ロシア:エチオピアとの海軍協力協定 ― 2025年03月18日 19:17
【概要】
ロシア海軍副総司令官ウラジーミル・ヴォロビエフ提督は、先週エチオピアの海事訓練機関を訪問した際、エチオピアとの海軍協力協定に署名した。エチオピアは内陸国であるが、海への自由かつ完全なアクセスを平和的に回復する政策を掲げている。この政策に関する詳細は別の資料に記載されている。エチオピアはロシアにとって世界で最も古いパートナーの一つであり、戦略的な分野で協力を行うのは自然な流れである。この協定が重要であると考えられる5つの要点は以下の通りである。
1. ロシアはエチオピアの平和的意図を支持
エチオピアの海洋政策は、隣国のエリトリアやソマリアによって攻撃的な意図を持つものとして批判されてきた。しかし、エチオピアとソマリアの関係は最近改善した一方で、エリトリアとはこの問題をめぐって関係が悪化している。ロシアがエチオピアと海軍協力協定を締結したことは、エチオピアの政策が平和的であるとの認識を示すものであり、エリトリアに対してはロシアが同国のエチオピア政策を支持していないことを示唆するメッセージとなる。
2. 第一段階は経験共有と訓練が中心
エチオピアは約30年間海軍を保有しておらず、海軍の運用経験が不足している。そのため、協力の第一段階として、ロシアがエチオピアと海軍の運用経験を共有し、ロシアの艦船でエチオピアの水兵を訓練することが予想される。ロシアがこの教育プログラムに時間と資源を投入することは、エチオピアが平和的に海へのアクセスを回復する政策を実現できると信じていることの証左である。
3. 次の段階では艦艇の売却または譲渡の可能性
ロシアの海軍近代化計画により、現行の艦艇の一部が不要となる可能性がある。これらの艦艇はエチオピア海軍のニーズを満たす可能性があり、今後の協力の中で売却または無償譲渡される可能性がある。ただし、具体的な内容を予測するのは時期尚早であるが、今回の協定を踏まえれば、エチオピアが他の国ではなくロシアを主要な海軍供給国とするのが最も理にかなっている。
4. 交換条件は将来のエチオピア港の共同使用か
エチオピアは財政的に厳しい状況にあり、天然資源を交換条件としてロシアに提供する可能性は低い。そのため、ロシアとの協力の見返りとして、エチオピアが将来的に締結する港湾利用協定において、ロシアが共同使用できるようにする可能性がある。これにより、ロシアは友好港での寄港や後方支援を受けることができ、さらにはロシア・エチオピア・第三国による三カ国合同演習の機会も生まれる可能性がある。これはアデン湾・紅海地域におけるロシアの安全保障上の利益に資するものである。
5. エチオピアの成功が他国をロシアに引き寄せる可能性
エチオピア海軍の復活において、ロシアが訓練や装備面で成功を収めた場合、他の国々もロシアとの協力を模索する可能性がある。これは内陸国だけでなく沿岸国にも当てはまり、軍事協力の深化によってそれぞれの国々が従来の西側パートナーへの依存度を下げ、多角的な関係を構築する機会となる。また、こうした協力は参加国に具体的な利益をもたらすことになる。
結論
ロシアとエチオピアの海軍協力協定は、一般的な報道では見落とされがちであるが、実際には戦略的に重要な意味を持つ。エチオピアはロシアの支援を受けて海軍の訓練を受け、将来的には装備を取得する可能性がある。一方、ロシアは信頼できる軍事パートナーとしての地位を強化し、場合によってはエチオピアの将来の港湾にアクセスする機会を得る可能性がある。
【詳細】
ロシア・エチオピア海軍協力協定の詳細な分析
ロシアとエチオピアが海軍協力協定を締結したことは、戦略的観点から極めて重要な意味を持つ。この協定は単なる象徴的なものではなく、エチオピアの長期的な海軍計画とロシアの地政学的な利益が交差するものである。以下、その詳細をさらに掘り下げて分析する。
1. ロシアはエチオピアの平和的意図を支持
エチオピアは、長年にわたり海への自由かつ完全なアクセスを求めてきたが、これは主に1993年のエリトリア独立により海岸線を失ったことに起因する。アビィ・アハメド政権は、この問題を解決するために外交的な努力を続けており、ジブチ、ソマリランド、エリトリアなどと交渉を行っている。
