「天行健,君子以自強不息」 ― 2025年02月15日 21:45
【概要】
中国の王毅外相は、2025年2月15日に開催された第61回ミュンヘン安全保障会議(MSC)において、米中間の対立を避けるべきであり、そうでなければ世界が苦しむことになると述べた。王毅外相は、米国との政策において一貫性と安定性を維持しており、簡単に方針を転換することはないと強調し、これは大国としての戦略的な決意と信頼性を示すものであると述べた。
王外相は、習近平国家主席が提案した「相互尊重、平和的共存、ウィンウィンの協力」の3つの原則に基づく米中関係を強調した。彼は、両国の社会制度はそれぞれの国民の選択を反映しており、互いに変革や打倒を試みることは非現実的だとし、相互尊重が米中関係の前提であり、平和的共存は自然な流れであると説明した。また、世界が直面する課題に対して米国と中国が協力することが求められており、これは両国の国際的な責任であるとも述べた。
中国は、これらの3つの原則に基づき、米国との安定した健全な関係を築く準備が整っているとし、米国が中国を抑圧し続けるならば、中国は最後まで自国の立場を貫くと表明した。王外相は、国家主権や尊厳、正当な発展権を守るとともに、国際的な公正と正義を擁護する姿勢を強調した。
また、王外相は中国人民が迷信を信じず、困難を乗り越えて発展してきたことに触れ、国の強さを表現するための中国の格言を紹介した。彼は「中国の未来、そして米中関係の未来に自信を持っており、我々は一つの方向に向かって努力すべきである」と述べ、国際社会の最大の期待はこの3つの原則に従うことだと強調した。
中国社会科学院のLü Xiang教授は、王外相の発言は中国の米中関係に対する一貫した基本的立場を再確認するものであり、今後の米国政府の中国政策の動向が重要であると述べた。王外相の発言は、中国の立場を世界に理解してもらうためのものであり、将来の高レベルな交流の基盤を築くことを目指していると指摘した。
王外相は、グレアム・アリソン教授(ハーバード大学)との会談で、世界が未曾有の変革を迎え、国際的な混乱が続く中で、中国は自国の発展を進め、国際的責任を果たすと述べた。彼は、中国は多国間主義を支持し、国際関係の民主化を進め、秩序ある多極的な世界を推進する必要があるとも強調した。
このように、王外相は米中関係における一貫したアプローチを再確認し、今後の関係の安定的な発展を目指していると述べた。
【詳細】
王毅外相のミュンヘン安全保障会議(MSC)での発言詳細
2025年2月15日、中国の王毅外相(共産党中央政治局委員)は、第61回ミュンヘン安全保障会議(MSC)において、「中国と米国が対立すべきではなく、もし対立すれば世界が苦しむことになる」と述べた。王外相は、中国の対米政策は一貫性と安定性を維持しており、容易に変化することはないと強調した。これは、中国が大国としての戦略的な決意と信頼性を持ち、短期的な政治的変動に左右されることなく、長期的な視野に基づいた外交政策を推進していることを示すものである。
王外相は、中国の対米政策が「相互尊重、平和的共存、ウィンウィンの協力」という習近平国家主席が提唱する3つの原則に基づいていることを改めて強調した。彼は、米中両国の社会制度の違いは、それぞれの国民の選択の結果であり、互いを変革しようとすることは非現実的であると指摘した。このため、「相互尊重」が米中関係の根本的な前提であると述べた。
また、「平和的共存」については、米中が世界の主要国として共存することは自然な流れであり、対立や衝突は世界に深刻な影響を及ぼすと述べた。特に、米中の衝突が国際社会の安定や経済の発展に及ぼす悪影響を指摘し、競争があったとしても対立や衝突に発展すべきではないとした。
さらに、「ウィンウィンの協力」については、現在の国際社会が直面する課題(経済成長、気候変動、地域紛争の解決など)において、中国と米国の協力が不可欠であると主張した。国際社会は米中両国の協力を期待しており、両国は責任ある大国として、協力を通じて国際的な課題に取り組むべきであると述べた。
米国に対する中国の基本姿勢
王外相は、中国は安定し、健全で、持続可能な米中関係を築く意志があるとしつつも、「米国が中国を抑圧し続けるならば、中国は最後まで自国の立場を貫く」と述べた。これは、近年の米国による対中制裁や技術封鎖、軍事的圧力に対する強い警戒感を示すものであり、中国は譲歩するのではなく、主権や国益を守るために断固とした対応を取るという明確なメッセージである。
また、中国は自国の主権、尊厳、正当な発展権を守ると同時に、国際的な公正と正義を維持し、国際関係の基本原則を尊重する姿勢を貫くと述べた。これにより、中国は一方的な米国の圧力に屈することなく、多国間主義を重視しながら国際的なルールに基づいた関係を維持していく方針を強調した。
中国の歴史観と自信
王外相は、中国の歴史的な発展の歩みを強調し、中国人民は「迷信を信じず、幽霊を恐れない」と述べた。これは、中国が過去の困難を乗り越え、自国の発展を成し遂げてきたという自負を示すものである。さらに、古代中国の格言として、「天行健 君子以自強不息」(天の動きは力強く、君子は絶えず努力して自己を高める)」を引用し、中国が自己改革と発展を続ける決意を示した。
また、別の表現として、「彼が強かろうと、微風が丘を撫でるにすぎず。彼が横暴であろうと、月は大河を照らすのみ」という言葉を紹介し、どのような圧力があろうとも中国の安定と発展は揺るがないという自信を示した。
王外相は、「世界の未来、そして米中関係の未来に対する自信がある。我々が進むべき方向は、習主席が提唱する3つの原則に基づくべきであり、これこそが国際社会の最大の期待である」と述べた。
専門家の見解
中国社会科学院のLü Xiang教授は、王外相の発言について「中国の基本的な対米政策の立場を改めて確認するものであり、中国が米中関係を極めて重要視していることを示している」と述べた。また、「現在の米国政府がどのような対中政策を取るかはまだ不透明だが、王外相の発言は将来的な高官レベルの対話に向けた土台を築くものだ」と指摘した。
さらに、中国外交学院のLi Haidong教授は、「米国の新政権が世界との関係を再構築する中で、中国と米国が協力の余地を探る機会が生まれる可能性がある」と述べた。王外相の発言は、中国が米中間の共通利益を模索する姿勢を示しており、対立ではなく協力を模索する余地があることを強調していると分析した。
一方で、専門家らは、「中国が3つの原則を守りつつも、米国の圧力に対して譲歩することはない」と指摘している。中国は引き続き自国の利益を守りながら、関係改善の可能性を探る方針を維持すると見られる。
王外相のキーノートスピーチ
王外相は基調講演の中で、以下の4つの重要な考え方を強調した。
・平等な扱いの推進
すべての国は対等な立場で尊重されるべきであり、覇権主義的な外交は許容されない。
・国際法の尊重
国際社会は法の支配を重視し、恣意的な制裁や一方的な圧力を排除すべきである。
・多国間主義の実践
国際問題の解決には、多国間協力が不可欠であり、特定の国がルールを独占することは許されない。
・開かれた協力と互恵関係
貿易や経済の発展においては、保護主義は問題解決にならず、関税の乱用も有益ではない。「デカップリング(経済の分断)は自らの機会を奪い、高い壁で囲まれた小さな庭(小院高墻)は、自らを閉じ込めることになる」と指摘した。
王外相は、これらの原則に基づき、中国は今後も国際社会における責任ある大国としての役割を果たし、米中関係を安定的に発展させる努力を続けると締めくくった。
【要点】
王毅外相のミュンヘン安全保障会議(MSC)での発言要点
米中関係の基本姿勢
1.対立は世界の利益にならない
・米中が対立すれば世界が苦しむ
・中国の対米政策は一貫性と安定性を維持
2..「3つの原則」を強調(習近平主席の提唱)
・相互尊重:互いの社会制度を尊重し、変革を求めない
・平和的共存:対立や衝突を避け、共存を模索
・ウィンウィンの協力:経済・気候・安全保障などで協力
3. 米国に対する中国の立場
・米国が中国を抑圧すれば、中国は断固として対応する
・主権・尊厳・発展権を守り、国際ルールに基づく関係を重視
・米国の一方的な圧力には屈しない
4. 歴史観と自信
・「中国人民は迷信を信じず、幽霊を恐れない」(過去の困難を乗り越えた自負)
・「天行健 君子以自強不息」(努力し続ける決意)
・「彼が強かろうと、微風が丘を撫でるにすぎず」(圧力に屈しない姿勢)
5. 米中関係の未来
・「米中関係の未来に自信がある」
・習近平主席の「3つの原則」が米中関係の指針となる
6. 専門家の見解
・中国は米中関係を重要視している(Lü Xiang教授)
・対立の中でも協力の余地を模索する可能性(Li Haidong教授)
・中国は圧力には譲歩せず、独自の立場を維持する
7. 基調講演での重要ポイント
・平等な扱い:すべての国は対等に尊重されるべき
・国際法の尊重:恣意的な制裁や圧力は排除
・多国間主義の推進:特定の国のルール独占を許さない
・開かれた協力:経済の分断(デカップリング)は不利益を生む
8. 結論
・中国は国際社会における責任ある大国としての役割を果たす
米中関係の安定と発展に向けた努力を続ける
【参考】
➡️ 「天行健,君子以自強不息:Tiān xíng jiàn, jūnzǐ yǐ zìqiáng bù xī」は、中国古代の経典『周易』(易経)の「乾卦」の象伝(象辞)に由来する言葉である。
1. 出典と原文
この句は『周易・乾卦』の象伝に記載されており、原文は以下の通り。
「天行健,君子以自強不息」。
訳:天の運行は剛健であり、君子はこれに倣い自らを奮い立たせ、努力をやめない。
ここで「天行健」は、天の運行が力強く止まない様子を表し、「君子以自強不息」は、その天の法則に学び、人間も絶えず自己を高め続けるべきだと説いている。
2. 解釈と思想
・天的象徴性
「天」は宇宙や自然の法則を象徴し、その運行は規則的で途切れることなく続く「剛健さ」を持つ。例えば、四季の循環や日月の運行が挙げられる。
・君子のあり方
「君子」は徳を備えた理想的な人物を指す。天の剛健さを手本とし、自らの修養や社会への貢献を絶やさず続けることが求められる。具体的には、学問や道徳的実践を通じた不断の努力が強調される。
・禅との関連
禅の文脈では、「天行健」を「世界の動きは健やかである」と解釈し、現実を肯定し心の安らぎを得るための言葉として用いることもある。
