アフガニスタンにおける米軍の影響力を回復の場合 ― 2025年03月11日 17:41
【概要】
トランプ氏がアフガニスタンにおける米軍の影響力を回復しようとする場合、地理的要因からパキスタンとの合意が不可欠である可能性が高い。具体的には、バグラム空軍基地への米軍の再配置や、バイデン政権の撤退時に放棄された装備の回収を実現するためには、パキスタンの空域や陸路の利用が最も現実的な選択肢となる。
トランプ氏は最近、バグラム空軍基地の再利用を望む意向を示し、その理由として、中国の核兵器施設(もしくは核兵器配備拠点)が約1時間の距離にあることを挙げた。また、同基地が現在中国に占拠されているとの主張も展開した。さらに、撤退時に残された米国製装備について、タリバンが他の武装勢力に売却する危険性を指摘し、その回収の必要性を訴えた。
一方、トランプ氏はアフガニスタンの維持に米国が毎年数十億ドルを費やしていることに不満を示しており、将来的にはこの支援を交渉材料として活用する可能性がある。しかし、この動きが中国の影響力拡大を招く可能性もあり、慎重な対応が求められる。仮にこの戦略が成功した場合でも、米国がアフガニスタンへアクセスするためにはパキスタンとの協力が不可欠である。
しかし、米国とパキスタンの関係には近年、多くの課題が生じている。例えば、米国は近年インドを地域における最優先のパートナーとして位置付けており、パキスタンの立場が相対的に低下している。また、数カ月前にパキスタンの軍事法廷が25人の民間人を有罪とした件について、米国が批判的な立場を取ったことも摩擦を生んでいる。さらに、パキスタンの長距離ミサイル計画に対する米国の懸念も高まっている。加えて、タリバン政権との対立において米国がパキスタンの立場を支持しなかったことも、両国関係に影響を与えている。
パキスタンの軍部が自国の利益を犠牲にしてまで米国との合意に応じるかは不透明である。仮にトランプ氏がタリバンとの交渉に成功し、パキスタンを通じた軍事的プレゼンスの回復を模索する場合、パキスタン側は単なる資金援助以上の譲歩を要求する可能性がある。その要求は、軍事装備の追加供与や、米国による内政不干渉(特にイムラン・カーン元首相の投獄問題への言及の停止、およびミサイル計画に対する圧力の軽減)といった形を取る可能性がある。
また、米国がパキスタンとの交渉を有利に進めるため、圧力を強化する可能性も考えられる。例えば、イムラン・カーン氏の拘束に対する批判を強めると同時に、軍事援助の削減やミサイル計画への制裁を示唆することで、パキスタン政府の譲歩を引き出す戦略が想定される。ただし、これに対してパキスタンが中国への依存を強めることで対抗する可能性も否定できない。この場合、米国はパキスタンに対する制裁強化やインドへの軍事技術支援の拡大といった措置を講じる可能性がある。
しかし、こうした事態はすべてトランプ氏がタリバンとの交渉を成功させるかどうかにかかっており、現時点では確定的な見通しは立っていない。また、トランプ氏がこの構想を本気で進める意図があるのか、それとも単なる思いつきで発言したのかも不明である。
仮にタリバンとの合意が成立しても、パキスタンが協力を拒否する場合、米国は中央アジア諸国との協力を模索する可能性がある。この場合、米国は「北方補給ルート(Northern Distribution Network)」を再活用し、南コーカサス経由で中央アジアからアフガニスタンへの物資輸送を実施することが考えられる。このルートは過去のアフガニスタン駐留期間中に使用された実績がある。現在の地政学的環境では、ロシアとの協力を通じてこのルートを確保する可能性も考えられるが、その詳細は別の分析が必要となる。
結局のところ、トランプ氏がタリバンとの交渉をどの程度真剣に進めるのか、交渉が成功するのか、さらにその後パキスタンとの合意を取り付けられるのかが、今後の展開を左右する。現時点では確実な動きは見られず、状況を慎重に見守る必要がある。
【詳細】
ドナルド・トランプ前大統領がアフガニスタンのバグラム空軍基地への米軍の復帰およびバイデン政権による撤退時に放棄された米軍装備の回収を望んでいることについて分析している。その実現可能性と、実現に向けた障害について詳述されている。
1. トランプの主張と目的
トランプは、バグラム基地の再利用について、地政学的な重要性を強調している。彼の主張によれば、バグラム基地は「中国が核兵器を製造(あるいは配備)している場所から1時間の距離にある」とされ、米国が影響力を維持すべき地域であると考えている。また、タリバンがバグラム基地を占拠しているとし、その状況を問題視している。
