ラブロフ外相、OSCEでの会見内容 ― 2023年12月02日 18:59
ロシアのラブロフ外相が北マケドニアで開催されたOSCE(欧州安全保障協力機構)(註1)外相理事会の場における記者会見の要旨をまとめたものである。
EUのボレル外交安全保障上級代表と米国のブリンケン国務長官の早い退出
ラブロフ外相は、ボレルとブリンケンが彼の到着前に会場を去ったことについて、それは彼らが誠実な対話を避けていると見ている。
対話の欠如と臆病さの指摘
ラブロフ外相は、西側からの対話の不足や臆病な態度について批判しており、彼らが事実を直視し、誠実な対話を避けていると述べている。
ウクライナ紛争に関する立場
ロシアはウクライナから政治的解決に向けたシグナルを受け取っていないと主張し、特別作戦の目的について見直す理由がないとしている。
EUの状態と軍事化への言及
ロシアはEUの崩壊を望んでいないが、EU内での軍事化がNATOよりも強力であると指摘している。
OSCEの劣化に関する主張
西側諸国がOSCEを無意味にしようとしており、軍事、政治、経済、人道、人権などあらゆる面での劣化をロシアは観察していると述べている。
イスラエル・ハマス戦争に関するコメント
ラブロフ外相は、イスラエル・ハマス戦争について、ハマスを根絶するまでイスラエルはやめないという声明を耳にしているが、同時に誰も戦争法を廃止していないことを強調している。これらの発言は、ロシア外相の(註2)視点からの国際情勢に対する見解や、対話の不足に対する批判を含んでおり、特にウクライナ紛争やEU、OSCE、イスラエル・ハマス戦争に関する彼の立場を反映している。
【桃源寸評】
・EUのボレル外交安全保障上級代表や米国のブリンケン国務長官がラブロフ外相の到着前にスコピエを去ったのは、彼らが事実を手にした誠実な対話を恐れているからであり、彼らの臆病さを示している。
・ロシアは、キエフからも、またその背後にいる国々からも、政治的解決に向けた用意があるというシグナルを受け取っていない。
・ロシアは、ウクライナにおける特別作戦の既知の目的を見直す理由はないと考えている。
・ロシアはEUの崩壊を求めていないが、EUにおける軍事化は今やNATOよりも強力だ。
・西側諸国は執拗にOSCEを「無意味なもの」にしようとし続けており、ロシアは軍事、政治、経済、人道、人権などあらゆる面で劣化を観察している。
・ロシアは、ハマスを根絶するまでイスラエルはやめないという声明を耳にしているが、誰も戦争法を廃止していないことを忘れてはならない。
(以上、引用蘭のsputnik記事より。)
(註1)
OSCE(欧州安全保障協力機構)は、ヨーロッパ、北米、中央アジアの57か国が加盟する、安全保障分野で世界最大の政府間組織である。1992年以降の事務局所在地はオーストリアのウィーン。
OSCEは、1975年にヘルシンキで開催された欧州安全保障と協力に関する会議(CSCE)を母体として設立された。CSCEは、冷戦後のヨーロッパの安全保障と協力の促進を目的として、東西両陣営が参加して開催された会議であった。
OSCEは、安全保障を軍事的側面のみならず、経済、環境、人権、人道といった幅広い分野にわたって捉え、これらの分野における対話と協力を通じて、ヨーロッパの平和と安全の維持と促進を図ることを目的としている。
OSCEの主な活動は、以下のとおりである。
・政治的対話:加盟国の間での安全保障問題に関する対話と協力
・紛争予防と解決:紛争の予防と解決のための取り組み
・人権と人道:人権と人道の尊重の促進
・軍備管理と軍事透明性:軍備管理と軍事透明性の向上
・経済と環境:経済と環境の分野における協力
OSCEは、冷戦後のヨーロッパの安全保障と協力の促進に大きな役割を果たしてきた。しかし、2014年のウクライナ危機以降、ロシアと西側諸国の対立が深まり、OSCEの活動は停滞を余儀なくされている。
なお、ラブロフ外相がOSCE外相理事会で述べた「西側諸国は執拗にOSCEを「無意味なもの」にしようとし続けている」という言葉は、この状況を反映したものと考えられる。
(註2)
