ブリンケン国務長官:HTS)と直接接触 ― 2024年12月16日 18:05
【概要】
2024年12月15日、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、アメリカ政府がハヤート・タハリール・アル=シャーム(HTS)と直接接触していることを確認した。HTSは、アルカイダから派生した組織であり、アメリカによってテロ組織に指定されている。また、最近のシリア前大統領バッシャール・アル=アサドの失脚を主導した勢力でもある。
ブリンケン長官は、「我々はHTSおよび他の当事者と接触している。我々のシリア国民へのメッセージは、彼らの成功を望み、その実現を支援する準備があるということだ」と述べた。これは、アメリカがHTSとの協議を行っているとする以前の報道を裏付けるものである。
現在、HTSとその指導者アブ・ムハンマド・アル=ジュラーニ(本名アフマド・アル=シャラー)が、新たな「移行政府」を統治している。ブリンケン長官および他のアメリカ高官は、アサド政権の崩壊を歓迎し、ジュラーニとの協力も辞さない姿勢を示している。
ジュラーニは2016年以降、過去のイスラム国およびアルカイダとの関係を清算し、「穏健派」として西側の支持を得ようとする再ブランド化を進めてきた。2017年には、HTSを他のイスラム主義派閥と統合し、新たな組織として発足させた。このため、2018年にアメリカ国務省から外国テロ組織として指定された。また、ジュラーニにはアメリカ政府から1,000万ドルの懸賞金がかけられている。
バイデン政権は現在、HTSのテロ指定を解除する可能性を検討していると報じられている。テロ指定が解除されれば、アメリカがHTS主導の政府に対して大規模な支援を行う道が開かれる。ブリンケン長官は数日前に声明を発表し、アメリカが支援を提供する条件を概説した。その中で「アメリカはシリア主導かつシリア所有の政治的移行を完全に支持する。この移行プロセスは、透明性と説明責任の国際基準を満たす信頼できる、包摂的かつ非宗派的な統治を目指すべきである」と述べた。
一方で、アメリカ政府はHTSに対して柔軟な姿勢を見せているが、ハマスやヒズボラなど他の組織のテロ指定を理由に、イスラエルによる民間人の大量殺害を正当化する主張を展開している。
【詳細】
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官が、2024年12月15日にハヤート・タハリール・アル=シャーム(HTS)との直接接触を認めた発言は、アメリカのシリア政策において重要な転換点とみなされるべきである。以下に、関連する背景や状況をさらに詳しく説明する。
HTSの背景と位置付け
HTSは、アルカイダのシリア支部であったアル=ヌスラ戦線から派生した組織であり、イスラム主義を基盤とした武装勢力である。2016年、HTSの指導者であるアブ・ムハンマド・アル=ジュラーニ(本名アフマド・アル=シャラー)は、アルカイダとの公式な関係を断絶すると発表し、西側諸国からの支援を得るための「穏健派」への転換を図った。この動きは、ジュラーニが自らの過去のテロ活動を棚上げし、政治的正当性を求める試みとして解釈されている。
2017年には、HTSは他の武装イスラム主義派閥と統合し、現在の形態となった。しかし、アメリカ国務省は2018年にHTSを外国テロ組織として指定し、ジュラーニには1,000万ドルの懸賞金をかけた。これにより、HTSは国際的には依然としてテロ組織として認識されている。
アサド政権の崩壊とHTSの台頭
シリアのバッシャール・アル=アサド前大統領が最近の攻勢により失脚したことは、HTSを中心とする武装勢力の戦略的勝利である。HTSはこの混乱の中で、新たな「移行政府」の形成を主導し、その支配地域で行政機能を確立しつつある。現在、ジュラーニは自らの本名であるアフマド・アル=シャラーを名乗り、過去の過激派としての経歴から距離を置こうと努めている。
アメリカ政府は、アサド政権の崩壊を歓迎しており、HTSとの協力を検討している。この背景には、アメリカがシリアの政権移行を支援し、自国の地政学的利益を追求する狙いがあると考えられる。
