中国・ASEAN協力の深化2025年05月27日 19:33

OpenAIで作成
【概要】

 2025年5月26日、マレーシアのクアラルンプールで第46回ASEANサミットが開幕した。世界的な貿易の不確実性が高まる中、地域統合の深化と貿易・経済の混乱に対する回復力の強化が主要議題となっている。マレーシアは2025年のASEAN議長国であり、「包摂と持続可能性」をテーマにASEANサミットおよび関連首脳会議を主催している。

 主要な動き

 開会式において、マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は、変化する世界秩序がもたらす課題に直面し、持続可能かつ公平な発展の課題が脇に追いやられないよう、ASEAN加盟国が協力して取り組むことを促した。

 首脳たちは、ASEANの今後20年間を導く重要な文書である**「ASEAN 2045:我々の共有する未来に関するクアラルンプール宣言」**に署名した。アンワル首相は、この文書が新たな課題を考慮しつつ、持続可能で包摂的な発展を最前線に置くことで、ASEANの将来の方向性を開くと述べた。

 米国の関税と地域協力

 米国による関税障壁と世界的な貿易保護主義に直面する中、ASEAN加盟国の団結と、中国や湾岸協力会議(GCC)などの地域機関との協力は特に価値があると専門家は指摘する。これは世界的な保守主義に対する強力な対抗策となり、地域の回復力とリスク耐性を高めるとしている。

 米国の関税脅威により、地域全体の成長は打撃を受けており、7月の期限までに合意に至らない場合、加盟国には最大49%の関税が課される見込みである。マレーシアは、ドナルド・トランプ米大統領との統一的な会合を模索しており、今年後半に実現する可能性に期待が寄せられている。

 中国・ASEAN協力の深化

 世界第5位の経済圏であるASEANと中国は、互いに最大の貿易相手国であり、主要な投資パートナーである。米国の「関税の嵐」に直面する中、中国・ASEAN協力は新たな活力を得ており、先週には中国・ASEAN自由貿易地域(CAFTA)3.0の交渉が完全に妥結し、相互開放のさらなる強化に向けた重要な一歩となった。

 中国商務省は5月21日、CAFTA 3.0の進展が二国間経済貿易協力の優先事項であり、自由貿易の共同維持・推進における画期的な成果であると述べた。中国社会科学院東南アジア研究所の許利平所長は、CAFTA 3.0がデジタル経済やグリーン経済といった新興分野に焦点を当てることで、中国とASEAN間の協力の潜在力をさらに引き出すと述べている。

 「制度的ブレークスルー」としての三者協力

 アンワル首相は、ASEANの友好的なパートナーとの協力強化の重要性を強調し、27日に開催される史上初のASEAN・GCC・中国サミットの意義を指摘した。中国の李強首相は、アンワル首相の招待を受け、このサミットに出席するためクアラルンプールに到着した。

 中国外務省の毛寧報道官は、このサミットを通じて、中国がASEANおよびGCC加盟国との協力を強化することに期待していると述べた。

 インドネシア民主党闘争派(PDI-P)西ジャワ州支部の財務担当であるアディティアリーニ・クリスティーナ氏は、この三者サミットが地域を越えた協力促進と「グローバルサウス」諸国の団結強化において重要であると強調した。

 タイ・中国「一帯一路」研究センター(CTC)のウィルン・ピチャイウォンパクディー所長は、この三者メカニズムの設立が「グローバルサウス」協力における重要な制度的ブレークスルーであると考えている。この枠組みは多極化の傾向に積極的に対応するだけでなく、発展途上国間の制度化された協力の新たな段階を示すものだと述べた。

 ウィルン所長は、この三者サミットが3つの主要な目的を果たすとしている。第一に、「南南協力」における断片化に対処すること。第二に、中国の「一帯一路」構想、ASEAN連結性マスタープラン2025、GCC加盟国であるサウジアラビアのビジョン2030といった、高品質な開発と開放性という共通の目標を持つ戦略的連携を促進すること。第三に、世界的なガバナンスに「グローバルサウス」の経験を提供し、人類運命共同体構築のための制度的支援を提供することである。

【詳細】 

 第46回ASEANサミットは、2025年5月26日にマレーシアのクアラルンプールで開幕し、地域統合の深化と貿易・経済の混乱に対する回復力の強化を主要議題としている。マレーシアは2025年のASEAN議長国として、「包摂と持続可能性」をテーマに掲げている。

 サミットの主な焦点と成果

 ・「ASEAN 2045:我々の共有する未来に関するクアラルンプール宣言」の採択

 ・この宣言は、ASEANの今後20年間の方向性を示す重要な文書であり、アンワル・イブラヒム首相は、持続可能で包摂的な発展を最前線に置きつつ、新たな課題を考慮する道を開くと述べた。