戦争法とは、戦争状態においてもあらゆる軍事組織が遵守するべき義務を明文化した国際法であり、狭義には交戦法規を指す。戦争法、戦時法とも言う。ここでは戦時国際法という用語を用いる。
戦時国際法は、戦時のみに適用されるわけではなく、宣戦布告されていない状態での軍事衝突であっても、あらゆる軍事組織に対し適用されるものである。戦争法の目的は、戦争の残虐性を抑止し、戦争の犠牲者を保護することにある。
戦時国際法は、大きく分けて2つの分野から構成される。
交戦法規(戦闘法規):戦闘の手段と方法を規制する法規
人道法(人道待遇法):戦争の犠牲者を保護する法規
交戦法規は、敵軍に対して過度の苦痛を与えたり、無用の殺傷行為を加えることを禁止している。また、民間人や非戦闘員の保護、捕虜の待遇、戦争犯罪の処罰などを定めている。
人道法は、戦争の犠牲者である民間人や非戦闘員、捕虜、負傷者、病人などを保護する法規である。捕虜の待遇、人道的援助、戦争犯罪の処罰などを定めている。
戦時国際法は、19世紀以降、ジュネーブ条約やハーグ条約など、多くの条約で定められている。また、国連憲章や国際人権規約などの国際法規も、戦時国際法の一部を構成している。
ラブロフ外相がOSCE外相理事会で述べた「誰も戦争法を廃止していない」という言葉は、イスラエルがハマスに対する軍事行動を正当化する際に、戦争法に反していると批判されていることを指していると考えられる。イスラエルは、ハマスがテロ組織であり、民間人を巻き込んだ攻撃を繰り返しているとして、ハマスを根絶するための軍事行動は正当であると主張している。しかし、ハマスはイスラエルの占領政策に反対する抵抗運動であり、民間人の保護を定めた戦争法に従うべきであるとの批判もある。
戦争法は、戦争の残虐性を抑止し、戦争の犠牲者を保護するために重要な役割を果たしている。しかし、戦争法の解釈や適用には、しばしば問題が生じる。今回のイスラエルとハマスの衝突のように、戦争法に反していると批判されるような軍事行動が繰り返される中で、戦争法のさらなる発展と普及が求められている。
(註はブログ作成者が参考の為に付記した。)
引用・参照・底本
ラブロフ外相記者会見の要旨 OSCE外相理事会 sputnik 2023.12.01
EUのボレル外交安全保障上級代表と米国のブリンケン国務長官の早い退出
ラブロフ外相は、ボレルとブリンケンが彼の到着前に会場を去ったことについて、それは彼らが誠実な対話を避けていると見ている。
対話の欠如と臆病さの指摘
ラブロフ外相は、西側からの対話の不足や臆病な態度について批判しており、彼らが事実を直視し、誠実な対話を避けていると述べている。
ウクライナ紛争に関する立場
ロシアはウクライナから政治的解決に向けたシグナルを受け取っていないと主張し、特別作戦の目的について見直す理由がないとしている。
EUの状態と軍事化への言及
ロシアはEUの崩壊を望んでいないが、EU内での軍事化がNATOよりも強力であると指摘している。
OSCEの劣化に関する主張
西側諸国がOSCEを無意味にしようとしており、軍事、政治、経済、人道、人権などあらゆる面での劣化をロシアは観察していると述べている。
イスラエル・ハマス戦争に関するコメント
ラブロフ外相は、イスラエル・ハマス戦争について、ハマスを根絶するまでイスラエルはやめないという声明を耳にしているが、同時に誰も戦争法を廃止していないことを強調している。これらの発言は、ロシア外相の(註2)視点からの国際情勢に対する見解や、対話の不足に対する批判を含んでおり、特にウクライナ紛争やEU、OSCE、イスラエル・ハマス戦争に関する彼の立場を反映している。
【桃源寸評】
・EUのボレル外交安全保障上級代表や米国のブリンケン国務長官がラブロフ外相の到着前にスコピエを去ったのは、彼らが事実を手にした誠実な対話を恐れているからであり、彼らの臆病さを示している。
・ロシアは、キエフからも、またその背後にいる国々からも、政治的解決に向けた用意があるというシグナルを受け取っていない。
・ロシアは、ウクライナにおける特別作戦の既知の目的を見直す理由はないと考えている。
・ロシアはEUの崩壊を求めていないが、EUにおける軍事化は今やNATOよりも強力だ。
