ロシアの中東政策に関する誤解を訂正 ― 2024年11月03日 19:28
【概要】
アンドリュー・コリブコが2024年11月2日に発表したもので、アメリカのメディア「Newsweek」がロシアの中東政策に関する誤解を訂正したという内容を解説している。コリブコは、米国メディアと代替メディア(AMC)が、ロシアの中東政策を反イスラエル的であるとする誤解を助長してきたと指摘し、「Newsweek」がこれを修正する記事を公開したことが驚くべき進展だと述べている。
Newsweekの記事「At War in Ukraine, Putin Emerges as Potential Peace Broker in Middle East」は、元イスラエル副国家安全保障顧問であり現在はイスラエル国立安全保障研究所の上級研究員であるオルナ・ミズラヒのコメントを引用している。彼女は、イランとの良好な関係を築いているロシアが、中東地域での安定に貢献する可能性を持つと述べ、国連安全保障理事会の新たな決議においてロシアの支持を望む意向も示している。また、ロシアはイスラエルの軍事力を高く評価しており、イスラエルのシリアに対する攻撃に干渉していないと述べている。
さらにコリブコは、ロシアの中東政策の背景として以下の要点を示している。
1.ロシアは10月7日の事件をテロ攻撃とし、すべての人質、特にロシア-イスラエルの二重国籍者の解放を望んでいる。
2.しかし、ロシアはパレスチナ人への集団的な懲罰と見なされるイスラエルの対応も非難している。
3.ロシアはパレスチナ独立国家の設立を支持し、イスラエルと共に平和に共存することを望んでいる。
4.ロシアはイスラエルに対する一方的な制裁に反対している。
イスラエル側も、ロシアのこのバランスの取れた政策を評価しており、ウクライナに対する武器提供やロシアに対する制裁を避ける形で応えている。コリブコは、この実用的な関係がプーチンとイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との「緊密で個人的な関係」に基づいていることを指摘している。
Newsweekの記事の意義は、こうしたロシアの政策に対する誤解を訂正し、ロシアが国際的に無責任であるとするイメージを払拭する点にある。現在、イランやヒズボラ、ハマス、フーシ派などの組織は、対イスラエルのメディエーターとしてロシアを信頼しているが、これにはアメリカも状況に応じてロシアの関与を認めざるを得ないと見られている。
ロシアが中東での仲介役を果たすことが認められれば、アメリカもウクライナ情勢においてロシアとの妥協を迫られる可能性があるとし、Newsweekの記事はアメリカ世論のロシアに対する見方を正す長いプロセスの始まりであるとコリブコは示唆している。
【詳細】
米メディア「Newsweek」が、ロシアの中東に対する政策に関して広まっている誤解を訂正する記事を発表したことを受けて、アンドリュー・コリブコがその意義を詳述している。具体的には、米国の主流メディア(MSM)と代替メディア(AMC)が、それぞれの政治的目的のためにロシアの政策を反イスラエル的に描写してきたと指摘し、Newsweekの記事がそのような偏見を正す動きであると評価している。
Newsweek記事の概要と引用
Newsweekの記事「At War in Ukraine, Putin Emerges as Potential Peace Broker in Middle East」では、元イスラエル副国家安全保障顧問のオルナ・ミズラヒ氏のコメントが重要な要素となっている。ミズラヒ氏は、現在イスラエル国立安全保障研究所で上級研究員を務めており、彼女の発言は専門的な見地から信頼できるものとされている。彼女は以下のように述べている。
・イランとの関係に基づくロシアの役割:ミズラヒ氏は、ロシアが現在イランと非常に良好な関係を持っているため、中東地域の安定に貢献する役割を果たせる可能性があると述べている。特に、ヒズボラへの武器流入を制限するための新たな国連安全保障理事会決議が検討されている場合に、ロシアの支持が重要であるとしている。
イスラエルに対するロシアの評価:ミズラヒ氏は、ロシアがイスラエルの軍事能力を高く評価しており、そのためシリアでのイスラエルの空爆に対して妨害行動を取らず、黙認していると述べている。ロシアがシリアに供与したS-300ミサイルシステムをイスラエル攻撃に使用させていないことも、その証左とされている。
ロシアの中東政策の背景
コリブコは、ロシアの中東政策を理解するために、過去の主張や出来事をいくつか挙げ、以下のようなポイントを強調している。
1.テロ事件と人質問題への対応:ロシアは2023年10月7日に発生したテロ事件を非難し、すべての人質の解放、特にロシア・イスラエルの二重国籍者の解放を望んでいる。
