2024年米大統領選挙:トランプ前大統領が勝利2024年11月06日 21:06

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【概要】
 
 2024年の米大統領選挙で、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領が勝利し、4年ぶりに再び大統領職に就くことが確実となったと報じられている。この結果は、複数の米主要メディアによって発表され、特に注目される激戦州のうち、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージアを含む4州での勝利が、選挙結果を大きく左右した。

 民主党候補として選挙に臨んだカマラ・ハリス副大統領は、米国初の女性大統領を目指したが敗北した。選挙結果を受け、トランプ氏は南部フロリダ州での集会で勝利宣言を行い、「米国民にとって、再び真に偉大な米国にする」と意気込みを語った。

 米国では、前職の大統領が再選に失敗した後に再び返り咲くのは約130年ぶりのことで、これは1884年に大統領に当選したクリーブランド氏以来2人目の快挙である。クリーブランド氏は1888年に敗れたが、1892年の選挙で返り咲きに成功した。

 トランプ氏は選挙戦を通じ、バイデン政権が進行中のインフレや不法移民の増加による治安悪化などの問題を招いたと批判を展開した。特にペンシルベニアなど「ラストベルト(さびた工業地帯)」と呼ばれる地域の白人労働者層からの支持を得ることで、2016年の大統領選挙での勝利と同様の形で再び勝利に結びつけた。

 大統領選の勝敗は、各州に割り当てられた合計538人の選挙人の過半数(270人以上)を獲得することで決定される。米メディアの集計によると、トランプ氏はこの基準を超える選挙人票を確保したため、2025年1月20日に第47代大統領に就任予定である。激戦州のペンシルベニア(19人)、ノースカロライナ(16人)、ジョージア(16人)、ウィスコンシン(10人)での勝利が、大統領職の獲得に貢献した。

 一方、激戦州のミシガン、西部のアリゾナとネバダの3州では結果がまだ確定していない。トランプ氏の副大統領には、J・D・バンス上院議員が指名される見込みである。

 今回の選挙戦は異例の展開をたどり、現職のバイデン大統領が選挙まで3カ月半に迫った7月21日に選挙戦から撤退を表明し、ハリス氏が後継候補として立候補した。ハリス氏は東部ニューヨーク州や中西部イリノイ州などを地盤としてきた州で勝利を収めたものの、重要な激戦州では相次いで敗北した。

 ハリス氏は選挙戦を通じ「全ての米国民のための大統領になる」と党派を超えた団結を呼びかけ、トランプ氏と距離を置く穏健派の支持を取り込み、「反トランプ」票の獲得を目指したが、選挙戦が短期間であったために知名度で上回るトランプ氏に及ばなかった。

 また、大統領選挙と同時に実施された連邦議会選挙では、上院で共和党が多数派の奪還を確実にし、4年ぶりに優勢を取り戻した。一方、下院は共和党と民主党が接戦の状況にある。

【詳細】

 2024年の米大統領選挙において、共和党のドナルド・トランプ前大統領が再び大統領職に返り咲くことが確実となった。トランプ氏が当選するのは、2020年の敗北以来4年ぶりのことで、今回の結果はアメリカ政治において極めて稀な歴史的事例である。これまでに再選に失敗した大統領が返り咲きを果たしたのは、19世紀後半に在任したグロバー・クリーブランド大統領以来、実に約130年ぶりのこととなる。

 選挙戦の背景

 トランプ氏は選挙戦を通じて、バイデン政権の政策に対する強い批判を繰り返し、特にインフレの高進や治安の悪化、不法移民問題に対する懸念を訴えて支持を集めた。これにより、2016年の大統領選挙で自身を勝利に導いた「ラストベルト」と呼ばれる白人労働者層の支持を再び獲得することに成功した。トランプ氏は主にインフラ整備の促進やアメリカ産業の復活を強調し、工業地域の有権者層に「真に偉大なアメリカを取り戻す」というメッセージを訴求した。

 激戦州での勝利

 今回の選挙では、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージアといった重要な激戦州でトランプ氏が優勢を示した。これらの州は、選挙人の数が多く、選挙の結果を大きく左右する「スイングステート」として知られている。特にペンシルベニア州では19人、ノースカロライナ州とジョージア州ではそれぞれ16人の選挙人が割り当てられており、これらの州での勝利がトランプ氏の選挙人過半数確保に直接寄与した。また、ウィスコンシン州でも選挙人10人を獲得し、計270人の過半数を超える選挙人票を手中に収めた。

 選挙の勝敗は合計538人の選挙人のうち270人以上を獲得した候補者に大統領職が与えられる仕組みであるが、今回トランプ氏が必要な選挙人数を超えたため、2025年1月20日には第47代大統領として就任する見通しである。

 民主党候補のカマラ・ハリス氏の敗北

 民主党側では、カマラ・ハリス副大統領が候補者として選挙戦を戦った。現職のバイデン大統領が選挙戦から撤退したのは、選挙まで残り3カ月半という7月下旬であり、これは異例の展開であった。ハリス氏はバイデン氏の意思を継ぎ、初の女性大統領を目指したが、激戦州での敗北が響いた。

 選挙戦では「全ての米国民のための大統領になる」と宣言し、共和党内の穏健派の支持や「反トランプ」票の取り込みを試みたが、短期間での選挙戦の準備不足やトランプ氏の知名度の高さが影響し、十分な支持を集めるには至らなかった。特にハリス氏は、民主党の地盤である東部のニューヨーク州や中西部のイリノイ州などでは勝利したものの、選挙人票の多い激戦州での敗北が敗因となった。

