テキサス州知事アボッfトは中傷の停止を2024年11月30日 22:32

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【概要】

 中国外交部の毛寧報道官は、アメリカ・テキサス州知事のグレッグ・アボット氏が中国による海外「警察サービスステーション」に関する批判を展開していることに対し、「いわゆる中国の海外警察サービスステーションなどは一切存在しない」と述べ、根拠のない非難や中傷をやめるべきであると反論した。毛報道官は11月29日(金)の記者会見で、アボット知事が最近発表した3つの行政命令に関連する質問に対してこれを明らかにした。

 アボット知事は11月18日に行政命令を発表し、中国政府の代理として影響力を行使し、反体制派を中国に送り返そうとする者を対象に、テキサス州公共安全局に逮捕を指示する内容を明記していた。また、この命令では、中国政府が世界各地に「警察サービスステーション」を設置していると主張しているとされる(AP通信の報道による)。

 これに対し毛報道官は、中国の法執行機関は国際法に基づいて厳格に国際的な法執行協力を行い、他国の法制度や司法主権を完全に尊重し、容疑者の合法的な権利や利益を保護していると説明した。

 さらに、毛報道官は、中国とアメリカ間の経済・貿易関係が相互利益をもたらすものであることを強調した。これまでに中国企業の投資は、アメリカ国内の雇用促進や経済成長に重要な貢献を果たしてきたとしている。

 また、貿易や投資の問題を政治化し、安全保障の概念を過度に拡大解釈することは、市場経済の原則や国際貿易規則に反し、アメリカ市場に対する国際的な信頼を損ない、アメリカ経済の成長にも良い影響を与えないと述べた。毛報道官は、アメリカの関係者に対し、中国への中傷や根拠のない非難をやめるよう促し、中国とアメリカ間の協力を促進するためにより多くの努力を行うべきだと呼びかけた。

【詳細】

 中国外交部の毛寧報道官は、テキサス州知事グレッグ・アボット氏が発表した中国に関する行政命令について、いわゆる「海外警察サービスステーション」という概念を全面的に否定した。その上で、アメリカの関係者に対し、根拠のない主張や中傷をやめるよう求めた。この件に関連して、毛報道官が述べた背景と詳細をさらに詳しく説明する。

 テキサス州知事の主張

 アボット知事は11月18日に発表した行政命令において、以下の点を指摘している。

 1.中国政府による影響力工作
中国政府が、自国の反体制派や政治的な dissidents(反対者)を国外から中国へ戻すために、海外で「影響力工作」を行っているとの主張。これには、中国政府が「警察サービスステーション」を設置し、これらの活動を支援しているとする疑いが含まれる。

 2.テキサス州公共安全局への指示

 知事命令は、テキサス州公共安全局(Texas Department of Public Safety)に対し、このような影響力工作に関与している人物を捜査・逮捕するよう指示している。

3.主張の根拠と問題

アボット知事の命令は、AP通信や他の報道機関が過去に指摘した内容を根拠にしている。これらの報道では、中国政府が他国に「非公式な警察組織」を設置しているとされるが、具体的な証拠や事例は明示されていない。

 中国側の反論

 毛寧報道官は、これらの主張に対して次のように反論した。

 1. 「海外警察サービスステーション」の不存在

 毛報道官は「いわゆる海外警察サービスステーションは一切存在しない」と明言し、これらが中国に対する根拠のない中傷であると指摘した。
また、中国の法執行機関は国際法を厳守し、他国の司法主権を尊重していると強調した。この姿勢は、中国が他国の法制度や主権に配慮しながら国際的な協力を行っていることを示すものである。