加えて、トランプはバイデン政権が撤退時に放棄した米軍装備がタリバンによって他の勢力に売却される可能性を危惧し、それを回収する必要があると主張している。これに関連して、米国が現在もアフガニスタンに多額の支援を行っていることに不満を示し、その支援を交渉材料として軍事的なプレゼンスを回復する可能性も示唆している。
2. パキスタンの重要性
アフガニスタンへの最も現実的なアクセスルートは、従来から米国と関係の深いパキスタンを経由するルートである。パキスタンの空域および陸上交通網を利用しなければ、米軍のバグラム基地への再展開や装備の回収は困難となる。
しかし、近年の米パ関係には以下のような問題が生じている。
・米国のインド重視政策
米国は近年、パキスタンではなくインドを主要な地域パートナーと位置付けており、これがパキスタン側の不満を招いている。
・パキスタン国内の人権問題への米国の批判
例えば、パキスタンの軍事裁判所が2023年に25人の民間人を有罪としたことに対し、米国は人権問題として批判している。
・長距離ミサイル開発への懸念
米国は、パキスタンの長距離ミサイル計画の本当の意図に懸念を示しており、これが関係を悪化させる要因となっている。
・タリバン問題への対応
パキスタンはタリバン政権と摩擦を抱えているが、米国はこの問題でパキスタンの立場を支持していない。
これらの要因から、米国がパキスタンと交渉する場合、単に資金的支援を提供するだけではなく、パキスタン側の要求に応じる必要がある可能性がある。
3. 交渉のシナリオ
パキスタンが米国の要求を受け入れるかどうかは不透明であるが、以下のような交渉のシナリオが考えられる。
(1) パキスタンが要求を受け入れる場合
パキスタン側は単なる資金提供ではなく、以下のような見返りを求める可能性がある。
・軍事支援の強化
米国からの最新の軍事装備の供給を求める可能性がある。これは、米国がインドとのバランスを調整する意図があるかのような印象を与え、インド側の反発を招く可能性もある。
・米国の政治的干渉の排除
パキスタンは、米国がイムラン・カーン元首相の逮捕に対して批判的であることに不満を抱いており、これに対する沈黙を要求する可能性がある。また、ミサイル計画への干渉を避けるよう求めることも考えられる。
(2) 米国が圧力をかける場合
パキスタンが容易に合意しない場合、トランプ政権が圧力を強める可能性もある。
・イムラン・カーン問題の利用
米国はイムラン・カーンの扱いに対する国際的な注目を高め、パキスタン政府に圧力をかけることができる。
・軍事援助の制限
パキスタンへの軍事支援を削減することで、交渉材料とする可能性がある。
・制裁の適用
長距離ミサイル開発などを理由に制裁を加えることも考えられる。これには、個人制裁やセクター制裁(軍事産業や金融部門への制裁)などが含まれる可能性がある。
このような圧力に対して、パキスタンが抵抗する場合、中国との関係をさらに強化する可能性も考えられる。しかし、その場合、米国がさらなる制裁を科し、パキスタン経済に深刻な影響を与えるリスクもある。
4. 代替ルートの可能性
パキスタンが協力しない場合、米国は別のルートを模索する必要がある。その一つとして、「北方輸送ネットワーク(Northern Distribution Network)」 の再利用が考えられる。
このルートは、アフガニスタンへの補給を中央アジア経由で行うもので、旧ソ連圏の中央アジア諸国と協力する必要がある。
・ロシアとの協力の可能性
現在、ロシアと米国の間には新たな「デタント(緊張緩和)」の動きがあると指摘されており、これが進展すれば、ロシアの影響下にある中央アジア諸国を経由した輸送が可能になるかもしれない。
しかし、この方法はパキスタン経由よりもコストがかかり、地政学的な影響も大きいため、現実的な選択肢としてどの程度有効かは不透明である。
5. 結論
バグラム基地への米軍復帰や放棄された装備の回収は、以下の3つの要素にかかっている。
・タリバンとの合意が成立するか
・パキスタンが米国と合意するか、それとも反発するか
・パキスタンが拒否した場合、米国が代替ルートを確保できるか
現時点では、トランプの発言がどの程度本気であるかも不明であり、実際の交渉が始まるかどうかも不透明である。しかし、もしトランプが具体的な行動に移った場合、パキスタンがどのように対応するかが、米国のアフガニスタン政策にとって決定的な要素となる。
今後の展開次第では、パキスタンが米国の圧力に屈するか、中国との関係を強化するか、またはロシアを介した代替ルートが機能するかが焦点となる。現段階ではこれらの可能性を冷静に見守る必要がある。
【要点】
トランプの主張と目的
