「3者協力」が追求する不純な目的→3者滅亡時代2024年11月22日 11:45

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【概要】

 朝鮮中央通信がアメリカ、日本、韓国の「3者協力」に対して強い批判を展開した内容である。

 北朝鮮は、アメリカのバイデン政権が主導する日米韓三国間の協力体制を「対朝鮮敵視政策」の一環として非難している。特に、2023年8月に開催されたキャンプデービッドでの三国首脳会談と、今回のアジア太平洋経済協力会議(APEC)を機に行われた会談での動きを問題視している。

 「3者協力」への北朝鮮の見解

 1.「3者協力事務局」の設置

 ・日米韓首脳が合意した「3者協力事務局」の設置について、北朝鮮はこれを「反朝鮮」政策の制度化であると位置づけた。これにより三国間の協力が構造的かつ機構的に拡充され、北朝鮮に対する対決政策が強化されると主張している。

 2.軍事的圧力の強化

 ・アメリカの原子力空母「ジョージ・ワシントン」が参加する軍事演習「フリーダムエッジ」を例に挙げ、日米韓の共同訓練が北朝鮮の核施設や重要施設を狙った実動演習として定例化されていると批判した。

 3.地域の力のバランス破壊

 ・北朝鮮は、日米韓が行う「3者協力」は朝鮮半島およびアジア太平洋地域の平和や安定を破壊し、地域における力の均衡を損ねる目的があると主張している。特に、これをアメリカ主導の軍事ブロック拡大政策の一環とみなしている。

 北朝鮮の反応と警告

 1.報復対応の日常化

 ・北朝鮮は、日米韓の協力体制が強化されるほど、北朝鮮側の報復措置が常態化すると警告している。この「報復対応」には、核戦力や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の使用を視野に入れていると暗示している。

 2.「3者滅亡時代」への変化

 ・北朝鮮は、日米韓の「3者協力時代」はすでに「3者滅亡時代」に変わりつつあると主張している。その理由として、協力体制の中心人物である各国の指導者たちが国内で支持を失っていることを挙げている。一部はすでに政治の舞台から退場しているとも述べている。

 結論

 北朝鮮は、日米韓の「3者協力」をアジア太平洋地域の安定を損なう挑発的な軍事行動とみなしており、これがさらなる軍事的緊張を招くと警告している。彼らは、「3者協力」が追求する不純な目的が明らかになるにつれ、その行動が地域全体の対立と混乱を深めるだけであると非難している。

【詳細】

 朝鮮中央通信の論評を基に、日米韓の「3者協力」に対する北朝鮮の批判や見解を、さらに詳しくみる。

 1. 「3者協力事務局」の設置と制度化

 ・日米韓が合意した「3者協力事務局」は、北朝鮮に対する敵対政策の具体化であると非難。
 ・この事務局を通じて、三国間の協力が機構的に拡充され、対朝鮮圧力の強化を目指していると見ている。
 ・北朝鮮はこれを、朝鮮半島およびアジア太平洋地域における対立を恒常化させるものと批判。

 2. 軍事的挑発と訓練の常態化

 アメリカの原子力空母「ジョージ・ワシントン」が参加する軍事演習「フリーダムエッジ」を取り上げ、これが北朝鮮を標的としたものであると強調。
 ・演習には最新型戦闘機が参加し、北朝鮮の核・軍事施設への精密攻撃能力を示す内容であると非難。
 ・これらの訓練が年2回実施され、北朝鮮に対する「反共和国実動演習」の定例化を問題視。

 3. 地域の安全保障と平和の破壊

 ・北朝鮮は「3者協力」を、朝鮮半島とアジア太平洋地域の平和を脅かすものと主張。
 ・具体例として、リアルタイムミサイル情報共有システムの稼働や、合同軍事演習の活性化を挙げている。
 ・また、アメリカがNATOの力をアジア太平洋地域に引き込むことで、周辺諸国の警戒心を高め、地域情勢を悪化させていると批判。

 4. 「3者協力時代」に対する否定的評価

 ・北朝鮮は、「3者協力時代」が実際には「3者滅亡時代」に変わりつつあると主張。
 ・日米韓の首脳が国内で支持を失い、政治的に失脚していることを例に挙げ、協力体制そのものが将来的な成功を見込めないと批判。
 ・特に、日米韓の指導者の「悲惨な運命」を「3者協力」の無力さの象徴と見なしている。

 5. 北朝鮮の報復と戦略的構図

 ・北朝鮮は、自国が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を含む核戦力を保有しており、アメリカを常時照準内に収めていると主張。
 ・「3者協力」が強化されるほど、北朝鮮の報復措置が「日常化」すると警告。
 ・これにより、アジア太平洋地域における「正義の戦略的構図」が構築されると主張し、自国の正当性を強調。

 6. 「3者協力」の目的と北朝鮮の解釈

 ・北朝鮮は、日米韓の協力を「反共和国対決遺産」を固定化・制度化する試みと見ている。
 ・また、これが朝鮮半島および地域全体での軍事的支配を目的としていると非難。
 ・特に、軍事ブロックを拡大することで、地域における政治的・軍事的支配権を握ろうとしていると分析。

 7. 結論:日米韓協力の未来への警告

 ・北朝鮮は、「3者協力」が地域全体に対立の種を撒き、緊張を深めるだけであると強調。
 ・「3者協力」が強化されるほど、それに対抗する北朝鮮の措置が強化されると警告。
 ・最終的に、日米韓の協力体制は「暗鬱な未来」を迎えると予測し、無力さを示唆。

 これにより、北朝鮮は日米韓の協力体制を、地域の安定を脅かす挑発的な行動と見なしており、それが北朝鮮のさらなる軍事行動を引き起こす結果になると論じている。

【要点】 
 
 1. 「3者協力事務局」の設置

 ・日米韓は「3者協力事務局」を設置し、協力を制度化・拡充することで北朝鮮に対する圧力を強化。
 ・北朝鮮はこれを地域の対立と不安定化を恒常化させるものと非難。

 2. 軍事訓練の定例化

 ・米原子力空母「ジョージ・ワシントン」が参加する「フリーダムエッジ」演習を問題視。
 ・最新型戦闘機も参加し、北朝鮮の核施設への攻撃を想定した訓練が実施されている。
 ・軍事演習が年2回行われ、反北朝鮮軍事活動が常態化。