 2. 経済・貿易関係の重要性

 毛報道官は、中国とアメリカの経済・貿易関係が相互利益にもとづいていることを指摘した。具体的には、以下の点を挙げた。

 ・中国企業の貢献

 中国企業のアメリカへの投資が雇用の創出と経済成長を後押ししてきた。

 ・政治化への懸念

 貿易や投資の問題を安全保障の観点から政治化することは、国際貿易のルールや市場経済の原則に反し、アメリカ市場への信頼を損なうと警告した。

 3. アメリカへの要請

 毛報道官は、アメリカ側に対して次のことを求めた。

 ・中傷の停止

 中国に対する根拠のない中傷や非難を止めるべきである。

 ・協力の促進

 中国とアメリカの間で協力関係を強化し、両国の経済発展や安全保障に資する取り組みを進めるべきである。

 背景と広がる影響

 この問題の背景には、アメリカ国内での中国に対する警戒感の高まりがある。近年、アメリカ政府は中国政府が行うとされる影響力工作やスパイ活動への対策を強化している。これにより、両国間の緊張が経済や外交の分野に波及している。

 一方、中国はこれらの指摘を一貫して否定し、国際法を遵守した協力を強調している。このような相互不信が、両国間の関係改善の障害となっている状況が浮き彫りになっている。

【要点】 

 テキサス州知事の主張

 ・「中国海外警察サービスステーション」の設置

 中国政府が海外に「警察サービスステーション」を設置し、反体制派の送還や影響力工作を行っていると主張。

 ・行政命令の発表

 テキサス州公共安全局に対し、中国政府の代理で活動する者の捜査・逮捕を命令。

 ・根拠としての報道

 AP通信などの報道を基に主張しているが、具体的な証拠は提示されていない。

 中国外交部の反論

 ・「警察サービスステーション」の不存在

 中国政府は海外に「警察サービスステーション」を設置していないと明確に否定。

 ・国際法の遵守

 中国の法執行機関は国際法を厳守し、他国の法制度や司法主権を尊重していると主張。

 ・容疑者の権利保護

 容疑者の合法的な権利を保護しながら国際的な法執行協力を実施していると強調。
経済・貿易に関する指摘

 ・相互利益の強調

 中国とアメリカの経済・貿易関係は双方に利益をもたらしている。

 ・中国企業の貢献

 中国企業のアメリカでの投資が雇用創出や経済成長に寄与している。

 ・政治化の懸念

 貿易や投資を安全保障問題として政治化することは、国際貿易規則に反し、アメリカ市場への信頼を損なう。

 アメリカへの要請

 ・根拠のない中傷の停止

 中国に対する中傷や根拠のない非難をやめるべき。

 ・協力の促進

 両国間の協力を強化し、経済や安全保障に資する取り組みを進めることが必要。

 背景と影響

 ・アメリカ国内の対中警戒感

 中国による影響力工作やスパイ活動への懸念が高まり、両国間の緊張が増大。

 ・国際関係への影響

 両国の相互不信が経済や外交の分野で関係改善を阻害している。

【引用・参照・底本】

Chinese FM dismisses Texas governor's accusation of so-called Chinese overseas police stations GT 2024.11.29
https://www.globaltimes.cn/page/202411/1324036.shtml

米国は「対中封じ込め」に執着2024年11月30日 22:50

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【概要】

 アメリカ海軍は2024年11月26日、バージニア級原子力攻撃型潜水艦「ミネソタ」がグアムに到着したと発表した。この潜水艦は、インド太平洋地域における戦略的配備計画の一環として配備されており、地域の安全保障環境が高度な能力を持つ部隊の前方配備を必要としていることが理由とされている。また、この配備は「平和で繁栄したインド太平洋地域」の促進に寄与するという声明も発表された。しかし、「平和と繁栄」を主張する一方で、この配備が地域の平和と安定を損なう要因となるという矛盾が指摘されている。

 グアムへの原子力潜水艦の配備は今回が初めてではないが、今回の配備は軍事力の増強を象徴している。具体的には、2021年11月以前にはグアムに配備されていた攻撃型原子力潜水艦は2隻のみであったが、今回の「ミネソタ」の到着により5隻に増加した。また、これまで配備されていたロサンゼルス級潜水艦に代わり、第4世代のバージニア級潜水艦が配備されることで能力が向上している。さらに、現在グアムに配備されている他の4隻の潜水艦も、退役後にはバージニア級に置き換えられる予定である。これにより、グアムが「地域の平和と安定を脅かす武器」としての役割を強化しているとの見方がある。

