ウクライナ:独力で戦う準備を進める2025年03月05日 19:20

Ainovaで作成
【概要】

 2025年3月4日、デヴィッド・キリチェンコによる記事「アメリカの軍事援助削減で、ウクライナは独力で戦う準備を進める」では、ウクライナが軍事的自立に向けた取り組みを強化している様子が詳述されている。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、アメリカのトランプ前大統領とのホワイトハウスでの対立後、ウクライナがNATOに加盟できないならば、自国の領土でNATOを築く必要があると述べた。この発言は、トランプ政権がウクライナのNATO加盟を否定する意向を示していたことに反応したものであり、現在、アメリカからの全軍事援助が中止され、ロシアに対する圧力を自力でかけることの重要性が増している。

 ウクライナは2022年以降、ロシア領内への長距離攻撃能力を着実に拡大してきた。ゼレンスキー大統領は、新年の挨拶で、ウクライナが年間100万機以上のドローンを生産し、ミサイルの製造も強化していることを強調し、それらを「正義の平和のための議論」と位置付けた。

 現在、ウクライナは戦争の4年目に突入しており、長距離攻撃能力は防衛戦略の要となっている。ウクライナは自国でのミサイル生産に力を入れ、これがロシアに対する抑止力の柱となりつつある。西側の軍事支援が依然として重要である一方で、ウクライナが自らミサイルを製造する能力は、ロシアに対する経済的負担を増大させるための重要な手段となっている。

 スウェーデンは最近、ウクライナに12億ドルの軍事援助を提供し、そのうち9000万ドルをウクライナのミサイルとドローン生産に充てることを決定した。このような支援がトランプ政権による軍事援助の中断後、さらに重要な役割を果たすことになる。

 ウクライナは、ロシアのエネルギーインフラ、特に石油精製所をターゲットにした攻撃を強化しており、これによりロシアの精製能力は10%以上減少し、戦争経済に深刻な影響を与えている。さらに、ウクライナは石油輸送ハブ、爆薬工場、弾薬倉庫などにも攻撃を拡大しており、ロシア経済に対する圧力を強めている。

 ウクライナのミサイル生産の強化は、2025年末までに3000発の長距離ミサイルを製造するという目標に向かって進んでいる。ウクライナは、ドローン製造の成功に続き、精密な製造ラインと安全な製造施設を必要とするミサイル開発にも取り組んでいる。ウクライナ軍はすでに、ネプチューン(元々は対艦ミサイル)やHrim-2(ハイパーソニック弾道ミサイル)など、自国製のミサイルを実戦で使用しており、これらの進展は戦力の向上に寄与している。

 現在、ウクライナの最大の課題は、米国の軍事援助が中止された中で、独自のミサイルとドローンの生産能力をさらに拡大し、ロシアに対する戦力を維持することにある。  

【詳細】 
 
 ウクライナは、アメリカからの軍事援助が停止され、ヨーロッパからの支援も不確実な状況の中で、自国の防衛能力を強化するための戦略を積極的に進めている。特に、長距離攻撃能力を拡充し、ミサイルやドローンの国内生産を増加させることが、ウクライナの戦略における重要な柱となっている。

 ゼレンスキー大統領は、2025年2月12日に『エコノミスト』とのインタビューで、「もしNATOに招待されないのであれば、ウクライナ国内でNATOを作らなければならない」と述べた。この発言は、アメリカのトランプ政権がウクライナのNATO加盟に反対しているという背景を踏まえており、ウクライナは自国の防衛力を独自に高め、ロシアに対する抑止力を強化する必要があるというメッセージを発信している。特に、トランプ政権がウクライナへの軍事援助を完全に断つことを決定した後、ウクライナは自国の武器生産に注力することを強化している。

 ウクライナは、長距離攻撃能力を高めることで、ロシア領内の重要なインフラをターゲットにする戦術を採用している。ゼレンスキー大統領は、新年の演説で、ウクライナが年間100万機以上のドローンを生産し、ミサイル製造も強化していることを明言し、これらを「正義の平和のための議論」として位置付けた。ウクライナは、2022年から2023年にかけて、ロシア領内の石油精製所や石油輸送ハブ、弾薬倉庫などを攻撃し、ロシア経済への影響を与えている。このような攻撃は、ロシアの戦争経済に深刻な打撃を与え、特にロシアの精製能力を減少させることで、戦争維持に必要な資源を削減させている。

