ロシアとエチオピアの関係 ― 2024年11月15日 13:59
【概要】
2024年11月14日付けのアンドリュー・コリブコ氏による記事によれば、ロシアのエチオピア駐在大使エフゲニー・テレキン氏は、エチオピアとロシアの関係についていくつかの重要な発言をした。これらの発言はエチオピアの地理的および経済的課題、ならびに両国の歴史的な友好関係に焦点を当てている。
テレキン大使は、エチオピアの海へのアクセスが欠如していることを問題視しながらも、「これは非常に大きな問題であることを理解している」と述べ、エチオピアの海洋アクセス問題は攻撃的でも不安定化をもたらすものでもなく、正常なものであると認識していることを示唆した。また、この問題は「隣国間で良好な隣人関係と対話の精神で解決されるべきであり、外部の干渉はあってはならない」と述べ、エチオピアの隣国であるソマリアや最近形成されたアスマラ軸(エジプト、エリトリア、ソマリア)に対して間接的に干渉しないようにという立場を示した。
次に、テレキン大使は、エチオピアが「地域安全保障の中核として、平和と安全を維持する決定的な役割を果たしている」と評価した。これは、エチオピアの海上物流に依存し、他国に管理を委ねることによる危機を未然に防ぐ目的で、エチオピアとソマリランドとの間で締結された協定が地域の安定化を図るものであることを再確認する発言である。
また、大使は、「我々の貿易関係は政治的関係のレベルに達していない」と率直に述べ、エチオピアとの間には長年の友好関係が築かれていることを強調したが、貿易関係が十分に発展していない理由については詳細に言及しなかった。しかし、両国の125年以上にわたる関係は、今回のビジネスフォーラムを通じて失われた時間を取り戻すための基盤となるだろう。
テレキン大使は、エチオピアを「アフリカ連合内だけでなく、アフリカ大陸全体においても影響力を持つ外交の中心地である」と称賛し、ロシアにとってエチオピアは経済・貿易関係における「優先的パートナー」であると述べた。この発言は、エチオピアがロシアのアフリカ戦略において特別な役割を果たすことを強調している。
さらに、ロシアのアフリカ諸国との経済協力担当委員会(AFROCOM)のイゴール・モロゾフ委員長は、エチオピアにロシアの大陸事務所を開設したことを踏まえ、「エチオピアから他のアフリカ諸国および市場に進出する計画である」と述べ、エチオピアがロシアにとってアフリカ全体への入口として重要な役割を果たすことを示唆した。
総じて、ロシアとエチオピアの関係は、両国の相互補完的な関係と、リーダーシップにおける共通の多極的ビジョンに基づいて強化され続けると見込まれる。エチオピアは、ソマリランドを巡るソマリア、エジプト、エリトリアとの間での緊張緩和をロシアに助けてもらうよう依頼する可能性があり、その場合、ロシアの提案を聞くことが有益であると考えられる。
【詳細】
アンドリュー・コリブコによる2024年11月14日付けの記事では、ロシアのエチオピア駐在大使、エフゲニー・テレキン氏の発言が取り上げられており、両国の歴史的背景や現代の外交的立場が詳述されている。以下に、その内容を更に詳細に説明する。
1. エチオピアの海へのアクセス問題について
テレキン大使は、エチオピアが海へのアクセスを持たないことに関して、ロシアがどのように認識しているかについて触れた。エチオピアはかつて、エリトリアとの戦争を経て1993年に独立を果たし、その後も海へのアクセスを失った状態が続いている。この問題はエチオピアの経済的発展において重要な課題であり、特に貿易や輸送の面で制約を強いられてきた。
テレキン大使は「海へのアクセスがないことは大きな問題であることを理解している」としながらも、ロシアとしてはそれを「攻撃的な行動」や「不安定化をもたらす問題」とは見なしていないことを示唆した。ロシアはエチオピアの立場に共感を示し、海へのアクセス問題はエチオピアの発展にとって自然な挑戦であり、その解決は隣国との「良好な隣人関係と対話」によって進められるべきだと述べた。
その後、大使は「外部からの干渉は好ましくない」とも強調しており、この点からエジプトやエリトリアがエチオピアの海へのアクセス問題に関与することには慎重であるべきだという暗黙のメッセージが込められている。特に、エチオピアとソマリランドとの関係が新たな外交的課題を生む中で、ロシアは地域の安定性を重視していることがわかる。
2. エチオピアの地域安全保障における役割
テレキン大使はさらに、エチオピアが「地域安全保障の中核」として、アフリカの平和と安定に貢献している点についても言及した。エチオピアは、アフリカ連合(AU)の本部があるアディスアベバを抱えることから、アフリカ大陸における政治的な中心地と見なされており、その外交的影響力は非常に大きい。