 副大統領候補のJ・D・バンス氏

 トランプ氏の副大統領には、J・D・バンス上院議員が指名されている。40歳のバンス氏は、オハイオ州出身の元実業家であり、政治家としてもトランプ氏の支持層である中西部の白人労働者層との結びつきが強いとされている。トランプ政権下で副大統領を務めることで、政策実行における影響力を期待されている。

 連邦議会選挙の結果

 大統領選挙と同時に実施された連邦議会選挙では、上院で共和党が4年ぶりに多数派の奪還に成功した。これは、共和党が上院における立法プロセスでの主導権を握り、トランプ氏の政策実行に向けた支援基盤を強化することを意味する。一方、下院では共和党と民主党が接戦となっており、過半数をどちらが占めるかは未だ確定していない。

 今後の展望

 トランプ氏の当選により、アメリカの国内政策や外交政策は大きく変化する可能性がある。特に、バイデン政権が重視してきたインフレ対策や移民政策に対する厳しい姿勢が予想される。また、共和党が上院の主導権を握ったことで、トランプ氏の政策が迅速に実行される可能性が高まっている。

 トランプ氏の返り咲きは、アメリカ国内のみならず国際社会においても注目されている。

【要点】

 1.トランプ氏の当選確実

 ・2024年米大統領選で、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)の当選が確実に。
 ・米メディアが、トランプ氏が必要な270人以上の選挙人を獲得したと報道。
 ・2025年1月20日に第47代大統領として就任予定。

 2.選挙戦の背景と主張

 ・バイデン政権のインフレ、不法移民、治安悪化を批判し、白人労働者層の支持を再び取り込んだ。
 ・「ラストベルト」地域の有権者に向け、「真に偉大なアメリカを取り戻す」をスローガンに訴求。

 3.激戦州での勝利

 ・トランプ氏は、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ジョージア、ウィスコンシンなど激戦州で勝利。
 ・これにより、選挙人の過半数270人を超える数を獲得した。

 4.ハリス氏の敗北

 ・民主党候補のカマラ・ハリス氏(60)は、バイデン大統領の撤退を受け継ぎ初の女性大統領を目指すも敗北。
 ・共和党の穏健派や「反トランプ」票を狙うも、激戦州で相次ぎ敗北。

 5.副大統領候補のJ・D・バンス氏

 ・トランプ氏の副大統領にはJ・D・バンス上院議員(40)が就任予定。
 ・中西部出身で、白人労働者層と強い結びつきを持つとされる。

 6.連邦議会選挙の結果

 ・上院で共和党が4年ぶりに多数派を奪還、トランプ政権の政策実行を後押し。
 ・下院は共和党と民主党が接戦、最終的な多数派は未確定。

 7.今後の展望

 ・国内ではインフレ対策や移民政策の見直しが期待され、上院の支援を受けて政策が迅速に実行される可能性。
 ・トランプ氏の返り咲きは国際社会にも影響を与えると予想される。
 
【引用・参照・底本】

米大統領選挙、トランプ氏の当選確実 4年ぶり返り咲き 日本経済新聞 2024.11.06
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN180AE0Y4A011C2000000/?n_cid=BMSR2P001_202411061935

トランプ氏が勝利した10の理由2024年11月06日 21:29

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【概要】
 
 2024年のアメリカ大統領選挙においてドナルド・トランプがカマラ・ハリスに勝利した理由を10の要因に分けて説明している。著者のアンドリュー・コリブコは、この選挙結果をもたらした要因として、以下の点を挙げている。

 1.経済問題

 「経済が全てだ」とも言えるアメリカの選挙事情を反映し、バイデン=ハリス政権下での経済悪化が有権者に強く響いたとされる。トランプの再登板は、彼がもたらした経済の「黄金時代」を再び望む有権者の支持を集めた。

 2.移民問題

 バイデン政権下での違法移民の急増や、法的に移住したハイチ系移民に関する否定的な報道が、移民問題を更に深刻化させた。トランプは、違法移民の取締りと、法的移住者の適切な審査を約束し、この方針が多くのアメリカ人に受け入れられた。

 3.戦争への不安

 ウクライナとロシアの代理戦争や、イスラエルとイラン間の緊張に対する恐怖から、アメリカ人は第三次世界大戦の懸念を抱いている。トランプはヨーロッパと中東の平和に尽力することを誓い、ハリスが現状維持を主張する中で、平和を求める票がトランプに集まった。

 4.メディアによるトランプ批判の効果低下

 メディアのトランプ批判が過去のように有権者の心に響かなくなっている。彼を「ナチス」などと批判する声が多くなるほど、逆に関心が薄れる傾向が見られる。特に著名人によるトランプ支持者への攻撃が逆効果を生み出した。

 5.オンラインでの言論の自由の回復

 イーロン・マスクがTwitterを買収し、オンラインでの言論の自由を回復させたことで、バイデン政権とメディアの主張に疑問を抱く声が広まり、選挙に影響を与えた。マスクがいなければ、誤った情報が修正されないまま選挙に影響を及ぼした可能性がある。