 3. 地域の安全保障の破壊

 ・日米韓の協力が朝鮮半島とアジア太平洋地域の平和を脅かしていると批判。
 ・ミサイル情報共有やNATOの関与を挙げ、地域の緊張を煽っていると主張。

 4. 「3者協力時代」の失敗

 ・北朝鮮は「3者協力時代」が「3者滅亡時代」に変わったと非難。
 ・日米韓の首脳が国内支持を失い、政治的に苦境に立たされていることを例に挙げる。

 5. 北朝鮮の報復警告

 ・北朝鮮は核戦力やICBMを保有しており、アメリカを常時照準内に収めていると強調。
 ・「3者協力」の強化は、北朝鮮の報復対応を日常化させると警告。

 6. 「3者協力」の目的に対する見解

 ・日米韓の協力は、北朝鮮に対する軍事的支配を目的とし、地域の力のバランスを破壊するものと見なす。
 ・軍事ブロックの拡大による政治的・軍事的支配を目指していると批判。

 7. 結論:暗い未来への警告

 ・「3者協力」の強化は地域対立を深め、緊張を高めるだけであると主張。
 ・結果として日米韓の協力は将来的に失敗すると予測。
 
 北朝鮮は日米韓の動きを地域の不安定化と対立の拡大と見なし、強く警戒している。

【引用・参照・底本】

「3者協力は『滅亡の時代』だ」北朝鮮、日米韓共同声明を非難 Daily NK 2024.11.20
https://dailynk.jp/archives/166833

他国が米国への依存度を下げる必要性を浮き彫り2024年11月22日 15:15

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【概要】

 レノー・フーカート氏が執筆した2024年11月21日付の記事は、2024年の米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利した後の国際経済の課題を分析している。

 米国経済の変化とその影響

 トランプ氏の「アメリカ・ファースト」政策は、輸入品すべてに関税を課すという計画を掲げるなど、米国経済をこれまで以上に閉鎖的にしようとしている。この政策は、米国の技術的優位性や経済的成功が世界的に羨望の的である一方で、他国が米国への依存度を下げる必要性を浮き彫りにしている。

 バラク・オバマ政権以降、エネルギー自立政策を契機として、米国は内向きの政策を強化してきた。産業雇用の海外移転を抑えつつ、技術的優位性を維持するという方向性は、トランプ政権だけでなく、ジョー・バイデン政権にも受け継がれた。

 関税政策の影響

 トランプ氏は第1期政権で、ほぼすべての貿易相手国に高関税を課す決定を行い、米国消費者が製品価格の上昇を受け入れることで、国内生産者を保護することを選択した。例として、2018年に洗濯機に課された関税により、米国消費者は12%の価格上昇を経験している。

 バイデン氏も、電気自動車に対する100%、ソーラーパネルに対する50%、中国製バッテリーに対する25%の関税を設定し、トランプ政権の政策を強化している。このような政策は、気候変動への対策よりも国内製造業の保護を優先する姿勢を示している。

 補助金競争と国際的影響

 バイデン政権は、関税政策の代わりに補助金政策を推進した。インフレ削減法(IRA)は電気自動車や再生可能エネルギー分野に3,690億ドル、チップ法は半導体製造に520億ドルを投じるなど、内向きの産業政策が展開された。

 これに対し、中国は輸出依存型経済から脱却し、国内消費の拡大や貿易相手国の多様化を模索している。一方で、ヨーロッパ諸国も米国に追随して補助金競争に参加しており、例えばドイツは、スウェーデンのバッテリーメーカーNorthvoltに9億ユーロ(約9億5,000万ドル)の補助金を提供して国内生産を維持しようとしている。

 こうした補助金政策は、世界経済に悪影響を及ぼしているとされる。その資金がアフリカ大陸の電化プロジェクトに使われていれば、より効果的だった可能性がある。一方で、中国はアフリカへの投資を拡大し、天然資源の確保に注力している。

 ヨーロッパと中国の選択肢

 トランプ氏の新たな政権は、国際社会に新たな選択肢を提示する可能性がある。たとえば、ヨーロッパは中国との協力を強化し、中国の過剰生産能力の問題を解決するために、関税戦争の終結を交渉することが考えられる。この協力は、米国からの液化ガス輸入に依存せず、ヨーロッパ自身のクリーンエネルギー生産能力を高める可能性を示唆している。

 また、中国のロシアに対する影響力を活用し、ウクライナ侵攻の終結を目指すという道も考えられる。

 世界経済と米国の役割

 記事では、近年の国際情勢が後退していることを指摘している。飢餓人口の増加、ガザ、スーダン、ミャンマー、シリア、レバノンなどでの戦争、多数の民間人犠牲者の増加は、世界が新たな課題に直面していることを示している。

 トランプ政権が米国の介入主義を復活させる可能性は低く、平和、気候変動対策、貿易自由化の主導は期待できないとされる。したがって、国際社会は米国に依存せず、自立して協力を進める必要があるという結論に至っている。

 このように、記事は米国の政策変更が国際経済に及ぼす影響を分析し、他国が米国への依存を避けつつ、より協力的な関係を構築する必要性を訴えている。

【詳細】

 米国の経済政策とその変化

 トランプ氏の「アメリカ・ファースト」政策の核心は、国内産業の保護を最優先とし、貿易相手国との経済関係を抑制する方向性にある。この方針は、米国が技術的、経済的優位性を維持する一方で、世界の他国が米国依存を最小限にする必要性を浮き彫りにしている。この記事は、トランプ氏の政策を以下のように分類している。

