世界で「百年に一度の変化」が進行2025年03月05日 19:45

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【概要】

 中国の李強首相は、2025年の全国人民代表大会の開幕式で、経済成長を維持するために財政刺激策を強化する方針を示した。李首相は、世界で「百年に一度の変化」が進行しており、外部環境がますます複雑かつ厳しくなっていることを警告した。特に貿易、科学技術の分野で中国に対する影響が大きくなると指摘した。

 米国との貿易戦争が中国経済に影響を与える中、家計の需要が低迷し、負債を抱えた不動産業の問題が経済の脆弱性を高めている。これに対抗するため、中国政府は消費を促進し、経済成長を支えるための財政政策を進めている。

 消費が2025年の主要課題として技術よりも優先されることが示された。これは、以前から中国が目指していた消費主導型経済への転換を強調するものの、実際の進展には限界があると見られている。特に、消費を促進するための具体的な施策については、家計支援に関する詳細は少なく、電気自動車や家電製品の購入補助金に限られている。

 2025年の成長目標は5%で、財政赤字はGDPの4%に達する見込みである。また、超長期特別国債の発行額は2024年の1兆元から1.3兆元に増額され、地方政府は4.4兆元の特別債務を発行することが許可される。これらの措置は、米国との貿易摩擦の影響を緩和するための財政的な手段と考えられている。

 中国の家計支出はGDPの40%未満で、世界平均を20ポイント下回っている。このため、経済の成長には依然として投資と輸出が大きな役割を果たしており、内需主導の経済への転換は課題が多い。李首相は、供給と需要のギャップを埋め、地方政府の収入を増加させるための財政改革を進めることを約束している。

 貿易戦争の影響で、中国企業は米国以外の市場への依存を高めようとしており、それによる価格戦争や利益率の圧迫、貿易障壁の強化を懸念している。  

【詳細】 
 
 中国の李強首相は2025年3月5日に行った全国人民代表大会(NPC)の開幕式で、世界的な経済環境の変化に対して、財政刺激策を強化し、5%の経済成長目標を維持することを表明した。首相は「百年に一度の変化が世界で進行しており、そのペースは加速している」と警告し、特に貿易や科学技術における外部環境の影響が中国に対してより深刻な影響を及ぼす可能性があることを指摘した。

 中国経済に対する外的圧力

 中国は現在、米国との貿易戦争という長期的な圧力に直面している。アメリカのトランプ政権は関税を課し、世界的な貿易秩序に挑戦してきた。これにより、中国の広大な産業基盤が影響を受けており、特に中国の主要な輸出先である米国市場との関係が経済にとって重要な問題となっている。中国の製造業はこれに対応するため、他の輸出市場を模索しているが、これが価格競争を激化させ、利益率の低下や、他国政府が自国産業を守るためにさらなる貿易障壁を課すリスクを高めている。

 加えて、中国国内では家計の消費が弱く、特に不動産業界の問題が経済に悪影響を及ぼしている。負債の膨張した不動産セクターが経済の不安定要因となっており、これが消費者心理や投資活動に悪影響を及ぼしている。

 財政刺激と消費主導の経済成長

 李強首相は、経済成長を支えるために財政刺激策を強化し、特に消費を重視する姿勢を強調した。2025年の成長目標は5%で、これは2024年に達成した成長率と同等である。これは中国の経済が依然として輸出や投資に依存しており、内需の拡大が急務であることを反映している。

 消費の促進が最優先課題として挙げられた点は重要である。李首相は、消費を増やすための政策を強化し、特に家電製品や電気自動車の購入に対する補助金を拡充することを発表した。このような消費刺激策は、短期的には一定の効果を上げているが、長期的には中国経済全体が消費主導型経済に転換するためには、さらに深い改革が必要である。

 中国政府は過去10年以上にわたり消費主導型の経済転換を目指してきたが、実際には十分な進展を見せていない。消費者信頼感や支出意欲が低迷している中で、家計支援の具体策は限定的であり、今後も消費拡大に向けたより包括的な政策が求められる。