 6.元民主党員の影響力

 マスク、RFK、そしてタルシ・ギャバードといった元民主党員がトランプ支持に回り、他の有権者も民主党から離れるきっかけを作った。これにより、トランプは独立系の票も獲得し、スイングステートでの勝利を決定付けた。

 7.ペンシルベニア州での特定集団の支持
 
 アーミッシュやポーランド系アメリカ人など、ペンシルベニア州の特定の集団がトランプの勝利に貢献した。活動家の支援により、これらの集団の支持が得られた。

 8.共和党の徹底的な集票活動

 共和党は前回の選挙でトランプが不正に敗北したと考えており、今回は早期投票や積極的な投票行動で「不正」を防ぐことを目指した。この徹底的な集票活動が、トランプの勝利を確実にしたとされる。

 9.中絶問題の影響減少

 2022年の最高裁判決で中絶問題が各州に任されるようになり、大統領選挙での影響力が低下した。民主党はこの問題で女性票を取り込むことが難しくなり、トランプに有利に働いた。

 10.副大統領候補の失敗

 ハリスの副大統領候補であるミネソタ州知事ティム・ウォルツは、選挙戦で期待されていた効果を発揮できなかった。ウォルツの選択が中西部の票を失う要因になったとされている。

 以上の10の要因がトランプの勝利に寄与したとされ、コリブコはこれを「神の采配」と評している。

【詳細】

 2024年アメリカ大統領選挙でのトランプ勝利の要因について、更に詳細に説明する。

 1. 経済問題

 バイデン=ハリス政権の4年間でインフレーション率が上昇し、物価高騰や賃金停滞により、生活費が増加する中でアメリカ国民の多くが経済的に困窮したとされる。特に低所得層や中産階級の家計に重くのしかかり、民主党政権が「経済の悪化に対して無策であった」という印象が広まった。過去のトランプ政権下では経済成長が見られ、企業減税や規制緩和によって雇用増が実現したため、多くの有権者が「かつての良い経済」に戻ることを期待してトランプに投票したとされる。

 2. 移民問題

 バイデン政権下では、特に南部国境での移民流入が大幅に増加した。これにより、地域コミュニティや教育機関、医療機関などへの負担が増し、社会不安が拡大した。また、アメリカに合法的に移住した一部の移民による犯罪報道が拡散され、移民政策への不安が強まった。トランプは違法移民の厳格な取締りと合法移民の審査強化を訴え、移民問題に対する強硬な姿勢が有権者に支持されたとされる。

 3. 戦争への不安

 NATOとロシアの代理戦争がウクライナで続き、さらに中東ではイスラエルとイランの緊張がエスカレートしつつある状況が、多くのアメリカ人に「第三次世界大戦が近づいているのではないか」という不安を抱かせた。トランプは、これらの地域における平和の実現に尽力することを訴えた一方で、ハリスは従来のバイデン政権の外交政策の延長を支持していた。結果として「平和を望む票」がトランプに集まったとされる。

 4. メディアによるトランプ批判の効果低下

 過去の8年間で、アメリカの主流メディアはトランプに対して継続的に批判的な報道を行ってきた。彼を「危険人物」や「極端な右派」と位置づける報道が続いたが、それが逆に有権者に「報道への不信感」を生じさせた。特に著名人の一部が、トランプ支持者や共和党を支持する女性に対して侮辱的な発言をしたことが逆効果となり、結果的に「メディアの批判に逆らう」姿勢がトランプの支持者を固めたとされる。

 5. オンラインでの言論の自由の回復

 イーロン・マスクがTwitterを買収し、言論の自由を取り戻したことで、トランプ支持者やバイデン政権に疑問を持つ人々が自由に意見を表明できるようになったとされる。選挙に関する情報もリアルタイムで共有され、バイデン政権や主流メディアの主張に対する反論が広まりやすくなった。マスクの影響力がなければ、選挙に関する情報が一方向的に広まり、選挙結果に影響を与えた可能性がある。

 6. 元民主党員の影響力

 マスク、RFK(ロバート・ケネディ・ジュニア)、タルシ・ギャバードは元民主党員でありながら、党の急進的な政策や「グローバル主義」に批判的な立場を取り、最終的にトランプ支持に回った。彼らが「民主党を離れることがクールだ」というメッセージを発信することで、トランプに投票する独立系有権者や元民主党員が増加したとされる。この統一的な支持がスイングステートでの勝利に貢献した。

 7. ペンシルベニア州での特定集団の支持

 特にペンシルベニア州では、アーミッシュやポーランド系アメリカ人がトランプ支持に動いたとされる。アーミッシュの保守的な価値観と、ポーランド系アメリカ人が持つ伝統的な保守思想が合致し、また地域の共和党活動家が効果的に支援を呼びかけたことがトランプの勝利に大きく寄与したとされる。

 8. 共和党の徹底的な集票活動

 共和党は前回の選挙での敗北に対して「不正選挙」との認識を持っており、今回は「勝利を確実にする」ために徹底的な集票活動を行った。早期投票や積極的な票の収集活動により、選挙不正のリスクを最小限に抑える努力をした。これがトランプにとって有利に働き、最後まで票を確保できたと考えられる。

 9. 中絶問題の影響減少

 2022年の最高裁判決により中絶問題が各州に委ねられることとなり、大統領選挙での争点としての重要性が薄まった。民主党は中絶問題を利用して共和党候補を批判することが難しくなり、これがトランプに有利に働いた。

