ニカラグア:2018年の米国支援下の反政府クーデター ― 2025年03月08日 17:13
【概要】
2025年3月7日に『The Grayzone』が発表した記事は、国連のニカラグア人権報告書に対する批判を詳細に述べている。同報告書は、2018年の米国支援下の反政府クーデター試行における犠牲者を無視し、反政府勢力の暴力を軽視していると指摘される。以下は主な論点である。
背景:2018年のクーデター試行と国連報告書の偏り
反政府勢力による暴力の実態
2018年4月から7月にかけて、米国支援を受けた反政府勢力が左派サンディニスタ政権の転覆を試みた。この際、武装した反政府グループは道路封鎖(トランケ)や襲撃を行い、サンディニスタ支持者や警察官を殺害・拷問した。マサヤ市の倉庫警備員レイナルド・ウルビナは、反政府勢力に左腕を銃床で砕かれ切断されたが、国連調査団は彼の証言を拒否した。
国連報告書の不均衡な内容:
2018年8月の国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報告書は、反政府勢力の暴力をわずか5段落で扱い、残りを政府側の責任に帰した。同様に、2022年に国連人権理事会(UNHRC)が設置した「ニカラグア人権専門家グループ(GHREN)」の2023年・2024年報告書も、反政府勢力の犯罪を「一般的な犯罪」とみなし、政権批判に偏ったと批判される。
批判の核心
フェリックス・マラディアガの関与
米政府資金を受けたシンクタンク「IEEPP」の代表で、2018年クーデターの主要組織者であるマラディアガが、2025年2月のUNHRC会合で「人権擁護者」として証言した。彼は2021年に国家反逆罪で逮捕されたが米国へ亡命し、UNHRCから賞を受けた。この姿勢は、パレスチナ支持を表明するニカラグア政府を孤立させるイスラエル・ロビー団体「UN Watch」の関与とも連動する。
GHREN報告書の方法論的欠陥
2018年の死亡者253人のうち、22人が警察官、152人が一般市民(多くが反政府派のトランケで殺害)である事実を無視。
サンディニスタ支持者や警察側の被害を調査せず、クーデター試行を「正当な抗議」と位置付けた。
ニカラグア政府が提出した証拠や国際法律家アルフレッド・デ・ザヤスらの批判に対し、一切の回答を行わなかった。
米国の政治的意図との連動
米上院議員マルコ・ルビオは、2025年2月に中米右派政権を訪問し、ニカラグアへの制裁強化を呼びかけた。GHREN報告書は、中米自由貿易協定(CAFTA)の「民主主義条項」適用を提言したが、同協定に具体的な条項は存在せず、国際法違反の制裁を助長すると批判される。
ニカラグア政府の対応
UNHRCからの脱退
2025年2月、ニカラグア政府はUNHRCを「政権転覆勢力のプラットフォーム」と非難し、脱退を表明。過去にも国連機関の調査協力を拒否しており、一貫して「偏向した人権レッテル貼り」に対抗する姿勢を示した。
まとめ
国連報告書が米国の対ニカラグア政策に沿い、反政府勢力の暴力を隠蔽することで「人権」を政治的に利用していると結論付ける。一方で、ウルビナのような被害者は国際的に不可視化され、経済制裁により一般市民がさらなる打撃を受ける構造を指摘する。この構図は、米国が敵対する左派政権(ベネズエラ・キューバなど)に対する「人権を盾にした干渉」の一例と位置付けられる。
【詳細】
国連人権理事会(UNHRC)が発表したニカラグアに関する報告書が偏向しており、2018年の暴力的なクーデター未遂における米国支援の反政府勢力の犯罪行為を無視していると批判する内容である。特に、米国政府の資金援助を受けた活動家フェリックス・マラディアガ(Felix Maradiaga)を「被害者」として扱う一方で、クーデターを主導した勢力による暴力の犠牲者には耳を貸していない点を問題視している。
1. 2018年のニカラグア危機とUNHRCの対応
