「関税は長期的に見れば、どの国の利益にもならない」2025年03月14日 18:11

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【概要】 
 
 トランプ政権は最近、欧州連合(EU)からの鉄鋼、アルミニウム、および特定の鉄鋼・アルミニウム含有製品に対して25%の関税を課すことを発表した。これに対し、EUは13日(水)に米国産ウイスキーに50%の関税を課すことを決定した。

 14日(木)、米国のドナルド・トランプ大統領は、EUがウイスキー関税を直ちに撤回しない場合、フランスを含むEU加盟国からのワイン、シャンパン、その他のアルコール飲料に200%の関税を課すと警告した。

 フランスは欧州最大級のワイン・スピリッツ輸出国であり、この分野は同国の3番目に大きな収益源となっている。フランスの対外貿易担当大臣ローラン・サン=マルタンは14日、X(旧Twitter)上で「フランスは欧州委員会およびパートナーと共に対応する決意を持っている」と述べ、米国の圧力には屈しない姿勢を強調した。

 また、フランス外務省の報道官であるクリストフ・ルモワンは、米国が新たな関税を発動すれば「直ちに強固で適切な対応を取る」と表明した。

 一方、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は南アフリカ訪問中に「EUは米国との交渉に前向きである」としながらも、「EUの利益は断固として守る」との立場を示した。

 クロアチアのリベラス国際大学教授であるルカ・ブルキッチは、現地メディアに対し「関税は誰の利益にもならず、それを課す国にとっても最善策ではない」と指摘した。

 13日(水)、フランスワイン・スピリッツ輸出業者連盟(FEVS)は、経済的・地政学的圧力の影響により、欧州のワイン・スピリッツ業界が依然として脆弱な状況にあると警告した。

 欧州レベルでは、欧州スピリッツ業界の代表団体である「spiritsEUROPE」が、両者に対して「アルコール飲料を無関係な貿易紛争に巻き込まないよう求める」と声明を発表した。

 また、アイルランド・ウイスキー協会は14日(木)、今回の関税措置が企業および消費者に深刻な影響を与える可能性があると警鐘を鳴らした。

【詳細】 
 
 トランプ政権は最近、欧州連合(EU)から輸入される鉄鋼、アルミニウム、およびそれらを含む特定の製品に対し、新たに25%の関税を課すことを決定した。この措置は、米国の鉄鋼・アルミニウム産業の保護を目的としているとされるが、EU側はこれに強く反発し、即座に報復措置を講じた。

 EUの報復措置と米国のさらなる関税警告

 EUは13日(水)、報復として米国産ウイスキーに50%の関税を課すと発表した。これに対し、米国のドナルド・トランプ大統領は14日(木)、フランスを含むEU加盟国からのワイン、シャンパン、その他のアルコール飲料に対して、最大200%の関税を課す可能性を示唆した。トランプ氏は、「EUが米国産ウイスキーに課した関税を直ちに撤回しなければ、米国も厳しい対応を取る」と強調し、圧力をかけた。

 この動きにより、欧米間の貿易摩擦が激化する可能性が高まっている。特にワイン・スピリッツ業界は、輸出市場の縮小や価格上昇による消費減退を懸念している。

 フランスの対応とEUの立場

 フランスは、EU内でも特にワイン・スピリッツ産業の影響を受ける国の一つであり、同国の主要な輸出品目の一つでもある。フランスの対外貿易担当大臣ローラン・サン=マルタンは14日(木)、自身のX(旧Twitter)アカウントで「フランスは欧州委員会およびパートナーと連携し、断固たる対応を取る」と述べ、米国の圧力には屈しない姿勢を示した。

 さらに、フランス外務省の報道官クリストフ・ルモワンも、米国が新たな関税を発動した場合、「直ちに強固で適切な対応を取る」と明言した。これは、フランスがEU全体と足並みをそろえて報復措置を取る可能性を示唆している。

 また、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は南アフリカを訪問中に、「EUは米国との交渉に前向きであるが、EUの利益を損なうことは許されない」と発言し、必要に応じて対抗措置を講じる構えを見せた。

 専門家の見解

 貿易政策の専門家であり、クロアチアのリベラス国際大学教授であるルカ・ブルキッチは、「関税は長期的に見れば、どの国の利益にもならない」と指摘し、特に関税を課した国自身が経済的な悪影響を受ける可能性を警告した。関税の引き上げは最終的に消費者の負担増につながり、関係国の経済全体に悪影響を及ぼすと見られる。

 ワイン・スピリッツ業界の懸念

 今回の関税問題を受け、フランスワイン・スピリッツ輸出業者連盟(FEVS)は13日(水)に声明を発表し、「欧州のワイン・スピリッツ業界はすでに経済的および地政学的な圧力を受けており、今回の関税問題はさらなる打撃となる」と警告した。

 また、欧州スピリッツ業界の代表団体である「spiritsEUROPE」は、ワイン・スピリッツ製品が貿易紛争の巻き添えとなることに強い懸念を示し、「アルコール飲料を貿易戦争の道具にするべきではない」と声明を発表した。

 アイルランド・ウイスキー協会も14日(木)に「このような関税措置は、企業のみならず消費者にも深刻な影響を及ぼす」と警告し、EUと米国の対立が長引けば、業界全体に広範な悪影響が及ぶとの見解を示した。

 まとめ

 今回の関税問題は、米国とEUの貿易関係に新たな緊張をもたらしている。米国の鉄鋼・アルミニウム関税に対するEUの報復関税が、新たな関税合戦を引き起こしつつあり、特にワイン・スピリッツ業界への影響が懸念されている。フランスを中心とするEU各国は、米国の圧力には屈しない方針を示しており、EUも交渉の余地を残しつつも対抗措置を取る構えを見せている。今後の交渉次第では、さらなる関税措置が発動され、欧米間の貿易摩擦が一層激化する可能性がある。

【要点】

 ・米国の関税発表: トランプ政権は、欧州連合(EU)からの鉄鋼、アルミニウム、および特定の鉄鋼・アルミニウム含有製品に対して25%の関税を課すと発表。

 ・EUの報復措置: EUは米国産ウイスキーに50%の関税を課すことを決定。

 ・トランプの警告: トランプ大統領は、EUが米国産ウイスキー関税を撤回しない場合、フランスを含むEU加盟国からのワイン、シャンパン、アルコール飲料に最大200%の関税を課すと警告。

 ・フランスの対応: フランスの対外貿易担当大臣ローラン・サン=マルタンは、EUと共に強固な対応を取る意向を表明。フランス外務省の報道官も直ちに適切な対応を取ると発言。

 ・EUの立場: 欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、EUは米国との交渉に前向きだが、EUの利益を守る決意を示す。

 ・専門家の見解: クロアチアのルカ・ブルキッチ教授は、関税はどの国にも利益をもたらさないと警告。

 ・ワイン・スピリッツ業界の懸念: フランスワイン・スピリッツ輸出業者連盟(FEVS)は、業界が経済的および地政学的な圧力を受けており、関税措置がさらに悪化させると警告。

 ・業界団体の反応: spiritsEUROPE(欧州スピリッツ業界団体)は、アルコール飲料が貿易紛争に巻き込まれることを懸念。アイルランド・ウイスキー協会も企業と消費者に深刻な影響を与えると警告。

 ・今後の展開: 米国とEUの貿易摩擦は今後さらに激化する可能性があり、さらなる関税措置が発動される可能性がある。

【引用・参照・底本】

Europe against new US tariffs, wine, spirits industry concerned GT 2025.03.14
https://www.globaltimes.cn/page/202503/1330102.shtml

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