第六世代戦闘機の開発競争:中国が米国に先行2025年03月27日 12:46

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【概要】

 第六世代戦闘機の開発競争において、中国がアメリカを先行している可能性を指摘している。米空軍が「次世代制空(NGAD)」計画の一環としてF-47の開発を発表した一方で、中国は既にJ-36を公開し、試験飛行を実施しているとされる。

米国のF-47(NGAD)計画

米国防総省は2025年3月、NGAD計画のエンジニアリング・製造開発(EMD)フェーズにおいてボーイング社を主契約者に選定した。F-47は、次世代制空の中核として、ステルス技術、センサーフュージョン、長距離攻撃能力を備えた戦闘機となる。デジタルエンジニアリングとモジュラー設計を採用し、将来の技術革新に適応可能な設計となっている。

 国防長官のピート・ヘグセスは、F-47の開発が米国の軍事力と同盟国への関与を強化すると述べた。空軍参謀総長のデビッド・オルビン将軍も、F-47を「将来の航空戦における優位性を確保するために不可欠な機体」と評価している。

 本計画は、DARPA(国防高等研究計画局)のXプレーン研究で得られた技術を活用し、今後の試験機開発および低率初期生産(LRIP)の準備に入る。運用開始時期については未発表である。

 中国のJ-36

 これに対し、中国は2024年12月、成都飛機工業集団(CAC)が開発したJ-36を発表した。J-36は、尾翼のない三発機であり、ダブルデルタ翼を採用した設計となっている。全長約23メートル、翼幅19メートル、翼面積200平方メートルとされる。

 J-36は、ステルス性能を強化するために電波吸収材料や柔軟な外装を使用し、垂直尾翼を持たないことでレーダー反射面積(RCS)を低減している。また、ダイバーターレス超音速インレット(DSI)を採用し、アフターバーナーを使用せずに超音速巡航(スーパークルーズ)が可能な高効率のエンジンを搭載しているとされる。

 武装面では、7.6メートルの中央兵器庫と側面兵器庫を備え、大型の兵装搭載能力を有する。これにより、中国空軍の航空戦力における重要な戦力となる可能性がある。

 SCMP(サウスチャイナ・モーニング・ポスト)は、CCTV(中国中央テレビ)の番組内でJ-36に似た無尾翼機が登場したことを報じており、これが中国の第六世代戦闘機計画の公式発表である可能性が指摘されている。また、ニュースウィークはJ-36がテスト飛行を行い、機首に飛行データ計測用のプローブが装備されていたことを報じており、開発が進行中であることを示している。

 米中の開発速度の違い

 航空技術専門家のアブラハム・エイブラムスは、米国と中国の開発スピードの違いを指摘している。J-20の開発が短期間で実用化されたのに対し、米国のF-35は開発が長期化し、コスト超過や技術的課題に直面してきた。NGADも同様の問題を抱えており、デジタル技術を活用した組立工程が期待通りの成果を上げていないとされる。

 2024年には、中国が二機の第六世代試作機を公開しており、これは中国の産業・技術基盤の進展を示すものと評価されている。

 第六世代戦闘機の特徴

 第六世代戦闘機は、従来の第五世代機と比較して以下の技術的優位性を持つとされる。

 ・高度なステルス性能(レーダー・赤外線低減技術の強化)

 ・超音速巡航および可変サイクルエンジンの採用

 ・AIによる状況認識と意思決定支援

 ・無人・有人のオプション運用

 ・高度なデータリンクと戦場統制能力

 ・指向性エネルギー兵器(DEW)および極超音速兵器の搭載可能性

 JAPCC(Joint Air Power Competence Center)のラファエレ・ロッシは、これらの技術が将来の航空戦力の決定要因となると述べている。

 米国の今後の課題

 NGAD計画は高コスト化が懸念されており、防衛予算の制約が課題となっている。米空軍のジョセフ・カンケル少将は「高度に競争の激しい環境において制空権を確保するにはNGAD以外の選択肢はない」と述べており、継続的な投資の必要性を強調している。

 米国の軍事アナリスト、ジャスティン・ブロンクは、中国のJ-36が長距離攻撃能力と電子戦能力を有している可能性を指摘し、それに対抗するためにNGADは1,800キロメートル以上の戦闘行動半径を確保する必要があると述べている。また、ステルス性と兵器搭載能力の向上により、中国の長距離ミサイル戦略や電子戦に対抗することが求められる。

 結論

 米国のF-47は、次世代制空戦闘機としての開発が進められているが、中国のJ-36は既に試験段階に入っていると報じられており、中国が開発競争で先行している可能性がある。今後、米国が開発ペースを加速させるか、中国が実戦配備を進めるかが、航空戦力の優位性を左右する要因となる。

【詳細】

 アメリカ合衆国と中国の間で進行中の第六世代戦闘機の開発競争において、アメリカのF-47が正式に発表される一方で、中国はJ-36を既に公開しており、この競争の中でアメリカは後れを取っている可能性がある。

