米国製品をボイコットし、フランス・欧州製品を買おう! ― 2025年03月15日 10:47
【概要】
ドナルド・トランプ米大統領が欧州連合(EU)との貿易戦争を激化させ、特にワインやシャンパンに対して200%の関税を課すと脅したことを受け、欧州の消費者の間で米国製品のボイコット運動が広がっている。
フランスでは、「アメリカ帝国主義の資金提供にうんざりしているなら、行動を起こそう」というスローガンを掲げるFacebookグループ「Boycott USA: Buy French and European!(米国製品をボイコットし、フランス・欧州製品を買おう!)」が2月28日に設立され、すでに2万人以上のフォロワーを集めている。このグループでは、マクドナルドやリーバイス、WhatsAppといった米国ブランドの代替となるフランスや欧州の製品について情報交換が行われている。
フランス以外にも、スウェーデンやデンマークではそれぞれ約8万人のメンバーを持つ同様のグループが存在し、オランダやベルギーにも小規模なグループが設立されている。
このボイコット運動の目的は単なる反米感情ではなく、地元経済への貢献を意識した消費行動の推奨であると、フランスのグループ創設者エドゥアール・ルセは説明している。ただし、グローバル化した市場において「米国製品」を定義するのは必ずしも容易ではない。例えば、コカ・コーラはフランス北部に大規模な工場を持つため、ボイコットがフランス人労働者に影響を与える可能性もある。このようなケースについては、グループ内で議論が行われている。
ルセによれば、優先的にボイコットすべきブランドは、Amazonやテスラのようにトランプの選挙運動を支援した企業であるという。
ボイコットの影響
フランスでは、ブルターニュ地方に拠点を置くメッセージアプリ「Treebal」の利用者がトランプ就任以降、1日あたり200人増加しており、X(旧Twitter)やWhatsAppといった米国企業のサービスを避ける動きが影響しているとされる。
デンマークでは、トランプがグリーンランド(デンマーク王国の自治領)を米国領にしようとした過去の発言が反発を招いており、国内最大の小売業者サリング・グループのCEOアンダース・ハーグは、欧州製品を明示する電子タグを導入する方針を示した。
テスラの欧州での売上は前年比50%減少しており、カナダでも同様のボイコット運動が影響を及ぼしている。カナダでは、元首相ジャスティン・トルドーが米国製品のボイコットを公に支持したことも一因となっている。
経済への影響
ボイコットが米国経済全体に与える影響については限定的であると専門家は分析している。英ロイヤル・ホロウェイ大学のアラン・ブラッドショー教授は、「ボイコットの影響を最も受けるのは企業であり、経済全体への波及は限定的である。消費者は単に他のブランドを選ぶだけで、消費自体を減らすわけではない」と指摘する。
ケンブリッジ大学の経済学教授であるメレディス・A・クロウリーも、「オンライングループのメンバーは数万人規模だが、欧州には何億人もの消費者がいる。すべての人が米国製かどうかを気にしているわけではない」と述べ、ボイコットの規模が米国経済全体に与える影響は限定的であるとの見方を示している。
一方で、ボイコットによる競争の低下が欧州製品の価格上昇につながる可能性もあると指摘されている。ブラッドショー教授は、「米国ブランドとの競争が減ることで、欧州企業が価格を引き上げる余地が生まれる」とし、供給網への影響によって一部の原材料価格が上昇し、消費者にとって価格の上昇や商品の減少といった影響が生じる可能性を示唆している。
貿易戦争の影響
EUは3月12日、米国の鉄鋼・アルミニウム製品に対する25%の関税に対抗し、280億ドル相当の報復関税を発表した。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「関税はビジネスにとって悪影響であり、消費者にとってはさらに悪い影響をもたらす」と述べ、対抗措置に対する遺憾の意を表明した。
クロウリー教授は、「カナダや中国が行ったように、米国の関税に対抗措置を取ることが、トランプのような指導者を交渉の場に引き出す唯一の方法かもしれない」との見解を示している。
これに対し、トランプは3月14日、EUがウイスキーへの関税を撤廃しない場合、ワインやアルコール飲料に対して200%の関税を課すと発表した。