2018年4月から7月にかけて、ニカラグアではサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)のダニエル・オルテガ大統領に対する暴動が発生した。政府はこれをクーデター未遂と見なしており、反政府勢力は「正当な抗議活動」だったと主張している。しかし、この暴動が米国の支援を受けたものであり、組織的な暴力が伴っていたと指摘する。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は2018年8月に40ページの報告書を発表したが、反政府勢力による暴力に関する記述はわずか5段落にとどまり、ほぼ全ての暴力事件の責任を政府側に帰している。例えば親政府系のラジオ局が放火された事件など、反政府勢力による攻撃を無視していると批判している。
2. 反政府勢力による暴力の無視
2018年に反政府勢力による暴力の犠牲となったレイナルド・ウルビナ(Reynaldo Urbina)の事例を取り上げている。彼はマサヤ市の倉庫を守っていたが、反政府デモ隊に襲撃され、腕を銃床で叩き潰された。結果として彼の左腕は切断せざるを得なくなった。しかし、国連の調査団は彼の証言を無視し、報告書に反政府勢力の暴力を適切に反映させなかった。
また、米州人権委員会(IACHR)の元事務局長パウロ・アブラォン(Paulo Abrão)とのやり取りを紹介し、彼が「人権侵害は国家によってのみ行われるものであり、市民団体による暴力は単なる犯罪行為である」として、反政府勢力の暴力を調査しない方針を取ったと述べている。
3. フェリックス・マラディアガの関与
UNHRCの2025年2月28日の会合において、フェリックス・マラディアガが証言したことを問題視している。マラディアガは2018年の暴動を組織した中心人物の一人であり、米国の国家民主主義基金(NED)から資金を受けていた。ニカラグア警察は彼を殺人を含む組織犯罪の指揮を執ったとして起訴したが、2019年の恩赦により釈放。その後2021年に「反逆罪」で再逮捕されたが、再び釈放され米国に亡命した。
彼は2023年にUNHRCから「人権擁護者」として表彰され、2025年の会合でもニカラグア政府を非難する証言を行った。この記事では、彼が「被害者」として扱われる一方で、彼の過去の犯罪行為が一切言及されないことを批判している。
4. UNHRCとイスラエルの関係
また、UNHRCの会合においてマラディアガの証言を主催したのが「UN Watch」というイスラエル寄りのロビー団体である点にも言及している。ニカラグアはパレスチナ支持を明確に打ち出し、2024年にはドイツをイスラエルの戦争犯罪支援で提訴している。そのため、イスラエル寄りの団体がニカラグアの反政府勢力を支援する背景には、政治的な思惑があるのではないかと指摘している。
5. ニカラグア政府の反応
ニカラグア政府は、UNHRCが「ニカラグアの不安定化を企てた人物を擁護する場になっている」と非難し、2025年2月27日にUNHRCからの「不可逆的な脱退」を表明した。
政府はまた、UNHRCが設置した「ニカラグア人権専門家グループ(GHREN)」の報告書を強く批判している。この報告書は、2018年以降の人権状況を調査する目的で作成されたが、記事はこれを「極端に偏向した文書」と断じている。特に、反政府勢力による暴力行為を無視し、政府の取り締まりだけを非難している点が問題視されている。
6. GHRENの信頼性への疑問
GHRENの過去の報告書(2023年3月、2024年3月)も同様に偏向しており、反政府勢力の暴力について十分に触れていないと批判している。2023年の300ページの報告書に対しては、119の組織と573人の専門家が批判の手紙を送ったが、UNHRCはこれに応じなかった。
さらに、2024年3月の報告書に対しても国際法の専門家アルフレッド・デ・ザヤス(Alfred de Zayas)が「方法論的に欠陥があり、出版されるべきではなかった」と指摘した。GHRENはニカラグア政府に対して「報告書への反論の機会を与えたが応じなかった」と主張しているが、記事では「政府側が証拠を提示しようとしても受け入れられなかった」と反論している。
7. 結論
UNHRCとGHRENが「独立性、公平性、客観性、透明性、誠実性」を掲げながらも、実際には「ワシントンの対立国を非難するための道具」と化していると批判している。ニカラグア政府は、このような一方的な報告書を発表するGHRENの解散を要求したが、無視されたとしている。
