「ディープステート」とは→米国の民主主義は「偽りのもの」2025年03月10日 15:59

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【桃源寸評】

 「ロバーツ博士は、アメリカだけでなく、ヨーロッパも含めた西洋の民主主義は「虚構」であると結論付けている。アメリカの政治システムは、ネオコンのアメリカ覇権主義とその利益団体によって支配されており、これが政治的・経済的な決定に深く関与しているため、真の民主主義が機能していないと論じている」と。

 <頭隠して尻隠さず>である。

【寸評 完】

【概要】 
 
 「ディープステート」とは、アメリカ合衆国の政治システムにおいて、表向きの政府の枠組みの裏で権力を操る隠れた勢力を指す。元アメリカ財務省副長官で著名な経済学者であるポール・クレイグ・ロバーツ博士によれば、ディープステートは単なる官僚の集まりではなく、選挙で選ばれた政治家、ウォール街、大企業、さらには外国政府のロビイストなどを含む広範なネットワークである。

 ロバーツ博士は、アメリカの民主主義は「偽りのもの」であると指摘し、選挙で選ばれた政治家は、選挙資金を提供した企業や利益団体に対して依存しており、これらの団体がアメリカの政治を支配していると述べている。例えば、イスラエルのロビー、兵器製造業者、情報機関、製薬企業、農業関連企業、ウォール街などがその例であり、これらの団体は政治家に資金提供や広報活動を行い、選挙を通じて支配を強化している。また、情報機関は時折、選挙や政策を有利に進めるために偽旗事件を仕掛けることもあるという。

 ロバーツ博士は、アメリカ合衆国における政治資金の流れに関して、過去においては企業からの寄付を制限する法案があったが、2010年の「シチズンズ・ユナイテッド事件」により、企業が無制限に政治献金を行えるようになったと説明している。この判決により、企業や富裕層がアメリカ政府を「買収」する力を手に入れたと彼は主張しており、民主主義を回復するためには政治から金銭の影響を排除すべきだと強調している。

 さらに、ロバーツ博士はアメリカの連邦政府が州政府を圧倒し、権限を集中させることを進めるディープステートの影響についても述べている。彼は、アメリカの創設者たちが設計した政府は、現在の連邦政府に比べて民主主義に対する懐疑的な態度を示しており、州政府の権限が強かったことを指摘している。リンカーン大統領による南北戦争と、1930年代のフランクリン・D・ルーズベルト政権による立法権の行政機関への移譲が、連邦政府の権限集中を進めたと説明している。

 最後に、ロバーツ博士はトランプ前大統領についても言及し、彼がディープステートを排除しようとしたにもかかわらず、実際にはビジネスが続いていると指摘している。トランプの支持を受ける企業や富裕層が、依然として彼の政策に影響を与えていることを説明しており、改革が進展しにくい現実を指摘している。

【詳細】 

 ポール・クレイグ・ロバーツ博士の論説では、アメリカ合衆国における「ディープステート(深層国家)」の概念を深く掘り下げ、これがアメリカの民主主義をどのように変質させたかについて詳述されている。ロバーツ博士は、アメリカの創設者たちが意図した政府の構造と、現在のアメリカ政府の実態がどれほど異なっているかを強調しており、ディープステートがどのように政治に影響を与えているかを多角的に分析している。

 1. ディープステートの構造と範囲

 ロバーツ博士によると、ディープステートは単に政府の官僚や機関に留まらず、選挙で選ばれた政治家、ウォール街、大企業、さらには外国政府のロビイストまで含む広範なネットワークを形成している。この勢力は、表向きの政府機構の背後で権力を行使し、アメリカの政治を支配しているとされている。アメリカの政府は、実際には「民主主義」という表面だけであり、その中身は多くの利益団体や権力を持つ組織が決定権を握っているというのが、ロバーツ博士の見解である。

 具体的には、以下のような利益団体がディープステートの一部を形成しているとされている。

 ・イスラエルロビー:アメリカの外交政策に大きな影響を与え、特に中東政策において強い影響力を持っている。
 ・兵器製造業者:アメリカの軍事産業は、国防政策や戦争政策に強い影響を与えており、武器製造業者は議会や政府に対して圧力をかけている。
 ・製薬企業(ビッグファーマ):特に新薬の承認や公共の健康政策に影響を与え、政府の政策形成に重要な役割を果たしている。
 ・ウォール街:アメリカの金融システムは経済政策に大きな影響を与え、特に規制緩和や金融政策において優位性を持っている。
 ・農業企業:農業産業はアメリカの農業政策や食料政策において重要な役割を果たしている。
 
