能力が強く、長期間にわたり黄岩島周辺の海域でパトロールや法執行活動を行うことが可能であると説明されている。一方、百トンクラスの巡視船は機動性が高く、迅速に移動する目標を追跡し、船上検査などの対応が柔軟に行える点が特徴である。
CCGは、黄岩島が中国固有の領土であり、中国は長年にわたり平和的に同地域における主権と管轄権を行使してきたと強調している。さらに、中国は11月10日(日曜日)に黄岩島に隣接する領海の基線を発表し、今後も同地域でのパトロールや法執行活動を強化することを表明した。
この発表の背景には、フィリピンが11月8日に「フィリピン海域法」および「フィリピン群島航路法」を導入したことがある。この動きに対し、中国はフィリピンの駐中国大使を召喚し、厳重抗議を行ったとされる。
CCGはまた、フィリピン当局が漁船に対し黄岩島のラグーン内での違法操業を奨励していると批判し、一部のフィリピン漁民が毒を用いた漁や絶滅危惧種の捕獲、脆弱な海洋生態系を損なう行為に従事していると非難している。
CCGは、今後も黄岩島周辺の領海および関連する海域で、海警法、漁業法、海洋環境保護法などの法律、および国際法である国連海洋法条約に基づき、海洋生態環境と生物資源の保護を徹底するとしている。また、CCGはこれらの海域における秩序を維持し、国家の領土主権と海洋権益を断固として守ると表明している。
中国南シナ海研究院の海洋法政策研究所副所長であるDing Duo氏は、黄岩島の領海基線が設定されたことで、フィリピンによる侵入行為に対して、より明確で具体的な対応が可能になると述べた。これまで、中国はフィリピンとの友好関係を考慮し、同地域でのフィリピン漁民に対し、運用上の一時的な措置を取ってきた。しかし、フィリピンが挑発行為を続ける場合は、同地域でのフィリピン漁業活動に対する管理を強化するとしている。
Ding氏はまた、これまでフィリピンの船舶が中国の水域に侵入しているかどうかの判断が難しかったが、今後は排他的経済水域、領海、内水への侵入がより明確に識別できるため、それに応じた対抗措置もより具体的になると説明している。
【詳細】
中国海警局(CCG)は、黄岩島(Huangyan Dao)周辺海域でのパトロール執行訓練を実施し、この活動の様子がGlobal Timesにより映像として報道された。映像には、CCGの巡視船が同地域で隊列を組んでパトロール活動を行っている姿が映されている。黄岩島は南シナ海に位置し、中国はこの島が自国の「固有の領土」であると主張しており、これに基づき管轄権の行使と海上パトロールを長期にわたり続けていると強調している。
巡視船の構成と特徴
この訓練には、大型の千トンクラスの巡視船と百トンクラスの小型巡視船が動員された。千トンクラスの船は大型であり、航行距離が長く、補給能力に優れているため、長期的な海域監視や法執行活動に適している。これにより、CCGは黄岩島周辺に長期間滞在し、広範囲にわたるパトロールを実施することが可能となっている。一方で、百トンクラスの巡視船はサイズが小さく機動力が高いため、迅速に移動し、対象を追跡したり、動きの早い目標を追うことに適している。また、これらの船は柔軟な法執行のためのボーディング検査(船上での検査活動)にも対応可能である。
黄岩島の領有権と海域基線の設定
黄岩島の領有権について中国は、「歴史的かつ法的に固有の領土である」と主張しており、実際に長年にわたって平和的かつ効果的にその周辺海域での主権と管轄権を行使していると説明している。2024年11月10日、中国政府は新たに黄岩島に隣接する領海の基線を設定し発表した。この基線設定は、同地域での海域境界を明確にするものであり、今後の法執行活動や領土主権の主張を支える重要な措置とされている。
フィリピンとの摩擦と抗議
