「アメリカはもはやEUの同盟国ではない」 ― 2025年02月19日 17:38
【概要】
カナダの経済学者であり、Global Researchの創設者であるミシェル・チョスドフスキー氏によるものである。彼は、2022年9月26日に発生したノルドストリーム・パイプラインの破壊行為が、当時の米国大統領ジョー・バイデンの指示によるものであり、これは欧州連合(EU)に対する「戦争行為」であると主張している。
1.バイデン大統領の発言
2022年2月7日のホワイトハウス記者会見で、ジョー・バイデンは「ロシアがウクライナに侵攻すれば、ノルドストリーム2はなくなる。我々はそれを実行することができる」と述べた。チョスドフスキー氏は、この発言が事実上、ノルドストリーム破壊の予告であったと解釈している。
2.ノルドストリームの破壊とその影響
2022年9月26日に発生したノルドストリームの爆発は、欧州のエネルギーインフラに対する深刻な損害を与え、EU諸国の経済と社会に大きな影響を及ぼした。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長やデンマークのメッテ・フレデリクセン首相も、これを「破壊行為」と認識していたが、誰が実行したかについては明言していない。
3.欧州の領土主権に対する侵害
ノルドストリームはフィンランド、スウェーデン、デンマーク、ドイツの領海を通過しており、これらの国々の承認のもとに建設された。チョスドフスキー氏は、これらの国々の領海内で発生した破壊行為は、国連憲章および国際法(国連海洋法条約)に違反する「戦争行為」に該当すると主張している。
4.ドイツ政府の関与
チョスドフスキー氏は、当時のドイツ首相オラフ・ショルツがバイデンの発言を支持したことを「国家に対する裏切り行為」とみなしている。ドイツ政府がノルドストリーム破壊を黙認したことが、欧州全体のエネルギー危機を加速させたとしている。
5.米国のEUに対する敵対的行動
米国はもはやEUの「同盟国」ではなく、「敵対的行為」を行っていると述べている。ノルドストリーム破壊はその一例であり、欧州経済の混乱を引き起こし、米国の利益を優先するために行われたと主張している。
6.欧州政治家の「裏切り」
チョスドフスキー氏は、欧州の政治指導者たちが米国に従属し、欧州の利益を損なっていると批判している。特に、EU内部で米国の影響力が強まり、欧州の経済やエネルギー政策が米国の意向に沿う形で決定されていると指摘している。
7.「政権交代」の必要性
EUの「裏切り者」たちに対する責任追及が必要であり、欧州の指導層に対する「政権交代」と「刑事訴追」が求められるとしている。
このように、チョスドフスキー氏はノルドストリーム破壊をバイデン政権による「欧州への戦争行為」と位置づけ、欧州指導者の責任を問うべきだと主張している。これは、2023年に調査報道記者シーモア・ハーシュが発表した、米国がノルドストリーム攻撃を計画・実行したとする報道とも関連している。
【詳細】
カナダの経済学者であり評論家であるミシェル・チョスドフスキー(Michel Chossudovsky)によるものであり、ノルドストリーム爆破事件がアメリカ合衆国による「欧州連合(EU)に対する戦争行為」であり、バイデン大統領の直接の指示による「テロ攻撃」であると主張している。以下、その主張の詳細を整理する。
1. ノルドストリーム破壊の背景
ノルドストリームはロシアからドイツへ天然ガスを輸送する海底パイプラインであり、ノルドストリーム1とノルドストリーム2の2本が存在する。これらはロシアのエネルギー資源をEUへ供給する重要なインフラであり、EUの経済やエネルギー安全保障にとって極めて重要であった。
2022年9月26日、バルト海にあるノルドストリーム1および2の複数の地点で爆発が発生し、パイプラインが破壊された。この事件について、欧州各国の指導者は「破壊行為(サボタージュ)である」と明言し、デンマークやスウェーデンの政府も「意図的な攻撃」であると発表した。
2. バイデン大統領の発言と事前の警告
チョスドフスキーは、事件の約7か月前の2022年2月7日に行われたホワイトハウスでの記者会見に注目している。
この記者会見で、バイデン大統領は以下のように発言した。
「もしロシアがウクライナに侵攻すれば、ノルドストリーム2はなくなる。」
これに対し、記者が「それはドイツの管轄下にあるが、どのようにそれを実行するのか」と尋ねたところ、バイデンはこう答えた。
「我々はそれを実行する。我々にはその能力がある。」
チョスドフスキーは、この発言こそが「攻撃の事前の意思表明」であり、バイデン政権がノルドストリームを標的としたことを示す証拠であると主張している。
3. ノルドストリーム攻撃は「EUに対する戦争行為」
チョスドフスキーは、ノルドストリーム爆破が単なるテロ行為ではなく、EUに対する「戦争行為(Act of War)」であると主張している。その理由は以下の通りである。
(1)ノルドストリームはEU加盟国の海域内を通過していた
・パイプラインはロシアからドイツへと続き、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ドイツの領海内を通過していた。
・これらの国々の政府および議会の承認のもとで建設された国際的なインフラであり、その破壊はこれらの国家主権への侵害と見なされる。
(2)国際法における「国家の領土保全」
・国際法(国連憲章および国連海洋法条約)では、「国家の領土保全」には領海内の重要インフラも含まれる。
・外国勢力が意図的に国家のインフラを破壊することは「侵略行為」に相当する。
・したがって、ノルドストリーム攻撃はEU加盟国の主権に対する重大な侵害であり、米国による「戦争行為」と解釈できると主張している。
(3)欧州の経済と社会への深刻な影響
・ノルドストリームの破壊により、EUはロシアからのガス供給を絶たれ、エネルギー価格が急騰した。
・これにより、EUの経済全体が深刻な影響を受け、企業の生産コストが上昇し、インフレが進行した。
・これは「意図的な経済破壊工作」であり、結果的に欧州の弱体化を招いた。
4. 「裏切り」としてのオラフ・ショルツの行動
バイデン大統領が「ノルドストリームを破壊する」と明言した記者会見には、当時のドイツ首相オラフ・ショルツも同席していた。
チョスドフスキーは、ショルツがバイデンの発言に対して異議を唱えなかったことを問題視し、「ドイツ政府の指導者が、自国のインフラ攻撃を事前に容認していた可能性がある」と主張している。
さらに、ノルドストリーム爆破後も、ショルツ政権はアメリカに対して明確な抗議を行わなかった。この点についてもチョスドフスキーは**「ドイツ政府の指導者による国民への裏切り(High Treason)」**であると批判している。
5. 「欧州の政治家による裏切り」と「米国の対欧戦争」
記事の最後では、欧州の政治指導者がアメリカの戦略に従い、自国の利益を損なっていると批判している。
(1)「アメリカはもはやEUの同盟国ではない」
・アメリカの行動は「同盟国への支援」ではなく、むしろ欧州経済を弱体化させ、アメリカの地政学的支配を強めるための策略であると論じている。
・「米国はEUに対して事実上の戦争を仕掛けている」という見解を示している。
(2)「欧州の政治家たちは米国に従属し、裏切りを働いている」
・チョスドフスキーは、EUの政治指導者がこの攻撃を容認し、アメリカの対ロシア政策に従属していると非難している。
・特にドイツ政府は、ノルドストリームの破壊に対して適切な対応を取らず、国民に対する「裏切り行為」を働いたと主張している。
(3)「欧州に必要なのは『体制変革』と『裏切り者の処罰』」
・EUの政治指導者を総入れ替えし、「米国の影響を排除する政治改革」が必要であると訴えている。
・また、「米国の戦略に協力した政治家を反逆罪で処罰すべき」という強硬な主張もしている。
結論
ミシェル・チョスドフスキーは、ノルドストリーム爆破はアメリカが主導した「対欧州戦争」であり、バイデン政権が直接関与していた可能性が高いと主張している。また、EU内の政治家たちが米国の政策に従属し、自国の利益を犠牲にしていることを「裏切り」と非難している。
この主張がどの程度信憑性を持つかについては議論の余地があるが、ノルドストリーム破壊事件は依然として完全な真相が明らかになっておらず、地政学的に大きな影響を及ぼした事件であることは確かである。
【要点】
ミシェル・チョスドフスキーの主張:ノルドストリーム爆破は米国の「対EU戦争行為」
1. ノルドストリーム破壊の背景
・ノルドストリーム1・2はロシアからドイツへ天然ガスを供給する海底パイプライン。
・2022年9月26日、バルト海の複数地点で爆破され破壊された。
・欧州各国は「意図的な破壊行為(サボタージュ)」と認定。
2. バイデン大統領の発言と事前の警告
・2022年2月7日、バイデンがノルドストリームの破壊を示唆。
➡️「ロシアが侵攻すれば、ノルドストリーム2はなくなる」
➡️「我々にはそれを実行する能力がある」
・米政府が破壊計画を事前に示唆していた証拠と主張。
3. ノルドストリーム攻撃は「EUに対する戦争行為」
・パイプラインはEU加盟国の領海を通過(ドイツ、デンマーク、スウェーデンなど)。
・国際法上、外国勢力が国家のインフラを破壊する行為は「侵略」。
・EUの経済基盤を破壊し、エネルギー危機とインフレを引き起こした。
4. 「裏切り者」としてのドイツ首相オラフ・ショルツ
・バイデンの「破壊予告」発言時に同席し、異議を唱えなかった。
・爆破後もアメリカに抗議せず、事実上の容認。
・ドイツ国民への「裏切り行為(High Treason)」と批判。
5. 米国の「対欧戦争」と欧州政治の腐敗
・「アメリカは同盟国ではなく、EUの弱体化を狙っている」。
・欧州の政治指導者は米国に従属し、国民の利益を損なっている。
・「裏切り者の処罰」と「米国影響の排除」が必要と主張。
6. 結論
・ノルドストリーム爆破は、バイデン政権主導の「対欧州戦争行為」。
・米国はEU経済を破壊し、影響力を強める戦略を取った。
・欧州政治は「アメリカの操り人形」であり、独立した政策が必要。
補足
この主張の信憑性には議論の余地があるが、事件の全容は未解明のまま。
ノルドストリーム破壊は、地政学的に大きな影響を及ぼした事件であることは確か。
【引用・参照・底本】
U.S. Act of War Against the European Union: President Biden Ordered the Terror Attack Against Nord Stream. High Treason Against the People of Europe Michel Chossudovsky 2025.02.19
https://michelchossudovsky.substack.com/p/us-act-war-european-union-biden-nord-stream-attack?utm_source=post-email-title&publication_id=1910355&post_id=157396915&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
カナダの経済学者であり、Global Researchの創設者であるミシェル・チョスドフスキー氏によるものである。彼は、2022年9月26日に発生したノルドストリーム・パイプラインの破壊行為が、当時の米国大統領ジョー・バイデンの指示によるものであり、これは欧州連合(EU)に対する「戦争行為」であると主張している。
1.バイデン大統領の発言
2022年2月7日のホワイトハウス記者会見で、ジョー・バイデンは「ロシアがウクライナに侵攻すれば、ノルドストリーム2はなくなる。我々はそれを実行することができる」と述べた。チョスドフスキー氏は、この発言が事実上、ノルドストリーム破壊の予告であったと解釈している。
2.ノルドストリームの破壊とその影響
2022年9月26日に発生したノルドストリームの爆発は、欧州のエネルギーインフラに対する深刻な損害を与え、EU諸国の経済と社会に大きな影響を及ぼした。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長やデンマークのメッテ・フレデリクセン首相も、これを「破壊行為」と認識していたが、誰が実行したかについては明言していない。
3.欧州の領土主権に対する侵害
ノルドストリームはフィンランド、スウェーデン、デンマーク、ドイツの領海を通過しており、これらの国々の承認のもとに建設された。チョスドフスキー氏は、これらの国々の領海内で発生した破壊行為は、国連憲章および国際法(国連海洋法条約)に違反する「戦争行為」に該当すると主張している。
4.ドイツ政府の関与
チョスドフスキー氏は、当時のドイツ首相オラフ・ショルツがバイデンの発言を支持したことを「国家に対する裏切り行為」とみなしている。ドイツ政府がノルドストリーム破壊を黙認したことが、欧州全体のエネルギー危機を加速させたとしている。
5.米国のEUに対する敵対的行動
米国はもはやEUの「同盟国」ではなく、「敵対的行為」を行っていると述べている。ノルドストリーム破壊はその一例であり、欧州経済の混乱を引き起こし、米国の利益を優先するために行われたと主張している。