 ・宣言は、「効果的な実施、強化された制度能力、およびより深い地域協力」を強調し、ASEANコミュニティ・ビジョン2045を正式に採択している。

 ・このビジョンは、政治・安全保障、経済、社会・文化、連結性・制度能力という4つの主要な柱を中心に構築されており、それぞれが包摂性、回復力、地域的強さを促進する。

 ・ASEANがイノベーション、デジタル変革、サプライチェーンの強化、持続可能な成長を推進することで、世界第4位の経済大国となることを目指している。

 ・女性、若者、疎外されたコミュニティの政策決定や連結性イニシアチブにおける代表性の強化も強調されている。

 米国の関税に対するASEANの対応

 ・米国の関税障壁と世界的な貿易保護主義に直面し、ASEANは団結を強化し、中国やGCCとの協力を重視している。

 ・米国は、7月の期限までに貿易協定が成立しない場合、一部のASEAN加盟国に対し最大49%の関税を課す可能性を示唆している。

 ・マレーシアは、ASEAN全体として米国大統領との特別首脳会談を要請しており、年内の実現に期待している。

 中国・ASEAN自由貿易地域(CAFTA)3.0の交渉完了:

 中国とASEANは、CAFTA 3.0の交渉を5月21日に完全に完了した。これは、二国間経済貿易協力における画期的な成果と位置付けられている。

 CAFTA 3.0は、デジタル経済やグリーン経済といった新興分野に焦点を当て、貿易と投資のさらなる自由化と効率化を促進する。

 この合意は、高まる一方的な世界情勢と貿易障壁の中で、地域全体の回復力とリスク耐性を強化するものと期待されている。

 交渉は2022年11月に開始され、9回の公式協議を経て2024年10月に実質的に完了した。デジタル経済やグリーン経済、サプライチェーンの連結性など、9つの新たな章が追加されている。

 初のASEAN・GCC・中国サミット

 5月27日には、初のASEAN・GCC・中国サミットが開催され、地域横断的な協力と「グローバルサウス」諸国の団結強化の重要性が強調された。

 この三者メカニズムは、「グローバルサウス」協力における重要な制度的ブレークスルーと見なされている。

 中国(「グローバルサウス」の制度的設計者および産業リーダー)、ASEAN(最も結束力のある地域組織)、GCC(アラブ世界の経済・エネルギーハブ)という3つの主要プレーヤーが結集する。

 このサミットは、中国の「一帯一路」構想、ASEAN連結性マスタープラン2025、GCC加盟国であるサウジアラビアのビジョン2030といった、主要な開発戦略間の戦略的連携を促進する。

 李強中国首相は、サミットを通じてASEANおよびGCC加盟国との協力を強化することに期待を表明した。

 李強首相はサミットに先立ち、インドネシアを公式訪問し、プラボウォ・スビアント大統領と会談し、インドネシア・中国ビジネスレセプションに共同で出席した。

 その他の議論

 ASEAN外相会議では、ミャンマー情勢に関する議論が行われ、モハマド・ハサン外相は、ミャンマーの軍事政権が本年中に実施を計画している選挙を「ごまかし」であるとして軽視し、即時停戦と平和への対話の開始を求めた。

 気候変動、AIの悪用、規制されていない技術による混乱など、地域が直面する課題にも言及された。
 
 これらの動きは、世界的な不確実性と貿易保護主義の台頭に直面する中で、ASEANが地域統合を深化させ、外部パートナーとの協力を強化することで、回復力と影響力を高めようとする姿勢を示している。特に、中国とGCCとの協力は、多極化した世界秩序において「グローバルサウス」の経済的・政治的影響力の台頭を象徴するものと見なされている。

【要点】 

 1.主要な議題と成果

 (1)地域統合と回復力の強化

 ・世界的な貿易の不確実性の中、より深い地域統合と貿易・経済の混乱に対する回復力の強化が主要議題とされた。

 ・マレーシアは2025年のASEAN議長国として、「包摂と持続可能性」をテーマに掲げた。

 (2)「ASEAN 2045:我々の共有する未来に関するクアラルンプール宣言」の採択

 ・ASEANの今後20年間を導く重要な文書が署名された。

 ・アンワル・イブラヒム首相は、持続可能で包摂的な発展を最前線に置きつつ、新たな課題を考慮する道を開くと述べた。

 ・このビジョンは、政治・安全保障、経済、社会・文化、連結性・制度能力の4つの柱を中心に構築され、ASEANが世界第4位の経済大国となることを目指している。

 2.米国の関税と地域協力

 米国の関税脅威への対応

 ・米国による関税障壁と世界的な貿易保護主義に直面し、ASEAN加盟国の団結と、中国や湾岸協力会議(GCC)などの地域機関との協力が重要視された。

 ・米国は、7月の期限までに貿易協定が成立しない場合、一部のASEAN加盟国に最大49%の関税を課す可能性を示唆している。

 ・マレーシアは、統一的なASEANとしてドナルド・トランプ米大統領との会合を模索している。

 3.中国・ASEAN協力の深化

 中国・ASEAN自由貿易地域(CAFTA)3.0交渉の完了:

 ・5月21日にCAFTA 3.0の交渉が完全に妥結した。

 ・デジタル経済やグリーン経済といった新興分野に焦点を当て、貿易と投資のさらなる自由化と効率化を促進する。

 ・この合意は、高まる一方的な世界情勢と貿易障壁の中で、地域全体の回復力とリスク耐性を強化すると期待されている。

 4.三者協力の進展

 初のASEAN・GCC・中国サミットの開催:

 ・5月27日に開催され、地域横断的な協力と「グローバルサウス」諸国の団結強化の重要性が強調された。

 ・この三者メカニズムは、「グローバルサウス」協力における重要な制度的ブレークスルーと見なされている。

 ・中国の「一帯一路」構想、ASEAN連結性マスタープラン2025、GCC加盟国であるサウジアラビアのビジョン2030といった主要な開発戦略間の戦略的連携が促進される。

 ・李強中国首相は、サミットを通じてASEANおよびGCC加盟国との協力を強化することに期待を表明した。

 5.その他の議論

 (1)ミャンマー情勢

 ・ASEAN外相会議ではミャンマー情勢が議論され、マレーシアはミャンマー軍事政権が計画している選挙を「ごまかし」であるとして軽視し、即時停戦と平和への対話の開始を求めた。

 (2)新たな課題

 ・気候変動、AIの悪用、規制されていない技術による混乱など、地域が直面する課題にも言及された。

【桃源寸評】💚

 トランプ政権は、その「アメリカ・ファースト」の外交政策により、国際社会における米国の伝統的な立場を変化させてきたと広く認識されている。その具体的な特徴と影響は以下の通りである。

 1.単独主義と国際協調からの後退

 ・トランプ政権は、米国の国益を極めて狭義に捉え、同盟国や国際社会に背を向けて、単独主義的なアプローチを追求する傾向が強い。

 ・これは、これまでの米国が主導してきた自由貿易推進のための関税引き下げ努力や、多国間協定へのコミットメントとは逆行する動きである。

 2.貿易保護主義の推進

 ・トランプ大統領自身が「タリフ・マン」と公言するように、貿易不均衡を持つ国々に一方的に高率の関税を課すことを脅し、実際に適用してきた。

 ・これは、これまでの米国の指導力の下で進められてきた自由貿易の国際的な流れに逆行するものであり、世界の貿易システムに混乱をもたらす可能性がある。

 3.同盟関係の再定義

 ・伝統的な同盟国に対して、防衛費の負担増を強く要求するなど、同盟関係を「コスト」として捉える傾向が見られた。

 ・これにより、一部の同盟国は、これまでの対米従属的な関係を見直し、自国の安全保障についてより自立的に考える必要に迫られている。

 4.国際機関や国際規範への懐疑

 ・世界貿易機関(WTO)などの国際機関の機能に疑問を呈し、パリ協定やイラン核合意などからの離脱を決定するなど、国際的なルールや規範を軽視する姿勢が目立った。

 ・これは、米国が主導してきた国際秩序そのものの揺らぎにつながるとの懸念が示された。

 5.国内の分断の国際社会への影響

 ・米国国内の政治的・社会的な分断が「アメリカ・ファースト」外交を促し、米国の国際社会への関与の低減につながり、ひいては国際秩序の混乱につながる可能性が指摘されている。

 ・米国の国内問題(人権問題など)が世界に露呈することで、中国やロシアなどの競争相手国から「矛盾」や「偽善」として批判される要因ともなった。

 6.「武器化された国家機構」への懸念

 ・トランプ政権は、司法省やFBIなどの政府機関を「武器化」し、政敵を標的とした訴追や、支持者による政治的暴力の黙認、政府批判を行う者への圧力などを駆使する可能性が指摘されている。

 ・これは、米国の民主主義原則へのコミットメントに対する懸念を生み、国際社会における米国の信頼性を損なう可能性がある。

 これらの要素は、トランプ政権が国際社会における米国の役割と立場を、これまでの伝統的な指導者としての役割から、より内向きで単独主義的な方向へと変化させているという見方を裏付けるものである。

 
 ASEAN 2045:我々の共有する未来に関するクアラルンプール宣言の内容

 「ASEAN 2045:我々の共有する未来に関するクアラルンプール宣言」は、ASEANの今後20年間の戦略的指針を示す重要な文書であり、以下の内容を含んでいる。

 主要な柱

 宣言は、以下の4つの主要な柱を中心に構成されており、それぞれが包摂性、回復力、地域の強さを促進する。

 1.政治・安全保障

 ・平和、安定、国際法の遵守を促進する。

 ・ASEANの地域的役割を強化する。

 ・中立性と安全保障を保護する。

 2.経済

 ・イノベーション、デジタル変革、より強力なサプライチェーン、持続可能な成長を推進することで、ASEANを世界第4位の経済大国にする。

 3.社会・文化

 ・共有されたアイデンティティに基づいた、結束力があり包摂的なコミュニティを育成する。

 ・健康、社会正義、ジェンダー平等、若者のエンパワーメント、文化の保存を推進する。

 4.連結性と制度的能力

 ・インフラストラクチャとデジタル接続性を強化する。

 ・都市の回復力を強化する。

 ・より効果的なガバナンスのためにASEANの制度を強化する。

 5.その他の重要な要素

 (1)グローバルな問題における地域のリーダーシップ

 ・地域およびグローバルな議論を形成する上でASEANの役割を強化する。

 ・ルールに基づく国際秩序を維持する。

 ・ASEANインド太平洋展望などのASEAN主導のメカニズムを強化する。

 (2)デジタル経済とグリーン経済への注力:

 ・デジタルエコシステム、サイバーセキュリティ、高度な技術、グリーン成長、ブルーエコノミーの開発を加速する。

 (3)より大きな包摂性

 ・政策決定および接続性イニシアチブにおける女性、若者、疎外されたコミュニティの代表性を強化する。

 (4)持続可能性と回復力

 ・気候変動対策、環境保護、パンデミックへの備え、サプライチェーンの回復力をアジェンダの中心に据える。

 この宣言は、ASEANが持続可能な成長と優れたガバナンスに基づき、高度な技術によって力を与えられ、新たな機会に対応できる、世界の主要な経済大国および世界経済において主要なプレーヤーになることを目指している。(Malay MailおよびXinhuaの記事に基づいている)


 ASEANは、東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asian Nations)の略称であり、東南アジア地域の政治、経済、社会、文化の協力と地域安定を促進することを目的とした地域協力機構である。

 歴史と加盟国

 ・設立: 1967年8月8日、タイのバンコクでインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの5カ国によってASEAN宣言(バンコク宣言)が署名され、設立された。

 ・加盟国の拡大: その後、ブルネイ・ダルサラーム(1984年)、ベトナム(1995年)、ラオス(1997年)、ミャンマー(1997年)、カンボジア(1999年)が加盟し、現在の10カ国体制となった。東ティモールは加盟候補国であり、パプアニューギニアはオブザーバー国である。

 目的と原則

 ASEANの主な目的は以下の通りである(ASEAN憲章および友好協力条約(TAC)に明記)。

 ・経済成長、社会進歩、文化発展の加速: 地域全体の経済成長、社会進歩、文化発展を共同で推進する。

 ・地域平和と安定の促進: 地域における正義と法の支配の尊重、国連憲章の原則順守を通じて、地域平和と安定を促進する。

 ・相互協力と支援の促進: 経済、社会、文化、技術、科学、行政分野における共通の関心事項について、積極的な協力と相互援助を推進する。

 ・非干渉主義: 加盟国間の内政不干渉の原則を尊重する。

 ・紛争の平和的解決: 意見の相違や紛争を平和的な方法で解決する。

 ・武力による威嚇または武力の行使の放棄: 加盟国間で武力による威嚇や武力の行使を行わない。

 ASEAN共同体

 2015年には、東南アジアが統合され、繁栄し、安定した地域であり続けることを目指し、ASEAN共同体が発足した。ASEAN共同体は以下の3つの柱で構成される。

 1.ASEAN政治・安全保障共同体(APSC)

 ・地域内の平和と安定を維持し、紛争を平和的に解決することを目指す。

 ・政治的発展、規範の形成と共有、紛争予防、紛争解決、紛争後の平和構築、実施メカニズムといった要素が含まれる。

 ・法の支配に基づく共同体を目指し、包括的な安全保障に責任を持つ。

 2.ASEAN経済共同体(AEC)

 ・単一市場と生産基地を構築し、物品、サービス、投資の自由な移動、および資本のより自由な移動を目指す。

 ・公平な経済発展を促進し、貧困と社会経済格差を削減する。

 ・世界のサプライチェーンにおいて、よりダイナミックで強力なセグメントとなることを目指す。

 3.ASEAN社会・文化共同体(ASCC)

 ・人を中心とした社会を築き、持続可能な発展、環境保護、災害管理、社会保障、文化交流などを促進する。

 ・共有されたアイデンティティと生活様式を持つ、包摂的で回復力のあるコミュニティを目指す。

 4.経済的意義

 ASEANは、世界経済において重要な役割を担っている。

 ・世界の主要な経済圏: 世界第4位(一部統計では第5位)の経済大国であり、2030年までにはさらに上位にランクされると予測されている。

 ・成長市場: 人口は世界第3位であり、急速に成長する消費市場としても注目されている。

 ・貿易と投資の中心地: グローバルな製造業と貿易の主要なハブであり、外国直接投資(FDI)を大量に誘致している。

 ・デジタル経済の成長: デジタル経済は急速に拡大しており、2025年までに3,000億ドルを超えると予測されている。

 5.組織と機能

 ・ASEAN首脳会議: 各国首脳または政府の長で構成されるASEANの最高意思決定機関であり、年2回開催される。

 ・ASEAN閣僚会議: 4つの重要な閣僚会議(ASEAN調整理事会、ASEAN政治・安全保障共同体理事会、ASEAN経済共同体理事会、ASEAN社会・文化共同体理事会)が首脳会議を支援する。

 ・ASEAN事務局: インドネシアのジャカルタに所在し、ASEANの目的と原則の実現に向けて、ASEANの利害関係者の協力を開始、促進、調整する。

 ASEAN憲章: 2007年に採択されたASEAN憲章は、ASEANに法的地位と制度的枠組みを与え、規範、規則、価値観を成文化し、明確な目標を設定し、説明責任と遵守を規定している。