最終的に、UNHRCが「米国の政敵を攻撃するための機関」となっており、ニカラグアだけでなくキューバやベネズエラも同様の扱いを受けていると主張している。特にGHRENは「最初からニカラグア政府を非難するために設立された」として、その信頼性を完全に否定している。
総括
UNHRCの報告書が米国の影響を強く受け、反政府勢力による暴力を意図的に無視していると主張している。2018年のニカラグア危機において、政府側が一方的に加害者とされる一方で、クーデターを主導した勢力の犯罪行為が無視されていると指摘。GHRENの報告書は偏向しており、国連の「人権調査」としての信頼性を損ねていると強調している。
【要点】
1. 2018年のニカラグア危機とUNHRCの対応
・2018年4月~7月にニカラグアで暴動が発生し、政府はこれをクーデター未遂と認識。
・反政府勢力は「正当な抗議活動」と主張したが、米国の支援を受けた組織的な暴力が伴っていた。
・国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の2018年の報告書は、ほぼすべての暴力事件の責任を政府に帰した。
・反政府勢力による暴力(親政府系ラジオ局の放火など)が適切に報告されなかった。
2. 反政府勢力による暴力の無視
・例:レイナルド・ウルビナは反政府デモ隊に襲撃され左腕を切断する重傷を負ったが、UNHRCは無視。
・米州人権委員会(IACHR)のパウロ・アブラォン元事務局長は、反政府勢力の暴力を「単なる犯罪行為」とし、調査対象から外した。
3. フェリックス・マラディアガの関与
・2018年の暴動を組織した中心人物で、米国の国家民主主義基金(NED)から資金提供を受けていた。
・2019年に恩赦で釈放、2021年に「反逆罪」で再逮捕されたが、その後米国へ亡命。
・2025年2月28日のUNHRC会合で「人権擁護者」として証言したが、過去の犯罪行為には触れられず。
4. UNHRCとイスラエルの関係
・マラディアガの証言を主催したのはイスラエル寄りのロビー団体「UN Watch」。
・ニカラグアはパレスチナ支持を明確に打ち出しており、イスラエルが反政府勢力を支援する政治的背景が指摘される。
5. ニカラグア政府の反応
・2025年2月27日にUNHRCから「不可逆的な脱退」を表明。
・UNHRCの「ニカラグア人権専門家グループ(GHREN)」の報告書は「極端に偏向している」と批判。
・反政府勢力の暴力が無視され、政府のみが一方的に非難されている。
6. GHRENの信頼性への疑問
・2023年の300ページの報告書に対し、119組織・573人の専門家が抗議。
・2024年の報告書も国際法専門家アルフレッド・デ・ザヤスが「出版すべきでない」と批判。
・GHRENは「政府側に反論の機会を与えた」と主張するが、実際には受け入れなかった。
7. 結論
・UNHRCとGHRENは「独立性、公平性、客観性、透明性、誠実性」を掲げるが、実際には「ワシントンの対立国を非難する道具」となっている。
・ニカラグアだけでなく、キューバやベネズエラも同様の扱いを受けている。
・GHRENは「最初からニカラグア政府を非難する目的で設立された」として、その信頼性を否定。
【引用・参照・底本】
‘Biased’ UN report on Nicaragua ignores victims of US-backed opposition violence GRAYZONE 2025.03.07
https://thegrayzone.substack.com/p/biased-un-report-on-nicaragua-ignores?utm_source=post-email-title&publication_id=474765&post_id=158564311&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ニカラグアの暴動について(外務報道官談話) 外務省 平成30年7月3日
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_004172.html