アメリカ政府の立場と政策の変化
ブリンケン国務長官は、アメリカがHTSと接触している理由として、「シリア国民の成功を支援するため」という見解を示している。しかし、アメリカが過去にテロ組織と指定したHTSと連携することは、政策的な矛盾をはらんでいる。現在、バイデン政権はHTSのテロ指定を解除する可能性を模索しており、これが実現すれば、HTS主導の政府に対する公式な支援が可能となる。
ブリンケン長官は、シリアにおける「移行プロセス」について、「透明性、説明責任、包摂性」を満たす非宗派的な統治を求める条件を示した。しかし、HTSがこれらの条件を満たせるかは依然として疑問視されており、国際社会からの懸念も強い。
国際的な反応と懸念
HTSとの接触に対する国際社会の反応はさまざまである。一部の国々は、テロ組織と指定されているHTSとの協力は正当化できないと主張しており、特にロシアやイランは、アメリカがテロ支援に加担していると非難している。一方で、アメリカ政府は、HTSを「政治的主体」として認めることで、シリア問題の安定化を図る意図を示唆している。
また、アメリカ政府がHTSに柔軟な姿勢を示す一方で、ハマスやヒズボラなどの他の武装組織に対しては依然として厳しい態度を取り続けている。このような二重基準は、国際社会におけるアメリカの信頼性を損ねる可能性がある。
結論
アメリカがHTSとの接触を認めたことは、シリア政策における重大な変化を象徴している。ブリンケン長官の発言からは、アメリカがシリアの新たな政権に対して関与を強める意図が読み取れるが、それが国際的なテロ対策や地域の安定に与える影響については議論の余地が残されている。HTSの過去の活動や現在の統治能力に対する懸念は根強く、今後のアメリカの対応が国際社会の注目を集めることは間違いない。
【要点】
1.HTSの背景
・ハヤート・タハリール・アル=シャーム(HTS)は、アルカイダのシリア支部であるアル=ヌスラ戦線から派生した組織である。
・2016年に指導者アブ・ムハンマド・アル=ジュラーニ(本名アフマド・アル=シャラー)がアルカイダとの公式な関係を断絶し、穏健派として再ブランド化を進めた。
・2017年、他のイスラム主義派閥と統合して現在のHTSとなり、2018年にアメリカからテロ組織として指定された。
2.アサド政権の崩壊とHTSの台頭
・最近の攻勢でバッシャール・アル=アサド前大統領が失脚。
・HTSが新たな「移行政府」の形成を主導し、その地域で行政機能を確立。
・ジュラーニは過去の過激派としての経歴から距離を置き、本名を使用するなど、正当性をアピールしている。
3.アメリカの接触と政策の変化
・アントニー・ブリンケン国務長官は、HTSと他の当事者との接触を認めた。
・アメリカは「シリア国民の成功を支援する」と述べ、HTS主導の政府と協力する可能性を示唆。
・バイデン政権はHTSのテロ指定解除を検討中。解除されればHTS政府への大規模支援が可能となる。
4.ブリンケン長官の条件
・アメリカは「透明性、説明責任、包摂性」を備えた非宗派的な統治を求めると表明。
・シリアの移行プロセスが国際基準を満たすべきと主張。
5.国際的な反応
・ロシアやイランなどは、アメリカがHTSと協力することを非難。
・一部では、アメリカの柔軟な対応を地域安定化のための現実的な選択と見る声もある。
・アメリカは他の武装組織(ハマスやヒズボラ)に対して厳格な立場を維持しており、この「二重基準」に批判が集まる。
6.結論と課題
・アメリカのHTS接触はシリア政策の重要な転換点であり、地政学的利益を追求する意図がある。
・しかし、HTSの過去や現在の統治能力に対する懸念が残る中、今後の対応が国際的な議論を呼ぶことは避けられない。
【引用・参照・底本】
Blinken Confirms the US Is in Direct Contact With al-Qaeda-Linked HTS ANTIWAR.com 2024.12.15
https://news.antiwar.com/2024/12/15/blinken-confirms-the-us-is-in-direct-contact-with-al-qaeda-linked-hts/