3. 歴史的な影響と具体例
・故事成語の背景
晋代の武将・祖逖(そてき)の逸話が有名である。彼は若い頃、夜明け前に鶏の声を合図に剣術の練習を続け、後に北伐で功績を挙げた。この「聞雞起舞:Wén jī qǐ wǔ(鶏の声で舞い起きる)」の精神は、「自強不息」の実践例とされる。
・現代への影響
清華大学の校訓「自強不息,厚德載物」の一部として採用され、学問と人格の両立を求める理念に反映されている。
4. 哲学的な拡張
・易経のリーダーシップ論
『易経』は君主や指導者向けの書物でもあり、「天行健」はリーダーが天の法則に従い、厳格かつ持続的な姿勢を持つべきだと説く。
・対となる「地勢坤」
「地勢坤,君子以厚德載物:Dì shì kūn, jūnzǐ yǐ hòu dé zài wù」と対句を成し、天の剛健さと地の包容力を対比させ、バランスの取れた人間像を提唱する。
5. まとめ
「天行健,君子以自強不息」は、自然の法則に学び、自己研鑽を続ける人間の理想を表す言葉である。易経の思想を基盤とし、儒教や禅など多様な文脈で解釈され、現代でも個人の努力やリーダーシップの指針として広く引用されている。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
China and US must not come into conflict, or the world will suffer, says Wang Yi at Munich Security Conference GT 2025.02.15
https://www.globaltimes.cn/page/202502/1328485.shtml
中国の王毅外相は、2025年2月15日に開催された第61回ミュンヘン安全保障会議(MSC)において、米中間の対立を避けるべきであり、そうでなければ世界が苦しむことになると述べた。王毅外相は、米国との政策において一貫性と安定性を維持しており、簡単に方針を転換することはないと強調し、これは大国としての戦略的な決意と信頼性を示すものであると述べた。
王外相は、習近平国家主席が提案した「相互尊重、平和的共存、ウィンウィンの協力」の3つの原則に基づく米中関係を強調した。彼は、両国の社会制度はそれぞれの国民の選択を反映しており、互いに変革や打倒を試みることは非現実的だとし、相互尊重が米中関係の前提であり、平和的共存は自然な流れであると説明した。また、世界が直面する課題に対して米国と中国が協力することが求められており、これは両国の国際的な責任であるとも述べた。
中国は、これらの3つの原則に基づき、米国との安定した健全な関係を築く準備が整っているとし、米国が中国を抑圧し続けるならば、中国は最後まで自国の立場を貫くと表明した。王外相は、国家主権や尊厳、正当な発展権を守るとともに、国際的な公正と正義を擁護する姿勢を強調した。
また、王外相は中国人民が迷信を信じず、困難を乗り越えて発展してきたことに触れ、国の強さを表現するための中国の格言を紹介した。彼は「中国の未来、そして米中関係の未来に自信を持っており、我々は一つの方向に向かって努力すべきである」と述べ、国際社会の最大の期待はこの3つの原則に従うことだと強調した。
中国社会科学院のLü Xiang教授は、王外相の発言は中国の米中関係に対する一貫した基本的立場を再確認するものであり、今後の米国政府の中国政策の動向が重要であると述べた。王外相の発言は、中国の立場を世界に理解してもらうためのものであり、将来の高レベルな交流の基盤を築くことを目指していると指摘した。
王外相は、グレアム・アリソン教授(ハーバード大学)との会談で、世界が未曾有の変革を迎え、国際的な混乱が続く中で、中国は自国の発展を進め、国際的責任を果たすと述べた。彼は、中国は多国間主義を支持し、国際関係の民主化を進め、秩序ある多極的な世界を推進する必要があるとも強調した。
このように、王外相は米中関係における一貫したアプローチを再確認し、今後の関係の安定的な発展を目指していると述べた。
【詳細】
王毅外相のミュンヘン安全保障会議(MSC)での発言詳細
2025年2月15日、中国の王毅外相(共産党中央政治局委員)は、第61回ミュンヘン安全保障会議(MSC)において、「中国と米国が対立すべきではなく、もし対立すれば世界が苦しむことになる」と述べた。王外相は、中国の対米政策は一貫性と安定性を維持しており、容易に変化することはないと強調した。これは、中国が大国としての戦略的な決意と信頼性を持ち、短期的な政治的変動に左右されることなく、長期的な視野に基づいた外交政策を推進していることを示すものである。
王外相は、中国の対米政策が「相互尊重、平和的共存、ウィンウィンの協力」という習近平国家主席が提唱する3つの原則に基づいていることを改めて強調した。彼は、米中両国の社会制度の違いは、それぞれの国民の選択の結果であり、互いを変革しようとすることは非現実的であると指摘した。このため、「相互尊重」が米中関係の根本的な前提であると述べた。
また、「平和的共存」については、米中が世界の主要国として共存することは自然な流れであり、対立や衝突は世界に深刻な影響を及ぼすと述べた。特に、米中の衝突が国際社会の安定や経済の発展に及ぼす悪影響を指摘し、競争があったとしても対立や衝突に発展すべきではないとした。
さらに、「ウィンウィンの協力」については、現在の国際社会が直面する課題(経済成長、気候変動、地域紛争の解決など)において、中国と米国の協力が不可欠であると主張した。国際社会は米中両国の協力を期待しており、両国は責任ある大国として、協力を通じて国際的な課題に取り組むべきであると述べた。
米国に対する中国の基本姿勢
王外相は、中国は安定し、健全で、持続可能な米中関係を築く意志があるとしつつも、「米国が中国を抑圧し続けるならば、中国は最後まで自国の立場を貫く」と述べた。これは、近年の米国による対中制裁や技術封鎖、軍事的圧力に対する強い警戒感を示すものであり、中国は譲歩するのではなく、主権や国益を守るために断固とした対応を取るという明確なメッセージである。
また、中国は自国の主権、尊厳、正当な発展権を守ると同時に、国際的な公正と正義を維持し、国際関係の基本原則を尊重する姿勢を貫くと述べた。これにより、中国は一方的な米国の圧力に屈することなく、多国間主義を重視しながら国際的なルールに基づいた関係を維持していく方針を強調した。
中国の歴史観と自信
王外相は、中国の歴史的な発展の歩みを強調し、中国人民は「迷信を信じず、幽霊を恐れない」と述べた。これは、中国が過去の困難を乗り越え、自国の発展を成し遂げてきたという自負を示すものである。さらに、古代中国の格言として、「天行健 君子以自強不息」(天の動きは力強く、君子は絶えず努力して自己を高める)」を引用し、中国が自己改革と発展を続ける決意を示した。
また、別の表現として、「彼が強かろうと、微風が丘を撫でるにすぎず。彼が横暴であろうと、月は大河を照らすのみ」という言葉を紹介し、どのような圧力があろうとも中国の安定と発展は揺るがないという自信を示した。
王外相は、「世界の未来、そして米中関係の未来に対する自信がある。我々が進むべき方向は、習主席が提唱する3つの原則に基づくべきであり、これこそが国際社会の最大の期待である」と述べた。
専門家の見解
中国社会科学院のLü Xiang教授は、王外相の発言について「中国の基本的な対米政策の立場を改めて確認するものであり、中国が米中関係を極めて重要視していることを示している」と述べた。また、「現在の米国政府がどのような対中政策を取るかはまだ不透明だが、王外相の発言は将来的な高官レベルの対話に向けた土台を築くものだ」と指摘した。
さらに、中国外交学院のLi Haidong教授は、「米国の新政権が世界との関係を再構築する中で、中国と米国が協力の余地を探る機会が生まれる可能性がある」と述べた。王外相の発言は、中国が米中間の共通利益を模索する姿勢を示しており、対立ではなく協力を模索する余地があることを強調していると分析した。
一方で、専門家らは、「中国が3つの原則を守りつつも、米国の圧力に対して譲歩することはない」と指摘している。中国は引き続き自国の利益を守りながら、関係改善の可能性を探る方針を維持すると見られる。
王外相のキーノートスピーチ
王外相は基調講演の中で、以下の4つの重要な考え方を強調した。
・平等な扱いの推進
すべての国は対等な立場で尊重されるべきであり、覇権主義的な外交は許容されない。
・国際法の尊重
国際社会は法の支配を重視し、恣意的な制裁や一方的な圧力を排除すべきである。
・多国間主義の実践
国際問題の解決には、多国間協力が不可欠であり、特定の国がルールを独占することは許されない。
・開かれた協力と互恵関係
貿易や経済の発展においては、保護主義は問題解決にならず、関税の乱用も有益ではない。「デカップリング(経済の分断)は自らの機会を奪い、高い壁で囲まれた小さな庭(小院高墻)は、自らを閉じ込めることになる」と指摘した。
王外相は、これらの原則に基づき、中国は今後も国際社会における責任ある大国としての役割を果たし、米中関係を安定的に発展させる努力を続けると締めくくった。
【要点】
王毅外相のミュンヘン安全保障会議(MSC)での発言要点
米中関係の基本姿勢
1.対立は世界の利益にならない
・米中が対立すれば世界が苦しむ
・中国の対米政策は一貫性と安定性を維持
2..「3つの原則」を強調(習近平主席の提唱)
・相互尊重:互いの社会制度を尊重し、変革を求めない
・平和的共存:対立や衝突を避け、共存を模索
・ウィンウィンの協力:経済・気候・安全保障などで協力
3. 米国に対する中国の立場
・米国が中国を抑圧すれば、中国は断固として対応する
・主権・尊厳・発展権を守り、国際ルールに基づく関係を重視
・米国の一方的な圧力には屈しない
4. 歴史観と自信
・「中国人民は迷信を信じず、幽霊を恐れない」(過去の困難を乗り越えた自負)
・「天行健 君子以自強不息」(努力し続ける決意)
・「彼が強かろうと、微風が丘を撫でるにすぎず」(圧力に屈しない姿勢)
5. 米中関係の未来
・「米中関係の未来に自信がある」
・習近平主席の「3つの原則」が米中関係の指針となる
6. 専門家の見解
・中国は米中関係を重要視している(Lü Xiang教授)
・対立の中でも協力の余地を模索する可能性(Li Haidong教授)
・中国は圧力には譲歩せず、独自の立場を維持する
7. 基調講演での重要ポイント
