「ロシアが中国を裏切る」との主張を否定 ― 2025年02月28日 19:49
【概要】
ロシアと米国が「新デタント(New Détente)」を進めていると主張している。その根拠として、国連における両国の協調的な外交行動を挙げている。具体的には、米国がロシアの特別軍事作戦を非難する国連総会決議を拒否し、ロシアが米国主導のより中立的な安全保障理事会決議を支持したことがある。このような動きは、プーチン大統領とトランプ大統領の間で調整されたものであり、両国が関係改善に取り組んでいる証拠であると分析している。
また、トランプ大統領とプーチン大統領は、経済協力の可能性についても前向きな発言をしており、特にアルミニウムやレアアース分野での協力が示唆されている。これに加え、リヤドでの会合では北極圏のエネルギー開発についても議論が行われたとされている。
こうした動きは米国によるロシアへの制裁緩和やエネルギー協力を含む一連の妥協の一環であり、その目的はロシアを中国との過度な協力から遠ざけることにあると分析している。しかし、ロシアが中国と敵対するわけではなく、むしろ米国との交渉を通じて自国の利益を確保し、世界の勢力均衡を管理しようとしていると述べている。
さらに、トランプ大統領が国防予算の半減を提案し、プーチン大統領もこれに同調した点を強調している。この提案は、中国にも同様の措置を促す可能性があるとし、ロシアは米中間の緊張緩和にも関与しようとしていると解釈されている。
一方、中国やイランの対応については不確定要素が多いと指摘しており、特に親中国的なメディアが「新デタント」に対して否定的な見解を示す可能性を指摘している。ただし、中国政府は公式にはこの動きを支持しているものの、実際には警戒している可能性があるとしている。
結論として、記事はロシアと米国の関係改善が進めば、中国とイランも同様の交渉に応じるかどうかの選択を迫られることになると主張している。もし両国がこれを拒否すれば、ロシアの対中・対イラン政策も再調整される可能性があるとしている。
【詳細】
ロシアとアメリカが国連において見せた外交上の動きが、新たなデタント(緊張緩和)への本格的な取り組みであることを示していると主張している。「新デタント」とは、冷戦時代の米ソ間のデタントに類似した形で、現在の新冷戦においてロシアとアメリカが関係改善を図る試みを指す。
国連での動きとその意義
アメリカがロシアと共に、国連総会でロシアの特別軍事作戦を非難する決議に反対票を投じ、続いてロシアが国連安全保障理事会でアメリカのより中立的な決議を支持した。この外交上の動きは、プーチンとトランプの間で事前に調整されたものであり、両国が「新デタント」に取り組んでいることを世界に示す狙いがあったと考えられる。
経済協力の可能性
これと並行して、トランプとプーチンは経済関係の強化についても発言している。トランプは「大規模な経済取引」に期待を持たせ、プーチンはアルミニウムやレアアース(希土類)の分野での協力を示唆した。さらに、両国の代表者がリヤドで北極圏におけるエネルギー協力について協議したことも、この新たな関係構築の一環であるとされる。
「創造的エネルギー外交」とその影響
2025年1月には、ロシアとアメリカの「創造的エネルギー外交」が包括的な取引の基盤になり得ると予測されていた。
すでに、以下のような動きが進行しているとされる。
・アメリカがNATO加盟国のウクライナ駐留部隊に対して「集団的自衛権(NATO条約第5条)」を適用しないと明言
・ウクライナのNATO加盟を否定
・ロシアとのエネルギー協力の模索
・対ロ制裁の一部解除の可能性
これらの要素は、ロシアがアメリカとの関係改善を進める対価として求める譲歩の一部である可能性がある。
中国との関係への影響
一部の論者が指摘する「ロシアがアメリカに取り込まれ、中国を裏切る」との見方を、筆者は否定している。
むしろ、トランプの狙いは、ロシアに対して中国との資源・軍事協力を制限させ、中国の戦略的優位性を低下させることにあるとされる。
・トランプの視点:ロシアが中国の台頭を加速させるのを防ぐことで、米中の力の均衡を維持し、有利な交渉条件を得る
・プーチンの視点:アメリカからの圧力緩和と、投資を通じた経済的利益の獲得
このように、ロシアとアメリカのデタントは、中国との関係にも影響を及ぼすが、ロシアが完全にアメリカ側に寝返るわけではないという立場である。
国内の反発と「情報戦」
ロシアとアメリカ両国内には、「新デタント」に反対する勢力が存在するとされる。
・アメリカでは、欧州の一部国家や国内の「ディープステート(影の政府)」がこれに反対