2025年3月7日に『The Grayzone』が発表した記事は、国連のニカラグア人権報告書に対する批判を詳細に述べている。同報告書は、2018年の米国支援下の反政府クーデター試行における犠牲者を無視し、反政府勢力の暴力を軽視していると指摘される。以下は主な論点である。
背景:2018年のクーデター試行と国連報告書の偏り
反政府勢力による暴力の実態
2018年4月から7月にかけて、米国支援を受けた反政府勢力が左派サンディニスタ政権の転覆を試みた。この際、武装した反政府グループは道路封鎖(トランケ)や襲撃を行い、サンディニスタ支持者や警察官を殺害・拷問した。マサヤ市の倉庫警備員レイナルド・ウルビナは、反政府勢力に左腕を銃床で砕かれ切断されたが、国連調査団は彼の証言を拒否した。
国連報告書の不均衡な内容:
2018年8月の国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報告書は、反政府勢力の暴力をわずか5段落で扱い、残りを政府側の責任に帰した。同様に、2022年に国連人権理事会(UNHRC)が設置した「ニカラグア人権専門家グループ(GHREN)」の2023年・2024年報告書も、反政府勢力の犯罪を「一般的な犯罪」とみなし、政権批判に偏ったと批判される。
批判の核心
フェリックス・マラディアガの関与
米政府資金を受けたシンクタンク「IEEPP」の代表で、2018年クーデターの主要組織者であるマラディアガが、2025年2月のUNHRC会合で「人権擁護者」として証言した。彼は2021年に国家反逆罪で逮捕されたが米国へ亡命し、UNHRCから賞を受けた。この姿勢は、パレスチナ支持を表明するニカラグア政府を孤立させるイスラエル・ロビー団体「UN Watch」の関与とも連動する。
GHREN報告書の方法論的欠陥
2018年の死亡者253人のうち、22人が警察官、152人が一般市民(多くが反政府派のトランケで殺害)である事実を無視。
サンディニスタ支持者や警察側の被害を調査せず、クーデター試行を「正当な抗議」と位置付けた。
ニカラグア政府が提出した証拠や国際法律家アルフレッド・デ・ザヤスらの批判に対し、一切の回答を行わなかった。
米国の政治的意図との連動
米上院議員マルコ・ルビオは、2025年2月に中米右派政権を訪問し、ニカラグアへの制裁強化を呼びかけた。GHREN報告書は、中米自由貿易協定(CAFTA)の「民主主義条項」適用を提言したが、同協定に具体的な条項は存在せず、国際法違反の制裁を助長すると批判される。
ニカラグア政府の対応
UNHRCからの脱退
2025年2月、ニカラグア政府はUNHRCを「政権転覆勢力のプラットフォーム」と非難し、脱退を表明。過去にも国連機関の調査協力を拒否しており、一貫して「偏向した人権レッテル貼り」に対抗する姿勢を示した。
まとめ
国連報告書が米国の対ニカラグア政策に沿い、反政府勢力の暴力を隠蔽することで「人権」を政治的に利用していると結論付ける。一方で、ウルビナのような被害者は国際的に不可視化され、経済制裁により一般市民がさらなる打撃を受ける構造を指摘する。この構図は、米国が敵対する左派政権(ベネズエラ・キューバなど)に対する「人権を盾にした干渉」の一例と位置付けられる。
【詳細】
国連人権理事会(UNHRC)が発表したニカラグアに関する報告書が偏向しており、2018年の暴力的なクーデター未遂における米国支援の反政府勢力の犯罪行為を無視していると批判する内容である。特に、米国政府の資金援助を受けた活動家フェリックス・マラディアガ(Felix Maradiaga)を「被害者」として扱う一方で、クーデターを主導した勢力による暴力の犠牲者には耳を貸していない点を問題視している。
1. 2018年のニカラグア危機とUNHRCの対応
