COP29最終草案:「豊かな国々による人々と地球への裏切り」2024年11月24日 18:50

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【概要】

 COP29の最終草案では、2035年までに少なくとも年間3000億ドルを開発途上国に供与することが提案されている。これは、化石燃料依存からの脱却と気候変動への適応を支援する目的で、バクー(アゼルバイジャン)で開催されている国連気候変動枠組条約締約国会議(COP29)で発表されたものである。しかし、いくつかの開発途上国は、この額では十分でないとし、より大きな支援を求めている。

 現在の年間1000億ドルの支援と、開発途上国が求めている年間1.3兆ドルとの間を埋める妥協案として、この「少なくとも3000億ドル」という提案が練られた。最貧国グループ(Least Developed Countries)の交渉代表であるエバンズ・ンジェワ氏は、この金額について具体的なコメントを避けつつも「価値のある提案であり、さらに改善を望む」と述べている。フィジーの代表団長ビマン・プラサド氏も「すべての関係者が合意を望んでいる」としつつも、完全に満足しているわけではないとした。

 自然資源保護協議会(NRDC)の会長、マニッシュ・バプタ氏は「この金額は最低限の基準であり、上限ではない。資金増額の圧力は今後さらに高まるだろう」と述べ、道徳的責任だけでなく人類の存続と繁栄にとっても重要であると強調した。

 一方で、批判の声も大きい。インド・ニューデリーを拠点とする科学環境センター(CSE)のアヴァンティカ・ゴスワミ氏は「グローバル・ノースはグローバル・サウスを見捨てた」と指摘し、このプロセスへの信頼回復の機会を逃したと非難した。アフリカのシンクタンク「Power Shift Africa」のモハメド・アドウ氏も「豊かな国々による人々と地球への裏切り」と批判している。パナマのフアン・カルロス・モンテレイ氏は、X(旧Twitter)に「この提案は我々の未来にとって容認できない」と投稿し、目標額が依然として低すぎると訴えた。

 交渉過程では、各国が一堂に会して議論する場から、紛争のある国々が個別に集まる形へと進展した。土曜日の午後にはアゼルバイジャンの議長が3000億ドルを提案する草案を非公式に提示したが、アフリカ諸国や小島嶼国に却下された。その後、最貧国グループや小島嶼国連合(AOSIS)の代表団が会場を去る場面も見られた。

 COP29議長のムフタル・ババイェフ氏は、土曜日遅くに争点の少ない項目を次々と可決し、その中には排出権取引を含む「第6条」も含まれていた。しかし、同条項は「排出削減の実効性を欠き、目標達成を妨げる」として批判も強かった。

 開発途上国の交渉担当者は、豊かな国々が交渉の終盤で時間切れを狙った消耗戦術を取っていると非難した。パナマ代表のモンテレイ氏は「このプロセスが失敗すれば、それは地球と人類にとって致命的な打撃となる」と述べ、交渉の重要性を強調した。

【詳細】

 COP29の最終草案では、2035年までに少なくとも年間3000億ドルを開発途上国に供与することが提案されている。この資金は、化石燃料への依存を減らし、気候変動の影響に適応するための取り組みを支援する目的で、気候変動に対して最も脆弱な国々に対する援助として位置づけられている。今回の提案は、これまでの年間1000億ドルの支援目標と、開発途上国が求める年間1.3兆ドルの目標の間を埋める妥協案とみなされている。

 開発途上国の反応

 この提案に対し、最貧国グループ(Least Developed Countries, LDC)の代表であるエバンズ・ンジェワ氏は、金額について具体的なコメントは避けたものの、「この提案は一定の価値があり、さらに良い結果を期待する」と述べた。また、フィジーの代表団長ビマン・プラサド氏は「すべての関係者が合意を目指している」と前向きな姿勢を示した。しかし、同時に「満足しているわけではない」とし、現状の提案は完全に理想的ではないことを示唆した。

 自然資源保護協議会(Natural Resources Defense Council, NRDC)の会長、マニッシュ・バプタ氏は「この金額は最低限の基準であり、決して上限ではない」と述べ、今後さらに資金提供の増額が求められるだろうと予測した。彼はまた、「この支援は道徳的責任であると同時に、人類の存続と繁栄に不可欠である」と強調している。

 批判と不満

 一方で、批判的な意見も多く聞かれる。ニューデリーを拠点とする科学環境センター(Centre for Science and Environment, CSE)のアヴァンティカ・ゴスワミ氏は、「グローバル・ノースはグローバル・サウスを見捨てた」と厳しく非難し、今回の提案を「多国間プロセスへの信頼を回復する最後のチャンスを逃したもの」と位置づけた。また、アフリカのシンクタンク「Power Shift Africa」のモハメド・アドウ氏は、今回の提案を「豊かな国々による人々と地球への裏切り」と述べている。

 さらに、パナマ代表のフアン・カルロス・モンテレイ氏は、X(旧Twitter)で「この提案は未来にとって受け入れがたい」と述べ、目標額が依然として低すぎる点を強調した。