・平等な扱い:すべての国は対等に尊重されるべき
・国際法の尊重:恣意的な制裁や圧力は排除
・多国間主義の推進:特定の国のルール独占を許さない
・開かれた協力:経済の分断(デカップリング)は不利益を生む
8. 結論
・中国は国際社会における責任ある大国としての役割を果たす
米中関係の安定と発展に向けた努力を続ける
【参考】
➡️ 「天行健,君子以自強不息:Tiān xíng jiàn, jūnzǐ yǐ zìqiáng bù xī」は、中国古代の経典『周易』(易経)の「乾卦」の象伝(象辞)に由来する言葉である。
1. 出典と原文
この句は『周易・乾卦』の象伝に記載されており、原文は以下の通り。
「天行健,君子以自強不息」。
訳:天の運行は剛健であり、君子はこれに倣い自らを奮い立たせ、努力をやめない。
ここで「天行健」は、天の運行が力強く止まない様子を表し、「君子以自強不息」は、その天の法則に学び、人間も絶えず自己を高め続けるべきだと説いている。
2. 解釈と思想
・天的象徴性
「天」は宇宙や自然の法則を象徴し、その運行は規則的で途切れることなく続く「剛健さ」を持つ。例えば、四季の循環や日月の運行が挙げられる。
・君子のあり方
「君子」は徳を備えた理想的な人物を指す。天の剛健さを手本とし、自らの修養や社会への貢献を絶やさず続けることが求められる。具体的には、学問や道徳的実践を通じた不断の努力が強調される。
・禅との関連
禅の文脈では、「天行健」を「世界の動きは健やかである」と解釈し、現実を肯定し心の安らぎを得るための言葉として用いることもある。
3. 歴史的な影響と具体例
・故事成語の背景
晋代の武将・祖逖(そてき)の逸話が有名である。彼は若い頃、夜明け前に鶏の声を合図に剣術の練習を続け、後に北伐で功績を挙げた。この「聞雞起舞:Wén jī qǐ wǔ(鶏の声で舞い起きる)」の精神は、「自強不息」の実践例とされる。
・現代への影響
清華大学の校訓「自強不息,厚德載物」の一部として採用され、学問と人格の両立を求める理念に反映されている。
4. 哲学的な拡張
・易経のリーダーシップ論
『易経』は君主や指導者向けの書物でもあり、「天行健」はリーダーが天の法則に従い、厳格かつ持続的な姿勢を持つべきだと説く。
・対となる「地勢坤」
「地勢坤,君子以厚德載物:Dì shì kūn, jūnzǐ yǐ hòu dé zài wù」と対句を成し、天の剛健さと地の包容力を対比させ、バランスの取れた人間像を提唱する。
5. まとめ
「天行健,君子以自強不息」は、自然の法則に学び、自己研鑽を続ける人間の理想を表す言葉である。易経の思想を基盤とし、儒教や禅など多様な文脈で解釈され、現代でも個人の努力やリーダーシップの指針として広く引用されている。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
China and US must not come into conflict, or the world will suffer, says Wang Yi at Munich Security Conference GT 2025.02.15
https://www.globaltimes.cn/page/202502/1328485.shtml
王毅外相:あらゆる和平への努力を歓迎 ― 2025年02月15日 22:56
【概要】
中国の王毅外相は、ドイツで開催されたミュンヘン安全保障会議(MSC)において、ウクライナ危機に関する中国の立場について問われ、米国とロシアが和平交渉に関して合意したことを含め、あらゆる和平への努力を歓迎すると述べた。王毅外相は、あらゆる紛争の最終的な終着点は交渉の場であり、歴史は最終的に公正な評価を下すと主張した。
また、和平交渉のプロセスには関係当事者が適切な時期に関与することが求められるとし、戦争が欧州で起きている以上、欧州が和平に向けて役割を果たし、危機の根本原因に対応するとともに、欧州の持続可能な安全保障の枠組みを構築する必要があると指摘した。
米国のドナルド・トランプ大統領は14日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領およびウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と個別に電話会談を行った。ロイター通信によれば、両首脳は和平への意向を表明したとされる。
トランプ大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、プーチン大統領と「発生している多数の死者を止めること」に合意したと述べ、ワシントンとモスクワが「直ちに」直接交渉を開始することで一致したと明かした。また、両国が緊密に協力し、相互訪問を行うことにも合意したと述べた。
ロイターによると、トランプ大統領は米国務長官のマルコ・ルビオ、中央情報局(CIA)長官のジョン・ラトクリフ、国家安全保障問題担当補佐官のマイケル・ウォルツ、中東特使のスティーブ・ウィトコフらに対し、ウクライナ危機の終結に向けた交渉を直ちに開始するよう指示した。
戦争開始から4年目を迎える2月24日に向け、ウクライナとその支援国である日本やフランスは、国連総会にウクライナでの停戦を求める決議案を提出する予定であると、共同通信が14日に報じた。
王毅外相は、会議で「紛争が始まった翌日から、中国は一貫して対話と協議による解決を提唱してきた」と強調した。習近平国家主席は、中国の立場を最も権威ある形で説明する四つの提案を打ち出しており、その内容は以下の通りであると述べた。
1.すべての国の主権と領土保全の尊重
2.国連憲章の目的と原則の遵守
3.すべての当事者の正当な安全保障上の懸念の考慮
4.すべての和平努力の支持
これらの原則に基づき、中国は積極的に仲介活動を行っており、ブラジルなどグローバルサウスの国々とともに「平和のための友人グループ」を立ち上げたと述べた。王毅外相は「中国の見解は客観的、公正、合理的かつ実践的であり、国際社会の広範な共通認識を反映している」と主張した。
また、中国がロシアからの石油・ガス輸入を通じてロシアを支援しているとの指摘について、王毅外相は「中国とロシアは長い国境を接する主要な隣国であり、過去の課題から教訓を得て、新時代における包括的戦略的協力パートナーシップを構築している。この関係は、同盟関係でもなければ対立を目的とするものでもなく、第三国を標的としたものでもない」と述べた。
さらに、「中国とロシアは正常な経済・貿易関係を持っている。もし中国がロシアから石油やガスを輸入しなければ、どのようにして国内の需要を満たし、14億人以上の中国国民の必要を確保できるのか」と反論した。
【詳細】
王毅外相の発言の詳細と中国の立場
1. 中国はすべての和平努力を歓迎
中国の王毅外相は、2025年2月14日にドイツで開催されたミュンヘン安全保障会議(MSC)において、ウクライナ危機に関する中国の立場について問われ、米国とロシアが和平交渉に関して合意したことを含め、「あらゆる和平への努力を歓迎する」と述べた。
王毅外相は、「いかなる戦争であっても最終的には交渉の場で終結するものであり、歴史は最終的に公正な評価を下す」と主張した。この発言は、ウクライナ戦争を軍事的な勝敗だけでなく、外交的解決の視点から捉えるべきであるという中国の基本的な立場を示している。
また、中国は関係当事者が適切な時期に和平交渉のプロセスに関与することを期待しており、特に「戦争が欧州で起きている以上、欧州が和平に向けて役割を果たす必要がある」と指摘した。さらに、危機の根本原因に対応し、欧州の持続可能な安全保障枠組みを構築することが不可欠であるとの見解を示した。
2. 米国とロシアの和平交渉合意
ロイター通信の報道によれば、米国のドナルド・トランプ大統領は2月14日にロシアのウラジーミル・プーチン大統領、およびウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とそれぞれ電話会談を行い、和平交渉の可能性について話し合った。
トランプ大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、プーチン大統領と「発生している多数の死者を止めること」に合意したと述べ、ワシントンとモスクワが「直ちに」直接交渉を開始することで一致したと明かした。また、「両国が緊密に協力し、相互訪問を行うことにも合意した」と発言した。
これを受け、トランプ大統領は米国務長官のマルコ・ルビオ、中央情報局(CIA)長官のジョン・ラトクリフ、国家安全保障問題担当補佐官のマイケル・ウォルツ、中東特使のスティーブ・ウィトコフらに対し、ウクライナ危機の終結に向けた交渉を直ちに開始するよう指示した。
この動きについて、中国は直接的な評価を避けつつも、「すべての和平への努力を歓迎する」という立場を示すことで、外交的に柔軟な対応を取っていると考えられる。
3. 国連総会での停戦決議案
戦争開始から4年目を迎える2月24日に向け、ウクライナとその支援国である日本やフランスは、国連総会にウクライナでの停戦を求める決議案を提出する予定であると、共同通信が14日に報じた。
この決議案の具体的な内容は明らかになっていないが、ウクライナとその支持国が国際社会の支持を得ることを目的としていると考えられる。これに対し、中国がどのような立場を取るかが注目される。
4. 中国の和平解決に向けた基本方針
王毅外相は、会議の中で「紛争が始まった翌日から、中国は一貫して対話と協議による解決を提唱してきた」と強調した。
また、習近平国家主席が提唱した「4つの原則」についても言及し、これは中国の立場を最も権威ある形で示したものであると述べた。
中国の「4つの原則」
1.すべての国の主権と領土保全の尊重
・国連憲章に基づき、主権国家の領土が侵害されることは許されない。
2.国連憲章の目的と原則の遵守
・国際法の枠組みに基づいた解決策を模索することが重要。
3.すべての当事者の正当な安全保障上の懸念の考慮
・ウクライナのみならず、ロシアの安全保障上の懸念も考慮すべき。
4.すべての和平努力の支持
・戦争の拡大を防ぐため、対話を通じた解決を追求するべき。
中国はこれらの原則を基に、ブラジルなどのグローバルサウス諸国とともに「平和のための友人グループ(Friends for Peace Group)」を立ち上げ、外交的な仲介を進めていることを強調した。