しかし、エチオピアのこの動きは隣国エリトリアとソマリアによって「侵略的な意図を持つもの」として批判されている。エリトリアは特に警戒を強めており、アフリカの角地域における勢力バランスの変化を懸念している。一方で、ソマリアとの関係は最近改善しており、ジブチとも経済協力の枠組みの中で交渉を進めている。
ロシアがこの海軍協力協定に署名したことは、エチオピアの政策が軍事的な侵略を目的としたものではなく、あくまで海洋権益の回復という平和的な目的を持つことを支持する姿勢を示すものである。これはエリトリアに対するロシアの外交的メッセージとも解釈でき、ロシアがエチオピア側の立場を一定程度支持していることを示唆している。
2. 第一段階は経験共有と訓練が中心
エチオピア海軍は1991年に解散して以来、約30年間にわたり存在しておらず、海軍運用のノウハウが失われている。このため、今回の協定の第一段階として、ロシアがエチオピアに対し以下のような支援を行うと考えられる。
(1)理論的な海軍教育の提供
・海洋戦略、艦隊運用、海上哨戒、兵站管理などに関する座学訓練。
・ロシア海軍の戦術やドクトリンの共有。
(2)実務訓練の実施
・ロシア海軍の艦艇を使用した実地訓練。
・戦闘航海、艦砲射撃、潜水艦対策などの実践的な訓練。
(3)士官および水兵の育成
・ロシアの海軍学校や訓練施設での教育プログラム。
・ロシア海軍士官との共同訓練。
これらの取り組みにより、エチオピア海軍は基礎的な運用能力を確立し、将来的に艦艇を保有する準備が整うことになる。
3. 次の段階では艦艇の売却または譲渡の可能性
ロシアは現在、海軍の近代化を進めており、新型のフリゲートやコルベットの配備が進んでいる。これに伴い、旧式の艦艇の一部が退役する見込みである。これらの艦艇は、エチオピア海軍にとっては十分に実用的であり、以下のような形で提供される可能性がある。
(1)中古艦艇の売却
・ソブレメンヌイ級駆逐艦、クリヴァク級フリゲートなど、退役予定の艦艇をエチオピアに売却。
・ロシア製の小型哨戒艇や輸送艦の提供。
(2)無償譲渡またはリース契約
・ロシアが一定期間、エチオピアに艦艇を貸与し、訓練と運用を支援。
・軍事援助の一環として一部の艦艇を譲渡。
(3)エチオピア向けの新造艦の可能性
・エチオピアの財政状況を考慮し、ロシアが低コストで建造可能な小型艦艇を提供する可能性。
これにより、エチオピアは海軍の基盤を構築し、海洋防衛能力を高めることができる。
4. 交換条件は将来のエチオピア港の共同使用か
エチオピアは財政的な制約があるため、ロシアとの軍事協力の見返りとして何らかの譲歩を行う必要があると考えられる。その最も現実的なシナリオが、エチオピアが確保する港湾の共同使用権をロシアに与えることである。
(1)港湾使用権の付与
・ロシア海軍がエチオピアの港を使用できるようにする。
・ロシア艦艇の補給・修理拠点としての活用。
(2)ロシア・エチオピア・第三国の三国合同演習
・エチオピアがジブチやソマリランドの港湾を利用する際、ロシアとの共同訓練を実施。
(3)紅海・アデン湾地域でのロシアの影響力拡大
・ロシアはスーダンのポートスーダンに軍事拠点を設置しようとしているが、エチオピアの港湾アクセスが加わることで戦略的選択肢が増える。
これにより、ロシアはアデン湾・紅海地域における影響力を強化し、インド洋へのアクセスを拡大することが可能になる。
5. エチオピアの成功が他国をロシアに引き寄せる可能性
ロシアがエチオピアの海軍再建を成功させた場合、他のアフリカ諸国もロシアとの軍事協力を模索する可能性がある。特に以下の国々がロシアとの関係を強化する可能性が高い。
(1)内陸国の軍事力強化
・ウガンダ、ルワンダ、チャドなどがロシアの軍事協力を求める可能性。
(2)西側依存の軽減
・伝統的に欧米諸国と軍事協力を行っていた国々が、ロシアとの関係を深めることで外交的な選択肢を広げる。
(3)アフリカ全体でのロシアの影響力増大
・ロシアの武器・艦艇供給が拡大し、アフリカにおける軍事的プレゼンスが高まる。
結論
今回のロシア・エチオピア海軍協力協定は、単なる二国間の軍事協力を超え、紅海地域やアフリカ全体の地政学的な力学に大きな影響を与える可能性がある。エチオピアにとっては海軍の再建、ロシアにとってはアフリカでの影響力拡大という戦略的利益がある。この協定の進展次第では、今後の国際関係にも重要な影響を及ぼすことになる。