 ウクライナが実施したドローン攻撃は、ロシアの石油精製能力を少なくとも10%減少させ、ロシアの平均的な石油生産量を20年ぶりの低水準に押し下げるなど、ロシアの戦争経済に多大な影響を与えた。また、ウクライナはこれらの攻撃を精製所だけでなく、爆薬工場や弾薬倉庫、さらには石油の輸送インフラにも広げ、ロシアの戦争遂行能力を削減している。

 ロシア政府は、このウクライナのドローン攻撃に強く反発しており、ロシア外相セルゲイ・ラヴロフは、ウクライナのドローン攻撃がロシア経済に与える影響を強調し、ウクライナ側を非難している。しかし、ウクライナはドローン攻撃を強化し、さらなる戦術的優位性を確保しようとしている。ウクライナのドローン部隊の指揮官は、ウクライナ軍が最前線の圧力を軽減するために、物流ハブや弾薬倉庫の攻撃を優先していると説明している。

 ウクライナは、アメリカのATACMS(地上発射型長距離弾道ミサイル)や英国のストームシャドウ(巡航ミサイル)などの長距離ミサイルの供給に頼ることが困難になる中で、国内生産を強化している。ウクライナ政府は、2025年末までに3000発の長距離ミサイルを生産するという目標を掲げている。ウクライナ副首相ミハイロ・フェドロフは、2025年を「ウクライナ巡航ミサイルの年」と宣言し、この目標に対するコミットメントを強調している。

 ミサイルの製造は、ドローン製造に比べて複雑であり、精密な製造ラインと高い技術力を必要とする。ミサイル開発には、専門的な製造施設と高度なエンジニアリングが求められるため、戦時中にこれらを整備することは困難である。しかし、ウクライナはその困難にもかかわらず、独自の武器開発を進めており、ネプチューン(元々は対艦ミサイル)を地上発射型巡航ミサイルに転用し、ロシアのモスクワ号を沈めるなど、実戦で成果を上げている。また、Hrim-2(ハイパーソニック弾道ミサイル)は2024年末にテストを通過し、Peklo(「地獄」を意味するウクライナ語)という新たなミサイルドローンは、既に戦闘で使用されている。

 ウクライナはこれらの自国製武器を駆使し、ロシアに対して効果的な圧力をかけ続けており、特にドローンやミサイルを用いた攻撃は、ウクライナの戦争の主力として今後ますます重要な役割を果たすと予想されている。ウクライナが独自の防衛能力を強化し、ロシアの戦争遂行能力を削減するために、ドローンやミサイルの生産能力をさらに拡大していくことが、ウクライナの戦争戦略における重要な要素となっている。

【要点】

 ・ウクライナの戦略強化: 自国の防衛能力を高めるため、特に長距離攻撃能力やミサイル・ドローンの国内生産を強化している。

 ・ゼレンスキー大統領の発言: 2025年2月12日、『エコノミスト』とのインタビューで、「ウクライナがNATOに招待されない場合、独自にNATOを作るべき」と述べ、独立した防衛力強化の意向を示した。

 ・アメリカの支援停止後: トランプ政権がウクライナへの軍事支援を停止したため、ウクライナは自国で武器を生産し、ロシアに対抗する能力を高めている。

 ・ドローンとミサイルの攻撃: ウクライナはロシア領内の石油精製所、弾薬倉庫、インフラをターゲットにし、ロシア経済に影響を与え続けている。

 ・ドローン攻撃の効果: ドローン攻撃により、ロシアの精製能力が10%減少、石油生産が20年ぶりの低水準に。これにより、ロシアの戦争維持能力が削減されている。

 ・ウクライナの新年の演説: ゼレンスキー大統領は、年間100万機以上のドローンとミサイルの生産強化を宣言。

 ・ロシアの反応: ロシア外相セルゲイ・ラヴロフは、ウクライナの攻撃がロシア経済に与える影響を強調して非難。

 ・ウクライナのミサイル生産計画: 2025年末までに3000発の長距離ミサイル生産を目標とし、「ウクライナ巡航ミサイルの年」として製造計画を進めている。

 ・ミサイルとドローンの技術開発: ウクライナは、ネプチューン(対艦ミサイル)やHrim-2(弾道ミサイル)、Peklo(新型ミサイルドローン)など、自国製武器の開発を進め、戦闘で使用している。

