中国国家安全部(MSS):スパイ活動事件を公表 ― 2025年05月12日 22:10
【概要】
2025年5月11日、中国国家安全部(MSS)は、ある中国人大学研究者が外国の非政府組織に機密データを提供し、その見返りとして国際的に著名な学術誌への論文掲載の機会を得ようとしたスパイ活動事件を公表した。
国家安全部によれば、近年、一部の外国組織や個人が中国の経済、公共福祉、科学技術といった重要分野を標的とした情報窃取活動を展開している。また、国内でも法治意識や国家安全意識が希薄な者が、私的利益のために機密データを国外に違法に流出させる事例が発生しており、これは国家安全に対する重大な脅威となっているとされる。
事件の概要は以下の通りである。中国国内の大学に所属する若手研究者である李(Li)氏は、自ら外国の非政府組織に接触し、国際的な学術誌への論文掲載の機会と引き換えに内部データを提供すると申し出た。国家安全部は当該事案を早期に察知し、直ちに対処措置を講じて、国家機密の安全を確保した。
李氏は、大学間の交流プログラムを通じて、Kと呼ばれる外国人学者と知り合った。Kは国外の非政府組織に所属しており、国際的に著名な学術誌との関係を有し、特別な論文掲載ルートにアクセスできるとされた。これにより、李氏はKとの共同研究に強い関心を示すようになった。
その後、李氏はKに電子メールを送り、自身の経歴および大学と企業の共同研究プロジェクトを通じて入手可能なデータ資源について説明し、共著論文を希望する旨を伝えた。Kは協力の可能性に言及したが、そのためには当該プロジェクトに関与する企業が保有する特定のデータを収集するよう要請した。
李氏はこの要請を受け入れたが、データ収集中にその情報が機密性を有し、中国国内の重要分野に関わるものであり、さらに企業側が厳格な情報管理規定を設けていたことに気付いた。李氏はこの点をKに伝えたが、Kは引き続きデータの提供を要求した。
学術的成果を追求するあまり、李氏は個人的な人脈を使って、自身の学生である張(Zhang)氏を当該企業にインターンとして送り込み、Kの要求に応じた機密データの違法な収集と分析を私的に指示した。
その後、国家安全当局は大学および企業と連携して、李氏と張氏による機密データの国外流出を阻止し、国家機密漏洩の潜在的リスクを排除したと報告している。
【詳細】
本事件は、中国国内の大学に勤務する若手研究者である李(Li)氏が、外国の非政府組織(NGO)に対し、中国企業の機密情報を提供しようとしたスパイ行為に関与したとされるものである。李氏は、自身の学術的評価を高めることを目的として、国際的に権威のある学術誌に論文を掲載する機会を得るため、国家の機密情報を外国に提供しようとした。
国家安全部によれば、李氏は大学間の国際交流プログラムを通じて、Kと称される外国人学者と接触した。このK氏は、海外の非政府組織に所属しており、いくつかの国際的学術誌の編集関係者と関係がある人物であるとされる。K氏が特別な論文掲載ルートを有しているとの情報を得たことで、李氏はK氏との共同執筆に関心を持つようになった。
その後、李氏はK氏に電子メールを送り、自らの学術的経歴や、大学と企業との産学連携プロジェクトにおいて自分が接触可能なデータ資源について説明し、論文の共著を希望する意向を表明した。これに対しK氏は、共著を検討するにあたり、産学連携プロジェクトに参加している企業が保有する特定のデータを収集して提供するよう李氏に求めた。
李氏は、K氏の求めに応じるかたちでデータ収集を開始したが、その過程で当該データが中国国内の重要分野に関わる機密性の高い情報であり、企業側においても情報管理規定により外部流出が厳しく禁じられていることを認識した。それにもかかわらず、李氏は個人的な研究業績の向上を優先し、データの提供に向けた準備を進めた。
具体的には、李氏は自身の教え子である張(Zhang)氏を、産学連携先の企業にインターンとして送り込むよう手配した。その上で、張氏に対し、K氏の指示に沿った形で機密データの収集および分析を行うよう私的に命じた。これにより、産業機密および国家機密が外国に流出する重大なリスクが生じることとなった。
国家安全部は、大学および企業と連携し、事態の全容を把握した後、速やかに介入措置を講じ、李氏および張氏による機密データの国外送信を未然に阻止した。国家安全部は、両者の行為が国家機密の漏洩につながるおそれがあったとして、そのリスクを排除したと強調している。
さらに国家安全部は、今回の事件を通じて、外国の組織や個人が中国の重要分野を標的にして諜報活動を行っている現実を明示し、国内においても一部の個人が法治意識および国家安全意識の欠如により、個人的な利益を優先して機密情報を違法に国外に持ち出す事例が存在していると警鐘を鳴らしている。
