モルドバの未来は暗い2024年11月07日 22:40

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【概要】

 モルドバの最近の大統領選挙とその結果について分析している。具体的には、モルドバの現大統領マイア・サンドゥが再選された経緯に焦点を当て、選挙結果がどのようにして決定されたかを説明している。

 モルドバの大統領選挙では、サンドゥが55.35%の票を得て再選されたが、野党側はその結果を認めていない。特に、野党候補アレクサンドル・ストイアノグロがモルドバ国内で行われた投票で51%の票を獲得したという主張がある。しかし、国外在住のモルドバ国民(特にヨーロッパに住む人々)が深夜に投票を終えたことで、サンドゥが勝利した。これにより、サンドゥの勝利は予測可能な結果であったとされている。ヨーロッパのモルドバ人コミュニティは一般的に親西側的であり、サンドゥはその支持を得ていた一方、ロシアに住むモルドバ人コミュニティは投票所が限られ、十分な投票機会を持たなかったとされる。

 この記事では、モルドバの政治的分裂が進んでおり、特にトランスニストリア地域(ロシアの平和維持軍が駐留している地域)との対立が未解決のままであることが強調されている。モルドバは、隣国ウクライナと同様に、親西側の路線を取ることにより、政治的に不安定な状況が続く可能性があると警告している。著者は、サンドゥ政権が西側諸国の支援を受け、国内の保守的・親ロシア的な勢力を排除しているとの立場を取っており、モルドバが事実上NATOのメンバーであると述べている。近い将来、憲法改正により、モルドバの中立を定めた条項が撤廃される可能性があると指摘している。

 また、モルドバでの最近の住民投票や選挙結果が、ロシアの影響を排除し、欧米に対して有利な形で進められていると考えられ、今後も西側の支援を受けた政策が続くことが予想される。これに対し、モルドバの反対勢力は、独立を守るために過激な抗議行動を起こす可能性があり、その場合、西側はロシアの介入を理由に反対勢力を非難する可能性がある。このような状況では、モルドバの国内情勢が暴力的な対立に発展する可能性もあり、ルーマニア軍の介入を求める声も上がるかもしれない。

 全体として、著者はモルドバの未来が非常に暗いものであり、その政治的な方向性が既に決まっており、反対勢力がそれに逆らうのは非常に難しいと考えている。

【詳細】

 モルドバの2024年大統領選挙の結果とその背景、そしてモルドバの今後の政治的展望について詳細に説明している。以下に、各ポイントを詳しく掘り下げて説明する。

 1. モルドバの大統領選挙結果

 モルドバの現大統領であるマイア・サンドゥは、2024年11月の選挙で55.35%の票を得て再選を果たした。しかし、選挙結果に対して野党側は異議を唱えている。特に、サンドゥの対立候補であるアレクサンドル・ストイアノグロがモルドバ国内で行われた最初の投票で51%の票を得ていたと主張しているが、最終的にはモルドバ国外に住むディアスポラ(海外在住者)の票が集まることによってサンドゥが勝利を収めた。このため、サンドゥの再選はディアスポラ票によって決まったとされ、結果に対して不正があったと疑う声が上がっている。

 2. ディアスポラの影響

 モルドバ国外に住むモルドバ人の中で特にヨーロッパに住む人々は、西側諸国に親和的であることが多く、これらの人々の投票がサンドゥの再選を助けたと指摘されている。モルドバの国内投票では、サンドゥは42.45%の票を得て第一回投票をリードしたが、野党候補ストイアノグロは25.98%にとどまっていた。しかし、決選投票ではストイアノグロに投票した一部の有権者がサンドゥに投票し、最終的にサンドゥが勝利した。

 一方、モルドバのロシアに住む人々(約50万人)には、選挙に参加するための投票所がわずか2カ所しか設置されておらず、印刷された投票用紙も1万枚に限られていた。これにより、モルドバ国内の反サンドゥ派の声が十分に反映されなかったとされる。このような不公平な選挙環境が、モルドバの政治的分裂を深刻化させる要因となっている。

 3. モルドバの社会政治的分裂

 モルドバは、親西側の立場を取るサンドゥ政権と、ロシアとの関係を重視する反サンドゥ勢力との間で大きな分裂を抱えている。この分裂は、モルドバの未解決の領土問題であるトランスニストリア(ロシアの平和維持軍が駐留している地域)との対立に加え、国内外の政治的対立が複雑に絡み合っていることによってさらに深刻化している。

