AIM-260A JATM(Joint Advanced Tactical Missile) ― 2025年03月12日 11:09
【概要】
AIM-260A JATM(Joint Advanced Tactical Missile)は、アメリカ空軍が開発中の次世代空対空ミサイルであり、長射程、先進的な誘導技術、ステルス戦闘機との適合性を特徴としている。このミサイルはAIM-120 AMRAAMの後継として位置付けられ、特に中国の航空戦力の発展を考慮した設計となっている。
AIM-260Aの特性と運用計画
AIM-260Aは、AIM-120と同程度のサイズながらも、より長射程を実現するための先進的な推進システムと複数の誘導技術を備えているとされる。公開されている情報は限られているが、地上レーダーや衛星からの誘導を受ける能力を持つと推測される。
射程に関しては公式な発表がないものの、AIM-120D-3(最大射程約190km)を超える性能を持つと考えられている。設計上、ロケットモーターがAIM-120より長く、これにより速度と射程の向上が期待される。
AIM-260AはF-22やF-35といったステルス戦闘機、および将来的な無人戦闘機(CCA: Collaborative Combat Aircraft)への搭載が想定されており、米軍はこれにより長射程の脅威への対応能力を強化する方針である。しかし、実際の配備時期については未確定であり、現在も試験段階にあるとされる。
中国の長距離空対空ミサイルと電子戦対策
AIM-260Aの開発は、中国人民解放軍空軍(PLAAF)の最新空対空ミサイルの登場を背景としている。特にJ-16戦闘機に搭載されるPL-17は、早期警戒管制機(AWACS)や空中給油機などの高価値目標を遠距離から迎撃することを目的としたBVR(Beyond Visual Range)ミサイルである。
PL-17は、PL-15よりも大型で、デュアルパルスロケットモーター、推力偏向制御(TVC)、マッハ4を超える速度を備えている。誘導方式にはアクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーと双方向データリンクを組み合わせており、電子妨害対策も強化されている。
さらに、中国は超音速空対空ミサイルの開発も進めており、一部のミサイルはマッハ9に達するとされる。これらの兵器はB-21レイダーなどの米国のステルス爆撃機への対抗手段として想定されており、高温耐性と固体燃料パルスエンジンを用いた変則飛行軌道が特徴とされる。
また、人民解放軍は電子戦(EW)能力の向上にも注力しており、Y-9DZやJ-16Dなどの電子戦機を配備している。これらの機体は先進的な電子妨害ポッドと電子支援対策(ESM)を搭載し、敵のミサイル誘導やレーダー運用を妨害する能力を持つ。AIM-260Aのような長距離ミサイルへの対抗策として、中国は電子戦能力を強化し、空中戦の主導権を確保しようとしている。
米中のステルス戦闘機の比較
米国のF-22およびF-35は高いステルス性と先進的な電子戦能力を有するが、中国のJ-20も長距離作戦能力を備えた戦闘機として評価されている。J-20はWS-15エンジンにより超音速巡航(スーパークルーズ)を可能にし、大型の内部燃料タンクと高度なアビオニクスを組み合わせることで、長時間の作戦行動が可能とされる。
一方、J-20のステルス性能はF-22やF-35に比べて劣るとされるものの、作戦半径はF-22やF-35のほぼ2倍に達するとされ、特に太平洋戦域における作戦では有利となる可能性がある。
台湾海峡での空中戦シナリオと米軍の課題
台湾有事において、F-22やF-35の運用は中国の航空戦力に対抗する上で重要視されている。F-22は日本の嘉手納基地から展開可能であり、F-35Bは短距離離陸・垂直着陸(STOVL)機能を活かして太平洋の小規模な島嶼基地から運用される。また、F-35Cは空母からの発艦が可能であり、柔軟な運用が期待される。