 グアムの軍事施設強化には、毎年10億ドル以上の予算が投入されており、アメリカ国防総省はグアムを「第二列島線」における「不沈空母」とすることを目指しているとされる。この軍事力強化は、仮想敵を意識したものとみられており、実戦に備えた性格が強く、地域緊張のエスカレーションを招く直接的な要因とされている。

 近年、アメリカは「インド太平洋戦略」の推進に力を入れており、「ファイブアイズ同盟」の強化、「クアッド」枠組みの拡大、排他的な小規模連合の形成、さらには中国を標的とした軍事演習の頻繁な実施を行っている。2024年4月には、アメリカ議会が950億ドルの追加軍事支援予算を可決し、そのうち81億ドルがアジア太平洋地域での対中対策に充てられることが決定された。このような一連の取り組みは、アメリカが「インド太平洋戦略」を遂行するために多大なリソースを注いでいることを示している。

 「ミネソタ」の配備は、アメリカが中国との「違いを管理する」という名目の偽善性を露呈している。アメリカの真の意図は、中国がアメリカの圧力や抑制に全面的に従い、挑発行動への対応を控えることを強いる点にあると指摘されている。また、このような軍事配備により、アメリカは同盟国に対して、アメリカの対中挑発と封じ込め政策がリスクを伴わないものであることを示そうとしている。この動きは、NATOのアジア太平洋化を加速させる目的も持つとされる。しかし、中国はアメリカのこのような行動を容認せず、地域の平和を維持しようとする立場を強調している。

 アメリカは「対中封じ込め」に執着しているように見受けられ、その結果、「エスカレーションのみでデエスカレーションはない」という悪循環に陥っている。この動きはアメリカにとってますます重い戦略的負担となっており、国内でもその問題点が認識されている。アメリカの対中政策におけるレトリックも、「デカップリング」から「デリスキング」、そして現在の「責任ある違いの管理」へと変化しており、国際社会の意見を意識していることがうかがえる。しかし、このような変化にもかかわらず、アメリカは依然として危険な方向へと突き進んでいる。

 中国とアメリカの関係、特に軍事面における関係は近年浮き沈みがあるが、対話と協力が進み、全体として安定を保っている。しかし、この安定は脆弱であり、双方の努力による維持と強化が必要である。中国はアメリカに対して戦略的な敵意を持たず、地域で真に必要とされ歓迎される取り組みに集中するよう求めている。また、武器の配備や基地設置のような非建設的な行動を控えることを促している。

【詳細】

 アメリカ海軍は、2024年11月26日にバージニア級原子力攻撃型潜水艦「ミネソタ」をグアムに配備したと発表し、これを「インド太平洋地域の安全保障環境に対応した戦略的配備」と位置づけた。声明では、この配備が「平和で繁栄したインド太平洋地域」の促進に寄与するとされている。しかし、批評家や中国政府は、この動きが地域の緊張を高める軍事的挑発であると指摘しており、アメリカの声明と行動の間に矛盾があると批判している。

 グアムの軍事的役割の強化

 グアムは地理的にアジア太平洋地域の戦略的要衝に位置し、アメリカにとって「第二列島線」の防衛拠点である。アメリカ国防総省はここ数年、毎年10億ドル以上を投入してグアムの軍事力を強化しており、「不沈空母」としての役割を果たすための準備を進めている。具体的には、以下のような取り組みが行われている:

 ・潜水艦部隊の近代化:今回の「ミネソタ」の配備により、グアムに配備される潜水艦は第4世代のバージニア級に統一される。これにより、グアムの潜水艦部隊は旧式のロサンゼルス級から大幅に性能が向上する。
 ・配備数の増加:2021年11月以前、グアムには2隻の攻撃型潜水艦が配備されていたが、現在ではその数が5隻に増加している。
 ・地域拠点としての機能強化:グアムの軍事施設は、アメリカ本土から離れた前方展開拠点としての重要性を増しており、中国や北朝鮮などの潜在的な脅威に迅速に対応するための「即応能力」を強調している。