 4. モルドバの西側志向とNATO加入の動き

 モルドバの政治的未来は、サンドゥ政権が強力に推進する親西側の政策に影響されると見られている。サンドゥ政権は、モルドバが事実上NATOに加盟していると考え、憲法に定められた中立の条項を撤廃することを目指している。この動きが実現すれば、モルドバは正式にNATOに加盟することとなり、ロシアに対する心理的および政治的な打撃を与えることになると予測されている。

 著者は、モルドバがNATOに加盟する可能性を「モルドバの未来に対する憂慮の一環」として提示しており、これは単に地域安全保障の問題にとどまらず、モルドバの独立性に対する脅威ともなりうると警告している。

 5. モルドバの選挙と住民投票に対する反発

 モルドバで行われた最近の住民投票や選挙は、ロシアの影響を排除する形で進められ、西側諸国の支援を受けた政策が推進されていると述べられている。特にEU加盟に向けた住民投票は、僅差で成立したとされ、その結果は、反対派の声が無視される形で進められたという批判がある。

 これに対し、反サンドゥ勢力は、自国の独立を守るために過激な抗議行動を起こす可能性があると警告されている。もし大規模な抗議活動が発生すれば、モルドバ政府はそれを「ロシアの干渉」として非難し、国内情勢が暴力的にエスカレートする可能性がある。著者は、このような状況において、モルドバ政府が強権的な手段を使って反対派を弾圧することを予測している。

 6. モルドバの未来

 著者は、モルドバの未来が「非常に暗い」と予測しており、現在の政治的状況がすでに固定化されていると警告している。モルドバの政治は、西側諸国の影響力のもとで進んでおり、反西側の勢力が力を持ち続けることは難しく、サンドゥ政権が今後も支配的な立場を維持する可能性が高い。反対勢力がそれに反発する場合、暴力的な対立が起こる可能性があり、モルドバはその運命を避けられないかもしれない。

 この予測は、モルドバの政治的独立性と未来に対する深刻な懸念を表しており、モルドバがこれから迎えるであろう困難な局面について警鐘を鳴らしている。

【要点】

 1.モルドバ大統領選挙

 ・現大統領マイア・サンドゥが再選(55.35%の票を得る)。
 ・反対派は結果に異議を唱えており、野党候補アレクサンドル・ストイアノグロは国内投票で51%を獲得したと主張。
 ・決選投票でサンドゥが勝利したのは、海外に住むモルドバ人(ディアスポラ)による大量の支持があったため。

 2.ディアスポラの影響

 ・ヨーロッパ在住のモルドバ人は西側諸国に親和的で、サンドゥ支持を表明。
 ・ロシア在住のモルドバ人は投票所が限られ、十分な投票機会が与えられなかった(投票所2カ所、印刷された投票用紙1万枚のみ)。

 3.モルドバの社会的・政治的分裂

 ・モルドバは、親西側(サンドゥ)と親ロシア(反サンドゥ)の勢力間で深刻な対立を抱えている。
 ・トランスニストリア問題(ロシア平和維持軍駐留)も解決しておらず、分裂が続いている。

 4.モルドバの西側志向とNATO加入

 ・サンドゥ政権はモルドバの親西側路線を強化し、モルドバの中立条項撤廃を目指している。
 ・これにより、モルドバは事実上NATOに加盟している状態となり、正式な加盟が進めばロシアに対する政治的・心理的打撃となる。

 5.住民投票と選挙に対する反発

 ・最近の住民投票や選挙結果は、西側支持が強く、ロシアの影響を排除する形で進行。
 ・反サンドゥ派は不正選挙を疑い、抗議行動を起こす可能性がある。

 6.モルドバの未来に対する警告

 ・モルドバの政治状況はすでに固定化されており、サンドゥ政権が支配的な立場を維持する可能性が高い。
 ・反サンドゥ勢力の抗議行動が暴力的対立に発展するリスクがあり、モルドバは政治的独立を守るために困難な状況に直面している。

 7.結論

 ・モルドバの政治的未来は暗く、現在の進行方向を変えることは困難だと予測されている。
 
【引用・参照・底本】

Moldova’s Pro-Western President Was Predictably Re-Elected Due To The Diaspora Andrew Korybko's Newsletter 2024.11.07
https://korybko.substack.com/p/moldovas-pro-western-president-was?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=151311310&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

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