 1. 高関税政策

 トランプ氏の第1期政権では、ほぼすべての貿易相手国に対して関税を引き上げ、国内消費者に負担を強いることで、国内生産者を保護することを目指した。例えば、2018年の洗濯機への関税引き上げにより、米国消費者が洗濯機の価格に12%多く支払う結果となった。これは、消費者の負担を増やしてでも国内産業を守るという選択を象徴している。

 2. バイデン政権による関税強化

 バイデン氏の政権も、表面的にはトランプ氏の関税政策とは異なる立場を取るように見えたが、実際には関税をさらに引き上げる政策を採用した。電気自動車(EV)への100%、ソーラーパネルへの50%、バッテリー(中国製)への25%の関税引き上げは、その代表例である。この政策は、気候変動への対策よりも国内製造業の保護を優先する姿勢を明確に示している。

 3. 補助金競争の激化

 バイデン政権は関税だけでなく、国内産業支援のための巨額の補助金を投入した。「インフレ削減法(IRA)」による3,690億ドルの補助金は、電気自動車や再生可能エネルギーなどの分野に向けられており、「チップ法」による520億ドルの補助金は半導体製造業を対象としている。

 これにより、米国は内向きの経済政策をさらに強化し、他国との経済的連携を抑える形となっている。

 国際的影響

 1. 中国経済への影響

 中国は、これまで輸出主導型経済で成長を遂げてきたが、米国の政策による影響で、産業の過剰能力(生産能力の余剰)に直面している。これに対応するため、中国は以下の方向性を模索している。

 ・国内消費の促進:輸出に頼らない経済構造への転換。
 ・貿易相手国の多様化:アフリカやアジアなど、米国以外の地域との関係を強化。

 また、中国はアフリカ大陸への投資を拡大しており、天然資源の確保を目的としつつも、同地域のインフラ整備や経済発展を促進している。

 2. ヨーロッパ経済への影響

 ヨーロッパは、米国との補助金競争に巻き込まれ、厳しい財政状況にもかかわらず、多額の補助金を投入している。例えば、ドイツはスウェーデンのバッテリーメーカーNorthvoltに対して9億ユーロの補助金を提供し、国内生産を維持しようとしている。

 しかし、こうした政策は、財政的な持続可能性に疑問を投げかけるだけでなく、本来優先されるべき気候変動対策や新興国支援のための資金を奪っていると批判されている。

 3. エネルギー政策の課題

 米国からの液化天然ガス(LNG)輸入に依存するヨーロッパの状況は、エネルギー自立を求める声を強めている。特に、ロシア産ガスへの依存度を低減する努力が進む中で、米国からの輸入依存が新たな課題として浮上している。

 解決策と提案

 記事は、トランプ政権の新たな任期が世界に以下の解決策を提示する可能性を示唆している。

 1.ヨーロッパと中国の協力強化

 ヨーロッパは、中国と協力して産業の過剰能力問題を解決し、互いの関税戦争を終結させる道を探るべきだと主張している。これにより、以下の効果が期待される。

 ・ヨーロッパはエネルギー自立を強化し、クリーンエネルギーの国内生産を促進できる。
 ・中国は、ロシアに対して影響力を行使し、ウクライナ侵攻の終結に貢献する可能性がある。

 2.貿易自由化の推進

 ヨーロッパは、貿易協定を積極的に締結し、それを利用して世界的な二酸化炭素排出削減を進めるべきである。

 結論

 この記事は、米国が過去10年にわたって採用してきた内向きの政策が、トランプ氏の再選によってさらに強化される可能性を指摘している。米国が国際社会のリーダーシップを放棄する中で、世界各国は米国依存から脱却し、より効果的な協力体制を構築する必要があると主張している。これは、気候変動、戦争、貧困などの深刻な課題に対応するために欠かせない選択肢であるとしている。

 このように記事は、米国の政策がもたらす国際的な影響を多角的に分析し、他国が選択しうる具体的な行動を提案している。

【要点】 
 
 米国の経済政策とその変化

 1.トランプ政権の特徴

 ・高関税政策を導入し、国内産業を保護。消費者の負担増を容認(例:2018年、洗濯機関税引き上げで12%価格増加)。
 ・外国への依存を減らし、国内の雇用や産業基盤を強化する「アメリカ・ファースト」政策を推進。

 2.バイデン政権の対応

 ・トランプ関税を強化(電気自動車100%、ソーラーパネル50%、バッテリー25%)。
 ・国内産業を支援する補助金競争を開始(例:インフレ削減法で3,690億ドル、チップ法で520億ドル)。

 国際的影響

 1.中国への影響

 ・米国の政策により、輸出依存型経済からの転換を迫られる。
 ・国内消費の促進、貿易相手国の多様化を模索。
 ・アフリカへの投資拡大(インフラ整備や資源確保)。

 2.ヨーロッパへの影響

 ・米国との補助金競争で厳しい財政状況下でも多額の補助金を投入(例:ドイツがNorthvoltに9億ユーロ支援)。
 ・エネルギー政策で米国の液化天然ガス(LNG)輸入依存が課題に。

 3.気候変動対策の停滞

 ・補助金競争や高関税政策により、気候変動対策や新興国支援に必要な資金が不足。

 提案と解決策

 1.ヨーロッパと中国の協力

 ・貿易摩擦の解消(関税戦争の終結)。
 ・ヨーロッパのエネルギー自立強化、クリーンエネルギー生産の拡大。
 ・中国の影響力を活用し、ロシア・ウクライナ戦争終結を促進。

 2.貿易自由化の推進

 ・ヨーロッパが貿易協定を活用して世界的な二酸化炭素排出削減を推進。

 結論

 ・トランプ氏の再選による米国の内向き政策強化は、国際社会の分断を助長する可能性がある。
 ・世界各国は米国依存を脱却し、互いに協力して貧困、戦争、気候変動といった課題に対応する必要がある。
 ・米国が国際社会の主導権を放棄する中で、他国間の協力が不可欠である。