 バージニア級潜水艦の能力と意義

 バージニア級潜水艦は、最先端の技術を搭載した多目的原子力潜水艦である。具体的な特徴は以下の通り。

 ・ステルス性能:敵の探知を回避する能力が非常に高い。
 ・攻撃能力:巡航ミサイルや魚雷の発射が可能で、敵艦船や地上目標に対する攻撃力を持つ。
 ・長期間の潜航能力:原子力推進により補給なしで長期間活動できるため、前線での作戦運用が容易である。 これにより、アメリカは中国沿岸部や南シナ海などの戦略的重要拠点に迅速にアクセスし、プレゼンスを誇示することが可能となる。
 
 地域緊張の高まり

 今回の配備により、中国との緊張がさらに高まる懸念がある。特に、グアムから中国本土までの距離が短縮されるため、以下のような影響が懸念される。

 1.軍事的挑発のリスク:グアムからの軍事行動が容易になり、中国がこれを脅威と認識する可能性が高い。

 2.軍拡競争の加速:中国はアメリカの軍事力増強に対抗するために、防衛能力の向上や軍事費の増加を進める可能性がある。
 3.同盟国への影響:アメリカが進める「インド太平洋戦略」によって、オーストラリアや日本、韓国などの同盟国にも軍事的負担が増える。

 アメリカの「インド太平洋戦略」とその批判

 アメリカは「インド太平洋戦略」の一環として、地域内で以下の取り組みを進めている。

 ・「ファイブアイズ」同盟の強化:イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドとともに情報共有を強化。
 ・「クアッド」機構の推進:日本、オーストラリア、インドとの協力を深化。
 ・「小規模連合」の形成:排他的な枠組みを通じて中国をけん制。
 ・対中軍事演習の実施:南シナ海や台湾海峡での演習を頻繁に実施。

 中国側はこれを「地域の分断を狙った排他的政策」と非難しており、地域の緊張をエスカレートさせる要因とみなしている。また、アメリカ議会が2024年に可決した950億ドル規模の軍事予算の一部は、アジア太平洋地域における中国への対抗策に充てられており、中国はこれを「対中封じ込め戦略」の一環と見ている。

 米中関係の行方

 近年、米中関係は浮き沈みを繰り返しているが、対話と協力の重要性が強調されている。中国は「アメリカに対して戦略的敵意を持たない」との立場を繰り返し表明し、地域の平和維持を主張している。一方、アメリカの軍事行動や圧力は、中国との関係を不安定にする要因となっており、双方にとって持続可能な安定を築くためには努力が必要である。

 アメリカが「大国としての責任」を果たすためには、武力による威嚇を控え、地域が真に求める取り組みに焦点を当てるべきである。具体的には、経済協力や環境問題への対処、地域住民の生活向上に資するプロジェクトが期待されている。

【要点】 

 グアムへの潜水艦配備に関する概要

 1.配備の背景

 ・アメリカ海軍はバージニア級原子力攻撃型潜水艦「ミネソタ」をグアムに配備し、地域の安全保障環境への対応を強化したと発表。
 ・この配備は「平和で繁栄したインド太平洋地域の促進」に寄与するとしているが、中国側は矛盾と挑発行為とみなしている。

 2.グアムの軍事的強化

 ・毎年10億ドル以上がグアムの軍事力強化に投入されている。
 ・グアムは「不沈空母」として「第二列島線」の重要な防衛拠点とされている。
 ・バージニア級潜水艦の配備で、旧式のロサンゼルス級潜水艦から大幅に性能が向上。

 3.バージニア級潜水艦の特長

 ・ステルス性能が高く、敵に発見されにくい。
 ・巡航ミサイルや魚雷で地上・海上目標への攻撃が可能。
 ・長期間の潜航が可能で、前線での作戦能力が向上。

 4.地域への影響

 ・軍事的挑発のリスク:グアムからの潜水艦行動が中国にとって直接的な脅威となる可能性。
 ・軍拡競争の加速:中国がアメリカの軍事増強に対抗して防衛費を増加させる懸念。
 ・同盟国への影響:アメリカのインド太平洋戦略が同盟国にさらなる軍事的負担を強いる可能性。