6.欧州政治家の「裏切り」
チョスドフスキー氏は、欧州の政治指導者たちが米国に従属し、欧州の利益を損なっていると批判している。特に、EU内部で米国の影響力が強まり、欧州の経済やエネルギー政策が米国の意向に沿う形で決定されていると指摘している。
7.「政権交代」の必要性
EUの「裏切り者」たちに対する責任追及が必要であり、欧州の指導層に対する「政権交代」と「刑事訴追」が求められるとしている。
このように、チョスドフスキー氏はノルドストリーム破壊をバイデン政権による「欧州への戦争行為」と位置づけ、欧州指導者の責任を問うべきだと主張している。これは、2023年に調査報道記者シーモア・ハーシュが発表した、米国がノルドストリーム攻撃を計画・実行したとする報道とも関連している。
【詳細】
カナダの経済学者であり評論家であるミシェル・チョスドフスキー(Michel Chossudovsky)によるものであり、ノルドストリーム爆破事件がアメリカ合衆国による「欧州連合(EU)に対する戦争行為」であり、バイデン大統領の直接の指示による「テロ攻撃」であると主張している。以下、その主張の詳細を整理する。
1. ノルドストリーム破壊の背景
ノルドストリームはロシアからドイツへ天然ガスを輸送する海底パイプラインであり、ノルドストリーム1とノルドストリーム2の2本が存在する。これらはロシアのエネルギー資源をEUへ供給する重要なインフラであり、EUの経済やエネルギー安全保障にとって極めて重要であった。
2022年9月26日、バルト海にあるノルドストリーム1および2の複数の地点で爆発が発生し、パイプラインが破壊された。この事件について、欧州各国の指導者は「破壊行為(サボタージュ)である」と明言し、デンマークやスウェーデンの政府も「意図的な攻撃」であると発表した。
2. バイデン大統領の発言と事前の警告
チョスドフスキーは、事件の約7か月前の2022年2月7日に行われたホワイトハウスでの記者会見に注目している。
この記者会見で、バイデン大統領は以下のように発言した。
「もしロシアがウクライナに侵攻すれば、ノルドストリーム2はなくなる。」
これに対し、記者が「それはドイツの管轄下にあるが、どのようにそれを実行するのか」と尋ねたところ、バイデンはこう答えた。
「我々はそれを実行する。我々にはその能力がある。」
チョスドフスキーは、この発言こそが「攻撃の事前の意思表明」であり、バイデン政権がノルドストリームを標的としたことを示す証拠であると主張している。
3. ノルドストリーム攻撃は「EUに対する戦争行為」
チョスドフスキーは、ノルドストリーム爆破が単なるテロ行為ではなく、EUに対する「戦争行為(Act of War)」であると主張している。その理由は以下の通りである。
(1)ノルドストリームはEU加盟国の海域内を通過していた
・パイプラインはロシアからドイツへと続き、フィンランド、スウェーデン、デンマーク、ドイツの領海内を通過していた。
・これらの国々の政府および議会の承認のもとで建設された国際的なインフラであり、その破壊はこれらの国家主権への侵害と見なされる。
(2)国際法における「国家の領土保全」
・国際法(国連憲章および国連海洋法条約)では、「国家の領土保全」には領海内の重要インフラも含まれる。
・外国勢力が意図的に国家のインフラを破壊することは「侵略行為」に相当する。
・したがって、ノルドストリーム攻撃はEU加盟国の主権に対する重大な侵害であり、米国による「戦争行為」と解釈できると主張している。
(3)欧州の経済と社会への深刻な影響
・ノルドストリームの破壊により、EUはロシアからのガス供給を絶たれ、エネルギー価格が急騰した。
・これにより、EUの経済全体が深刻な影響を受け、企業の生産コストが上昇し、インフレが進行した。
・これは「意図的な経済破壊工作」であり、結果的に欧州の弱体化を招いた。
4. 「裏切り」としてのオラフ・ショルツの行動
バイデン大統領が「ノルドストリームを破壊する」と明言した記者会見には、当時のドイツ首相オラフ・ショルツも同席していた。
チョスドフスキーは、ショルツがバイデンの発言に対して異議を唱えなかったことを問題視し、「ドイツ政府の指導者が、自国のインフラ攻撃を事前に容認していた可能性がある」と主張している。
さらに、ノルドストリーム爆破後も、ショルツ政権はアメリカに対して明確な抗議を行わなかった。この点についてもチョスドフスキーは**「ドイツ政府の指導者による国民への裏切り(High Treason)」**であると批判している。
5. 「欧州の政治家による裏切り」と「米国の対欧戦争」
記事の最後では、欧州の政治指導者がアメリカの戦略に従い、自国の利益を損なっていると批判している。
(1)「アメリカはもはやEUの同盟国ではない」
・アメリカの行動は「同盟国への支援」ではなく、むしろ欧州経済を弱体化させ、アメリカの地政学的支配を強めるための策略であると論じている。
・「米国はEUに対して事実上の戦争を仕掛けている」という見解を示している。
(2)「欧州の政治家たちは米国に従属し、裏切りを働いている」
・チョスドフスキーは、EUの政治指導者がこの攻撃を容認し、アメリカの対ロシア政策に従属していると非難している。
・特にドイツ政府は、ノルドストリームの破壊に対して適切な対応を取らず、国民に対する「裏切り行為」を働いたと主張している。
(3)「欧州に必要なのは『体制変革』と『裏切り者の処罰』」
・EUの政治指導者を総入れ替えし、「米国の影響を排除する政治改革」が必要であると訴えている。
・また、「米国の戦略に協力した政治家を反逆罪で処罰すべき」という強硬な主張もしている。
結論
ミシェル・チョスドフスキーは、ノルドストリーム爆破はアメリカが主導した「対欧州戦争」であり、バイデン政権が直接関与していた可能性が高いと主張している。また、EU内の政治家たちが米国の政策に従属し、自国の利益を犠牲にしていることを「裏切り」と非難している。
この主張がどの程度信憑性を持つかについては議論の余地があるが、ノルドストリーム破壊事件は依然として完全な真相が明らかになっておらず、地政学的に大きな影響を及ぼした事件であることは確かである。
【要点】
ミシェル・チョスドフスキーの主張:ノルドストリーム爆破は米国の「対EU戦争行為」
1. ノルドストリーム破壊の背景
・ノルドストリーム1・2はロシアからドイツへ天然ガスを供給する海底パイプライン。
・2022年9月26日、バルト海の複数地点で爆破され破壊された。
・欧州各国は「意図的な破壊行為(サボタージュ)」と認定。
2. バイデン大統領の発言と事前の警告
・2022年2月7日、バイデンがノルドストリームの破壊を示唆。
➡️「ロシアが侵攻すれば、ノルドストリーム2はなくなる」
➡️「我々にはそれを実行する能力がある」
・米政府が破壊計画を事前に示唆していた証拠と主張。
3. ノルドストリーム攻撃は「EUに対する戦争行為」
・パイプラインはEU加盟国の領海を通過(ドイツ、デンマーク、スウェーデンなど)。
・国際法上、外国勢力が国家のインフラを破壊する行為は「侵略」。
・EUの経済基盤を破壊し、エネルギー危機とインフレを引き起こした。
4. 「裏切り者」としてのドイツ首相オラフ・ショルツ
・バイデンの「破壊予告」発言時に同席し、異議を唱えなかった。
・爆破後もアメリカに抗議せず、事実上の容認。
・ドイツ国民への「裏切り行為(High Treason)」と批判。
5. 米国の「対欧戦争」と欧州政治の腐敗
・「アメリカは同盟国ではなく、EUの弱体化を狙っている」。
・欧州の政治指導者は米国に従属し、国民の利益を損なっている。
・「裏切り者の処罰」と「米国影響の排除」が必要と主張。
6. 結論
・ノルドストリーム爆破は、バイデン政権主導の「対欧州戦争行為」。
・米国はEU経済を破壊し、影響力を強める戦略を取った。
・欧州政治は「アメリカの操り人形」であり、独立した政策が必要。
補足
この主張の信憑性には議論の余地があるが、事件の全容は未解明のまま。
ノルドストリーム破壊は、地政学的に大きな影響を及ぼした事件であることは確か。
【引用・参照・底本】
U.S. Act of War Against the European Union: President Biden Ordered the Terror Attack Against Nord Stream. High Treason Against the People of Europe Michel Chossudovsky 2025.02.19
https://michelchossudovsky.substack.com/p/us-act-war-european-union-biden-nord-stream-attack?utm_source=post-email-title&publication_id=1910355&post_id=157396915&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ポーランドは再び米国の欧州における最重要パートナーとなる可能性 ― 2025年02月19日 18:24
【概要】
ポーランドは再び米国の欧州における最重要パートナーとなる可能性が高まっている。これは、ポーランドがウクライナのゼレンスキー大統領が提案した「欧州軍」構想への参加を拒否し、ドイツやウクライナの領土的な意図に対する懸念を強めているためである。こうした動きは、米国が欧州を分断し統制する戦略にとって有利に働く可能性がある。
ポーランドのラデク・シコルスキ外相は、「欧州軍」構想について「実現しない」と明言した。これは、ドナルド・トゥスク首相率いる与党「市民プラットフォーム」(PO)にとって、2025年5月の大統領選挙を前に有権者の支持を確保するための判断と考えられる。現在の大統領であるアンドジェイ・ドゥダ(「法と正義」(PiS)所属)の任期満了後、POはラファウ・トシャスコフスキを、PiSはカロル・ナヴロツキをそれぞれ候補に立てる見込みである。
POが政権を握ることで、同党が掲げるリベラルな社会政策の実現が可能になる。しかし、現職のドゥダ大統領が反対権を行使しているため、これまで思うように進められなかった。POとしては、大統領選で勝利することでこの行き詰まりを解消し、次の国政選挙(2027年)までに党の政策を推し進めることができるようになる。
外交政策では、POもPiSも親米路線を基本としているが、程度の差がある。POは伝統的に親独的な傾向があり、PiSは反独的で強硬な親米路線を採る。このため、POが「欧州軍」構想に反対するのは不自然にも見えるが、近年の政策転換によって、国家利益を重視する姿勢を強めている可能性がある。具体的には、PiS政権時に建設されたベラルーシとの国境壁の強化や、ウクライナとの関係悪化(ヴォルィーニ虐殺問題の再燃、ウクライナへの武器供与の条件変更など)が挙げられる。
このような状況から考えると、POの「欧州軍」構想への反対は単なる選挙戦略ではなく、国益を考慮した方針転換である可能性がある。仮に大統領選でPOのトシャスコフスキが勝利しても、ポーランドは欧州軍に参加しないという路線を維持するかもしれない。
ポーランドは歴史的に中央・東欧で影響力を持つことを目指してきた。「東方パートナーシップ」(2009年、スウェーデンと共同創設)、「三海イニシアティブ」(2016年、クロアチアと共同創設)、「ルブリン・トライアングル」(2020年、リトアニア・ウクライナと共同創設)といった枠組みを推進してきたことが、その表れである。しかし、2023年秋の政権交代後、POは一時的にドイツ主導の「欧州の要塞」構想(バイデン政権が推進するEU統合強化策)に従う姿勢を見せた。
しかし、2024年以降、米国の対欧州政策に変化が見られる。トランプ前大統領の政治的復活が進む中で、ジェイ・D・ヴァンス上院議員が最近の演説で米国の欧州からの部分的撤退を示唆した。同時に、新国防長官のピート・ヘグセスはポーランドを「欧州における模範的な同盟国」と称賛しており、トランプ政権がポーランドを再び欧州における最優先の同盟国と位置づける可能性がある。
ポーランドにとって、米国との軍事的関係を強化することは戦略的に有益である。米国が欧州における軍事的関与を縮小したとしても、ポーランドを通じて地域の安全保障を管理することが可能だからである。これは、ロシアとドイツの関係が改善した場合や、ドイツの「ドイツのための選択肢」(AfD)が政権に加わる可能性がある場合に、米国がポーランドを牽制手段として利用できることを意味する。
また、ポーランドは米国の支援を受けながら「三海イニシアティブ」や「ルブリン・トライアングル」を通じて中央・東欧での影響力を拡大できる可能性がある。ウクライナ戦争が妥協的な形で終結した場合、バルト三国やルーマニア、ウクライナもポーランドの主導する地域連携に引き寄せられることが考えられる。さらに、米国がベラルーシとの関係改善を進めた場合、ポーランドもベラルーシとの関係修復を試み、ロシアの影響力を削ぐ可能性もある。
