ロシアのSWIFT(国際銀行間通信協会)復帰の可能性2025年03月28日 17:51

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【概要】

 ロシアのSWIFT復帰の可能性について、米国のスコット・ベッセント財務長官が議論の可能性に言及した。SWIFT(国際銀行間通信協会)はベルギーに本部を置く協同組合形式の国際決済ネットワークであり、世界の銀行が加盟している。取締役会は25名で構成され、そのうち16名が欧州出身であり、米国の銀行関係者も2名含まれているが、米政府としての正式な代表権や決定権は有していない。

 露経済大学のユリア・ダビドワ准教授によれば、米国はSWIFTに対して直接的な支配権を持つわけではないが、影響力は大きい。米国は世界最大級の金融センターであり、SWIFTの主要な顧客であるため、SWIFTに対して圧力をかける手段を持っている。SWIFTが米国と対立することは経済的に不利益となる可能性がある。

 2022年にウクライナ情勢を理由として、SWIFTはロシアの大手銀行を決済ネットワークから排除した。しかし、最近のロシアと米国の協議において、ロシアの農産物輸出に関連する銀行をSWIFTに復帰させる方向で合意がなされた。

【詳細】

 ロシアのSWIFT(国際銀行間通信協会)復帰の可能性について、米国のスコット・ベッセント財務長官が議論の可能性を示唆した。SWIFTは1973年に設立された国際決済ネットワークであり、本部はベルギーに置かれている。世界200以上の国・地域の銀行や金融機関が加盟しており、国際的な送金や金融取引の標準的な通信手段となっている。SWIFTは協同組合形式の組織であり、主要銀行の代表者からなる取締役会によって運営されている。

 SWIFTに対する米国の影響力

 SWIFTの取締役会は25名で構成され、そのうち16名が欧州の銀行関係者である。米国の銀行からも2名が取締役に選出されているが、米政府として正式な代表権や直接的な決定権を持っているわけではない。しかし、米国は世界最大の金融市場を有し、SWIFTの主要な利用者の一つであることから、間接的な影響力を行使することが可能である。

 SWIFTが米国の意向を無視できない背景には、米ドルの国際的な基軸通貨としての地位がある。多くの国際取引が米ドル建てで行われており、これらの取引に関わる金融機関はSWIFTを利用して決済を行う。米国政府は、金融制裁を通じてSWIFTに対する影響力を強めることができる。たとえば、SWIFTのシステムを利用する銀行に対して米国市場へのアクセスを制限する可能性を示唆することで、間接的にSWIFTの意思決定に影響を与えることができる。

 ロシアのSWIFTからの排除とその影響

 2022年、ウクライナ紛争を理由に、SWIFTはロシアの主要銀行を決済ネットワークから排除した。これにより、ロシアの金融機関は国際的な送金や決済を行う際に大きな制約を受けることになった。特に、エネルギー輸出代金の決済や外国企業との貿易決済が困難になるという影響が生じた。

 SWIFTからの排除を受けて、ロシアは以下のような対策を講じた。

 ・SPFS(金融メッセージ伝送システム)の開発:ロシア中央銀行が主導し、国内および一部の友好国の銀行との間で利用できる決済ネットワークを構築。

 ・人民元決済の拡大:中国のCIPS(人民元決済システム)との連携を強化し、SWIFTを経由せずに貿易決済を行う試み。

 ・暗号資産の活用:一部のロシア企業が仮想通貨を活用した貿易決済を模索。

 しかし、これらの代替手段はSWIFTほどの国際的な普及度を持たず、ロシア経済にとって完全な代替手段とはなり得なかった。

 ロシアのSWIFT復帰に向けた動き

 最近の米露協議では、ロシアの農産物輸出に関連する銀行のSWIFT復帰が議題となった。これは、ロシアが国連を通じて「農産物と肥料の輸出が金融制裁によって妨げられている」と主張し、国際市場への影響を訴えてきたことが背景にある。ロシアは特にアフリカ諸国や発展途上国向けの小麦輸出の制約解除を求めており、これが米国側との交渉材料になったとみられる。

 この交渉の結果、ロシアの一部銀行が限定的にSWIFTに復帰する方向で合意された。しかし、これはロシアの金融機関全体の復帰を意味するものではなく、あくまで農産物輸出に関係する取引に限定されるものである。

 今後の見通し

 ロシアのSWIFT復帰は、引き続き米国やEUの対ロ制裁の方針によって左右されると考えられる。現時点では、ウクライナ情勢に対する欧米の強硬姿勢が続いており、ロシアの主要銀行が全面的にSWIFTに復帰する可能性は低い。ただし、農産物輸出に関する制裁緩和が前例となり、今後部分的な緩和措置が進む可能性もある。

【要点】

 ロシアのSWIFT復帰の可能性について

 1. SWIFTの基本情報

 ・1973年に設立された国際銀行間通信協会(SWIFT)は、世界200以上の国・地域の銀行や金融機関が加盟する決済ネットワーク。

 ・本部はベルギーにあり、協同組合形式で運営される。

 ・取締役会は25名で構成され、16名が欧州出身、米国の銀行からも2名が参加。

 ・SWIFTは米国政府の正式な代表権を持たないが、米国の影響を受けやすい。

 2. 米国のSWIFTへの影響力

 ・米国は世界最大の金融市場を持ち、SWIFTの主要利用者である。

 ・米ドルが基軸通貨であり、国際取引の多くがSWIFTを通じて決済される。

 ・米国政府は、SWIFT利用銀行に制裁を科すことで間接的に影響力を行使可能。

 ・SWIFTに対し、制裁回避行為を避けるよう圧力をかけることができる。

 3. ロシアのSWIFT排除とその影響(2022年)

 ・ウクライナ紛争を理由に、ロシアの主要銀行がSWIFTから排除された。

 ・これにより、ロシアの国際送金・貿易決済が困難に。

 ・特にエネルギー輸出や外国企業との決済に大きな影響を受けた。

 4. ロシアの対策

 ・SPFS(金融メッセージ伝送システム)を開発し、国内および一部の友好国との決済手段を確保。

 ・中国のCIPS(人民元決済システム)を活用し、人民元建ての取引を増加。

 ・暗号資産を利用した国際貿易決済の可能性を模索。

 ・ただし、SWIFTに匹敵する国際的な普及度には至らず、完全な代替にはならず。

 5. SWIFT復帰に向けた米露協議

 ・最近の交渉で、ロシアの農産物輸出に関連する銀行のSWIFT復帰が議題に。

 ・ロシアは「制裁により農産物・肥料の輸出が妨げられている」と国連を通じて主張。

 ・特にアフリカ諸国や発展途上国向け小麦輸出の制約解除を求めた。

 ・交渉の結果、ロシアの特定銀行が農産物取引に限定してSWIFT復帰する方向で合意。

 6. 今後の見通し

 ・ウクライナ情勢に対する欧米の制裁が続く限り、ロシアの主要銀行の全面復帰は困難。

 ・ただし、今回の農産物取引に関する制裁緩和が前例となり、段階的な部分復帰の可能性もある。

 ・SWIFTの決定はベルギーの取締役会が行うが、米国の金融・経済的圧力が引き続き影響を与えると考えられる。

【引用・参照・底本】

【視点】ロシアのSWIFT復帰は米国次第? sputnik 日本 2025.03.27
https://sputniknews.jp/20250327/19690698.html

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