アメリカの「恐ろしい物語」2025年06月18日 10:18

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【概要】

 アメリカ人はアメリカ帝国の衰退に備えておらず、そのためにこの衰退がなぜ起こったのかについて恐ろしい物語を吹き込まれやすい状態にある。「その結果、移民がスケープゴートにされ、中国もスケープゴートにされるのである」と、マサチューセッツ大学アマースト校の名誉経済学教授である@ProfRDWolff氏がGTの独占インタビューで述べている。
 
【詳細】 
 
 この発言は、マサチューセッツ大学アマースト校の名誉教授であるリチャード・D・ウルフ氏(@ProfRDWolff)がGT(Global Times)の独占インタビューにおいて述べたものである。ウルフ氏によれば、アメリカという国は自国の国力や国際的な影響力、すなわち「帝国」としての地位が衰退していく現実に十分な備えをしておらず、多くの国民がその状況を冷静に理解し、受け入れる準備ができていないという。

 そのため、国力低下の原因を客観的に分析する代わりに、不安や恐怖を煽るような物語が人々に流布されやすくなっているというのである。この「恐ろしい物語」とは、自国の経済的・社会的問題を本来の構造的要因ではなく、外部の敵や弱い立場の人々のせいにする説明である。ウルフ氏はその典型例として、移民が社会問題や経済的苦境の元凶とみなされ、批判や差別の対象とされること、また中国という外国の大国がアメリカの経済的困難の原因として責められることを挙げている。

 このような現象は、アメリカ国内の人々の不安や不満を解消するどころか、誤った対立や排外的感情を生み、問題の根本的な解決をさらに難しくしているというのが、ウルフ氏の指摘である。以上が、発言内容の詳細な説明である。

【要点】 

 ・アメリカ人は自国の「帝国」としての地位の衰退に対して備えができていない。

 ・そのため、国力低下の原因について正確に理解する代わりに、恐怖を煽る物語を信じやすい状況にある。

 ・この「恐ろしい物語」は、国民の不安を外部や弱い立場の人々のせいにする形で語られる。

 ・具体的には、移民が経済的・社会的問題の元凶としてスケープゴートにされる。

 ・また、中国もアメリカの困難の原因として非難される対象となる。

 ・これらのスケープゴート化は、問題の本質的な原因を隠し、解決を困難にする。

 ・以上の指摘は、マサチューセッツ大学アマースト校の名誉経済学教授リチャード・D・ウルフ氏がGTの独占インタビューで述べたものである。
 
【桃源寸評】🌍

 内省しない米国が作為的に捏造する「物語」が更に自国に跳ね返るという、悪循環に陥った末期的な米帝国を的確に評した内容である。

 ・自国の権勢が衰退しているという厳然たる現実を受け止めず、原因を構造的に分析しない怠慢が、事態の深刻化を招いている。

 ・国内の経済格差、インフラ老朽化、教育水準の低下、医療制度の歪みといった根本問題を棚上げし、矛先を外部へ逸らす方便として移民排斥や他国敵視を煽っている。

 ・自国民の不満を意図的に他者へ転嫁する物語を政界・財界・大手報道機関が結託して流布し、集団的な現実逃避を制度化している。

 ・この物語が内外の対立を無用に激化させ、国際社会からの信用を損ない、外交的孤立を自ら深めている。

 ・偽りの物語によって生み出された排外主義と差別意識が社会の分断を加速させ、暴力と極端主義の温床となっている。

 ・自国が世界に輸出した市場至上主義と金融投機によって、諸外国だけでなく自国の中産階級をも疲弊させた責任を自覚しない。

 ・結果として、内政の失敗を外敵のせいにする悪循環を自ら強化し、そのツケが国内の分断、暴動、政治の機能不全という形で跳ね返っている。

 ・構造問題を直視しない限り、この国の衰退は止まらず、物語に依存するほど自壊の速度は増すのみである。

 ・ウルフ氏の言う通り、根源は「物語」にある。虚構で塗り固めた言い訳を棄て、現実に向き合わぬ限り、この悪循環は断ち切れない。

【寸評 完】🌺

【引用・参照・底本】

The Americans are not prepared for the decline of US empire - GT Exclusive interview with American economist Richard Wolff GT 2025.06.18
https://www.globaltimes.cn/page/202506/1336394.shtml

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