ポーランドが「欧州軍」に参加しないことは、ドイツ主導のEU軍事統合への依存を避け、米国との二国間軍事関係を維持する戦略的選択である。また、ポーランド国内では、ドイツやウクライナによる領土的野心への懸念もくすぶっている。ドイツのAfDが政権入りした場合、「回収された領土」(第二次世界大戦後にドイツからポーランドに編入された地域)に関する議論が再燃する可能性がある。同様に、ウクライナ戦争後、ウクライナの一部勢力がポーランドの東部地域に対する歴史的主張を強める可能性もある。
現時点では、ポーランドの政治指導者がこれらのシナリオを公式に主張しているわけではないが、こうした懸念が外交政策に影響を与えていると考えられる。POが「欧州軍」に反対し、米国との軍事関係を重視するのも、その一環といえる。
今後の展開として、5月の大統領選後にPOが方針を維持するかどうかが重要となる。もし方針を変えずに「三海イニシアティブ」などを強化すれば、ポーランドは再び米国の欧州戦略の中心的存在となる可能性が高い。一方で、POがドイツとの関係を優先し、米国との距離を縮める路線を放棄する場合、ポーランドはドイツ主導のEUにさらに組み込まれることになる。いずれの道を選ぶかは、今後の政権運営にかかっている。
【詳細】
ポーランドが再びアメリカのヨーロッパにおける最重要パートナーとなる可能性について分析している。主な論点は以下のとおりである。
1. ポーランドの「欧州軍」構想への反対
ポーランドの外相であるラデク・シコルスキは、ウクライナのゼレンスキー大統領が提案した「欧州軍」構想に対し、「実現しない」と明確に否定した。この発言は、欧州の安全保障をEU主体で進めようとする動きに対するポーランドの慎重な姿勢を示している。
一方で、ポーランドの与党「市民プラットフォーム(PO)」は伝統的に親ドイツ的な傾向があるため、欧州統合に積極的なはずだと見られていた。しかし、2025年5月の大統領選挙を前にして、ポーランドの世論を意識し、あえて慎重な立場を取っている可能性がある。
2. ポーランド国内政治の影響
現在のポーランド政府は、2023年の総選挙で政権を奪取した「市民プラットフォーム(PO)」を中心とする自由主義・グローバリストの連立政権である。しかし、大統領職は依然として保守派の「法と正義(PiS)」が握っており、これが政府の政策に制約を加えている。
2025年5月の大統領選挙でPOの候補であるラファウ・トシャスコフスキが勝利すれば、政権は自由主義的な政策をより推進しやすくなる。一方、PiSの候補であるカロル・ナヴロツキが勝利すれば、現在の政治的膠着状態が続く可能性が高い。このため、PO政権は一部の政策で保守的な姿勢を取り、世論を味方につけようとしていると考えられる。
3. ポーランドの安全保障戦略の変化
ポーランド政府は、以下の点で国益を優先する政策を進めている。
・ベラルーシとの国境防衛の強化:PiS政権時代に建設されたベラルーシとの国境の壁をPO政権も維持・強化している。これは、ベラルーシ政府がポーランドに対して移民を利用した圧力をかけていると見なしているためである。
・ウクライナへの支援の縮小:ポーランドはこれまでウクライナに対し無償の軍事支援を行ってきたが、最近では「今後の支援は信用供与(クレジット)による」と方針を変更した。また、ポーランド国内ではウクライナの民族主義が過去の「ヴォルィーニ虐殺」の歴史問題と結びつき、反ウクライナ感情を強めている。
これらの動きは、単なる選挙向けの戦略ではなく、PO政権が実際に国家戦略の見直しを進めている可能性を示唆している。
4. アメリカとの関係強化
ポーランドは、EUの枠組みを超えて独自の影響圏を拡大しようとしている。これには、以下の取り組みが含まれる。
・東方パートナーシップ(2009年):スウェーデンと共同で設立し、旧ソ連圏の国々(ウ クライナ、ベラルーシ、モルドバなど)との関係強化を目指す。
・三海洋イニシアチブ(2016年):クロアチアと共同で設立し、バルト海・黒海・アドリア海にまたがる国々の経済・安全保障協力を推進する。
・ルブリン・トライアングル(2020年):リトアニア・ウクライナと共に設立し、軍事・経済分野での協力を進める。
こうした動きは、ポーランドがドイツ主導のEUの枠組みに完全には組み込まれず、独自の影響力を確立しようとする意図を示している。
5. アメリカの戦略とポーランドの位置づけ
アメリカの外交政策は、トランプの影響力が強まる中で大きく変化しつつある。特に、次の2つの動きが重要である。
1.JD・ヴァンス上院議員の演説(2025年2月):アメリカの欧州関与を縮小し、「アジアへの再ピボット」を示唆した。
2.ピート・ヘグセス国防長官の発言:「ポーランドは欧州で最も重要な同盟国」と評価した。
これらの発言は、アメリカが今後、ドイツよりもポーランドを優先する可能性が高いことを示している。これは、トランプ政権時代の政策と一致しており、ポーランドが再びアメリカの最重要パートナーとして位置づけられる可能性がある。
6. ポーランドの懸念:ドイツとウクライナの領土問題
ポーランドは、ドイツとウクライナに対して潜在的な領土問題を抱えている。
・ドイツ:「ドイツのための選択肢(AfD)」が将来の政権に関与した場合、ポーランドが「回収された領土」(第二次世界大戦後にポーランドに割譲された旧ドイツ領)に対するドイツの非公式な領有権主張が強まる可能性がある。
・ウクライナ:戦後のウクライナが、ロシアに対する敵対姿勢を維持する中で、ポーランドの南東部に対する領土的野心を強める可能性がある。
これらの懸念は、ポーランドがドイツ主導の「欧州軍」に参加することを拒否し、代わりにアメリカとの軍事関係を強化する理由の一つとなっている。
7. 今後の展望
ポーランドの外交・安全保障政策は、2025年5月の大統領選挙の結果によって大きく左右される。
・トシャスコフスキ(PO)が勝利:ポーランドはドイツとの関係を強化し、EUの枠組みにより組み込まれる可能性がある。ただし、米国との軍事関係を完全に切ることは考えにくい。
・ナヴロツキ(PiS)が勝利:ポーランドはアメリカとの関係をさらに深め、EUの統合を抑制する立場を取る可能性が高い。
いずれにせよ、ポーランドはアメリカとの関係を維持しつつ、ドイツやウクライナとの関係を慎重に調整していくと考えられる。アメリカが欧州における影響力を縮小する中で、ポーランドが独自の影響圏を築こうとする動きは今後も続く可能性が高い。
【要点】
ポーランドがアメリカの最重要パートナーとなる可能性について
1. ポーランドの「欧州軍」構想への反対
・外相ラデク・シコルスキが「欧州軍は実現しない」と発言。
・EU主導の安全保障強化に対して慎重な姿勢を示す。
・与党「市民プラットフォーム(PO)」は親ドイツ的だが、大統領選を意識し慎重な立場を取る。
2. ポーランド国内政治の影響
・現政権(PO中心の連立政権)は自由主義的だが、大統領職は保守派「法と正義(PiS)」が保持。
・2025年5月の大統領選挙でPO候補(トシャスコフスキ)勝利ならEU寄り、PiS候補(ナヴロツキ)勝利なら保守路線継続。
・選挙を前にPO政権が保守的な政策を取り、世論を味方につけようとしている。
3. ポーランドの安全保障戦略の変化
・ベラルーシとの国境防衛強化:PiS政権時代に建設した国境の壁をPO政権も維持・強化。
・ウクライナへの支援縮小:無償支援から信用供与(クレジット)方式に移行。
・ウクライナへの反発:「ヴォルィーニ虐殺」などの歴史問題で反ウクライナ感情が高まる。
4. アメリカとの関係強化
・東方パートナーシップ(2009年):旧ソ連圏の国々(ウクライナ、ベラルーシ、モルドバ)との関係強化。
・三海洋イニシアチブ(2016年):バルト海・黒海・アドリア海の国々と協力強化。
・ルブリン・トライアングル(2020年):リトアニア・ウクライナと軍事・経済協力。
・EUの枠組み外でも独自の影響力を確立しようとする姿勢。
5. アメリカの戦略とポーランドの位置づけ
・JD・ヴァンス上院議員の発言(2025年2月):「欧州関与を縮小し、アジア重視へ」。
・ピート・ヘグセス国防長官の発言:「ポーランドは欧州で最も重要な同盟国」。
・トランプ政権時代の政策と一致し、ポーランドがアメリカの最重要パートナーとなる可能性が高まる。
6. ポーランドの懸念:ドイツとウクライナの領土問題
・ドイツ:「ドイツのための選択肢(AfD)」が政権入りすれば、ポーランド領の再主張の可能性。
・ウクライナ:戦後のウクライナが南東ポーランドへの領土的野心を強める懸念。
・これらの理由から、ポーランドは「欧州軍」に参加せず、アメリカとの軍事関係を重視。
7. 今後の展望
・トシャスコフスキ(PO)が勝利:EUとの関係強化、ドイツ寄りの外交路線。ただし米国との軍事関係は維持。
・ナヴロツキ(PiS)が勝利:米国との関係をさらに強化し、EUの統合を抑制。
・どちらが勝っても、ポーランドは独自の影響力を拡大し、アメリカとの関係を維持する可能性が高い。
【引用・参照・底本】
Poland Is Once Again Poised To Become The US’ Top Partner In Europe Andrew Korybko's Newsletter 2025.02.19
https://korybko.substack.com/p/poland-is-once-again-poised-to-become?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=157441868&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ポーランドは再び米国の欧州における最重要パートナーとなる可能性が高まっている。これは、ポーランドがウクライナのゼレンスキー大統領が提案した「欧州軍」構想への参加を拒否し、ドイツやウクライナの領土的な意図に対する懸念を強めているためである。こうした動きは、米国が欧州を分断し統制する戦略にとって有利に働く可能性がある。
ポーランドのラデク・シコルスキ外相は、「欧州軍」構想について「実現しない」と明言した。これは、ドナルド・トゥスク首相率いる与党「市民プラットフォーム」(PO)にとって、2025年5月の大統領選挙を前に有権者の支持を確保するための判断と考えられる。現在の大統領であるアンドジェイ・ドゥダ(「法と正義」(PiS)所属)の任期満了後、POはラファウ・トシャスコフスキを、PiSはカロル・ナヴロツキをそれぞれ候補に立てる見込みである。
POが政権を握ることで、同党が掲げるリベラルな社会政策の実現が可能になる。しかし、現職のドゥダ大統領が反対権を行使しているため、これまで思うように進められなかった。POとしては、大統領選で勝利することでこの行き詰まりを解消し、次の国政選挙(2027年)までに党の政策を推し進めることができるようになる。
外交政策では、POもPiSも親米路線を基本としているが、程度の差がある。POは伝統的に親独的な傾向があり、PiSは反独的で強硬な親米路線を採る。このため、POが「欧州軍」構想に反対するのは不自然にも見えるが、近年の政策転換によって、国家利益を重視する姿勢を強めている可能性がある。具体的には、PiS政権時に建設されたベラルーシとの国境壁の強化や、ウクライナとの関係悪化(ヴォルィーニ虐殺問題の再燃、ウクライナへの武器供与の条件変更など)が挙げられる。
このような状況から考えると、POの「欧州軍」構想への反対は単なる選挙戦略ではなく、国益を考慮した方針転換である可能性がある。仮に大統領選でPOのトシャスコフスキが勝利しても、ポーランドは欧州軍に参加しないという路線を維持するかもしれない。
ポーランドは歴史的に中央・東欧で影響力を持つことを目指してきた。「東方パートナーシップ」(2009年、スウェーデンと共同創設)、「三海イニシアティブ」(2016年、クロアチアと共同創設)、「ルブリン・トライアングル」(2020年、リトアニア・ウクライナと共同創設)といった枠組みを推進してきたことが、その表れである。しかし、2023年秋の政権交代後、POは一時的にドイツ主導の「欧州の要塞」構想(バイデン政権が推進するEU統合強化策)に従う姿勢を見せた。
しかし、2024年以降、米国の対欧州政策に変化が見られる。トランプ前大統領の政治的復活が進む中で、ジェイ・D・ヴァンス上院議員が最近の演説で米国の欧州からの部分的撤退を示唆した。同時に、新国防長官のピート・ヘグセスはポーランドを「欧州における模範的な同盟国」と称賛しており、トランプ政権がポーランドを再び欧州における最優先の同盟国と位置づける可能性がある。
ポーランドにとって、米国との軍事的関係を強化することは戦略的に有益である。米国が欧州における軍事的関与を縮小したとしても、ポーランドを通じて地域の安全保障を管理することが可能だからである。これは、ロシアとドイツの関係が改善した場合や、ドイツの「ドイツのための選択肢」(AfD)が政権に加わる可能性がある場合に、米国がポーランドを牽制手段として利用できることを意味する。
また、ポーランドは米国の支援を受けながら「三海イニシアティブ」や「ルブリン・トライアングル」を通じて中央・東欧での影響力を拡大できる可能性がある。ウクライナ戦争が妥協的な形で終結した場合、バルト三国やルーマニア、ウクライナもポーランドの主導する地域連携に引き寄せられることが考えられる。さらに、米国がベラルーシとの関係改善を進めた場合、ポーランドもベラルーシとの関係修復を試み、ロシアの影響力を削ぐ可能性もある。