しかし、米空軍の戦闘機部隊の即応率は低下している。2024年にはF-22の即応率が52%から40.19%に低下し、F-35Aも51.4%にとどまっている。F-15EやF-15Dの即応率は改善したものの、F-22やF-35の維持・運用の難しさが明らかになっている。
また、戦闘機の数そのものも減少傾向にある。かつて湾岸戦争(1991年)の際には米空軍は134個戦闘機飛行隊を有していたが、現在では55個飛行隊にまで縮小されている。さらに、中国は年間約100機のJ-20を生産しているとされる一方で、F-22は187機で生産終了しており、数の上での劣勢が拡大している。
米軍の将来戦略
このような状況を踏まえ、米軍は無人機の活用を進める方針である。特に低コストのオフ・ザ・シェルフ(既製品)無人機を投入し、戦闘機不足を補う計画が進められている。
また、AIM-260Aのような長射程ミサイルの開発を強化し、少数の戦闘機でも優勢を維持できるような戦術の確立が求められている。米軍は、電子戦、ステルス、精密誘導兵器の組み合わせにより、戦力の不足を技術で補う戦略を推進している。
結論
AIM-260Aは米空軍の空対空戦闘能力を大幅に強化する可能性を持つが、その実戦配備時期や戦闘機部隊の即応率の低下が課題となっている。一方で、中国は長距離ミサイルの開発を進めるとともに、電子戦技術を駆使して米軍の優位性を低減しようとしている。今後の航空戦力の動向は、台湾海峡を含むインド太平洋地域の軍事バランスに大きな影響を与えると考えられる。
【詳細】
AIM-260A JATMと米中の航空戦力競争
米空軍の新型空対空ミサイルAIM-260A Joint Advanced Tactical Missile(JATM)は、従来のAIM-120 AMRAAMを置き換える次世代兵器として開発が進められている。このミサイルは長射程、高速飛行、複数の誘導技術の統合、ステルス機との適合性を備えており、中国の航空戦力の台頭に対応するための重要な装備とされている。
AIM-260A JATMの特性と開発状況
1. 射程と速度
AIM-260Aの詳細な性能は非公開だが、最新のAIM-120D-3が約190kmの射程を持つことから、それを上回る可能性が高い。ミサイルのデザインは空気抵抗を抑えた形状を採用し、推進システムも強化されているため、長距離交戦能力の向上が期待されている。
2. 誘導技術
JATMはマルチモード誘導技術を備え、地上レーダー、衛星、他の航空機からの情報を受信して目標を追跡できるとされる。これにより、電子妨害(EW)への耐性を向上させると同時に、より高い命中精度を実現する。
3. ステルス機との適合
AIM-260AはF-22、F-35といったステルス戦闘機に搭載される予定であり、将来的には**無人戦闘機(Collaborative Combat Aircraft, CCA)**にも統合される可能性がある。これにより、遠距離からの迎撃能力が強化される。
4. 運用開始時期
AIM-260Aは現在試験段階にあるが、実際の運用開始時期は明らかになっていない。
中国の空対空ミサイル開発
中国も長距離空対空ミサイルの開発を進めており、特にPL-17がAIM-260Aのライバルと見られている。
1. PL-17の特徴
PL-17は大型の空対空ミサイルで、特にAWACS(早期警戒機)や空中給油機などの**高価値目標(HVA, High-Value Assets)**の無力化を目的としている。
・デュアルパルスロケットモーター:二段階推進により長射程化
・推力偏向制御(TVC):高い機動性を確保
・AESAレーダー誘導:電子妨害耐性を向上
・双方向データリンク:目標のリアルタイム追尾を強化
2. 超音速・極超音速ミサイル
さらに、中国はマッハ9に達する極超音速空対空ミサイルを開発中であり、これによりB-21レイダーのようなステルス爆撃機への対抗力を強化している。
電子戦(EW)による対抗策
米軍のAIM-260Aや中国のPL-17などのBVR(Beyond Visual Range, 目視外射程)ミサイルの脅威に対し、電子戦(EW)の重要性が増している。
1. 中国の電子戦能力
