「コンステレーション級」:コスト超過、設計の混乱、信頼性の低下といった問題に直面2025年04月08日 20:01

Ainovaで作成
【概要】

 アメリカ海軍の最新フリゲート艦プログラムである「コンステレーション級」は、過去の主要な艦船建造プロジェクトと同様に、コスト超過、設計の混乱、信頼性の低下といった問題に直面している。2025年4月1日、ガブリエル・ホンラダによる報告によれば、アメリカ政府監査局(GAO)は、リトラル・コンバット・シップ(LCS)やズムウォルト級駆逐艦(DDG 1000)の問題を繰り返さないとするアメリカ海軍の再三の声明にもかかわらず、コンステレーション級フリゲート(FFG 62)が同様の取得失敗を繰り返していると指摘した。

 これらの問題は、アメリカ海軍が安定した設計を確保する前に艦船の建造を始めたことに起因している。設計の完成度が過大に見積もられたため、最初の艦船の建造には3年の遅れが生じ、設計が未完成であるにもかかわらず34億ドルが投入された。LCSやDDG 1000のように、未成熟な技術や不安定な要件がユニットコストを大幅に引き上げる結果となり、今回も同様のリスクが生じている。

 コンステレーション級フリゲートは、1970年代のオリバー・ハザード・ペリー級フリゲートに似た汎用の海軍戦闘艦として構想されており、未経験の技術を導入せず、既存のアメリカ海軍のシステムに依存することでコスト削減を図る方針が取られている。しかし、設計上の未完成部分や過小評価が原因で、艦船の重量が10%を超えて増加し、設計変更を余儀なくされた。

 これにより、艦船の速度要件を満たせなくなる懸念が生じ、海軍は速度の削減を検討している。重量の増加は、今後のアップグレードにも影響を及ぼす可能性があり、アメリカ海軍のキャリアや駆逐艦と連携する能力に影響を与える可能性がある。

 さらに、コンステレーション級フリゲートは、対空、対水上、対潜水、電磁戦争といった多任務に対応できるプラットフォームとして設計されており、独立した運用やキャリアストライクグループ、海上戦闘部隊(SAG)、同盟国の海軍編成内での運用が可能であるとされている。しかし、アメリカの造船能力はコンステレーション級プログラムの要求を満たしておらず、設計の不安定性や遅延は艦隊の運用計画に不確実性をもたらしている。

 GAOの2024年5月の報告書は、コンステレーション級フリゲートの設計における不安定性と遅延が、艦隊計画における運用レベルの不確実性を引き起こしていることを指摘している。また、FPG-62の初艦は約36ヶ月遅れており、設計作業の未完了が原因であることが報告されている。この遅延は、第二次世界大戦以降見られなかったような「異常な状況」とされており、アメリカ海軍の予測される調達率の達成不能が、戦闘司令官のアクセスや艦隊の編成計画を複雑にしている。

 それにもかかわらず、アメリカ海軍はコンステレーション級の追求を続けており、特に中国の海軍力が太平洋で増大している中で、アメリカの艦隊力を再構築する必要性が強調されている。中国人民解放軍海軍(PLAN)は、370隻以上の艦船と潜水艦を擁し、その中には140隻以上の主要な水上戦闘艦が含まれている。これに対し、コンステレーション級はまだ建造中であり、計画が遅れている状況である。

 中国は、アメリカ海軍のコンステレーション級に対し、Luohe(ロウホ)という新型のジアンカイIII級フリゲート艦(タイプ054B)を既に配備しており、この艦は前型よりも優れたステルス性能、火力、技術を備えていると報告されている。このフリゲート艦は、垂直発射システム(VLS)や先進的なAESAレーダー、拡張された対潜水戦能力を搭載しており、PLANの戦力向上を示している。

 一方、アメリカのコンステレーション級フリゲートは、建造の遅れとコストの超過によって、アメリカ海軍の造船能力の衰退を象徴する存在となる恐れがある。
 
【詳細】

 アメリカ海軍の最新フリゲート艦であるコンステレーション級(FFG 62)は、過去の失敗した艦船建造プログラムと似たような問題に直面している。このフリゲート艦プログラムは、過去のリトラル・コンバット・シップ(LCS)やズムウォルト級駆逐艦(DDG 1000)といった艦船建造における課題と重なる点が多いと指摘されている。具体的には、設計の不安定性、建造開始前の設計完成度の過大評価、そしてコストの超過という問題である。

 1. 設計の不安定性とコスト超過

 アメリカ海軍は、これらの艦船を建造する前に十分な設計作業を完了させずに建造を開始しており、その結果として設計が未完成のまま建造が進められた。このことが、遅延やコストの超過を引き起こし、最終的には艦船の能力を損なうことになった。特に、コンステレーション級フリゲートは、設計の完成度が当初報告されていた88%ではなく、実際には70%程度であったことが後に明らかとなり、これによりリード艦の建造が3年遅れ、34億ドルの費用がかかった。

 さらに、設計変更が多く発生したことにより、これまでのアメリカ海軍の艦船建造におけるパターンが繰り返される結果となった。LCSやズムウォルト級駆逐艦でも同様の問題が発生しており、これらの艦船が未成熟な技術や不安定な要求仕様によってコストが大幅に増加したのと同様、コンステレーション級フリゲートも技術的なリスクを抱えた状態で進行している。