ポーランドが「欧州軍」に参加しないことは、ドイツ主導のEU軍事統合への依存を避け、米国との二国間軍事関係を維持する戦略的選択である。また、ポーランド国内では、ドイツやウクライナによる領土的野心への懸念もくすぶっている。ドイツのAfDが政権入りした場合、「回収された領土」(第二次世界大戦後にドイツからポーランドに編入された地域)に関する議論が再燃する可能性がある。同様に、ウクライナ戦争後、ウクライナの一部勢力がポーランドの東部地域に対する歴史的主張を強める可能性もある。
現時点では、ポーランドの政治指導者がこれらのシナリオを公式に主張しているわけではないが、こうした懸念が外交政策に影響を与えていると考えられる。POが「欧州軍」に反対し、米国との軍事関係を重視するのも、その一環といえる。
今後の展開として、5月の大統領選後にPOが方針を維持するかどうかが重要となる。もし方針を変えずに「三海イニシアティブ」などを強化すれば、ポーランドは再び米国の欧州戦略の中心的存在となる可能性が高い。一方で、POがドイツとの関係を優先し、米国との距離を縮める路線を放棄する場合、ポーランドはドイツ主導のEUにさらに組み込まれることになる。いずれの道を選ぶかは、今後の政権運営にかかっている。
【詳細】
ポーランドが再びアメリカのヨーロッパにおける最重要パートナーとなる可能性について分析している。主な論点は以下のとおりである。
1. ポーランドの「欧州軍」構想への反対
ポーランドの外相であるラデク・シコルスキは、ウクライナのゼレンスキー大統領が提案した「欧州軍」構想に対し、「実現しない」と明確に否定した。この発言は、欧州の安全保障をEU主体で進めようとする動きに対するポーランドの慎重な姿勢を示している。
一方で、ポーランドの与党「市民プラットフォーム(PO)」は伝統的に親ドイツ的な傾向があるため、欧州統合に積極的なはずだと見られていた。しかし、2025年5月の大統領選挙を前にして、ポーランドの世論を意識し、あえて慎重な立場を取っている可能性がある。
2. ポーランド国内政治の影響
現在のポーランド政府は、2023年の総選挙で政権を奪取した「市民プラットフォーム(PO)」を中心とする自由主義・グローバリストの連立政権である。しかし、大統領職は依然として保守派の「法と正義(PiS)」が握っており、これが政府の政策に制約を加えている。
2025年5月の大統領選挙でPOの候補であるラファウ・トシャスコフスキが勝利すれば、政権は自由主義的な政策をより推進しやすくなる。一方、PiSの候補であるカロル・ナヴロツキが勝利すれば、現在の政治的膠着状態が続く可能性が高い。このため、PO政権は一部の政策で保守的な姿勢を取り、世論を味方につけようとしていると考えられる。
3. ポーランドの安全保障戦略の変化
ポーランド政府は、以下の点で国益を優先する政策を進めている。
・ベラルーシとの国境防衛の強化:PiS政権時代に建設されたベラルーシとの国境の壁をPO政権も維持・強化している。これは、ベラルーシ政府がポーランドに対して移民を利用した圧力をかけていると見なしているためである。
・ウクライナへの支援の縮小:ポーランドはこれまでウクライナに対し無償の軍事支援を行ってきたが、最近では「今後の支援は信用供与(クレジット)による」と方針を変更した。また、ポーランド国内ではウクライナの民族主義が過去の「ヴォルィーニ虐殺」の歴史問題と結びつき、反ウクライナ感情を強めている。
これらの動きは、単なる選挙向けの戦略ではなく、PO政権が実際に国家戦略の見直しを進めている可能性を示唆している。
4. アメリカとの関係強化
ポーランドは、EUの枠組みを超えて独自の影響圏を拡大しようとしている。これには、以下の取り組みが含まれる。
・東方パートナーシップ(2009年):スウェーデンと共同で設立し、旧ソ連圏の国々(ウ クライナ、ベラルーシ、モルドバなど)との関係強化を目指す。
・三海洋イニシアチブ(2016年):クロアチアと共同で設立し、バルト海・黒海・アドリア海にまたがる国々の経済・安全保障協力を推進する。
・ルブリン・トライアングル(2020年):リトアニア・ウクライナと共に設立し、軍事・経済分野での協力を進める。
こうした動きは、ポーランドがドイツ主導のEUの枠組みに完全には組み込まれず、独自の影響力を確立しようとする意図を示している。
5. アメリカの戦略とポーランドの位置づけ
アメリカの外交政策は、トランプの影響力が強まる中で大きく変化しつつある。特に、次の2つの動きが重要である。
1.JD・ヴァンス上院議員の演説(2025年2月):アメリカの欧州関与を縮小し、「アジアへの再ピボット」を示唆した。
2.ピート・ヘグセス国防長官の発言:「ポーランドは欧州で最も重要な同盟国」と評価した。
これらの発言は、アメリカが今後、ドイツよりもポーランドを優先する可能性が高いことを示している。これは、トランプ政権時代の政策と一致しており、ポーランドが再びアメリカの最重要パートナーとして位置づけられる可能性がある。
6. ポーランドの懸念:ドイツとウクライナの領土問題
ポーランドは、ドイツとウクライナに対して潜在的な領土問題を抱えている。
・ドイツ:「ドイツのための選択肢(AfD)」が将来の政権に関与した場合、ポーランドが「回収された領土」(第二次世界大戦後にポーランドに割譲された旧ドイツ領)に対するドイツの非公式な領有権主張が強まる可能性がある。
・ウクライナ:戦後のウクライナが、ロシアに対する敵対姿勢を維持する中で、ポーランドの南東部に対する領土的野心を強める可能性がある。
これらの懸念は、ポーランドがドイツ主導の「欧州軍」に参加することを拒否し、代わりにアメリカとの軍事関係を強化する理由の一つとなっている。
7. 今後の展望
ポーランドの外交・安全保障政策は、2025年5月の大統領選挙の結果によって大きく左右される。
・トシャスコフスキ(PO)が勝利:ポーランドはドイツとの関係を強化し、EUの枠組みにより組み込まれる可能性がある。ただし、米国との軍事関係を完全に切ることは考えにくい。
・ナヴロツキ(PiS)が勝利:ポーランドはアメリカとの関係をさらに深め、EUの統合を抑制する立場を取る可能性が高い。
いずれにせよ、ポーランドはアメリカとの関係を維持しつつ、ドイツやウクライナとの関係を慎重に調整していくと考えられる。アメリカが欧州における影響力を縮小する中で、ポーランドが独自の影響圏を築こうとする動きは今後も続く可能性が高い。
【要点】
ポーランドがアメリカの最重要パートナーとなる可能性について
1. ポーランドの「欧州軍」構想への反対
・外相ラデク・シコルスキが「欧州軍は実現しない」と発言。
・EU主導の安全保障強化に対して慎重な姿勢を示す。
・与党「市民プラットフォーム(PO)」は親ドイツ的だが、大統領選を意識し慎重な立場を取る。
2. ポーランド国内政治の影響
・現政権(PO中心の連立政権)は自由主義的だが、大統領職は保守派「法と正義(PiS)」が保持。
・2025年5月の大統領選挙でPO候補(トシャスコフスキ)勝利ならEU寄り、PiS候補(ナヴロツキ)勝利なら保守路線継続。
・選挙を前にPO政権が保守的な政策を取り、世論を味方につけようとしている。
3. ポーランドの安全保障戦略の変化
・ベラルーシとの国境防衛強化:PiS政権時代に建設した国境の壁をPO政権も維持・強化。
・ウクライナへの支援縮小:無償支援から信用供与(クレジット)方式に移行。
・ウクライナへの反発:「ヴォルィーニ虐殺」などの歴史問題で反ウクライナ感情が高まる。
4. アメリカとの関係強化
・東方パートナーシップ(2009年):旧ソ連圏の国々(ウクライナ、ベラルーシ、モルドバ)との関係強化。
・三海洋イニシアチブ(2016年):バルト海・黒海・アドリア海の国々と協力強化。
・ルブリン・トライアングル(2020年):リトアニア・ウクライナと軍事・経済協力。
・EUの枠組み外でも独自の影響力を確立しようとする姿勢。
5. アメリカの戦略とポーランドの位置づけ
・JD・ヴァンス上院議員の発言(2025年2月):「欧州関与を縮小し、アジア重視へ」。
・ピート・ヘグセス国防長官の発言:「ポーランドは欧州で最も重要な同盟国」。
・トランプ政権時代の政策と一致し、ポーランドがアメリカの最重要パートナーとなる可能性が高まる。
6. ポーランドの懸念:ドイツとウクライナの領土問題
・ドイツ:「ドイツのための選択肢(AfD)」が政権入りすれば、ポーランド領の再主張の可能性。
・ウクライナ:戦後のウクライナが南東ポーランドへの領土的野心を強める懸念。
・これらの理由から、ポーランドは「欧州軍」に参加せず、アメリカとの軍事関係を重視。
7. 今後の展望
・トシャスコフスキ(PO)が勝利:EUとの関係強化、ドイツ寄りの外交路線。ただし米国との軍事関係は維持。
・ナヴロツキ(PiS)が勝利:米国との関係をさらに強化し、EUの統合を抑制。
・どちらが勝っても、ポーランドは独自の影響力を拡大し、アメリカとの関係を維持する可能性が高い。
【引用・参照・底本】
Poland Is Once Again Poised To Become The US’ Top Partner In Europe Andrew Korybko's Newsletter 2025.02.19
https://korybko.substack.com/p/poland-is-once-again-poised-to-become?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=157441868&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
EU:ロシアの「罠」に警戒するよう警告 ― 2025年02月19日 18:36
【概要】
EU外交政策責任者が米国に対しロシアの「罠」に警戒するよう警告
EUの外交政策責任者であるカヤ・カラスは13日、米国に対し、ロシアが仕掛ける「罠」に警戒し、西側諸国の分断を狙う戦略に乗らないよう警告した。
ロシアがウクライナへの大規模攻撃を実施
ウクライナ軍の発表によると、ロシアは夜間に167機のドローンと2発のミサイルを発射した。ウクライナ空軍はそのうち106機を撃墜し、さらに56機は電子戦システムによって目標に到達しなかったと説明している。残る5機のドローンの行方については言及されていない。オレ・キペル知事によれば、この攻撃により少なくとも4人が負傷し、その中には子供1人も含まれている。
ルビオ国務長官が欧州外相に「持続可能な和平」を強調
米国務長官のマルコ・ルビオは、欧州の外相らとの会談で、米国の目標は「一時的な停戦やロシア軍の再編を許す中途半端な休戦ではなく、持続可能な和平である」と伝えたと、フランスのジャン=ノエル・バロ外相がRTLラジオに語った。
ロシアの大規模攻撃によりオデーサで停電
ウクライナ南西部の港湾都市オデーサのゲナディ・トルハノフ市長は、ロシアによる「大規模な」攻撃により、市内の広範囲で暖房と電力供給が停止したと発表した。別の投稿では、市内の14の学校と500以上の住宅が停電し、少なくとも1人が入院したと述べた。攻撃の詳細については言及していない。
ウクライナがロシア・サマラ州の製油所を攻撃
サマラ州のヴィアチェスラフ・フェドリシチェフ知事によると、ウクライナは夜間に同州のスィズラン市にある製油所を攻撃した。知事は「緊急対応部隊が現場で対応している。現時点で死傷者の報告はない」と述べたが、施設の損傷状況には言及しなかった。ロシアのBazaおよびMashのTelegramチャンネルは、この攻撃により火災が発生したと報じている。ロシア国防省によれば、ブリャンスク州、タタールスタン共和国、トゥーラ州、黒海上空でウクライナの無人機9機を撃墜したと発表した。
ロシアの政府系ファンド、米企業の2025年復帰を予測
ロシアの政府系ファンドであるロシア直接投資基金(RDIF)のキリル・ドミトリエフ代表は、2025年第2四半期にも複数の米企業がロシア市場に復帰すると予測しているとタス通信が報じた。ただし、「多くの市場がすでに埋まっているため、復帰は容易ではない」とも述べている。
トランプ前大統領がゼレンスキーを批判、ロシアとの交渉に自信を示す
ドナルド・トランプ前大統領は13日、ウクライナのゼレンスキー大統領を批判し、ロシアの侵攻についてウクライナ側にも責任があると示唆した。さらに、ウクライナが選挙を実施するよう圧力をかける発言を行い、これはロシアの主張と一致するものであると指摘されている。
また、サウジアラビアでの和平交渉からウクライナが排除されたことにゼレンスキー大統領が不満を示したことについて、トランプ氏は「私はがっかりしている。『招待されなかった』と言っているが、3年間も戦争をしているのだから、そもそも始めるべきではなかった。合意を結ぶこともできただろう」と述べた。
さらに、トランプ氏はプーチン大統領と今月中にも会談する可能性を示唆し、米国の対ロシア政策の見直しが進んでいることに欧州各国が懸念を示している。
【詳細】
EU外交政策責任者が米国に警告:ロシアの「罠」に陥るな
