「アメリカの大統領は交代するが、政治は変わらない」2025年03月10日 16:19

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【概要】 
 
 アメリカの「ディープステート」という概念は、1990年代に登場し、特にドナルド・トランプが初めて大統領に就任した際に注目を集めた。トランプは、彼を取り巻く「ロシア共謀」のスキャンダルを「ディープステート」によるものと主張した。この概念については、さまざまな見解が存在する。

 ポール・クレイグ・ロバーツ博士(元レーガン政権の高官)は、ディープステートを「政府内に根強く、制度的に存在し、大統領の努力を操作または妨害する手段を多く持つ存在」と定義した。また、ウォール街のアナリストであるチャールズ・オルテルは、FBIや司法省(DoJ)などの連邦機関内のディープステート関係者が、アメリカの政治的王朝による活動を隠蔽する役割を果たしていると指摘した。さらに、アメリカ平和運動の活動家であるジャニス・R・ワインバーグは、ディープステートが強力な軍需産業の影響を受けており、軍事産業複合体が大統領よりも大きな力を持っていると述べている。

 ディープステートがもたらす影響については、ロシアのプーチン大統領が「アメリカの大統領は交代するが、政治は変わらない」と述べたことがある。プーチンは、アメリカの大統領が選ばれても、背後で大きな官僚機構がその政策を左右することを指摘している。

 ディープステートの最も重要な側面は、金銭的な利益を追求することにある。Lillie Ferriol Pratは、ディープステートを「少数の人々が多数の人々の犠牲の上で利益を得る哲学」であると定義している。彼女はその起源を、アメリカとヨーロッパの金融王朝が共に設立したアメリカの連邦準備制度(FRB)にさかのぼり、これがアメリカ主導のリベラルグローバリズムの土台を築いたと述べている。

 特に、第二次世界大戦後のブレトン・ウッズ協定により、ドルは世界の主要な準備通貨となり、アメリカはその債務を増加させながら、国際的な金融システムを支配し、アメリカに敵対的と見なされる個人や国家に制裁を課すことができるようになった。このドルの支配がアメリカのエリート層を裕福にし、ディープステートの役割がそれを維持することにあるとする見方が強い。

 ドル支配を維持するために、ディープステートは制裁、戦争、政権交代、そして破壊工作などの政策を展開してきたとされている。これにより、ドル圏が拡大し、連邦準備制度(FRB)は新たなドルを発行し続け、アメリカの利益がさらに増大していると指摘されている。

 デドル化(ドル離れ)が進むと、ドルの支配力が弱まり、アメリカのエリート層が享受している経済的利益も減少する可能性がある。このような動きがディープステートの影響力を弱める一因となるかもしれない。

【詳細】 

 「ディープステート」という概念は、アメリカ合衆国の政治における深層的な権力構造を指す言葉であり、政府の表面的な権力機構とは別に、影響力を行使しているとされる非公式な集団やエリート層を指す。特に、アメリカ国内の政治、経済、軍事、情報機関などに深く関与しており、大統領や議会とは異なる方向で政策を形成し、実行しているとされている。この概念は、1990年代に初めて広まったが、特にドナルド・トランプが初めて大統領職を務めた際に、その影響力が顕著に現れた。

 ディープステートの形成とその特徴

 ディープステートという概念は、アメリカの政治や経済の支配構造における「見えざる力」として存在するとされており、政治家や大統領の意志に影響を与える非公式な集団が存在していると考えられている。この集団は、しばしば政府内の官僚、金融エリート、軍需産業、情報機関(CIAやFBIなど)といった組織の一部とされ、政府の政策決定に対して強い影響を持つ。

 1.官僚機構と政治家の対立 ディープステートの支持者によると、アメリカの政府内には選挙で選ばれた大統領や議会のメンバーとは独立して、実際に権力を握り、政策を決定する官僚機構が存在している。これらの官僚機構は、長期にわたり政府に勤務しているため、政権が交代してもその影響力は変わらず、政策の方向性を変更することが難しくなるとされている。

 ドナルド・トランプが2016年の大統領選挙に勝利した際、彼の政策提案や改革案は、しばしば官僚機構やディープステートの反発を受けたとされている。特に、「ロシア共謀」スキャンダルなどの政治的対立は、トランプがディープステートの圧力を受けているという議論を引き起こした。