 ASEANは、地域の平和、安定、繁栄を追求するとともに、多極化する世界において、より大きな役割を果たすことを目指している。

【寸評 完】

【引用・参照・底本】

ASEAN Summit stresses greater integration, resilience against trade disruptions GT 2025.05.26
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1334885.shtml

「インドが世界第4位の経済大国になった」?2025年05月27日 19:53

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【概要】

 インドの政府系シンクタンクNITIアーヨグのCEOであるBVRスブラマニャムが、インドが日本を抜いて世界第4位の経済大国になったと主張したことについて、国内外で多くの疑問が生じている。

 スブラマニャムは、IMFのデータを引用し、現在のインドは日本よりも大きいと述べた。PTIの報道によると、2024年までインドは世界第5位の経済大国であった。

 スブラマニャムは、「インドより大きいのは米国、中国、ドイツだけであり、計画通りに進めば、2年半から3年で第3位の経済大国になるだろう」と語った。

 しかし、その翌日、PTIはNITIアーヨグのメンバーであるアルビンド・ビルマニの発言を報じた。ビルマニは、スブラマニャムの発言について尋ねられた際、「これは複雑な問題であり、誰がどのような言葉を使ったのか、私には本当にわからない。おそらく何か言葉が抜け落ちていたか、何かがあったのだろう」と述べた。

 ビルマニは、「インドは第4位の経済大国になる過程にあり、個人的には2025年末までにそうなると確信している。なぜなら、それを断言するためには12ヶ月間のGDPデータが必要だからだ。それまでは予測にすぎない」と述べた。

 さらに、CNBCは月曜日、IMFの最新データを確認したところ、スブラマニャムの発言は時期尚早である可能性が示唆されたと報じた。

 IMFによると、インドが名目GDPで日本を抜き、第4位の経済大国になるのは2025年になる可能性がある。しかし、CNBCの報道によると、IMFが2025年4月に発表した最新の世界経済見通しに基づくと、この移行はまだ正式には起こっていない。

【詳細】 

 提供された情報に基づき、インドが日本を抜いて世界第4位の経済大国になったというNITIアーヨグCEOの主張と、それに対する疑問について、詳細を以下にまとめます。

 インドが日本を抜いて第4位の経済大国になったという主張

 ・主張者: インド政府系シンクタンクNITIアーヨグのCEO、BVRスブラマニャム。

 ・主張の根拠: IMFのデータを引用し、インド経済が現在、日本よりも大きいと述べた。

 ・現状認識: 2024年までは、インドは世界第5位の経済大国であった。

 ・将来の予測: スブラマニャムは、計画通りに進めば、2年半から3年でインドが世界第3位の経済大国になるだろうと予測している。彼によると、インドより規模が大きいのは米国、中国、ドイツのみである。

 主張に対する疑問と反論

 ・NITIアーヨグ関係者の見解: スブラマニャムの発言の翌日、PTIはNITIアーヨグのメンバーであるアルビンド・ビルマニのコメントを報じた。ビルマニは、スブラマニャムの発言について「複雑な問題であり、誰がどのような言葉を使ったのか、私には本当にわからない。おそらく何か言葉が抜け落ちていたか、何かがあったのだろう」と述べ、発言の正確性や意図に疑問を呈した。

 ・現状と予測の区別: ビルマニは、「インドは第4位の経済大国になる過程にあり、個人的には2025年末までにそうなると確信している」と述べた。しかし、彼によると、それを断言するためには12ヶ月間のGDPデータが必要であり、それまでは予測にすぎないとの見解を示している。

 ・IMFデータの分析: CNBCは、IMFの最新データを確認した結果、スブラマニャムの発言は「時期尚早」である可能性を報じた。IMFの2025年4月の世界経済見通しによると、インドが名目GDPで日本を抜き、第4位の経済大国になるのは2025年になる可能性があるものの、この移行はまだ正式には起こっていないとされている。

 まとめ

 スブラマニャムCEOは、インドがすでに日本を抜いて世界第4位の経済大国になったと主張しているが、この主張はNITIアーヨグ内部の関係者やIMFの最新データを確認したCNBCの報道によって疑問が呈されている。現状としては、インドは第4位の経済大国になる過程にあり、正式な移行は2025年になる可能性があるという見方が強い。

【要点】 

 NITIアーヨグCEOの主張

 ・主張の内容: インドが日本を追い抜き、世界第4位の経済大国になった。

 ・根拠: IMFのデータを引用。

 ・現状認識: 2024年まではインドが世界第5位の経済大国であった。

 ・将来予測: 2年半から3年で、インドは米国、中国、ドイツに次ぐ世界第3位の経済大国になる可能性があると述べた。

 主張に対する疑問と反論

 (1)NITIアーヨグメンバーの見解

 ・NITIアーヨグのメンバーであるアルビンド・ビルマニ氏は、スブラマニャム氏の発言について「言葉が抜け落ちていたか、何かがあったのだろう」と述べ、発言の真意に疑問を呈した。

 ・ビルマニ氏は、「インドは第4位の経済大国になる過程にあり、2025年末までにそれが実現すると確信している」としながらも、「それを断言するには12ヶ月間のGDPデータが必要であり、それまでは予測にすぎない」と強調した。