 アメリカのインド太平洋戦略

 1.主な取り組み

 ・「ファイブアイズ」同盟の情報共有強化。
 ・日本、オーストラリア、インドとの「クアッド」協力の深化。
 ・小規模連合を通じて中国をけん制。
 ・南シナ海や台湾海峡での対中軍事演習の実施。

 2.中国の批判

 ・地域の分断を狙った排他的政策と非難。
 ・地域の緊張を高める要因と見なされている。

 米中関係と課題

 1.現在の状況

 ・米中関係は不安定ながらも対話と協力の必要性が認識されている。
 ・中国は戦略的敵意を否定し、地域の平和維持を主張。

 2.課題と提案

 ・アメリカが武力による威嚇を控えるべきである。
 ・経済協力や環境問題解決、地域住民の生活向上を重視する必要がある。

【引用・参照・底本】

How ironic the US military talks about peace while brandishing ‘tip of the spear’: Global Times editorial GT 2024.11.30
https://www.globaltimes.cn/page/202411/1324074.shtml

ブタの腎臓をマカク(オナガザル)に移植2024年11月30日 23:14

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【概要】

 中国の武漢にある華中科技大学附属同済病院の臓器移植研究チームは、遺伝子編集されたブタの腎臓をマカク(オナガザル)に移植し、184日間の生存を実現するという大きな成果を達成した。この成果は、11月に実現されたもので、中国における異種移植(異種臓器移植)研究が国際的な先進レベルに近づいたことを示しており、将来の臨床研究に向けた堅実な基盤を築いたと、同病院は発表している。

 遺伝子編集されたブタを利用して人間に臓器を提供する異種移植は、先端バイオテクノロジーにおける重要な研究領域である。中国の臓器移植における臨床応用技術は国際基準に匹敵しており、遺伝子編集ブタの研究開発能力も国際水準に近づいているとされる。

 一方で、遺伝子編集ブタの腎臓を非ヒト霊長類であるマカクに移植する試みでは、長期的な生存を達成することが課題となっており、これが中国で異種腎移植を臨床試験に進める上での主な障壁となっていると述べられている。

 研究チームのリーダーである陳剛(Chen Gang)氏によれば、異種移植の動物実験において、180日間の生存は長期生存の基準と見なされている。国際的には、約20件のケースで遺伝子編集ブタの腎臓移植における長期生存が報告されており、アメリカでは尿毒症患者を対象とした臨床試験も先行して行われている。

 中国が同様の臨床研究を開始するためには、動物実験における長期生存の達成が不可欠であると陳氏は強調している。陳氏のチームは、異種移植研究に約20年を費やし、特に過去5年間で遺伝子編集された新型ブタからマカクへの腎臓移植に関する20件以上の動物実験を実施してきた。

 2024年5月10日、動物実験の倫理承認を得た後、GTKO/β4GalNT2KO/hCD55/hTBMの4遺伝子を編集したpCMV陰性ブタをドナーとして使用し、マカクに単一のブタの腎臓を移植した。同時にマカクの両側腎臓を摘出した。この移植では免疫抑制療法を改善し、移植腎臓の生存期間が184日に達した。

 移植後の5か月間、マカクの移植腎臓は完全に正常に機能し、さまざまな生理指標も概ね正常範囲内に収まっていた。しかし、時間の経過とともに蛋白尿が悪化し、異種抗体による慢性拒絶反応が見られた。この結果を受け、陳氏は抗体産生の抑制策を強化し、さらなる生存期間の改善に取り組むことで、臨床研究に向けた基盤を整えると述べている。