王毅外相は「中国の見解は客観的、公正、合理的かつ実践的であり、国際社会の広範な共通認識を反映している」と述べ、中国の立場が国際的に支持されるべきであるとの主張を展開した。
5. 中国・ロシア間の貿易関係
中国がロシアからの石油・ガス輸入を通じてロシアを支援しているとの批判に対し、王毅外相は「中国とロシアは長い国境を接する主要な隣国であり、過去の課題から教訓を得て、新時代における包括的戦略的協力パートナーシップを構築している」と反論した。
この関係は、
・同盟関係ではなく、対立を目的としたものでもなく、第三国を標的としたものでもない
・正常な経済・貿易関係の一環である
と説明した。
さらに、王毅外相は「中国とロシアは正常な経済・貿易関係を持っている。もし中国がロシアから石油やガスを輸入しなければ、どのようにして国内の需要を満たし、14億人以上の中国国民の必要を確保できるのか」と述べ、中国がエネルギー資源を安定的に確保するための貿易関係であることを強調した。
この発言は、中国のエネルギー政策が地政学的な意図ではなく、経済的・国益的な必要性に基づくものであるという主張を補強するものである。
結論
中国は一貫して「対話と交渉による和平解決」を支持する立場を示しており、米ロの和平交渉の動きを歓迎する姿勢を取っている。また、中国自身も外交的な仲介努力を続けていることを強調し、ロシアとの経済関係については「正常な貿易関係」であると説明している。今後、米ロ交渉の進展や国連総会での停戦決議案の行方に注目が集まる。
【要点】
1. 中国の立場
・王毅外相は「すべての和平努力を歓迎」と発言。
・戦争の終結には交渉が必要との立場を強調。
・欧州が和平に向けた役割を果たすべきと指摘。
・持続可能な安全保障枠組みの構築を提唱。
2. 米ロの和平交渉
・トランプ大統領がプーチン大統領と和平交渉の合意を発表。
・「直ちに」米ロ間の直接交渉を開始すると表明。
・米政府高官に交渉の即時開始を指示。
3. 国連総会での停戦決議
・ウクライナと支持国が停戦決議案を提出予定。
・国際社会の支持を得ることが目的。
・中国の対応が注目される。
4. 中国の和平原則
・「4つの原則」に基づく立場を堅持
(1)主権と領土の尊重
(2)国連憲章の遵守
(3)当事者の安全保障上の懸念を考慮
(4)すべての和平努力を支持
・「平和のための友人グループ」を通じた外交仲介を進める。
【引用・参照・底本】
China pleased to see all peace efforts, including consensus reached by US and Russia: Wang Yi on Ukraine crisis GT 2025.02.15
https://www.globaltimes.cn/page/202502/1328484.shtml
中国の王毅外相は、ドイツで開催されたミュンヘン安全保障会議(MSC)において、ウクライナ危機に関する中国の立場について問われ、米国とロシアが和平交渉に関して合意したことを含め、あらゆる和平への努力を歓迎すると述べた。王毅外相は、あらゆる紛争の最終的な終着点は交渉の場であり、歴史は最終的に公正な評価を下すと主張した。
また、和平交渉のプロセスには関係当事者が適切な時期に関与することが求められるとし、戦争が欧州で起きている以上、欧州が和平に向けて役割を果たし、危機の根本原因に対応するとともに、欧州の持続可能な安全保障の枠組みを構築する必要があると指摘した。
米国のドナルド・トランプ大統領は14日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領およびウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と個別に電話会談を行った。ロイター通信によれば、両首脳は和平への意向を表明したとされる。
トランプ大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、プーチン大統領と「発生している多数の死者を止めること」に合意したと述べ、ワシントンとモスクワが「直ちに」直接交渉を開始することで一致したと明かした。また、両国が緊密に協力し、相互訪問を行うことにも合意したと述べた。
ロイターによると、トランプ大統領は米国務長官のマルコ・ルビオ、中央情報局(CIA)長官のジョン・ラトクリフ、国家安全保障問題担当補佐官のマイケル・ウォルツ、中東特使のスティーブ・ウィトコフらに対し、ウクライナ危機の終結に向けた交渉を直ちに開始するよう指示した。
戦争開始から4年目を迎える2月24日に向け、ウクライナとその支援国である日本やフランスは、国連総会にウクライナでの停戦を求める決議案を提出する予定であると、共同通信が14日に報じた。
王毅外相は、会議で「紛争が始まった翌日から、中国は一貫して対話と協議による解決を提唱してきた」と強調した。習近平国家主席は、中国の立場を最も権威ある形で説明する四つの提案を打ち出しており、その内容は以下の通りであると述べた。
1.すべての国の主権と領土保全の尊重
2.国連憲章の目的と原則の遵守
3.すべての当事者の正当な安全保障上の懸念の考慮
4.すべての和平努力の支持
これらの原則に基づき、中国は積極的に仲介活動を行っており、ブラジルなどグローバルサウスの国々とともに「平和のための友人グループ」を立ち上げたと述べた。王毅外相は「中国の見解は客観的、公正、合理的かつ実践的であり、国際社会の広範な共通認識を反映している」と主張した。
また、中国がロシアからの石油・ガス輸入を通じてロシアを支援しているとの指摘について、王毅外相は「中国とロシアは長い国境を接する主要な隣国であり、過去の課題から教訓を得て、新時代における包括的戦略的協力パートナーシップを構築している。この関係は、同盟関係でもなければ対立を目的とするものでもなく、第三国を標的としたものでもない」と述べた。
さらに、「中国とロシアは正常な経済・貿易関係を持っている。もし中国がロシアから石油やガスを輸入しなければ、どのようにして国内の需要を満たし、14億人以上の中国国民の必要を確保できるのか」と反論した。
【詳細】
王毅外相の発言の詳細と中国の立場
1. 中国はすべての和平努力を歓迎
中国の王毅外相は、2025年2月14日にドイツで開催されたミュンヘン安全保障会議(MSC)において、ウクライナ危機に関する中国の立場について問われ、米国とロシアが和平交渉に関して合意したことを含め、「あらゆる和平への努力を歓迎する」と述べた。
王毅外相は、「いかなる戦争であっても最終的には交渉の場で終結するものであり、歴史は最終的に公正な評価を下す」と主張した。この発言は、ウクライナ戦争を軍事的な勝敗だけでなく、外交的解決の視点から捉えるべきであるという中国の基本的な立場を示している。
また、中国は関係当事者が適切な時期に和平交渉のプロセスに関与することを期待しており、特に「戦争が欧州で起きている以上、欧州が和平に向けて役割を果たす必要がある」と指摘した。さらに、危機の根本原因に対応し、欧州の持続可能な安全保障枠組みを構築することが不可欠であるとの見解を示した。
2. 米国とロシアの和平交渉合意
ロイター通信の報道によれば、米国のドナルド・トランプ大統領は2月14日にロシアのウラジーミル・プーチン大統領、およびウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とそれぞれ電話会談を行い、和平交渉の可能性について話し合った。
トランプ大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、プーチン大統領と「発生している多数の死者を止めること」に合意したと述べ、ワシントンとモスクワが「直ちに」直接交渉を開始することで一致したと明かした。また、「両国が緊密に協力し、相互訪問を行うことにも合意した」と発言した。
これを受け、トランプ大統領は米国務長官のマルコ・ルビオ、中央情報局(CIA)長官のジョン・ラトクリフ、国家安全保障問題担当補佐官のマイケル・ウォルツ、中東特使のスティーブ・ウィトコフらに対し、ウクライナ危機の終結に向けた交渉を直ちに開始するよう指示した。
この動きについて、中国は直接的な評価を避けつつも、「すべての和平への努力を歓迎する」という立場を示すことで、外交的に柔軟な対応を取っていると考えられる。
3. 国連総会での停戦決議案
戦争開始から4年目を迎える2月24日に向け、ウクライナとその支援国である日本やフランスは、国連総会にウクライナでの停戦を求める決議案を提出する予定であると、共同通信が14日に報じた。
この決議案の具体的な内容は明らかになっていないが、ウクライナとその支持国が国際社会の支持を得ることを目的としていると考えられる。これに対し、中国がどのような立場を取るかが注目される。
4. 中国の和平解決に向けた基本方針
王毅外相は、会議の中で「紛争が始まった翌日から、中国は一貫して対話と協議による解決を提唱してきた」と強調した。
また、習近平国家主席が提唱した「4つの原則」についても言及し、これは中国の立場を最も権威ある形で示したものであると述べた。
中国の「4つの原則」
1.すべての国の主権と領土保全の尊重
・国連憲章に基づき、主権国家の領土が侵害されることは許されない。
2.国連憲章の目的と原則の遵守
・国際法の枠組みに基づいた解決策を模索することが重要。
3.すべての当事者の正当な安全保障上の懸念の考慮
・ウクライナのみならず、ロシアの安全保障上の懸念も考慮すべき。
4.すべての和平努力の支持
・戦争の拡大を防ぐため、対話を通じた解決を追求するべき。
中国はこれらの原則を基に、ブラジルなどのグローバルサウス諸国とともに「平和のための友人グループ(Friends for Peace Group)」を立ち上げ、外交的な仲介を進めていることを強調した。
王毅外相は「中国の見解は客観的、公正、合理的かつ実践的であり、国際社会の広範な共通認識を反映している」と述べ、中国の立場が国際的に支持されるべきであるとの主張を展開した。
5. 中国・ロシア間の貿易関係
中国がロシアからの石油・ガス輸入を通じてロシアを支援しているとの批判に対し、王毅外相は「中国とロシアは長い国境を接する主要な隣国であり、過去の課題から教訓を得て、新時代における包括的戦略的協力パートナーシップを構築している」と反論した。
この関係は、