2.イスラエルのパレスチナ対応に対する批判:ロシアは、イスラエルによるパレスチナへの「集団的懲罰」を非難しているが、一方で、国連安全保障理事会の決議に基づき、パレスチナ独立国家の設立を支持している。ただし、パレスチナがイスラエルと平和に共存することを求めており、どちらかに偏らないバランスの取れた政策を志向している。
3.制裁への反対:ロシアはイスラエルに対する一方的な制裁には反対しており、この点でもイスラエルと合意しています。これは、イスラエルがロシアに対してウクライナ支援や制裁措置を行わない「非公式の取引」にもつながっています。
プーチンとネタニヤフの「緊密な関係」
コリブコはまた、ロシアとイスラエルの関係を支えるのは、プーチン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の「緊密で個人的な関係」であると指摘している。この関係により、両国は一種の暗黙の了解のもとで協力を続けており、ロシアが中東でのバランスの取れた立場を保つ一因となっている。
Newsweek記事の意義とその影響
Newsweekの記事の重要な意義として、ロシアが「無責任な国際行動を取っている」という偏見が訂正され、イスラエルや中東での仲介者としての役割が再評価されることが挙げられる。コリブコは、アメリカやイスラエルがロシアを仲介者として認めざるを得ない状況に至れば、アメリカは最終的にウクライナ問題においてもロシアと妥協を図る可能性が高まると指摘している。これには、Newsweekを含むメディアがアメリカ国内の世論を徐々に変えていく役割を果たすことが必要であると述べている。
「ポチョムキン主義」による誤解とその影響
コリブコは「ポチョムキン主義(Potemkinism)」という概念を持ち出し、これは「ロシアは反シオニズムであり、イランと協力してパレスチナを軍事的に解放しようとしている」という誤解を意図的に広める行為を指している。AMCの一部では、ロシアが対イスラエル政策で単なる「見せかけの中立」を装っているとする陰謀論的な見解も根強く、これにより多くの人々がロシアの本来の立場を理解していないとしている。コリブコは、ロシアの政策決定は国内外の世論に左右されないため、こうした誤解が影響を及ぼすことはないと述べているが、Newsweekの記事が長期的にこうした誤解を解消するプロセスの第一歩であるとも指摘している。
米国の政治的変化と中東での協力の可能性
最後にコリブコは、アメリカ国内の政治状況も徐々に変化しつつあると述べている。多くの議会議員は依然としてイスラエル支持の立場を崩していないが、Newsweekの記事のようなメディア報道が進むことで、最終的には次期アメリカ大統領がロシアとの協力を通じて中東の平和とウクライナ問題の解決を図る道が開かれる可能性もあると示唆している。
【要点】
1.Newsweekの記事とその意義
・Newsweekの記事は、米国と代替メディア(AMC)が広めた「ロシアの反イスラエル的イメージ」を訂正し、中東での仲介役としてのロシアの立場を再評価するもの。
・イスラエルの元副国家安全保障顧問オルナ・ミズラヒ氏が、ロシアの中東での役割について肯定的に言及している。
2.ロシアの中東政策
・ロシアは、10月7日に発生したテロ事件を非難し、人質解放を求めている。
・イスラエルの「集団的懲罰」を批判しつつも、国連決議に基づくパレスチナの独立を支持。
・イスラエルとの制裁に関する協調を維持し、非公式の「非干渉」取引も存在。
3.プーチンとネタニヤフの個人的関係
・両国関係は、プーチンとネタニヤフの「緊密な個人的関係」に基づいて安定している。
4.「ポチョムキン主義」の誤解
・AMCの一部が「ロシアは反シオニズムで、パレスチナ解放を支援している」との誤解を広めている。
・コリブコは、Newsweekの記事が長期的にこの誤解を解消することに期待している。
5.米国の政策への影響
・米国内での政治変化により、将来的に米国がロシアを仲介役として認め、中東とウクライナ問題で協力する可能性がある。
【引用・参照・底本】
Newsweek Corrected False Perceptions Of Russian Policy Towards Israel Andrew Korybko's Newsletter 2024.11.02
https://korybko.substack.com/p/newsweek-corrected-false-perceptions?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=151063516&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
