2024年米大統領選挙:トランプ前大統領が勝利 ― 2024年11月06日 21:06
【概要】
2024年の米大統領選挙で、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が勝利し、4年ぶりに再び大統領職に就くことが確実となったと報じられている。この結果は、複数の米主要メディアによって発表され、特に注目される激戦州のうち、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージアを含む4州での勝利が、選挙結果を大きく左右した。
民主党候補として選挙に臨んだカマラ・ハリス副大統領は、米国初の女性大統領を目指したが敗北した。選挙結果を受け、トランプ氏は南部フロリダ州での集会で勝利宣言を行い、「米国民にとって、再び真に偉大な米国にする」と意気込みを語った。
米国では、前職の大統領が再選に失敗した後に再び返り咲くのは約130年ぶりのことで、これは1884年に大統領に当選したクリーブランド氏以来2人目の快挙である。クリーブランド氏は1888年に敗れたが、1892年の選挙で返り咲きに成功した。
トランプ氏は選挙戦を通じ、バイデン政権が進行中のインフレや不法移民の増加による治安悪化などの問題を招いたと批判を展開した。特にペンシルベニアなど「ラストベルト(さびた工業地帯)」と呼ばれる地域の白人労働者層からの支持を得ることで、2016年の大統領選挙での勝利と同様の形で再び勝利に結びつけた。
大統領選の勝敗は、各州に割り当てられた合計538人の選挙人の過半数(270人以上)を獲得することで決定される。米メディアの集計によると、トランプ氏はこの基準を超える選挙人票を確保したため、2025年1月20日に第47代大統領に就任予定である。激戦州のペンシルベニア(19人)、ノースカロライナ(16人)、ジョージア(16人)、ウィスコンシン(10人)での勝利が、大統領職の獲得に貢献した。
一方、激戦州のミシガン、西部のアリゾナとネバダの3州では結果がまだ確定していない。トランプ氏の副大統領には、J・D・バンス上院議員が指名される見込みである。
今回の選挙戦は異例の展開をたどり、現職のバイデン大統領が選挙まで3カ月半に迫った7月21日に選挙戦から撤退を表明し、ハリス氏が後継候補として立候補した。ハリス氏は東部ニューヨーク州や中西部イリノイ州などを地盤としてきた州で勝利を収めたものの、重要な激戦州では相次いで敗北した。
ハリス氏は選挙戦を通じ「全ての米国民のための大統領になる」と党派を超えた団結を呼びかけ、トランプ氏と距離を置く穏健派の支持を取り込み、「反トランプ」票の獲得を目指したが、選挙戦が短期間であったために知名度で上回るトランプ氏に及ばなかった。
また、大統領選挙と同時に実施された連邦議会選挙では、上院で共和党が多数派の奪還を確実にし、4年ぶりに優勢を取り戻した。一方、下院は共和党と民主党が接戦の状況にある。
【詳細】
2024年の米大統領選挙において、共和党のドナルド・トランプ前大統領が再び大統領職に返り咲くことが確実となった。トランプ氏が当選するのは、2020年の敗北以来4年ぶりのことで、今回の結果はアメリカ政治において極めて稀な歴史的事例である。これまでに再選に失敗した大統領が返り咲きを果たしたのは、19世紀後半に在任したグロバー・クリーブランド大統領以来、実に約130年ぶりのこととなる。
選挙戦の背景
トランプ氏は選挙戦を通じて、バイデン政権の政策に対する強い批判を繰り返し、特にインフレの高進や治安の悪化、不法移民問題に対する懸念を訴えて支持を集めた。これにより、2016年の大統領選挙で自身を勝利に導いた「ラストベルト」と呼ばれる白人労働者層の支持を再び獲得することに成功した。トランプ氏は主にインフラ整備の促進やアメリカ産業の復活を強調し、工業地域の有権者層に「真に偉大なアメリカを取り戻す」というメッセージを訴求した。
激戦州での勝利
今回の選挙では、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージアといった重要な激戦州でトランプ氏が優勢を示した。これらの州は、選挙人の数が多く、選挙の結果を大きく左右する「スイングステート」として知られている。特にペンシルベニア州では19人、ノースカロライナ州とジョージア州ではそれぞれ16人の選挙人が割り当てられており、これらの州での勝利がトランプ氏の選挙人過半数確保に直接寄与した。また、ウィスコンシン州でも選挙人10人を獲得し、計270人の過半数を超える選挙人票を手中に収めた。