・バグラム基地の戦略的重要性
⇨ 中国の核関連施設に近い
⇨ 米国の影響力維持のために再利用すべき
・放棄された米軍装備の回収
⇨ タリバンによる売却リスクを懸念
⇨ バイデン政権の撤退を批判
パキスタンの重要性
・米軍のアフガニスタン再進出にはパキスタン経由が不可欠
・米国とパキスタンの関係悪化の要因
⇨ インドを重視する米国の外交政策
⇨ パキスタンの人権問題に対する米国の批判
⇨ 長距離ミサイル開発に関する米国の懸念
⇨ タリバン問題への対応の相違
交渉のシナリオ
(1) パキスタンが米国の要求を受け入れる場合
・見返りとして以下を要求する可能性
⇨ 軍事支援の強化(最新兵器の提供)
⇨ 米国の政治的干渉の排除(人権問題・ミサイル計画への批判回避)
(2) 米国が圧力をかける場合
・イムラン・カーン問題の利用(パキスタン政府への圧力)
・軍事援助の制限(支援削減で交渉を有利に進める)
・制裁の適用(個人・軍事・金融制裁の可能性)
・パキスタンが反発すれば、中国との関係強化の可能性
代替ルートの可能性
・「北方輸送ネットワーク」の再利用(中央アジア経由)
⇨ ロシアの影響力下にある国々と協力する必要
⇨ コストが高く、実現可能性は不透明
⇨ 米露関係の緊張緩和が鍵
結論
・米軍のバグラム基地復帰・装備回収の鍵
⇨ タリバンとの合意が成立するか
⇨ パキスタンとの交渉が成功するか
⇨ 代替ルートの確保が可能か
・今後の焦点
⇨ パキスタンが米国の圧力に屈するか、中国に接近するか
⇨ 米国がロシアとの関係改善を模索する可能性
⇨ トランプの発言が具体的な政策に発展するか
【引用・参照・底本】
Trump Will Likely Have To Cut A Deal With Pakistan If He’s Serious About His Afghan Plans Andrew Korybko's Newsletter 2025.03.11
https://korybko.substack.com/p/trump-will-likely-have-to-cut-a-deal?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=158826741&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
トランプ氏がアフガニスタンにおける米軍の影響力を回復しようとする場合、地理的要因からパキスタンとの合意が不可欠である可能性が高い。具体的には、バグラム空軍基地への米軍の再配置や、バイデン政権の撤退時に放棄された装備の回収を実現するためには、パキスタンの空域や陸路の利用が最も現実的な選択肢となる。
トランプ氏は最近、バグラム空軍基地の再利用を望む意向を示し、その理由として、中国の核兵器施設(もしくは核兵器配備拠点)が約1時間の距離にあることを挙げた。また、同基地が現在中国に占拠されているとの主張も展開した。さらに、撤退時に残された米国製装備について、タリバンが他の武装勢力に売却する危険性を指摘し、その回収の必要性を訴えた。
一方、トランプ氏はアフガニスタンの維持に米国が毎年数十億ドルを費やしていることに不満を示しており、将来的にはこの支援を交渉材料として活用する可能性がある。しかし、この動きが中国の影響力拡大を招く可能性もあり、慎重な対応が求められる。仮にこの戦略が成功した場合でも、米国がアフガニスタンへアクセスするためにはパキスタンとの協力が不可欠である。
しかし、米国とパキスタンの関係には近年、多くの課題が生じている。例えば、米国は近年インドを地域における最優先のパートナーとして位置付けており、パキスタンの立場が相対的に低下している。また、数カ月前にパキスタンの軍事法廷が25人の民間人を有罪とした件について、米国が批判的な立場を取ったことも摩擦を生んでいる。さらに、パキスタンの長距離ミサイル計画に対する米国の懸念も高まっている。加えて、タリバン政権との対立において米国がパキスタンの立場を支持しなかったことも、両国関係に影響を与えている。
パキスタンの軍部が自国の利益を犠牲にしてまで米国との合意に応じるかは不透明である。仮にトランプ氏がタリバンとの交渉に成功し、パキスタンを通じた軍事的プレゼンスの回復を模索する場合、パキスタン側は単なる資金援助以上の譲歩を要求する可能性がある。その要求は、軍事装備の追加供与や、米国による内政不干渉(特にイムラン・カーン元首相の投獄問題への言及の停止、およびミサイル計画に対する圧力の軽減)といった形を取る可能性がある。