中国のY-9DZ電子戦機、J-16D電子戦戦闘機は、敵のレーダーや誘導システムを妨害する能力を備えている。これらの機体は高度なジャミングポッドや電子支援対策(ESM)を搭載し、敵のBVR攻撃を無効化することを目的としている。
2. 米軍の対応
米軍も電子戦対策を進めており、特にEA-18Gグラウラーや新型のEWシステムを用いて対抗している。
米中戦闘機の比較
1. ステルス性能
米国のF-22、F-35は高度なステルス性を備えているのに対し、中国のJ-20のステルス性はそれより劣るとされる。ただし、J-20は改良型WS-15エンジンを搭載し、非アフターバーナー超音速巡航が可能になりつつある。
2. 作戦範囲
J-20の戦闘行動半径はF-22やF-35の約2倍とされており、特に太平洋戦域において持続的な作戦が可能である点が強みとされる。
米軍の航空戦力の課題
1. 低下する戦闘機稼働率
米空軍の戦闘機の稼働率は低下しており、2024年には以下のような状況になっている。
・F-22:52% → 40.19%
・F-35A:51.4%(横ばい)
・F-15E:33% → 52.9%
・F-15EX(新型):83.13%
特にF-22の稼働率低下が顕著であり、部品不足や維持費の増大が要因とされる。
2. 戦闘機の不足
米空軍は2024年時点で55個戦闘機飛行隊を保有しているが、これは湾岸戦争(1991年)の134個飛行隊から大幅に減少している。
一方で、中国は年間100機のJ-20を生産しており、米国のF-22(187機固定)の戦力と比較して大きな差がある。
3. F-35の調達削減
F-35プログラムは2兆ドルものコスト増、ソフトウェア問題、サイバー脆弱性、保守費用の増加などにより調達が削減されている。この結果、米軍の航空戦力維持が困難になりつつある。
米軍の対策
1. 無人戦闘機の導入
米軍は安価な無人戦闘機(Off-the-Shelf UAVs)**の導入を検討しており、これにより数的劣勢を補う計画を進めている。
2. 太平洋戦域での戦略展開
F-22の嘉手納基地(日本)からの運用、F-35Bの短距離離着陸能力による前線拠点からの作戦展開、F-35Cの空母運用を組み合わせ、中国の軍事行動を牽制する。
結論
AIM-260A JATMは米軍の空対空戦闘能力を強化するが、中国もPL-17や極超音速ミサイル、電子戦能力を駆使して対抗しつつある。米軍は戦闘機の数的不足や稼働率の低下に直面しており、無人機の導入や戦略的運用によって優位を確保しようとしている。
【要点】
AIM-260A JATMと米中の航空戦力競争
AIM-260A JATMの特性と開発状況
1.射程と速度
・AIM-120D-3(約190km)を上回る長射程を持つ可能性が高い。
・空気抵抗を抑えた形状と強化された推進システムを採用。
2.誘導技術
・マルチモード誘導(地上レーダー、衛星、航空機からの情報連携)。
・電子妨害(EW)耐性の強化。
3.ステルス機との適合
・F-22、F-35への搭載を前提。
・無人戦闘機(CCA)との統合も想定。
4.運用開始時期
・現在試験段階、詳細な導入時期は非公開。
中国の空対空ミサイル開発(PL-17など)
1.PL-17の特徴
・大型の長距離空対空ミサイル。
・AWACS(早期警戒機)、空中給油機(HVA)の無力化を目的とする。
・デュアルパルスロケットモーターによる長射程化。
・AESAレーダー誘導、推力偏向制御(TVC)を採用。
2.超音速・極超音速ミサイル
・中国はマッハ9に達する極超音速空対空ミサイルを開発中。
・ステルス爆撃機(B-21レイダー)への対抗を想定。
電子戦(EW)による対抗策
1.中国の電子戦能力
・Y-9DZ電子戦機、J-16D電子戦機による妨害。
・高度なジャミングポッドや電子支援対策(ESM)を搭載。
2.米軍の対応
・EA-18Gグラウラーなどで対抗。
・F-35の電子戦システム強化を進める。
米中戦闘機の比較
1.ステルス性能
・F-22、F-35の方がJ-20より優れているとされる。
・J-20はWS-15エンジン搭載により非アフターバーナー超音速巡航が可能。