【引用・参照・底本】

Time for world to pivot away from the US economy Daily ASIATIMES 2024.11.21
https://asiatimes.com/2024/11/time-world-pivot-away-us-economy/

鴨葱の台湾2024年11月22日 18:23

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【桃源寸評】

 好い加減にせい、と言いたくなるような記事である。

 真に台湾が"一国"であるのなら、侮辱されたと思うであろう。

 まあ、台湾、精々鴨葱になるか。

【寸評 完】

【概要】

 グラント・ニューシャムによる2024年11月22日の記事「台湾はトランプ2.0に備える必要がある」は、トランプ次期政権下での台湾の安全保障や防衛政策についての見解を示している。

 台湾と日本には、アメリカが本当に防衛義務を果たすのかという深い疑念が共通して存在する。特に台湾の場合、この懸念は合理的と言える。2024年11月の米大統領選挙でドナルド・トランプが当選したことにより、この疑念が再び強まった。トランプは選挙期間中に台湾への明確な支持を表明していないが、それについて過度に心配する必要はないと述べられている。

 トランプの台湾政策について

 トランプ政権の初期(2017~2021年)において、台湾への武器売却がオバマ政権時代よりも大幅に拡大された。また、アメリカの高官が台湾を訪問し、台湾の国際的孤立が一部緩和された。さらに、トランプ政権は中国共産党(CCP)に対して強硬な姿勢を初めて明確に示し、自由世界の利益を守る立場を取った。この姿勢は、マイク・ポンペオやマット・ポッティンジャーなどの対中政策を担当する高官によって支えられていた。

 そのため、トランプが言葉ではなく行動で示す政策を重視するべきである、と指摘されている。

 新政権の安全保障担当者

 次期政権の台湾問題を主に担当する閣僚として、国務長官にはマルコ・ルビオ上院議員、安全保障担当補佐官にはマイク・ウォルツ下院議員が選ばれている。両者ともに中国共産党への強い反対姿勢を持ち、台湾の自由世界における重要性を十分に理解している。彼らの下で、台湾の防衛力を強化し、アメリカが台湾を支援するための努力が行われると見られている。

 「保護費用」の議論について

 トランプは選挙期間中、台湾が防衛に十分な努力をしていないと指摘したが、これはアメリカ国内の政治的現実を反映したものとされる。多くのアメリカ人は、台湾自身が防衛に全力を尽くさない限り、米軍が台湾防衛のために犠牲を払うことを容認しないだろうと述べられている。この立場は台湾だけでなく、ヨーロッパ、日本、オーストラリア、カナダにも適用される共通の現実である。

 台湾が取るべき具体的措置

 台湾は、次のような措置を取るべきであるとされている。

 ・国民の意識向上:戦争の可能性に対する認識を高め、危機感を共有する。
 ・防衛予算の増額:防衛力を強化するための資金を確保する。
 ・軍の再編:軍事戦略や指揮体制を改革し、中国人民解放軍への対抗力を向上させる。
 ・予備役制度の改善:効果的な予備役部隊を整備する。
 ・民間防衛の充実:市民を含む国防活動への参加を促進する。
 ・中国の政治戦術への対抗:中国共産党の影響力を排除し、スパイ活動を防ぐ。
 ・防衛装備の強化:長距離兵器やサイバー攻撃能力の向上を図る。
 ・エネルギー政策の見直し:再生可能エネルギーへの依存を減らし、エネルギーインフラを強化する。

 これらの取り組みを行えば、アメリカからの支援を受けやすくなると述べられている。

 トランプの「孤立主義」への懸念について

 トランプの「孤立主義」批判は根拠に乏しいとされている。トランプ政権初期には、アジアやヨーロッパに駐留する米軍の撤退も、同盟の解消も行われなかった。むしろ、同盟国に対し自国の防衛にもっと責任を負わせるという姿勢は、現実的かつ常識的な政策であると評価されている。また、アメリカ経済を守るための貿易政策や製造業復活への取り組みも、「孤立主義」とは無関係である。

 台湾への最終的な助言

 台湾は自由を守るために全力を尽くす姿勢を示すべきである。これが中国共産党の侵攻を抑止し、アメリカや他の自由主義諸国の支援を引き出す鍵となる。ウクライナが国際社会の支援を得たのも、自国の防衛に果敢に取り組んだからである。台湾も同様の姿勢を取る必要があると結論づけられている。

 台湾に対する具体的な提言とアメリカの防衛政策に関する現実的な見解を提供している。

【詳細】

 この記事は、ドナルド・トランプが2024年のアメリカ大統領選挙で再選を果たしたことを背景に、台湾が新たな国際安全保障環境に適応する必要性を説いている。台湾が直面する課題、トランプの過去の政策から得られる教訓、新政権の閣僚が持つ台湾への視点、そして台湾が直ちに取るべき具体的な行動を詳細に検討している。

 台湾の安全保障における根本的な懸念

 台湾と日本には、アメリカが本当に自国を防衛するかどうかに対する深い疑念があるが、台湾の場合はこれが特に合理的な心配であると指摘されている。トランプ大統領は選挙期間中、台湾に対する明確な支持表明を行わず、それが台湾国内で不安を引き起こした。しかし、記事では、トランプの言葉よりも過去の行動に注目すべきだとしている。

 トランプの初期政権(2017-2021年)における台湾政策を見ると、実際には以下のような積極的な支援が行われていた。

 ・武器売却の大幅拡大:オバマ政権よりも多くの武器が台湾に供給された。
 ・台湾の孤立緩和:アメリカ高官の訪台や外交的支援により、台湾の国際的地位が強化された。
 ・中国共産党への対抗姿勢:トランプ政権は、中国共産党(CCP)の行動に対し、歴代政権以上に強硬な姿勢を取った。

 これらの事実に基づき、トランプ政権が台湾防衛に対して行動する意志を持つことを示していると述べている。

 トランプ次期政権における主要人物と台湾政策

 トランプの新政権では、台湾問題に直接関与する閣僚として以下の2名が挙げられている:

 1.マルコ・ルビオ(国務長官):中国共産党に対抗する立場を一貫して主張してきた上院議員で、過去には中国の人権問題や軍事的脅威に関する議会活動を主導。
 2.マイク・ウォルツ(国家安全保障担当補佐官):台湾を含むアジア太平洋地域の安全保障に詳しく、軍事的および経済的な視点から中国の脅威を抑制する政策を提唱してきた。

 両者は、中国共産党への対抗を優先し、台湾を自由世界にとって重要な拠点と見なしている。そのため、台湾の防衛力強化を支援する政策が継続される可能性が高いとされる。

 台湾への「保護費用」要求に関する議論

 トランプが選挙期間中、台湾の防衛費が十分でないと批判したことについては、アメリカ国内の現実を反映したものであると分析されている。現在のアメリカ国民の多くは、台湾が自国防衛に最大限努力しない限り、アメリカが台湾のために兵士を派遣し命を犠牲にすることを許容しない傾向にある。

 この批判は単なる「保護費用の要求」ではなく、台湾が自ら防衛能力を高める必要性を示唆するものである。

 台湾が取るべき具体的行動

 台湾が直ちに実施すべき行動を具体的に示している:

 1. 国民意識の改革

 台湾国内では、目の前に迫る中国の脅威に対する危機感が不足していると指摘されている。戦争の可能性について国民に認識させ、全土での防衛意識を高める必要がある。

2. 防衛予算の増額

 台湾は現在、防衛予算が不十分である。より多くの資金を軍事力の近代化や装備の増強に投入するべきである。

 3. 軍の構造改革

 台湾軍の指揮系統や戦略を抜本的に見直し、人民解放軍に対抗できる能力を向上させる必要がある。具体的には、硬直した指揮系統を改革し、若い世代の指揮官に権限を与えることが求められている。

 4. 予備役システムの改善

 現在の台湾の予備役制度は非効率的であるため、より効果的なシステムを構築する必要がある。

 5. 民間防衛の整備

 台湾全土で市民を巻き込んだ防衛計画を策定し、実際の危機に備えるべきである。

 6. 中国の影響力排除

 中国共産党による台湾国内への政治的干渉やスパイ活動への対抗策を強化し、中国の「第五列(協力者)」を排除する必要がある。

 7. 防衛装備の近代化

 長距離兵器やサイバー攻撃能力を向上させることが、中国による侵攻を困難にする鍵とされる。また、台湾の通信インフラの強化も重要である。

 8. エネルギー政策の見直し

 再生可能エネルギーに過度に依存する現在の政策を見直し、エネルギーインフラを強化することが求められる。

 トランプの「孤立主義」への反論

 トランプは「孤立主義」と批判されることが多いが、この記事ではその根拠が薄弱であると反論している。過去のトランプ政権では、アジアやヨーロッパの米軍撤退も、同盟解消も行われなかった。また、他国の貿易慣行やアメリカ国内の産業政策に対する是正を求めることは、孤立主義ではなく常識的な経済政策であると説明されている。

 台湾への最終的な助言
 
 「自由を守る意志を示すこと」が中国による侵攻を抑止し、アメリカを含む自由主義諸国の支援を引き出すための鍵であると強調している。その上で、台湾は直ちに行動を起こす必要があると述べ、「神は自ら助ける者を助く」という諺を引用し、自助努力の重要性を説いている。

 以上の内容は、台湾がトランプ政権下での新しい国際環境にどのように適応するべきかを具体的かつ詳細に説明している。

【要点】 
 
 1.トランプ政権の台湾政策の背景

 ・過去のトランプ政権は台湾への武器売却を拡大し、外交的支援を強化。
 ・中国共産党への対抗姿勢を示し、台湾を戦略的拠点と見なしていた。

 2.台湾が直面する主な懸念

 ・台湾防衛へのアメリカの本気度に対する懸念が根強い。
 ・トランプの発言は台湾の防衛努力が不十分であることを批判。

 3.トランプ次期政権の重要人物

 ・マルコ・ルビオ(国務長官予定)
  ⇨ 中国の脅威に一貫して警鐘を鳴らす。
 ・マイク・ウォルツ(国家安全保障担当補佐官予定)
  ⇨ 台湾を含むアジア太平洋の防衛戦略に精通。
 
 4.台湾が取るべき具体的行動

 ・防衛予算の増額:軍事力の近代化と装備増強。
 ・軍の構造改革:指揮系統の柔軟化、若手指揮官の育成。
 ・予備役制度の改善:効率的なシステム構築。
 ・民間防衛の整備:市民防衛計画の策定と訓練。
 ・中国の影響力排除:スパイ活動や協力者の排除。
 ・防衛装備の強化:長距離兵器やサイバー防衛能力の向上。
 ・エネルギーインフラの強化:依存リスクの軽減と持続可能性の向上。

 5.トランプの「孤立主義」批判への反論

 ・トランプは同盟解消や米軍撤退を行わず、貿易や防衛の改革を進めただけ。
 ・「孤立主義」ではなく合理的な政策との見方。

 6.台湾への最終的な助言

 ・自助努力が国際的な支援を引き出す鍵。
 ・「自由を守る意志」が侵攻を抑止し、国際社会の協力を得る土台となる。

【引用・参照・底本】

Taiwan needs to get ready for Trump 2.0 ASIATIMES 2024.11.22
https://asiatimes.com/2024/11/taiwan-needs-to-get-ready-for-trump-2-0/

トランプの貿易政策が韓国に与える影響2024年11月22日 18:38

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【概要】

 2024年11月22日、ウィリアム・ペセック氏がAsia Timesに寄稿した記事では、韓国経済が直面する潜在的な危機が詳細に論じられている。2025年にトランプ氏が大統領に復帰した場合の貿易政策が韓国に与える影響に焦点を当てている。

