トランプ:台湾は「米国に防衛費を払うべきだ」2024年11月06日 22:28

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【概要】
 
 2024年11月5日に行われた米大統領選で、ドナルド・トランプ前大統領が「勝利宣言」をした。選挙期間中、トランプ氏は台湾に対して「米国に防衛費を払うべきだ」と繰り返し述べており、台湾と米国の関係において今後どのような変化があるかについて、専門家が分析を行っている。

 蘇紫雲氏(国防安全研究院)

 トランプ氏は1期目で台湾への武器売却をパッケージ形式から順次承認する方式に変更し、台湾との軍事交流や台湾軍の訓練に対する協力を深めた。トランプ氏が「台湾は米国に防衛費を払うべきだ」と発言した背景には、米国がNATOや日本、韓国、台湾などの国々と協力しながら、これらの国々も自国の防衛により多くのリソースを投入すべきだという考えがある。具体的な要求は誇張されたもので、実際には「台湾は防衛費をGDPの10%に引き上げるべきだ」という発言は、米国が協力を惜しまないが、台湾側にも自己防衛能力を向上させる責任があることを意味しているとされている。

 陳文甲氏(国策研究院)

 トランプ氏が繰り返し述べた「台湾は米国に防衛費を払うべきだ」という考えは、台湾が安全保障に関して財政的・実質的な責任を負うべきだという立場を反映している。今後の台米軍事交流において、米国は台湾に対して自己防衛能力を強化する責任をより強調し、軍事支出をさらに分担させると予想される。また、米国は引き続き台湾に対して先端武器の売却を進めると見られ、防空システムや無人機といった新型武器がこれに含まれるだろう。米国は直接的な軍事訓練の支援から、技術的・設備的な協力にシフトする可能性が高い。

 陳世民氏(台湾大学)

 トランプ氏の「台湾は防衛費を払うべきだ」という発言は、台湾が防衛費を支出することで、米国からの明確な安全保障を得るべきだという考えに基づいている。台湾側では、もし防衛費を支払うことで米国の安全保障を確保できるのであれば、その支出を支持する声もある。しかし、「戦略的曖昧さ」が続く現状では問題があるとされている。トランプ氏が再任後にどのような軍事政策を取るかは、彼が起用する外交や国家安全の閣僚によって変わる可能性がある。もし台湾支持の人物が重要な役職に就けば、台湾との安全保障関係が強化されるだろう。一方で、MAGA派が影響力を持つ場合、米国の海外安全保障に対する関与が減少し、利益を優先する方針が取られる可能性もある。

【詳細】

 2024年11月5日の米大統領選挙で、ドナルド・トランプ前大統領が「勝利宣言」を行い、台湾と米国の関係がどう変化するかについて、専門家による分析が行われている。以下では、各専門家の見解をさらに詳細に説明する。

 1. 蘇紫雲氏(国防安全研究院)

 蘇氏は、トランプ氏の1期目の政策を振り返り、彼が台湾への武器売却において、従来のパッケージ形式から段階的承認方式へと変更したことを指摘している。これにより、台湾と米国の軍事交流が強化され、特に台湾軍の訓練と協力の深化が図られた。この政策の一環として、台湾に対して「防衛費を払うべきだ」との発言が繰り返されたが、これは単なる誇張ではなく、米国が他国と協力しながらも、それぞれの国がより公平に自己防衛のための資源を投入すべきだというメッセージとして受け取られている。

 背景

 トランプ氏は、他のNATO諸国や日本、韓国などと同様に、台湾も防衛費をより多く支出し、その負担を分担すべきだという立場を取っている。具体的には、「台湾の軍事費を国内総生産(GDP)の10%まで引き上げるべきだ」と発言したが、この言い回しはあくまで強調された意見であり、実際には台湾が独自に防衛能力を高める必要があるという警告の意味が込められている。

 今後の展開

 トランプ政権が再び発足すれば、台湾の防衛能力を向上させるため、米国は台湾に対してさらなる軍事支援を行い、技術面での協力を強化するだろう。しかし、その際には台湾側にも軍事予算を増加させるよう求め、負担の公平性が強調されると考えられる。

 2. 陳文甲氏(国策研究院)

 陳氏は、トランプ氏が繰り返し述べてきた「台湾は米国に防衛費を払うべきだ」という発言を、台湾が安全保障における財政的・実質的な義務を果たすべきだという立場の表れだと捉えている。トランプ政権下では、台湾に対する軍事的な支援は一貫して強化され、特に先端技術を有する武器の売却が行われた。例えば、米国は台湾に対して防空システムや無人機といった最新の武器を供与する方向に進む可能性が高い。

 軍事訓練と技術協力

 台湾と米国の軍事訓練において、トランプ政権はこれまで、兵員の訓練や実戦的な協力を提供してきた。しかし、今後は直接的な訓練の内容を減らし、代わりに技術的な協力や装備提供の方に重点が置かれると予想される。この変更は、米国が台湾に対してより自主的な防衛能力を発展させるよう促す意図が込められている。

