米国は「対中封じ込め」に執着2024年11月30日 22:50

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【概要】

 アメリカ海軍は2024年11月26日、バージニア級原子力攻撃型潜水艦「ミネソタ」がグアムに到着したと発表した。この潜水艦は、インド太平洋地域における戦略的配備計画の一環として配備されており、地域の安全保障環境が高度な能力を持つ部隊の前方配備を必要としていることが理由とされている。また、この配備は「平和で繁栄したインド太平洋地域」の促進に寄与するという声明も発表された。しかし、「平和と繁栄」を主張する一方で、この配備が地域の平和と安定を損なう要因となるという矛盾が指摘されている。

 グアムへの原子力潜水艦の配備は今回が初めてではないが、今回の配備は軍事力の増強を象徴している。具体的には、2021年11月以前にはグアムに配備されていた攻撃型原子力潜水艦は2隻のみであったが、今回の「ミネソタ」の到着により5隻に増加した。また、これまで配備されていたロサンゼルス級潜水艦に代わり、第4世代のバージニア級潜水艦が配備されることで能力が向上している。さらに、現在グアムに配備されている他の4隻の潜水艦も、退役後にはバージニア級に置き換えられる予定である。これにより、グアムが「地域の平和と安定を脅かす武器」としての役割を強化しているとの見方がある。

 グアムの軍事施設強化には、毎年10億ドル以上の予算が投入されており、アメリカ国防総省はグアムを「第二列島線」における「不沈空母」とすることを目指しているとされる。この軍事力強化は、仮想敵を意識したものとみられており、実戦に備えた性格が強く、地域緊張のエスカレーションを招く直接的な要因とされている。

 近年、アメリカは「インド太平洋戦略」の推進に力を入れており、「ファイブアイズ同盟」の強化、「クアッド」枠組みの拡大、排他的な小規模連合の形成、さらには中国を標的とした軍事演習の頻繁な実施を行っている。2024年4月には、アメリカ議会が950億ドルの追加軍事支援予算を可決し、そのうち81億ドルがアジア太平洋地域での対中対策に充てられることが決定された。このような一連の取り組みは、アメリカが「インド太平洋戦略」を遂行するために多大なリソースを注いでいることを示している。

 「ミネソタ」の配備は、アメリカが中国との「違いを管理する」という名目の偽善性を露呈している。アメリカの真の意図は、中国がアメリカの圧力や抑制に全面的に従い、挑発行動への対応を控えることを強いる点にあると指摘されている。また、このような軍事配備により、アメリカは同盟国に対して、アメリカの対中挑発と封じ込め政策がリスクを伴わないものであることを示そうとしている。この動きは、NATOのアジア太平洋化を加速させる目的も持つとされる。しかし、中国はアメリカのこのような行動を容認せず、地域の平和を維持しようとする立場を強調している。

 アメリカは「対中封じ込め」に執着しているように見受けられ、その結果、「エスカレーションのみでデエスカレーションはない」という悪循環に陥っている。この動きはアメリカにとってますます重い戦略的負担となっており、国内でもその問題点が認識されている。アメリカの対中政策におけるレトリックも、「デカップリング」から「デリスキング」、そして現在の「責任ある違いの管理」へと変化しており、国際社会の意見を意識していることがうかがえる。しかし、このような変化にもかかわらず、アメリカは依然として危険な方向へと突き進んでいる。

 中国とアメリカの関係、特に軍事面における関係は近年浮き沈みがあるが、対話と協力が進み、全体として安定を保っている。しかし、この安定は脆弱であり、双方の努力による維持と強化が必要である。中国はアメリカに対して戦略的な敵意を持たず、地域で真に必要とされ歓迎される取り組みに集中するよう求めている。また、武器の配備や基地設置のような非建設的な行動を控えることを促している。

【詳細】

 アメリカ海軍は、2024年11月26日にバージニア級原子力攻撃型潜水艦「ミネソタ」をグアムに配備したと発表し、これを「インド太平洋地域の安全保障環境に対応した戦略的配備」と位置づけた。声明では、この配備が「平和で繁栄したインド太平洋地域」の促進に寄与するとされている。しかし、批評家や中国政府は、この動きが地域の緊張を高める軍事的挑発であると指摘しており、アメリカの声明と行動の間に矛盾があると批判している。

 グアムの軍事的役割の強化

 グアムは地理的にアジア太平洋地域の戦略的要衝に位置し、アメリカにとって「第二列島線」の防衛拠点である。アメリカ国防総省はここ数年、毎年10億ドル以上を投入してグアムの軍事力を強化しており、「不沈空母」としての役割を果たすための準備を進めている。具体的には、以下のような取り組みが行われている:

 ・潜水艦部隊の近代化:今回の「ミネソタ」の配備により、グアムに配備される潜水艦は第4世代のバージニア級に統一される。これにより、グアムの潜水艦部隊は旧式のロサンゼルス級から大幅に性能が向上する。
 ・配備数の増加:2021年11月以前、グアムには2隻の攻撃型潜水艦が配備されていたが、現在ではその数が5隻に増加している。
 ・地域拠点としての機能強化:グアムの軍事施設は、アメリカ本土から離れた前方展開拠点としての重要性を増しており、中国や北朝鮮などの潜在的な脅威に迅速に対応するための「即応能力」を強調している。