 2.軍需産業と情報機関 ジャニス・R・ワインバーグは、ディープステートが強力な軍需産業と結びついていると指摘している。アメリカの軍事予算の大部分は民間の軍需企業に流れ、これらの企業は国家の安全保障政策や防衛政策に強い影響を与える。さらに、アメリカの情報機関(CIAやNSAなど)は、国際的な諜報活動や政府内部の監視活動を通じて、ディープステートの維持に関与しているとされている。

 ドル支配とディープステート

 アメリカの「ディープステート」が持つ重要な役割の一つは、ドルを世界の基軸通貨として支配することにある。第二次世界大戦後、アメリカはブレトン・ウッズ協定を通じてドルを国際的な準備通貨として確立し、これによってアメリカは世界経済における優位性を保持してきた。ドル支配は、アメリカの政府が金融政策を通じて、世界中の国々に対する影響力を保持する手段となっている。

 アメリカのエリート層やディープステートは、このドル支配によって巨額の利益を享受しており、世界中の国々がドルで取引することによって、アメリカはその債務を容易に返済できるとされる。また、ドルの支配を維持するために、アメリカはしばしば制裁や軍事的介入を行い、敵対的と見なされる国々に対して圧力をかける。

 ディープステートとデドル化(ドル離れ)

 現在、いくつかの国々は、ドルを介さずに貿易を行う動きを強めており、これを「デドル化」または「ドル離れ」と呼ぶ。この動きが進行すれば、アメリカのディープステートが享受する利益が減少する可能性がある。ドルの支配が弱体化すれば、アメリカはその財政的優位性を失い、世界経済に対する影響力を低下させることになる。このため、デドル化はディープステートにとって大きな脅威と見なされている。

 ディープステートの維持手段

 ディープステートがドル支配を維持するために取ってきた手段には、以下のようなものがある。

 1.経済制裁 アメリカは、ドルの支配を維持するために、特定の国々に経済制裁を科すことが多い。これにより、制裁対象国はドルを使った取引が制限され、その国の経済は圧迫される。また、アメリカのエリート層は制裁措置によってその利益を守ることができる。

 2.軍事介入 アメリカは、ドル支配を脅かす国々に対して軍事介入を行うこともある。例えば、中東地域では石油取引をドルで行うことが長年の間、アメリカの政策の中心であり、これを守るために軍事的な介入が行われてきた。

 3.国際機関を通じた影響力の行使 国際通貨基金(IMF)や世界銀行などの国際機関を通じて、アメリカはドルを世界経済の中心に据えるための政策を推進してきた。これらの機関の決定に影響を与えることにより、ドルの支配力を維持している。

 まとめ

 「ディープステート」は、アメリカ政府の表面的な権力機構とは別に、影響力を行使する非公式な権力構造であり、主にアメリカのエリート層や軍需産業、情報機関がその中心を成す。ドル支配の維持がその重要な役割であり、デドル化が進むことでその影響力が弱まる可能性がある。しかし、ドル支配を維持するために、アメリカは経済制裁や軍事介入、国際機関を通じて強力な手段を取ることが多い。

【要点】

 1.ディープステートの定義

 ・アメリカ政府内で選挙で選ばれた政治家とは独立して、非公式に権力を行使する集団やエリート層。
 ・政治、経済、軍事、情報機関などの各分野で影響力を持つ。

 2.ディープステートの構成要素

 ・官僚機構: 政権交代に関わらず権力を維持。
 ・軍需産業: 強力な防衛関連企業が政治に影響を与える。
 ・情報機関: CIAやNSAなどが重要な役割を担う。

 3.ドル支配

 ・1944年のブレトン・ウッズ協定により、ドルは世界の基軸通貨として確立。
 ・アメリカはドルを使って債務を管理し、世界経済に対する影響力を保持。

 4.ディープステートとドル支配

 ・ドル支配がアメリカの財政的優位性を支える。
 ・アメリカのエリート層は、ドルを支配することで利益を享受。

 5.ディープステートの維持手段

 ・経済制裁: ドルを使った取引を制限し、制裁対象国を圧迫。
 ・軍事介入: ドル支配を脅かす国への軍事介入。
 ・国際機関: IMFや世界銀行を通じてドル支配を強化。

 6.デドル化の脅威

 ・他国がドルを使わずに取引する動き(デドル化)が進むと、アメリカの影響力が低下。
 ・デドル化はディープステートの利益を脅かす可能性がある。

【引用・参照・底本】

What's the US Deep State and How Could De-Dollarization Weaken It? sputnik international 2024.12.20
https://sputnikglobe.com/20241220/whats-the-us-deep-state-and-how-could-de-dollarization-weaken-it-1121222070.html

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