【要点】
ロシア・エチオピア海軍協力協定の要点
1. ロシアの支援によるエチオピアの海軍再建
・エチオピアは1991年に海軍を解散し、現在海軍戦力を持たない。
・ロシアが経験共有や訓練を通じてエチオピアの海軍再建を支援。
・エチオピアの海軍能力向上により、紅海やインド洋での影響力を強化可能。
2. 第一段階:経験共有と訓練
・ロシアがエチオピア海軍に座学・戦略・戦術を教育。
・実際の艦艇を使用した訓練を実施。
・エチオピアの士官・水兵をロシア海軍で育成。
3. 第二段階:艦艇の売却・譲渡
・ロシアが退役艦艇(フリゲート・哨戒艇など)を売却または貸与。
・低コストの新造艦を提供する可能性も。
・エチオピアの海軍戦力の基盤を形成。
4. ロシアの見返り:港湾使用権の獲得
・エチオピアが確保する港湾をロシア海軍が共同使用。
・ロシア艦艇の補給・修理拠点として活用。
・紅海・アデン湾地域でのロシアの軍事的影響力を強化。
5. 地域への影響
・エリトリアやソマリアはエチオピアの軍事力強化を警戒。
・エチオピアの成功が他のアフリカ諸国をロシアに引き寄せる可能性。
・アフリカ全体でロシアの軍事協力が拡大する可能性。
6. 結論
ロシアにとってはアフリカでの影響力拡大、エチオピアにとっては海軍再建という戦略的利益。
・今後の紅海・インド洋の地政学に大きな影響を及ぼす可能性あり。
【引用・参照・底本】
Five Takeaways From The Newly Signed Russian-Ethiopian Naval Cooperation Agreement Andrew Korybko's Newsletter 2025.03.18
https://korybko.substack.com/p/five-takeaways-from-the-newly-signed?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=159313333&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ロシア海軍副総司令官ウラジーミル・ヴォロビエフ提督は、先週エチオピアの海事訓練機関を訪問した際、エチオピアとの海軍協力協定に署名した。エチオピアは内陸国であるが、海への自由かつ完全なアクセスを平和的に回復する政策を掲げている。この政策に関する詳細は別の資料に記載されている。エチオピアはロシアにとって世界で最も古いパートナーの一つであり、戦略的な分野で協力を行うのは自然な流れである。この協定が重要であると考えられる5つの要点は以下の通りである。
1. ロシアはエチオピアの平和的意図を支持
エチオピアの海洋政策は、隣国のエリトリアやソマリアによって攻撃的な意図を持つものとして批判されてきた。しかし、エチオピアとソマリアの関係は最近改善した一方で、エリトリアとはこの問題をめぐって関係が悪化している。ロシアがエチオピアと海軍協力協定を締結したことは、エチオピアの政策が平和的であるとの認識を示すものであり、エリトリアに対してはロシアが同国のエチオピア政策を支持していないことを示唆するメッセージとなる。
2. 第一段階は経験共有と訓練が中心
エチオピアは約30年間海軍を保有しておらず、海軍の運用経験が不足している。そのため、協力の第一段階として、ロシアがエチオピアと海軍の運用経験を共有し、ロシアの艦船でエチオピアの水兵を訓練することが予想される。ロシアがこの教育プログラムに時間と資源を投入することは、エチオピアが平和的に海へのアクセスを回復する政策を実現できると信じていることの証左である。
3. 次の段階では艦艇の売却または譲渡の可能性
ロシアの海軍近代化計画により、現行の艦艇の一部が不要となる可能性がある。これらの艦艇はエチオピア海軍のニーズを満たす可能性があり、今後の協力の中で売却または無償譲渡される可能性がある。ただし、具体的な内容を予測するのは時期尚早であるが、今回の協定を踏まえれば、エチオピアが他の国ではなくロシアを主要な海軍供給国とするのが最も理にかなっている。
4. 交換条件は将来のエチオピア港の共同使用か