EUの外交政策を統括するカヤ・カラス(Kaja Kallas)は、米国がロシアの「罠」に陥らないよう警告した。カラスは、西側諸国の団結を損なうような動きを警戒し、ロシアが情報戦や外交戦を駆使して米国を西側の統一戦線から引き離そうとしていると指摘した。具体的な罠の内容には言及していないが、これはロシアが米国を交渉に引き込み、ウクライナを妥協に追い込む戦略を警戒している可能性がある。
ロシアがウクライナに対して大規模な無人機攻撃を実施
ウクライナ軍によると、ロシアは夜間に167機の無人機(ドローン)と2発のミサイルをウクライナ領内に向けて発射した。このうち、ウクライナ空軍は106機を迎撃し、さらに56機は電子戦システムの影響で目標に到達しなかったと報告している。しかし、残る5機のドローンがどうなったかについては言及されていない。
攻撃の被害について、オデーサ州知事のオレ・キペル(Oleh Kiper)は「少なくとも4人が負傷し、その中には1人の子供も含まれている」と発表した。被害の詳細については今後の調査が必要とみられる。
ロシアは近年、イラン製の無人機「シャヘド」などを使用した大規模攻撃を頻繁に実施しており、今回の攻撃もその一環である可能性が高い。電子戦による迎撃が成功したことは、ウクライナ側の防衛技術の向上を示しているが、それでも完全な迎撃には至っていない。
ルビオ国務長官が欧州外相に「持続可能な和平」を強調
米国務長官のマルコ・ルビオ(Marco Rubio)は、欧州の外相との会談で「米国はロシアに時間を与えるような中途半端な停戦を望んでいるのではなく、持続可能な和平を目指している」と説明したと、フランスのジャン=ノエル・バロ(Jean-Noël Barrot)外相がRTLラジオに語った。
この発言は、一部の欧州諸国や米国内の政治勢力が、ウクライナ戦争の終結に向けた交渉を模索していることを背景にしていると考えられる。ロシア側は停戦を受け入れる姿勢を見せながらも、軍備増強を続ける可能性が高く、米国はロシアに戦力回復の時間を与えない形での和平を模索している。
ロシアの大規模攻撃によりオデーサで停電発生
ウクライナ南西部の港湾都市オデーサでは、ロシアによる「大規模な」攻撃により、広範囲で停電が発生した。オデーサ市長ゲナディ・トルハノフ(Gennadiy Trukhanov)は、「14の学校と500以上の住宅が電力を失い、少なくとも1人が負傷して入院した」と報告した。
オデーサはウクライナ南部の戦略的拠点であり、黒海に面した重要な港を有している。この地域に対するロシアの攻撃は、ウクライナの経済や軍事補給ルートに打撃を与えることを狙っているとみられる。
攻撃の詳細については明らかにされていないが、ロシア軍がミサイルや無人機を用いた可能性がある。オデーサではこれまでにも類似の攻撃が行われており、特にエネルギーインフラへの攻撃が頻発している。
ウクライナがロシア・サマラ州の製油所を攻撃
サマラ州の知事ヴィアチェスラフ・フェドリシチェフ(Vyacheslav Fedorishchev)によると、ウクライナ軍はスィズラン市の製油所を攻撃した。知事は「緊急対応部隊が出動しているが、現時点で死傷者は報告されていない」と発表した。
この攻撃の影響については詳細が明らかになっていないが、ロシアのBazaおよびMashのTelegramチャンネルは、攻撃によって火災が発生したと報じている。
ロシア国防省の発表によると、ロシア軍はブリャンスク州、タタールスタン共和国、トゥーラ州、黒海上空でウクライナの無人機9機を撃墜したとしている。ウクライナ軍は過去にもロシア国内の石油関連施設を攻撃しており、エネルギー供給に打撃を与えることでロシア経済への圧力を強める戦略をとっていると考えられる。
ロシアの政府系ファンド、米企業の2025年復帰を予測
ロシア直接投資基金(RDIF)のキリル・ドミトリエフ(Kirill Dmitriev)代表は、2025年第2四半期にも複数の米企業がロシア市場に復帰する可能性があると述べた。
ロシアは2022年のウクライナ侵攻以降、多くの西側企業が撤退したが、一部の企業は事業継続を模索している。ドミトリエフ代表は「復帰は容易ではない。多くの市場はすでに他の企業に占められている」と述べ、ロシア市場の再参入が困難である可能性も示唆した。
トランプ前大統領がゼレンスキーを批判し、ロシアとの交渉に自信を示す
ドナルド・トランプ前大統領は、ゼレンスキー大統領を批判し、ロシアとの交渉について自信を示した。
トランプ氏は、ウクライナがサウジアラビアでの和平交渉から排除されたことに不満を示していることについて「『招待されなかった』と不満を言っているが、3年間も戦争を続けているのだから、そもそも始めるべきではなかった。合意を結ぶこともできたはずだ」と発言した。
また、トランプ氏は「ウクライナは選挙を実施すべき」と述べ、これはロシアの要求と一致するものである。さらに、今月中にもプーチン大統領と会談する可能性を示唆し、米国の対ロシア政策の変化をうかがわせた。
この発言に対し、欧州各国は懸念を強めており、トランプ氏が再び政権に就いた場合、米国のウクライナ支援が大幅に縮小される可能性があるとみられている。
【要点】
EU外交政策責任者が米国に警告
・EU外交政策責任者カヤ・カラスが米国に警告
・ロシアの「罠」に陥らないよう注意喚起
・ロシアが情報戦・外交戦で米国を西側の統一戦線から引き離そうとしている
・具体的な罠の内容には言及せず
ロシアの大規模無人機攻撃
・ロシアがウクライナに167機の無人機と2発のミサイルを発射
・ウクライナ軍が106機撃墜、56機は電子戦システムで妨害
・残る5機の無人機の行方は不明
・オデーサ州で4人負傷(子供1人含む)
・ロシアはイラン製「シャヘド」無人機を使用
米国務長官が「持続可能な和平」を強調
・マルコ・ルビオ米国務長官が欧州外相と会談
・「ロシアに時間を与えない形の持続可能な和平が必要」と発言
・一部の欧州諸国や米国内での停戦交渉の動きをけん制
・ロシアは停戦を口実に軍備増強を進める可能性
オデーサで停電発生
・ロシアの大規模攻撃でオデーサが広範囲で停電
・14の学校と500以上の住宅が電力を失う
・少なくとも1人が負傷し入院
・オデーサは黒海に面した戦略的拠点で、頻繁に攻撃を受けている
ウクライナがロシア・サマラ州の製油所を攻撃
・ウクライナ軍がスィズラン市の製油所を攻撃
・サマラ州知事は「死傷者なし」と発表
・ロシアの報道によると火災が発生
・ロシア国防省は無人機9機を撃墜と主張
・ウクライナはロシアのエネルギー供給に打撃を与える戦略を継続
ロシア政府系ファンド:米企業が2025年にロシア復帰の可能性
・ロシア直接投資基金(RDIF)代表が2025年第2四半期に米企業の復帰を予測
・2022年のウクライナ侵攻後、多くの西側企業が撤退
・一部の企業は事業継続を模索
・「市場は他企業に占められており、復帰は容易でない」と指摘
トランプ前大統領の発言
・トランプ前大統領がゼレンスキーを批判
・「戦争は始めるべきではなかった」「合意を結ぶことができた」と発言
・ウクライナは選挙を実施すべきと主張(ロシアの要求と一致)
・近くプーチン大統領と会談する可能性を示唆
・欧州各国は米国のウクライナ支援縮小を懸念
【引用・参照・底本】
Live: ‘You should never have started it’, Trump tells Zelensky of Russia’s invasion FRANCE24 2025.02.19
https://www.france24.com/en/europe/20250219-live-trump-criticises-zelensky-suggests-he-could-meet-putin-by-month-s-end?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020250219&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
EU外交政策責任者が米国に対しロシアの「罠」に警戒するよう警告
EUの外交政策責任者であるカヤ・カラスは13日、米国に対し、ロシアが仕掛ける「罠」に警戒し、西側諸国の分断を狙う戦略に乗らないよう警告した。
ロシアがウクライナへの大規模攻撃を実施
ウクライナ軍の発表によると、ロシアは夜間に167機のドローンと2発のミサイルを発射した。ウクライナ空軍はそのうち106機を撃墜し、さらに56機は電子戦システムによって目標に到達しなかったと説明している。残る5機のドローンの行方については言及されていない。オレ・キペル知事によれば、この攻撃により少なくとも4人が負傷し、その中には子供1人も含まれている。
ルビオ国務長官が欧州外相に「持続可能な和平」を強調
米国務長官のマルコ・ルビオは、欧州の外相らとの会談で、米国の目標は「一時的な停戦やロシア軍の再編を許す中途半端な休戦ではなく、持続可能な和平である」と伝えたと、フランスのジャン=ノエル・バロ外相がRTLラジオに語った。
ロシアの大規模攻撃によりオデーサで停電
ウクライナ南西部の港湾都市オデーサのゲナディ・トルハノフ市長は、ロシアによる「大規模な」攻撃により、市内の広範囲で暖房と電力供給が停止したと発表した。別の投稿では、市内の14の学校と500以上の住宅が停電し、少なくとも1人が入院したと述べた。攻撃の詳細については言及していない。
ウクライナがロシア・サマラ州の製油所を攻撃
サマラ州のヴィアチェスラフ・フェドリシチェフ知事によると、ウクライナは夜間に同州のスィズラン市にある製油所を攻撃した。知事は「緊急対応部隊が現場で対応している。現時点で死傷者の報告はない」と述べたが、施設の損傷状況には言及しなかった。ロシアのBazaおよびMashのTelegramチャンネルは、この攻撃により火災が発生したと報じている。ロシア国防省によれば、ブリャンスク州、タタールスタン共和国、トゥーラ州、黒海上空でウクライナの無人機9機を撃墜したと発表した。
ロシアの政府系ファンド、米企業の2025年復帰を予測
ロシアの政府系ファンドであるロシア直接投資基金(RDIF)のキリル・ドミトリエフ代表は、2025年第2四半期にも複数の米企業がロシア市場に復帰すると予測しているとタス通信が報じた。ただし、「多くの市場がすでに埋まっているため、復帰は容易ではない」とも述べている。
トランプ前大統領がゼレンスキーを批判、ロシアとの交渉に自信を示す
ドナルド・トランプ前大統領は13日、ウクライナのゼレンスキー大統領を批判し、ロシアの侵攻についてウクライナ側にも責任があると示唆した。さらに、ウクライナが選挙を実施するよう圧力をかける発言を行い、これはロシアの主張と一致するものであると指摘されている。
また、サウジアラビアでの和平交渉からウクライナが排除されたことにゼレンスキー大統領が不満を示したことについて、トランプ氏は「私はがっかりしている。『招待されなかった』と言っているが、3年間も戦争をしているのだから、そもそも始めるべきではなかった。合意を結ぶこともできただろう」と述べた。
さらに、トランプ氏はプーチン大統領と今月中にも会談する可能性を示唆し、米国の対ロシア政策の見直しが進んでいることに欧州各国が懸念を示している。
【詳細】
EU外交政策責任者が米国に警告:ロシアの「罠」に陥るな
EUの外交政策を統括するカヤ・カラス(Kaja Kallas)は、米国がロシアの「罠」に陥らないよう警告した。カラスは、西側諸国の団結を損なうような動きを警戒し、ロシアが情報戦や外交戦を駆使して米国を西側の統一戦線から引き離そうとしていると指摘した。具体的な罠の内容には言及していないが、これはロシアが米国を交渉に引き込み、ウクライナを妥協に追い込む戦略を警戒している可能性がある。
ロシアがウクライナに対して大規模な無人機攻撃を実施
ウクライナ軍によると、ロシアは夜間に167機の無人機(ドローン)と2発のミサイルをウクライナ領内に向けて発射した。このうち、ウクライナ空軍は106機を迎撃し、さらに56機は電子戦システムの影響で目標に到達しなかったと報告している。しかし、残る5機のドローンがどうなったかについては言及されていない。
攻撃の被害について、オデーサ州知事のオレ・キペル(Oleh Kiper)は「少なくとも4人が負傷し、その中には1人の子供も含まれている」と発表した。被害の詳細については今後の調査が必要とみられる。
ロシアは近年、イラン製の無人機「シャヘド」などを使用した大規模攻撃を頻繁に実施しており、今回の攻撃もその一環である可能性が高い。電子戦による迎撃が成功したことは、ウクライナ側の防衛技術の向上を示しているが、それでも完全な迎撃には至っていない。
ルビオ国務長官が欧州外相に「持続可能な和平」を強調
米国務長官のマルコ・ルビオ(Marco Rubio)は、欧州の外相との会談で「米国はロシアに時間を与えるような中途半端な停戦を望んでいるのではなく、持続可能な和平を目指している」と説明したと、フランスのジャン=ノエル・バロ(Jean-Noël Barrot)外相がRTLラジオに語った。
この発言は、一部の欧州諸国や米国内の政治勢力が、ウクライナ戦争の終結に向けた交渉を模索していることを背景にしていると考えられる。ロシア側は停戦を受け入れる姿勢を見せながらも、軍備増強を続ける可能性が高く、米国はロシアに戦力回復の時間を与えない形での和平を模索している。
ロシアの大規模攻撃によりオデーサで停電発生