 (2)IMFデータに基づく分析

 ・CNBCの報道によると、IMFの最新データ(2025年4月の世界経済見通し)を確認した結果、スブラマニャム氏の発言は時期尚早である可能性が高い。

 ・IMFは、インドが名目GDPで日本を抜いて第4位の経済大国になるのは2025年になる可能性があると予測しているが、この移行はまだ正式には発生していないとされている。


【桃源寸評】💚

 インドが中国と並ぶ人口規模を持ちながらも、経済的に「オールマイティ」な規模で中国に追いつくには隔たりがある。これは、両国の経済発展の道のりや構造的な違いに起因するものである。

 1.インドと中国の経済的違い

 ・製造業の発展: 中国は「世界の工場」として、長年にわたり製造業を国家戦略の柱とし、大規模なインフラ投資と外資導入によって輸出主導型の経済成長を遂げてきた。これにより、サプライチェーン全体を包括する強固な産業基盤を築き、多様な製品を大量生産できる体制を確立している。

 一方、インドはサービス業、特にIT分野での成長が著しいが、製造業の育成においては中国ほどの成功を収めていない。これは、労働法の複雑さ、土地取得の難しさ、インフラの未整備といった課題が影響している。

 ・インフラ整備の格差: 中国は高速鉄道、港湾、道路、電力網といったインフラへの巨額な投資を国家主導で行い、経済活動の効率性を飛躍的に高めた。

 これに対し、インドもインフラ整備を急速に進めているが、国土の広さや連邦制による調整の難しさなどから、依然として地域間の格差やボトルネックが存在する。

 ・国家主導型経済と市場経済のバランス: 中国は強力な国家主導のもとで経済開発を進め、特定の産業や地域に資源を集中投下することで、迅速な成長を実現してきた。

 対照的に、インドはより民主的な制度のもとで、市場経済の原則を重視しつつも、改革のペースは比較的緩やかである。これにより、イノベーションや民間企業の活力が育ちやすい反面、大規模な構造転換には時間を要する傾向がある。

 ・国内市場の規模と質: 両国とも巨大な人口を抱え、内需の潜在力は非常に高い。しかし、所得格差や貧困層の割合を考慮すると、中国の方がより広範な中間層を抱え、多様な消費財市場が成熟していると言える。

 2.インドの今後の展望

 インドは若年人口が多く、デジタル化の進展やスタートアップエコシステムの活発化など、新たな成長ドライバーを多く抱えている。特に、デジタルインフラ(UPIなどの決済システム *)の普及は、経済の効率化と包摂的な成長を促す可能性を秘めている。

 しかし、中国のような「オールマイティ」な経済規模、つまり多岐にわたる産業分野で高い生産性と競争力を持ち、世界経済に与える影響力が広範にわたるレベルに到達するには、製造業のさらなる育成、インフラ整備の加速、そして教育やスキルの向上による人的資本の強化が不可欠となる。

 人口規模が匹敵するからこそ、GDPにおいても注目されるのは当然のことであるが、経済構造の成熟度や多角性においては、まだ中国との間に大きな差があると言える。

 * UPI(Unified Payments Interface)は、インドのデジタル決済市場に革命をもたらした即時決済システムである。インド準備銀行(RBI)の規制下にあるインド決済公社(NPCI)によって開発された。

 UPIの主な特徴と仕組みは以下の通り。

 1.単一のモバイルアプリケーションで複数の銀行口座を統合: ユーザーは、参加銀行のどのモバイルアプリからでも、複数の銀行口座を1つのアプリケーションに紐付け、様々な銀行機能、資金移動、および店舗での支払いをシームレスに行うことができる。

 2.リアルタイム決済: 24時間365日、いつでも即座に資金を移動できる。従来の銀行システムのように、銀行間の送金に数時間または数日かかることがない。

 3.簡素化された取引

 ・バーチャル決済アドレス(VPA): 銀行口座番号や IFSC コードなどの詳細な情報を入力する代わりに、yourname@banknameのようなVPA(UPI IDとも呼ばれる)を使用して送金や受け取りができる。これにより、プライバシーが向上し、入力ミスが減る。

 ・QRコード決済: 店舗などで表示されたQRコードをスキャンするだけで簡単に支払いが完了する。

 ・モバイル番号: 銀行に登録されたモバイル番号を使って送金することも可能である。

 3.高い利便性

 ・単一のアプリで様々な銀行口座にアクセスできる。

 ・送金、請求書支払い、オンラインショッピング、店舗での支払いなど、多様な用途に対応している。

 ・「プッシュ」(送金)と「プル」(集金依頼)の両方の機能に対応している。

 4.安全性とセキュリティ

 ・各取引は、ユーザーが設定する4〜6桁のUPI PINによって認証されます。
モバイル番号の認証やデバイスのトラッキングなど、複数のセキュリティ対策が講じられている。