アンドリュー・コリブコが2024年11月2日に発表したもので、アメリカのメディア「Newsweek」がロシアの中東政策に関する誤解を訂正したという内容を解説している。コリブコは、米国メディアと代替メディア(AMC)が、ロシアの中東政策を反イスラエル的であるとする誤解を助長してきたと指摘し、「Newsweek」がこれを修正する記事を公開したことが驚くべき進展だと述べている。
Newsweekの記事「At War in Ukraine, Putin Emerges as Potential Peace Broker in Middle East」は、元イスラエル副国家安全保障顧問であり現在はイスラエル国立安全保障研究所の上級研究員であるオルナ・ミズラヒのコメントを引用している。彼女は、イランとの良好な関係を築いているロシアが、中東地域での安定に貢献する可能性を持つと述べ、国連安全保障理事会の新たな決議においてロシアの支持を望む意向も示している。また、ロシアはイスラエルの軍事力を高く評価しており、イスラエルのシリアに対する攻撃に干渉していないと述べている。
さらにコリブコは、ロシアの中東政策の背景として以下の要点を示している。
1.ロシアは10月7日の事件をテロ攻撃とし、すべての人質、特にロシア-イスラエルの二重国籍者の解放を望んでいる。
2.しかし、ロシアはパレスチナ人への集団的な懲罰と見なされるイスラエルの対応も非難している。
3.ロシアはパレスチナ独立国家の設立を支持し、イスラエルと共に平和に共存することを望んでいる。
4.ロシアはイスラエルに対する一方的な制裁に反対している。
イスラエル側も、ロシアのこのバランスの取れた政策を評価しており、ウクライナに対する武器提供やロシアに対する制裁を避ける形で応えている。コリブコは、この実用的な関係がプーチンとイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との「緊密で個人的な関係」に基づいていることを指摘している。
Newsweekの記事の意義は、こうしたロシアの政策に対する誤解を訂正し、ロシアが国際的に無責任であるとするイメージを払拭する点にある。現在、イランやヒズボラ、ハマス、フーシ派などの組織は、対イスラエルのメディエーターとしてロシアを信頼しているが、これにはアメリカも状況に応じてロシアの関与を認めざるを得ないと見られている。
ロシアが中東での仲介役を果たすことが認められれば、アメリカもウクライナ情勢においてロシアとの妥協を迫られる可能性があるとし、Newsweekの記事はアメリカ世論のロシアに対する見方を正す長いプロセスの始まりであるとコリブコは示唆している。
【詳細】
米メディア「Newsweek」が、ロシアの中東に対する政策に関して広まっている誤解を訂正する記事を発表したことを受けて、アンドリュー・コリブコがその意義を詳述している。具体的には、米国の主流メディア(MSM)と代替メディア(AMC)が、それぞれの政治的目的のためにロシアの政策を反イスラエル的に描写してきたと指摘し、Newsweekの記事がそのような偏見を正す動きであると評価している。
Newsweek記事の概要と引用
Newsweekの記事「At War in Ukraine, Putin Emerges as Potential Peace Broker in Middle East」では、元イスラエル副国家安全保障顧問のオルナ・ミズラヒ氏のコメントが重要な要素となっている。ミズラヒ氏は、現在イスラエル国立安全保障研究所で上級研究員を務めており、彼女の発言は専門的な見地から信頼できるものとされている。彼女は以下のように述べている。
・イランとの関係に基づくロシアの役割:ミズラヒ氏は、ロシアが現在イランと非常に良好な関係を持っているため、中東地域の安定に貢献する役割を果たせる可能性があると述べている。特に、ヒズボラへの武器流入を制限するための新たな国連安全保障理事会決議が検討されている場合に、ロシアの支持が重要であるとしている。
イスラエルに対するロシアの評価:ミズラヒ氏は、ロシアがイスラエルの軍事能力を高く評価しており、そのためシリアでのイスラエルの空爆に対して妨害行動を取らず、黙認していると述べている。ロシアがシリアに供与したS-300ミサイルシステムをイスラエル攻撃に使用させていないことも、その証左とされている。
ロシアの中東政策の背景
コリブコは、ロシアの中東政策を理解するために、過去の主張や出来事をいくつか挙げ、以下のようなポイントを強調している。
1.テロ事件と人質問題への対応:ロシアは2023年10月7日に発生したテロ事件を非難し、すべての人質の解放、特にロシア・イスラエルの二重国籍者の解放を望んでいる。
