中国の半導体製造装置メーカー「ナウラ」2025年03月18日 22:36

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【概要】 

 中国の半導体製造装置メーカーであるナウラ(Naura Technology)は、2024年のグローバルランキングで6位に躍進した。これは、上海を拠点とする技術コンサルティング会社CINNO Researchの調査によるもので、ナウラはASML(オランダ)、アプライド・マテリアルズ(アメリカ)、ラム・リサーチ(アメリカ)、東京エレクトロン(日本)、KLA(アメリカ)の5社に次ぐ順位となっている。

 ナウラは、中国の半導体産業の急成長に支えられている。2024年には、ナウラの売上高は前年比36%増の約297億元(約41億米ドル)に達する見込みであり、過去3年間で売上は3倍以上、2019年からは7.5倍に増加した。2023年にはCINNOのランキングで8位に位置していたが、テックインサイトによる詳細な調査では、半導体製造装置の売上に絞った場合、10位にランク付けされていた。

 ナウラの主力製品は、半導体、液晶ディスプレイ、太陽光発電産業向けの製造装置で、具体的には、堆積装置、エッチング装置、クリーニング装置、熱処理装置、UV硬化装置、結晶成長装置などがある。また、ナウラは、フォトレジスト塗布および現像装置を追加するため、Kingsemi(中国唯一のフォトレジスト装置メーカー)の株式を取得し、最終的にはその支配権を握る計画を持っている。

 ナウラは、アメリカ政府の制裁を受けたが、国内市場に強く依存しており、売上の約90%が国内市場からのものとされている。このため、アメリカの制裁による影響は比較的小さいとされている。

 ナウラは、ASMLや東京エレクトロン、ラム・リサーチ、アプライド・マテリアルズといった大手企業に対して急速に競争力を高めており、今後数年間でKLAに追いつく可能性があると言われている。

【詳細】 

 ナウラ(Naura Technology)は、中国最大の半導体製造装置メーカーであり、急速に成長している企業である。2024年の時点で、ナウラはグローバルランキングで6位に上昇しており、ASML(オランダ)、アプライド・マテリアルズ(アメリカ)、ラム・リサーチ(アメリカ)、東京エレクトロン(日本)、KLA(アメリカ)の5社に次ぐ位置にいる。このランクインは、上海を拠点とする技術コンサルティング会社CINNO Researchによる調査結果に基づいており、ナウラの成長を示している。

 ナウラの急成長

 ナウラの成長は、主に中国国内の半導体産業の急速な拡大に支えられている。中国の半導体業界は、世界の半導体製造装置の需要の40%以上を占めるまでに成長しており、その需要に応える形でナウラも発展している。2024年には、ナウラの売上高が前年比36%増の約297億元(約41億米ドル)になると予測されており、これは2019年の7.5倍に相当する。ナウラの売上高は、過去3年間で三倍以上に増加した。

 ナウラの製品ラインと競争状況

 ナウラは、半導体製造装置、液晶ディスプレイ(LCD)や太陽光発電産業向けの装置、さらにはリチウムイオン電池やコンデンサー、抵抗器、結晶デバイスなどの製造装置を手掛けている。主な製品には、堆積装置(デポジション装置)、エッチング装置、クリーニング装置、熱処理装置、UV硬化装置、結晶成長装置が含まれており、これらは半導体製造の重要な工程で使用される。

 ナウラは、フォトレジスト塗布および現像装置を自社製品ラインに追加する予定であり、これを実現するために、Kingsemi(中国唯一のフォトレジスト装置メーカー)の株式を取得し、最終的にはその支配権を握る計画を進めている。日本の東京エレクトロンは、フォトレジスト塗布装置市場で約90%のシェアを占めており、ナウラはこの分野でも競争を強化している。

 ナウラの国際展開とアメリカの制裁

 ナウラは、アメリカ政府の規制や制裁を受けているが、その影響は比較的小さいとされている。アメリカの商務省は、ナウラの子会社である北京ナウラ磁気電技術(Beijing Naura Magnetoelectric Technology)を一時的に「未確認リスト」に追加したが、その後、同社との協議の結果、リストから削除された。2025年12月には、ナウラはアメリカの「エンティティリスト」に追加され、アメリカ政府によって、国家安全保障や外交政策に反する活動を行っていると判断された。