・同盟関係ではなく、対立を目的としたものでもなく、第三国を標的としたものでもない
・正常な経済・貿易関係の一環である
と説明した。
さらに、王毅外相は「中国とロシアは正常な経済・貿易関係を持っている。もし中国がロシアから石油やガスを輸入しなければ、どのようにして国内の需要を満たし、14億人以上の中国国民の必要を確保できるのか」と述べ、中国がエネルギー資源を安定的に確保するための貿易関係であることを強調した。
この発言は、中国のエネルギー政策が地政学的な意図ではなく、経済的・国益的な必要性に基づくものであるという主張を補強するものである。
結論
中国は一貫して「対話と交渉による和平解決」を支持する立場を示しており、米ロの和平交渉の動きを歓迎する姿勢を取っている。また、中国自身も外交的な仲介努力を続けていることを強調し、ロシアとの経済関係については「正常な貿易関係」であると説明している。今後、米ロ交渉の進展や国連総会での停戦決議案の行方に注目が集まる。
【要点】
1. 中国の立場
・王毅外相は「すべての和平努力を歓迎」と発言。
・戦争の終結には交渉が必要との立場を強調。
・欧州が和平に向けた役割を果たすべきと指摘。
・持続可能な安全保障枠組みの構築を提唱。
2. 米ロの和平交渉
・トランプ大統領がプーチン大統領と和平交渉の合意を発表。
・「直ちに」米ロ間の直接交渉を開始すると表明。
・米政府高官に交渉の即時開始を指示。
3. 国連総会での停戦決議
・ウクライナと支持国が停戦決議案を提出予定。
・国際社会の支持を得ることが目的。
・中国の対応が注目される。
4. 中国の和平原則
・「4つの原則」に基づく立場を堅持
(1)主権と領土の尊重
(2)国連憲章の遵守
(3)当事者の安全保障上の懸念を考慮
(4)すべての和平努力を支持
・「平和のための友人グループ」を通じた外交仲介を進める。
【引用・参照・底本】
China pleased to see all peace efforts, including consensus reached by US and Russia: Wang Yi on Ukraine crisis GT 2025.02.15
https://www.globaltimes.cn/page/202502/1328484.shtml
米国のJ・D・ヴァンス副大統領の演説 ― 2025年02月15日 23:45
【概要】
2025年2月15日にアンドリュー・コリブコが執筆したものであり、米国のJ・D・ヴァンス副大統領がミュンヘン安全保障会議(MSC)で行った演説が、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による2022年の予測を裏付ける内容であったと主張している。
ヴァンス副大統領は演説の中で、欧州の「リベラル・グローバリストのエリート」を厳しく批判し、彼らが伝統的価値観を放棄し、大量の移民を受け入れたことで、自らの文明を危機に陥れていると述べた。また、トランプ政権2.0(再選後のトランプ政権)は、欧州の支配層が弾圧している「ポピュリスト・ナショナリスト」勢力に対抗して彼らを支援するつもりはないことを明言した。
ヴァンスの発言が、プーチン大統領が2022年6月のサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)で述べた予測と一致するとしている。その際、プーチンは欧州の政治体制が形骸化し、社会的・経済的格差の拡大によってポピュリズムや急進的な運動が台頭するだろうと述べた。これが現在欧州各国で進行している政治的変化と合致すると主張している。
さらに、2022年9月30日のロシアによるウクライナ4州編入式典でのプーチンの演説にも言及し、彼が欧米のエリートを批判し、伝統的価値観の破壊を「逆転した宗教(ピュア・サタニズム)」と形容したことを強調している。また、プーチンは欧米の体制に異議を唱える人々を支持する姿勢を示し、これを「脱植民地化運動」と位置付けた。
ヴァンスの発言がこれらのプーチンの主張と一致しているとし、米国のトランプ政権2.0、ロシア、欧州のポピュリスト・ナショナリスト勢力の利害が収束しつつあると論じる。さらに、これらの勢力はロシアの思想家アレクサンドル・ドゥーギンの「文明国家(Civilization-State)」モデルを支持していると指摘し、ヴァンスが米欧の「共有された文明」について言及したことを、ドゥーギンの思想との整合性の証拠として挙げている。
加えて、プーチンが2021年7月に発表した「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」の論文を引き合いに出し、彼が長年にわたり「ロシア文明の独自性」を強調してきたと述べる。そして、米欧のポピュリスト・ナショナリスト勢力が今になって同様の文明論的視点を採用し始めたとする。
最終的に、「欧米が文明国家として統合されることで、新たな世界秩序が形成される可能性がある」とし、それが19世紀的な「大国間の勢力圏外交(Great Power Chessboard)」の復活につながる可能性を示唆している。これは、小国を代理戦争の場とするのではなく、大国同士が相互の利益に基づいて交渉を行う外交モデルであり、国際関係の安定に寄与し得ると述べている。しかし、このシナリオが現実のものとなるかどうかはまだ不透明であり、今後の展開を注視する必要があるとしている。
【詳細】
アンドリュー・コリブコによるもので、2025年2月15日に発表され、ヴァンス副大統領のミュンヘン安全保障会議での演説がロシアのプーチン大統領による予測を裏付ける内容であると述べている。以下は、その詳細な解説である。
1. ヴァンス副大統領の演説の内容と批判
ヴァンス副大統領は、2025年のミュンヘン安全保障会議で行った演説の中で、欧州のリベラル・グローバリストエリートに対して非常に厳しい批判を行った。この批判は、彼らが伝統的な価値観から逸脱し、大量の移民を受け入れることによって自らの文明を危機に晒したというものだ。ヴァンスは、これらのエリートが欧州の社会的・文化的安定を損ね、最終的には自らの市民を敵視していると指摘した。
また、ヴァンスは「トランプ2.0」(再選後のトランプ政権)が、欧州の支配層が抑圧しているポピュリスト・ナショナリスト勢力を支持するつもりはないと明言した。これにより、米国が欧州に対して新たな政治的アプローチを取る可能性を示唆している。
2. プーチン大統領の2022年の予測との一致
このヴァンスの演説は、プーチン大統領が2022年6月にサンクトペテルブルクで行った演説と一致していると主張されている。プーチンはその演説の中で、欧州の政治体制が「形骸化」しており、伝統的な政党は失敗し、新たなポピュリスト・ナショナリスト勢力が台頭すると予測した。プーチンは、欧州がますます経済的・社会的格差を拡大し、その結果、社会は分裂し、ポピュリズムや急進的な運動が強化されるだろうと警告した。
プーチンはまた、欧州における民主主義と選挙の形式が実質的には「偽装」であり、政治家が国民の実際の利益から遠ざかっていると批判した。このような状況が続けば、欧州における政治的変動や新たなリーダーシップの誕生が加速することになると予測した。
3. 欧州でのポピュリズムの台頭
現在欧州で台頭しているポピュリスト・ナショナリスト勢力の増加が、プーチンの予測と一致していると指摘している。その原因として、欧州が採用した米国主導の反ロシア制裁と、それに伴う経済的・社会的影響を挙げている。特に、移民問題と、それに起因する社会的な緊張がポピュリスト勢力の支持を高めたと分析している。経済制裁の影響で多くの欧州市民が生活の困窮を経験し、これがポピュリスト・ナショナリストの台頭を加速させたとされる。
ヴァンスが指摘したように、移民の大規模な流入とそれに伴う統合の問題、そして経済的な不安定性が相まって、ポピュリズムが勢いを増している。この現象は、2022年以降、特に経済面で加速したとされる。
4. プーチンの文明国家(Civilization-State)モデル
プーチンは、欧米のエリートが「西側文明」の価値を放棄し、伝統的価値観を破壊する一方で、ロシアは独自の文明的価値観を守るべきだと強調してきた。2021年に発表した「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」の論文では、ロシアとウクライナの「文明的結びつき」を強調し、ロシア文明の独自性を再確認した。この視点は、プーチンが採用した「文明国家」モデルに基づいており、これが彼の外交政策や国内政治の根幹を成している。
ヴァンス副大統領は、米国と欧州の「共有された文明」について語ることで、ドゥーギンの「文明国家」モデルに賛同する立場を示した。ドゥーギンは、国際関係が「文明国家」に基づいて再編されつつあり、西洋とロシアの文明がそれぞれ独自に形成されるべきだと提唱している。この思想は、米国とロシア、そして欧州のポピュリスト・ナショナリスト勢力に影響を与え、これらの勢力が共通の目標に向かって協力する可能性を示唆している。
5. 新たな世界秩序と大国間の外交
米国とロシアを中心とした「文明国家」の形成が、19世紀的な「大国間の勢力圏外交」を復活させる可能性があると述べている。この外交モデルでは、大国が小国に対して直接的な支配を行うのではなく、大国間で利益を調整し合う形で小国に対する影響を行使することになる。これは、冷戦後のグローバルなパワーバランスの変化とともに、現代において現実味を帯びてきていると分析されている。
このアプローチは、イデオロギー的な対立よりも実利的な利益を重視し、現代の国際関係において安定を取り戻す可能性があるとされる。しかし、このシナリオが実現するかどうか、そしてその時期については未確定であり、今後の国際政治の動向を注視する必要があると結論づけている。
結論
ヴァンス副大統領の演説がプーチンの予測を裏付ける形で、欧州での政治的変動とポピュリズムの台頭を指摘し、米国、ロシア、欧州のポピュリスト・ナショナリスト勢力が「文明国家」の概念に基づいて共鳴し合っていると主張している。この動きが新たな世界秩序を形作り、大国間の外交が再び「勢力圏」に基づいて展開される可能性があると示唆されている。
【要点】
・ヴァンス副大統領の演説: 2025年2月15日、ミュンヘン安全保障会議で、欧州のリベラル・グローバリストエリートに対する厳しい批判を行った。彼は、大量移民が欧州の文明を危機に陥れ、政治家たちが市民の利益を無視していると指摘した。