 10. 副大統領候補の選択ミス

 ハリスは副大統領候補にミネソタ州知事のティム・ウォルツを選んだが、この選択が中西部のムスリム系有権者への配慮と関連していたとされる。結果的にウォルツは有権者の信頼を得られず、討論会でも共和党のJD・ヴァンスに圧倒された。ハリスがジョシュ・シャピロを選ばなかったことが、トランプへの支持を増やす要因になった。

 これらの10の要因が重なり、トランプは多くの困難を乗り越え、カマラ・ハリスを破ってアメリカ大統領に再選される結果となった。コリブコはこれを「神の采配」と表現し、トランプの復帰が「アメリカが過去の負担から解放される」象徴であると結論づけている。

【要点】

 ・経済問題: バイデン=ハリス政権下で経済状況が悪化し、多くの有権者がトランプ時代の好況を望んだ。

 ・移民問題: 違法移民や治安に対する不安が増加し、トランプの強硬な移民政策が支持を集めた。

 ・戦争への不安: ウクライナと中東の情勢不安から、トランプの平和志向の外交方針が有権者の支持を得た。

 ・メディア批判の効果低下: トランプへのメディア批判が逆効果を招き、批判が信頼を損なった。

 ・言論の自由: マスクがTwitterを買収し、選挙関連の自由な情報共有が可能になった。

 ・元民主党員の影響: マスクやRFK、タルシが民主党を離れてトランプ支持に回り、独立系有権者の支持を得た。

 ・特定集団の支持: ペンシルベニア州でアーミッシュやポーランド系アメリカ人がトランプ支持に動いた。

 ・共和党の集票活動: 共和党は徹底的な集票戦略を展開し、トランプの勝利を確実にした。

 ・中絶問題の影響減少: 中絶が州の問題となり、大統領選挙での争点として重要性が減少した。

 ・副大統領候補の選択ミス: ハリスが選んだティム・ウォルツが有権者の支持を得られず、トランプに有利な結果となった。
 
【引用・参照・底本】

Here’s How America Became Unburdened By What Has Been
Andrew Korybko's Newsletter 2024.11.06
https://korybko.substack.com/p/heres-how-america-became-unburdened?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=151259181&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

ロシアにとって米国は戦争状態にある国2024年11月06日 21:57

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【概要】
 
 ロシア大統領府のスポークスマンであるドミトリー・ペスコフ氏は、米国大統領選挙における共和党候補ドナルド・トランプの勝利について控えめな反応を示した。ペスコフ氏は、米露関係の悪化について「既に史上最低の水準にあるため、これ以上悪化することはほぼ不可能」と語り、トランプの当選が米露関係に大きな影響を与えるとは考えていないと示唆した。

 記者からプーチン大統領がトランプ氏に正式な祝意を表する予定があるかと問われた際、ペスコフ氏はそのような計画はないと述べた。その理由として、「米国は我々の国に対して直接的および間接的に戦争に関与している非友好的な国家であることを忘れてはならない」とも指摘している。

 また、ペスコフ氏はロシア政府として米国の選挙をあくまで内政問題と見なしており、公式結果が確認され、トランプ氏が来年1月に正式に就任するまで大きなコメントを控える意向を示した。

 過去数年間、特にバイデン政権下で米露関係はこれまでにないほど悪化しており、バイデン政権はウクライナに対して多大な軍事的・財政的支援を行ってきた。対照的に、トランプ氏は米国の関与を続けることに強く反対する姿勢を示しており、選挙戦では当選すれば「1日で」紛争を終結させることができると述べている。

 一部のロシア当局者は、トランプ政権下での対話の変化に対して慎重ながらも期待感を示しているが、ペスコフ氏は慎重を呼びかけ、「選挙戦中の発言は重要であるが、大統領執務室に入るとそのトーンが変わる場合もあるため、我々はすべてを慎重に分析し、具体的な言葉や具体的な行動に基づいて結論を出す」と述べた。

 トランプ氏は既に勝利宣言を行い、主要な米国メディアも彼が選挙に必要な270選挙人を確保したと報じている。多くの世界の指導者が、フランスのエマニュエル・マクロン大統領やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領を含め、トランプ氏の勝利を祝福している。

【詳細】

 ロシア政府のスポークスマンであるドミトリー・ペスコフ氏は、米国大統領選挙でのドナルド・トランプ氏の勝利に対して慎重な姿勢を見せており、特に米露関係がこれ以上悪化することはないと強調した。ペスコフ氏によれば、米露関係は既に「史上最低」の水準にあり、これ以上の悪化はほぼ不可能と考えている。そのため、トランプ氏の勝利が直ちに米露関係に大きな改善をもたらすとは見ていない。

 記者団からの質問に対し、ペスコフ氏はロシアのプーチン大統領がトランプ氏に祝意を示す予定があるかについては特に計画がないと答えた。その理由として、現在米国はロシアに対して「非友好的な国」として認識されており、ウクライナ戦争に直接的および間接的に関与していることを挙げた。ペスコフ氏は「米国が我々の国と敵対していることを忘れてはならない」と述べ、ロシアにとって米国は戦争状態にある国とみなされているとした。

 ペスコフ氏はさらに、ロシア政府は今回の米国選挙を内政問題と見なしており、トランプ氏が正式に就任する来年1月までは米国に対する重要な声明を発表する予定はないと述べた。この発言は、ロシアがトランプ氏の当選結果に対して表面的には中立の姿勢を保とうとしていることを示唆している。