 ・戦略的意図: ドローンとミサイルによる攻撃はウクライナの戦争戦略の中心となり、今後さらに重要な役割を果たすと見込まれている。

【引用・参照・底本】

With US military aid cut, Ukraine prepares to fight alone ASIA TIMES 2025.03.04
https://asiatimes.com/2025/03/developing-asia-in-a-trump-tariff-china-dumping-squeeze/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=857a031491-DAILY_04_03_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-857a031491-16242795&mc_cid=857a031491&mc_eid=69a7d1ef3c#

ロシア:イランと米国間の新たな「デタント(緊張緩和)」仲介可能性2025年03月05日 19:33

Ainovaで作成
【概要】

 ロシアがイランとアメリカの間で新たな「デタント(緊張緩和)」を仲介する可能性について述べている。具体的には、ロシアがアメリカとイランの間で関係改善を促進する役割を果たすことが、プーチン大統領の外交戦略の一環として、トランプ元大統領への報いとして行われるかもしれないという見解が示されている。

 ロシアの報道官ドミトリー・ペスコフは、ロシアが「アメリカとイランが交渉を通じてすべての問題を解決するためにできる限りのことを行う準備ができている」と述べ、プーチンの外交政策担当補佐官ユーリ・ウシャコフは、ロシアとアメリカが今後イランに関する会談を開催することで合意したと明らかにした。この発言は、トランプ元大統領が2月中旬の電話でプーチンに直接この問題を提起し、その後リヤドで両国の代表が議論を行ったという報道を受けてのものだ。

 ロシアがイランとアメリカの関係修復を試みる背景には、ロシア・アメリカ間の新たな「デタント」があり、これはトランプ元大統領の外交政策の一環として進展している。ロシアの動機は、ウクライナ紛争の解決におけるアメリカの支援に報いること、南部の周辺地域での潜在的な熱戦を回避すること、そしてアメリカ軍の焦点を自国の国境から遠ざけることにある。

 ロシアとイランは長年の戦略的パートナーシップを有しており、ロシアはその関係を活用してトランプ政権の外交政策をイラン側に伝え、真摯に交渉に臨むよう説得する立場にある。プーチンとその代表者は、アメリカ・イラン間の交渉が成功する可能性を高めるために、トランプ政権との接触経験を共有することができる。

 さらに、ロシアはイスラエルとも良好な関係を維持しており、これは過去に誤解されてきた点である。イスラエルはロシアにシリアにおける基地維持を許可するようアメリカに働きかけており、トランプ政権からロシアに対してイランとの仲介を依頼されたことを歓迎している可能性が高い。ロシアとイスラエルの関係は、リベラル・グローバリストとイデオロギー的に対立する一部のイスラエルのエリートやメディアの反対にもかかわらず、外部からの干渉を受けずにイランとアメリカの交渉が進むと予想されている。

 ロシアは5月9日の戦勝記念日パレードにイスラエルを招待しており、プーチンはその際にイスラエル首相ビビ・ネタニヤフと会談し、イラン・アメリカ間の「新しいデタント」の仲介について詳しく説明する見込みだ。この「新しいデタント」の目的には、インドとの北南輸送回廊を維持し、エネルギー計画を実行することが含まれている。

 一方、トランプ政権がイランに対して再度「最大圧力政策」を導入しているため、ロシアの仲介が重要となる。これはインドなど第三国に対する二次的制裁の脅威を含んでおり、ロシアがイラン・アメリカ間の交渉を仲介する必要がある背景となっている。また、トランプはイランと包括的な合意を結び、中国に対する戦略的転換を進めたいと考えており、プーチンはその支援を行うことができる。