2.作戦範囲
・J-20の戦闘行動半径はF-22やF-35の約2倍。
・太平洋戦域での持続的な作戦能力を強化。
米軍の航空戦力の課題
1.戦闘機の稼働率低下
・F-22の稼働率:52% → 40.19%
・F-35Aの稼働率:51.4%(横ばい)
・F-15Eの稼働率:33% → 52.9%
・F-15EXの稼働率:83.13%
2.戦闘機の数的不足
・1991年:134個戦闘機飛行隊 → 2024年:55個戦闘機飛行隊
・中国は年間100機のJ-20を生産。
・米空軍の戦力維持が困難になりつつある。
3.F-35の調達削減
・2兆ドルのコスト増、ソフトウェア問題、サイバー脆弱性が影響。
米軍の対策
1.無人戦闘機(CCA)の導入
・安価な無人機(Off-the-Shelf UAVs)の導入を検討。
・人員・コストの負担軽減を狙う。
2.太平洋戦域での戦略展開
・F-22の嘉手納基地(日本)からの運用。
・F-35Bの前線拠点展開、F-35Cの空母運用による対抗。
結論
・AIM-260A JATMは米軍の空対空戦闘能力を強化するが、中国もPL-17や極超音速ミサイル、電子戦能力を駆使して対抗。
・米軍は戦闘機の数的不足や稼働率低下に直面しており、無人機導入や戦略的運用で優位を確保しようとしている。
【引用・参照・底本】
New US missile aims to pierce China’s rising air power ASIA TIMES 2025.03.01
https://asiatimes.com/2025/03/new-us-missile-aims-to-pierce-chinas-rising-air-power/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=847ee35c7d-WEEKLY_09_03_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-847ee35c7d-16242795&mc_cid=847ee35c7d&mc_eid=69a7d1ef3c
AIM-260A JATM(Joint Advanced Tactical Missile)は、アメリカ空軍が開発中の次世代空対空ミサイルであり、長射程、先進的な誘導技術、ステルス戦闘機との適合性を特徴としている。このミサイルはAIM-120 AMRAAMの後継として位置付けられ、特に中国の航空戦力の発展を考慮した設計となっている。
AIM-260Aの特性と運用計画
AIM-260Aは、AIM-120と同程度のサイズながらも、より長射程を実現するための先進的な推進システムと複数の誘導技術を備えているとされる。公開されている情報は限られているが、地上レーダーや衛星からの誘導を受ける能力を持つと推測される。
射程に関しては公式な発表がないものの、AIM-120D-3(最大射程約190km)を超える性能を持つと考えられている。設計上、ロケットモーターがAIM-120より長く、これにより速度と射程の向上が期待される。
AIM-260AはF-22やF-35といったステルス戦闘機、および将来的な無人戦闘機(CCA: Collaborative Combat Aircraft)への搭載が想定されており、米軍はこれにより長射程の脅威への対応能力を強化する方針である。しかし、実際の配備時期については未確定であり、現在も試験段階にあるとされる。
中国の長距離空対空ミサイルと電子戦対策
AIM-260Aの開発は、中国人民解放軍空軍(PLAAF)の最新空対空ミサイルの登場を背景としている。特にJ-16戦闘機に搭載されるPL-17は、早期警戒管制機(AWACS)や空中給油機などの高価値目標を遠距離から迎撃することを目的としたBVR(Beyond Visual Range)ミサイルである。
PL-17は、PL-15よりも大型で、デュアルパルスロケットモーター、推力偏向制御(TVC)、マッハ4を超える速度を備えている。誘導方式にはアクティブ電子走査アレイ(AESA)レーダーと双方向データリンクを組み合わせており、電子妨害対策も強化されている。