 韓国の輸出依存型経済は、トランプ政権による「全品目20%の関税」の導入によって大きな打撃を受ける可能性がある。韓国の輸出がGDPの40%を占めているため、このような包括的な関税は韓国経済に甚大な影響を及ぼす。特に、自動車産業のような主要産業がその影響を大きく受けると予測されている。トランプ政権はこれまでにも、メキシコ製自動車への100%関税を示唆しており、韓国製品に対しても同様の措置が取られる可能性が高い。

 さらに、韓国は地政学的にも「サンドイッチ状態」にある。日本の金利引き上げ、中国経済の減速、そしてトランプ政権によるドルの極端な為替変動という要因に挟まれた形となっている。これらの状況は、韓国が抱える国内の課題をさらに複雑にしている。例えば、韓国銀行(BOK)のリー・チャンヨン総裁は、国内需要の鈍化や記録的な家計負債といった問題に直面している一方で、米国や中国の政策が韓国経済に与える影響を慎重に評価する必要がある。

 また、トランプ氏がドル安政策を進める可能性が指摘されている。その手段として、通貨市場への積極的な介入や「プラザ合意」のような国際的な協調が挙げられる。このような政策は、韓国を含む輸出主導型経済に深刻な影響を与える可能性がある。

 中国に関しても、深刻な不動産危機や地方政府の財政問題、高い若年失業率などの複数の問題に直面しており、これらがデフレ圧力を生んでいる。中国政府は財政刺激策や金融緩和を進めているが、その効果には限界があるとされる。さらに、トランプ政権が米中貿易戦争を再燃させる場合、中国が人民元安政策や米国債の大量売却を行う可能性がある。このような事態は韓国経済に二次的な影響を与えることが懸念される。

 韓国政府はこうした状況に対して、米国との貿易交渉を強化するとともに、中国を含む他国との貿易関係の維持に努める意向を示している。しかし、過去15年間、韓国の歴代政権は財閥改革や競争力の向上を目指した政策を掲げながらも、大きな成果を上げることができなかった。このような遅れが現在の課題をさらに悪化させている。

 最終的に、韓国が直面する問題は国内外の複合的な要因に起因しており、速やかかつ効果的な政策対応が求められる。特に、トランプ政権の新たな貿易政策が開始される2025年初頭までに、韓国政府と韓国銀行が適切な対応を取れるかが、今後の経済の行方を大きく左右するであろう。

【詳細】

 2024年11月22日付で発表されたウィリアム・ペセック氏の執筆によるものであり、アメリカ合衆国におけるドナルド・トランプ前大統領の政権復帰がもたらすとされる経済的影響、特に韓国経済への影響について分析している。

 背景

 韓国は輸出依存型経済を持ち、輸出がGDPの約40%を占める。この記事では、2025年初頭に発足するトランプ新政権が世界貿易に与える影響に焦点を当てている。トランプ氏の主張する「20%の包括的関税」や対中貿易戦争の再燃が、韓国経済に重大な打撃を与えると指摘されている。

 主な内容

 1. トランプ政権の政策の影響

 トランプ氏の再選に伴い、以下の政策が予測されている:

 ・20%の包括的関税

 アメリカへ輸出されるすべての製品に対する高率関税が導入されれば、韓国経済に壊滅的な影響を与える。特に自動車産業を含む主要な輸出品が影響を受ける可能性が高い。さらに、メキシコ製自動車に対する100%の課税が韓国や日本にも広がる可能性がある。

 ・米中貿易戦争の激化

 トランプ氏が中国に最大60%の関税を課す可能性があり、それに伴う米中間の経済対立が韓国経済に間接的な悪影響を及ぼす。米中の両市場に依存する韓国は、その「挟まれた」立場がさらに難しくなる。

 ・ドル安政策の追求

 トランプ政権がドルの為替介入や「プラザ合意」型の措置を通じてドル安を目指す可能性がある。このような措置はアメリカの輸出競争力を高める一方で、韓国を含む貿易依存型経済にさらなる圧力を与える。

 ・連邦準備制度への干渉

 トランプ氏がFRB(米連邦準備制度)の独立性を縮小し、大統領権限を強化しようとする動きが懸念される。これにより、グローバル金融市場に大きな不安定要因が生まれる可能性がある。

 2. 韓国経済の現在の課題

 ・インフレと政策金利

 韓国銀行(BOK)のインフレ率目標(2%)を下回る状況が続いており、金利引き下げの必要性が議論されている。しかし、家計債務の増加や金融安定性の懸念により、金利政策は困難な状況にある。

 ・国内需要の減速

 韓国国内の消費需要が低迷しており、これが成長率の鈍化につながっている。

 ・過去の構造改革の失敗

 韓国政府は長年にわたり、財閥(チェボル)支配の縮小やスタートアップ支援の強化といった経済構造改革を目指してきたが、いずれも大きな成果を上げていない。この遅れが、経済の柔軟性を損なう要因となっている。

 3. 米中間での「サンドイッチ状態」

 韓国は、以下の複数の要因により非常に厳しい立場に置かれている:

 ・日本の利上げ政策

 日本銀行が金利を引き上げる中、韓国の競争力が相対的に低下する懸念がある。

 ・中国の経済減速

 中国経済が不動産危機や若年失業問題に直面し、財政・金融刺激策が進められているが、その効果は限定的である。

 ・トランプ政権の貿易政策

 アメリカの包括的関税や中国に対する強硬姿勢は、韓国に深刻な経済的打撃を与える可能性がある。

 4. 韓国の対応戦略

 ・米国への直接投資拡大

 韓国はトランプ政権への譲歩策として、アメリカへの直接投資を拡大し、現地生産を強化する可能性がある。

 ・貿易外交の強化

 韓国政府はアメリカとの貿易関係の円滑化を図るとともに、中国や他国との貿易を多角化する努力を進める必要がある。

 結論

 トランプ政権復帰がもたらす経済的不確実性の中で、韓国が直面する課題を詳述している。特に、輸出依存型経済としての脆弱性や国内経済の構造的課題が浮き彫りにされている。今後、韓国政府は迅速かつ効果的な対応策を講じることが求められるが、その成否は2025年以降の経済成長に大きく影響するであろう。