エチオピアは財政的に厳しい状況にあり、天然資源を交換条件としてロシアに提供する可能性は低い。そのため、ロシアとの協力の見返りとして、エチオピアが将来的に締結する港湾利用協定において、ロシアが共同使用できるようにする可能性がある。これにより、ロシアは友好港での寄港や後方支援を受けることができ、さらにはロシア・エチオピア・第三国による三カ国合同演習の機会も生まれる可能性がある。これはアデン湾・紅海地域におけるロシアの安全保障上の利益に資するものである。
5. エチオピアの成功が他国をロシアに引き寄せる可能性
エチオピア海軍の復活において、ロシアが訓練や装備面で成功を収めた場合、他の国々もロシアとの協力を模索する可能性がある。これは内陸国だけでなく沿岸国にも当てはまり、軍事協力の深化によってそれぞれの国々が従来の西側パートナーへの依存度を下げ、多角的な関係を構築する機会となる。また、こうした協力は参加国に具体的な利益をもたらすことになる。
結論
ロシアとエチオピアの海軍協力協定は、一般的な報道では見落とされがちであるが、実際には戦略的に重要な意味を持つ。エチオピアはロシアの支援を受けて海軍の訓練を受け、将来的には装備を取得する可能性がある。一方、ロシアは信頼できる軍事パートナーとしての地位を強化し、場合によってはエチオピアの将来の港湾にアクセスする機会を得る可能性がある。
【詳細】
ロシア・エチオピア海軍協力協定の詳細な分析
ロシアとエチオピアが海軍協力協定を締結したことは、戦略的観点から極めて重要な意味を持つ。この協定は単なる象徴的なものではなく、エチオピアの長期的な海軍計画とロシアの地政学的な利益が交差するものである。以下、その詳細をさらに掘り下げて分析する。
1. ロシアはエチオピアの平和的意図を支持
エチオピアは、長年にわたり海への自由かつ完全なアクセスを求めてきたが、これは主に1993年のエリトリア独立により海岸線を失ったことに起因する。アビィ・アハメド政権は、この問題を解決するために外交的な努力を続けており、ジブチ、ソマリランド、エリトリアなどと交渉を行っている。
しかし、エチオピアのこの動きは隣国エリトリアとソマリアによって「侵略的な意図を持つもの」として批判されている。エリトリアは特に警戒を強めており、アフリカの角地域における勢力バランスの変化を懸念している。一方で、ソマリアとの関係は最近改善しており、ジブチとも経済協力の枠組みの中で交渉を進めている。
ロシアがこの海軍協力協定に署名したことは、エチオピアの政策が軍事的な侵略を目的としたものではなく、あくまで海洋権益の回復という平和的な目的を持つことを支持する姿勢を示すものである。これはエリトリアに対するロシアの外交的メッセージとも解釈でき、ロシアがエチオピア側の立場を一定程度支持していることを示唆している。
2. 第一段階は経験共有と訓練が中心
エチオピア海軍は1991年に解散して以来、約30年間にわたり存在しておらず、海軍運用のノウハウが失われている。このため、今回の協定の第一段階として、ロシアがエチオピアに対し以下のような支援を行うと考えられる。
(1)理論的な海軍教育の提供
・海洋戦略、艦隊運用、海上哨戒、兵站管理などに関する座学訓練。
・ロシア海軍の戦術やドクトリンの共有。
(2)実務訓練の実施
・ロシア海軍の艦艇を使用した実地訓練。
・戦闘航海、艦砲射撃、潜水艦対策などの実践的な訓練。
(3)士官および水兵の育成
・ロシアの海軍学校や訓練施設での教育プログラム。
・ロシア海軍士官との共同訓練。
これらの取り組みにより、エチオピア海軍は基礎的な運用能力を確立し、将来的に艦艇を保有する準備が整うことになる。
3. 次の段階では艦艇の売却または譲渡の可能性
ロシアは現在、海軍の近代化を進めており、新型のフリゲートやコルベットの配備が進んでいる。これに伴い、旧式の艦艇の一部が退役する見込みである。これらの艦艇は、エチオピア海軍にとっては十分に実用的であり、以下のような形で提供される可能性がある。
(1)中古艦艇の売却
・ソブレメンヌイ級駆逐艦、クリヴァク級フリゲートなど、退役予定の艦艇をエチオピアに売却。
・ロシア製の小型哨戒艇や輸送艦の提供。
(2)無償譲渡またはリース契約
・ロシアが一定期間、エチオピアに艦艇を貸与し、訓練と運用を支援。
・軍事援助の一環として一部の艦艇を譲渡。
(3)エチオピア向けの新造艦の可能性