 ロバーツ博士は、これらの団体が選挙や政策の決定に関与し、特定の利益を反映させることによって、実質的な政治権力を持っていると指摘している。

 2. 選挙における金銭の影響

 ロバーツ博士は、アメリカの選挙が金銭的影響力によって支配されていると強調しており、特に2010年の「シチズンズ・ユナイテッド事件」によって、その影響力が加速したと述べている。この判決により、企業や労働組合、富裕層は政治献金を制限なく行えるようになり、政治家は選挙資金を提供する企業や利益団体に依存することになった。これにより、政治家は自分の選挙活動の資金源を確保するため、企業や利益団体の利益を代表するようになる。

 この影響を受けて、アメリカ合衆国の政治家たちは、選挙での勝利を目指すあまり、選挙資金を提供する勢力に従うようになる。これにより、アメリカの政治は、特定の利益団体に支配される構造となり、一般市民の利益が反映されにくくなった。

 3. 連邦政府の権限集中とディープステートの強化

 ロバーツ博士は、アメリカの政府が徐々に連邦政府に権限を集中させ、州政府の権限を弱体化させてきた過程を説明している。創設当初、アメリカ合衆国は州政府が強い権限を持ち、連邦政府の権限は限定的だった。しかし、アブラハム・リンカーン大統領は南北戦争を通じて、連邦政府の権限を強化し、州政府の権限を制限した。このプロセスは1930年代のフランクリン・D・ルーズベルト政権において完成され、議会の立法権は行政機関に移譲された。

 このようにして、連邦政府が権限を掌握することによって、ディープステートはその影響力を行使しやすくなり、政治の決定権をより集中させることができるようになった。この集中した権力の中で、ディープステートはより大きな自由度を持ち、アメリカの政治を支配することが可能となった。

 4. トランプとディープステートの関係

 ロバーツ博士は、ドナルド・トランプがディープステートを排除すると公言したにもかかわらず、実際には彼がディープステートの影響を受けていることを指摘している。トランプは選挙戦でディープステートを排除することを掲げたが、その後、トランプの政策は一部の企業や富裕層と同調する形で進んでいる。例えば、トランプの大統領選挙キャンペーンには、多くのシリコンバレーの企業家やアメリカの富裕層が関与しており、トランプ自身も製薬業界の大手企業と関わりを持っている。

 ロバーツ博士は、こうした関係が改革を進めるための障害となることを指摘しており、トランプ自身もディープステートの影響を完全には排除できなかったことを認めている。

 5. 西洋における民主主義の虚構

 最終的にロバーツ博士は、アメリカだけでなく、ヨーロッパも含めた西洋の民主主義は「虚構」であると結論付けている。アメリカの政治システムは、ネオコンのアメリカ覇権主義とその利益団体によって支配されており、これが政治的・経済的な決定に深く関与しているため、真の民主主義が機能していないと論じている。

【要点】

 1.ディープステートの構造

 アメリカのディープステートは、政府官僚、大企業、ウォール街、選挙で選ばれた政治家、外国政府のロビイストなど、多様な勢力から成る広範なネットワーク。
 
 これらの団体は、表向きの政府機構の背後で権力を行使し、アメリカの政治を支配している。

 2.主要なディープステートの勢力

 ・イスラエルロビー:アメリカの中東政策に強い影響力。
 ・兵器製造業者:国防政策や戦争政策に影響を与える。
 ・製薬企業:新薬の承認や公共の健康政策に影響。
 ・ウォール街:金融システムに影響を与え、経済政策を支配。
 ・農業企業:農業政策や食料政策に影響。

 3.選挙における金銭の影響

 ・2010年の「シチズンズ・ユナイテッド事件」により、企業や富裕層の無制限な政治献金が可能に。
 ・選挙資金を提供する勢力に依存するため、政治家は特定の利益団体の利益を代表することになる。