2.イスラエルのパレスチナ対応に対する批判:ロシアは、イスラエルによるパレスチナへの「集団的懲罰」を非難しているが、一方で、国連安全保障理事会の決議に基づき、パレスチナ独立国家の設立を支持している。ただし、パレスチナがイスラエルと平和に共存することを求めており、どちらかに偏らないバランスの取れた政策を志向している。
3.制裁への反対:ロシアはイスラエルに対する一方的な制裁には反対しており、この点でもイスラエルと合意しています。これは、イスラエルがロシアに対してウクライナ支援や制裁措置を行わない「非公式の取引」にもつながっています。
プーチンとネタニヤフの「緊密な関係」
コリブコはまた、ロシアとイスラエルの関係を支えるのは、プーチン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の「緊密で個人的な関係」であると指摘している。この関係により、両国は一種の暗黙の了解のもとで協力を続けており、ロシアが中東でのバランスの取れた立場を保つ一因となっている。
Newsweek記事の意義とその影響
Newsweekの記事の重要な意義として、ロシアが「無責任な国際行動を取っている」という偏見が訂正され、イスラエルや中東での仲介者としての役割が再評価されることが挙げられる。コリブコは、アメリカやイスラエルがロシアを仲介者として認めざるを得ない状況に至れば、アメリカは最終的にウクライナ問題においてもロシアと妥協を図る可能性が高まると指摘している。これには、Newsweekを含むメディアがアメリカ国内の世論を徐々に変えていく役割を果たすことが必要であると述べている。
「ポチョムキン主義」による誤解とその影響
コリブコは「ポチョムキン主義(Potemkinism)」という概念を持ち出し、これは「ロシアは反シオニズムであり、イランと協力してパレスチナを軍事的に解放しようとしている」という誤解を意図的に広める行為を指している。AMCの一部では、ロシアが対イスラエル政策で単なる「見せかけの中立」を装っているとする陰謀論的な見解も根強く、これにより多くの人々がロシアの本来の立場を理解していないとしている。コリブコは、ロシアの政策決定は国内外の世論に左右されないため、こうした誤解が影響を及ぼすことはないと述べているが、Newsweekの記事が長期的にこうした誤解を解消するプロセスの第一歩であるとも指摘している。
米国の政治的変化と中東での協力の可能性
最後にコリブコは、アメリカ国内の政治状況も徐々に変化しつつあると述べている。多くの議会議員は依然としてイスラエル支持の立場を崩していないが、Newsweekの記事のようなメディア報道が進むことで、最終的には次期アメリカ大統領がロシアとの協力を通じて中東の平和とウクライナ問題の解決を図る道が開かれる可能性もあると示唆している。
【要点】
1.Newsweekの記事とその意義
・Newsweekの記事は、米国と代替メディア(AMC)が広めた「ロシアの反イスラエル的イメージ」を訂正し、中東での仲介役としてのロシアの立場を再評価するもの。
・イスラエルの元副国家安全保障顧問オルナ・ミズラヒ氏が、ロシアの中東での役割について肯定的に言及している。
2.ロシアの中東政策
・ロシアは、10月7日に発生したテロ事件を非難し、人質解放を求めている。
・イスラエルの「集団的懲罰」を批判しつつも、国連決議に基づくパレスチナの独立を支持。
・イスラエルとの制裁に関する協調を維持し、非公式の「非干渉」取引も存在。
3.プーチンとネタニヤフの個人的関係
・両国関係は、プーチンとネタニヤフの「緊密な個人的関係」に基づいて安定している。
4.「ポチョムキン主義」の誤解
・AMCの一部が「ロシアは反シオニズムで、パレスチナ解放を支援している」との誤解を広めている。
・コリブコは、Newsweekの記事が長期的にこの誤解を解消することに期待している。
5.米国の政策への影響
・米国内での政治変化により、将来的に米国がロシアを仲介役として認め、中東とウクライナ問題で協力する可能性がある。
【引用・参照・底本】
Newsweek Corrected False Perceptions Of Russian Policy Towards Israel Andrew Korybko's Newsletter 2024.11.02
https://korybko.substack.com/p/newsweek-corrected-false-perceptions?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=151063516&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email