【要点】 
 
 背景

 韓国経済は輸出依存型(GDPの約40%)であり、トランプ氏再選が貿易政策に与える影響が懸念される。

 主な内容

 トランプ政権の政策の影響

 1.20%の包括的関税

 ・アメリカへの輸出品全体に高率関税が課される可能性。
 ・特に韓国の自動車産業が打撃を受ける恐れ。

 2.米中貿易戦争の再燃

 ・中国に最大60%の関税を課す可能性。
 ・米中対立が韓国経済に間接的な影響を及ぼす。

 3.ドル安政策の追求

 ・アメリカ輸出の競争力が高まり、韓国の輸出が不利になる可能性。

 4.連邦準備制度への干渉

 ・FRBの独立性が損なわれ、金融市場の不安定要因となる恐れ。

 韓国経済の課題

 1.インフレと政策金利

 ・低インフレ環境下で金利引き下げが必要だが、家計債務の懸念が存在。

 2.国内需要の減速

 ・消費需要が低迷し、成長率が鈍化。

 3.構造改革の遅れ

 ・財閥改革やスタートアップ支援が進まず、経済の柔軟性が欠如。

 米中間での「サンドイッチ状態」

 1.日本の利上げ政策

 ・韓国の競争力が相対的に低下。

 2.中国経済の減速

 ・不動産危機や若年失業問題が悪化。

 3.トランプ政策の直撃

 ・包括的関税や米中対立が韓国に直接影響。

 韓国の対応戦略

 1.米国への直接投資拡大

 ・アメリカ現地生産を強化して、貿易摩擦を緩和。

 2.貿易外交の強化

 ・中国や他国との多角的な貿易戦略を推進。

 結論

 トランプ政権復帰による経済的不確実性が高まる中、韓国は輸出依存型経済の弱点と構造的課題に対処し、外交や経済政策を迅速に調整する必要がある。

【引用・参照・底本】

Trump squeeze coming for vulnerably sandwiched South Korea ASIATIMES 2024.11.22
https://asiatimes.com/2024/11/trump-squeeze-coming-vulnerably-sandwiched-south-korea/

トランプと比の関係2024年11月22日 19:14

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【概要】

 フィリピンが戦略的な利益を得る状況が、ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に再び就任する中で進行している。バイデン政権の下で進展していたフィリピンとの安全保障関係強化が、トランプ政権でも継続される見込みである。

 GSOMIAの締結とその意義

 アメリカとフィリピンは、機密情報共有とサイバーセキュリティ協力を可能にする「軍事情報包括保全協定」(General Security of Military Information Agreement, GSOMIA)を締結した。この協定は、中国との地域紛争が発生した場合を見据えた準備の一環として重要視されている。アメリカのロイド・オースティン国防長官がフィリピンを訪問し、この協定を最終決定した。

 タスクフォース「アユンギン」の設立

 アメリカとフィリピンは、中国がスプラトリー諸島の第二トーマス礁(フィリピン名:アユンギン礁)におけるフィリピンの軍事基地を強制的に占拠する事態を防ぐため、新たな「タスクフォース・アユンギン」を設立した。このタスクフォースは、フィリピン海軍などに直接的な作戦支援を提供する役割を果たしている。

 共同調整センターの新設

 フィリピンのカンプ・アギナルドに新たな共同調整センターが開設された。この施設は、米比両軍が台湾有事を含む地域紛争に対応するためのリアルタイム情報共有と共同作戦指揮の拠点となる。オースティン国防長官は、このセンターが両国の相互運用性を強化し、長期的な地域安全保障の確保に貢献すると述べた。

 フィリピンの態度と中国の反応

 フィリピンの軍関係者は、今回の動きを米比同盟の強化と評価しており、特にアメリカからの高度な防衛装備や技術へのアクセスが促進される点を強調している。一方で、中国政府は、外部勢力との防衛協力が地域の安定を損なう可能性があると警告し、近隣諸国との「良好な隣国関係」と「戦略的独立」を重視する姿勢を示している。

 トランプ政権とフィリピンの将来展望

 トランプ氏の再選に伴い、フィリピンへの防衛支援がさらに拡大する見込みである。特に、F-16戦闘機やTHAADシステムの供与といった高性能防衛装備の提供が議論されている。また、フィリピン国内では、トランプ政権がフィリピンに対して一層の協力を要求する可能性が高いとみられる。

 フィリピンのマルコス大統領は、トランプ氏との電話会談で両国関係のさらなる強化を訴えたが、台湾有事や中国との経済関係についての具体的な方針は明確にしていない。このような曖昧な態度は、トランプ政権から圧力を受ける可能性がある。

 地政学的意義

 フィリピンは、米中対立が深まる中で、地政学的に重要な最前線国家として位置付けられている。トランプ政権は、フィリピンを含むアジアの同盟国に対し、アメリカ主導の地域秩序を支持する明確な立場を求めると予測される。

 このように、米比関係はさらなる緊密化が予想される一方で、フィリピンが中国との経済的関係を維持しつつどのように対応するかが焦点となる。

【詳細】

 米比同盟の現状と展望

 アメリカとフィリピンは、地政学的および軍事的に重要な関係を長年にわたり構築してきた。特に、中国の海洋進出や台湾有事への懸念が高まる中、両国の安全保障協力は新たな段階に進みつつある。以下に、米比関係の詳細とその背景をさらに深く掘り下げる。

 GSOMIA締結の背景と重要性

 フィリピンとアメリカが締結した「軍事情報包括保全協定」(GSOMIA)は、両国間での機密情報の安全な共有を可能にするものである。この協定により、次のような利点が生まれる。

 1.高度な防衛技術と情報へのアクセス

 フィリピンは、アメリカからの高度な防衛装備品(例:レーダー、無人機、ミサイルシステムなど)を獲得するための前提条件を整えることができる。これにより、中国や他の外部脅威に対抗する能力が強化される。