特に、エチオピアはアフリカの平和維持活動において重要な役割を果たしており、サヘル地域やソマリアへの関与など、安全保障面でのリーダーシップを発揮している。テレキン大使はこの点を評価し、エチオピアが地域の平和と安全保障を保つために不可欠な存在であると述べた。この発言は、エチオピアとロシアが共通の戦略的目標を持ち、地域の安定を追求していることを示している。
3. 貿易関係の進展について
ロシアとエチオピアの関係は、政治的には深い歴史的な友好関係に支えられているが、貿易面ではその潜在的な可能性に比べて進展が遅れていることがテレキン大使の発言から明らかとなった。ロシアとエチオピアは125年以上にわたる外交関係を有し、その間には文化的、経済的なつながりも存在しているが、貿易面での協力はまだ限られている。
テレキン大使は、この点について「貿易関係は政治的関係のレベルに達していない」と述べ、今後のビジネスフォーラムを通じてこのギャップを埋めることを期待していることを示唆した。ロシアとしては、エチオピアとの経済的な結びつきを強化し、商業的な利益を追求する姿勢を示しているが、その実現には時間を要する可能性がある。
4. エチオピアのアフリカ大陸における地位と役割
テレキン大使は、エチオピアが「アフリカの外交の中心地」として、アフリカ連合の本部を有し、アフリカ全体に対する影響力を持つ国であることを強調した。エチオピアは、アフリカ大陸で最も影響力のある国の一つであり、その外交的な立場はロシアにとっても非常に重要である。
ロシアは、エチオピアをアフリカ全体への「経済的なゲートウェイ」として位置づけ、アフリカ市場への進出における重要な拠点と見なしている。モロゾフ委員長は、エチオピアを拠点にして他のアフリカ諸国への経済的進出を進める意向を表明しており、エチオピアがロシアのアフリカ戦略において中心的な役割を果たすことを明確にした。
5. ロシアとエチオピアの今後の関係
最後に、テレキン大使の発言からは、ロシアとエチオピアの関係が今後も強化される可能性が高いことが示唆されている。両国は、互いに補完的な関係を持っており、特に多極的な国際秩序の構築に向けた共通のビジョンを共有している。エチオピアは、ソマリランドを巡る隣国との緊張を緩和するためにロシアの助けを求める可能性があり、ロシアはその提案を慎重に聞き入れることが期待される。
このように、ロシアとエチオピアの関係は、政治的な友好関係や安全保障面での協力だけでなく、経済的な発展を追求する上でも重要な意味を持つといえる。
【要点】
1.エチオピアの海へのアクセス問題
・エチオピアは海へのアクセスを持たず、それが経済発展における大きな課題である。
・ロシアはこの問題を「攻撃的」や「不安定化」の要因とは見なしていない。
・エチオピアとその隣国は「良好な隣人関係と対話」で解決すべきだと強調。
・外部の干渉、特にエジプトやエリトリアの介入には慎重であるべきとの立場を示唆。
2.エチオピアの地域安全保障における役割
・エチオピアはアフリカ連合(AU)の本部を有し、地域の平和維持において重要な役割を果たしている。
・ロシアはエチオピアを「地域安全保障の中核」と見なしている。
3.貿易関係の現状
・ロシアとエチオピアの貿易関係は政治的関係に比べて未だ発展途上。
・125年以上にわたる友好関係にも関わらず、経済面では協力が限られている。
・今後、ビジネスフォーラムを通じて貿易の強化を期待。
4.エチオピアのアフリカ大陸における地位
・エチオピアは「アフリカの外交の中心地」として、アフリカ全体への影響力が大きい。
・ロシアはエチオピアをアフリカ市場への「ゲートウェイ」と位置づけており、アフリカ経済進出の重要な拠点と見なしている。
5.ロシアとエチオピアの今後の関係
・両国の関係は今後も強化される見込み。
・互いに補完的な関係を持ち、特に多極的な国際秩序構築において共通のビジョンを共有。
・エチオピアはソマリランド問題でロシアの支援を求める可能性があり、ロシアはその提案に応じる意向がある。
【引用・参照・底本】
Analyzing The Russian Ambassador’s Latest Statements About Andrew Korybko's Newsletter 2024.11.14
https://korybko.substack.com/p/analyzing-the-russian-ambassadors-a86?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=151640473&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email
