マルコス・ジュニア大統領:国内政治の背景と状況2024年11月28日 20:00

【概要】
  
 フィリピンにおける政治的緊張とその国際的影響について報じている。以下に内容を忠実に詳しく説明する。

 フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は、次回の中間選挙で彼の政権を支持する候補者が圧勝する可能性が高いと見られており、自身の政治的地位を強固にする見通しである。アメリカとの防衛協力も強化されると予測されており、特にアメリカの次期政権が対中強硬派で構成されることから、フィリピンは戦略的同盟国として重視される立場にある。

 しかし、国内では副大統領のサラ・ドゥテルテ氏との深刻な対立が発生している。サラ氏は最近の公開発言でマルコス氏やその家族、またその支持者に対する暗殺計画をほのめかす発言を行った。この発言は後に撤回されたものの、マラカニアン宮殿(大統領官邸)はこれを「明白かつ積極的な脅威」と非難し、国家捜査局(NBI)がサラ氏に召喚状を送付する事態に発展した。

 この対立の背景には、マルコス政権がドゥテルテ一家に対する汚職や過去の麻薬戦争に関する調査を進めていることがある。これに対し、サラ氏の父で前大統領のロドリゴ・ドゥテルテ氏はマルコス氏を「麻薬中毒者」と批判し、軍に対し政権支持を撤回するよう求める発言を行った。さらに彼はミンダナオ島の独立を示唆するなど、政局を不安定化させる発言を繰り返している。

 フィリピン軍(AFP)は憲法と指揮系統への忠誠を強調しており、クーデターの可能性を否定しているが、軍内部にはドゥテルテ派の影響力が残存しているとも指摘されている。

 一方、中国がドゥテルテ一家を支援し、フィリピン国内の分断を助長しているとの疑惑も報じられている。具体的には、中国が親中派の勢力を強化するための情報操作やソーシャルメディアキャンペーンを展開している可能性がある。また、南シナ海での緊張も継続しており、中国がフィリピンの排他的経済水域(EEZ)に侵入し、マルコス政権の立場を弱体化させる行動を取っているとされている。

 これに対し、アメリカはフィリピンを支援するため「Task Force Ayungin」を設立し、現地での補給活動を支援している。これらの動きは、フィリピン国内の政治的不安定さと、中国との対立がいかに国際的な影響を及ぼしているかを示している。

 要するに、マルコス大統領は国内外で同時に複雑な課題に直面しており、特にドゥテルテ一家と中国の連携がその課題をさらに深刻なものにしている。

【詳細】

 この記事は、フィリピンにおける政治的混乱とその背後にある要因を国際的な視点も交えながら詳細に報じている。以下にさらに詳しく説明する。

 1. 国内政治の背景と状況

 フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領は、来年の中間選挙を目前に控え、政権支持基盤の強化を進めている。調査では、マルコス氏を支持する候補者が選挙で圧倒的な勝利を収める可能性が高く、これは政権の安定性を示すものとされる。一方で、マルコス政権が元大統領ロドリゴ・ドゥテルテ一家に対して腐敗や権力乱用の調査を進めたことを契機に、両者の関係は急速に悪化している。

 副大統領サラ・ドゥテルテ氏は、マルコス氏を公然と批判し、暗殺をほのめかす発言をするなど、緊張を一層高めている。彼女の発言には、マルコス大統領のみならず、その妻リサ・アラネタ氏や親族であり下院議長を務めるマーティン・ロムアルデス氏をも標的に含めたものが含まれていた。この発言が国内外で波紋を呼び、後に撤回されたものの、政府はこれを深刻な脅威と捉え、国家捜査局(NBI)が正式に調査を開始している。

 2. 軍の役割とクーデターの可能性

 フィリピン軍(AFP)は、歴史的に政権交代やクーデターに関与してきた背景がある。マルコス氏の父であるマルコス・シニア政権の崩壊やエストラダ政権の退陣には、軍の関与が重要な役割を果たした。サラ・ドゥテルテ氏の父であるロドリゴ・ドゥテルテ前大統領は、軍に対してマルコス政権からの支持撤回を求め、事実上のクーデターを示唆する発言を行った。

 現AFPトップであるロメオ・ブラウナー将軍は、軍が憲法と指揮系統への忠誠を誓っていると明言し、非政治的立場を強調している。しかし、過去にドゥテルテ氏が軍部や警察に対して強い影響力を行使していた経緯もあり、一部の元将校や現役の軍関係者が依然としてドゥテルテ派に親和性を持つ可能性が指摘されている。