2018年4月から7月にかけて、ニカラグアではサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)のダニエル・オルテガ大統領に対する暴動が発生した。政府はこれをクーデター未遂と見なしており、反政府勢力は「正当な抗議活動」だったと主張している。しかし、この暴動が米国の支援を受けたものであり、組織的な暴力が伴っていたと指摘する。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は2018年8月に40ページの報告書を発表したが、反政府勢力による暴力に関する記述はわずか5段落にとどまり、ほぼ全ての暴力事件の責任を政府側に帰している。例えば親政府系のラジオ局が放火された事件など、反政府勢力による攻撃を無視していると批判している。
2. 反政府勢力による暴力の無視
2018年に反政府勢力による暴力の犠牲となったレイナルド・ウルビナ(Reynaldo Urbina)の事例を取り上げている。彼はマサヤ市の倉庫を守っていたが、反政府デモ隊に襲撃され、腕を銃床で叩き潰された。結果として彼の左腕は切断せざるを得なくなった。しかし、国連の調査団は彼の証言を無視し、報告書に反政府勢力の暴力を適切に反映させなかった。
また、米州人権委員会(IACHR)の元事務局長パウロ・アブラォン(Paulo Abrão)とのやり取りを紹介し、彼が「人権侵害は国家によってのみ行われるものであり、市民団体による暴力は単なる犯罪行為である」として、反政府勢力の暴力を調査しない方針を取ったと述べている。
3. フェリックス・マラディアガの関与
UNHRCの2025年2月28日の会合において、フェリックス・マラディアガが証言したことを問題視している。マラディアガは2018年の暴動を組織した中心人物の一人であり、米国の国家民主主義基金(NED)から資金を受けていた。ニカラグア警察は彼を殺人を含む組織犯罪の指揮を執ったとして起訴したが、2019年の恩赦により釈放。その後2021年に「反逆罪」で再逮捕されたが、再び釈放され米国に亡命した。
彼は2023年にUNHRCから「人権擁護者」として表彰され、2025年の会合でもニカラグア政府を非難する証言を行った。この記事では、彼が「被害者」として扱われる一方で、彼の過去の犯罪行為が一切言及されないことを批判している。
4. UNHRCとイスラエルの関係
また、UNHRCの会合においてマラディアガの証言を主催したのが「UN Watch」というイスラエル寄りのロビー団体である点にも言及している。ニカラグアはパレスチナ支持を明確に打ち出し、2024年にはドイツをイスラエルの戦争犯罪支援で提訴している。そのため、イスラエル寄りの団体がニカラグアの反政府勢力を支援する背景には、政治的な思惑があるのではないかと指摘している。
5. ニカラグア政府の反応
ニカラグア政府は、UNHRCが「ニカラグアの不安定化を企てた人物を擁護する場になっている」と非難し、2025年2月27日にUNHRCからの「不可逆的な脱退」を表明した。
政府はまた、UNHRCが設置した「ニカラグア人権専門家グループ(GHREN)」の報告書を強く批判している。この報告書は、2018年以降の人権状況を調査する目的で作成されたが、記事はこれを「極端に偏向した文書」と断じている。特に、反政府勢力による暴力行為を無視し、政府の取り締まりだけを非難している点が問題視されている。
6. GHRENの信頼性への疑問
GHRENの過去の報告書(2023年3月、2024年3月)も同様に偏向しており、反政府勢力の暴力について十分に触れていないと批判している。2023年の300ページの報告書に対しては、119の組織と573人の専門家が批判の手紙を送ったが、UNHRCはこれに応じなかった。
さらに、2024年3月の報告書に対しても国際法の専門家アルフレッド・デ・ザヤス(Alfred de Zayas)が「方法論的に欠陥があり、出版されるべきではなかった」と指摘した。GHRENはニカラグア政府に対して「報告書への反論の機会を与えたが応じなかった」と主張しているが、記事では「政府側が証拠を提示しようとしても受け入れられなかった」と反論している。
7. 結論
UNHRCとGHRENが「独立性、公平性、客観性、透明性、誠実性」を掲げながらも、実際には「ワシントンの対立国を非難するための道具」と化していると批判している。ニカラグア政府は、このような一方的な報告書を発表するGHRENの解散を要求したが、無視されたとしている。