この動きに対し、フランスのボイコット運動参加者の間では「米国製品をボイコットする理由がさらに増えた」との声も見られた。
このボイコットは単なる反米運動ではなく、トランプ政権への抗議として行われており、参加者の多くは米国そのものではなく、トランプの政策への反対を示している。あるフランス人は、「私は年に1、2回米国を訪れていたが、今年5月と10月の旅行をキャンセルした。数年後にまた行くつもりだが、今年はカナダに行く」と述べている。
【詳細】
欧州における米国製品ボイコットの背景と影響
1. 背景:トランプ政権による関税措置
アメリカのドナルド・トランプ大統領は、欧州連合(EU)との貿易戦争をエスカレートさせており、特にワインやシャンパンに対して200%の関税を課すと脅している。この動きは、すでに発効したEUからの鉄鋼・アルミニウム輸入に対する25%の関税とともに、欧州の経済界に大きな影響を与えている。
2. 欧州でのボイコット運動の広がり
トランプ政権の強硬な貿易政策に対抗する形で、欧州の消費者の間で米国製品のボイコット運動が広がっている。
(1) フランスにおける動き
フランスでは、「Boycott USA: Buy French and European!」というFacebookグループが2025年2月28日に設立され、既に2万人以上のメンバーを集めている。このグループでは、マクドナルドやリーバイス、WhatsAppといった米国ブランドの代替品を共有し、欧州経済を支援することを目的としている。
グループの創設者エドゥアール・ルセ氏は、「闇雲にボイコットをするのではなく、フランスや欧州の経済に最も有益な選択をすることが重要だ」と主張している。特に、トランプの大統領選挙キャンペーンに資金を提供したAmazonやTeslaを優先的に避けるべきだとしている。
(2) 北欧諸国での動き
スウェーデンやデンマークでも、同様のボイコット運動が活発化している。
スウェーデンでは、2つのFacebookグループがそれぞれ8万人のメンバーを獲得している。
デンマークでは、8万人規模のグループが存在し、さらに国内最大手のスーパーマーケットチェーンであるSalling Groupが、欧州製品を識別するための電子タグ(黒い星印)を導入することを発表した。
デンマークでは、トランプ大統領が過去にデンマーク領グリーンランドの買収を提案したことに反発が強まっており、ボイコット運動の拡大につながっている。
(3) カナダにおける影響
欧州だけでなく、カナダでも類似の動きが見られる。元首相ジャスティン・トルドーが主導する形で、米国製品のボイコットが進んでおり、特にTeslaの販売に大きな影響を及ぼしている。
3. ボイコットが企業に与える影響
(1) 代替サービスの普及
フランスでは、WhatsAppなど米国発のアプリに代わり、ブルターニュを拠点とするメッセージアプリ「Treebal」が急成長している。トランプの再選以降、毎日200人以上の新規ユーザーが登録しており、米国プラットフォーム離れが進んでいる。
(2) Teslaの売上減少
Teslaは欧州において前年比50%の販売減少を記録した。これは、同社のCEOであるイーロン・マスクがトランプ大統領の支援者であり、政権の高官として影響力を持っていることが、消費者の不買運動につながっているためである。
4. 経済への影響
(1) ボイコットによる価格上昇の可能性
ボイコットが進むことで、欧州市場では米国ブランドの競争力が低下し、それに伴い欧州ブランドが価格を引き上げる可能性がある。
ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校のアラン・ブラッドショー教授は、「ボイコットの影響は、経済全体ではなく、主に企業レベルで発生するだろう。消費者は車を買わなくなるのではなく、別のブランドを選ぶだけだ」と指摘している。
また、ケンブリッジ大学のメリディス・A・クロウリー教授は、「ボイコットグループの規模は数万人だが、欧州には数億人の消費者がいるため、影響は限定的だ」と分析している。ただし、ボイコットによる供給網の混乱により、原材料価格が上昇し、結果的に幅広い消費財の価格が上がる可能性がある。
(2) 貿易戦争の激化