・トランプ2.0のアプローチ: ヴァンスは、再選後のトランプ政権が欧州のポピュリスト・ナショナリスト勢力を支持し、欧州の支配層に対して新たなアプローチを取ると明言した。
・プーチン大統領の予測と一致: 2022年6月にプーチンは、欧州が政治的に形骸化し、ポピュリスト勢力が台頭すると予測していた。ヴァンスの演説はこの予測と一致している。
・ポピュリズムの台頭: 経済制裁や移民問題、社会的不安定が原因で、欧州でポピュリスト・ナショナリスト勢力が強化され、これがプーチンの予測通りに進行している。
・プーチンの「文明国家」モデル: プーチンは、ロシアが独自の価値観を持ち、欧米とは異なる「文明国家」としての立場を強調している。この視点が欧州でも支持されつつある。
・新たな大国間外交: 米国、ロシア、欧州のポピュリスト・ナショナリスト勢力が「文明国家」の概念に基づいて協力し合い、19世紀の大国間外交が復活する可能性がある。
・今後の国際秩序: この新しい動きが、新たな世界秩序を形成し、大国間の外交が「勢力圏」に基づいて行われる可能性がある。
・結論: 欧州での政治変動とポピュリズムの台頭が、プーチンの予測通り進行しており、米国とロシアを中心とした新たな外交モデルが現れるかもしれない。
【参考】
✅ 「逆転した宗教(ピュア・サタニズム)」という表現は、プーチン大統領が言及したものである。この概念は、彼が西側のエリートに対する批判を行う中で使用されたものである。以下にその内容を詳しく説明する。
・西側エリートの行動への批判: プーチンは、欧米の西側エリートが自らの伝統的な価値観を放棄し、無神論的、道徳的に堕落した方向に進んでいると指摘している。彼は、これが単なる道徳的な堕落ではなく、むしろ「逆転した宗教」、すなわち「ピュア・サタニズム」として表現されるべきだと述べている。
・伝統的な価値観の放棄: ここでの「逆転した宗教」は、従来の宗教的価値観、特にキリスト教的道徳観に対する反発として描かれている。プーチンは、伝統的な価値観(家族、信仰、道徳)を守ろうとする立場を取る一方で、西側エリートがこれらを否定し、逆に非道徳的、反宗教的な方向に進んでいると批判する。
・「サタニズム」との関連: プーチンは、このような動きを「サタニズム」と比較し、道徳的な堕落と倫理観の崩壊が進んでいると見なしている。彼の見解では、西側エリートの価値観は単に無神論的であるだけでなく、道徳的に退廃的であるとされている。
・社会全体への影響: この「逆転した宗教」の概念は、社会全体が持つべき価値観や倫理観の崩壊がもたらす危険性を指摘するものである。プーチンは、西側エリートがこのような価値観を推進することによって、社会秩序や安定性が失われ、最終的には社会の分裂を招くと警告している。
・グローバリズムと対立: プーチンの批判は、グローバリズム的な価値観に対するものであり、伝統的な文化や社会的枠組みを重視する立場からの対立を示している。彼は、これが単なる政治的対立ではなく、根本的な価値観の対立であることを強調している。
このように、「逆転した宗教(ピュア・サタニズム)」という表現は、西側エリートが進める価値観の崩壊とその道徳的堕落を強調するためにプーチンが使用した比喩的な表現である。
✅ 記事内で述べられている西側エリートと大量移民の受け入れ、そして逆転した宗教(ピュア・サタニズム)との関連について、プーチン大統領の見解を整理すると次のようになる。
1. 西側エリートの価値観の変化
・プーチンは、西側のエリート層が伝統的な価値観(特に家族や宗教的価値観)を放棄し、代わりに無神論的で道徳的に退廃した価値観を推進していると批判している。これが、いわゆる「逆転した宗教(ピュア・サタニズム)」という表現で表されている。
・逆転した宗教という概念は、伝統的な道徳観や信仰を否定する動きであり、これに対抗する形で伝統的な価値観を守ろうとする立場を取ることが重要だとされている。
2. 大量移民の受け入れ
・プーチンはまた、大量移民の受け入れが西側諸国における社会的、文化的な分裂を引き起こしていると考えている。特に、移民が現地社会に十分に統合せず、異なる価値観や生活様式を持ち込むことが社会的な不安定を招く要因として指摘されている。
・これらの移民の受け入れが、西側エリートの「新しい価値観」に基づく政策の一環として進められている。西側エリートは移民を受け入れることによって、国際的な寛容性や多様性を推進しようとしているが、プーチンはこれを「自国の伝統的価値観を崩壊させる」ものと見なしている。
3. 逆転した宗教(ピュア・サタニズム)との関連
・プーチンが言う「逆転した宗教(ピュア・サタニズム)」は、道徳的な価値観や伝統的な宗教を軽視し、無神論的で進歩的な社会観を重視する方向性を指す。この方向性が、移民政策や多文化主義に反映されていると彼は考えている。
・大量移民の受け入れが西側エリートの進める「新しい価値観」の一部であり、それが従来の社会構造や道徳観を崩壊させるとされる点で、「逆転した宗教」という概念と結びついている。つまり、移民が持ち込む異なる文化や価値観は、西側エリートが推し進める「道徳的退廃」を強化し、伝統的な価値観をさらに脅かすものと見なされているのである。
4. 社会の分裂とポピュリズムの台頭
・さらに、プーチンは西側諸国において、エリート層と一般市民の間に深い分断が生まれていることを指摘する。この分断は、移民政策とその結果としての社会的な不安定性によって悪化し、最終的にはポピュリズムや極端な政治運動の台頭を促進すると予測している。
・これにより、従来の西側の政治体制は崩れ、より極端な政治運動や指導者が登場する可能性があるという視点である。プーチンはこれを、伝統的な価値観を守ろうとする人々が西側エリートに反発し、ポピュリズム的な運動が盛り上がる原因だと見ている。
結論
プーチンにとって、西側エリートの進める政策(移民受け入れなど)と逆転した宗教(ピュア・サタニズム)は密接に関連しており、これが西側社会の分裂を引き起こし、最終的に伝統的な価値観を守ろうとする人々が反発し、ポピュリズム的な政治運動が台頭する原因であると見なされている。
✅ 西側エリート(欧州のリベラル・グローバリストエリート)
1. 西側エリートの構成
・政治家:政府の中枢に位置する人物、特に欧州連合(EU)のリーダーや、西欧諸国の左派または中道政治家(例:ドイツのアンゲラ・メルケル前首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領など)。
・ビジネス界の指導者:グローバル企業や金融機関のトップ。多国籍企業や大手銀行の経営者(例:ユニリーバ、シティグループなどの企業経営者)。
・学者・思想家:リベラル・グローバリズムを支持する学者や思想家。特に国際関係、経済学、社会学の分野で活動している人物(例:ジョセフ・スティグリッツなど)。
・メディアのエリート:西側諸国の主要なメディア企業の経営者やジャーナリスト。リベラルな立場を取る報道機関(例:BBC、ニューヨーク・タイムズ、ガーディアンなど)の編集長や影響力のあるコメンテーター。
2. 彼らの志向
リベラル・グローバリズムは、経済的自由、個人主義、民主主義、環境問題の解決、国際協力などを重視する思想です。これに基づく西側エリートの志向には、以下のような背景や動機があるとされています。
(1) 経済的利益とグローバル化
・グローバル経済の推進:多国籍企業や大手金融機関が利益を得るためには、国境を越えた自由な貿易や市場が不可欠です。リベラル・グローバリズムは、貿易障壁を減らし、グローバル化を進めることでこれを実現しようとする。
・市場の自由化:規制緩和や貿易の自由化を支持し、企業活動や投資が国境を越えて行える環境を整備することが、彼らの経済的利益に繋がる。
(2) 人権と民主主義の拡大
・価値観の普遍化:リベラル・グローバリズムの思想は、自由、平等、民主主義を普遍的な価値として捉え、これを世界中で推進しようとする。彼らは、全世界がリベラルな政治体制と社会制度を採用することを目指しており、そのために人権の保護や民主化運動を支援する。
・人道的援助と移民の受け入れ:人権を守るという立場から、戦争や貧困から逃れてきた移民や難民を受け入れる政策を推進し、多文化主義や寛容さを重要視する。
(3) 環境問題への関心
・地球規模の問題としての環境保護:気候変動や環境問題は、リベラル・グローバリストにとって国際的な課題であり、国際的な協力を通じてこれを解決しようとする姿勢を見せている。再生可能エネルギーの推進や炭素排出削減を求める政策もその一部である。
(4) 社会的寛容と多様性
・社会的な寛容:リベラル・グローバリズムは、性別や性的指向、宗教などによる差別をなくし、社会的な平等を実現することを目指す。そのため、LGBTQ+の権利拡大や女性の権利向上を支持し、積極的に多様性を受け入れることを重視する。
(5) 国際主義
・国際機関と協力:国際連合(UN)、欧州連合(EU)、世界貿易機関(WTO)など、国際的な機関や協定を支持し、世界の平和と秩序を維持するために協力し合うことが重要だとされている。国際的な問題に対しては一国主義的ではなく、協調的な解決策を模索することが理想とされている。
3. なぜそのような志向を抱くのか
・経済的利益:リベラル・グローバリズムは、特に大企業や金融機関にとって有利であるため、経済的利益を求めるエリートがこの思想に共鳴し、推進する。多国籍企業が利益を最大化するためには、自由貿易や規制緩和が重要であるため、この志向を持つことが経済的に有利である。
・倫理的・哲学的信念:リベラル・グローバリズムを支持するエリートは、自由、平等、民主主義、環境保護などの価値を倫理的に支持している場合が多い。彼らは、これらの価値を普遍的なものと考え、それが全世界で実現されることを望んでいる。
・国際的な影響力:西側エリートは、自国だけでなく国際的な影響力を強化するためにリベラル・グローバリズムを推進する。これにより、自国の価値観や経済的な枠組みが他国にも広まり、グローバルなリーダーシップを握ることができると考えている。
4. 批判と反発
・国家主義やポピュリズム:リベラル・グローバリズムに対しては、特に経済的格差や移民問題に反発する国家主義的な立場やポピュリズムが強くなっている。これらの批判者は、グローバリズムが国民国家の価値を損ない、社会的な不安や分断を引き起こしていると主張する。