また、米国がパキスタンとの交渉を有利に進めるため、圧力を強化する可能性も考えられる。例えば、イムラン・カーン氏の拘束に対する批判を強めると同時に、軍事援助の削減やミサイル計画への制裁を示唆することで、パキスタン政府の譲歩を引き出す戦略が想定される。ただし、これに対してパキスタンが中国への依存を強めることで対抗する可能性も否定できない。この場合、米国はパキスタンに対する制裁強化やインドへの軍事技術支援の拡大といった措置を講じる可能性がある。
しかし、こうした事態はすべてトランプ氏がタリバンとの交渉を成功させるかどうかにかかっており、現時点では確定的な見通しは立っていない。また、トランプ氏がこの構想を本気で進める意図があるのか、それとも単なる思いつきで発言したのかも不明である。
仮にタリバンとの合意が成立しても、パキスタンが協力を拒否する場合、米国は中央アジア諸国との協力を模索する可能性がある。この場合、米国は「北方補給ルート(Northern Distribution Network)」を再活用し、南コーカサス経由で中央アジアからアフガニスタンへの物資輸送を実施することが考えられる。このルートは過去のアフガニスタン駐留期間中に使用された実績がある。現在の地政学的環境では、ロシアとの協力を通じてこのルートを確保する可能性も考えられるが、その詳細は別の分析が必要となる。
結局のところ、トランプ氏がタリバンとの交渉をどの程度真剣に進めるのか、交渉が成功するのか、さらにその後パキスタンとの合意を取り付けられるのかが、今後の展開を左右する。現時点では確実な動きは見られず、状況を慎重に見守る必要がある。
【詳細】
ドナルド・トランプ前大統領がアフガニスタンのバグラム空軍基地への米軍の復帰およびバイデン政権による撤退時に放棄された米軍装備の回収を望んでいることについて分析している。その実現可能性と、実現に向けた障害について詳述されている。
1. トランプの主張と目的
トランプは、バグラム基地の再利用について、地政学的な重要性を強調している。彼の主張によれば、バグラム基地は「中国が核兵器を製造(あるいは配備)している場所から1時間の距離にある」とされ、米国が影響力を維持すべき地域であると考えている。また、タリバンがバグラム基地を占拠しているとし、その状況を問題視している。
加えて、トランプはバイデン政権が撤退時に放棄した米軍装備がタリバンによって他の勢力に売却される可能性を危惧し、それを回収する必要があると主張している。これに関連して、米国が現在もアフガニスタンに多額の支援を行っていることに不満を示し、その支援を交渉材料として軍事的なプレゼンスを回復する可能性も示唆している。
2. パキスタンの重要性
アフガニスタンへの最も現実的なアクセスルートは、従来から米国と関係の深いパキスタンを経由するルートである。パキスタンの空域および陸上交通網を利用しなければ、米軍のバグラム基地への再展開や装備の回収は困難となる。
しかし、近年の米パ関係には以下のような問題が生じている。
・米国のインド重視政策
米国は近年、パキスタンではなくインドを主要な地域パートナーと位置付けており、これがパキスタン側の不満を招いている。
・パキスタン国内の人権問題への米国の批判
例えば、パキスタンの軍事裁判所が2023年に25人の民間人を有罪としたことに対し、米国は人権問題として批判している。
・長距離ミサイル開発への懸念
米国は、パキスタンの長距離ミサイル計画の本当の意図に懸念を示しており、これが関係を悪化させる要因となっている。
・タリバン問題への対応
パキスタンはタリバン政権と摩擦を抱えているが、米国はこの問題でパキスタンの立場を支持していない。
これらの要因から、米国がパキスタンと交渉する場合、単に資金的支援を提供するだけではなく、パキスタン側の要求に応じる必要がある可能性がある。
3. 交渉のシナリオ
パキスタンが米国の要求を受け入れるかどうかは不透明であるが、以下のような交渉のシナリオが考えられる。
(1) パキスタンが要求を受け入れる場合
パキスタン側は単なる資金提供ではなく、以下のような見返りを求める可能性がある。
・軍事支援の強化
米国からの最新の軍事装備の供給を求める可能性がある。これは、米国がインドとのバランスを調整する意図があるかのような印象を与え、インド側の反発を招く可能性もある。
・米国の政治的干渉の排除
パキスタンは、米国がイムラン・カーン元首相の逮捕に対して批判的であることに不満を抱いており、これに対する沈黙を要求する可能性がある。また、ミサイル計画への干渉を避けるよう求めることも考えられる。
(2) 米国が圧力をかける場合
パキスタンが容易に合意しない場合、トランプ政権が圧力を強める可能性もある。