 財政改革と地方政府の役割

 李強首相は、地方政府の収入を増加させるための財政改革を進めることを約束した。また、政府の支出を強化するため、2025年には1.3兆元(約1790億ドル)の超長期特別国債を発行し、地方政府には4.4兆元の特別債務の発行を認めると発表した。これらの措置は、外部からの圧力に対応しつつ、内需拡大のための財政支援を強化する目的である。

 中国はまた、主要な国有銀行の再資本化のために5000億元を調達する計画を発表した。このような措置は、銀行の融資能力を高め、経済の回復を支えるために重要な役割を果たす。

 技術革新とAIの役割

 李首相の演説では、人工知能(AI)の推進に関する言及が増えており、AI技術が電気自動車、スマートフォン、ロボットなどの分野での応用を促進することが期待されている。AI技術の進展は、経済の構造転換を加速するための重要な鍵となり、特に製造業の効率化や新たな消費市場の開拓に寄与する可能性がある。

 また、2025年の政策では、AIを中心にした技術革新の支援が強調され、これにより中国の産業競争力の向上が期待されている。しかし、消費市場の活性化や生活水準の向上といった目標に対して、技術面での進展だけでは十分ではないとの指摘もある。

 経済の課題と将来の見通し

 中国の家計支出はGDPの40%未満で、これは世界平均に比べて低い水準である。これに対し、投資が依然として経済成長の主な駆動力となっている。内需主導型の経済へと転換するためには、家計支出の拡大や社会保障制度の強化が必要であり、そのための政策が求められている。

 李首相は、供給と需要のギャップを埋めるための改革を行うと約束しており、特に消費を促進するための措置が重要な課題となる。しかし、現在の政策では、消費拡大に向けた具体的な施策が不足しており、より抜本的な改革が必要である。

 貿易戦争の影響により、中国の企業は新たな市場を模索しているが、これが価格競争を激化させ、利益の圧迫や貿易障壁の強化を招く可能性がある。これに対し、中国政府は、消費の促進や技術革新を通じて経済の構造を転換し、内需に依存した成長を実現しようとしている。

【要点】

 李強首相の全国人民代表大会(NPC)開幕式での演説の主な内容を箇条書きでまとめたものです。

 1.経済成長目標: 2025年の経済成長率目標は5%に設定。2024年の成長率と同等。

 2.世界経済の変化

 ・世界経済は「百年に一度の変化」が進行中。
 ・外部環境、特に貿易や科学技術の影響が中国に深刻な影響を与える可能性。

 3.貿易と米中関係

 ・米国と野貿易戦争が続いており、外部圧力が強い。
 ・中国の製造業が影響を受け、他の輸出市場を模索中。

 4.財政刺激策

 ・消費促進と内需拡大を強化するための財政刺激策を強化。
 ・家電製品や電気自動車に対する補助金を拡充。

 5.不動産業の影響

 ・不動産業界の問題が経済に悪影響を及ぼし、消費者信頼感が低迷。

 6.地方政府への支援

 ・1.3兆元の超長期特別国債発行計画。
 ・4.4兆元の特別債務発行を地方政府に認め、支出強化。

 7.国有銀行の支援

 ・国有銀行の再資本化をために5000億元を調達し、融資能力を強化。

 8.AI技術の推進

 ・人工知能(AI)技術の発展を促進し、製造業の効率化や新しい市場の開拓を狙う。

 9.消費拡大の課題

 ・家計支出がGDPの40%未満で、世界平均に比べ低い。
 ・消費拡大のために社会保障制度や家計支援策の強化が必要。

 10.今後の課題

 ・貿易戦争や外部の圧力に対応しつつ、内需主導型経済に転換するための政策が求められる。
 ・政府は消費促進と技術革新を通じて経済の構造転換を目指す。

【引用・参照・底本】

China aims to ramp up economic growth amid changes 'unseen in a century'
FRANCE24 2025.03.05
https://www.france24.com/en/asia-pacific/20250305-china-aims-to-ramp-up-economic-growth-amid-changes-unseen-in-a-century?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020250305&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

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