さらに、中国は超音速空対空ミサイルの開発も進めており、一部のミサイルはマッハ9に達するとされる。これらの兵器はB-21レイダーなどの米国のステルス爆撃機への対抗手段として想定されており、高温耐性と固体燃料パルスエンジンを用いた変則飛行軌道が特徴とされる。
また、人民解放軍は電子戦(EW)能力の向上にも注力しており、Y-9DZやJ-16Dなどの電子戦機を配備している。これらの機体は先進的な電子妨害ポッドと電子支援対策(ESM)を搭載し、敵のミサイル誘導やレーダー運用を妨害する能力を持つ。AIM-260Aのような長距離ミサイルへの対抗策として、中国は電子戦能力を強化し、空中戦の主導権を確保しようとしている。
米中のステルス戦闘機の比較
米国のF-22およびF-35は高いステルス性と先進的な電子戦能力を有するが、中国のJ-20も長距離作戦能力を備えた戦闘機として評価されている。J-20はWS-15エンジンにより超音速巡航(スーパークルーズ)を可能にし、大型の内部燃料タンクと高度なアビオニクスを組み合わせることで、長時間の作戦行動が可能とされる。
一方、J-20のステルス性能はF-22やF-35に比べて劣るとされるものの、作戦半径はF-22やF-35のほぼ2倍に達するとされ、特に太平洋戦域における作戦では有利となる可能性がある。
台湾海峡での空中戦シナリオと米軍の課題
台湾有事において、F-22やF-35の運用は中国の航空戦力に対抗する上で重要視されている。F-22は日本の嘉手納基地から展開可能であり、F-35Bは短距離離陸・垂直着陸(STOVL)機能を活かして太平洋の小規模な島嶼基地から運用される。また、F-35Cは空母からの発艦が可能であり、柔軟な運用が期待される。
しかし、米空軍の戦闘機部隊の即応率は低下している。2024年にはF-22の即応率が52%から40.19%に低下し、F-35Aも51.4%にとどまっている。F-15EやF-15Dの即応率は改善したものの、F-22やF-35の維持・運用の難しさが明らかになっている。
また、戦闘機の数そのものも減少傾向にある。かつて湾岸戦争(1991年)の際には米空軍は134個戦闘機飛行隊を有していたが、現在では55個飛行隊にまで縮小されている。さらに、中国は年間約100機のJ-20を生産しているとされる一方で、F-22は187機で生産終了しており、数の上での劣勢が拡大している。
米軍の将来戦略
このような状況を踏まえ、米軍は無人機の活用を進める方針である。特に低コストのオフ・ザ・シェルフ(既製品)無人機を投入し、戦闘機不足を補う計画が進められている。
また、AIM-260Aのような長射程ミサイルの開発を強化し、少数の戦闘機でも優勢を維持できるような戦術の確立が求められている。米軍は、電子戦、ステルス、精密誘導兵器の組み合わせにより、戦力の不足を技術で補う戦略を推進している。
結論
AIM-260Aは米空軍の空対空戦闘能力を大幅に強化する可能性を持つが、その実戦配備時期や戦闘機部隊の即応率の低下が課題となっている。一方で、中国は長距離ミサイルの開発を進めるとともに、電子戦技術を駆使して米軍の優位性を低減しようとしている。今後の航空戦力の動向は、台湾海峡を含むインド太平洋地域の軍事バランスに大きな影響を与えると考えられる。
【詳細】
AIM-260A JATMと米中の航空戦力競争
米空軍の新型空対空ミサイルAIM-260A Joint Advanced Tactical Missile(JATM)は、従来のAIM-120 AMRAAMを置き換える次世代兵器として開発が進められている。このミサイルは長射程、高速飛行、複数の誘導技術の統合、ステルス機との適合性を備えており、中国の航空戦力の台頭に対応するための重要な装備とされている。
AIM-260A JATMの特性と開発状況
1. 射程と速度
AIM-260Aの詳細な性能は非公開だが、最新のAIM-120D-3が約190kmの射程を持つことから、それを上回る可能性が高い。ミサイルのデザインは空気抵抗を抑えた形状を採用し、推進システムも強化されているため、長距離交戦能力の向上が期待されている。
