「アメリカ諜報機関によるモバイル端末へのサイバー攻撃」2025年03月25日 22:19

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【概要】

 2025年3月25日に中国の業界連盟である中国サイバーセキュリティ産業連盟(CCIA)から発表された報告書によると、アメリカの諜報機関は世界中のモバイル端末や通信システムを対象にしたサイバー攻撃を行っているとされている。報告書は、政府関係者や技術専門家といった高価値ターゲットから一般の人々まで、すべての人々がアメリカの諜報活動の対象になり得ることを示唆している。

 報告書は、「アメリカ諜報機関によるモバイル端末へのサイバー攻撃」と題され、アメリカのサイバー攻撃がどのようにモバイル端末や通信システムを標的にしているのか、またその攻撃手法がどれほど広範囲であるかを詳細に説明している。報告書によると、アメリカの諜報機関は、SIMカードやファームウェア、オペレーティングシステム、USBケーブルやWi-Fi、Bluetooth、セルラー通信、GPSなど、ネットワーク製品の隅々にまで侵入し、通信リンクや位置情報を含む個人データやアカウント情報を大量に盗取している。

 特に、モバイル端末がPCに比べてネットワークセキュリティにおける脆弱性が多いため、アメリカの諜報機関にとって重要な攻撃対象となっている。報告書では、SIMカードやモバイルオペレーティングシステム、アプリケーションの脆弱性を突いてサイバー攻撃を実行し、特定のターゲットに対してトロイの木馬や商用スパイウェアを用いてデータの盗取を行うことが述べられている。

 さらに、アメリカは「量子システム(Quantum System)」を利用し、インターネットに接続されたモバイル端末やPCを攻撃し、ターゲットのオンライン活動中にトロイの木馬を注入する技術を開発している。これにより、特定の個人のiPhoneに対して、サファリブラウザの脆弱性を利用してトロイの木馬を送り込むことが可能となった。

 また、アメリカの諜報機関はiPhoneユーザーをターゲットにし、iMessageなどのApple独自のサービスを通じて「ゼロクリック攻撃」を実行している。ゼロクリック攻撃とは、ユーザーがリンクをクリックしたりファイルを開いたりすることなく、攻撃が自動的にデバイスにインストールされる仕組みである。

 さらに、アメリカはイスラエル製のスパイウェア「ペガサス」を用いて、多くの国家元首や政治家をターゲットにした盗聴を行っていることも報告書で明らかにされている。これらの活動は、モバイル端末や通信システムに対する大規模かつ長期的な監視と盗取が行われており、世界中の国家安全保障やサイバーセキュリティに深刻な脅威を与えている。

 報告書は、アメリカの諜報機関がどのようにしてサイバー攻撃を展開し、どのような技術を駆使して情報を盗取しているかを詳細に解説しており、今後の防衛策や対策強化の必要性を訴えている。

【詳細】

 この報告書は、アメリカの諜報機関がどのようにして世界中のモバイル端末や通信システムに対してサイバー攻撃を行い、情報を盗取しているかについて非常に詳細な情報を提供している。以下に、その具体的な内容をさらに詳しく説明する。

 1. ターゲットと手法

 報告書によると、アメリカの諜報機関は、政府関係者や技術専門家といった「高価値ターゲット」から一般の民間人まで、広範囲にわたる対象にサイバー攻撃を仕掛けている。これにより、政府機関や企業、個人の通信が監視され、データが盗取されている。ターゲットとなるのは、政府関係者、外交官、軍事関係者、経済関係者、さらには一般市民に至るまで、膨大な範囲にわたる。

 2. 攻撃対象

 アメリカの諜報機関が狙っている主な攻撃対象は、モバイル端末や通信システムであり、特に以下の領域に対する攻撃が行われていると報告されている:

 ・SIMカード: SIMカードに埋め込まれている暗号化鍵を盗むことで、通信内容を解読できるようになる。

 ・オペレーティングシステム(OS): モバイル端末のOSに存在する脆弱性を悪用し、ユーザーの情報を収集する。

 ・アプリケーション: モバイルアプリやWebブラウザに対する攻撃を通じて、ユーザーの個人情報を盗み出す。

 ・通信ネットワーク(Wi-Fi、Bluetooth、GPSなど): 無線通信ネットワークを通じて、ターゲットの位置情報や通信内容を盗聴する。

 ・データセンター: インターネットサービスプロバイダーや大手IT企業のデータセンターに対しても攻撃を行い、通信データを傍受・盗取している。

 3. ゼロクリック攻撃

 報告書の中で特に注目されているのは、「ゼロクリック攻撃」である。この攻撃手法では、ターゲットとなるモバイル端末にユーザーが何も操作しなくても、特定のコードが自動的にインストールされる。例えば、iPhoneのiMessageを通じて、ユーザーがメッセージを開くことなく、トロイの木馬やスパイウェアがデバイスにインストールされる。これにより、ユーザーは気づくことなく、デバイスの完全な監視下に置かれることとなる。

 4. 量子システム(Quantum System)

 報告書は、アメリカが開発したとされる「量子システム(Quantum System)」についても言及している。このシステムは、インターネット接続されたデバイス(PCやモバイル端末)を攻撃するための技術であり、ターゲットのオンライン活動中に、意図的にデータトラフィックを送信し、トロイの木馬を注入することができる。この方法により、ターゲットのデバイスに悪意のあるソフトウェアを隠し込むことができる。

 5. ペガサスと商用スパイウェア

 報告書によれば、アメリカの諜報機関は「ペガサス」というイスラエル製の商用スパイウェアを活用して、数多くの国家元首や政治家をターゲットにした盗聴を行っている。このスパイウェアは、ターゲットのスマートフォンにインストールされ、通話内容やメッセージ、位置情報などをリアルタイムで監視することができる。

 6. 「IRRITANT HORN」プロジェクト

 アメリカのサイバー諜報活動の一環として、「IRRITANT HORN」というプロジェクトが進行中であるとされている。このプロジェクトは、モバイル端末に対する監視活動を強化するためのもので、特にモバイルアプリストアのサーバーにアクセスし、ユーザーデータを盗み出すための技術を開発している。例えば、中国で広く使用されているモバイルブラウザが、ユーザーの電話番号やSIMカード情報をサーバーに送信することを利用し、この情報を盗取する手法が紹介されている。

 7. アメリカのサイバー攻撃能力

 アメリカの諜報機関は、「巨人のハゲタカ」のように世界中を監視していると報告書は述べている。アメリカは多くのサイバー攻撃チームを持ち、サイバー攻撃のための標準化された装備とシステムを備えており、これらを使って長期にわたり攻撃を続けている。これに対抗するためには、攻撃のサンプルを収集し、分析し、具体的な防御策を強化することが重要であるとされている。

 8. 中国に対する特定の攻撃

 報告書は、中国のユーザーをターゲットにした特定の攻撃についても言及している。例えば、中国の携帯電話ブラウザがユーザー情報をサーバーにアップロードすることを利用して、アメリカの諜報機関が中国のユーザー情報を盗取しているとされている。これらの攻撃は、モバイル端末の供給チェーンにまで影響を及ぼし、通信データの解読や盗取が行われている。

 結論

 この報告書は、アメリカの諜報機関がどのようにしてグローバルなサイバー攻撃を仕掛け、モバイル端末や通信システムをターゲットにして情報を盗取しているかを詳細に解説しており、これが世界中の国家安全保障やサイバーセキュリティに与える脅威を強調している。アメリカのサイバー攻撃手法は非常に洗練されており、ゼロクリック攻撃やペガサスなど、高度な技術を駆使していることが明らかになっている。これに対抗するためには、各国が協力し、サイバー防衛能力を強化する必要がある。

【要点】

 ・ターゲットと手法: アメリカの諜報機関は、政府関係者や一般市民をターゲットにし、モバイル端末や通信システムを攻撃。高価値ターゲット(政府関係者、外交官、軍事関係者など)から一般市民まで広範囲にわたる。