2024年12月15日、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は、アメリカ政府がハヤート・タハリール・アル=シャーム(HTS)と直接接触していることを確認した。HTSは、アルカイダから派生した組織であり、アメリカによってテロ組織に指定されている。また、最近のシリア前大統領バッシャール・アル=アサドの失脚を主導した勢力でもある。
ブリンケン長官は、「我々はHTSおよび他の当事者と接触している。我々のシリア国民へのメッセージは、彼らの成功を望み、その実現を支援する準備があるということだ」と述べた。これは、アメリカがHTSとの協議を行っているとする以前の報道を裏付けるものである。
現在、HTSとその指導者アブ・ムハンマド・アル=ジュラーニ(本名アフマド・アル=シャラー)が、新たな「移行政府」を統治している。ブリンケン長官および他のアメリカ高官は、アサド政権の崩壊を歓迎し、ジュラーニとの協力も辞さない姿勢を示している。
ジュラーニは2016年以降、過去のイスラム国およびアルカイダとの関係を清算し、「穏健派」として西側の支持を得ようとする再ブランド化を進めてきた。2017年には、HTSを他のイスラム主義派閥と統合し、新たな組織として発足させた。このため、2018年にアメリカ国務省から外国テロ組織として指定された。また、ジュラーニにはアメリカ政府から1,000万ドルの懸賞金がかけられている。
バイデン政権は現在、HTSのテロ指定を解除する可能性を検討していると報じられている。テロ指定が解除されれば、アメリカがHTS主導の政府に対して大規模な支援を行う道が開かれる。ブリンケン長官は数日前に声明を発表し、アメリカが支援を提供する条件を概説した。その中で「アメリカはシリア主導かつシリア所有の政治的移行を完全に支持する。この移行プロセスは、透明性と説明責任の国際基準を満たす信頼できる、包摂的かつ非宗派的な統治を目指すべきである」と述べた。
一方で、アメリカ政府はHTSに対して柔軟な姿勢を見せているが、ハマスやヒズボラなど他の組織のテロ指定を理由に、イスラエルによる民間人の大量殺害を正当化する主張を展開している。
【詳細】
アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官が、2024年12月15日にハヤート・タハリール・アル=シャーム(HTS)との直接接触を認めた発言は、アメリカのシリア政策において重要な転換点とみなされるべきである。以下に、関連する背景や状況をさらに詳しく説明する。
HTSの背景と位置付け
HTSは、アルカイダのシリア支部であったアル=ヌスラ戦線から派生した組織であり、イスラム主義を基盤とした武装勢力である。2016年、HTSの指導者であるアブ・ムハンマド・アル=ジュラーニ(本名アフマド・アル=シャラー)は、アルカイダとの公式な関係を断絶すると発表し、西側諸国からの支援を得るための「穏健派」への転換を図った。この動きは、ジュラーニが自らの過去のテロ活動を棚上げし、政治的正当性を求める試みとして解釈されている。
2017年には、HTSは他の武装イスラム主義派閥と統合し、現在の形態となった。しかし、アメリカ国務省は2018年にHTSを外国テロ組織として指定し、ジュラーニには1,000万ドルの懸賞金をかけた。これにより、HTSは国際的には依然としてテロ組織として認識されている。
アサド政権の崩壊とHTSの台頭
シリアのバッシャール・アル=アサド前大統領が最近の攻勢により失脚したことは、HTSを中心とする武装勢力の戦略的勝利である。HTSはこの混乱の中で、新たな「移行政府」の形成を主導し、その支配地域で行政機能を確立しつつある。現在、ジュラーニは自らの本名であるアフマド・アル=シャラーを名乗り、過去の過激派としての経歴から距離を置こうと努めている。
アメリカ政府は、アサド政権の崩壊を歓迎しており、HTSとの協力を検討している。この背景には、アメリカがシリアの政権移行を支援し、自国の地政学的利益を追求する狙いがあると考えられる。
アメリカ政府の立場と政策の変化