国家安全部は、引き続き国家安全に関わるリスクを排除し、情報の保護を徹底していくとしている。
【要点】
・事件の概要
中国の若手大学研究者・李氏が、外国の非政府組織(NGO)に機密データを提供しようとし、その見返りに国際的な学術誌での論文掲載機会を得ようとしたスパイ行為である。
・接触の経緯
李氏は大学間の国際交流プログラムを通じて、外国人学者K氏と知り合った。K氏は海外NGOに所属し、国際的学術誌と強い関係を持っていた。
・動機
李氏は研究業績の向上と学術的地位の確立を目的とし、K氏との共同執筆による論文掲載に強い関心を示した。
・データ提供の提案
李氏はK氏にメールを送り、自身のバックグラウンドおよび大学と企業との産学連携プロジェクトを通じて得られる内部データを提示し、共著の意欲を伝えた。
・K氏からの要求
K氏は共著を検討する条件として、特定の企業データの提供を要求した。
・李氏の対応
李氏は当該データが機密性の高いものであることを認識していたが、要請を受け入れ、提供の準備を進めた。
・張氏の関与
李氏は自身の教え子である張氏を企業にインターンとして送り込み、K氏の指示に基づいて機密データを収集・分析するよう指示した。
・機密の性質
要求された情報は国家の重要分野に関わるものであり、企業内でも厳格に管理されていた。
・当局の対応
・国家安全部は大学および企業と連携して調査を行い、李氏と張氏がデータを国外に送信する前に介入し、機密漏洩のリスクを排除した。
・安全部の見解
・事件は、外国勢力が中国の経済・科学技術・公益分野を標的にした情報窃取を行っている実態を示しており、国内の一部個人が国家安全や法治意識の欠如によりスパイ活動に加担していると警告している。
・結論
国家安全部は、国家機密保護と安全確保のための取り組みを今後も強化するとしている。
【引用・参照・底本】
State security authorities disclose espionage case involving Chinese scholar providing sensitive data in exchange for intl publication opportunities GT 2025.05.11
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1333766.shtml
2025年5月11日、中国国家安全部(MSS)は、ある中国人大学研究者が外国の非政府組織に機密データを提供し、その見返りとして国際的に著名な学術誌への論文掲載の機会を得ようとしたスパイ活動事件を公表した。
国家安全部によれば、近年、一部の外国組織や個人が中国の経済、公共福祉、科学技術といった重要分野を標的とした情報窃取活動を展開している。また、国内でも法治意識や国家安全意識が希薄な者が、私的利益のために機密データを国外に違法に流出させる事例が発生しており、これは国家安全に対する重大な脅威となっているとされる。
事件の概要は以下の通りである。中国国内の大学に所属する若手研究者である李(Li)氏は、自ら外国の非政府組織に接触し、国際的な学術誌への論文掲載の機会と引き換えに内部データを提供すると申し出た。国家安全部は当該事案を早期に察知し、直ちに対処措置を講じて、国家機密の安全を確保した。
李氏は、大学間の交流プログラムを通じて、Kと呼ばれる外国人学者と知り合った。Kは国外の非政府組織に所属しており、国際的に著名な学術誌との関係を有し、特別な論文掲載ルートにアクセスできるとされた。これにより、李氏はKとの共同研究に強い関心を示すようになった。
その後、李氏はKに電子メールを送り、自身の経歴および大学と企業の共同研究プロジェクトを通じて入手可能なデータ資源について説明し、共著論文を希望する旨を伝えた。Kは協力の可能性に言及したが、そのためには当該プロジェクトに関与する企業が保有する特定のデータを収集するよう要請した。
李氏はこの要請を受け入れたが、データ収集中にその情報が機密性を有し、中国国内の重要分野に関わるものであり、さらに企業側が厳格な情報管理規定を設けていたことに気付いた。李氏はこの点をKに伝えたが、Kは引き続きデータの提供を要求した。
学術的成果を追求するあまり、李氏は個人的な人脈を使って、自身の学生である張(Zhang)氏を当該企業にインターンとして送り込み、Kの要求に応じた機密データの違法な収集と分析を私的に指示した。
その後、国家安全当局は大学および企業と連携して、李氏と張氏による機密データの国外流出を阻止し、国家機密漏洩の潜在的リスクを排除したと報告している。
【詳細】