2024年11月14日付けのアンドリュー・コリブコ氏による記事によれば、ロシアのエチオピア駐在大使エフゲニー・テレキン氏は、エチオピアとロシアの関係についていくつかの重要な発言をした。これらの発言はエチオピアの地理的および経済的課題、ならびに両国の歴史的な友好関係に焦点を当てている。
テレキン大使は、エチオピアの海へのアクセスが欠如していることを問題視しながらも、「これは非常に大きな問題であることを理解している」と述べ、エチオピアの海洋アクセス問題は攻撃的でも不安定化をもたらすものでもなく、正常なものであると認識していることを示唆した。また、この問題は「隣国間で良好な隣人関係と対話の精神で解決されるべきであり、外部の干渉はあってはならない」と述べ、エチオピアの隣国であるソマリアや最近形成されたアスマラ軸(エジプト、エリトリア、ソマリア)に対して間接的に干渉しないようにという立場を示した。
次に、テレキン大使は、エチオピアが「地域安全保障の中核として、平和と安全を維持する決定的な役割を果たしている」と評価した。これは、エチオピアの海上物流に依存し、他国に管理を委ねることによる危機を未然に防ぐ目的で、エチオピアとソマリランドとの間で締結された協定が地域の安定化を図るものであることを再確認する発言である。
また、大使は、「我々の貿易関係は政治的関係のレベルに達していない」と率直に述べ、エチオピアとの間には長年の友好関係が築かれていることを強調したが、貿易関係が十分に発展していない理由については詳細に言及しなかった。しかし、両国の125年以上にわたる関係は、今回のビジネスフォーラムを通じて失われた時間を取り戻すための基盤となるだろう。
テレキン大使は、エチオピアを「アフリカ連合内だけでなく、アフリカ大陸全体においても影響力を持つ外交の中心地である」と称賛し、ロシアにとってエチオピアは経済・貿易関係における「優先的パートナー」であると述べた。この発言は、エチオピアがロシアのアフリカ戦略において特別な役割を果たすことを強調している。
さらに、ロシアのアフリカ諸国との経済協力担当委員会(AFROCOM)のイゴール・モロゾフ委員長は、エチオピアにロシアの大陸事務所を開設したことを踏まえ、「エチオピアから他のアフリカ諸国および市場に進出する計画である」と述べ、エチオピアがロシアにとってアフリカ全体への入口として重要な役割を果たすことを示唆した。
総じて、ロシアとエチオピアの関係は、両国の相互補完的な関係と、リーダーシップにおける共通の多極的ビジョンに基づいて強化され続けると見込まれる。エチオピアは、ソマリランドを巡るソマリア、エジプト、エリトリアとの間での緊張緩和をロシアに助けてもらうよう依頼する可能性があり、その場合、ロシアの提案を聞くことが有益であると考えられる。
【詳細】
アンドリュー・コリブコによる2024年11月14日付けの記事では、ロシアのエチオピア駐在大使、エフゲニー・テレキン氏の発言が取り上げられており、両国の歴史的背景や現代の外交的立場が詳述されている。以下に、その内容を更に詳細に説明する。
1. エチオピアの海へのアクセス問題について
テレキン大使は、エチオピアが海へのアクセスを持たないことに関して、ロシアがどのように認識しているかについて触れた。エチオピアはかつて、エリトリアとの戦争を経て1993年に独立を果たし、その後も海へのアクセスを失った状態が続いている。この問題はエチオピアの経済的発展において重要な課題であり、特に貿易や輸送の面で制約を強いられてきた。
テレキン大使は「海へのアクセスがないことは大きな問題であることを理解している」としながらも、ロシアとしてはそれを「攻撃的な行動」や「不安定化をもたらす問題」とは見なしていないことを示唆した。ロシアはエチオピアの立場に共感を示し、海へのアクセス問題はエチオピアの発展にとって自然な挑戦であり、その解決は隣国との「良好な隣人関係と対話」によって進められるべきだと述べた。
その後、大使は「外部からの干渉は好ましくない」とも強調しており、この点からエジプトやエリトリアがエチオピアの海へのアクセス問題に関与することには慎重であるべきだという暗黙のメッセージが込められている。特に、エチオピアとソマリランドとの関係が新たな外交的課題を生む中で、ロシアは地域の安定性を重視していることがわかる。
2. エチオピアの地域安全保障における役割
テレキン大使はさらに、エチオピアが「地域安全保障の中核」として、アフリカの平和と安定に貢献している点についても言及した。エチオピアは、アフリカ連合(AU)の本部があるアディスアベバを抱えることから、アフリカ大陸における政治的な中心地と見なされており、その外交的影響力は非常に大きい。