・エチオピアの財政状況を考慮し、ロシアが低コストで建造可能な小型艦艇を提供する可能性。
これにより、エチオピアは海軍の基盤を構築し、海洋防衛能力を高めることができる。
4. 交換条件は将来のエチオピア港の共同使用か
エチオピアは財政的な制約があるため、ロシアとの軍事協力の見返りとして何らかの譲歩を行う必要があると考えられる。その最も現実的なシナリオが、エチオピアが確保する港湾の共同使用権をロシアに与えることである。
(1)港湾使用権の付与
・ロシア海軍がエチオピアの港を使用できるようにする。
・ロシア艦艇の補給・修理拠点としての活用。
(2)ロシア・エチオピア・第三国の三国合同演習
・エチオピアがジブチやソマリランドの港湾を利用する際、ロシアとの共同訓練を実施。
(3)紅海・アデン湾地域でのロシアの影響力拡大
・ロシアはスーダンのポートスーダンに軍事拠点を設置しようとしているが、エチオピアの港湾アクセスが加わることで戦略的選択肢が増える。
これにより、ロシアはアデン湾・紅海地域における影響力を強化し、インド洋へのアクセスを拡大することが可能になる。
5. エチオピアの成功が他国をロシアに引き寄せる可能性
ロシアがエチオピアの海軍再建を成功させた場合、他のアフリカ諸国もロシアとの軍事協力を模索する可能性がある。特に以下の国々がロシアとの関係を強化する可能性が高い。
(1)内陸国の軍事力強化
・ウガンダ、ルワンダ、チャドなどがロシアの軍事協力を求める可能性。
(2)西側依存の軽減
・伝統的に欧米諸国と軍事協力を行っていた国々が、ロシアとの関係を深めることで外交的な選択肢を広げる。
(3)アフリカ全体でのロシアの影響力増大
・ロシアの武器・艦艇供給が拡大し、アフリカにおける軍事的プレゼンスが高まる。
結論
今回のロシア・エチオピア海軍協力協定は、単なる二国間の軍事協力を超え、紅海地域やアフリカ全体の地政学的な力学に大きな影響を与える可能性がある。エチオピアにとっては海軍の再建、ロシアにとってはアフリカでの影響力拡大という戦略的利益がある。この協定の進展次第では、今後の国際関係にも重要な影響を及ぼすことになる。
【要点】
ロシア・エチオピア海軍協力協定の要点
1. ロシアの支援によるエチオピアの海軍再建
・エチオピアは1991年に海軍を解散し、現在海軍戦力を持たない。
・ロシアが経験共有や訓練を通じてエチオピアの海軍再建を支援。
・エチオピアの海軍能力向上により、紅海やインド洋での影響力を強化可能。
2. 第一段階:経験共有と訓練
・ロシアがエチオピア海軍に座学・戦略・戦術を教育。
・実際の艦艇を使用した訓練を実施。
・エチオピアの士官・水兵をロシア海軍で育成。
3. 第二段階:艦艇の売却・譲渡
・ロシアが退役艦艇(フリゲート・哨戒艇など)を売却または貸与。
・低コストの新造艦を提供する可能性も。
・エチオピアの海軍戦力の基盤を形成。
4. ロシアの見返り:港湾使用権の獲得
・エチオピアが確保する港湾をロシア海軍が共同使用。
・ロシア艦艇の補給・修理拠点として活用。
・紅海・アデン湾地域でのロシアの軍事的影響力を強化。
5. 地域への影響
・エリトリアやソマリアはエチオピアの軍事力強化を警戒。
・エチオピアの成功が他のアフリカ諸国をロシアに引き寄せる可能性。
・アフリカ全体でロシアの軍事協力が拡大する可能性。
6. 結論
ロシアにとってはアフリカでの影響力拡大、エチオピアにとっては海軍再建という戦略的利益。
・今後の紅海・インド洋の地政学に大きな影響を及ぼす可能性あり。
【引用・参照・底本】
Five Takeaways From The Newly Signed Russian-Ethiopian Naval Cooperation Agreement Andrew Korybko's Newsletter 2025.03.18
https://korybko.substack.com/p/five-takeaways-from-the-newly-signed?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=159313333&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email