・ロシアでは、プーチンが「新デタント」に否定的な人物をメディアや国際会議から排除する可能性
特に、ロシア政府系メディアの論調がアメリカに対して軟化すれば、それに影響を受けるオルタナティブ・メディア(Alt-Media)の姿勢も変化する可能性がある。
一方、中国寄りのメディアはこの動きを警戒し、「ロシアがアメリカに売り渡された」といった情報を流す可能性がある。
イランへの波及
イランを中心とする「レジスタンス勢力」(親イラン武装勢力)は、ロシアがイスラエルとの対立に関与しなかったことに不満を抱いているとされる。
このため、中国寄りのメディアがロシア批判を強めれば、イランもそれに同調し、オルタナティブ・メディアが中国・イラン寄りとロシア寄りに分裂する可能性がある。
しかし、もしイランがアメリカと「新デタント」に進むなら、ロシアと同様にそのメディア戦略を変更する可能性もある。
「新デタント」の成否と今後の展望
「新デタント」が成功すれば、中国とイランもアメリカと交渉に入るかどうかの選択を迫られる。
ロシアとアメリカの外交調整が進めば、以下のような展開が予想される。
・中国とイランがアメリカと交渉するか、それとも対抗を続けるか
・ロシアはその動向を見極め、戦略を調整
特に、プーチンはトランプの「国防費を半減する」という提案に賛同し、中国にも同様の提案を行ったとされる。
これは、ロシアがアメリカとだけでなく、中国とアメリカの関係改善も仲介する意図があることを示唆している。
まとめ
この分析は、「ロシアが中国を裏切る」との主張を否定し、むしろロシアとアメリカの協力が中国やイランにも影響を及ぼし、最終的にはより安定した国際関係を形成する可能性があるとする。
「新デタント」の行方は、中国やイランの対応次第であり、これが成功すれば世界のパワーバランスが大きく変わる可能性がある。
【要点】
「新デタント」の分析(ロシア・アメリカ関係)
1. 国連での動きと外交戦略
・アメリカがロシアの特別軍事作戦を非難する決議に反対票を投じる
・ロシアがアメリカのより中立的な決議を支持
・これはプーチンとトランプの間で調整された動きとされる
・両国が「新デタント」に取り組んでいることを示す狙い
2. 経済協力の可能性
・トランプは「大規模な経済取引」に期待を持たせる
・プーチンはアルミニウムやレアアース分野での協力を示唆
・リヤドで北極圏エネルギー協力について協議
3. 創造的エネルギー外交
・ロシアとアメリカの包括的な取引の基盤となる可能性
・進行中の動き
⇨ アメリカがウクライナ駐留部隊へのNATO第5条適用を否定
⇨ ウクライナのNATO加盟を否定
⇨ 対ロ制裁の一部解除の可能性
4. 中国との関係への影響
・「ロシアがアメリカに取り込まれ、中国を裏切る」説を否定
・トランプの狙い:ロシアに中国への資源・軍事協力を制限させる
・プーチンの狙い:アメリカからの圧力緩和と経済的利益
5. 国内の反発と情報戦
・アメリカ:欧州の一部国家や「ディープステート」が反対
・ロシア:プーチンが反対派をメディアや国際会議から排除する可能性
・ロシア政府系メディアの論調が変われば、オルタナティブ・メディアも変化
・中国寄りのメディアが「ロシアがアメリカに売り渡された」と批判する可能性
6. イランへの波及
・「レジスタンス勢力」(親イラン武装勢力)はロシアの中立姿勢に不満
・中国寄りメディアがロシア批判を強めると、イランも同調する可能性
・もしイランがアメリカと交渉すれば、戦略変更の可能性
7. 新デタントの成否と今後の展望
・「新デタント」成功で、中国とイランもアメリカとの交渉を迫られる
・ロシアとアメリカの調整が進めば、国際関係が変化
・プーチンはトランプの「国防費半減」提案を支持し、中国にも働きかけ
8. 結論
・「ロシアが中国を裏切る」説を否定
・ロシアとアメリカの協力が中国やイランにも影響を及ぼす
・成功すれば、国際関係のパワーバランスが大きく変化する可能性
【引用・参照・底本】
Russia & The US’ Diplomatic Choreography At The UN Shows Their Commitment To A “New Détente” Andrew Korybko's Newsletter 2025.02.25