 交渉過程の詳細

 土曜日、交渉は多国間会合から、対立する国々が個別に集まる形へと進行した。土曜日午後には、COP29議長であるアゼルバイジャンのムフタル・ババイェフ氏が3000億ドルという草案を非公式に提示したが、アフリカ諸国や小島嶼国(Small Island Developing States, SIDS)により即座に却下された。これに対し、最貧国グループや小島嶼国連合(Alliance of Small Island States, AOSIS)の代表団は会場を去るなど、不満が表面化した。

 コロンビアの環境大臣スサナ・モハメド氏は、この出来事について「抗議というよりも強い不満の表明だ」と述べた。最終的に、各国代表が合意に至るためには、多くの課題が残されている。

 第6条の採択とその問題

 また、議論の余地が少ないとされた項目については、土曜日遅くに次々と可決された。その中には、排出権取引を規定する「第6条」が含まれていた。この条項は、汚染者が排出量削減のために炭素クレジットを購入できる市場メカニズムを提供するものだが、多くの批判を集めている。先住民環境ネットワーク(Indigenous Environmental Network)のタマラ・ギルバートソン氏は「このメカニズムは排出削減を実現できず、1.5度目標を妨げている」と指摘した。

 政策専門家であるイサ・ムルダー氏も「第6条の欠陥は残ったままであり、予防措置を講じる代わりに不十分なルールを受け入れる形となった」と述べ、各国がその後の影響を軽視した結果だと批判している。

 議長国の視点と疲弊する交渉者たち

 アゼルバイジャン議長は、今回の交渉を成功と位置づけ、第6条の採択により「排出削減のための重要なツールが解放された」と主張した。一方で、開発途上国の代表者たちは、交渉が長引く中で次第に疲弊していった。パナマのモンテレイ氏は「豊かな国々は、交渉を引き延ばすことで私たちを弱らせる。彼らには大規模な代表団があるが、私たちは限られたリソースしかない」と語った。

 彼はまた「合意が得られなければ、このプロセス、地球、人類にとって致命的な打撃となるだろう」と述べ、交渉の重要性を強調した。

 今後の展望

 最終的な合意案が採択されるかどうかは不透明である。3000億ドルの提案が進展の一歩となるのか、それとも開発途上国のさらなる不満を呼び起こすのか、引き続き注視が必要である。気候変動という地球規模の課題に対し、各国がどのように妥協と協力を進めるのかが試されている。

【要点】 
 
 COP29最終草案のポイント(箇条書き)

 1.資金提案の概要

 ・2035年までに先進国が年間3000億ドルを開発途上国に供与することを提案。
 ・現行の年間1000億ドルからの増額だが、途上国が求める1.3兆ドルには遠く及ばない。

 2.開発途上国の反応

 ・LDC(最貧国グループ)のエバンズ・ンジェワ氏:「金額は一定の価値があるが、さらに良い結果を期待する」とコメント。
 ・フィジー代表団:「完全には満足していないが、合意を目指す姿勢は共有している」と表明。
 ・自然資源保護協議会(NRDC)の会長:「最低限の基準であり、将来的に増額が求められる」。

 3.批判と不満

 ・CSE(科学環境センター)のアヴァンティカ・ゴスワミ氏:「グローバル・ノース(先進国)はグローバル・サウス(途上国)を見捨てた」と非難。
 ・アフリカのシンクタンク「Power Shift Africa」のモハメド・アドウ氏:「豊かな国々による人々と地球への裏切り」。
 ・パナマ代表のフアン・カルロス・モンテレイ氏:「この提案は受け入れがたく、目標額が低すぎる」と批判。

 4.交渉過程の詳細

 ・土曜日には大規模会合から個別会議へ移行。
 ・アゼルバイジャン議長が「3000億ドル」の草案を非公式に提示するも、アフリカ諸国や小島嶼国から拒絶される。
 ・最貧国グループや小島嶼国連合が一時的に会場を離れる事態も発生。

 5.第6条の採択

 ・排出権取引に関するメカニズムを含む第6条が採択されたが、多くの批判が寄せられる。
 ・批判例:排出権取引が実効性を欠き、1.5度目標を妨げるとの指摘(先住民環境ネットワーク、政策専門家など)。

 6.議長国の主張と交渉の困難

 ・アゼルバイジャン議長は第6条の採択を「排出削減のための重要なツール」と評価。
 ・パナマ代表が「先進国は交渉を引き延ばし、途上国を弱らせる」と批判。

 7.今後の展望

 ・最終草案が採択されるかは不透明。
 ・3000億ドルの提案が進展の一歩となるか、さらなる不満を招くかが注目されている。

【引用・参照・底本】

COP29 final draft proposes 'at least' $300 billion for developing countries FRANCE24 2024.11.23
https://www.france24.com/en/asia-pacific/20241123-rich-nations-raise-cop29-climate-finance-offer-in-bid-to-rescue-stalled-talks?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020241124&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

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