 米露関係はバイデン政権下でかつてないほど悪化している。特にバイデン政権はウクライナに対して軍事および財政支援を強力に行っており、ウクライナがロシアと戦うための主要な支援国となっている。これにより、米露関係は緊張が高まり続け、冷戦時代をも超えるほどの対立状況に達している。

 一方で、トランプ氏は選挙戦の中で、米国のウクライナ関与に対して強い批判を行っており、当選すれば「1日で」ウクライナ戦争を終結させると公言している。これに対し、ロシア国内では一部の政府高官がトランプ氏の勝利に対して慎重ながらも希望を抱いている。彼らは、トランプ政権下ではウクライナ戦争や米露関係の改善が見込まれるかもしれないと考えているが、ペスコフ氏は「大統領選の公約が必ずしも政策に反映されるわけではない」と注意を促している。

 ペスコフ氏はトランプ氏の発言について、「発言は重要だが、実際に大統領執務室に入った後では、その内容が変わる場合もある」とし、過去の経験からも慎重な姿勢を示している。ロシア政府としては、トランプ氏の勝利を現段階で歓迎するというよりも、発言や具体的な政策行動を慎重に観察し、それに基づいて関係を評価する方針だと述べている。

 現時点で米国の主要メディアはトランプ氏が大統領選での必要な270選挙人票を超えたと報じ、トランプ氏自身も既に勝利宣言を行っている。これを受けて、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領など、各国の首脳もトランプ氏の勝利を祝福している。しかし、ロシアはこれに対して公式な立場を明確にしておらず、あくまで慎重な姿勢を維持している。

【要点】

 1.ドミトリー・ペスコフ氏の発言

 ・トランプ氏の当選について、米露関係に与える影響は限定的とした。
 ・米露関係は「史上最低の水準」にあり、これ以上悪化することは不可能だと述べた。

 2.プーチン大統領の祝意について

 ・トランプ氏に対して正式な祝意を表す計画はないとした。
 ・米国はロシアにとって「非友好的な国」であり、ウクライナ戦争に関与しているため祝福はない。

 3.ロシア政府の立場

 ・米国の選挙は内政問題と見なしており、公式なコメントは選挙結果が確定し、トランプ氏が正式に就任するまで控える。
 ・米国との関係改善は慎重に観察し、具体的な言動や政策に基づいて評価する。

 4.ウクライナ戦争と米露関係

 ・バイデン政権下で米露関係は悪化し、米国はウクライナに多大な軍事・財政支援を行っている。
 ・トランプ氏はウクライナへの支援に反対し、「1日で戦争を終結させる」と公言している。

 5.トランプ氏の発言とロシア側の期待

 ・一部のロシア当局者はトランプ氏の政策転換に期待を抱いているが、ペスコフ氏は慎重な姿勢を保つ。
 ・大統領就任後の発言が選挙戦中と異なる可能性があるため、言動を慎重に分析する必要があると警告。

 6.トランプ氏の選挙結果と国際的な反応

 ・トランプ氏は勝利を宣言し、主要な米国メディアは選挙人票270票を超えたと報じている。
 ・フランスのマクロン大統領、イスラエルのネタニヤフ首相、ウクライナのゼレンスキー大統領などが祝福を表明している。
 
【引用・参照・底本】

Kremlin reacts to Donald Trump’s victory RT 2024.11.06
https://www.rt.com/news/607197-russia-trump-victory-reaction/

「私は戦争を始めるつもりはない。私は戦争を止めるつもりだ」2024年11月06日 22:14

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【概要】
 
 共和党の大統領候補ドナルド・トランプは、再選された場合、戦争の防止に焦点を当てると支持者に約束した。2024年11月6日の大統領選勝利演説で、トランプ大統領は強力な米軍の必要性を強調しつつも、理想的には、それを使用する必要はないと述べた。彼はまた、彼の最初の任期(2017-2021)の間、米国は新たな戦争に関与しなかったことを思い出し、中東でのISISの敗北を除いて「戦争はなかった」と主張した。

 トランプはさらに、「私は戦争を始めるつもりはない。私は戦争を止めるつもりだ」と述べ、ロシア・ウクライナ紛争に関する彼の立場を繰り返し、当選すれば24時間以内に戦争を終わらせることができると主張した。彼の政権は戦争が激化する前からウクライナに軍事援助を提供していたが、ロシアが2021年後半に緊張に対処するための決議を提案したとき、トランプはもはや大統領の座にいなかった。トランプは、紛争解決のための具体的な計画を公に明らかにしていないが、彼のアプローチは、モスクワとキエフ双方に譲歩するよう圧力をかけることを含むだろうと示唆している。

 ロシア政府は、紛争の根本的な原因に対処せずに、現在の状況を単に凍結するだけのいかなる決議も受け入れることを拒否すると表明している。

【詳細】

 2024年の米国大統領選挙で共和党の指名候補となったドナルド・トランプ氏は、2024年11月6日の勝利演説で、新たな軍事紛争を回避するリーダーとして自らを位置づけ、戦争の防止を優先すると公約した。彼は、米国は強力で有能な軍隊を維持すべきであるが、その力は戦争への積極的な関与のためではなく、抑止力としてのみ使用されるべきであると強調した。これは、彼が最初の任期(2017-2021年)に提唱した外交政策のスタンスを引き継ぐものであり、米国は軍事的に強力であるべきだが、紛争への不必要な関与を避けるべきだと主張した。

