ハンガリーとセルビアの異なる立場2024年11月03日 17:21

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【概要】

 ハンガリーとセルビアの異なる立場が、ウクライナ戦争における軍事的な中立性や西側諸国との関係にどのような影響を与えているかについて説明している。

 まず、ハンガリーの立場について説明されている。ハンガリーの首相ヴィクトル・オルバンの首席補佐官であるゲルゲイ・グヤーシュ氏が、外国の諜報機関(NATO加盟国を含む)が、ハンガリーが購入した武器や弾薬をウクライナやアフリカに転送しようとする計画があったが、それが阻止されたと発表した。これらの武器や弾薬がウクライナやアフリカで使われることで、間接的または直接的にロシアに対抗する意図があったとしている。しかしハンガリーは、EUによる対ロシア制裁には賛同しているものの、NATOとロシアの間の新冷戦においては軍事的に中立の立場を維持していると主張している。

 一方で、セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領は、2023年夏に他国がセルビアから購入した弾薬をウクライナへ転送することに反対しない姿勢を示した。これは、春の「ペンタゴン・リーク」(機密文書の漏洩)でセルビアがウクライナに武器を供給しているという疑惑が報じられたことを受けたもので、セルビア政府はそれを否定した。しかしヴチッチ大統領の発言により、その軍事的中立性への疑念が再燃した。この記事は、セルビアが実質的には軍事的に中立ではないとしており、それでもなおロシアとの関係には大きな影響を与えていないとしている。

 また、ハンガリーがNATOおよびEU加盟国であるのに対し、セルビアは加盟しておらず、西側諸国の対ロシア制裁にも参加していない。そのため、セルビアは西側諸国と比較的円滑な関係を保ちながらも、ロシアとの友好関係も維持していると説明されている。

 ハンガリーに関しては、オルバン首相がウクライナ戦争における仲介役を果たすことを目指している点が注目されている。彼は最近、ウクライナやロシア、中国、米国(ドナルド・トランプ氏とも面会)を訪問しており、この「シャトル外交」によって和平仲介の立場を確保しようとしているとされている。しかし、この動きは他の欧州の指導者から反発を受けており、欧州内での緊張が生じている。

 さらに、一部の外国の諜報機関がハンガリーから購入された武器や弾薬を意図的にウクライナやアフリカへ転送することで、オルバン首相の仲介役としての信頼性を傷つけようとした可能性が指摘されている。
 
【詳細】

 この記事では、ハンガリーとセルビアがウクライナ戦争に対して異なる態度を取っていることが、どのようにして西側諸国の反応やロシアとの関係性に影響を与えているのか、さらに詳しく掘り下げている。以下に詳しく説明する。

 1. ハンガリーの軍事的中立

 ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相は、西側諸国の対ロシア制裁には賛同しつつも、ウクライナ戦争における軍事的中立の立場を保っている。この背景には、オルバン政権がロシアとの経済関係を重視していること、ならびにウクライナ戦争に直接関与することを避けたいという姿勢があると考えられる。

 オルバンの首席補佐官ゲルゲイ・グヤーシュ氏によると、ハンガリー国内で購入された武器や弾薬をウクライナやアフリカに転送し、ロシアに対抗する意図を持つ一部の外国諜報機関がいたことが判明した。これらの諜報機関は、ハンガリーがEU・NATO加盟国でありながら軍事的中立を維持している点を問題視し、これを破壊しようとしたと見られる。ハンガリーがこうした動きを察知し阻止したことにより、オルバンの軍事的中立の姿勢が再確認された。

 2. オルバン首相の仲介努力と西側諸国の反発

 オルバン首相は、ウクライナ戦争の和平に向けた仲介者としての役割を果たす意向を示しており、2024年夏にはウクライナ、ロシア、中国、米国などの国々を訪問し「シャトル外交」を展開した。特に米国では、次期大統領選の候補であるドナルド・トランプ氏と会談するなどして、和平に向けた話し合いを行ったとされている。

 しかし、この動きに対して欧州の他の指導者たちは激しく反発している。欧州諸国は、ウクライナ戦争を通じてロシアに圧力をかけ続ける戦略を支持しており、オルバンの和平仲介はその戦略に反するものと見なされているためである。特に、オルバンがEU理事会の議長職にある点も問題視されており、彼が自身の立場を利用して「不当な正当性」を得ていると批判されている。