2. 誘導技術
JATMはマルチモード誘導技術を備え、地上レーダー、衛星、他の航空機からの情報を受信して目標を追跡できるとされる。これにより、電子妨害(EW)への耐性を向上させると同時に、より高い命中精度を実現する。
3. ステルス機との適合
AIM-260AはF-22、F-35といったステルス戦闘機に搭載される予定であり、将来的には**無人戦闘機(Collaborative Combat Aircraft, CCA)**にも統合される可能性がある。これにより、遠距離からの迎撃能力が強化される。
4. 運用開始時期
AIM-260Aは現在試験段階にあるが、実際の運用開始時期は明らかになっていない。
中国の空対空ミサイル開発
中国も長距離空対空ミサイルの開発を進めており、特にPL-17がAIM-260Aのライバルと見られている。
1. PL-17の特徴
PL-17は大型の空対空ミサイルで、特にAWACS(早期警戒機)や空中給油機などの**高価値目標(HVA, High-Value Assets)**の無力化を目的としている。
・デュアルパルスロケットモーター:二段階推進により長射程化
・推力偏向制御(TVC):高い機動性を確保
・AESAレーダー誘導:電子妨害耐性を向上
・双方向データリンク:目標のリアルタイム追尾を強化
2. 超音速・極超音速ミサイル
さらに、中国はマッハ9に達する極超音速空対空ミサイルを開発中であり、これによりB-21レイダーのようなステルス爆撃機への対抗力を強化している。
電子戦(EW)による対抗策
米軍のAIM-260Aや中国のPL-17などのBVR(Beyond Visual Range, 目視外射程)ミサイルの脅威に対し、電子戦(EW)の重要性が増している。
1. 中国の電子戦能力
中国のY-9DZ電子戦機、J-16D電子戦戦闘機は、敵のレーダーや誘導システムを妨害する能力を備えている。これらの機体は高度なジャミングポッドや電子支援対策(ESM)を搭載し、敵のBVR攻撃を無効化することを目的としている。
2. 米軍の対応
米軍も電子戦対策を進めており、特にEA-18Gグラウラーや新型のEWシステムを用いて対抗している。
米中戦闘機の比較
1. ステルス性能
米国のF-22、F-35は高度なステルス性を備えているのに対し、中国のJ-20のステルス性はそれより劣るとされる。ただし、J-20は改良型WS-15エンジンを搭載し、非アフターバーナー超音速巡航が可能になりつつある。
2. 作戦範囲
J-20の戦闘行動半径はF-22やF-35の約2倍とされており、特に太平洋戦域において持続的な作戦が可能である点が強みとされる。
米軍の航空戦力の課題
1. 低下する戦闘機稼働率
米空軍の戦闘機の稼働率は低下しており、2024年には以下のような状況になっている。
・F-22:52% → 40.19%
・F-35A:51.4%(横ばい)
・F-15E:33% → 52.9%
・F-15EX(新型):83.13%
特にF-22の稼働率低下が顕著であり、部品不足や維持費の増大が要因とされる。
2. 戦闘機の不足
米空軍は2024年時点で55個戦闘機飛行隊を保有しているが、これは湾岸戦争(1991年)の134個飛行隊から大幅に減少している。
一方で、中国は年間100機のJ-20を生産しており、米国のF-22(187機固定)の戦力と比較して大きな差がある。
3. F-35の調達削減
F-35プログラムは2兆ドルものコスト増、ソフトウェア問題、サイバー脆弱性、保守費用の増加などにより調達が削減されている。この結果、米軍の航空戦力維持が困難になりつつある。
米軍の対策
1. 無人戦闘機の導入
米軍は安価な無人戦闘機(Off-the-Shelf UAVs)**の導入を検討しており、これにより数的劣勢を補う計画を進めている。
2. 太平洋戦域での戦略展開
F-22の嘉手納基地(日本)からの運用、F-35Bの短距離離着陸能力による前線拠点からの作戦展開、F-35Cの空母運用を組み合わせ、中国の軍事行動を牽制する。