 ・データは暗号化され、セキュアな銀行ネットワーク上でやり取りされる。

 5.低コスト/無料: ほとんどの銀行で、顧客へのUPI取引手数料は無料である。これにより、少額取引の利用が促進されている。

 6.相互運用性: ユーザーは、自分の銀行が提供するアプリだけでなく、Google Pay、PhonePe、Paytmといった様々なサードパーティ製アプリを通じてUPIを利用できる。これにより、異なる銀行や決済サービスプロバイダー間でのシームレスな取引が可能になる。

 7.経済への影響: インドのキャッシュレス経済への移行を大きく推進し、中小企業、露天商、出稼ぎ労働者など、これまで伝統的な銀行サービスへのアクセスが限られていた層にもデジタル決済の恩恵をもたらしている。

 8.国際展開: NPCIの国際部門であるNPCI International Payments Ltd(NIPL)によって、UPIはシンガポール、アラブ首長国連邦、フランスなど、他の国々でも利用が拡大している。

 UPIは、その使いやすさ、即時性、コスト効率の高さから、インドのデジタル決済において圧倒的な存在感を示しており、その成功は世界中の他の国々でも注目され、モデルとされている。

【寸評 完】

【引用・参照・底本】

Indian think tank NITI CEO's claim that India has become 4th largest economy causes doubt GT 2025.05.27
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1334917.shtml

日本が沖ノ鳥礁に基づいてEEZを主張することは国際法に違反2025年05月27日 23:32

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【概要】

 中国外務省の毛寧報道官は火曜日、沖ノ鳥礁付近の海域における中国海洋調査船の存在について問われた際、日本海上保安庁がその海域を排他的経済水域(EEZ)の一部と主張し、中国船に活動中止を要求していることに対し、以下のように述べた。

 国連海洋法条約(UNCLOS)に基づけば、沖ノ鳥は「岩」であり「島」ではないため、EEZや大陸棚を生成する権利はない。毛報道官は、日本が沖ノ鳥礁に基づいてEEZを主張することは国際法に違反すると指摘した。

 さらに、中国の科学調査船が当該海域で活動することは公海の自由を行使しているものであり、日本には干渉する権利はない、と述べた。

【詳細】 

 中国外務省報道官毛寧の発言は、沖ノ鳥礁をめぐる日本と中国の間の海洋権益に関する長年の対立を反映している。

 発言の要点は以下の通りである。

 ・沖ノ鳥礁の法的地位: 毛寧報道官は、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、沖ノ鳥は「岩」であって「島」ではないと主張した。UNCLOS第121条第3項では、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と規定されている。中国は、沖ノ鳥礁はこの「岩」に該当するため、EEZや大陸棚を生成する権利がないと主張している。


 ・日本のEEZ主張への異議: 日本は沖ノ鳥礁を「島」と位置づけ、その周辺に200海里の排他的経済水域(EEZ)を設定している。しかし、毛寧報道官は、日本が沖ノ鳥礁を根拠にEEZを主張することは国際法に違反すると明言した。これは、沖ノ鳥礁が「岩」である以上、そのような広大な海域の管轄権を持つことはできないという中国の立場を示すものである。

 ・中国調査船の活動の正当性: 日本海上保安庁が沖ノ鳥礁周辺のEEZ内での中国海洋調査船の活動に対し、活動中止を要求したことに対し、毛寧報道官は、中国の科学調査船の活動は「公海の自由」を行使しているものであり、日本には干渉する権利はないと反論した。これは、中国が沖ノ鳥礁周辺海域を日本のEEZとは認めず、公海の一部と見なしていることを意味する。公海においては、すべての国が航行の自由、上空飛行の自由、科学的調査の自由などの自由を有するとされる。

 この発言は、沖ノ鳥礁の法的地位に関する日中間の解釈の相違が、海洋調査活動における具体的な対立として現れていることを示している。日本は沖ノ鳥礁を護岸工事などによって維持し、島としての地位を確保しようとしているが、中国は一貫してその主張を否定している。この問題は、西太平洋における海洋安全保障や、各国の海洋権益に関わる重要な問題として、今後も国際社会の注目を集め続けると見られる。

【要点】 

 1.沖ノ鳥礁の法的分類
 
 ・毛寧報道官は、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、沖ノ鳥礁は「岩(rock)」であり、「島(island)」ではないと述べた。

 ・UNCLOS第121条第3項の規定に言及し、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」という国際法の原則を強調した。

 2.日本のEEZ主張への異議

 ・毛寧報道官は、日本が沖ノ鳥礁を根拠として排他的経済水域(EEZ)を主張することは国際法に違反すると指摘した。

 ・これは、沖ノ鳥礁が「岩」である以上、その周囲にEEZや大陸棚を設定する法的根拠がないという中国の立場を明確に示したものである。

 3.中国調査船の活動の正当性

 ・日本海上保安庁が、沖ノ鳥礁周辺の海域で活動する中国の海洋調査船に対し、活動中止を要求したことについて言及した。

 ・毛寧報道官は、中国の科学調査船が当該海域で活動しているのは「公海の自由」を行使しているものであり、日本には干渉する権利はないと主張した。

 ・この主張は、中国が沖ノ鳥礁周辺海域を日本のEEZとは認めず、公海の一部であると見なしていることを意味する。公海では、すべての国が自由に航行、上空飛行、科学調査などを行う権利を持つ。