【詳細】

 中国の武漢にある華中科技大学附属同済病院の研究チームは、遺伝子編集されたブタの腎臓をマカク(オナガザル)に移植し、これまでにない長期間の生存を達成した。この研究成果は2024年11月に発表され、184日間にわたって移植されたブタの腎臓がマカクで機能したことが確認された。この結果は、中国における異種移植(遺伝子編集された動物の臓器を用いる移植)の研究が、国際的な先端技術に迫る進展を見せていることを示している。

 1. 研究の背景と目的

 異種移植は、ヒトの臓器不足を解決するための重要な手段と見なされており、遺伝子編集技術を利用して動物からヒトへの臓器提供を目指す研究が世界中で進められている。特に、ブタはヒトに近い臓器を持つため、遺伝子編集を施したブタから臓器を取り出し、それをヒトに移植する方法が注目されている。ブタの腎臓は人間の腎臓に似ており、免疫反応を克服できれば臓器提供の新しい方法となると期待されている。

 2. 遺伝子編集の技術

 研究チームは、遺伝子編集によってブタの遺伝子を改変し、ヒトの免疫系による拒絶反応を減少させることを目指した。使用された遺伝子編集技術は、GTKO(ガラクトース転送酵素欠損)、β4GalNT2KO(β4-ガラクトシルトランスフェラーゼ欠損)、hCD55(ヒトCD55遺伝子)、hTBM(ヒト腎臓基底膜遺伝子)など、複数の遺伝子をターゲットにしたものだ。これにより、ブタの臓器がヒトの免疫系に対して耐性を持つようになり、拒絶反応を抑えることが可能になるとされている。

 3. 実験の概要

 研究チームは、遺伝子編集されたブタから腎臓を採取し、それをマカクに移植した。この際、マカクの両側の腎臓を取り除き、移植したブタの腎臓が機能するかを確認した。移植後、マカクには免疫抑制薬を投与し、移植された腎臓の拒絶反応を抑えるための管理が行われた。

 4. 成果とその意義

 移植されたブタの腎臓は、移植後5ヶ月間にわたり完全に機能し、マカクの生理指標も正常範囲内に保たれていた。184日という生存期間は、これまでの実験で記録されたものとしては最長であり、異種移植における大きな進展を意味している。これにより、異種移植が現実の臨床に向けて一歩近づいたことが示された。

 5. 課題と今後の展望

 移植された腎臓は、長期にわたり正常に機能したものの、時間の経過とともに蛋白尿(尿中に蛋白質が含まれる現象)が悪化し、最終的には異種移植特有の拒絶反応が現れた。新たに形成された異種抗体が腎臓を攻撃し、慢性拒絶反応が発生した。このため、今後は抗体の産生を抑制する方法を強化し、長期的な生存を実現するためのさらなる改善が求められる。

 研究チームは、免疫抑制薬の改良や新たな治療法の開発を進めており、これにより臨床応用に向けた準備が整いつつある。さらに、異種移植の安全性や倫理的問題をクリアするためには、動物実験での長期的成功が不可欠であり、これを基にした臨床試験が今後の課題となる。

 6. 国際的な比較

 アメリカではすでに遺伝子編集ブタを用いた腎臓移植の臨床試験が行われており、いくつかの症例では一定の成功が報告されている。中国の研究は、これに追いつく形で進行しており、異種移植技術の国際的な競争が激化している。中国が今後臨床試験に進むためには、動物実験での長期生存がさらなる突破口となるだろう。

 7. 結論

 中国の武漢での研究成果は、遺伝子編集を用いた異種移植の新たな可能性を示すものであり、臨床への道を開く重要な一歩となる。今後は免疫学的な課題を克服し、さらに多くの実験と改善を経て、臨床研究への移行が進むと期待される。

【要点】 

 1.研究チーム: 武漢の華中科技大学附属同済病院の臓器移植研究チーム。
 2.研究対象: 遺伝子編集されたブタの腎臓をマカク(オナガザル)に移植。
 3.成果: 移植されたブタの腎臓がマカクで184日間生存、機能した。
 4.遺伝子編集技術:

