香港の実業家Li Ka-shing:「中国全体を裏切った」 ― 2025年03月18日 21:10
【概要】
北京は、香港の実業家であるLi Ka-shingに対して「中国全体を裏切った」と批判している。この批判は、彼の旗艦企業であるCK Hutchisonが、パナマ運河にある2つの港を含む世界中のほとんどの港をブラックロックに売却する計画を発表したことに関して発生した。
中国政府の香港・マカオ事務局(HKMAO)は、2025年3月13日にウェブサイトで「ナイーブで老化した考えを捨てろ」と題した記事を公開し、96歳のLi Ka-shingにこの取引を再考するよう呼びかけた。記事によると、CK Hutchisonの発表は単なる商業行為ではなく、特にアメリカがパナマ運河の管理権を取り戻すべきだと主張した2025年1月のトランプ米国前大統領の発言を受けて行われたことが強調された。
記事は、パナマ運河が「アメリカ化」され、「政治化」されると、米国はそれを政治的目的に利用し、独自の政治的アジェンダを追求するだろうと警告している。これにより、中国の企業は物流コストやサプライチェーンの安定性に重大なリスクを抱えることになると指摘されている。
また、ブラックロックが世界のコンテナターミナルの10.4%を掌握し、米国が中国に対する抑圧政策に協力する可能性があることも述べられ、中国の船舶会社の市場シェアを圧迫することになると予測されている。この取引が米国の長腕管轄権を通じて、世界中の港の買収を促進し、中国船舶が接岸できる場所を失う恐れもあるとされている。
香港の親中新聞『大公報』に掲載されたこの記事は、2015年にLi Ka-shingが中国本土の資産を売却したことに対する批判と同様に、彼の決定が国家的利益を無視し、全中国人を裏切ったとの批判を呼んでいる。
【詳細】
北京政府は、香港の実業家であるLi Ka-shing(Li Ka-shing)が、世界中の港をブラックロックに売却する決定に対して厳しく批判した。この批判の発端は、Li Ka-shingが率いるCK Hutchisonがパナマ運河の両端にある2つの港を含む、世界23カ国の43港をブラックロックに売却するという発表にある。
中国政府の反応とその背景
中国政府は、Li Ka-shingの行動を単なる商業的決定としてではなく、政治的意味合いを持つ重大な取引と見なしている。具体的には、2025年1月に米国のドナルド・トランプ前大統領がパナマ運河の管理権を「米国に取り戻すべきだ」と主張した後、Li Ka-shingの会社がこの取引を発表したことが、北京政府にとって問題視されるポイントとなった。中国の香港・マカオ事務局(HKMAO)は、Li Ka-shingに対し「ナイーブで老化した考えを捨てろ」と警告する記事を発表し、この取引を再考するよう促している。
記事は、パナマ運河が米国に「アメリカ化」されることで、米国がそれを政治的に利用し、世界貿易における中国の物流やサプライチェーンにリスクをもたらす可能性が高いと述べている。特に、米国が中国に対して政治的な制限や「政治的追加料金」を課すことによって、中国企業の物流コストが増大し、供給網の安定性が脅かされる可能性が指摘されている。
ブラックロックの役割と影響
記事では、ブラックロックがこの取引を通じて世界のコンテナターミナルの約10.4%を掌握することになると説明されており、これによりブラックロックは世界三大港運営会社の一つとなると予測されている。これが意味するのは、米国が中国に対して取る抑圧的な政策の一環として、ブラックロックが米国と協力し、世界中の港を支配する可能性が高いということである。中国の企業がこれらの港を利用できなくなることで、中国の船舶会社の市場シェアが縮小し、最終的には中国の輸送業務が大きな影響を受けると懸念されている。
米国の立場とトランプ政権の影響
記事の中では、米国が中国関連の船舶に対して追加料金を課すという計画が、米国の一方的なアプローチとして示されており、これは世界貿易機関(WTO)の規則に違反しているという指摘がなされている。米国が中国製のコンテナ船に対して最大150万ドルの料金を課す案が進行中であり、これにより米国企業の物流コストが増加する可能性がある。