選挙の勝敗は合計538人の選挙人のうち270人以上を獲得した候補者に大統領職が与えられる仕組みであるが、今回トランプ氏が必要な選挙人数を超えたため、2025年1月20日には第47代大統領として就任する見通しである。
民主党候補のカマラ・ハリス氏の敗北
民主党側では、カマラ・ハリス副大統領が候補者として選挙戦を戦った。現職のバイデン大統領が選挙戦から撤退したのは、選挙まで残り3カ月半という7月下旬であり、これは異例の展開であった。ハリス氏はバイデン氏の意思を継ぎ、初の女性大統領を目指したが、激戦州での敗北が響いた。
選挙戦では「全ての米国民のための大統領になる」と宣言し、共和党内の穏健派の支持や「反トランプ」票の取り込みを試みたが、短期間での選挙戦の準備不足やトランプ氏の知名度の高さが影響し、十分な支持を集めるには至らなかった。特にハリス氏は、民主党の地盤である東部のニューヨーク州や中西部のイリノイ州などでは勝利したものの、選挙人票の多い激戦州での敗北が敗因となった。
副大統領候補のJ・D・バンス氏
トランプ氏の副大統領には、J・D・バンス上院議員が指名されている。40歳のバンス氏は、オハイオ州出身の元実業家であり、政治家としてもトランプ氏の支持層である中西部の白人労働者層との結びつきが強いとされている。トランプ政権下で副大統領を務めることで、政策実行における影響力を期待されている。
連邦議会選挙の結果
大統領選挙と同時に実施された連邦議会選挙では、上院で共和党が4年ぶりに多数派の奪還に成功した。これは、共和党が上院における立法プロセスでの主導権を握り、トランプ氏の政策実行に向けた支援基盤を強化することを意味する。一方、下院では共和党と民主党が接戦となっており、過半数をどちらが占めるかは未だ確定していない。
今後の展望
トランプ氏の当選により、アメリカの国内政策や外交政策は大きく変化する可能性がある。特に、バイデン政権が重視してきたインフレ対策や移民政策に対する厳しい姿勢が予想される。また、共和党が上院の主導権を握ったことで、トランプ氏の政策が迅速に実行される可能性が高まっている。
トランプ氏の返り咲きは、アメリカ国内のみならず国際社会においても注目されている。
【要点】
1.トランプ氏の当選確実
・2024年米大統領選で、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)の当選が確実に。
・米メディアが、トランプ氏が必要な270人以上の選挙人を獲得したと報道。
・2025年1月20日に第47代大統領として就任予定。
2.選挙戦の背景と主張
・バイデン政権のインフレ、不法移民、治安悪化を批判し、白人労働者層の支持を再び取り込んだ。
・「ラストベルト」地域の有権者に向け、「真に偉大なアメリカを取り戻す」をスローガンに訴求。
3.激戦州での勝利
・トランプ氏は、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージア、ウィスコンシンなど激戦州で勝利。
・これにより、選挙人の過半数270人を超える数を獲得した。
4.ハリス氏の敗北
・民主党候補のカマラ・ハリス氏(60)は、バイデン大統領の撤退を受け継ぎ初の女性大統領を目指すも敗北。
・共和党の穏健派や「反トランプ」票を狙うも、激戦州で相次ぎ敗北。
5.副大統領候補のJ・D・バンス氏
・トランプ氏の副大統領にはJ・D・バンス上院議員(40)が就任予定。
・中西部出身で、白人労働者層と強い結びつきを持つとされる。
6.連邦議会選挙の結果
・上院で共和党が4年ぶりに多数派を奪還、トランプ政権の政策実行を後押し。
・下院は共和党と民主党が接戦、最終的な多数派は未確定。
7.今後の展望
・国内ではインフレ対策や移民政策の見直しが期待され、上院の支援を受けて政策が迅速に実行される可能性。
・トランプ氏の返り咲きは国際社会にも影響を与えると予想される。
【引用・参照・底本】
米大統領選挙、トランプ氏の当選確実 4年ぶり返り咲き 日本経済新聞 2024.11.06
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN180AE0Y4A011C2000000/?n_cid=BMSR2P001_202411061935