 新型武器の供与

 トランプ政権下では、台湾に先端技術を持つ武器を供与する方針が強化されるだろう。特に防空システムや無人機など、新たな戦力として重要な役割を果たす兵器が台湾に供給されると予想される。これにより、台湾の自己防衛能力がさらに強化される一方で、米国側は台湾への支援を一層強化する必要があるというプレッシャーも受けることになる。

 3. 陳世民氏(台湾大学)

 陳氏は、トランプ氏が選挙戦中に発言した「台湾は防衛費を払うべきだ」という主張を、実業家としての視点から「保険会社の概念」と説明している。台湾側では、金銭的な支出で安全保障が確保できるのであれば、支出を支持する文化があるため、トランプ氏の発言がそのような視点に基づいていると考えられる。

 戦略的曖昧さの問題
 
 台湾側は「戦略的曖昧さ」を保っている現状に不安を抱えており、トランプ氏の発言がどのように実現されるかが重要であると指摘している。もし台湾が防衛費を支払うことで、米国からの明確な安全保障を取り付けることができるのであれば、その支出に対して台湾国内からの支持が得られるだろう。しかし、現状のように米国が明確な安全保障を提供しない場合、問題が残る。

 閣僚人事の影響

 トランプ氏が再選後にどのような閣僚を起用するかによって、台湾との関係が大きく変わる可能性がある。例えば、マイク・ポンペオ元国務長官やマルコ・ルビオ上院議員など、台湾支持の強い人物が重要な役職に就く場合、台湾との安全保障協力はさらに強化されるだろう。一方で、MAGA(米国を再び偉大に)派が要職に就けば、台湾を含む海外への軍事的コミットメントが減少し、米国の利益を最優先にする方針が取られる可能性がある。

 結論

 トランプ氏の再任が実現すれば、台湾と米国の関係は引き続き強化されるが、台湾側には防衛費の増加が求められ、台湾の自己防衛能力強化が主な焦点となるだろう。米国側は台湾への軍事支援を拡大し、特に技術面での協力を進めると予想される。しかし、これが台湾国内でどう受け止められるか、また米国がどのような安全保障を提供するかによって、関係の進展には波乱もあり得る。

【要点】

 トランプ氏の再選後の台米関係に関する専門家の見解を箇条書きでまとめたものです:

 1. 蘇紫雲氏(国防安全研究院)

 ・トランプ氏は1期目で、台湾への武器売却の形式をパッケージから段階的承認に変更。
 ・台湾と米国の軍事交流を強化し、台湾軍の訓練協力を深めた。
 ・台湾に対し、防衛費を払うべきとの発言は、米国と協力する代わりに台湾も自己防衛のための費用を増やすべきとのメッセージ。
 ・具体的には、台湾の軍事費をGDPの10%に増やすべきといった意見があり、これは誇張ではなく、自己防衛を強調する発言。

 2. 陳文甲氏(国策研究院)

 ・トランプ氏の発言は、台湾が安全保障の財政的・実質的義務を負うべきだという立場を反映。
 ・台湾には、米国が支援する軍事装備(特に先端技術)を提供し続けると予想。
 ・今後、台湾への軍事支援は、兵員訓練から技術協力や装備提供にシフトする可能性。
 ・米国は台湾に対し、さらに防衛能力を強化するよう求め、軍事支出の分担を強調する。

 3. 陳世民氏(台湾大学)

 ・トランプ氏の発言は、台湾が防衛費を支払うことで米国からの安全保障を確保しようとする視点に基づく。
 ・台湾国内では「お金で解決できるなら」という考え方があり、もしその支出が米国からの明確な安全保障に繋がるならば、支出を支持する可能性が高い。
 ・トランプ政権の閣僚人事によって、台湾との安全保障関係が大きく変わる可能性あり。
  ⇨ ポンペオ元国務長官やルビオ上院議員など、台湾支持の人物が重要職に就けば、関係強化が進む。
  ⇨ MAGA派が重視されれば、米国の利益を優先し、海外への軍事的コミットメントが減少する可能性。

 今後の台米関係の展開

 ・台湾は米国からの軍事支援を拡大し、特に防空システムや無人機など新型武器を供与される。
 ・米国は台湾に対し、自己防衛能力を高めるよう求め、その負担をより公平に分担させる方向に進む。
 ・台湾は、米国から明確な安全保障を得るために防衛費の増加を受け入れる必要があり、国内での支持が問われる。
 
【引用・参照・底本】

米大統領選、トランプ氏が「勝利宣言」 台米関係の見通しを専門家が分析 フォーカス台湾 2024.11.06
https://japan.focustaiwan.tw/politics/202411060009

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