 ・攻撃対象

  ⇨ SIMカード: 暗号化鍵を盗むことで通信内容を解読。

  ⇨ オペレーティングシステム(OS): 脆弱性を悪用し情報を収集。

  ⇨ アプリケーション: モバイルアプリやWebブラウザを通じて個人情報を盗む。

  ⇨ 無線通信ネットワーク: Wi-Fi、Bluetooth、GPSを使い位置情報や通信内容を盗聴。

  ⇨ データセンター: IT企業のデータセンターを攻撃し通信データを盗取。

 ・ゼロクリック攻撃: ユーザーが操作しなくても、特定のコードが自動でインストールされ、デバイスが監視下に置かれる。

 ・量子システム(Quantum System): インターネット接続デバイスを攻撃し、データトラフィックを送信して悪意のあるソフトウェアを注入。

 ・ペガサスと商用スパイウェア: 「ペガサス」を使い、政府や政治家のスマートフォンを監視し通話内容やメッセージを盗聴。

 ・「IRRITANT HORN」プロジェクト: モバイル端末の監視を強化し、アプリストアのサーバーにアクセスしてユーザーデータを盗取。

 ・アメリカのサイバー攻撃能力: 高度なサイバー攻撃チームと標準化されたシステムを使い、長期間にわたり攻撃を行う。

 ・中国に対する特定の攻撃: 中国の携帯電話ブラウザがアップロードするユーザー情報を盗取。

【参考】

 ☞ 巨人のハゲタカ

 「巨人のハゲタカ」という表現は、通常、強大な力を持ち、他者を支配または搾取しようとする存在を指すメタファーである。この場合、アメリカの諜報機関の活動を「巨人のハゲタカ」に例えているのは、彼らが世界中で情報を盗み、影響力を拡大していることを示唆している。

 ・「巨人」: 諜報機関の強力で広範なネットワークと資源を指し、世界中に影響を与える力を持つ存在として描写されている。

 ・「ハゲタカ」: 自分の利益のために他者を搾取する存在。ここでは、諜報機関が他国の情報やデータを盗む様子を象徴している。

 つまり、「巨人のハゲタカ」とは、世界中でサイバー攻撃やスパイ活動を行い、他国のデータや情報を収集して自国の利益に役立てようとする強大な勢力を表現するための言葉である。


 ☞ 「量子システム(Quantum System)」という名称が付けられている理由については、主にその技術的な背景や攻撃方法が関係していると考えられるが、具体的に量子力学とは直接関係があるわけではない。以下の理由が考えられる。

 1.量子コンピュータとの関連: 量子という言葉は、近年の技術分野で「量子コンピュータ」や「量子通信」などの新しい技術に関連している。量子コンピュータは非常に高速で複雑な計算を行えるため、サイバー攻撃にも応用可能だと言われている。このような先進的な技術を暗示する意味で、「量子」という言葉が使われた可能性がある。

 2.攻撃の精度と高度な技術: 「量子システム」の名前は、非常に精密で効果的な攻撃を示唆しているとも解釈できる。量子力学の特性として、非常に小さいスケールでの精密な操作が行われることから、サイバー攻撃の技術が精緻であることを示すために「量子」が選ばれたのかもしれない。攻撃が特定のタイミングやデータトラフィックを狙い撃ちする様子が、量子力学の精密性に似ていると考えられるためである。

 3.機密性と隠密性: 量子通信技術では、データの盗聴が非常に困難であるとされている。これに触発され、量子システムという名称が付けられた可能性もある。量子システムによる攻撃が、非常に隠密かつ効果的に行われることを暗示しているかもしれない。

 結論として、量子の名が付けられたのは、攻撃の精密性、隠密性、または量子コンピュータや量子通信技術の先進的なイメージを反映させるためであり、実際に量子力学を利用しているわけではないと考えられる。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

US intelligence agencies carry out cyberattacks targeting global mobile users: report GT 2025.03.25
https://www.globaltimes.cn/page/202503/1330822.shtml

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