 4.連邦政府の権限集中

アメリカ政府は州政府の権限を制限し、連邦政府に権限を集中させた。
連邦政府の権限強化により、ディープステートはその影響力を拡大した。

 5.トランプとディープステート

 ・トランプは選挙戦でディープステートを排除すると公言したが、実際にはディープステートの影響を完全には排除できなかった。
 ・トランプ自身も製薬業界などと関わりを持ち、ディープステートとの関係は継続していた。

 6.西洋における民主主義の虚構

 ・アメリカを含む西洋の民主主義は、実際にはディープステートの影響を受けており、真の民主主義が機能していない。
 ・ネオコンによるアメリカ覇権主義とその利益団体が政治・経済を支配している。

【参考】

 ☞ シチズンズ・ユナイテッド事件(Citizens United v. FEC)は、アメリカ合衆国の重要な最高裁判所判決で、特に選挙資金に関する問題を扱っている。この事件は、アメリカの政治資金の仕組みに大きな影響を与えた。以下はその詳細である。

 概要

 ・事件の背景

 2008年、政治団体「シチズンズ・ユナイテッド(Citizens United)」は、ヒラリー・クリントン候補に対する批判的なドキュメンタリー映画「ヒラリー: ザ・ムービー」を制作し、その放送を求めた。しかし、連邦選挙委員会(FEC)は、映画の放送が選挙に影響を与えるため、選挙資金規制法に基づいてその放送を禁止した。

 ・訴訟の争点

 シチズンズ・ユナイテッドは、FECの規制が憲法で保障された言論の自由を侵害するとして訴えを起こした。特に、企業や労働組合が選挙に関して資金を提供する権利を持つべきだと主張した。

 判決

 ・最高裁判所の判決(2010年)

  ➡️最高裁判所は5対4でシチズンズ・ユナイテッド側の主張を支持し、FECの規制を無効とした。
  ➡️重要なポイントは、法人(企業)や労働組合が個人と同様に選挙に関して自由に支出する権利があるということである。これにより、選挙活動における支出規制が大きく緩和された。
  ➡️判決の理由として、企業や労働組合も言論の自由を享受すべきであり、選挙に対する意見表明の自由を制限すべきではないとされた。

 影響

 ・選挙資金の自由化:

  ➡️この判決により、企業や団体は無制限に選挙広告を出すことができるようになり、政治献金の流れが大きく変わった。
  ➡️これにより、特定の企業や団体が選挙戦において強い影響力を持つことが可能になり、「スーパーパック(Super PAC)」と呼ばれる政治行動委員会が設立され、無制限の資金を選挙活動に投じることができるようになった。

 ・批判

  ➡️この判決に対しては、多くの批判もある。特に、企業や富裕層の影響力が増し、一般市民の声がかき消されるのではないかという懸念が広がった。
  ➡️さらに、「金が政治に対する支配を強化する」として、民主主義の原則を損なうとの指摘もある。

 ・後続の動き

  ➡️シチズンズ・ユナイテッド判決後、選挙資金の流れはますます透明性を欠いた形で進み、多くの州や連邦レベルで規制強化を求める声が上がっている。

 結論

 シチズンズ・ユナイテッド事件は、アメリカの選挙資金に関するルールを根本的に変え、企業や団体の影響力を強化した。しかし、この判決は依然として議論の的であり、民主主義と企業の自由とのバランスを巡る問題は解決されていない 。

 ☞ シチズンズ・ユナイテッド(Citizens United)は、アメリカの保守的な政治活動団体で、主に選挙活動において政治的影響力を行使することを目的としている。この団体は、特に選挙資金や政治広告に関する活動で広く知られている。

 概要

 ・設立

 シチズンズ・ユナイテッドは、2008年に設立された。主に保守的な政治的立場を支持し、アメリカの選挙プロセスに影響を与える活動を行っている。

 ・目的

 この団体の主な目的は、アメリカの政治における保守的な価値観を広め、選挙活動における自由を確保することである。特に、企業や労働組合が選挙資金を自由に提供できるようにすることを目指している。

 ・映画「ヒラリー: ザ・ムービー」

 シチズンズ・ユナイテッドが広く注目を集めた契機は、2008年に製作したドキュメンタリー映画『ヒラリー: ザ・ムービー』である。この映画は、ヒラリー・クリントンの政治的活動や政策に批判的な内容であり、映画の放送に関して連邦選挙委員会(FEC)が規制を課したことが、この団体が最高裁判所に訴える理由となった。