 トランプ氏は演説で、大統領就任後1回目、米国は新たな大規模戦争に突入しなかったと主張し、「ISISを打ち負かした4年間、記録的な速さでISISを打ち負かした以外、戦争はなかった」と述べた。彼がISIS(テロリスト集団「イスラム国」)の打倒に言及したことは、彼の政権下での数少ない主要な軍事作戦の一つ、中東におけるISISの領土支配を抹殺することを目指した作戦を浮き彫りにしている。しかし、この軍事作戦にもかかわらず、トランプは彼の任期を平和な期間として位置づけ、彼の政権はより広範な通常戦争への直接的な関与を成功裏に回避したと主張した。

 トランプ大統領の「戦争を止める」という公約は、米国の軍事介入は限定的であるべきであり、世界的な紛争における米国の役割は国益を守ることに焦点を当て、その利益に役立たない紛争に巻き込まれることを避けるべきだという彼の長年の姿勢を反映している。このレトリックは、彼の広範な「アメリカ・ファースト」外交政策の一部であり、アメリカ国内の懸念を優先し、海外での軍事的関与を減らすことを提唱している。

 2024年の選挙でトランプ氏が強調した中心的なポイントの一つは、再選されれば、ロシアとウクライナの間で進行中の紛争を24時間以内に終わらせることができるという主張だった。この主張は、戦争を迅速に解決するという彼の広範な公約の一部であるが、彼はこれをどのように達成するかについては詳しく説明していない。トランプは以前、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と直接交渉し、双方に譲歩するよう圧力をかけることができると示唆していた。戦争を終わらせるための彼のアプローチは、おそらく外交的手段を含むだろうが、詳細は不明のままである。

 トランプ大統領が紛争の迅速な解決を交渉するという考えは、ロシアの侵略に対抗するために軍事援助と外交的支援でウクライナを支援するという現在の米国のアプローチとは対照的である。トランプ大統領の外交政策アプローチは、しばしば米国の対外戦争への関与を減らすことに焦点を当てており、特に紛争の明確な終結なしに、米国のウクライナ支援を継続することに懐疑的な見方を示してきた。

 トランプ政権は、2022年に紛争が全面戦争に発展する前にウクライナに軍事支援を提供していたが、ロシアが2021年後半に緊張解消の提案を提示したとき、彼は大統領の座にいなかった。短期間で紛争を終わらせるという彼のレトリックは、戦争が貧弱な外交の結果であり、ロシアとウクライナの両方との直接的な関与を通じて解決策を交渉できると彼が信じていることを示唆している。

 ロシア側では、クレムリンは、状況を単に「凍結」するだけの紛争の解決策、つまり、戦闘を停止させるが、戦争につながった核心的な問題に対処しない和平協定を受け入れないことを明確に示している。これらの問題には、クリミアの地位、ウクライナのNATO加盟の可能性、ロシアと西側との間のより広範な地政学的対立が含まれる。ロシアは、恒久的な平和にはこれらの根本原因の解決が不可欠であると主張しているが、ウクライナは、クリミアの返還を含む領土保全は交渉の余地がないと主張している。

 トランプ氏の姿勢は、米軍の継続的な関与にうんざりしている一部の有権者の間では人気があるが、現在の米国政府がウクライナの主権を支持し、ロシアの侵略に反対する姿勢とは相容れない。戦争を24時間で終わらせるというトランプの約束は、ウクライナ政府とロシア双方の協力が必要であり、どちらもトランプが提案する条件を受け入れる意思を示す兆候を見せていないため、憶測の域を出ない。さらに、NATOやEUを含む国際社会は、ウクライナのロシアに対する抵抗を支援することに投資しており、紛争の潜在的な解決をさらに複雑にしている。

 要するに、トランプ氏の選挙勝利演説は、新たな戦争を回避し、抑止力のための強力な軍隊を維持し、ウクライナのような紛争を解決するために外交を活用するという彼のコミットメントを強調している。しかし、彼が提案する和平、特にロシアとの和平を達成するための方法は未だに定義されておらず、根深い地政学的問題や国際的な視点の違いなど、大きな課題に直面している。

【要点】

 ・トランプ氏の誓約:2024年の共和党大統領候補であるドナルド・トランプ氏は、戦争の開始を避け、既存の紛争の停止に焦点を当てることを約束しました。彼は強力な米軍の必要性を強調したが、それは抑止力としてのみ使用されるべきであり、積極的な関与のために使用されるべきではないと述べた。

 ・1期目の記録:トランプ氏は、1期目(2017年から2021年)に米国が新たな戦争を回避したと主張し、ISISの敗北を主要な軍事作戦として強調した。彼は自分の政権を平和な時代と位置づけ、「4年間、戦争はなかった」と述べた。

 ・「戦争を止める」声明:トランプは、戦争を始めるのではなく、戦争を終わらせるために働くと強調し、「私は戦争を止めるつもりだ」と述べた。彼はまた、再選されれば、ロシアとウクライナの紛争を24時間以内に終わらせることができるという大胆な主張をした。

 ・ウクライナ紛争:トランプは、戦争を終わらせるためにロシアとウクライナの両方と直接交渉することを示唆し、双方に譲歩するよう圧力をかけました。しかし、紛争を解決するための彼の具体的な計画は不明のままである。