また、米国は2025年2月から3月にかけて中国からのすべての輸入品に10%の追加関税を課す一方で、鉄鋼やアルミニウムに対して25%の関税を課す措置を発表しており、これもLi Ka-shingが行った売却と深く関係がある可能性がある。これらの動きが、彼の決定に対して北京の反発を強める要因となった。
Li Ka-shingの過去と現在の動向
Li Ka-shingは、香港返還前から中国と深い関係を築いてきた実業家であり、1990年には中国の指導者である鄧小平と会談し、香港の自由と自治は1997年の返還後も50年間変わらないという保証を受けた。しかし、2012年に習近平が中国の最高指導者に就任してからは、香港に対する政治的統制が強化され、Li Ka-shingは中国本土および香港での資産売却を進めてきた。
特に、2015年には中国本土での資産を売却し、欧州への投資を進めたことが批判され、「Li Ka-shingが中国を裏切った」とする声が上がった。さらに、2019年の香港抗議活動以降、北京の影響力が強まる中で、Li Ka-shingは香港の選挙委員会のメンバーとしての影響力を失い、これに対する不満が高まった。
中国政府の反応と長期的な影響
Li Ka-shingが今回、パナマ運河に関わる港を含むグローバルな港湾資産を売却した決定は、中国政府にとって、単なる経済的な動き以上の意味を持つ。これにより、米国の政治的圧力や制裁の影響が増大し、中国の経済・貿易戦略に悪影響を及ぼす可能性が高いと見なされている。Li Ka-shingの決定は、香港と中国本土の実業家が直面している政治的および経済的なジレンマを象徴するものであり、これが中米貿易戦争の中でどのような影響を与えるかについては、今後の国際的な動向に注目する必要がある。
【要点】
1.Li Ka-shingの決定と売却内容
・Li Ka-shingが率いるCK Hutchisonが世界23カ国の43港をブラックロックに売却。
・売却にはパナマ運河の両端にある港も含まれている。
2.中国政府の反応
・北京政府は、この取引を商業的決定以上に政治的意味があるとみなして批判。
・中国の香港・マカオ事務局(HKMAO)は「ナイーブで老化した考えを捨てろ」と警告。
3.トランプ前大統領の発言
・トランプは2025年1月、パナマ運河の管理権を「米国に取り戻すべきだ」と主張。
・Li Ka-shingの売却発表とトランプの発言が関連して問題視される。
4.ブラックロックの影響
・ブラックロックが港の約10.4%を所有することになり、世界三大港運営会社に。
・米国がブラックロックを通じて、港を政治的に利用し、中国に物流制限を加える可能性。
5.米国の政策と制裁
・米国が中国関連の船舶に追加料金を課す計画(最大150万ドル)や関税の引き上げ(鉄鋼、アルミニウム)。
・米国が中国からの輸入品に追加関税を課す計画が進行中。
6.Li Ka-shingの過去の動向
・香港返還前から中国と密接な関係を築いていたが、2012年以降、習近平政権の影響強化により資産売却を進めた。
・2019年の香港抗議活動後、香港選挙委員会の影響力を失い、売却を続けている。
7.長期的な影響と中国政府の懸念
・Li Ka-shingの売却決定が米国の圧力を強化し、中国の経済と貿易戦略に悪影響を及ぼす可能性。
・中米貿易戦争の中で、企業家たちが直面する政治的、経済的ジレンマが浮き彫りに。
【引用・参照・底本】
Beijing calls Li Ka-shing a ‘traitor’ in Panama ports deal ASIA TIMES 2025.03.15
https://asiatimes.com/2025/03/beijing-calls-li-ka-shing-a-traitor-in-panama-ports-deal/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=fc1894f1bd-DAILY_17_03_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-fc1894f1bd-16242795&mc_cid=fc1894f1bd&mc_eid=69a7d1ef3c#