EUは、米国の鉄鋼・アルミニウム関税に対抗し、280億ドル(約4兆円)規模の報復関税を発表した。これに対し、トランプ大統領は、EUが米国産ウイスキーへの関税を撤廃しない限り、ワインやアルコール飲料に200%の関税を課すと表明した。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、報復関税を「企業にとって悪影響があり、消費者にとってさらに悪い」とコメントしているが、クロウリー教授は「カナダや中国が採用したように、関税を対抗措置として活用することで、トランプ大統領のような指導者を交渉のテーブルに引き出す可能性がある」と指摘している。
5. 政治的要素
ボイコット運動は単なる経済的な問題ではなく、トランプ政権に対する政治的反発としても機能している。
フランスのボイコット参加者の一人は、「米国への旅行を年に1~2回しているが、今年の5月と10月の訪問をキャンセルした。代わりにカナダへ行く」と述べており、消費者行動だけでなく観光にも影響を及ぼしている。
「アメリカの帝国主義に資金を提供するのにうんざりしたか? 行動を起こそう」というボイコットのスローガンが示すように、単なる経済問題ではなく、米国の政策に対する抵抗の意思表示としての側面も強い。
6. 今後の展望
トランプ政権が強硬な関税政策を続ける限り、欧州のボイコット運動はさらに拡大する可能性がある。特に、Teslaのようなトランプ寄りの企業への影響は大きく、今後の欧州市場での業績が注目される。
また、EUと米国の貿易関係は今後も緊張が続くと見られ、企業や消費者にとって価格上昇や供給網の混乱といった影響が長期化する可能性がある。
【要点】
欧州における米国製品ボイコットの背景と影響
1. 背景:トランプ政権の関税措置
・ドナルド・トランプ大統領がEU産ワイン・シャンパンに200%の関税を検討
・既にEUの鉄鋼・アルミニウムに25%の関税を課している
・EUは280億ドル(約4兆円)規模の報復関税を発表
2. 欧州でのボイコット運動の広がり
(1) フランス
・Facebookグループ「Boycott USA: Buy French and European!」が2025年2月28日に設立
・2万人以上のメンバーが参加
・米国ブランドの代替品情報を共有(例:マクドナルド、リーバイス、WhatsAppの代替)
・AmazonやTeslaなど、トランプ支持企業の不買を優先
(2) 北欧諸国
・スウェーデンのボイコットグループが8万人規模
・デンマークではスーパーマーケットチェーンSalling Groupが欧州製品を識別する電子タグ(黒い星印)を導入
・グリーンランド買収提案への反発も影響
(3) カナダ
・ジャスティン・トルドー元首相が米国製品ボイコットを推奨
Teslaの販売が大幅に減少
3. ボイコットが企業に与える影響
(1) 代替サービスの普及
・フランスのメッセージアプリ「Treebal」がWhatsAppの代替として急成長
・毎日200人以上の新規ユーザーが登録
(2) Teslaの売上減少
・欧州市場で前年比50%の販売減少
・イーロン・マスクがトランプ支援者であることが影響
4. 経済への影響
(1) 価格上昇の可能性
・米国ブランドの競争力低下で欧州ブランドが価格引き上げへ
・供給網の混乱による原材料価格の上昇
(2) 貿易戦争の激化
・トランプ大統領はEU産ワイン・アルコールに200%の関税を課すと警告
・EUの報復関税と応酬が続く
5. 政治的要素
・ボイコットは経済的だけでなく政治的な抵抗運動の側面を持つ
・一部の消費者は米国旅行をキャンセルし、代わりにカナダへ渡航
6. 今後の展望
・トランプ政権の関税政策次第でボイコット運動がさらに拡大する可能性
・Teslaなどトランプ寄りの企業は欧州市場で苦戦が続く
・EUと米国の貿易関係の緊張が長期化し、消費者・企業に影響が及ぶ
【引用・参照・底本】
Europeans boycott US products to protest against Trump tariffs FRANCE24 2025.03.15
https://www.france24.com/en/europe/20250314-europeans-boycott-us-products-to-protest-against-trump-tariffs?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020250314&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D