最終的に、UNHRCが「米国の政敵を攻撃するための機関」となっており、ニカラグアだけでなくキューバやベネズエラも同様の扱いを受けていると主張している。特にGHRENは「最初からニカラグア政府を非難するために設立された」として、その信頼性を完全に否定している。
総括
UNHRCの報告書が米国の影響を強く受け、反政府勢力による暴力を意図的に無視していると主張している。2018年のニカラグア危機において、政府側が一方的に加害者とされる一方で、クーデターを主導した勢力の犯罪行為が無視されていると指摘。GHRENの報告書は偏向しており、国連の「人権調査」としての信頼性を損ねていると強調している。
【要点】
1. 2018年のニカラグア危機とUNHRCの対応
・2018年4月~7月にニカラグアで暴動が発生し、政府はこれをクーデター未遂と認識。
・反政府勢力は「正当な抗議活動」と主張したが、米国の支援を受けた組織的な暴力が伴っていた。
・国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の2018年の報告書は、ほぼすべての暴力事件の責任を政府に帰した。
・反政府勢力による暴力(親政府系ラジオ局の放火など)が適切に報告されなかった。
2. 反政府勢力による暴力の無視
・例:レイナルド・ウルビナは反政府デモ隊に襲撃され左腕を切断する重傷を負ったが、UNHRCは無視。
・米州人権委員会(IACHR)のパウロ・アブラォン元事務局長は、反政府勢力の暴力を「単なる犯罪行為」とし、調査対象から外した。
3. フェリックス・マラディアガの関与
・2018年の暴動を組織した中心人物で、米国の国家民主主義基金(NED)から資金提供を受けていた。
・2019年に恩赦で釈放、2021年に「反逆罪」で再逮捕されたが、その後米国へ亡命。
・2025年2月28日のUNHRC会合で「人権擁護者」として証言したが、過去の犯罪行為には触れられず。
4. UNHRCとイスラエルの関係
・マラディアガの証言を主催したのはイスラエル寄りのロビー団体「UN Watch」。
・ニカラグアはパレスチナ支持を明確に打ち出しており、イスラエルが反政府勢力を支援する政治的背景が指摘される。
5. ニカラグア政府の反応
・2025年2月27日にUNHRCから「不可逆的な脱退」を表明。
・UNHRCの「ニカラグア人権専門家グループ(GHREN)」の報告書は「極端に偏向している」と批判。
・反政府勢力の暴力が無視され、政府のみが一方的に非難されている。
6. GHRENの信頼性への疑問
・2023年の300ページの報告書に対し、119組織・573人の専門家が抗議。
・2024年の報告書も国際法専門家アルフレッド・デ・ザヤスが「出版すべきでない」と批判。
・GHRENは「政府側に反論の機会を与えた」と主張するが、実際には受け入れなかった。
7. 結論
・UNHRCとGHRENは「独立性、公平性、客観性、透明性、誠実性」を掲げるが、実際には「ワシントンの対立国を非難する道具」となっている。
・ニカラグアだけでなく、キューバやベネズエラも同様の扱いを受けている。
・GHRENは「最初からニカラグア政府を非難する目的で設立された」として、その信頼性を否定。
【引用・参照・底本】
‘Biased’ UN report on Nicaragua ignores victims of US-backed opposition violence GRAYZONE 2025.03.07
https://thegrayzone.substack.com/p/biased-un-report-on-nicaragua-ignores?utm_source=post-email-title&publication_id=474765&post_id=158564311&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
ニカラグアの暴動について(外務報道官談話) 外務省 平成30年7月3日
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_004172.html