ウクライナ南西部の港湾都市オデーサでは、ロシアによる「大規模な」攻撃により、広範囲で停電が発生した。オデーサ市長ゲナディ・トルハノフ(Gennadiy Trukhanov)は、「14の学校と500以上の住宅が電力を失い、少なくとも1人が負傷して入院した」と報告した。
オデーサはウクライナ南部の戦略的拠点であり、黒海に面した重要な港を有している。この地域に対するロシアの攻撃は、ウクライナの経済や軍事補給ルートに打撃を与えることを狙っているとみられる。
攻撃の詳細については明らかにされていないが、ロシア軍がミサイルや無人機を用いた可能性がある。オデーサではこれまでにも類似の攻撃が行われており、特にエネルギーインフラへの攻撃が頻発している。
ウクライナがロシア・サマラ州の製油所を攻撃
サマラ州の知事ヴィアチェスラフ・フェドリシチェフ(Vyacheslav Fedorishchev)によると、ウクライナ軍はスィズラン市の製油所を攻撃した。知事は「緊急対応部隊が出動しているが、現時点で死傷者は報告されていない」と発表した。
この攻撃の影響については詳細が明らかになっていないが、ロシアのBazaおよびMashのTelegramチャンネルは、攻撃によって火災が発生したと報じている。
ロシア国防省の発表によると、ロシア軍はブリャンスク州、タタールスタン共和国、トゥーラ州、黒海上空でウクライナの無人機9機を撃墜したとしている。ウクライナ軍は過去にもロシア国内の石油関連施設を攻撃しており、エネルギー供給に打撃を与えることでロシア経済への圧力を強める戦略をとっていると考えられる。
ロシアの政府系ファンド、米企業の2025年復帰を予測
ロシア直接投資基金(RDIF)のキリル・ドミトリエフ(Kirill Dmitriev)代表は、2025年第2四半期にも複数の米企業がロシア市場に復帰する可能性があると述べた。
ロシアは2022年のウクライナ侵攻以降、多くの西側企業が撤退したが、一部の企業は事業継続を模索している。ドミトリエフ代表は「復帰は容易ではない。多くの市場はすでに他の企業に占められている」と述べ、ロシア市場の再参入が困難である可能性も示唆した。
トランプ前大統領がゼレンスキーを批判し、ロシアとの交渉に自信を示す
ドナルド・トランプ前大統領は、ゼレンスキー大統領を批判し、ロシアとの交渉について自信を示した。
トランプ氏は、ウクライナがサウジアラビアでの和平交渉から排除されたことに不満を示していることについて「『招待されなかった』と不満を言っているが、3年間も戦争を続けているのだから、そもそも始めるべきではなかった。合意を結ぶこともできたはずだ」と発言した。
また、トランプ氏は「ウクライナは選挙を実施すべき」と述べ、これはロシアの要求と一致するものである。さらに、今月中にもプーチン大統領と会談する可能性を示唆し、米国の対ロシア政策の変化をうかがわせた。
この発言に対し、欧州各国は懸念を強めており、トランプ氏が再び政権に就いた場合、米国のウクライナ支援が大幅に縮小される可能性があるとみられている。
【要点】
EU外交政策責任者が米国に警告
・EU外交政策責任者カヤ・カラスが米国に警告
・ロシアの「罠」に陥らないよう注意喚起
・ロシアが情報戦・外交戦で米国を西側の統一戦線から引き離そうとしている
・具体的な罠の内容には言及せず
ロシアの大規模無人機攻撃
・ロシアがウクライナに167機の無人機と2発のミサイルを発射
・ウクライナ軍が106機撃墜、56機は電子戦システムで妨害
・残る5機の無人機の行方は不明
・オデーサ州で4人負傷(子供1人含む)
・ロシアはイラン製「シャヘド」無人機を使用
米国務長官が「持続可能な和平」を強調
・マルコ・ルビオ米国務長官が欧州外相と会談
・「ロシアに時間を与えない形の持続可能な和平が必要」と発言
・一部の欧州諸国や米国内での停戦交渉の動きをけん制
・ロシアは停戦を口実に軍備増強を進める可能性
オデーサで停電発生
・ロシアの大規模攻撃でオデーサが広範囲で停電
・14の学校と500以上の住宅が電力を失う
・少なくとも1人が負傷し入院
・オデーサは黒海に面した戦略的拠点で、頻繁に攻撃を受けている
ウクライナがロシア・サマラ州の製油所を攻撃
・ウクライナ軍がスィズラン市の製油所を攻撃
・サマラ州知事は「死傷者なし」と発表
・ロシアの報道によると火災が発生
・ロシア国防省は無人機9機を撃墜と主張
・ウクライナはロシアのエネルギー供給に打撃を与える戦略を継続
ロシア政府系ファンド:米企業が2025年にロシア復帰の可能性
・ロシア直接投資基金(RDIF)代表が2025年第2四半期に米企業の復帰を予測
・2022年のウクライナ侵攻後、多くの西側企業が撤退
・一部の企業は事業継続を模索
・「市場は他企業に占められており、復帰は容易でない」と指摘
トランプ前大統領の発言
・トランプ前大統領がゼレンスキーを批判
・「戦争は始めるべきではなかった」「合意を結ぶことができた」と発言
・ウクライナは選挙を実施すべきと主張(ロシアの要求と一致)
・近くプーチン大統領と会談する可能性を示唆
・欧州各国は米国のウクライナ支援縮小を懸念
【引用・参照・底本】
Live: ‘You should never have started it’, Trump tells Zelensky of Russia’s invasion FRANCE24 2025.02.19
https://www.france24.com/en/europe/20250219-live-trump-criticises-zelensky-suggests-he-could-meet-putin-by-month-s-end?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020250219&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
中・豪:防衛対話の再開 ― 2025年02月19日 19:49
【概要】
この防衛対話の再開は、中国とオーストラリアの関係改善の一環でありながら、依然として続く戦略的緊張の中での動きである。特に、最近の南シナ海での対立が影を落としている。
オーストラリア側は中国との対話を重視しつつも、米国との同盟関係を基盤としたインド太平洋戦略を維持しており、中国の軍事的影響力拡大に警戒を強めている。一方、中国はオーストラリアとの対話を通じて、地域の安全保障問題における自国の立場を強調し、関係改善を図る意図があると考えられる。
今回の防衛対話が実際に軍事的な摩擦を軽減するのか、それとも対話が続く中で依然として緊張が高まるのかが、今後の焦点となる。特に、南シナ海や台湾問題における両国の立場の違いがどのように扱われるかが重要である。
【詳細】
中国とオーストラリアの防衛対話再開の背景と影響
1. 防衛対話の再開とその意義
2025年2月18日に報じられた通り、中国とオーストラリアの軍事当局は 「第23回中国・オーストラリア防衛戦略対話」 を北京で実施した。この対話は1997年に開始され、両国の軍事戦略・安全保障政策について協議する最も重要な場である。しかし、2020年以降、主に両国の関係悪化を理由に中断されていた。
今回の再開は 「戦略的意思疎通の強化」 を目的としており、軍事面での誤解や対立を回避するための枠組みを回復する試みといえる。特に、中国が南シナ海や台湾周辺での活動を活発化させ、オーストラリアが米国との同盟関係を深める中で、両国の対話の必要性が高まっていた。
2. 最近の緊張の高まり
防衛対話が再開された直前、南シナ海を巡る両国の対立が顕在化していた。
・中国の主張: 2025年2月、中国はオーストラリア軍機(P-8哨戒機)が南シナ海で「中国の領空を侵犯した」と非難した。
・オーストラリアの反論: これに対し、オーストラリア側は「国際法に基づく航行の自由の行使」として中国の主張を否定した。
さらに、2月15日には 中国海軍の駆逐艦Zunyiを含む艦隊がオーストラリア北東沖で活動していたことが確認されており、オーストラリア側の警戒感が強まっていた。 こうした状況の中で防衛対話が再開されたことは、単なる関係改善の一環ではなく、軍事的緊張を緩和し、衝突を防ぐための実務的な調整の意味合いが強い。
3. 双方の立場と今後の展望
(1)中国の狙い
・対話の場を通じてオーストラリアの軍事行動を抑制
→ オーストラリアは「AUKUS」(米英豪の安全保障枠組み)の下で 原子力潜水艦の導入 を進めており、中国はこれを強く警戒している。防衛対話を通じて、オーストラリア側の戦略を牽制する意図がある。
・地域の影響力強化
→ ASEAN諸国との関係強化を進める中で、オーストラリアとも一定の関係を維持し、西側諸国の結束を分断する狙いもある。
(2)オーストラリアの狙い
・偶発的な衝突の回避
→ 南シナ海や台湾周辺での中国軍の活動が活発化する中、誤解やエスカレーションを避けるために、軍事対話の再開は有益。
・独自の安全保障戦略の推進
→ オーストラリアは米国と同盟関係を維持しつつも、中国との経済的な結びつきを重視している。対話を通じて軍事的緊張を管理しつつ、経済関係の安定も模索している。
4. 今後の課題
(1)対話が実質的な緊張緩和につながるか不透明
・両国ともに防衛対話の再開を評価しているが、南シナ海や台湾問題を巡る根本的な立場の違いは解決されていない。
(2)オーストラリアの「AUKUS」政策との整合性
・オーストラリアはAUKUSの下で原子力潜水艦を導入予定だが、中国はこれを強く批判しており、将来的に対話が再び中断される可能性もある。
(3)米中対立の影響
・オーストラリアは米国と軍事的に緊密な関係にあるため、米中関係が悪化すれば、今回の防衛対話も影響を受ける可能性がある。
結論
今回の防衛対話の再開は、中国とオーストラリアの関係改善の兆しであるが、同時に南シナ海や台湾問題を巡る緊張が続く中での「必要な調整策」としての側面が強い。特に、中国の海洋進出とオーストラリアのAUKUS戦略の対立が今後も続くことを考えると、今回の対話が長期的な安定に繋がるかどうかは不透明である。
【要点】
中国とオーストラリアの防衛対話再開の背景と影響
1. 防衛対話の再開とその意義
・第23回中国・オーストラリア防衛戦略対話 を2025年2月18日に北京で開催。
・1997年に始まり、2019年を最後に2020年以降中断されていたが、5年ぶりに再開。
・戦略的意思疎通の強化 を目的とし、軍事的誤解や対立の回避を図る。
2. 最近の緊張の高まり
・中国の主張: オーストラリア軍機(P-8哨戒機)が 南シナ海で「中国の領空を侵犯」 したと非難。
・オーストラリアの反論: 「国際法に基づく航行の自由の行使」 として否定。
・中国海軍の駆逐艦Zunyi を含む艦隊がオーストラリア北東沖に出現し、オーストラリア側が警戒を強化。
3. 双方の立場と今後の展望
(1)中国の狙い
・オーストラリアの軍事行動を抑制(AUKUSによる原子力潜水艦導入の牽制)。
・地域の影響力強化(オーストラリアとの対話を維持し、西側の分断を狙う)。
(2)オーストラリアの狙い
・偶発的な軍事衝突の回避(南シナ海・台湾周辺での対立を管理)。
・独自の安全保障戦略の推進(米国と同盟を維持しつつ、中国との経済関係も考慮)。
4. 今後の課題
・対話が実質的な緊張緩和につながるか不透明(南シナ海や台湾問題の根本的対立は未解決)。
・オーストラリアのAUKUS政策との整合性(中国は原子力潜水艦導入を強く批判)。
・米中対立の影響(米中関係が悪化すれば、今回の対話も中断される可能性)。
5. 結論
・防衛対話の再開は関係改善の兆しだが、戦略的対立は依然続く。
・南シナ海・台湾問題、AUKUS戦略が今後の緊張要因として残る。
・今回の対話が長期的な安定につながるかは 不透明。
【引用・参照・底本】
Chinese and Australian militaries revive suspended defence talks as tensions rise SCMP 2025.02.18
https://www.scmp.com/news/china/military/article/3299139/chinese-and-australian-militaries-revive-suspended-defence-talks-tensions-escalate?utm_medium=email&utm_source=cm&utm_campaign=enlz-china&utm_content=20250218&tpcc=enlz-china&UUID=5147fda4-c483-4061-b936-ccd0eb7929aa&next_article_id=3299127&article_id_list=3299139,3299127,3299113,3299096,3298963,3299018,3299056,3299038&tc=5&CMCampaignID=060e2dec066ee1a5193e1817555b213d
この防衛対話の再開は、中国とオーストラリアの関係改善の一環でありながら、依然として続く戦略的緊張の中での動きである。特に、最近の南シナ海での対立が影を落としている。
オーストラリア側は中国との対話を重視しつつも、米国との同盟関係を基盤としたインド太平洋戦略を維持しており、中国の軍事的影響力拡大に警戒を強めている。一方、中国はオーストラリアとの対話を通じて、地域の安全保障問題における自国の立場を強調し、関係改善を図る意図があると考えられる。