この基線設定とパトロールの強化は、フィリピン政府が11月8日に「フィリピン海域法」(Philippine Maritime Zones Act)および「フィリピン群島航路法」(Philippine Archipelagic Sea Lanes Act)を制定したことを背景としている。この法律はフィリピンが独自の海域境界を主張し、群島国家としての海上航行ルールを定めるものであり、南シナ海における黄岩島周辺での権益を巡る中国との摩擦を引き起こしている。この動きに対して中国政府は、フィリピンの駐中国大使を召喚し、強い抗議を表明した。
フィリピン漁業活動に対する批判と対策
CCGは、フィリピン当局が自国の漁民に対し、黄岩島ラグーン内での違法な漁業活動を奨励していると非難している。具体的には、一部のフィリピン漁民が毒を使用した漁法や絶滅危惧種の捕獲、さらにラグーンの生態系を損なう行為に従事しているとされている。このため、CCGは同地域における生態環境および海洋生物資源の保護を強化し、秩序の維持に努めると表明している。これらの取り組みは、中国の「海警法」や「漁業法」、「海洋環境保護法」などの国内法、さらに国際法である「国連海洋法条約(UNCLOS)」に基づいて行われるとしている。
今後の法執行強化と具体的対抗措置
中国南シナ海研究院の丁多(Ding Duo)副所長は、黄岩島の領海基線の設定によって、今後はフィリピン船舶がどの区域に侵入しているかを明確に判断できるようになると述べている。基線設定により、排他的経済水域(EEZ)、領海、内水といった各区域が明確に識別され、フィリピンの船がこれらの水域に侵入した場合の対抗措置も具体化できるようになるという。
さらにDing氏は、これまで中国はフィリピンとの友好関係を考慮し、同地域でのフィリピン漁民に対し、運用上の一時的な措置として寛容な対応を取ってきたと説明する。しかし、フィリピン側が挑発行為を続ける場合、中国は黄岩島周辺でのフィリピン漁民の活動を一層厳しく管理し、取り締まりを強化する可能性があるとしている。このように、中国側は黄岩島周辺においてフィリピン船舶に対しより厳密なパトロールと法執行を行い、領有権や海洋権益を断固として保護する姿勢を示している。
【要点】
1.訓練の実施: 中国海警局(CCG)は、南シナ海の黄岩島(Huangyan Dao)周辺でパトロール執行訓練を行った。
2.参加船舶の特徴:
・千トンクラス: 長距離航行と補給能力が高く、長期間のパトロールが可能。
・百トンクラス: 高い機動力と柔軟な法執行が可能で、迅速な追跡と船上検査に適している。
3.領有権の主張: 中国は黄岩島を「固有の領土」としており、長年にわたり同地域での主権と管轄権を行使してきたと主張している。
4.海域基線の設定: 2024年11月10日に黄岩島の領海基線を新たに設定し、今後の法執行強化に備える措置とした。
5.フィリピンの法律制定と摩擦: フィリピンが「フィリピン海域法」および「フィリピン群島航路法」を制定したことを受け、中国は駐中国フィリピン大使に抗議した。
6.フィリピン漁民の活動への批判: CCGはフィリピン当局が自国漁民に黄岩島ラグーン内での違法操業を奨励しているとし、一部の漁民が環境を損なう漁業活動を行っていると非難している。
7.生態系保護の表明: CCGは海警法や海洋環境保護法、UNCLOSに基づき、黄岩島周辺での海洋生態系と生物資源の保護に取り組むとした。
8.具体的対策と対応強化: 領海基線の設定により、フィリピン船の侵入に対し領海やEEZ内での法執行を明確化し、対抗措置を強化する予定。
9.今後の管理強化: 中国側は、挑発行為が続く場合、黄岩島周辺でのフィリピン漁民の活動への管理と取締りを強化する方針を示している。
【引用・参照・底本】
China Coast Guard conducts patrol enforcement drill in Huangyan Dao waters GT 2024.11.11
https://www.globaltimes.cn/page/202411/1322855.shtml