 軍内部における不満や分裂が表面化すれば、サラ・ドゥテルテ氏に対する弾劾手続きや刑事告発の進展に影響を及ぼす可能性がある。現時点では、サラ氏の弾劾が成立する可能性は低いとされるが、状況は軍の動向や政権支持基盤の安定性次第で変化し得る。

 3. 中国の関与と情報戦

 フィリピン国内の政治的不安定さの背後には、中国の関与が疑われている。ロドリゴ・ドゥテルテ政権は親中政策を推進し、南シナ海問題において中国寄りの姿勢を取ることが多かった。これに対し、マルコス政権はアメリカとの防衛協力を強化し、中国の南シナ海における行動を強く非難する立場を取っている。

 最近の報告によると、中国はフィリピン国内で親中派の影響力を高めるため、ディープフェイク映像を含む情報操作やソーシャルメディアキャンペーンを展開している。このような活動は、マルコス政権の評判を傷つけ、ドゥテルテ派の立場を強化することを目的としている可能性が高い。

 4. 南シナ海問題と国際関係

 南シナ海における領有権を巡る緊張は続いており、中国はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)に偽装した海上民兵船を送り込むなど、圧力を強化している。この状況に対抗するため、アメリカは「Task Force Ayungin」を設立し、フィリピンの補給活動を間接的に支援している。

 アメリカの支援はマルコス政権の国際的な地位を強化するが、これが中国との緊張をさらに高めるリスクもある。中国がドゥテルテ一家を通じてフィリピン国内の不安定化を図りつつ、南シナ海での影響力を拡大しようとしているとの懸念が強まっている。

 5. まとめ

 マルコス大統領は現在、国内政治と国際情勢の双方で複雑な課題に直面している。特に、サラ・ドゥテルテ氏とその支持者が政権の安定性を揺るがし、中国がその状況を利用して影響力を拡大する構図が明確化している。フィリピンの未来は、マルコス氏が国内の政治的対立と南シナ海問題の国際的影響にどのように対応するかに大きく依存している。
 
【要点】 

 1.国内政治の背景

 ・マルコス・ジュニア大統領は、中間選挙を控え政権基盤を強化中。
 ・サラ・ドゥテルテ副大統領がマルコス政権を批判し、暗殺発言を撤回するも緊張激化。
 ・国家捜査局(NBI)がサラ氏の発言について調査開始。

 2.軍の役割とクーデターの可能性

 ・フィリピン軍(AFP)は歴史的に政権交代に関与してきた。
 ・サラ氏の父、ロドリゴ・ドゥテルテ元大統領は軍に政権支持撤回を呼びかけ。
 ・現AFPトップは軍の中立を強調するも、内部にドゥテルテ派の支持が残存する可能性あり。

 3.サラ・ドゥテルテ氏への弾劾の可能性

 ・弾劾手続きは進行中だが成立の見込みは低い。
 ・軍の動向や政権支持基盤次第で状況が変化する可能性。

 4.中国の関与と情報戦

 ・中国は親中派の影響力を強化するため、情報操作やディープフェイクを利用。
 ・中国の狙いは、マルコス政権の評判を損なうとともに、ドゥテルテ派の台頭を支援すること。

 6.南シナ海問題

 ・中国がフィリピンの排他的経済水域(EEZ)で圧力を強化。
 ・アメリカは「Task Force Ayungin」を設立し、フィリピンへの補給活動を支援。
 ・マルコス政権はアメリカとの協力を強化しつつ、中国を非難。

 7.国際的な影響

 ・アメリカの支援でマルコス政権の国際的立場が強化。
 ・しかし、中国との緊張が一層高まるリスクも。

 8.総括

 ・フィリピンは国内政治の対立と南シナ海問題という二重の課題に直面。
 ・政権の安定と国際的な対応が今後の情勢を左右する。

【引用・参照・底本】

Philippines: Marcos-Duterte feud puts China in the heated middle ASIATIMES 2024.11.26
https://asiatimes.com/2024/11/philippines-marcos-duterte-feud-puts-china-in-the-heated-middle/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=5b94d8c808-DAILY_27_11_2024&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-5b94d8c808-16242795&mc_cid=5b94d8c808&mc_eid=69a7d1ef3c

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