今回の防衛対話が実際に軍事的な摩擦を軽減するのか、それとも対話が続く中で依然として緊張が高まるのかが、今後の焦点となる。特に、南シナ海や台湾問題における両国の立場の違いがどのように扱われるかが重要である。
【詳細】
中国とオーストラリアの防衛対話再開の背景と影響
1. 防衛対話の再開とその意義
2025年2月18日に報じられた通り、中国とオーストラリアの軍事当局は 「第23回中国・オーストラリア防衛戦略対話」 を北京で実施した。この対話は1997年に開始され、両国の軍事戦略・安全保障政策について協議する最も重要な場である。しかし、2020年以降、主に両国の関係悪化を理由に中断されていた。
今回の再開は 「戦略的意思疎通の強化」 を目的としており、軍事面での誤解や対立を回避するための枠組みを回復する試みといえる。特に、中国が南シナ海や台湾周辺での活動を活発化させ、オーストラリアが米国との同盟関係を深める中で、両国の対話の必要性が高まっていた。
2. 最近の緊張の高まり
防衛対話が再開された直前、南シナ海を巡る両国の対立が顕在化していた。
・中国の主張: 2025年2月、中国はオーストラリア軍機(P-8哨戒機)が南シナ海で「中国の領空を侵犯した」と非難した。
・オーストラリアの反論: これに対し、オーストラリア側は「国際法に基づく航行の自由の行使」として中国の主張を否定した。
さらに、2月15日には 中国海軍の駆逐艦Zunyiを含む艦隊がオーストラリア北東沖で活動していたことが確認されており、オーストラリア側の警戒感が強まっていた。 こうした状況の中で防衛対話が再開されたことは、単なる関係改善の一環ではなく、軍事的緊張を緩和し、衝突を防ぐための実務的な調整の意味合いが強い。
3. 双方の立場と今後の展望
(1)中国の狙い
・対話の場を通じてオーストラリアの軍事行動を抑制
→ オーストラリアは「AUKUS」(米英豪の安全保障枠組み)の下で 原子力潜水艦の導入 を進めており、中国はこれを強く警戒している。防衛対話を通じて、オーストラリア側の戦略を牽制する意図がある。
・地域の影響力強化
→ ASEAN諸国との関係強化を進める中で、オーストラリアとも一定の関係を維持し、西側諸国の結束を分断する狙いもある。
(2)オーストラリアの狙い
・偶発的な衝突の回避
→ 南シナ海や台湾周辺での中国軍の活動が活発化する中、誤解やエスカレーションを避けるために、軍事対話の再開は有益。
・独自の安全保障戦略の推進
→ オーストラリアは米国と同盟関係を維持しつつも、中国との経済的な結びつきを重視している。対話を通じて軍事的緊張を管理しつつ、経済関係の安定も模索している。
4. 今後の課題
(1)対話が実質的な緊張緩和につながるか不透明
・両国ともに防衛対話の再開を評価しているが、南シナ海や台湾問題を巡る根本的な立場の違いは解決されていない。
(2)オーストラリアの「AUKUS」政策との整合性
・オーストラリアはAUKUSの下で原子力潜水艦を導入予定だが、中国はこれを強く批判しており、将来的に対話が再び中断される可能性もある。
(3)米中対立の影響
・オーストラリアは米国と軍事的に緊密な関係にあるため、米中関係が悪化すれば、今回の防衛対話も影響を受ける可能性がある。
結論
今回の防衛対話の再開は、中国とオーストラリアの関係改善の兆しであるが、同時に南シナ海や台湾問題を巡る緊張が続く中での「必要な調整策」としての側面が強い。特に、中国の海洋進出とオーストラリアのAUKUS戦略の対立が今後も続くことを考えると、今回の対話が長期的な安定に繋がるかどうかは不透明である。
【要点】
中国とオーストラリアの防衛対話再開の背景と影響
1. 防衛対話の再開とその意義
・第23回中国・オーストラリア防衛戦略対話 を2025年2月18日に北京で開催。
・1997年に始まり、2019年を最後に2020年以降中断されていたが、5年ぶりに再開。
・戦略的意思疎通の強化 を目的とし、軍事的誤解や対立の回避を図る。
2. 最近の緊張の高まり
・中国の主張: オーストラリア軍機(P-8哨戒機)が 南シナ海で「中国の領空を侵犯」 したと非難。
・オーストラリアの反論: 「国際法に基づく航行の自由の行使」 として否定。
・中国海軍の駆逐艦Zunyi を含む艦隊がオーストラリア北東沖に出現し、オーストラリア側が警戒を強化。
3. 双方の立場と今後の展望
(1)中国の狙い
・オーストラリアの軍事行動を抑制(AUKUSによる原子力潜水艦導入の牽制)。
・地域の影響力強化(オーストラリアとの対話を維持し、西側の分断を狙う)。
(2)オーストラリアの狙い
・偶発的な軍事衝突の回避(南シナ海・台湾周辺での対立を管理)。
・独自の安全保障戦略の推進(米国と同盟を維持しつつ、中国との経済関係も考慮)。
4. 今後の課題
・対話が実質的な緊張緩和につながるか不透明(南シナ海や台湾問題の根本的対立は未解決)。
・オーストラリアのAUKUS政策との整合性(中国は原子力潜水艦導入を強く批判)。
・米中対立の影響(米中関係が悪化すれば、今回の対話も中断される可能性)。
5. 結論
・防衛対話の再開は関係改善の兆しだが、戦略的対立は依然続く。
・南シナ海・台湾問題、AUKUS戦略が今後の緊張要因として残る。
・今回の対話が長期的な安定につながるかは 不透明。
【引用・参照・底本】
Chinese and Australian militaries revive suspended defence talks as tensions rise SCMP 2025.02.18
https://www.scmp.com/news/china/military/article/3299139/chinese-and-australian-militaries-revive-suspended-defence-talks-tensions-escalate?utm_medium=email&utm_source=cm&utm_campaign=enlz-china&utm_content=20250218&tpcc=enlz-china&UUID=5147fda4-c483-4061-b936-ccd0eb7929aa&next_article_id=3299127&article_id_list=3299139,3299127,3299113,3299096,3298963,3299018,3299056,3299038&tc=5&CMCampaignID=060e2dec066ee1a5193e1817555b213d
インドとロシア:「相互兵站支援協定(RELOS: Reciprocal Exchange Of Logistics)」に署名 ― 2025年02月19日 20:02
【概要】
インドとロシアは、長らく交渉されていた「相互兵站支援協定(RELOS: Reciprocal Exchange Of Logistics)」に署名した。この協定により、両国は相互の港湾施設をより容易に利用できるようになり、共同軍事演習の機会が増加することが予想される。これにより、ロシアの「アジアへの軸足移動(Pivot to Asia)」は、中国中心からより多様化する形で進むことになる。
モディ首相とトランプ前大統領の首脳会談を受け、一部の観測筋はインドとロシアの関係が弱まる可能性を指摘していた。しかし、今回のRELOS締結により、こうした見方には根拠がないことが明らかになった。インドとロシアは、長年にわたり軍事協力を進めており、兵器の共同開発や共同演習を通じて戦略的パートナーシップを強化してきた。今回の合意も、その流れを継続するものといえる。
この協定の背景には、ロシアが中国への依存を過度に深めることを回避しつつ、アジアにおける影響力を拡大する戦略がある。また、米露間で進行中のウクライナ和平交渉も影響を与えている。最近の米露交渉では、両国がウクライナ和平に向けた作業部会の設置、互いの大使館機能の完全回復、経済協力の可能性について協議したとされる。仮にこれが進展すれば、新たな米露関係(「新デタント」)が形成され、ロシアの外交政策にも変化が生じる可能性がある。
この米露の動きは、インドにとっても重要な意味を持つ。ロシアと米国は、インドを中国への「部分的な対抗勢力」として活用したいという共通の利益を持っている。ロシアにとっては、中国への過度な依存を避ける手段であり、米国にとっては、中国のアジア大陸での影響力を抑制する戦略の一環である。インドの「多極外交戦略(Multi-Alignment Strategy)」は、このような大国間の競争の中で巧みにバランスを取ることを可能にしている。
さらに、ロシアとインドの協力は北極圏にも及ぶ可能性がある。ロシアのインド専門家アレクセイ・クプリヤノフによれば、RELOSの規定は北極圏における共同演習にも適用される可能性があるという。インドは、中国の北極進出に懸念を抱いており、ロシアとの協力を通じてこの地域でのプレゼンスを強化しようとしている。米国も、中国の北極進出を抑えたいという戦略的意図を持っており、ロシアとインドの協力には一定の理解を示すと考えられる。もし米露関係が改善し、「新デタント」が実現すれば、将来的にはロシア、インド、米国による三国間の北極圏での合同軍事演習も視野に入る可能性がある。
RELOSの締結は、単なるインド・ロシア間の軍事協力の強化にとどまらず、国際情勢全体の変化にも影響を与える可能性がある。米露関係の改善と連動すれば、インドを中心とした新たな安全保障枠組みが形成される可能性があり、世界的な勢力均衡の変化にもつながるかもしれない。たとえ三国間の軍事演習が実現しなくとも、今回の合意はインドとロシアの戦略的パートナーシップの強固さを示すものであり、最近のモディ・トランプ会談後に浮上した「インドとロシアの関係が弱まる」とする見解を否定する材料となる。
【詳細】
インドとロシアの軍事協力強化:RELOS協定の意義と影響
2025年2月18日、インドとロシアは長年にわたり交渉を続けてきた相互兵站交換協定(Reciprocal Exchange of Logistics:RELOS)を締結した。この協定により、両国は軍事演習や作戦行動の際に相互の港湾や補給施設をより容易に利用できるようになる。これによって、ロシア海軍のインド洋での活動が増加すると予想され、ロシアの「アジア重視政策(Pivot to Asia)」が従来の中国中心から多角的な方向へシフトすることが示唆される。
1. RELOS協定の具体的内容と意義
RELOS協定は、インドとロシアの軍事協力を強化する枠組みの一環として締結されたものであり、以下の点において戦略的重要性を持つ。
・相互の港湾・施設利用の円滑化
インド海軍とロシア海軍は、軍事演習や補給活動の際に相互の港を活用できるようになる。これにより、ロシアはインド洋での活動を拡大し、インドもロシアの北極圏基地を活用する可能性が高まる。
・軍事演習の拡大
インド洋でのロシア海軍の演習回数が増加することが予想される。また、インドとロシアは北極圏での共同軍事演習を実施する可能性も指摘されている。
・ロシアの「アジア重視政策」の多角化
ロシアは近年、中国への依存を低減する戦略を進めており、RELOS協定の締結はその一環と見なされる。インドを戦略的パートナーとすることで、経済・軍事の両面でよりバランスの取れた外交を展開できる。
2. インド・ロシア関係の継続的な強化
インドとロシアの関係について、一部の専門家は「インドが米国との関係を強化しているため、ロシアとの関係が弱まるのではないか」との懸念を示していた。しかし、今回のRELOS協定締結によって、こうした見方は否定されることとなった。インドとロシアの軍事協力は長年にわたり安定しており、以下の点からもその強固さが確認できる。
・長期的な防衛協力
両国は長年にわたり兵器の共同開発や軍事演習を行ってきた。特に、BrahMos(ブラモス)超音速巡航ミサイルの共同開発は象徴的なプロジェクトであり、近年ではフィリピンへの輸出も進められている。
・多国間協力の拡大
インドとロシアは二国間協力だけでなく、上海協力機構(SCO)やBRICSといった枠組みを通じて、多国間の安全保障協力を進めている。
・エネルギー協力の強化
ロシアはインドに対してエネルギー供給を拡大しており、ロシア産原油の輸出量は増加傾向にある。
3. RELOS協定と米ロ関係の変化
ロシアと米国は現在、ウクライナ問題を巡る交渉を開始しており、関係改善の兆しが見え始めている。**「新デタント(New Détente)」**と呼ばれるこの外交プロセスが成功すれば、ロシア・米国・インドの関係に以下のような変化が生じる可能性がある。
・ロシアのエネルギー輸出戦略の変化
ロシアが米国との関係を改善し、中国へのエネルギー供給を縮小する代わりに、インド・日本・欧米への輸出を増やす可能性がある。
・インドのバランス外交の強化
インドはこれまでも米国・ロシア・中国との関係を慎重に調整しながら独自の外交路線を維持してきた。ロシアと米国が協調することで、インドがより柔軟に外交政策を展開できるようになる。
・北極圏での協力拡大
ロシアと米国が対立を緩和し、エネルギーや軍事面での協力を進める中で、インドが北極圏での共同演習やエネルギー投資に参加する可能性がある。