北京は、香港の実業家であるLi Ka-shingに対して「中国全体を裏切った」と批判している。この批判は、彼の旗艦企業であるCK Hutchisonが、パナマ運河にある2つの港を含む世界中のほとんどの港をブラックロックに売却する計画を発表したことに関して発生した。
中国政府の香港・マカオ事務局(HKMAO)は、2025年3月13日にウェブサイトで「ナイーブで老化した考えを捨てろ」と題した記事を公開し、96歳のLi Ka-shingにこの取引を再考するよう呼びかけた。記事によると、CK Hutchisonの発表は単なる商業行為ではなく、特にアメリカがパナマ運河の管理権を取り戻すべきだと主張した2025年1月のトランプ米国前大統領の発言を受けて行われたことが強調された。
記事は、パナマ運河が「アメリカ化」され、「政治化」されると、米国はそれを政治的目的に利用し、独自の政治的アジェンダを追求するだろうと警告している。これにより、中国の企業は物流コストやサプライチェーンの安定性に重大なリスクを抱えることになると指摘されている。
また、ブラックロックが世界のコンテナターミナルの10.4%を掌握し、米国が中国に対する抑圧政策に協力する可能性があることも述べられ、中国の船舶会社の市場シェアを圧迫することになると予測されている。この取引が米国の長腕管轄権を通じて、世界中の港の買収を促進し、中国船舶が接岸できる場所を失う恐れもあるとされている。
香港の親中新聞『大公報』に掲載されたこの記事は、2015年にLi Ka-shingが中国本土の資産を売却したことに対する批判と同様に、彼の決定が国家的利益を無視し、全中国人を裏切ったとの批判を呼んでいる。
【詳細】
北京政府は、香港の実業家であるLi Ka-shing(Li Ka-shing)が、世界中の港をブラックロックに売却する決定に対して厳しく批判した。この批判の発端は、Li Ka-shingが率いるCK Hutchisonがパナマ運河の両端にある2つの港を含む、世界23カ国の43港をブラックロックに売却するという発表にある。
中国政府の反応とその背景
中国政府は、Li Ka-shingの行動を単なる商業的決定としてではなく、政治的意味合いを持つ重大な取引と見なしている。具体的には、2025年1月に米国のドナルド・トランプ前大統領がパナマ運河の管理権を「米国に取り戻すべきだ」と主張した後、Li Ka-shingの会社がこの取引を発表したことが、北京政府にとって問題視されるポイントとなった。中国の香港・マカオ事務局(HKMAO)は、Li Ka-shingに対し「ナイーブで老化した考えを捨てろ」と警告する記事を発表し、この取引を再考するよう促している。
記事は、パナマ運河が米国に「アメリカ化」されることで、米国がそれを政治的に利用し、世界貿易における中国の物流やサプライチェーンにリスクをもたらす可能性が高いと述べている。特に、米国が中国に対して政治的な制限や「政治的追加料金」を課すことによって、中国企業の物流コストが増大し、供給網の安定性が脅かされる可能性が指摘されている。
ブラックロックの役割と影響
記事では、ブラックロックがこの取引を通じて世界のコンテナターミナルの約10.4%を掌握することになると説明されており、これによりブラックロックは世界三大港運営会社の一つとなると予測されている。これが意味するのは、米国が中国に対して取る抑圧的な政策の一環として、ブラックロックが米国と協力し、世界中の港を支配する可能性が高いということである。中国の企業がこれらの港を利用できなくなることで、中国の船舶会社の市場シェアが縮小し、最終的には中国の輸送業務が大きな影響を受けると懸念されている。
米国の立場とトランプ政権の影響
記事の中では、米国が中国関連の船舶に対して追加料金を課すという計画が、米国の一方的なアプローチとして示されており、これは世界貿易機関(WTO)の規則に違反しているという指摘がなされている。米国が中国製のコンテナ船に対して最大150万ドルの料金を課す案が進行中であり、これにより米国企業の物流コストが増加する可能性がある。