結論
AIM-260A JATMは米軍の空対空戦闘能力を強化するが、中国もPL-17や極超音速ミサイル、電子戦能力を駆使して対抗しつつある。米軍は戦闘機の数的不足や稼働率の低下に直面しており、無人機の導入や戦略的運用によって優位を確保しようとしている。
【要点】
AIM-260A JATMと米中の航空戦力競争
AIM-260A JATMの特性と開発状況
1.射程と速度
・AIM-120D-3(約190km)を上回る長射程を持つ可能性が高い。
・空気抵抗を抑えた形状と強化された推進システムを採用。
2.誘導技術
・マルチモード誘導(地上レーダー、衛星、航空機からの情報連携)。
・電子妨害(EW)耐性の強化。
3.ステルス機との適合
・F-22、F-35への搭載を前提。
・無人戦闘機(CCA)との統合も想定。
4.運用開始時期
・現在試験段階、詳細な導入時期は非公開。
中国の空対空ミサイル開発(PL-17など)
1.PL-17の特徴
・大型の長距離空対空ミサイル。
・AWACS(早期警戒機)、空中給油機(HVA)の無力化を目的とする。
・デュアルパルスロケットモーターによる長射程化。
・AESAレーダー誘導、推力偏向制御(TVC)を採用。
2.超音速・極超音速ミサイル
・中国はマッハ9に達する極超音速空対空ミサイルを開発中。
・ステルス爆撃機(B-21レイダー)への対抗を想定。
電子戦(EW)による対抗策
1.中国の電子戦能力
・Y-9DZ電子戦機、J-16D電子戦機による妨害。
・高度なジャミングポッドや電子支援対策(ESM)を搭載。
2.米軍の対応
・EA-18Gグラウラーなどで対抗。
・F-35の電子戦システム強化を進める。
米中戦闘機の比較
1.ステルス性能
・F-22、F-35の方がJ-20より優れているとされる。
・J-20はWS-15エンジン搭載により非アフターバーナー超音速巡航が可能。
2.作戦範囲
・J-20の戦闘行動半径はF-22やF-35の約2倍。
・太平洋戦域での持続的な作戦能力を強化。
米軍の航空戦力の課題
1.戦闘機の稼働率低下
・F-22の稼働率:52% → 40.19%
・F-35Aの稼働率:51.4%(横ばい)
・F-15Eの稼働率:33% → 52.9%
・F-15EXの稼働率:83.13%
2.戦闘機の数的不足
・1991年:134個戦闘機飛行隊 → 2024年:55個戦闘機飛行隊
・中国は年間100機のJ-20を生産。
・米空軍の戦力維持が困難になりつつある。
3.F-35の調達削減
・2兆ドルのコスト増、ソフトウェア問題、サイバー脆弱性が影響。
米軍の対策
1.無人戦闘機(CCA)の導入
・安価な無人機(Off-the-Shelf UAVs)の導入を検討。
・人員・コストの負担軽減を狙う。
2.太平洋戦域での戦略展開
・F-22の嘉手納基地(日本)からの運用。
・F-35Bの前線拠点展開、F-35Cの空母運用による対抗。
結論
・AIM-260A JATMは米軍の空対空戦闘能力を強化するが、中国もPL-17や極超音速ミサイル、電子戦能力を駆使して対抗。
・米軍は戦闘機の数的不足や稼働率低下に直面しており、無人機導入や戦略的運用で優位を確保しようとしている。
【引用・参照・底本】
New US missile aims to pierce China’s rising air power ASIA TIMES 2025.03.01
https://asiatimes.com/2025/03/new-us-missile-aims-to-pierce-chinas-rising-air-power/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=847ee35c7d-WEEKLY_09_03_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-847ee35c7d-16242795&mc_cid=847ee35c7d&mc_eid=69a7d1ef3c