・西側諸国は執拗にOSCEを「無意味なもの」にしようとし続けており、ロシアは軍事、政治、経済、人道、人権などあらゆる面で劣化を観察している。
・ロシアは、ハマスを根絶するまでイスラエルはやめないという声明を耳にしているが、誰も戦争法を廃止していないことを忘れてはならない。
(以上、引用蘭のsputnik記事より。)
(註1)
OSCE(欧州安全保障協力機構)は、ヨーロッパ、北米、中央アジアの57か国が加盟する、安全保障分野で世界最大の政府間組織である。1992年以降の事務局所在地はオーストリアのウィーン。
OSCEは、1975年にヘルシンキで開催された欧州安全保障と協力に関する会議(CSCE)を母体として設立された。CSCEは、冷戦後のヨーロッパの安全保障と協力の促進を目的として、東西両陣営が参加して開催された会議であった。
OSCEは、安全保障を軍事的側面のみならず、経済、環境、人権、人道といった幅広い分野にわたって捉え、これらの分野における対話と協力を通じて、ヨーロッパの平和と安全の維持と促進を図ることを目的としている。
OSCEの主な活動は、以下のとおりである。
・政治的対話:加盟国の間での安全保障問題に関する対話と協力
・紛争予防と解決:紛争の予防と解決のための取り組み
・人権と人道:人権と人道の尊重の促進
・軍備管理と軍事透明性:軍備管理と軍事透明性の向上
・経済と環境:経済と環境の分野における協力
OSCEは、冷戦後のヨーロッパの安全保障と協力の促進に大きな役割を果たしてきた。しかし、2014年のウクライナ危機以降、ロシアと西側諸国の対立が深まり、OSCEの活動は停滞を余儀なくされている。
なお、ラブロフ外相がOSCE外相理事会で述べた「西側諸国は執拗にOSCEを「無意味なもの」にしようとし続けている」という言葉は、この状況を反映したものと考えられる。
(註2)
戦争法とは、戦争状態においてもあらゆる軍事組織が遵守するべき義務を明文化した国際法であり、狭義には交戦法規を指す。戦争法、戦時法とも言う。ここでは戦時国際法という用語を用いる。
戦時国際法は、戦時のみに適用されるわけではなく、宣戦布告されていない状態での軍事衝突であっても、あらゆる軍事組織に対し適用されるものである。戦争法の目的は、戦争の残虐性を抑止し、戦争の犠牲者を保護することにある。
戦時国際法は、大きく分けて2つの分野から構成される。
交戦法規(戦闘法規):戦闘の手段と方法を規制する法規
人道法(人道待遇法):戦争の犠牲者を保護する法規
交戦法規は、敵軍に対して過度の苦痛を与えたり、無用の殺傷行為を加えることを禁止している。また、民間人や非戦闘員の保護、捕虜の待遇、戦争犯罪の処罰などを定めている。
人道法は、戦争の犠牲者である民間人や非戦闘員、捕虜、負傷者、病人などを保護する法規である。捕虜の待遇、人道的援助、戦争犯罪の処罰などを定めている。
戦時国際法は、19世紀以降、ジュネーブ条約やハーグ条約など、多くの条約で定められている。また、国連憲章や国際人権規約などの国際法規も、戦時国際法の一部を構成している。
ラブロフ外相がOSCE外相理事会で述べた「誰も戦争法を廃止していない」という言葉は、イスラエルがハマスに対する軍事行動を正当化する際に、戦争法に反していると批判されていることを指していると考えられる。イスラエルは、ハマスがテロ組織であり、民間人を巻き込んだ攻撃を繰り返しているとして、ハマスを根絶するための軍事行動は正当であると主張している。しかし、ハマスはイスラエルの占領政策に反対する抵抗運動であり、民間人の保護を定めた戦争法に従うべきであるとの批判もある。
戦争法は、戦争の残虐性を抑止し、戦争の犠牲者を保護するために重要な役割を果たしている。しかし、戦争法の解釈や適用には、しばしば問題が生じる。今回のイスラエルとハマスの衝突のように、戦争法に反していると批判されるような軍事行動が繰り返される中で、戦争法のさらなる発展と普及が求められている。
(註はブログ作成者が参考の為に付記した。)
引用・参照・底本
ラブロフ外相記者会見の要旨 OSCE外相理事会 sputnik 2023.12.01