https://korybko.substack.com/p/russia-and-the-us-diplomatic-choreography?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=157874519&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ロシアと米国が「新デタント(New Détente)」を進めていると主張している。その根拠として、国連における両国の協調的な外交行動を挙げている。具体的には、米国がロシアの特別軍事作戦を非難する国連総会決議を拒否し、ロシアが米国主導のより中立的な安全保障理事会決議を支持したことがある。このような動きは、プーチン大統領とトランプ大統領の間で調整されたものであり、両国が関係改善に取り組んでいる証拠であると分析している。
また、トランプ大統領とプーチン大統領は、経済協力の可能性についても前向きな発言をしており、特にアルミニウムやレアアース分野での協力が示唆されている。これに加え、リヤドでの会合では北極圏のエネルギー開発についても議論が行われたとされている。
こうした動きは米国によるロシアへの制裁緩和やエネルギー協力を含む一連の妥協の一環であり、その目的はロシアを中国との過度な協力から遠ざけることにあると分析している。しかし、ロシアが中国と敵対するわけではなく、むしろ米国との交渉を通じて自国の利益を確保し、世界の勢力均衡を管理しようとしていると述べている。
さらに、トランプ大統領が国防予算の半減を提案し、プーチン大統領もこれに同調した点を強調している。この提案は、中国にも同様の措置を促す可能性があるとし、ロシアは米中間の緊張緩和にも関与しようとしていると解釈されている。
一方、中国やイランの対応については不確定要素が多いと指摘しており、特に親中国的なメディアが「新デタント」に対して否定的な見解を示す可能性を指摘している。ただし、中国政府は公式にはこの動きを支持しているものの、実際には警戒している可能性があるとしている。
結論として、記事はロシアと米国の関係改善が進めば、中国とイランも同様の交渉に応じるかどうかの選択を迫られることになると主張している。もし両国がこれを拒否すれば、ロシアの対中・対イラン政策も再調整される可能性があるとしている。
【詳細】
ロシアとアメリカが国連において見せた外交上の動きが、新たなデタント(緊張緩和)への本格的な取り組みであることを示していると主張している。「新デタント」とは、冷戦時代の米ソ間のデタントに類似した形で、現在の新冷戦においてロシアとアメリカが関係改善を図る試みを指す。
国連での動きとその意義
アメリカがロシアと共に、国連総会でロシアの特別軍事作戦を非難する決議に反対票を投じ、続いてロシアが国連安全保障理事会でアメリカのより中立的な決議を支持した。この外交上の動きは、プーチンとトランプの間で事前に調整されたものであり、両国が「新デタント」に取り組んでいることを世界に示す狙いがあったと考えられる。
経済協力の可能性
これと並行して、トランプとプーチンは経済関係の強化についても発言している。トランプは「大規模な経済取引」に期待を持たせ、プーチンはアルミニウムやレアアース(希土類)の分野での協力を示唆した。さらに、両国の代表者がリヤドで北極圏におけるエネルギー協力について協議したことも、この新たな関係構築の一環であるとされる。
「創造的エネルギー外交」とその影響
2025年1月には、ロシアとアメリカの「創造的エネルギー外交」が包括的な取引の基盤になり得ると予測されていた。
すでに、以下のような動きが進行しているとされる。
・アメリカがNATO加盟国のウクライナ駐留部隊に対して「集団的自衛権(NATO条約第5条)」を適用しないと明言
・ウクライナのNATO加盟を否定
・ロシアとのエネルギー協力の模索
・対ロ制裁の一部解除の可能性
これらの要素は、ロシアがアメリカとの関係改善を進める対価として求める譲歩の一部である可能性がある。
中国との関係への影響
一部の論者が指摘する「ロシアがアメリカに取り込まれ、中国を裏切る」との見方を、筆者は否定している。
むしろ、トランプの狙いは、ロシアに対して中国との資源・軍事協力を制限させ、中国の戦略的優位性を低下させることにあるとされる。
・トランプの視点:ロシアが中国の台頭を加速させるのを防ぐことで、米中の力の均衡を維持し、有利な交渉条件を得る
・プーチンの視点:アメリカからの圧力緩和と、投資を通じた経済的利益の獲得
このように、ロシアとアメリカのデタントは、中国との関係にも影響を及ぼすが、ロシアが完全にアメリカ側に寝返るわけではないという立場である。
国内の反発と「情報戦」
ロシアとアメリカ両国内には、「新デタント」に反対する勢力が存在するとされる。
・アメリカでは、欧州の一部国家や国内の「ディープステート(影の政府)」がこれに反対
・ロシアでは、プーチンが「新デタント」に否定的な人物をメディアや国際会議から排除する可能性