ドナルド・トランプ米大統領が欧州連合(EU)との貿易戦争を激化させ、特にワインやシャンパンに対して200%の関税を課すと脅したことを受け、欧州の消費者の間で米国製品のボイコット運動が広がっている。
フランスでは、「アメリカ帝国主義の資金提供にうんざりしているなら、行動を起こそう」というスローガンを掲げるFacebookグループ「Boycott USA: Buy French and European!(米国製品をボイコットし、フランス・欧州製品を買おう!)」が2月28日に設立され、すでに2万人以上のフォロワーを集めている。このグループでは、マクドナルドやリーバイス、WhatsAppといった米国ブランドの代替となるフランスや欧州の製品について情報交換が行われている。
フランス以外にも、スウェーデンやデンマークではそれぞれ約8万人のメンバーを持つ同様のグループが存在し、オランダやベルギーにも小規模なグループが設立されている。
このボイコット運動の目的は単なる反米感情ではなく、地元経済への貢献を意識した消費行動の推奨であると、フランスのグループ創設者エドゥアール・ルセは説明している。ただし、グローバル化した市場において「米国製品」を定義するのは必ずしも容易ではない。例えば、コカ・コーラはフランス北部に大規模な工場を持つため、ボイコットがフランス人労働者に影響を与える可能性もある。このようなケースについては、グループ内で議論が行われている。
ルセによれば、優先的にボイコットすべきブランドは、Amazonやテスラのようにトランプの選挙運動を支援した企業であるという。
ボイコットの影響
フランスでは、ブルターニュ地方に拠点を置くメッセージアプリ「Treebal」の利用者がトランプ就任以降、1日あたり200人増加しており、X(旧Twitter)やWhatsAppといった米国企業のサービスを避ける動きが影響しているとされる。
デンマークでは、トランプがグリーンランド(デンマーク王国の自治領)を米国領にしようとした過去の発言が反発を招いており、国内最大の小売業者サリング・グループのCEOアンダース・ハーグは、欧州製品を明示する電子タグを導入する方針を示した。
テスラの欧州での売上は前年比50%減少しており、カナダでも同様のボイコット運動が影響を及ぼしている。カナダでは、元首相ジャスティン・トルドーが米国製品のボイコットを公に支持したことも一因となっている。
経済への影響
ボイコットが米国経済全体に与える影響については限定的であると専門家は分析している。英ロイヤル・ホロウェイ大学のアラン・ブラッドショー教授は、「ボイコットの影響を最も受けるのは企業であり、経済全体への波及は限定的である。消費者は単に他のブランドを選ぶだけで、消費自体を減らすわけではない」と指摘する。
ケンブリッジ大学の経済学教授であるメレディス・A・クロウリーも、「オンライングループのメンバーは数万人規模だが、欧州には何億人もの消費者がいる。すべての人が米国製かどうかを気にしているわけではない」と述べ、ボイコットの規模が米国経済全体に与える影響は限定的であるとの見方を示している。
一方で、ボイコットによる競争の低下が欧州製品の価格上昇につながる可能性もあると指摘されている。ブラッドショー教授は、「米国ブランドとの競争が減ることで、欧州企業が価格を引き上げる余地が生まれる」とし、供給網への影響によって一部の原材料価格が上昇し、消費者にとって価格の上昇や商品の減少といった影響が生じる可能性を示唆している。
貿易戦争の影響
EUは3月12日、米国の鉄鋼・アルミニウム製品に対する25%の関税に対抗し、280億ドル相当の報復関税を発表した。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「関税はビジネスにとって悪影響であり、消費者にとってはさらに悪い影響をもたらす」と述べ、対抗措置に対する遺憾の意を表明した。
クロウリー教授は、「カナダや中国が行ったように、米国の関税に対抗措置を取ることが、トランプのような指導者を交渉の場に引き出す唯一の方法かもしれない」との見解を示している。
これに対し、トランプは3月14日、EUがウイスキーへの関税を撤廃しない場合、ワインやアルコール飲料に対して200%の関税を課すと発表した。
この動きに対し、フランスのボイコット運動参加者の間では「米国製品をボイコットする理由がさらに増えた」との声も見られた。