 ・シチズンズ・ユナイテッド事件

 2009年、シチズンズ・ユナイテッドは、映画の放送を許可するようFECに対して訴訟を起こした。この訴訟が最終的に最高裁判所に持ち込まれ、2010年のシチズンズ・ユナイテッド v. FEC判決に繋がる。この判決では、企業や労働組合が選挙活動に無制限に資金を提供できることが認められ、アメリカの選挙資金規制が大きく変わった。

 主な活動

 1.政治広告の制作と放送

 ・シチズンズ・ユナイテッドは、保守的な政治的立場を支持する候補者や政策を支援するため、政治的な広告を制作し、放送する。特に大規模なメディアキャンペーンを通じて影響力を行使する。

 2.スーパーパック(Super PAC)の設立

 ・判決後、シチズンズ・ユナイテッドはスーパーパック(無制限の資金提供が可能な政治行動委員会)を設立し、選挙活動において強い影響力を持つ。これにより、政治家や候補者の選挙活動に巨額の資金を提供することができるようになった。

 3.選挙戦への影響力行使

 ・シチズンズ・ユナイテッドは、保守的な政治勢力や候補者を支援する形で選挙戦に深く関わり、特にテレビ広告やインターネット広告を使って影響を与えている。

 結論

 シチズンズ・ユナイテッドは、アメリカの選挙資金規制を変え、企業や団体の政治活動への関与を拡大させた団体である。特に、選挙における資金提供の自由化を推進する活動が注目されており、その影響はアメリカの政治文化に大きな変化をもたらした。

 ☞ シチズンズ・ユナイテッド事件における裁判所の判決について、いくつかの批判的な意見がある。中でも、裁判所が「詐欺に遭った」という指摘は、主に以下の理由からなされることがある。

 1. 映画の意図と訴訟の本質

 ・シチズンズ・ユナイテッドが制作した映画『ヒラリー: ザ・ムービー』は、ヒラリー・クリントンを批判する内容であった。この映画を放送するために同団体が提起した訴訟が、最終的には企業や労働組合が選挙活動に無制限に資金提供できるようになる契機となった。

 ・一部の批評家は、この訴訟が表向きは映画放送の自由を求めるものであったが、実際には選挙資金の規制を緩和する目的が隠れていたと指摘している。つまり、映画自体が単なる前触れであり、その背後にある真の目的は、選挙資金に関する規制の緩和であったという見方である。この点から、裁判所がこの目的に気づかずに判決を下した場合、まるで「詐欺に遭った」ような形になったと言われることがある。

 2. 判決後の影響

 ・シチズンズ・ユナイテッド判決により、企業や労働組合が選挙資金に無制限に関与できるようになった結果、政治的影響力が富裕層や大企業の手に集中するという懸念が広まった。特に、「金持ちによる政治支配」が進んだとして、民主主義の基盤を損なう結果になったという批判がある。

 ・この点についても、裁判所がこうした潜在的な影響を考慮せずに判決を下したとする意見があり、「詐欺に遭った」との表現が使われることがある。つまり、表面上は自由な言論や表現の自由を保障する判決であったが、その実、特定の利益団体や企業の利益を優先する形になったという批判である。

 3. 政治的動機の隠蔽

 ・シチズンズ・ユナイテッドが訴訟を起こす際の動機について、裁判所はその意図を完全には見抜けなかったのではないかとの意見もある。団体が選挙資金規制の緩和を目的として訴訟を起こしたことが後に明らかになり、その結果として判決が政治的利益を助長する方向に作用したとする声もある。

 結論

 シチズンズ・ユナイテッド事件における裁判所の判決は、選挙資金に関する規制を大きく変更し、企業や労働組合が選挙活動に無制限に資金を提供できるようになったという点で、広範な影響を及ぼした。この結果に対して、「詐欺に遭った」と感じる人々は、訴訟の背後に潜む本当の目的に対する裁判所の理解不足を指摘しており、その点において不当な影響を与えたと考えている。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

US Deep State: Its Roots, Tools and Enablers sputnik international 2024.12.20
https://sputnikglobe.com/20250105/us-deep-state-its-roots-tools-and-enablers-1121363450.html

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