 バージニア級潜水艦の能力と意義

 バージニア級潜水艦は、最先端の技術を搭載した多目的原子力潜水艦である。具体的な特徴は以下の通り。

 ・ステルス性能:敵の探知を回避する能力が非常に高い。
 ・攻撃能力:巡航ミサイルや魚雷の発射が可能で、敵艦船や地上目標に対する攻撃力を持つ。
 ・長期間の潜航能力:原子力推進により補給なしで長期間活動できるため、前線での作戦運用が容易である。 これにより、アメリカは中国沿岸部や南シナ海などの戦略的重要拠点に迅速にアクセスし、プレゼンスを誇示することが可能となる。
 
 地域緊張の高まり

 今回の配備により、中国との緊張がさらに高まる懸念がある。特に、グアムから中国本土までの距離が短縮されるため、以下のような影響が懸念される。

 1.軍事的挑発のリスク:グアムからの軍事行動が容易になり、中国がこれを脅威と認識する可能性が高い。

 2.軍拡競争の加速:中国はアメリカの軍事力増強に対抗するために、防衛能力の向上や軍事費の増加を進める可能性がある。
 3.同盟国への影響:アメリカが進める「インド太平洋戦略」によって、オーストラリアや日本、韓国などの同盟国にも軍事的負担が増える。

 アメリカの「インド太平洋戦略」とその批判

 アメリカは「インド太平洋戦略」の一環として、地域内で以下の取り組みを進めている。

 ・「ファイブアイズ」同盟の強化:イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドとともに情報共有を強化。
 ・「クアッド」機構の推進:日本、オーストラリア、インドとの協力を深化。
 ・「小規模連合」の形成:排他的な枠組みを通じて中国をけん制。
 ・対中軍事演習の実施:南シナ海や台湾海峡での演習を頻繁に実施。

 中国側はこれを「地域の分断を狙った排他的政策」と非難しており、地域の緊張をエスカレートさせる要因とみなしている。また、アメリカ議会が2024年に可決した950億ドル規模の軍事予算の一部は、アジア太平洋地域における中国への対抗策に充てられており、中国はこれを「対中封じ込め戦略」の一環と見ている。

 米中関係の行方

 近年、米中関係は浮き沈みを繰り返しているが、対話と協力の重要性が強調されている。中国は「アメリカに対して戦略的敵意を持たない」との立場を繰り返し表明し、地域の平和維持を主張している。一方、アメリカの軍事行動や圧力は、中国との関係を不安定にする要因となっており、双方にとって持続可能な安定を築くためには努力が必要である。

 アメリカが「大国としての責任」を果たすためには、武力による威嚇を控え、地域が真に求める取り組みに焦点を当てるべきである。具体的には、経済協力や環境問題への対処、地域住民の生活向上に資するプロジェクトが期待されている。

【要点】 

 グアムへの潜水艦配備に関する概要

 1.配備の背景

 ・アメリカ海軍はバージニア級原子力攻撃型潜水艦「ミネソタ」をグアムに配備し、地域の安全保障環境への対応を強化したと発表。
 ・この配備は「平和で繁栄したインド太平洋地域の促進」に寄与するとしているが、中国側は矛盾と挑発行為とみなしている。

 2.グアムの軍事的強化

 ・毎年10億ドル以上がグアムの軍事力強化に投入されている。
 ・グアムは「不沈空母」として「第二列島線」の重要な防衛拠点とされている。
 ・バージニア級潜水艦の配備で、旧式のロサンゼルス級潜水艦から大幅に性能が向上。

 3.バージニア級潜水艦の特長

 ・ステルス性能が高く、敵に発見されにくい。
 ・巡航ミサイルや魚雷で地上・海上目標への攻撃が可能。
 ・長期間の潜航が可能で、前線での作戦能力が向上。

 4.地域への影響

 ・軍事的挑発のリスク:グアムからの潜水艦行動が中国にとって直接的な脅威となる可能性。
 ・軍拡競争の加速:中国がアメリカの軍事増強に対抗して防衛費を増加させる懸念。
 ・同盟国への影響:アメリカのインド太平洋戦略が同盟国にさらなる軍事的負担を強いる可能性。

 アメリカのインド太平洋戦略

 1.主な取り組み

 ・「ファイブアイズ」同盟の情報共有強化。
 ・日本、オーストラリア、インドとの「クアッド」協力の深化。
 ・小規模連合を通じて中国をけん制。
 ・南シナ海や台湾海峡での対中軍事演習の実施。

 2.中国の批判

 ・地域の分断を狙った排他的政策と非難。
 ・地域の緊張を高める要因と見なされている。

 米中関係と課題

 1.現在の状況

 ・米中関係は不安定ながらも対話と協力の必要性が認識されている。
 ・中国は戦略的敵意を否定し、地域の平和維持を主張。

 2.課題と提案

 ・アメリカが武力による威嚇を控えるべきである。
 ・経済協力や環境問題解決、地域住民の生活向上を重視する必要がある。

【引用・参照・底本】

How ironic the US military talks about peace while brandishing ‘tip of the spear’: Global Times editorial GT 2024.11.30
https://www.globaltimes.cn/page/202411/1324074.shtml

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