特に、ロシア政府系メディアの論調がアメリカに対して軟化すれば、それに影響を受けるオルタナティブ・メディア(Alt-Media)の姿勢も変化する可能性がある。
一方、中国寄りのメディアはこの動きを警戒し、「ロシアがアメリカに売り渡された」といった情報を流す可能性がある。
イランへの波及
イランを中心とする「レジスタンス勢力」(親イラン武装勢力)は、ロシアがイスラエルとの対立に関与しなかったことに不満を抱いているとされる。
このため、中国寄りのメディアがロシア批判を強めれば、イランもそれに同調し、オルタナティブ・メディアが中国・イラン寄りとロシア寄りに分裂する可能性がある。
しかし、もしイランがアメリカと「新デタント」に進むなら、ロシアと同様にそのメディア戦略を変更する可能性もある。
「新デタント」の成否と今後の展望
「新デタント」が成功すれば、中国とイランもアメリカと交渉に入るかどうかの選択を迫られる。
ロシアとアメリカの外交調整が進めば、以下のような展開が予想される。
・中国とイランがアメリカと交渉するか、それとも対抗を続けるか
・ロシアはその動向を見極め、戦略を調整
特に、プーチンはトランプの「国防費を半減する」という提案に賛同し、中国にも同様の提案を行ったとされる。
これは、ロシアがアメリカとだけでなく、中国とアメリカの関係改善も仲介する意図があることを示唆している。
まとめ
この分析は、「ロシアが中国を裏切る」との主張を否定し、むしろロシアとアメリカの協力が中国やイランにも影響を及ぼし、最終的にはより安定した国際関係を形成する可能性があるとする。
「新デタント」の行方は、中国やイランの対応次第であり、これが成功すれば世界のパワーバランスが大きく変わる可能性がある。
【要点】
「新デタント」の分析(ロシア・アメリカ関係)
1. 国連での動きと外交戦略
・アメリカがロシアの特別軍事作戦を非難する決議に反対票を投じる
・ロシアがアメリカのより中立的な決議を支持
・これはプーチンとトランプの間で調整された動きとされる
・両国が「新デタント」に取り組んでいることを示す狙い
2. 経済協力の可能性
・トランプは「大規模な経済取引」に期待を持たせる
・プーチンはアルミニウムやレアアース分野での協力を示唆
・リヤドで北極圏エネルギー協力について協議
3. 創造的エネルギー外交
・ロシアとアメリカの包括的な取引の基盤となる可能性
・進行中の動き
⇨ アメリカがウクライナ駐留部隊へのNATO第5条適用を否定
⇨ ウクライナのNATO加盟を否定
⇨ 対ロ制裁の一部解除の可能性
4. 中国との関係への影響
・「ロシアがアメリカに取り込まれ、中国を裏切る」説を否定
・トランプの狙い:ロシアに中国への資源・軍事協力を制限させる
・プーチンの狙い:アメリカからの圧力緩和と経済的利益
5. 国内の反発と情報戦
・アメリカ:欧州の一部国家や「ディープステート」が反対
・ロシア:プーチンが反対派をメディアや国際会議から排除する可能性
・ロシア政府系メディアの論調が変われば、オルタナティブ・メディアも変化
・中国寄りのメディアが「ロシアがアメリカに売り渡された」と批判する可能性
6. イランへの波及
・「レジスタンス勢力」(親イラン武装勢力)はロシアの中立姿勢に不満
・中国寄りメディアがロシア批判を強めると、イランも同調する可能性
・もしイランがアメリカと交渉すれば、戦略変更の可能性
7. 新デタントの成否と今後の展望
・「新デタント」成功で、中国とイランもアメリカとの交渉を迫られる
・ロシアとアメリカの調整が進めば、国際関係が変化
・プーチンはトランプの「国防費半減」提案を支持し、中国にも働きかけ
8. 結論
・「ロシアが中国を裏切る」説を否定
・ロシアとアメリカの協力が中国やイランにも影響を及ぼす
・成功すれば、国際関係のパワーバランスが大きく変化する可能性
【引用・参照・底本】
Russia & The US’ Diplomatic Choreography At The UN Shows Their Commitment To A “New Détente” Andrew Korybko's Newsletter 2025.02.25
https://korybko.substack.com/p/russia-and-the-us-diplomatic-choreography?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=157874519&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email