【桃源寸評】💚

 沖ノ鳥礁は、その法的地位をめぐる国際的な議論の的となっており、コンクリートなどで護岸工事が施され、満潮時にも水面上に維持されるよう強化されている。

 沖ノ鳥礁の現状と国際法上の論点

 沖ノ鳥礁は、太平洋上の孤立した環礁であり、日本の最南端に位置する。自然の状態では、高潮時にはわずかな岩礁部分しか水面上に現れない、非常に小さな地形である。

 日本は、この沖ノ鳥礁を「島」と主張し、国連海洋法条約に基づいてその周囲に200海里の排他的経済水域(EEZ)および大陸棚を設定している。しかし、この主張は、多くの国、特に中国や韓国から異議を唱えられている。

 主な論点は以下の通りである。

 ・「島」と「岩」の定義: 国連海洋法条約第121条では、「島」とは「自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるもの」と定義されている。これに対し、「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と規定されている。

 ・人工的な構造物の影響: 日本は、沖ノ鳥礁が自然に存在する陸地であると主張しつつも、波による浸食から保護し、水面上に維持するために多額の費用を投じてコンクリート製の護岸や観測施設などを建設している。中国などは、こうした人工的な構造物の存在が、沖ノ鳥礁を「島」とみなす法的根拠を弱め、「岩」とみなすべきであると主張している。

 ・EEZの権利: もし沖ノ鳥礁が国際法上「岩」と判断されれば、それに由来するEEZや大陸棚を持つことはできず、その周辺の広大な海域は公海とみなされることになる。これが、中国が自国の調査船の活動を「公海の自由」として正当化する根拠となっている。

 このように、沖ノ鳥礁の法的地位に関する解釈の相違は、周辺海域の資源探査や航行の自由といった、国際的な海洋権益に直接影響を与える重要な問題となっている。

 
 「日本の強弁ではないのか」

 「日本の強弁ではないのか」という見方は、沖ノ鳥礁をめぐる国際社会、特に中国や韓国からの主な批判点であり、非常に的を射た指摘と言える。国際法の解釈、特に国連海洋法条約(UNCLOS)の「島」と「岩」の定義を巡る争点は、まさに日本の主張が国際社会で全面的に受け入れられているわけではないことを示している。

 なぜ「日本の強弁」と見なされやすいのか

 ・「島」の定義の厳格さ: UNCLOS第121条第3項は、「人間の居住又は独自の経済的生活を持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない」と明確に規定している。沖ノ鳥礁は、自然の状態では満潮時にほとんど水没し、通常の状態では人間が居住したり、独自の経済活動を維持したりすることは極めて困難な、ごく小さな岩礁である。

 ・日本は「自然に形成された陸地」であり「高潮時にも水面上にある」という「島」の主要な要件を満たすと主張している。しかし、その水面上にある部分が極めて小さく、護岸工事なしには浸食で消滅しかねない状況であるため、「実質的に人間の生活を支える島とは言えない」という反論が強い。

 ・人工的な構造物の役割: 日本は、沖ノ鳥礁の浸食を防ぎ、水面上に維持するために大規模なコンクリート製の護岸工事を実施している。これにより、一部の国は「これは自然の島とは言えず、人工的な構造物によってかろうじて維持されているに過ぎない」と批判している。

 ・国際法上、人工島や施設はEEZや大陸棚の基点とはなりえない。日本は護岸工事は「保全」目的であり、元々存在した自然の岩礁を強化しているだけだと主張しているが、その実態は「島」の要件を人工的に満たそうとする行為と見られがちである。

 ・EEZの範囲と国際社会の利益: 沖ノ鳥礁はごく小さな存在であるにもかかわらず、日本がその周囲に約40万平方キロメートルという広大なEEZを設定することは、周辺海域での漁業や海洋資源開発、科学調査などに関心を持つ他国にとっては、その自由な活動を制限されることになる。このため、沖ノ鳥礁の法的地位を「岩」と主張することで、より多くの海域を公海として利用したいという思惑が他国にはある。

 ・国際司法の判断との関連: 南シナ海における仲裁裁判所の判断(2016年)では、太平島のようなある程度の大きさを持つ島(面積0.43㎢、沖ノ鳥礁よりはるかに大きい)でさえ、その上に居住や経済生活が維持されていないという理由で「岩」と判断され、EEZを生成しないとされた。

 ・この判断は、沖ノ鳥礁のようなさらに小さな地形が「島」として認められることの困難さを示唆するものとして、中国などが日本の主張の「強弁」性を補強する根拠としている。日本は、この仲裁判断は沖ノ鳥礁には直接適用されないと主張している。

 これらの点から、日本の沖ノ鳥礁に関する主張が国際社会で広く、または異論なく受け入れられているわけではなく、多くの国からは「自国の海洋権益を最大化するための強引な解釈である」と見なされる傾向がある。

【寸評 完】

【引用・参照・底本】

Japan's EEZ claim based on Okinotori Reef violates intl law; has no right to interfere in Chinese research ship’s operation: Chinese FM GT 2025.05.27
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1334930.shtml