 2. 設計変更と技術的リスク

 コンステレーション級フリゲートは、元々イタリアの親設計を基にしており、同設計との共通性を保つことでリスクを削減し、コストを低減することが意図されていた。しかし、実際には、アメリカ海軍の要求に合わせるために多くの変更が加えられ、設計の共通性が低下した。この結果、艦船の重量が当初の予測よりも10%以上増加し、速度要件を満たすためには追加の設計変更が必要となる可能性が高まった。

 また、 propulsion(推進)や machinery control(機械制御)システムといった新技術が未成熟なままであることが、技術的なリスクとして浮上している。これらのシステムが完全に成熟していないため、フリゲート艦が適切に運用できない可能性があり、その影響で性能が低下する恐れがある。

 3. 重量増加と速度要件

 設計変更により、コンステレーション級フリゲートの重量は当初の予測を超え、艦船の速度や運用性能に影響を与えている。アメリカ海軍は、速度を犠牲にして重量を削減しようとする可能性があるが、これにより運用能力が制限される可能性がある。さらに、重量増加が将来的なアップグレードに悪影響を及ぼし、艦船の長期的な運用能力にも懸念が残る。

 4. 競争力の低下

 アメリカ海軍は、中国海軍(PLAN)の台頭に対抗するために新たなフリゲート艦を必要としており、コンステレーション級はその役割を担うことが期待されていた。しかし、建造の遅れやコスト超過、設計不安定性が続いているため、アメリカ海軍のフリゲート艦は、中国海軍の同等艦船に対して競争力を持てるかどうかが疑問視されている。

 中国海軍は、ジアンカイIII級(タイプ054B)という新型フリゲート艦を配備しており、この艦は先進的なステルス技術、火力、レーダー技術を備えている。特に、32セルの垂直発射システム(VLS)やAESAレーダー、対潜水戦能力の向上が、同艦を有力な競争相手にしている。これに対し、コンステレーション級フリゲートは依然として建造中であり、その運用開始は遅れ、技術的な完成度にも不安が残る。

 5. アメリカ海軍の造船問題と今後の課題

 GAO報告書やその他の評価では、アメリカ海軍の造船能力が不足しており、これがコンステレーション級フリゲートの建造における遅延を引き起こしていると指摘されている。アメリカの造船インフラは老朽化しており、高い費用と長い建造期間が問題となっている。これに対して、中国は効率的に艦船を建造しており、費用対効果の面でも優位性を持つようになっている。

 アメリカ海軍が今後、中国海軍に対抗するためには、造船能力の強化とともに、コンステレーション級フリゲートの建造プロセスの見直しが必要不可欠である。また、コンステレーション級フリゲートは、アメリカの海軍戦力を補強するために重要な役割を果たすとともに、艦船建造の効率化と信頼性を向上させるための試金石ともなる。

 結論

 コンステレーション級フリゲートのプログラムは、アメリカ海軍の艦船建造における問題を象徴しており、設計の不安定性、コストの超過、技術的リスク、そして遅延が積み重なっている。この状況を解決し、海軍戦力を強化するためには、建造プロセスの改善と技術の成熟が求められる。
  
【要点】 

 1.設計不安定性とコスト超過

 ・コンステレーション級フリゲートは設計が未完成の状態で建造が開始され、遅延とコスト超過を招いた。

 ・設計完成度は当初88%とされていたが、実際は70%程度であり、これによりリード艦の建造が3年遅れ、34億ドルの費用がかかった。

 2.設計変更と技術的リスク

 ・イタリアの親設計を基にしているが、アメリカ海軍の要求に合わせて多くの変更が加えられ、設計の共通性が低下した。

 ・推進システムや機械制御システムなどの新技術が未成熟であり、運用上のリスクが残る。

 3.重量増加と速度要件

 ・設計変更により艦船の重量が増加し、速度や運用性能に影響を与えている。

 ・この増加した重量を改善するために追加の設計変更が必要となる可能性が高い。

 4.競争力の低下

 ・コンステレーション級フリゲートは、中国海軍の新型フリゲート(ジアンカイIII級)に対抗するために開発されているが、建造の遅れや技術的不安定さが問題となり、競争力が懸念されている。

 5.アメリカ海軍の造船問題

 ・アメリカの造船インフラは老朽化しており、費用や建造期間が長くなる傾向がある。

 ・中国は効率的に艦船を建造しており、費用対効果で優位性を持つようになっている。

 6.今後の課題と改善の必要性

 ・コンステレーション級フリゲートは、アメリカ海軍の艦船建造における改善の試金石となる。

 ・効率化と技術の成熟が求められる。

【引用・参照・底本】

US Navy’s latest frigate drifting into familiar troubled waters ASIATIMES 2025.04.01
https://asiatimes.com/2025/04/us-navys-latest-frigate-drifting-into-familiar-troubled-waters/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=f8a0076564-WEEKLY_06_04_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-f8a0076564-16242795&mc_cid=f8a0076564&mc_eid=69a7d1ef3c

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