2024年の米大統領選挙で、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が勝利し、4年ぶりに再び大統領職に就くことが確実となったと報じられている。この結果は、複数の米主要メディアによって発表され、特に注目される激戦州のうち、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージアを含む4州での勝利が、選挙結果を大きく左右した。
民主党候補として選挙に臨んだカマラ・ハリス副大統領は、米国初の女性大統領を目指したが敗北した。選挙結果を受け、トランプ氏は南部フロリダ州での集会で勝利宣言を行い、「米国民にとって、再び真に偉大な米国にする」と意気込みを語った。
米国では、前職の大統領が再選に失敗した後に再び返り咲くのは約130年ぶりのことで、これは1884年に大統領に当選したクリーブランド氏以来2人目の快挙である。クリーブランド氏は1888年に敗れたが、1892年の選挙で返り咲きに成功した。
トランプ氏は選挙戦を通じ、バイデン政権が進行中のインフレや不法移民の増加による治安悪化などの問題を招いたと批判を展開した。特にペンシルベニアなど「ラストベルト(さびた工業地帯)」と呼ばれる地域の白人労働者層からの支持を得ることで、2016年の大統領選挙での勝利と同様の形で再び勝利に結びつけた。
大統領選の勝敗は、各州に割り当てられた合計538人の選挙人の過半数(270人以上)を獲得することで決定される。米メディアの集計によると、トランプ氏はこの基準を超える選挙人票を確保したため、2025年1月20日に第47代大統領に就任予定である。激戦州のペンシルベニア(19人)、ノースカロライナ(16人)、ジョージア(16人)、ウィスコンシン(10人)での勝利が、大統領職の獲得に貢献した。
一方、激戦州のミシガン、西部のアリゾナとネバダの3州では結果がまだ確定していない。トランプ氏の副大統領には、J・D・バンス上院議員が指名される見込みである。
今回の選挙戦は異例の展開をたどり、現職のバイデン大統領が選挙まで3カ月半に迫った7月21日に選挙戦から撤退を表明し、ハリス氏が後継候補として立候補した。ハリス氏は東部ニューヨーク州や中西部イリノイ州などを地盤としてきた州で勝利を収めたものの、重要な激戦州では相次いで敗北した。
ハリス氏は選挙戦を通じ「全ての米国民のための大統領になる」と党派を超えた団結を呼びかけ、トランプ氏と距離を置く穏健派の支持を取り込み、「反トランプ」票の獲得を目指したが、選挙戦が短期間であったために知名度で上回るトランプ氏に及ばなかった。
また、大統領選挙と同時に実施された連邦議会選挙では、上院で共和党が多数派の奪還を確実にし、4年ぶりに優勢を取り戻した。一方、下院は共和党と民主党が接戦の状況にある。
【詳細】
2024年の米大統領選挙において、共和党のドナルド・トランプ前大統領が再び大統領職に返り咲くことが確実となった。トランプ氏が当選するのは、2020年の敗北以来4年ぶりのことで、今回の結果はアメリカ政治において極めて稀な歴史的事例である。これまでに再選に失敗した大統領が返り咲きを果たしたのは、19世紀後半に在任したグロバー・クリーブランド大統領以来、実に約130年ぶりのこととなる。
選挙戦の背景
トランプ氏は選挙戦を通じて、バイデン政権の政策に対する強い批判を繰り返し、特にインフレの高進や治安の悪化、不法移民問題に対する懸念を訴えて支持を集めた。これにより、2016年の大統領選挙で自身を勝利に導いた「ラストベルト」と呼ばれる白人労働者層の支持を再び獲得することに成功した。トランプ氏は主にインフラ整備の促進やアメリカ産業の復活を強調し、工業地域の有権者層に「真に偉大なアメリカを取り戻す」というメッセージを訴求した。
激戦州での勝利
今回の選挙では、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージアといった重要な激戦州でトランプ氏が優勢を示した。これらの州は、選挙人の数が多く、選挙の結果を大きく左右する「スイングステート」として知られている。特にペンシルベニア州では19人、ノースカロライナ州とジョージア州ではそれぞれ16人の選挙人が割り当てられており、これらの州での勝利がトランプ氏の選挙人過半数確保に直接寄与した。また、ウィスコンシン州でも選挙人10人を獲得し、計270人の過半数を超える選挙人票を手中に収めた。