 アメリカの目標は、イランに新しい核合意を結ばせ、弾道ミサイル計画を制限し、「抵抗軸」から距離を置かせることだ。その対価として段階的な制裁緩和を提案し、イスラエルやサウジアラビアの安全保障の懸念を和らげ、地域戦争のリスクを減少させることが狙いである。トランプはこの問題を解決しなければ、中国に集中することができないため、ロシアの仲介が不可欠である。

 イランの大統領マスウード・ペゼシュキアンがこの要求に応じるかどうかは不確かだが、イランの地域的な地位が弱まっていることから、交渉の可能性は高まっている。また、アメリカのエネルギー企業がイランに再進出するか、あるいはロシアとアメリカ、さらにはカタールと共に「ガスOPEC」を形成する可能性もある。

 イスラエルはイランとアメリカのどんな形でのパートナーシップにも反対するだろうが、アメリカがイランに対して合意を守らせるための圧力手段を持つことで、イランが合意を守る可能性が高まる。イランの経済的な利益が部分的にアメリカに依存するようになれば、合意を遵守する意欲も高まるだろう。

 最終的に、イラン・アメリカ間の「新しいデタント」がロシアによって仲介されれば、西部ユーラシアの地政学を大きく変革し、地政経済的な機会を開くことになる。この進展は国際関係における新しい時代の幕開けを意味し、世界のシステム転換を加速させる可能性がある。  

【詳細】 
 
 ロシアがイランとアメリカの間で新たな「デタント(緊張緩和)」を仲介する可能性について、詳細に分析している。以下に、さらに詳しく説明する。

 1. ロシアの仲介によるイラン・アメリカ間の「新しいデタント」
 
 ロシアの外交政策において、イランとアメリカの関係修復を促進することは、非常に戦略的な意味を持つ。プーチン大統領の報道官ドミトリー・ペスコフは、ロシアがアメリカとイランの交渉をサポートする意向を示し、ユーリ・ウシャコフ外交政策担当補佐官は、ロシアとアメリカが今後イラン問題に関して協議を行う予定であることを明らかにした。これらの発言は、トランプ元大統領が2月中旬の電話でプーチンに直接この問題を提起し、その後リヤドで両国の代表が議論を行ったことを背景にしている。

 この背景には、トランプ元大統領がアメリカとロシア間で新たな「デタント(緊張緩和)」を進めているという事実がある。トランプは、イランとの関係を改善するためにロシアに助けを求めており、ロシアはこれを「報い」の一環として実施する意向があると考えられる。

 2. ロシアとイランの戦略的パートナーシップ

 ロシアとイランは長年にわたり、戦略的パートナーシップを築いてきた。この関係は、特にシリア内戦や地域紛争において強化されており、ロシアとイランは共にアメリカの影響力を抑え、地域の安定を確保しようとしている。2023年1月には、ロシアとイランは戦略的パートナーシップ協定を更新し、双方の経済的・軍事的協力を強化することを確認した。

 ロシアは、イランとの関係を活かして、アメリカとの交渉を進める役割を担うことができる。プーチンは、アメリカに対してイランと誠実に交渉するよう促し、ロシアとイランの経験をシェアすることで、交渉を成功に導く可能性が高い。

 3. ロシアとイスラエルの関係

 ロシアは、イランとの強固な関係を持ちながらも、イスラエルとも良好な関係を維持している。この点は、多くの人々が誤解してきた部分であり、特にイスラエルとロシアの関係が緊張しているという誤った認識が広がっている。実際、ロシアはシリア内戦において、イスラエルとの協力を維持し、シリアでの軍事活動を調整している。イスラエルは、アメリカに対してロシアがシリアでの基地を維持する許可を求めるよう働きかけており、ロシアとイスラエルは一定の戦略的利益を共有している。

 イスラエル首相ビビ・ネタニヤフは、ロシアとの関係を重視しており、ロシアの介入によってイランとの対話が進むことに期待している。これは、イスラエルにとっても地域の安定をもたらす可能性があり、特にイランの影響力が減少することは、イスラエルの安全保障にとって重要な利点となる。