 しかし、ナウラは国内市場への依存度が高いため、アメリカの制裁の影響をほとんど受けていない。現在、ナウラの売上の約90%は国内市場からのものであり、海外市場からの売上は10%未満である。このため、アメリカからの制裁による影響は軽微であると見なされている。

 ナウラの競争力と将来の展望

 ナウラは、競争の激しい半導体製造装置業界において、急速に競争力を高めている。特に、ASMLや東京エレクトロン、ラム・リサーチ、アプライド・マテリアルズといった業界大手と競争しており、ナウラの成長速度はその競争力を示している。これにより、ナウラは今後数年で、KLA(アメリカ)に追いつく可能性があると予測されている。

 中国の半導体産業は、アメリカ主導の制裁や技術輸出規制によって多大な影響を受けているが、それでも中国国内の需要の拡大により、ナウラのような国内企業は成長を続けている。西洋諸国や日本の企業、そして市場調査機関は、中国の半導体製造装置需要の鈍化を予測していたが、実際にはその予測は外れており、ナウラのような企業は引き続き成長を続けると見られている。

 まとめ

 ナウラは、中国国内市場での強固な基盤を背景に、急速に成長を遂げ、グローバル市場でも重要なプレイヤーとなりつつある。今後の展開次第では、アメリカや日本の業界大手に迫る存在となる可能性があり、半導体製造装置業界における競争が一層激化することが予想される。

【要点】

 1.ナウラの成長

 ・ナウラは中国最大の半導体製造装置メーカーであり、2024年にグローバルランキングで6位に上昇。
 ・売上高は2024年に36%増の約297億元(約41億米ドル)を予測。
 ・売上は2019年の7.5倍に増加し、過去3年間で三倍以上成長。

 2.製品ライン

 ・半導体製造装置、液晶ディスプレイ、太陽光発電向け装置などを手掛ける。
 ・主な製品には堆積装置、エッチング装置、クリーニング装置、熱処理装置、UV硬化装置、結晶成長装置が含まれる。
 ・フォトレジスト塗布および現像装置の取り扱いを拡大予定。

 3.競争状況

 ・ナウラは東京エレクトロンやアプライド・マテリアルズ、ラム・リサーチと競合。
 ・特にフォトレジスト塗布装置市場では、東京エレクトロンと競争。
 ・日本の企業に加え、アメリカの企業とも競争。

 4.アメリカの制裁と影響

 ・ナウラはアメリカの「未確認リスト」に一時追加されたが、その後削除。
 ・2025年にはアメリカの「エンティティリスト」に追加され、技術輸出制限を受ける。
 ・しかし、ナウラの売上の約90%は中国国内市場からであり、制裁の影響は小さいと予測。

 5.市場展望

 ・ナウラは中国国内市場の成長に支えられ、急速に競争力を高めている。
 ・今後数年で、KLA(アメリカ)に追いつく可能性があり、業界大手と競争が激化する可能性。
 ・アメリカ主導の制裁や技術輸出規制にもかかわらず、成長を続ける見込み。

【参考】

 ☞ 未確認リスト(Unverified List)とは、アメリカ合衆国商務省の産業安全保障局(Bureau of Industry and Security, BIS)が管理するリストの一つであり、特定の企業がアメリカ政府に対して適切な検証が行えなかった場合に登録されるリストである。主に、企業が米国からの輸出に関する規制に違反した疑いがある場合や、輸出先が適切に確認できない場合に該当する。

 未確認リストの特徴

 ・目的: 輸出先の企業が米国の輸出規制を遵守しているか確認するための手段。リストに載った企業には、アメリカ政府による監視や制限が強化される。
 ・内容: リストに載った企業は、アメリカ企業と取引する際にアメリカ政府からの事前確認を必要とし、検証が行われない限り、アメリカからの輸出が制限される。
 ・結果: 未確認リストに載った企業は、米国からの技術や製品の輸出が難しくなるが、リストから削除されることもあり得る。例えば、ナウラは2018年に未確認リストに載った後、交渉を経て削除された。

 未確認リストは、輸出規制に関する透明性を確保するために使用され、アメリカの国益や安全保障に関わる問題を避けるための措置として機能している。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

China’s Naura rising to the chip-making equipment challenge ASIA TIMES 2025.03.17
https://asiatimes.com/2025/03/chinas-naura-rising-to-the-chip-making-equipment-challenge/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=fc1894f1bd-DAILY_17_03_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-fc1894f1bd-16242795&mc_cid=fc1894f1bd&mc_eid=69a7d1ef3c#

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