ブリンケン国務長官は、アメリカがHTSと接触している理由として、「シリア国民の成功を支援するため」という見解を示している。しかし、アメリカが過去にテロ組織と指定したHTSと連携することは、政策的な矛盾をはらんでいる。現在、バイデン政権はHTSのテロ指定を解除する可能性を模索しており、これが実現すれば、HTS主導の政府に対する公式な支援が可能となる。
ブリンケン長官は、シリアにおける「移行プロセス」について、「透明性、説明責任、包摂性」を満たす非宗派的な統治を求める条件を示した。しかし、HTSがこれらの条件を満たせるかは依然として疑問視されており、国際社会からの懸念も強い。
国際的な反応と懸念
HTSとの接触に対する国際社会の反応はさまざまである。一部の国々は、テロ組織と指定されているHTSとの協力は正当化できないと主張しており、特にロシアやイランは、アメリカがテロ支援に加担していると非難している。一方で、アメリカ政府は、HTSを「政治的主体」として認めることで、シリア問題の安定化を図る意図を示唆している。
また、アメリカ政府がHTSに柔軟な姿勢を示す一方で、ハマスやヒズボラなどの他の武装組織に対しては依然として厳しい態度を取り続けている。このような二重基準は、国際社会におけるアメリカの信頼性を損ねる可能性がある。
結論
アメリカがHTSとの接触を認めたことは、シリア政策における重大な変化を象徴している。ブリンケン長官の発言からは、アメリカがシリアの新たな政権に対して関与を強める意図が読み取れるが、それが国際的なテロ対策や地域の安定に与える影響については議論の余地が残されている。HTSの過去の活動や現在の統治能力に対する懸念は根強く、今後のアメリカの対応が国際社会の注目を集めることは間違いない。
【要点】
1.HTSの背景
・ハヤート・タハリール・アル=シャーム(HTS)は、アルカイダのシリア支部であるアル=ヌスラ戦線から派生した組織である。
・2016年に指導者アブ・ムハンマド・アル=ジュラーニ(本名アフマド・アル=シャラー)がアルカイダとの公式な関係を断絶し、穏健派として再ブランド化を進めた。
・2017年、他のイスラム主義派閥と統合して現在のHTSとなり、2018年にアメリカからテロ組織として指定された。
2.アサド政権の崩壊とHTSの台頭
・最近の攻勢でバッシャール・アル=アサド前大統領が失脚。
・HTSが新たな「移行政府」の形成を主導し、その地域で行政機能を確立。
・ジュラーニは過去の過激派としての経歴から距離を置き、本名を使用するなど、正当性をアピールしている。
3.アメリカの接触と政策の変化
・アントニー・ブリンケン国務長官は、HTSと他の当事者との接触を認めた。
・アメリカは「シリア国民の成功を支援する」と述べ、HTS主導の政府と協力する可能性を示唆。
・バイデン政権はHTSのテロ指定解除を検討中。解除されればHTS政府への大規模支援が可能となる。
4.ブリンケン長官の条件
・アメリカは「透明性、説明責任、包摂性」を備えた非宗派的な統治を求めると表明。
・シリアの移行プロセスが国際基準を満たすべきと主張。
5.国際的な反応
・ロシアやイランなどは、アメリカがHTSと協力することを非難。
・一部では、アメリカの柔軟な対応を地域安定化のための現実的な選択と見る声もある。
・アメリカは他の武装組織(ハマスやヒズボラ)に対して厳格な立場を維持しており、この「二重基準」に批判が集まる。
6.結論と課題
・アメリカのHTS接触はシリア政策の重要な転換点であり、地政学的利益を追求する意図がある。
・しかし、HTSの過去や現在の統治能力に対する懸念が残る中、今後の対応が国際的な議論を呼ぶことは避けられない。
【引用・参照・底本】
Blinken Confirms the US Is in Direct Contact With al-Qaeda-Linked HTS ANTIWAR.com 2024.12.15
https://news.antiwar.com/2024/12/15/blinken-confirms-the-us-is-in-direct-contact-with-al-qaeda-linked-hts/