 ・使用された遺伝子編集技術は、GTKO、β4GalNT2KO、hCD55、hTBMなど。
 ・これにより、ブタの腎臓がヒトの免疫系による拒絶反応を抑えられる。

 5.実験内容
 
 ・遺伝子編集されたブタの腎臓をマカクに移植。
 ・マカクの両側腎臓を摘出。
 ・免疫抑制薬を投与して拒絶反応を抑制。

 6.結果

 ・5ヶ月間、移植された腎臓は正常に機能し、マカクの生理指標も正常範囲内にあった。
 ・184日間の生存は過去の実験で最長。

 7.課題

 ・蛋白尿(尿中の蛋白質)が悪化し、異種抗体による慢性拒絶反応が発生。
 ・今後は抗体産生抑制策を強化する必要がある。

 8.今後の展望

 ・免疫抑制薬の改善と治療法の開発が必要。
 ・臨床試験への移行を目指し、動物実験の成功を基に研究を続ける。

 9.国際的な比較

 ・アメリカでは遺伝子編集ブタを用いた臨床試験が行われ、一定の成功を収めている。
 ・中国はこれに追いつく形で研究を進めており、今後の臨床試験に向けた課題を克服中。

【引用・参照・底本】

China makes breakthrough in xenotransplantation with gene-edited pig kidney surviving 184 days in macaque GT 2024.11.29
https://www.globaltimes.cn/page/202411/1324037.shtml

日本の石破茂首相2024年11月30日 23:39

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【概要】

 2024年11月30日、グローバルタイムズに掲載された記事によると、日本の石破茂首相は、対中関係を「建設的で安定したものにする」ために、あらゆるレベルでのコミュニケーションを強化する意向を示した。彼は、日中関係を「相互利益に基づく戦略的な関係」とし、リーダー同士の首脳会談を含む交流を推進することを表明した。

 この発言は歓迎されており、もし言葉が行動に移されれば、日中関係の回復に希望が見込まれると、遼寧省社会科学院の東アジア研究の専門家であるLü Chao氏は述べている。Lü氏は、日中関係の改善は両国だけでなく、北東アジアの平和、安定、発展にも大きな利益をもたらし、特に日中韓の協力メカニズムの発展に寄与するだろうと指摘している。

 ただし、日本の政治家の中には、アメリカに接近して中国を牽制するべきだとする声が依然として存在することにも言及しており、石破首相の発言が実際の行動にどのように結びつくかに注目すべきだと述べている。

 石破首相は、政策演説の中で、トランプ次期米大統領との率直な議論を行いたいとも述べ、日米同盟の強化を目指す意向を表明した。また、演説では、日本の米国駐留軍地位協定の改正やアジア版NATO構想については言及しなかった。

 中国外交大学のLi Haidong教授は、石破首相の発言が、日本が中国から経済的利益を得つつ、米国との安全保障関係を重視する伝統的な立場を反映していると述べた。Li教授は、日本の対中関係は米国の中国政策に深く影響されるため、石破首相がどれだけ日中関係を推進できるかは、外部からの圧力や干渉にどのように対処するかにかかっていると指摘している。また、米国が中国と日本の関係をどう扱うかが鍵であり、日本が中国の内政に干渉せず、台湾問題など中国の核心的利益に挑戦しない限り、両国は安定的で建設的な関係を築けるだろうと述べている。

【詳細】

 2024年11月29日、石破茂首相は、日本の衆議院で行われた特別会期の演説において、日中関係の改善を強調した。彼は、日中両国の関係を「相互利益に基づく戦略的な関係」に発展させることを目指し、リーダー同士の首脳会談を含む、あらゆるレベルでのコミュニケーションの強化を表明した。石破首相はまた、日中間の安定した関係を築くために、建設的で安定した対話を進める意向を示した。この発言に対し、中国の専門家は、石破首相の言葉が行動に移されるならば、日中関係の回復に期待をかけることができるとコメントしている。

 専門家の見解

 遼寧省社会科学院の東アジア研究専門家、Lü Chao氏は、石破首相の発言を歓迎しており、日中関係が改善されることで、両国はもちろん、北東アジア全体の平和と安定にも寄与するだろうと述べた。特に、日中韓の協力メカニズムの発展にとって、日中関係の改善が重要であると強調した。Lü氏は、日中関係が良好な状態に戻ることが、地域全体にとって重要な意味を持つと指摘している。