 2.サイバーセキュリティ強化

 サイバー戦が重要性を増す中、フィリピンの防衛機関はアメリカとの協力を通じて、潜在的なサイバー攻撃への対応能力を高めることができる。

 3.多国間協力の基盤構築

 フィリピンは、GSOMIAを通じて日本、オーストラリア、韓国など他のアメリカ同盟国との安全保障協定の締結を目指している。これにより、地域全体の防衛体制が強化される可能性がある。

 タスクフォース・アユンギンの役割

 タスクフォース「アユンギン」は、スプラトリー諸島にあるフィリピン軍の拠点である第二トーマス礁を中国から守るために設立された。このタスクフォースは、以下の活動を行っている。

 ・米軍の直接支援

 アメリカ軍は、フィリピン海軍に対し、監視、兵站(ロジスティクス)、情報共有の面で支援を行っている。これにより、フィリピン軍の運用能力が向上している。

 ・相互運用性の強化

 タスクフォースは、米比両軍が共同作戦を行うための相互運用性を高める重要な役割を果たしている。これは、特に有事における迅速な対応に寄与する。

 ・抑止力の向上

 アメリカの存在を示すことで、中国による挑発的な行動を抑止する効果が期待されている。

 共同調整センターの新設

 カンプ・アギナルドに設置された新しい共同調整センターは、米比軍事協力の中核となる施設である。この施設の主な目的は次の通りである。

 1.リアルタイム情報共有

 米比両軍が同時に状況を把握し、迅速に対応できる体制を構築する。これにより、台湾有事や南シナ海での紛争が発生した場合に、即応性が向上する。

 2.作戦指揮の効率化

 両軍が一元的に作戦を指揮することで、無駄な重複を排除し、効果的な対応が可能となる。

 3.長期的な協力の強化

 この施設は、米比同盟の信頼関係をさらに深める基盤として機能し、地域安全保障への取り組みを強化する。

 フィリピンの軍事能力強化とアメリカの支援

 アメリカは、フィリピンへの防衛支援を継続的に拡大している。以下は主な支援内容である。

 1.装備品の提供

 フィリピン海軍には、アメリカの外国軍事融資(FMF)プログラムを通じて供与された無人水上艦(T-12)が展開されている。また、F-16戦闘機やミサイル防衛システム(THAAD)の提供も検討されている。

 2.共同演習の実施

 アメリカ軍は、フィリピン軍とともに多国間軍事演習を定期的に実施し、戦術能力の向上を図っている。

 3.地上ミサイルシステムの配備

 アメリカはフィリピンに中距離ミサイルシステム「タイフォン」を配備しており、中国の脅威に対する抑止力を強化している。

 フィリピンと中国の関係

 フィリピンは、アメリカとの防衛協力を深めつつも、中国との経済関係を維持しようとしている。フィリピン国内には、中国からのインフラ投資が多数存在しており、経済的利益を無視することは困難である。しかし、トランプ政権下では、アメリカがフィリピンに対してより明確な対中政策を要求する可能性がある。

 トランプ政権の影響とフィリピンの選択

 トランプ氏の再選により、フィリピンは次のような圧力に直面すると考えられる。

 1.対中姿勢の明確化要求

 トランプ政権は、フィリピンに対してアメリカ主導の地域秩序を支持する立場を明確にするよう求める可能性が高い。

 2.軍事費負担の増加

 トランプ氏は同盟国に対し、自国の防衛費負担を増やすよう要求する傾向がある。フィリピンも例外ではない。

 3.地域における役割の強化

 フィリピンは、アメリカと中国の対立が深まる中で、地域の最前線国家としての役割を強化する必要がある。

 結論

 フィリピンは、アメリカとの同盟強化により安全保障面で大きな利益を得る一方、中国との経済的な関係維持という難しい課題に直面している。トランプ政権下での米比関係は、より緊密で戦略的なものとなる可能性が高いが、それにはフィリピンが地政学的選択を明確にする必要がある。

【要点】 
 
 米比同盟の現状と展望(箇条書き)

 GSOMIA締結の背景と重要性

 ・機密情報の安全な共有が可能となり、防衛協力が深化。
 ・高度な防衛装備(例:レーダー、無人機など)の獲得が可能に。
 ・サイバーセキュリティ能力を強化。
 ・日本、オーストラリアなど他の同盟国との協力基盤を構築。

 タスクフォース・アユンギンの役割

 ・スプラトリー諸島で中国の侵略行動に対抗。
 ・米軍が監視、兵站、情報共有で支援。
 ・米比軍の相互運用性を高め、迅速な対応を可能に。
 ・中国の挑発行動を抑止する抑止力として機能。

 共同調整センターの新設

 ・リアルタイム情報共有を実現し、有事対応を迅速化。
 ・作戦指揮の効率化に寄与。
 ・米比同盟の信頼関係をさらに強化。

 アメリカの防衛支援

 ・外国軍事融資(FMF)で無人水上艦(T-12)を提供。
 ・F-16戦闘機やミサイル防衛システムの供与を検討。
 ・多国間演習でフィリピン軍の戦術能力を向上。
 ・中距離ミサイルシステム「タイフォン」をフィリピンに配備し、中国を牽制。

 フィリピンと中国の関係

 ・中国からのインフラ投資に依存し、経済的利益を維持。
 ・防衛面でアメリカ、経済面で中国との関係のバランスを模索。

 トランプ政権再選の影響

 ・フィリピンに対し、対中姿勢の明確化を要求する可能性。
 ・自国の防衛費負担増加を求める圧力。
 ・地域の最前線国家としての役割強化が期待される。

 結論

 ・フィリピンは米比同盟強化で安全保障を確保する一方、中国との経済関係維持に苦慮。
 ・地政学的選択を迫られる可能性が高く、戦略的な判断が必要。

【引用・参照・底本】

Philippines a strategic winner when Trump takes the helm ASIATIMES 2024.11.22
https://asiatimes.com/2024/11/philippines-sitting-pretty-when-trump-takes-the-helm/