4. 今後の展望
RELOS協定の締結は、単なる軍事協力の拡大にとどまらず、インド・ロシア・米国の関係全体にも影響を及ぼす可能性がある。特に、以下のシナリオが考えられる。
・インド洋と北極圏での合同軍事演習の実施
ロシアとインドの海軍演習が拡大し、将来的には米国も参加する形での多国間演習が行われる可能性がある。
・インドのエネルギー投資の拡大
インドがロシアと米国のエネルギー協力に積極的に関与し、北極圏の資源開発に関与することが予想される。
・ロシアの「アジア重視政策」のさらなる展開
ロシアはインドだけでなく、日本や東南アジア諸国とも関係を強化し、中国への依存を低減する戦略を推進するとみられる。
5. 結論
今回のRELOS協定の締結により、インドとロシアの戦略的パートナーシップが強固であることが再確認された。これは単なる軍事協力の枠を超え、エネルギー・経済・多国間協力にも影響を及ぼす重要な動きである。さらに、米ロ関係の改善が進めば、インドはより柔軟に国際関係を調整し、バランスの取れた外交戦略を維持できるようになる。
このように、RELOS協定はインド・ロシア関係の強化を示すだけでなく、国際秩序の変動にも影響を与える可能性があり、今後の展開が注目される。
【要点】
インドとロシアのRELOS協定の意義と影響
1. RELOS協定の概要
・正式名称:Reciprocal Exchange of Logistics(相互兵站交換協定)
・目的:軍事活動における港湾・補給施設の相互利用
・締結日:2025年2月18日
2. 協定の主な内容
・相互の港湾・施設利用の円滑化
⇨ ロシア海軍のインド洋での活動拡大
⇨ インド海軍のロシア北極圏基地へのアクセス向上
・軍事演習の拡大
⇨ インド洋と北極圏での合同演習の可能性
・ロシアの「アジア重視政策」の多角化
⇨ 中国依存を低減し、インドとの戦略的協力を強化
3. インド・ロシア関係の強化
・長期的な防衛協力の継続
⇨ BrahMos(ブラモス)超音速巡航ミサイルの共同開発
・多国間協力の拡大
⇨ 上海協力機構(SCO)、BRICSでの協力深化
・エネルギー協力の強化
⇨ ロシア産原油のインド向け輸出増加
4. 米ロ関係の変化との関連
・「新デタント(New Détente)」の可能性
⇨ ロシアと米国の関係改善による国際秩序の変化
・ロシアのエネルギー戦略の変化
⇨ 中国依存を減らし、インド・日本・欧米との協力強化
・インドのバランス外交の強化
⇨ 米国・ロシア双方との関係を維持しながら戦略的自立を確保
5. 今後の展望
・インド洋・北極圏での合同軍事演習
・インドのロシア・米国とのエネルギー協力拡大
・ロシアのアジア戦略の多角化(日本・東南アジアとの関係強化)
6. 結論
・RELOS協定はインド・ロシアの戦略的協力を強化する重要な動き
・米ロ関係の変化がインドの外交戦略に影響を与える可能性
・国際秩序の変動においてインドの役割がより重要に
【引用・参照・底本】
The Latest Indo-Russo Military Pact Confirms The Strength Of Their Strategic Partnership Andrew Korybko's Newsletter 2025.02.19
https://korybko.substack.com/p/the-latest-indo-russo-military-pact
インドとロシアは、長らく交渉されていた「相互兵站支援協定(RELOS: Reciprocal Exchange Of Logistics)」に署名した。この協定により、両国は相互の港湾施設をより容易に利用できるようになり、共同軍事演習の機会が増加することが予想される。これにより、ロシアの「アジアへの軸足移動(Pivot to Asia)」は、中国中心からより多様化する形で進むことになる。
モディ首相とトランプ前大統領の首脳会談を受け、一部の観測筋はインドとロシアの関係が弱まる可能性を指摘していた。しかし、今回のRELOS締結により、こうした見方には根拠がないことが明らかになった。インドとロシアは、長年にわたり軍事協力を進めており、兵器の共同開発や共同演習を通じて戦略的パートナーシップを強化してきた。今回の合意も、その流れを継続するものといえる。
この協定の背景には、ロシアが中国への依存を過度に深めることを回避しつつ、アジアにおける影響力を拡大する戦略がある。また、米露間で進行中のウクライナ和平交渉も影響を与えている。最近の米露交渉では、両国がウクライナ和平に向けた作業部会の設置、互いの大使館機能の完全回復、経済協力の可能性について協議したとされる。仮にこれが進展すれば、新たな米露関係(「新デタント」)が形成され、ロシアの外交政策にも変化が生じる可能性がある。
この米露の動きは、インドにとっても重要な意味を持つ。ロシアと米国は、インドを中国への「部分的な対抗勢力」として活用したいという共通の利益を持っている。ロシアにとっては、中国への過度な依存を避ける手段であり、米国にとっては、中国のアジア大陸での影響力を抑制する戦略の一環である。インドの「多極外交戦略(Multi-Alignment Strategy)」は、このような大国間の競争の中で巧みにバランスを取ることを可能にしている。
さらに、ロシアとインドの協力は北極圏にも及ぶ可能性がある。ロシアのインド専門家アレクセイ・クプリヤノフによれば、RELOSの規定は北極圏における共同演習にも適用される可能性があるという。インドは、中国の北極進出に懸念を抱いており、ロシアとの協力を通じてこの地域でのプレゼンスを強化しようとしている。米国も、中国の北極進出を抑えたいという戦略的意図を持っており、ロシアとインドの協力には一定の理解を示すと考えられる。もし米露関係が改善し、「新デタント」が実現すれば、将来的にはロシア、インド、米国による三国間の北極圏での合同軍事演習も視野に入る可能性がある。
RELOSの締結は、単なるインド・ロシア間の軍事協力の強化にとどまらず、国際情勢全体の変化にも影響を与える可能性がある。米露関係の改善と連動すれば、インドを中心とした新たな安全保障枠組みが形成される可能性があり、世界的な勢力均衡の変化にもつながるかもしれない。たとえ三国間の軍事演習が実現しなくとも、今回の合意はインドとロシアの戦略的パートナーシップの強固さを示すものであり、最近のモディ・トランプ会談後に浮上した「インドとロシアの関係が弱まる」とする見解を否定する材料となる。
【詳細】
インドとロシアの軍事協力強化:RELOS協定の意義と影響
2025年2月18日、インドとロシアは長年にわたり交渉を続けてきた相互兵站交換協定(Reciprocal Exchange of Logistics:RELOS)を締結した。この協定により、両国は軍事演習や作戦行動の際に相互の港湾や補給施設をより容易に利用できるようになる。これによって、ロシア海軍のインド洋での活動が増加すると予想され、ロシアの「アジア重視政策(Pivot to Asia)」が従来の中国中心から多角的な方向へシフトすることが示唆される。
1. RELOS協定の具体的内容と意義
RELOS協定は、インドとロシアの軍事協力を強化する枠組みの一環として締結されたものであり、以下の点において戦略的重要性を持つ。
・相互の港湾・施設利用の円滑化
インド海軍とロシア海軍は、軍事演習や補給活動の際に相互の港を活用できるようになる。これにより、ロシアはインド洋での活動を拡大し、インドもロシアの北極圏基地を活用する可能性が高まる。
・軍事演習の拡大
インド洋でのロシア海軍の演習回数が増加することが予想される。また、インドとロシアは北極圏での共同軍事演習を実施する可能性も指摘されている。
・ロシアの「アジア重視政策」の多角化
ロシアは近年、中国への依存を低減する戦略を進めており、RELOS協定の締結はその一環と見なされる。インドを戦略的パートナーとすることで、経済・軍事の両面でよりバランスの取れた外交を展開できる。
2. インド・ロシア関係の継続的な強化
インドとロシアの関係について、一部の専門家は「インドが米国との関係を強化しているため、ロシアとの関係が弱まるのではないか」との懸念を示していた。しかし、今回のRELOS協定締結によって、こうした見方は否定されることとなった。インドとロシアの軍事協力は長年にわたり安定しており、以下の点からもその強固さが確認できる。
・長期的な防衛協力
両国は長年にわたり兵器の共同開発や軍事演習を行ってきた。特に、BrahMos(ブラモス)超音速巡航ミサイルの共同開発は象徴的なプロジェクトであり、近年ではフィリピンへの輸出も進められている。
・多国間協力の拡大
インドとロシアは二国間協力だけでなく、上海協力機構(SCO)やBRICSといった枠組みを通じて、多国間の安全保障協力を進めている。
・エネルギー協力の強化
ロシアはインドに対してエネルギー供給を拡大しており、ロシア産原油の輸出量は増加傾向にある。
3. RELOS協定と米ロ関係の変化
ロシアと米国は現在、ウクライナ問題を巡る交渉を開始しており、関係改善の兆しが見え始めている。**「新デタント(New Détente)」**と呼ばれるこの外交プロセスが成功すれば、ロシア・米国・インドの関係に以下のような変化が生じる可能性がある。
・ロシアのエネルギー輸出戦略の変化
ロシアが米国との関係を改善し、中国へのエネルギー供給を縮小する代わりに、インド・日本・欧米への輸出を増やす可能性がある。
・インドのバランス外交の強化
インドはこれまでも米国・ロシア・中国との関係を慎重に調整しながら独自の外交路線を維持してきた。ロシアと米国が協調することで、インドがより柔軟に外交政策を展開できるようになる。
・北極圏での協力拡大
ロシアと米国が対立を緩和し、エネルギーや軍事面での協力を進める中で、インドが北極圏での共同演習やエネルギー投資に参加する可能性がある。
4. 今後の展望
RELOS協定の締結は、単なる軍事協力の拡大にとどまらず、インド・ロシア・米国の関係全体にも影響を及ぼす可能性がある。特に、以下のシナリオが考えられる。
・インド洋と北極圏での合同軍事演習の実施
ロシアとインドの海軍演習が拡大し、将来的には米国も参加する形での多国間演習が行われる可能性がある。
・インドのエネルギー投資の拡大
インドがロシアと米国のエネルギー協力に積極的に関与し、北極圏の資源開発に関与することが予想される。
・ロシアの「アジア重視政策」のさらなる展開
ロシアはインドだけでなく、日本や東南アジア諸国とも関係を強化し、中国への依存を低減する戦略を推進するとみられる。
5. 結論
今回のRELOS協定の締結により、インドとロシアの戦略的パートナーシップが強固であることが再確認された。これは単なる軍事協力の枠を超え、エネルギー・経済・多国間協力にも影響を及ぼす重要な動きである。さらに、米ロ関係の改善が進めば、インドはより柔軟に国際関係を調整し、バランスの取れた外交戦略を維持できるようになる。
このように、RELOS協定はインド・ロシア関係の強化を示すだけでなく、国際秩序の変動にも影響を与える可能性があり、今後の展開が注目される。
【要点】
インドとロシアのRELOS協定の意義と影響
1. RELOS協定の概要
・正式名称:Reciprocal Exchange of Logistics(相互兵站交換協定)
・目的:軍事活動における港湾・補給施設の相互利用
・締結日:2025年2月18日
2. 協定の主な内容
・相互の港湾・施設利用の円滑化
⇨ ロシア海軍のインド洋での活動拡大
⇨ インド海軍のロシア北極圏基地へのアクセス向上
・軍事演習の拡大
⇨ インド洋と北極圏での合同演習の可能性
・ロシアの「アジア重視政策」の多角化
⇨ 中国依存を低減し、インドとの戦略的協力を強化
3. インド・ロシア関係の強化
・長期的な防衛協力の継続
⇨ BrahMos(ブラモス)超音速巡航ミサイルの共同開発
・多国間協力の拡大
⇨ 上海協力機構(SCO)、BRICSでの協力深化
・エネルギー協力の強化
⇨ ロシア産原油のインド向け輸出増加
4. 米ロ関係の変化との関連
・「新デタント(New Détente)」の可能性
⇨ ロシアと米国の関係改善による国際秩序の変化
・ロシアのエネルギー戦略の変化
⇨ 中国依存を減らし、インド・日本・欧米との協力強化
・インドのバランス外交の強化
⇨ 米国・ロシア双方との関係を維持しながら戦略的自立を確保
5. 今後の展望
・インド洋・北極圏での合同軍事演習
・インドのロシア・米国とのエネルギー協力拡大
・ロシアのアジア戦略の多角化(日本・東南アジアとの関係強化)
6. 結論
・RELOS協定はインド・ロシアの戦略的協力を強化する重要な動き
・米ロ関係の変化がインドの外交戦略に影響を与える可能性
・国際秩序の変動においてインドの役割がより重要に
【引用・参照・底本】
The Latest Indo-Russo Military Pact Confirms The Strength Of Their Strategic Partnership Andrew Korybko's Newsletter 2025.02.19
https://korybko.substack.com/p/the-latest-indo-russo-military-pact