 一方で、Lü氏は、日本国内には依然として中国に対して敵対的な立場を取る政治家もいることを指摘しており、特にアメリカとの連携を強化し、中国を牽制しようとする声が存在する点についても言及している。このため、石破首相が口頭で表明した日中関係の発展に向けた意向が、実際にどのような具体的な行動に結びつくのかに注目すべきだという立場を示している。

 米国との関係

 石破首相は、演説の中で、トランプ次期米大統領と率直な議論を行い、日米同盟の強化を目指す意向も表明した。この点について、彼は日米同盟を「より高いレベルに引き上げる」ことを目標に掲げており、日米間の協力を一層深化させる考えを示している。しかし、演説では、石破首相が従来から主張している日本の米国駐留軍地位協定の改正や、アジア版のNATO構想には言及しなかった。

 中国の反応と日本の立場

 中国外交大学のLi Haidong教授は、石破首相の発言を、伝統的に中国からの経済的利益を求めつつ、米国との安全保障協力を重視する日本の立場が反映されたものであると指摘している。Li教授は、日中関係は米国の対中国政策に大きく左右されるため、石破首相が実際に日中関係をどれだけ発展させられるかは、米国からの圧力や干渉にどれだけ対処できるかにかかっていると述べている。

 また、Li教授は、米国が日中関係にどのように影響を与えるかも重要な要素であり、日本が中国の内政に干渉せず、特に台湾問題など中国の核心的利益に挑戦しない限り、両国は安定的で建設的な関係を築けるだろうと強調している。

まとめ

 石破茂首相の発言は、日中関係の改善に向けた前向きな兆しを示しており、両国の対話を強化し、相互利益に基づく関係を築く意図が表明されている。しかし、実際にどのような具体的な行動が取られるかは、日本国内の政治的な対立や米国との関係によって影響される可能性があり、今後の展開に注目する必要がある。

【要点】 

 1.石破茂首相の発言

 ・日中関係を「相互利益に基づく戦略的な関係」として発展させる意向。
 ・具体的には、リーダー同士の首脳会談を含むあらゆるレベルでのコミュニケーション強化を表明。
 ・日中関係を「建設的で安定したもの」にすることを目指す。

 2.中国専門家の反応

 ・Lü Chao氏(遼寧省社会科学院)

 ⇨ 石破首相の発言は歓迎されるが、言葉を実際の行動に移せるかがカギ。
 ⇨ 日中関係の改善は、両国だけでなく北東アジア全体の平和と安定にも寄与。
 ⇨ 日中韓の協力メカニズムの発展にとって重要。

 ・しかし、日本国内には中国に対して敵対的な立場を取る政治家もいるため、実行力に注目。

 3.米国との関係

 ・石破首相は、トランプ次期米大統領との率直な議論を希望し、日米同盟の強化を表明。
 ・ただし、米国駐留軍地位協定の改正やアジア版NATO構想には言及なし。

 4.中国側の見解

 ・Li Haidong教授(中国外交大学)

  ⇨ 日本は中国からの経済的利益を求めつつ、米国との安全保障を重視する伝統的立場。
  ⇨ 米国の対中国政策が日中関係に影響を与えるため、石破首相が外部圧力にどう対処するかが重要。
  ⇨ 日本が中国の内政に干渉せず、特に台湾問題に挑戦しない限り、安定した関係構築が可能。

 5.今後の展開

 ・石破首相の発言は日中関係改善への前向きな兆しだが、具体的な行動が重要。
 ・日本国内の政治対立や米国との関係が影響するため、今後の動向に注目。

【引用・参照・底本】

Japan expected to ‘translate words into actions,’ as Ishiba vows to promote mutually beneficial ties with China, says Chinese expert GT 2024.11.30
https://www.globaltimes.cn/page/202411/1324093.shtml