総じて、西側エリート(欧州のリベラル・グローバリストエリート)は、経済的利益、倫理的信念、国際的な影響力を背景に、自由貿易、個人の権利、民主主義、環境問題への対処、多文化主義などを支持しており、これが彼らの志向の根底にあるといえる。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Vance’s Munich Speech Vindicated Putin’s Summer 2022 Prediction About Political Change In Europe Andrew Korybko's Newsletter 2025.02.15
https://korybko.substack.com/p/vances-munich-speech-vindicated-putins?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=157190572&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
2025年2月15日にアンドリュー・コリブコが執筆したものであり、米国のJ・D・ヴァンス副大統領がミュンヘン安全保障会議(MSC)で行った演説が、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領による2022年の予測を裏付ける内容であったと主張している。
ヴァンス副大統領は演説の中で、欧州の「リベラル・グローバリストのエリート」を厳しく批判し、彼らが伝統的価値観を放棄し、大量の移民を受け入れたことで、自らの文明を危機に陥れていると述べた。また、トランプ政権2.0(再選後のトランプ政権)は、欧州の支配層が弾圧している「ポピュリスト・ナショナリスト」勢力に対抗して彼らを支援するつもりはないことを明言した。
ヴァンスの発言が、プーチン大統領が2022年6月のサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)で述べた予測と一致するとしている。その際、プーチンは欧州の政治体制が形骸化し、社会的・経済的格差の拡大によってポピュリズムや急進的な運動が台頭するだろうと述べた。これが現在欧州各国で進行している政治的変化と合致すると主張している。
さらに、2022年9月30日のロシアによるウクライナ4州編入式典でのプーチンの演説にも言及し、彼が欧米のエリートを批判し、伝統的価値観の破壊を「逆転した宗教(ピュア・サタニズム)」と形容したことを強調している。また、プーチンは欧米の体制に異議を唱える人々を支持する姿勢を示し、これを「脱植民地化運動」と位置付けた。
ヴァンスの発言がこれらのプーチンの主張と一致しているとし、米国のトランプ政権2.0、ロシア、欧州のポピュリスト・ナショナリスト勢力の利害が収束しつつあると論じる。さらに、これらの勢力はロシアの思想家アレクサンドル・ドゥーギンの「文明国家(Civilization-State)」モデルを支持していると指摘し、ヴァンスが米欧の「共有された文明」について言及したことを、ドゥーギンの思想との整合性の証拠として挙げている。
加えて、プーチンが2021年7月に発表した「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」の論文を引き合いに出し、彼が長年にわたり「ロシア文明の独自性」を強調してきたと述べる。そして、米欧のポピュリスト・ナショナリスト勢力が今になって同様の文明論的視点を採用し始めたとする。
最終的に、「欧米が文明国家として統合されることで、新たな世界秩序が形成される可能性がある」とし、それが19世紀的な「大国間の勢力圏外交(Great Power Chessboard)」の復活につながる可能性を示唆している。これは、小国を代理戦争の場とするのではなく、大国同士が相互の利益に基づいて交渉を行う外交モデルであり、国際関係の安定に寄与し得ると述べている。しかし、このシナリオが現実のものとなるかどうかはまだ不透明であり、今後の展開を注視する必要があるとしている。
【詳細】
アンドリュー・コリブコによるもので、2025年2月15日に発表され、ヴァンス副大統領のミュンヘン安全保障会議での演説がロシアのプーチン大統領による予測を裏付ける内容であると述べている。以下は、その詳細な解説である。
1. ヴァンス副大統領の演説の内容と批判
ヴァンス副大統領は、2025年のミュンヘン安全保障会議で行った演説の中で、欧州のリベラル・グローバリストエリートに対して非常に厳しい批判を行った。この批判は、彼らが伝統的な価値観から逸脱し、大量の移民を受け入れることによって自らの文明を危機に晒したというものだ。ヴァンスは、これらのエリートが欧州の社会的・文化的安定を損ね、最終的には自らの市民を敵視していると指摘した。
また、ヴァンスは「トランプ2.0」(再選後のトランプ政権)が、欧州の支配層が抑圧しているポピュリスト・ナショナリスト勢力を支持するつもりはないと明言した。これにより、米国が欧州に対して新たな政治的アプローチを取る可能性を示唆している。
2. プーチン大統領の2022年の予測との一致
このヴァンスの演説は、プーチン大統領が2022年6月にサンクトペテルブルクで行った演説と一致していると主張されている。プーチンはその演説の中で、欧州の政治体制が「形骸化」しており、伝統的な政党は失敗し、新たなポピュリスト・ナショナリスト勢力が台頭すると予測した。プーチンは、欧州がますます経済的・社会的格差を拡大し、その結果、社会は分裂し、ポピュリズムや急進的な運動が強化されるだろうと警告した。
プーチンはまた、欧州における民主主義と選挙の形式が実質的には「偽装」であり、政治家が国民の実際の利益から遠ざかっていると批判した。このような状況が続けば、欧州における政治的変動や新たなリーダーシップの誕生が加速することになると予測した。
3. 欧州でのポピュリズムの台頭
現在欧州で台頭しているポピュリスト・ナショナリスト勢力の増加が、プーチンの予測と一致していると指摘している。その原因として、欧州が採用した米国主導の反ロシア制裁と、それに伴う経済的・社会的影響を挙げている。特に、移民問題と、それに起因する社会的な緊張がポピュリスト勢力の支持を高めたと分析している。経済制裁の影響で多くの欧州市民が生活の困窮を経験し、これがポピュリスト・ナショナリストの台頭を加速させたとされる。
ヴァンスが指摘したように、移民の大規模な流入とそれに伴う統合の問題、そして経済的な不安定性が相まって、ポピュリズムが勢いを増している。この現象は、2022年以降、特に経済面で加速したとされる。
4. プーチンの文明国家(Civilization-State)モデル
プーチンは、欧米のエリートが「西側文明」の価値を放棄し、伝統的価値観を破壊する一方で、ロシアは独自の文明的価値観を守るべきだと強調してきた。2021年に発表した「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」の論文では、ロシアとウクライナの「文明的結びつき」を強調し、ロシア文明の独自性を再確認した。この視点は、プーチンが採用した「文明国家」モデルに基づいており、これが彼の外交政策や国内政治の根幹を成している。
ヴァンス副大統領は、米国と欧州の「共有された文明」について語ることで、ドゥーギンの「文明国家」モデルに賛同する立場を示した。ドゥーギンは、国際関係が「文明国家」に基づいて再編されつつあり、西洋とロシアの文明がそれぞれ独自に形成されるべきだと提唱している。この思想は、米国とロシア、そして欧州のポピュリスト・ナショナリスト勢力に影響を与え、これらの勢力が共通の目標に向かって協力する可能性を示唆している。
5. 新たな世界秩序と大国間の外交
米国とロシアを中心とした「文明国家」の形成が、19世紀的な「大国間の勢力圏外交」を復活させる可能性があると述べている。この外交モデルでは、大国が小国に対して直接的な支配を行うのではなく、大国間で利益を調整し合う形で小国に対する影響を行使することになる。これは、冷戦後のグローバルなパワーバランスの変化とともに、現代において現実味を帯びてきていると分析されている。
このアプローチは、イデオロギー的な対立よりも実利的な利益を重視し、現代の国際関係において安定を取り戻す可能性があるとされる。しかし、このシナリオが実現するかどうか、そしてその時期については未確定であり、今後の国際政治の動向を注視する必要があると結論づけている。
結論
ヴァンス副大統領の演説がプーチンの予測を裏付ける形で、欧州での政治的変動とポピュリズムの台頭を指摘し、米国、ロシア、欧州のポピュリスト・ナショナリスト勢力が「文明国家」の概念に基づいて共鳴し合っていると主張している。この動きが新たな世界秩序を形作り、大国間の外交が再び「勢力圏」に基づいて展開される可能性があると示唆されている。
【要点】
・ヴァンス副大統領の演説: 2025年2月15日、ミュンヘン安全保障会議で、欧州のリベラル・グローバリストエリートに対する厳しい批判を行った。彼は、大量移民が欧州の文明を危機に陥れ、政治家たちが市民の利益を無視していると指摘した。
・トランプ2.0のアプローチ: ヴァンスは、再選後のトランプ政権が欧州のポピュリスト・ナショナリスト勢力を支持し、欧州の支配層に対して新たなアプローチを取ると明言した。
・プーチン大統領の予測と一致: 2022年6月にプーチンは、欧州が政治的に形骸化し、ポピュリスト勢力が台頭すると予測していた。ヴァンスの演説はこの予測と一致している。
・ポピュリズムの台頭: 経済制裁や移民問題、社会的不安定が原因で、欧州でポピュリスト・ナショナリスト勢力が強化され、これがプーチンの予測通りに進行している。
・プーチンの「文明国家」モデル: プーチンは、ロシアが独自の価値観を持ち、欧米とは異なる「文明国家」としての立場を強調している。この視点が欧州でも支持されつつある。
・新たな大国間外交: 米国、ロシア、欧州のポピュリスト・ナショナリスト勢力が「文明国家」の概念に基づいて協力し合い、19世紀の大国間外交が復活する可能性がある。
・今後の国際秩序: この新しい動きが、新たな世界秩序を形成し、大国間の外交が「勢力圏」に基づいて行われる可能性がある。