特に、エチオピアはアフリカの平和維持活動において重要な役割を果たしており、サヘル地域やソマリアへの関与など、安全保障面でのリーダーシップを発揮している。テレキン大使はこの点を評価し、エチオピアが地域の平和と安全保障を保つために不可欠な存在であると述べた。この発言は、エチオピアとロシアが共通の戦略的目標を持ち、地域の安定を追求していることを示している。
3. 貿易関係の進展について
ロシアとエチオピアの関係は、政治的には深い歴史的な友好関係に支えられているが、貿易面ではその潜在的な可能性に比べて進展が遅れていることがテレキン大使の発言から明らかとなった。ロシアとエチオピアは125年以上にわたる外交関係を有し、その間には文化的、経済的なつながりも存在しているが、貿易面での協力はまだ限られている。
テレキン大使は、この点について「貿易関係は政治的関係のレベルに達していない」と述べ、今後のビジネスフォーラムを通じてこのギャップを埋めることを期待していることを示唆した。ロシアとしては、エチオピアとの経済的な結びつきを強化し、商業的な利益を追求する姿勢を示しているが、その実現には時間を要する可能性がある。
4. エチオピアのアフリカ大陸における地位と役割
テレキン大使は、エチオピアが「アフリカの外交の中心地」として、アフリカ連合の本部を有し、アフリカ全体に対する影響力を持つ国であることを強調した。エチオピアは、アフリカ大陸で最も影響力のある国の一つであり、その外交的な立場はロシアにとっても非常に重要である。
ロシアは、エチオピアをアフリカ全体への「経済的なゲートウェイ」として位置づけ、アフリカ市場への進出における重要な拠点と見なしている。モロゾフ委員長は、エチオピアを拠点にして他のアフリカ諸国への経済的進出を進める意向を表明しており、エチオピアがロシアのアフリカ戦略において中心的な役割を果たすことを明確にした。
5. ロシアとエチオピアの今後の関係
最後に、テレキン大使の発言からは、ロシアとエチオピアの関係が今後も強化される可能性が高いことが示唆されている。両国は、互いに補完的な関係を持っており、特に多極的な国際秩序の構築に向けた共通のビジョンを共有している。エチオピアは、ソマリランドを巡る隣国との緊張を緩和するためにロシアの助けを求める可能性があり、ロシアはその提案を慎重に聞き入れることが期待される。
このように、ロシアとエチオピアの関係は、政治的な友好関係や安全保障面での協力だけでなく、経済的な発展を追求する上でも重要な意味を持つといえる。
【要点】
1.エチオピアの海へのアクセス問題
・エチオピアは海へのアクセスを持たず、それが経済発展における大きな課題である。
・ロシアはこの問題を「攻撃的」や「不安定化」の要因とは見なしていない。
・エチオピアとその隣国は「良好な隣人関係と対話」で解決すべきだと強調。
・外部の干渉、特にエジプトやエリトリアの介入には慎重であるべきとの立場を示唆。
2.エチオピアの地域安全保障における役割
・エチオピアはアフリカ連合(AU)の本部を有し、地域の平和維持において重要な役割を果たしている。
・ロシアはエチオピアを「地域安全保障の中核」と見なしている。
3.貿易関係の現状
・ロシアとエチオピアの貿易関係は政治的関係に比べて未だ発展途上。
・125年以上にわたる友好関係にも関わらず、経済面では協力が限られている。
・今後、ビジネスフォーラムを通じて貿易の強化を期待。
4.エチオピアのアフリカ大陸における地位
・エチオピアは「アフリカの外交の中心地」として、アフリカ全体への影響力が大きい。
・ロシアはエチオピアをアフリカ市場への「ゲートウェイ」と位置づけており、アフリカ経済進出の重要な拠点と見なしている。
5.ロシアとエチオピアの今後の関係
・両国の関係は今後も強化される見込み。
・互いに補完的な関係を持ち、特に多極的な国際秩序構築において共通のビジョンを共有。
・エチオピアはソマリランド問題でロシアの支援を求める可能性があり、ロシアはその提案に応じる意向がある。
【引用・参照・底本】
Analyzing The Russian Ambassador’s Latest Statements About Andrew Korybko's Newsletter 2024.11.14
https://korybko.substack.com/p/analyzing-the-russian-ambassadors-a86?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=151640473&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email