・イムラン・カーン問題の利用
米国はイムラン・カーンの扱いに対する国際的な注目を高め、パキスタン政府に圧力をかけることができる。
・軍事援助の制限
パキスタンへの軍事支援を削減することで、交渉材料とする可能性がある。
・制裁の適用
長距離ミサイル開発などを理由に制裁を加えることも考えられる。これには、個人制裁やセクター制裁(軍事産業や金融部門への制裁)などが含まれる可能性がある。
このような圧力に対して、パキスタンが抵抗する場合、中国との関係をさらに強化する可能性も考えられる。しかし、その場合、米国がさらなる制裁を科し、パキスタン経済に深刻な影響を与えるリスクもある。
4. 代替ルートの可能性
パキスタンが協力しない場合、米国は別のルートを模索する必要がある。その一つとして、「北方輸送ネットワーク(Northern Distribution Network)」 の再利用が考えられる。
このルートは、アフガニスタンへの補給を中央アジア経由で行うもので、旧ソ連圏の中央アジア諸国と協力する必要がある。
・ロシアとの協力の可能性
現在、ロシアと米国の間には新たな「デタント(緊張緩和)」の動きがあると指摘されており、これが進展すれば、ロシアの影響下にある中央アジア諸国を経由した輸送が可能になるかもしれない。
しかし、この方法はパキスタン経由よりもコストがかかり、地政学的な影響も大きいため、現実的な選択肢としてどの程度有効かは不透明である。
5. 結論
バグラム基地への米軍復帰や放棄された装備の回収は、以下の3つの要素にかかっている。
・タリバンとの合意が成立するか
・パキスタンが米国と合意するか、それとも反発するか
・パキスタンが拒否した場合、米国が代替ルートを確保できるか
現時点では、トランプの発言がどの程度本気であるかも不明であり、実際の交渉が始まるかどうかも不透明である。しかし、もしトランプが具体的な行動に移った場合、パキスタンがどのように対応するかが、米国のアフガニスタン政策にとって決定的な要素となる。
今後の展開次第では、パキスタンが米国の圧力に屈するか、中国との関係を強化するか、またはロシアを介した代替ルートが機能するかが焦点となる。現段階ではこれらの可能性を冷静に見守る必要がある。
【要点】
トランプの主張と目的
・バグラム基地の戦略的重要性
⇨ 中国の核関連施設に近い
⇨ 米国の影響力維持のために再利用すべき
・放棄された米軍装備の回収
⇨ タリバンによる売却リスクを懸念
⇨ バイデン政権の撤退を批判
パキスタンの重要性
・米軍のアフガニスタン再進出にはパキスタン経由が不可欠
・米国とパキスタンの関係悪化の要因
⇨ インドを重視する米国の外交政策
⇨ パキスタンの人権問題に対する米国の批判
⇨ 長距離ミサイル開発に関する米国の懸念
⇨ タリバン問題への対応の相違
交渉のシナリオ
(1) パキスタンが米国の要求を受け入れる場合
・見返りとして以下を要求する可能性
⇨ 軍事支援の強化(最新兵器の提供)
⇨ 米国の政治的干渉の排除(人権問題・ミサイル計画への批判回避)
(2) 米国が圧力をかける場合
・イムラン・カーン問題の利用(パキスタン政府への圧力)
・軍事援助の制限(支援削減で交渉を有利に進める)
・制裁の適用(個人・軍事・金融制裁の可能性)
・パキスタンが反発すれば、中国との関係強化の可能性
代替ルートの可能性
・「北方輸送ネットワーク」の再利用(中央アジア経由)
⇨ ロシアの影響力下にある国々と協力する必要
⇨ コストが高く、実現可能性は不透明
⇨ 米露関係の緊張緩和が鍵
結論
・米軍のバグラム基地復帰・装備回収の鍵
⇨ タリバンとの合意が成立するか
⇨ パキスタンとの交渉が成功するか
⇨ 代替ルートの確保が可能か
・今後の焦点
⇨ パキスタンが米国の圧力に屈するか、中国に接近するか
⇨ 米国がロシアとの関係改善を模索する可能性
⇨ トランプの発言が具体的な政策に発展するか
【引用・参照・底本】
Trump Will Likely Have To Cut A Deal With Pakistan If He’s Serious About His Afghan Plans Andrew Korybko's Newsletter 2025.03.11
https://korybko.substack.com/p/trump-will-likely-have-to-cut-a-deal?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=158826741&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email