 アメリカは2025年3月、ボーイングに次世代空中支配(NGAD)プラットフォームのエンジニアリングおよび製造開発(EMD)契約を授与した。この契約は、F-47という第六世代戦闘機の開発を目的としており、アメリカの空軍優位性を確立するための重要な一歩となる。F-47は、優れたステルス性能、センサー融合、長距離攻撃能力を兼ね備え、デジタルエンジニアリングとモジュール設計を活用して新技術への適応性を確保している。アメリカ空軍の司令官であるデービッド・アルヴィン将軍は、この戦闘機が将来にわたる航空戦での支配を維持するために不可欠であると強調している。

 しかし、アメリカのNGADプログラムは、すでに中国のJ-36に対して遅れを取っているとの見方もある。中国は2024年12月、J-36を公開した。このJ-36は、成都飛機工業公司によって開発されたもので、三発エンジン、ダブルデルタ翼、そして尾翼を持たない独特な設計を特徴としている。これにより、J-36は低いレーダー反射断面積を実現し、ステルス性を高めるとともに、スーパークルーズ(後部燃焼器を使用せずに高速巡航)能力を備えており、効率的な航続距離を誇る。

 J-36はまた、7.6メートルの中央武器庫を持ち、両サイドに武器搭載スペースを備えており、これによりかなりの搭載量を有することができる。さらに、J-36は試験飛行が行われており、アメリカのNGADがプロトタイプ段階にも達していないことを考えると、中国のJ-36は既に開発が進んでいることが明らかとなる。

 アメリカのNGADは、現在も試験段階であり、その開発には高コストや遅延、期待されたデジタル技術の問題などが影響を及ぼしている。これに対して中国は、J-20のような迅速な開発を進めており、そのスピードと決定力がアメリカとの差を生んでいると言われている。

 第六世代戦闘機は、従来の第五世代機を超える能力を持つとされ、ステルス性、ハイパーソニック速度、AIによる状況認識や意思決定支援機能を統合することが期待されている。また、パイロット搭乗型、リモート操作型、または自律型の運用が可能となることが予想されており、これにより新たな戦闘戦術や戦略が可能になるとされる。さらに、デジタルエンジニアリング、高度なネットワーク機能、データ融合技術が実戦での指揮統制を向上させ、空中戦、宇宙戦、サイバー戦における優位性を確保することが求められている。

 アメリカのF-47は、これらの機能を組み込んで空中戦における支配を維持しようとするが、J-36はその先を行っている可能性がある。J-36はステルス性と長距離能力に優れ、ミサイルキャパシティも豊富で、アメリカにとって重要な前方基地や給油機への脅威となる存在である。

 このように、中国は第六世代戦闘機の開発においてアメリカより先行していると見られ、アメリカはその後れを取り戻すために、F-47の開発を加速する必要があるだろう。
 
【要点】

 1.アメリカのF-47開発

 ・アメリカ空軍は2025年3月、ボーイングに次世代空中支配(NGAD)プラットフォームの開発契約を授与。

 ・F-47は、優れたステルス性、センサー融合、長距離攻撃能力を兼ね備えており、デジタルエンジニアリングを活用。

 ・アメリカ空軍の司令官は、この戦闘機が航空戦での支配を維持するために重要だと強調。

 2.中国のJ-36開発

 ・中国は2024年12月、J-36を公開。成都飛機工業公司によって開発された。

 ・J-36は三発エンジン、ダブルデルタ翼、尾翼なしの設計を特徴とし、低いレーダー反射断面積を実現。

 ・スーパークルーズ能力を備え、高効率な航続距離を持つ。

 3.J3-36の特徴

 ・7.6メートルの中央武器庫、両サイドの武器搭載スペースがあり、大量の武器を搭載可能。

 ・試験飛行を行っており、アメリカのNGADより開発が進んでいる。

 4.アメリカのNGADの現状

 ・NGADはまだ試験段階であり、高コストや遅延が影響。

 ・デジタル技術に関する問題もあり、開発が遅れている。

 5.中国の開発スピード

 ・中国はJ-20などの迅速な開発を進め、アメリカとの差を生んでいる。

 6.第六世代戦闘機の特徴

 ・ステルス性、ハイパーソニック速度、AIによる状況認識と意思決定支援機能が期待される。

 ・パイロット搭乗型、リモート操作型、自律型運用が可能となる。

 ・デジタルエンジニアリングやデータ融合技術が戦闘指揮を向上させ、空中戦、宇宙戦、サイバー戦の優位性を確保。

 7.アメリカと中国の競争

 ・アメリカのF-47は空中戦支配を維持するために重要だが、中国のJ-36はステルス性や長距離攻撃能力でアメリカを凌駕している可能性。

 ・中国のJ-36は、アメリカの前方基地や給油機に対する脅威となる。

 8.アメリカの対抗策

 ・アメリカはF-47の開発を加速し、遅れを取り戻す必要がある。

【引用・参照・底本】

Jet lag: US getting smoked in China’s sixth-gen fighter contrail ASIA TIMES 2025.03.25
https://asiatimes.com/2025/03/jet-lag-us-getting-smoked-in-chinas-sixth-gen-fighter-contrail/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=b7e95743e3-DAILY_25_03_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-b7e95743e3-16242795&mc_cid=b7e95743e3&mc_eid=69a7d1ef3c#

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