 欧州の指導者たちは、オルバンの和平仲介の動きを「軽視」あるいは「無視」するだけでなく、反対に軍事的な圧力を強める意図があることを示唆している。この記事によれば、西側諸国の一部諜報機関がハンガリーから購入された武器を意図的にウクライナやアフリカへ送ろうとした背景には、オルバンの仲介者としての信用を失墜させる意図があった可能性がある。彼の仲介努力を不誠実なものとして描き、ロシア側に不信感を抱かせようとする狙いがあるとされている。

 3. セルビアの立場:経済的中立と軍事的曖昧さ

 セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領は、セルビアが軍事的には中立であると主張しているものの、ウクライナ戦争に関連する武器供給においては曖昧な態度を取っている。2023年のペンタゴン・リークでは、セルビアがウクライナに武器を供給しているとの情報が流出したが、セルビア政府はこれを否定した。しかし、ヴチッチ大統領はその後、他国がセルビアから購入した弾薬をウクライナに送ることに反対しない姿勢を示している。この発言によって、セルビアが完全な軍事的中立を保っているかどうかに疑念が生じている。

 記事によれば、セルビアは形式上は西側制裁には参加していないものの、実際には軍事的に中立ではないという指摘がなされている。しかし、セルビアのこの立場にもかかわらず、ロシアとの関係は大きな影響を受けていないとされている。西側諸国も、セルビアに対しては一部の政治的圧力をかけたものの、それは「半端な」ものであり、2023年夏には色革命的な圧力があったとされるものの、ヴチッチ自身もフランス製の戦闘機購入などを進め、圧力をそれほど深刻に受け止めていないと見られている。

 4. 欧州内の複雑な対立構図

 この記事は、欧州諸国が抱える対ロシア戦略に対する内部分裂を示している。ハンガリーのような軍事的中立を保つ姿勢は、西側の戦争遂行に対する姿勢と真っ向から対立している。一方、セルビアは経済的に中立を保ちながらも軍事的には曖昧な姿勢を取っており、西側諸国からの圧力は限定的であると述べられている。

 最終的に、ハンガリーがNATOとEUの一員でありながら軍事的中立を維持することが、西側諸国にとって最大の懸念事項であると記事は結論づけている。

【要点】

 1ハンガリーの立場

 ・ハンガリーは対ロシア制裁には賛同しつつも、軍事的には中立を保ち、ウクライナ戦争への関与を避けている。
 ・ハンガリー政府は、外国の諜報機関が同国の購入した武器や弾薬をウクライナやアフリカに転送し、ロシアに対抗するために使用する計画を阻止した。
 ・オルバン首相は和平仲介者としての役割を果たす意向を示し、夏にはウクライナ、ロシア、中国、米国を訪問して「シャトル外交」を行ったが、これに対して欧州の指導者から反発を受けた。

 2.セルビアの立場

 ・セルビアは西側の対ロシア制裁には参加していないが、ウクライナ戦争に関しては軍事的に中立ではないとされる。
 ・2023年の「ペンタゴン・リーク」ではセルビアがウクライナに武器を供給していると報じられ、ヴチッチ大統領は他国がセルビアから購入した弾薬をウクライナに転送することに反対しない姿勢を示した。
 ・ロシアとの関係には大きな影響を与えず、西側からの圧力も限定的で、セルビアはその後フランス製戦闘機を購入している。

 3.西側諸国の反応とハンガリーへの圧力

 ・一部の外国諜報機関は、ハンガリーが購入した武器や弾薬をウクライナやアフリカに送ることで、オルバンの仲介者としての信頼を傷つけようとした可能性がある。
 ・欧州の指導者たちは、オルバンがEU理事会の議長職を利用し、和平仲介において「不当な正当性」を得ようとしていると批判している。

 4.セルビアとハンガリーの違い

 ・ハンガリーの軍事的中立は西側諸国にとって大きな懸念事項であり、セルビアの経済的中立に対する反発よりも強い。
 ・セルビアは軍事的中立を完全には保っていないが、西側諸国との関係には大きな影響がないとされている。
 
【引用・参照・底本】

Hungary Won’t Let Its Arms & Ammo Be Used Against Russia Unlike Serbia Andrew Korybko's Newsletter 2024.11.03
https://korybko.substack.com/p/hungary-wont-let-its-arms-and-ammo?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=151094337&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

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