このボイコットは単なる反米運動ではなく、トランプ政権への抗議として行われており、参加者の多くは米国そのものではなく、トランプの政策への反対を示している。あるフランス人は、「私は年に1、2回米国を訪れていたが、今年5月と10月の旅行をキャンセルした。数年後にまた行くつもりだが、今年はカナダに行く」と述べている。
【詳細】
欧州における米国製品ボイコットの背景と影響
1. 背景:トランプ政権による関税措置
アメリカのドナルド・トランプ大統領は、欧州連合(EU)との貿易戦争をエスカレートさせており、特にワインやシャンパンに対して200%の関税を課すと脅している。この動きは、すでに発効したEUからの鉄鋼・アルミニウム輸入に対する25%の関税とともに、欧州の経済界に大きな影響を与えている。
2. 欧州でのボイコット運動の広がり
トランプ政権の強硬な貿易政策に対抗する形で、欧州の消費者の間で米国製品のボイコット運動が広がっている。
(1) フランスにおける動き
フランスでは、「Boycott USA: Buy French and European!」というFacebookグループが2025年2月28日に設立され、既に2万人以上のメンバーを集めている。このグループでは、マクドナルドやリーバイス、WhatsAppといった米国ブランドの代替品を共有し、欧州経済を支援することを目的としている。
グループの創設者エドゥアール・ルセ氏は、「闇雲にボイコットをするのではなく、フランスや欧州の経済に最も有益な選択をすることが重要だ」と主張している。特に、トランプの大統領選挙キャンペーンに資金を提供したAmazonやTeslaを優先的に避けるべきだとしている。
(2) 北欧諸国での動き
スウェーデンやデンマークでも、同様のボイコット運動が活発化している。
スウェーデンでは、2つのFacebookグループがそれぞれ8万人のメンバーを獲得している。
デンマークでは、8万人規模のグループが存在し、さらに国内最大手のスーパーマーケットチェーンであるSalling Groupが、欧州製品を識別するための電子タグ(黒い星印)を導入することを発表した。
デンマークでは、トランプ大統領が過去にデンマーク領グリーンランドの買収を提案したことに反発が強まっており、ボイコット運動の拡大につながっている。
(3) カナダにおける影響
欧州だけでなく、カナダでも類似の動きが見られる。元首相ジャスティン・トルドーが主導する形で、米国製品のボイコットが進んでおり、特にTeslaの販売に大きな影響を及ぼしている。
3. ボイコットが企業に与える影響
(1) 代替サービスの普及
フランスでは、WhatsAppなど米国発のアプリに代わり、ブルターニュを拠点とするメッセージアプリ「Treebal」が急成長している。トランプの再選以降、毎日200人以上の新規ユーザーが登録しており、米国プラットフォーム離れが進んでいる。
(2) Teslaの売上減少
Teslaは欧州において前年比50%の販売減少を記録した。これは、同社のCEOであるイーロン・マスクがトランプ大統領の支援者であり、政権の高官として影響力を持っていることが、消費者の不買運動につながっているためである。
4. 経済への影響
(1) ボイコットによる価格上昇の可能性
ボイコットが進むことで、欧州市場では米国ブランドの競争力が低下し、それに伴い欧州ブランドが価格を引き上げる可能性がある。
ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校のアラン・ブラッドショー教授は、「ボイコットの影響は、経済全体ではなく、主に企業レベルで発生するだろう。消費者は車を買わなくなるのではなく、別のブランドを選ぶだけだ」と指摘している。
また、ケンブリッジ大学のメリディス・A・クロウリー教授は、「ボイコットグループの規模は数万人だが、欧州には数億人の消費者がいるため、影響は限定的だ」と分析している。ただし、ボイコットによる供給網の混乱により、原材料価格が上昇し、結果的に幅広い消費財の価格が上がる可能性がある。
(2) 貿易戦争の激化