・結論: 欧州での政治変動とポピュリズムの台頭が、プーチンの予測通り進行しており、米国とロシアを中心とした新たな外交モデルが現れるかもしれない。
【参考】
✅ 「逆転した宗教(ピュア・サタニズム)」という表現は、プーチン大統領が言及したものである。この概念は、彼が西側のエリートに対する批判を行う中で使用されたものである。以下にその内容を詳しく説明する。
・西側エリートの行動への批判: プーチンは、欧米の西側エリートが自らの伝統的な価値観を放棄し、無神論的、道徳的に堕落した方向に進んでいると指摘している。彼は、これが単なる道徳的な堕落ではなく、むしろ「逆転した宗教」、すなわち「ピュア・サタニズム」として表現されるべきだと述べている。
・伝統的な価値観の放棄: ここでの「逆転した宗教」は、従来の宗教的価値観、特にキリスト教的道徳観に対する反発として描かれている。プーチンは、伝統的な価値観(家族、信仰、道徳)を守ろうとする立場を取る一方で、西側エリートがこれらを否定し、逆に非道徳的、反宗教的な方向に進んでいると批判する。
・「サタニズム」との関連: プーチンは、このような動きを「サタニズム」と比較し、道徳的な堕落と倫理観の崩壊が進んでいると見なしている。彼の見解では、西側エリートの価値観は単に無神論的であるだけでなく、道徳的に退廃的であるとされている。
・社会全体への影響: この「逆転した宗教」の概念は、社会全体が持つべき価値観や倫理観の崩壊がもたらす危険性を指摘するものである。プーチンは、西側エリートがこのような価値観を推進することによって、社会秩序や安定性が失われ、最終的には社会の分裂を招くと警告している。
・グローバリズムと対立: プーチンの批判は、グローバリズム的な価値観に対するものであり、伝統的な文化や社会的枠組みを重視する立場からの対立を示している。彼は、これが単なる政治的対立ではなく、根本的な価値観の対立であることを強調している。
このように、「逆転した宗教(ピュア・サタニズム)」という表現は、西側エリートが進める価値観の崩壊とその道徳的堕落を強調するためにプーチンが使用した比喩的な表現である。
✅ 記事内で述べられている西側エリートと大量移民の受け入れ、そして逆転した宗教(ピュア・サタニズム)との関連について、プーチン大統領の見解を整理すると次のようになる。
1. 西側エリートの価値観の変化
・プーチンは、西側のエリート層が伝統的な価値観(特に家族や宗教的価値観)を放棄し、代わりに無神論的で道徳的に退廃した価値観を推進していると批判している。これが、いわゆる「逆転した宗教(ピュア・サタニズム)」という表現で表されている。
・逆転した宗教という概念は、伝統的な道徳観や信仰を否定する動きであり、これに対抗する形で伝統的な価値観を守ろうとする立場を取ることが重要だとされている。
2. 大量移民の受け入れ
・プーチンはまた、大量移民の受け入れが西側諸国における社会的、文化的な分裂を引き起こしていると考えている。特に、移民が現地社会に十分に統合せず、異なる価値観や生活様式を持ち込むことが社会的な不安定を招く要因として指摘されている。
・これらの移民の受け入れが、西側エリートの「新しい価値観」に基づく政策の一環として進められている。西側エリートは移民を受け入れることによって、国際的な寛容性や多様性を推進しようとしているが、プーチンはこれを「自国の伝統的価値観を崩壊させる」ものと見なしている。
3. 逆転した宗教(ピュア・サタニズム)との関連
・プーチンが言う「逆転した宗教(ピュア・サタニズム)」は、道徳的な価値観や伝統的な宗教を軽視し、無神論的で進歩的な社会観を重視する方向性を指す。この方向性が、移民政策や多文化主義に反映されていると彼は考えている。
・大量移民の受け入れが西側エリートの進める「新しい価値観」の一部であり、それが従来の社会構造や道徳観を崩壊させるとされる点で、「逆転した宗教」という概念と結びついている。つまり、移民が持ち込む異なる文化や価値観は、西側エリートが推し進める「道徳的退廃」を強化し、伝統的な価値観をさらに脅かすものと見なされているのである。
4. 社会の分裂とポピュリズムの台頭
・さらに、プーチンは西側諸国において、エリート層と一般市民の間に深い分断が生まれていることを指摘する。この分断は、移民政策とその結果としての社会的な不安定性によって悪化し、最終的にはポピュリズムや極端な政治運動の台頭を促進すると予測している。
・これにより、従来の西側の政治体制は崩れ、より極端な政治運動や指導者が登場する可能性があるという視点である。プーチンはこれを、伝統的な価値観を守ろうとする人々が西側エリートに反発し、ポピュリズム的な運動が盛り上がる原因だと見ている。
結論
プーチンにとって、西側エリートの進める政策(移民受け入れなど)と逆転した宗教(ピュア・サタニズム)は密接に関連しており、これが西側社会の分裂を引き起こし、最終的に伝統的な価値観を守ろうとする人々が反発し、ポピュリズム的な政治運動が台頭する原因であると見なされている。
✅ 西側エリート(欧州のリベラル・グローバリストエリート)
1. 西側エリートの構成
・政治家:政府の中枢に位置する人物、特に欧州連合(EU)のリーダーや、西欧諸国の左派または中道政治家(例:ドイツのアンゲラ・メルケル前首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領など)。
・ビジネス界の指導者:グローバル企業や金融機関のトップ。多国籍企業や大手銀行の経営者(例:ユニリーバ、シティグループなどの企業経営者)。
・学者・思想家:リベラル・グローバリズムを支持する学者や思想家。特に国際関係、経済学、社会学の分野で活動している人物(例:ジョセフ・スティグリッツなど)。
・メディアのエリート:西側諸国の主要なメディア企業の経営者やジャーナリスト。リベラルな立場を取る報道機関(例:BBC、ニューヨーク・タイムズ、ガーディアンなど)の編集長や影響力のあるコメンテーター。
2. 彼らの志向
リベラル・グローバリズムは、経済的自由、個人主義、民主主義、環境問題の解決、国際協力などを重視する思想です。これに基づく西側エリートの志向には、以下のような背景や動機があるとされています。
(1) 経済的利益とグローバル化
・グローバル経済の推進:多国籍企業や大手金融機関が利益を得るためには、国境を越えた自由な貿易や市場が不可欠です。リベラル・グローバリズムは、貿易障壁を減らし、グローバル化を進めることでこれを実現しようとする。
・市場の自由化:規制緩和や貿易の自由化を支持し、企業活動や投資が国境を越えて行える環境を整備することが、彼らの経済的利益に繋がる。
(2) 人権と民主主義の拡大
・価値観の普遍化:リベラル・グローバリズムの思想は、自由、平等、民主主義を普遍的な価値として捉え、これを世界中で推進しようとする。彼らは、全世界がリベラルな政治体制と社会制度を採用することを目指しており、そのために人権の保護や民主化運動を支援する。
・人道的援助と移民の受け入れ:人権を守るという立場から、戦争や貧困から逃れてきた移民や難民を受け入れる政策を推進し、多文化主義や寛容さを重要視する。
(3) 環境問題への関心
・地球規模の問題としての環境保護:気候変動や環境問題は、リベラル・グローバリストにとって国際的な課題であり、国際的な協力を通じてこれを解決しようとする姿勢を見せている。再生可能エネルギーの推進や炭素排出削減を求める政策もその一部である。
(4) 社会的寛容と多様性
・社会的な寛容:リベラル・グローバリズムは、性別や性的指向、宗教などによる差別をなくし、社会的な平等を実現することを目指す。そのため、LGBTQ+の権利拡大や女性の権利向上を支持し、積極的に多様性を受け入れることを重視する。
(5) 国際主義
・国際機関と協力:国際連合(UN)、欧州連合(EU)、世界貿易機関(WTO)など、国際的な機関や協定を支持し、世界の平和と秩序を維持するために協力し合うことが重要だとされている。国際的な問題に対しては一国主義的ではなく、協調的な解決策を模索することが理想とされている。
3. なぜそのような志向を抱くのか
・経済的利益:リベラル・グローバリズムは、特に大企業や金融機関にとって有利であるため、経済的利益を求めるエリートがこの思想に共鳴し、推進する。多国籍企業が利益を最大化するためには、自由貿易や規制緩和が重要であるため、この志向を持つことが経済的に有利である。
・倫理的・哲学的信念:リベラル・グローバリズムを支持するエリートは、自由、平等、民主主義、環境保護などの価値を倫理的に支持している場合が多い。彼らは、これらの価値を普遍的なものと考え、それが全世界で実現されることを望んでいる。
・国際的な影響力:西側エリートは、自国だけでなく国際的な影響力を強化するためにリベラル・グローバリズムを推進する。これにより、自国の価値観や経済的な枠組みが他国にも広まり、グローバルなリーダーシップを握ることができると考えている。
4. 批判と反発
・国家主義やポピュリズム:リベラル・グローバリズムに対しては、特に経済的格差や移民問題に反発する国家主義的な立場やポピュリズムが強くなっている。これらの批判者は、グローバリズムが国民国家の価値を損ない、社会的な不安や分断を引き起こしていると主張する。
総じて、西側エリート(欧州のリベラル・グローバリストエリート)は、経済的利益、倫理的信念、国際的な影響力を背景に、自由貿易、個人の権利、民主主義、環境問題への対処、多文化主義などを支持しており、これが彼らの志向の根底にあるといえる。
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Vance’s Munich Speech Vindicated Putin’s Summer 2022 Prediction About Political Change In Europe Andrew Korybko's Newsletter 2025.02.15
https://korybko.substack.com/p/vances-munich-speech-vindicated-putins?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=157190572&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email