選挙の勝敗は合計538人の選挙人のうち270人以上を獲得した候補者に大統領職が与えられる仕組みであるが、今回トランプ氏が必要な選挙人数を超えたため、2025年1月20日には第47代大統領として就任する見通しである。
民主党候補のカマラ・ハリス氏の敗北
民主党側では、カマラ・ハリス副大統領が候補者として選挙戦を戦った。現職のバイデン大統領が選挙戦から撤退したのは、選挙まで残り3カ月半という7月下旬であり、これは異例の展開であった。ハリス氏はバイデン氏の意思を継ぎ、初の女性大統領を目指したが、激戦州での敗北が響いた。
選挙戦では「全ての米国民のための大統領になる」と宣言し、共和党内の穏健派の支持や「反トランプ」票の取り込みを試みたが、短期間での選挙戦の準備不足やトランプ氏の知名度の高さが影響し、十分な支持を集めるには至らなかった。特にハリス氏は、民主党の地盤である東部のニューヨーク州や中西部のイリノイ州などでは勝利したものの、選挙人票の多い激戦州での敗北が敗因となった。
副大統領候補のJ・D・バンス氏
トランプ氏の副大統領には、J・D・バンス上院議員が指名されている。40歳のバンス氏は、オハイオ州出身の元実業家であり、政治家としてもトランプ氏の支持層である中西部の白人労働者層との結びつきが強いとされている。トランプ政権下で副大統領を務めることで、政策実行における影響力を期待されている。
連邦議会選挙の結果
大統領選挙と同時に実施された連邦議会選挙では、上院で共和党が4年ぶりに多数派の奪還に成功した。これは、共和党が上院における立法プロセスでの主導権を握り、トランプ氏の政策実行に向けた支援基盤を強化することを意味する。一方、下院では共和党と民主党が接戦となっており、過半数をどちらが占めるかは未だ確定していない。
今後の展望
トランプ氏の当選により、アメリカの国内政策や外交政策は大きく変化する可能性がある。特に、バイデン政権が重視してきたインフレ対策や移民政策に対する厳しい姿勢が予想される。また、共和党が上院の主導権を握ったことで、トランプ氏の政策が迅速に実行される可能性が高まっている。
トランプ氏の返り咲きは、アメリカ国内のみならず国際社会においても注目されている。
【要点】
1.トランプ氏の当選確実
・2024年米大統領選で、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)の当選が確実に。
・米メディアが、トランプ氏が必要な270人以上の選挙人を獲得したと報道。
・2025年1月20日に第47代大統領として就任予定。
2.選挙戦の背景と主張
・バイデン政権のインフレ、不法移民、治安悪化を批判し、白人労働者層の支持を再び取り込んだ。
・「ラストベルト」地域の有権者に向け、「真に偉大なアメリカを取り戻す」をスローガンに訴求。
3.激戦州での勝利
・トランプ氏は、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージア、ウィスコンシンなど激戦州で勝利。
・これにより、選挙人の過半数270人を超える数を獲得した。
4.ハリス氏の敗北
・民主党候補のカマラ・ハリス氏(60)は、バイデン大統領の撤退を受け継ぎ初の女性大統領を目指すも敗北。
・共和党の穏健派や「反トランプ」票を狙うも、激戦州で相次ぎ敗北。
5.副大統領候補のJ・D・バンス氏
・トランプ氏の副大統領にはJ・D・バンス上院議員(40)が就任予定。
・中西部出身で、白人労働者層と強い結びつきを持つとされる。
6.連邦議会選挙の結果
・上院で共和党が4年ぶりに多数派を奪還、トランプ政権の政策実行を後押し。
・下院は共和党と民主党が接戦、最終的な多数派は未確定。
7.今後の展望
・国内ではインフレ対策や移民政策の見直しが期待され、上院の支援を受けて政策が迅速に実行される可能性。
・トランプ氏の返り咲きは国際社会にも影響を与えると予想される。
【引用・参照・底本】
米大統領選挙、トランプ氏の当選確実 4年ぶり返り咲き 日本経済新聞 2024.11.06
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN180AE0Y4A011C2000000/?n_cid=BMSR2P001_202411061935