EUは、米国の鉄鋼・アルミニウム関税に対抗し、280億ドル(約4兆円)規模の報復関税を発表した。これに対し、トランプ大統領は、EUが米国産ウイスキーへの関税を撤廃しない限り、ワインやアルコール飲料に200%の関税を課すと表明した。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、報復関税を「企業にとって悪影響があり、消費者にとってさらに悪い」とコメントしているが、クロウリー教授は「カナダや中国が採用したように、関税を対抗措置として活用することで、トランプ大統領のような指導者を交渉のテーブルに引き出す可能性がある」と指摘している。
5. 政治的要素
ボイコット運動は単なる経済的な問題ではなく、トランプ政権に対する政治的反発としても機能している。
フランスのボイコット参加者の一人は、「米国への旅行を年に1~2回しているが、今年の5月と10月の訪問をキャンセルした。代わりにカナダへ行く」と述べており、消費者行動だけでなく観光にも影響を及ぼしている。
「アメリカの帝国主義に資金を提供するのにうんざりしたか? 行動を起こそう」というボイコットのスローガンが示すように、単なる経済問題ではなく、米国の政策に対する抵抗の意思表示としての側面も強い。
6. 今後の展望
トランプ政権が強硬な関税政策を続ける限り、欧州のボイコット運動はさらに拡大する可能性がある。特に、Teslaのようなトランプ寄りの企業への影響は大きく、今後の欧州市場での業績が注目される。
また、EUと米国の貿易関係は今後も緊張が続くと見られ、企業や消費者にとって価格上昇や供給網の混乱といった影響が長期化する可能性がある。
【要点】
欧州における米国製品ボイコットの背景と影響
1. 背景:トランプ政権の関税措置
・ドナルド・トランプ大統領がEU産ワイン・シャンパンに200%の関税を検討
・既にEUの鉄鋼・アルミニウムに25%の関税を課している
・EUは280億ドル(約4兆円)規模の報復関税を発表
2. 欧州でのボイコット運動の広がり
(1) フランス
・Facebookグループ「Boycott USA: Buy French and European!」が2025年2月28日に設立
・2万人以上のメンバーが参加
・米国ブランドの代替品情報を共有(例:マクドナルド、リーバイス、WhatsAppの代替)
・AmazonやTeslaなど、トランプ支持企業の不買を優先
(2) 北欧諸国
・スウェーデンのボイコットグループが8万人規模
・デンマークではスーパーマーケットチェーンSalling Groupが欧州製品を識別する電子タグ(黒い星印)を導入
・グリーンランド買収提案への反発も影響
(3) カナダ
・ジャスティン・トルドー元首相が米国製品ボイコットを推奨
Teslaの販売が大幅に減少
3. ボイコットが企業に与える影響
(1) 代替サービスの普及
・フランスのメッセージアプリ「Treebal」がWhatsAppの代替として急成長
・毎日200人以上の新規ユーザーが登録
(2) Teslaの売上減少
・欧州市場で前年比50%の販売減少
・イーロン・マスクがトランプ支援者であることが影響
4. 経済への影響
(1) 価格上昇の可能性
・米国ブランドの競争力低下で欧州ブランドが価格引き上げへ
・供給網の混乱による原材料価格の上昇
(2) 貿易戦争の激化
・トランプ大統領はEU産ワイン・アルコールに200%の関税を課すと警告
・EUの報復関税と応酬が続く
5. 政治的要素
・ボイコットは経済的だけでなく政治的な抵抗運動の側面を持つ
・一部の消費者は米国旅行をキャンセルし、代わりにカナダへ渡航
6. 今後の展望
・トランプ政権の関税政策次第でボイコット運動がさらに拡大する可能性
・Teslaなどトランプ寄りの企業は欧州市場で苦戦が続く
・EUと米国の貿易関係の緊張が長期化し、消費者・企業に影響が及ぶ
【引用・参照・底本】
Europeans boycott US products to protest against Trump tariffs FRANCE24 2025.03.15
https://www.france24.com/en/europe/20250314-europeans-boycott-us-products-to-protest-against-trump-tariffs?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-info-en&utm_email_send_date=%2020250314&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D