 ・1期目のウクライナ支援:トランプ政権は1期目、ウクライナに軍事援助を提供したが、2022年にロシアとウクライナの紛争が全面戦争に発展したとき、彼は在任していなかった。

 ・ロシアの立場:ロシア政府は、クリミアの地位やウクライナのNATO加盟の可能性など、紛争の核心的な原因に対処せずに、現在の状況を単に凍結するだけの決議を拒否した。

 ・外交的アプローチ:トランプ大統領のレトリックは、ウクライナへの軍事援助と領土保全の支援に焦点を当てた現在の米国のアプローチとは対照的に、直接外交を通じて戦争を迅速に終わらせることができると彼が考えていることを示唆している。

 ・課題:トランプ大統領が戦争を迅速に解決する能力は、根強い地政学的問題、国際的立場の違い、ロシア・ウクライナ紛争の複雑な力学など、大きな障害に直面している。
 
【引用・参照・底本】

Trump promises to ‘stop wars’ RT 2024.11.06
https://www.rt.com/news/607179-trump-end-wars-speech/

トランプ:台湾は「米国に防衛費を払うべきだ」2024年11月06日 22:28

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【概要】
 
 2024年11月5日に行われた米大統領選で、ドナルド・トランプ前大統領が「勝利宣言」をした。選挙期間中、トランプ氏は台湾に対して「米国に防衛費を払うべきだ」と繰り返し述べており、台湾と米国の関係において今後どのような変化があるかについて、専門家が分析を行っている。

 蘇紫雲氏(国防安全研究院)

 トランプ氏は1期目で台湾への武器売却をパッケージ形式から順次承認する方式に変更し、台湾との軍事交流や台湾軍の訓練に対する協力を深めた。トランプ氏が「台湾は米国に防衛費を払うべきだ」と発言した背景には、米国がNATOや日本、韓国、台湾などの国々と協力しながら、これらの国々も自国の防衛により多くのリソースを投入すべきだという考えがある。具体的な要求は誇張されたもので、実際には「台湾は防衛費をGDPの10%に引き上げるべきだ」という発言は、米国が協力を惜しまないが、台湾側にも自己防衛能力を向上させる責任があることを意味しているとされている。

 陳文甲氏(国策研究院)

 トランプ氏が繰り返し述べた「台湾は米国に防衛費を払うべきだ」という考えは、台湾が安全保障に関して財政的・実質的な責任を負うべきだという立場を反映している。今後の台米軍事交流において、米国は台湾に対して自己防衛能力を強化する責任をより強調し、軍事支出をさらに分担させると予想される。また、米国は引き続き台湾に対して先端武器の売却を進めると見られ、防空システムや無人機といった新型武器がこれに含まれるだろう。米国は直接的な軍事訓練の支援から、技術的・設備的な協力にシフトする可能性が高い。

 陳世民氏(台湾大学)

 トランプ氏の「台湾は防衛費を払うべきだ」という発言は、台湾が防衛費を支出することで、米国からの明確な安全保障を得るべきだという考えに基づいている。台湾側では、もし防衛費を支払うことで米国の安全保障を確保できるのであれば、その支出を支持する声もある。しかし、「戦略的曖昧さ」が続く現状では問題があるとされている。トランプ氏が再任後にどのような軍事政策を取るかは、彼が起用する外交や国家安全の閣僚によって変わる可能性がある。もし台湾支持の人物が重要な役職に就けば、台湾との安全保障関係が強化されるだろう。一方で、MAGA派が影響力を持つ場合、米国の海外安全保障に対する関与が減少し、利益を優先する方針が取られる可能性もある。

【詳細】

 2024年11月5日の米大統領選挙で、ドナルド・トランプ前大統領が「勝利宣言」を行い、台湾と米国の関係がどう変化するかについて、専門家による分析が行われている。以下では、各専門家の見解をさらに詳細に説明する。

 1. 蘇紫雲氏(国防安全研究院)

 蘇氏は、トランプ氏の1期目の政策を振り返り、彼が台湾への武器売却において、従来のパッケージ形式から段階的承認方式へと変更したことを指摘している。これにより、台湾と米国の軍事交流が強化され、特に台湾軍の訓練と協力の深化が図られた。この政策の一環として、台湾に対して「防衛費を払うべきだ」との発言が繰り返されたが、これは単なる誇張ではなく、米国が他国と協力しながらも、それぞれの国がより公平に自己防衛のための資源を投入すべきだというメッセージとして受け取られている。

 背景

 トランプ氏は、他のNATO諸国や日本、韓国などと同様に、台湾も防衛費をより多く支出し、その負担を分担すべきだという立場を取っている。具体的には、「台湾の軍事費を国内総生産(GDP)の10%まで引き上げるべきだ」と発言したが、この言い回しはあくまで強調された意見であり、実際には台湾が独自に防衛能力を高める必要があるという警告の意味が込められている。

 今後の展開

 トランプ政権が再び発足すれば、台湾の防衛能力を向上させるため、米国は台湾に対してさらなる軍事支援を行い、技術面での協力を強化するだろう。しかし、その際には台湾側にも軍事予算を増加させるよう求め、負担の公平性が強調されると考えられる。

 2. 陳文甲氏(国策研究院)