また、米国は2025年2月から3月にかけて中国からのすべての輸入品に10%の追加関税を課す一方で、鉄鋼やアルミニウムに対して25%の関税を課す措置を発表しており、これもLi Ka-shingが行った売却と深く関係がある可能性がある。これらの動きが、彼の決定に対して北京の反発を強める要因となった。
Li Ka-shingの過去と現在の動向
Li Ka-shingは、香港返還前から中国と深い関係を築いてきた実業家であり、1990年には中国の指導者である鄧小平と会談し、香港の自由と自治は1997年の返還後も50年間変わらないという保証を受けた。しかし、2012年に習近平が中国の最高指導者に就任してからは、香港に対する政治的統制が強化され、Li Ka-shingは中国本土および香港での資産売却を進めてきた。
特に、2015年には中国本土での資産を売却し、欧州への投資を進めたことが批判され、「Li Ka-shingが中国を裏切った」とする声が上がった。さらに、2019年の香港抗議活動以降、北京の影響力が強まる中で、Li Ka-shingは香港の選挙委員会のメンバーとしての影響力を失い、これに対する不満が高まった。
中国政府の反応と長期的な影響
Li Ka-shingが今回、パナマ運河に関わる港を含むグローバルな港湾資産を売却した決定は、中国政府にとって、単なる経済的な動き以上の意味を持つ。これにより、米国の政治的圧力や制裁の影響が増大し、中国の経済・貿易戦略に悪影響を及ぼす可能性が高いと見なされている。Li Ka-shingの決定は、香港と中国本土の実業家が直面している政治的および経済的なジレンマを象徴するものであり、これが中米貿易戦争の中でどのような影響を与えるかについては、今後の国際的な動向に注目する必要がある。
【要点】
1.Li Ka-shingの決定と売却内容
・Li Ka-shingが率いるCK Hutchisonが世界23カ国の43港をブラックロックに売却。
・売却にはパナマ運河の両端にある港も含まれている。
2.中国政府の反応
・北京政府は、この取引を商業的決定以上に政治的意味があるとみなして批判。
・中国の香港・マカオ事務局(HKMAO)は「ナイーブで老化した考えを捨てろ」と警告。
3.トランプ前大統領の発言
・トランプは2025年1月、パナマ運河の管理権を「米国に取り戻すべきだ」と主張。
・Li Ka-shingの売却発表とトランプの発言が関連して問題視される。
4.ブラックロックの影響
・ブラックロックが港の約10.4%を所有することになり、世界三大港運営会社に。
・米国がブラックロックを通じて、港を政治的に利用し、中国に物流制限を加える可能性。
5.米国の政策と制裁
・米国が中国関連の船舶に追加料金を課す計画(最大150万ドル)や関税の引き上げ(鉄鋼、アルミニウム)。
・米国が中国からの輸入品に追加関税を課す計画が進行中。
6.Li Ka-shingの過去の動向
・香港返還前から中国と密接な関係を築いていたが、2012年以降、習近平政権の影響強化により資産売却を進めた。
・2019年の香港抗議活動後、香港選挙委員会の影響力を失い、売却を続けている。
7.長期的な影響と中国政府の懸念
・Li Ka-shingの売却決定が米国の圧力を強化し、中国の経済と貿易戦略に悪影響を及ぼす可能性。
・中米貿易戦争の中で、企業家たちが直面する政治的、経済的ジレンマが浮き彫りに。
【引用・参照・底本】
Beijing calls Li Ka-shing a ‘traitor’ in Panama ports deal ASIA TIMES 2025.03.15
https://asiatimes.com/2025/03/beijing-calls-li-ka-shing-a-traitor-in-panama-ports-deal/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=fc1894f1bd-DAILY_17_03_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-fc1894f1bd-16242795&mc_cid=fc1894f1bd&mc_eid=69a7d1ef3c#