本事件は、中国国内の大学に勤務する若手研究者である李(Li)氏が、外国の非政府組織(NGO)に対し、中国企業の機密情報を提供しようとしたスパイ行為に関与したとされるものである。李氏は、自身の学術的評価を高めることを目的として、国際的に権威のある学術誌に論文を掲載する機会を得るため、国家の機密情報を外国に提供しようとした。
国家安全部によれば、李氏は大学間の国際交流プログラムを通じて、Kと称される外国人学者と接触した。このK氏は、海外の非政府組織に所属しており、いくつかの国際的学術誌の編集関係者と関係がある人物であるとされる。K氏が特別な論文掲載ルートを有しているとの情報を得たことで、李氏はK氏との共同執筆に関心を持つようになった。
その後、李氏はK氏に電子メールを送り、自らの学術的経歴や、大学と企業との産学連携プロジェクトにおいて自分が接触可能なデータ資源について説明し、論文の共著を希望する意向を表明した。これに対しK氏は、共著を検討するにあたり、産学連携プロジェクトに参加している企業が保有する特定のデータを収集して提供するよう李氏に求めた。
李氏は、K氏の求めに応じるかたちでデータ収集を開始したが、その過程で当該データが中国国内の重要分野に関わる機密性の高い情報であり、企業側においても情報管理規定により外部流出が厳しく禁じられていることを認識した。それにもかかわらず、李氏は個人的な研究業績の向上を優先し、データの提供に向けた準備を進めた。
具体的には、李氏は自身の教え子である張(Zhang)氏を、産学連携先の企業にインターンとして送り込むよう手配した。その上で、張氏に対し、K氏の指示に沿った形で機密データの収集および分析を行うよう私的に命じた。これにより、産業機密および国家機密が外国に流出する重大なリスクが生じることとなった。
国家安全部は、大学および企業と連携し、事態の全容を把握した後、速やかに介入措置を講じ、李氏および張氏による機密データの国外送信を未然に阻止した。国家安全部は、両者の行為が国家機密の漏洩につながるおそれがあったとして、そのリスクを排除したと強調している。
さらに国家安全部は、今回の事件を通じて、外国の組織や個人が中国の重要分野を標的にして諜報活動を行っている現実を明示し、国内においても一部の個人が法治意識および国家安全意識の欠如により、個人的な利益を優先して機密情報を違法に国外に持ち出す事例が存在していると警鐘を鳴らしている。
国家安全部は、引き続き国家安全に関わるリスクを排除し、情報の保護を徹底していくとしている。
【要点】
・事件の概要
中国の若手大学研究者・李氏が、外国の非政府組織(NGO)に機密データを提供しようとし、その見返りに国際的な学術誌での論文掲載機会を得ようとしたスパイ行為である。
・接触の経緯
李氏は大学間の国際交流プログラムを通じて、外国人学者K氏と知り合った。K氏は海外NGOに所属し、国際的学術誌と強い関係を持っていた。
・動機
李氏は研究業績の向上と学術的地位の確立を目的とし、K氏との共同執筆による論文掲載に強い関心を示した。
・データ提供の提案
李氏はK氏にメールを送り、自身のバックグラウンドおよび大学と企業との産学連携プロジェクトを通じて得られる内部データを提示し、共著の意欲を伝えた。
・K氏からの要求
K氏は共著を検討する条件として、特定の企業データの提供を要求した。
・李氏の対応
李氏は当該データが機密性の高いものであることを認識していたが、要請を受け入れ、提供の準備を進めた。
・張氏の関与
李氏は自身の教え子である張氏を企業にインターンとして送り込み、K氏の指示に基づいて機密データを収集・分析するよう指示した。
・機密の性質
要求された情報は国家の重要分野に関わるものであり、企業内でも厳格に管理されていた。
・当局の対応
・国家安全部は大学および企業と連携して調査を行い、李氏と張氏がデータを国外に送信する前に介入し、機密漏洩のリスクを排除した。
・安全部の見解
・事件は、外国勢力が中国の経済・科学技術・公益分野を標的にした情報窃取を行っている実態を示しており、国内の一部個人が国家安全や法治意識の欠如によりスパイ活動に加担していると警告している。
・結論
国家安全部は、国家機密保護と安全確保のための取り組みを今後も強化するとしている。
【引用・参照・底本】
State security authorities disclose espionage case involving Chinese scholar providing sensitive data in exchange for intl publication opportunities GT 2025.05.11
https://www.globaltimes.cn/page/202505/1333766.shtml