 陳氏は、トランプ氏が繰り返し述べてきた「台湾は米国に防衛費を払うべきだ」という発言を、台湾が安全保障における財政的・実質的な義務を果たすべきだという立場の表れだと捉えている。トランプ政権下では、台湾に対する軍事的な支援は一貫して強化され、特に先端技術を有する武器の売却が行われた。例えば、米国は台湾に対して防空システムや無人機といった最新の武器を供与する方向に進む可能性が高い。

 軍事訓練と技術協力

 台湾と米国の軍事訓練において、トランプ政権はこれまで、兵員の訓練や実戦的な協力を提供してきた。しかし、今後は直接的な訓練の内容を減らし、代わりに技術的な協力や装備提供の方に重点が置かれると予想される。この変更は、米国が台湾に対してより自主的な防衛能力を発展させるよう促す意図が込められている。

 新型武器の供与

 トランプ政権下では、台湾に先端技術を持つ武器を供与する方針が強化されるだろう。特に防空システムや無人機など、新たな戦力として重要な役割を果たす兵器が台湾に供給されると予想される。これにより、台湾の自己防衛能力がさらに強化される一方で、米国側は台湾への支援を一層強化する必要があるというプレッシャーも受けることになる。

 3. 陳世民氏(台湾大学)

 陳氏は、トランプ氏が選挙戦中に発言した「台湾は防衛費を払うべきだ」という主張を、実業家としての視点から「保険会社の概念」と説明している。台湾側では、金銭的な支出で安全保障が確保できるのであれば、支出を支持する文化があるため、トランプ氏の発言がそのような視点に基づいていると考えられる。

 戦略的曖昧さの問題
 
 台湾側は「戦略的曖昧さ」を保っている現状に不安を抱えており、トランプ氏の発言がどのように実現されるかが重要であると指摘している。もし台湾が防衛費を支払うことで、米国からの明確な安全保障を取り付けることができるのであれば、その支出に対して台湾国内からの支持が得られるだろう。しかし、現状のように米国が明確な安全保障を提供しない場合、問題が残る。

 閣僚人事の影響

 トランプ氏が再選後にどのような閣僚を起用するかによって、台湾との関係が大きく変わる可能性がある。例えば、マイク・ポンペオ元国務長官やマルコ・ルビオ上院議員など、台湾支持の強い人物が重要な役職に就く場合、台湾との安全保障協力はさらに強化されるだろう。一方で、MAGA(米国を再び偉大に)派が要職に就けば、台湾を含む海外への軍事的コミットメントが減少し、米国の利益を最優先にする方針が取られる可能性がある。

 結論

 トランプ氏の再任が実現すれば、台湾と米国の関係は引き続き強化されるが、台湾側には防衛費の増加が求められ、台湾の自己防衛能力強化が主な焦点となるだろう。米国側は台湾への軍事支援を拡大し、特に技術面での協力を進めると予想される。しかし、これが台湾国内でどう受け止められるか、また米国がどのような安全保障を提供するかによって、関係の進展には波乱もあり得る。

【要点】

 トランプ氏の再選後の台米関係に関する専門家の見解を箇条書きでまとめたものです:

 1. 蘇紫雲氏(国防安全研究院)

 ・トランプ氏は1期目で、台湾への武器売却の形式をパッケージから段階的承認に変更。
 ・台湾と米国の軍事交流を強化し、台湾軍の訓練協力を深めた。
 ・台湾に対し、防衛費を払うべきとの発言は、米国と協力する代わりに台湾も自己防衛のための費用を増やすべきとのメッセージ。
 ・具体的には、台湾の軍事費をGDPの10%に増やすべきといった意見があり、これは誇張ではなく、自己防衛を強調する発言。

 2. 陳文甲氏(国策研究院)

 ・トランプ氏の発言は、台湾が安全保障の財政的・実質的義務を負うべきだという立場を反映。
 ・台湾には、米国が支援する軍事装備(特に先端技術)を提供し続けると予想。
 ・今後、台湾への軍事支援は、兵員訓練から技術協力や装備提供にシフトする可能性。
 ・米国は台湾に対し、さらに防衛能力を強化するよう求め、軍事支出の分担を強調する。

 3. 陳世民氏(台湾大学)

 ・トランプ氏の発言は、台湾が防衛費を支払うことで米国からの安全保障を確保しようとする視点に基づく。
 ・台湾国内では「お金で解決できるなら」という考え方があり、もしその支出が米国からの明確な安全保障に繋がるならば、支出を支持する可能性が高い。
 ・トランプ政権の閣僚人事によって、台湾との安全保障関係が大きく変わる可能性あり。
  ⇨ ポンペオ元国務長官やルビオ上院議員など、台湾支持の人物が重要職に就けば、関係強化が進む。
  ⇨ MAGA派が重視されれば、米国の利益を優先し、海外への軍事的コミットメントが減少する可能性。

 今後の台米関係の展開

 ・台湾は米国からの軍事支援を拡大し、特に防空システムや無人機など新型武器を供与される。
 ・米国は台湾に対し、自己防衛能力を高めるよう求め、その負担をより公平に分担させる方向に進む。
 ・台湾は、米国から明確な安全保障を得るために防衛費の増加を受け入れる必要があり、国内での支持が問われる。
 
【引用・参照・底本】

米大統領選、トランプ氏が「勝利宣言」 台米関係の見通しを専門家が分析 フォーカス台湾 2024.11.06
https://japan.focustaiwan.tw/politics/202411060009