 4. ロシアの利害と目的
 
 ロシアがイランとアメリカの間で新たな「デタント」を仲介する理由は、いくつかの戦略的目的に基づいている。まず、ロシアはウクライナ紛争の解決に向けたアメリカの協力に感謝しており、その見返りとしてイランとの関係を改善する手助けをすることで、アメリカとの関係を更に強化することを望んでいる。また、ロシアの南部の周辺地域で熱戦が発生することを回避したいと考えており、そのためにはイランとアメリカの関係を改善し、地域の安定を確保する必要がある。

 ロシアは、アメリカの軍事的関心が自国の国境から遠ざかることを望んでおり、そのためにはイランとの関係改善を進め、アメリカがイランに過度に圧力をかけないようにすることが重要だと考えている。

 5. アメリカの目標とトランプの動機

 アメリカの目標は、イランに対して新しい核合意を結ばせ、弾道ミサイル計画を制限し、「抵抗軸」から距離を置かせることである。これにより、イスラエルやサウジアラビアの安全保障上の懸念を和らげ、地域戦争のリスクを減少させることが狙いだ。また、アメリカはイランに対して段階的な制裁緩和を提案することにより、イランの経済的利益をアメリカとの関係に依存させることで、合意を守らせる圧力をかけることができる。

 トランプ元大統領は、イランとの関係改善を通じて、アジアにおける中国の影響力を制限する「アジアへの再軸足」を進めようとしており、ロシアの支援が不可欠であると考えている。プーチンは、この戦略に協力することで、アメリカとの関係を強化し、ロシアの国際的な影響力を拡大することができる。

 6. イスラエルの懸念とアメリカの圧力
 
 イスラエルは、イランとのいかなる形でのパートナーシップにも反対する可能性が高いが、アメリカがイランに対して合意遵守の圧力をかける手段を持つことで、イランが合意を守る可能性が高くなる。アメリカのエネルギー企業がイランに再進出するか、ロシアとアメリカが共に「ガスOPEC」を形成する可能性もあり、これによりイランの経済が部分的にアメリカに依存することになると、イランは合意を守るインセンティブを持つことになる。

 まとめ

 ロシアがイランとアメリカの間で新たな「デタント」を仲介することで、西部ユーラシアの地政学が大きく変わり、地政経済的な機会が開かれる可能性がある。これは国際関係の新時代の幕開けとなり、世界のシステム転換を加速させ、世界の多極化が進むことを意味する。ロシアの外交的役割はますます重要になり、国際社会全体にとって利益をもたらす可能性がある。

【要点】

 ロシアがイランとアメリカの間で新たな「デタント(緊張緩和)」を仲介する可能性に関する内容を箇条書きで説明する。

 1.ロシアの仲介意向

 ・ロシアはアメリカとイランの交渉をサポートする意向を示している。
 ・プーチン大統領の報道官や外交政策担当補佐官がロシアの関与を確認。
 ・トランプ元大統領がロシアにイラン問題での協力を依頼し、その後、リヤドで議論が行われた。

 2.ロシアとイランの戦略的関係

 ・ロシアとイランはシリア内戦をはじめ、地域の安定に向けて戦略的パートナーシップを強化。
 ・両国はアメリカの影響力を抑え、共に地域の安定を図る。
 ・2023年1月に、ロシアとイランは戦略的パートナーシップ協定を更新。

 3.ロシアとイスラエルの関係

 ・ロシアはイスラエルとも良好な関係を維持しており、シリア内戦でも協力。
 ・イスラエル首相ネタニヤフは、ロシアとの関係を重視し、イランとの対話の進展を期待。

 4.ロシアの利害と目的

 ・アメリカとの関係強化とウクライナ問題における協力を得るため、イランとの関係改善を進める。
 ・ロシアはイランとアメリカの関係を改善し、地域の安定を確保したい。

 5.アメリカの目標とトランプの動機

 ・アメリカはイランとの核合意再締結と弾道ミサイル計画制限を目指す。
 ・トランプ元大統領は、アジアへの再軸足を進めるため、イランとの関係改善にロシアの支援を求める。

 6.イスラエルの懸念とアメリカの圧力

 ・イスラエルはイランとのパートナーシップに反対する可能性が高い。
 ・アメリカがイランに対して合意遵守の圧力をかけることで、イランは合意を守るインセンティブを持つ。

 7.ロシアの外交的役割

 ・ロシアは、アメリカとイラン間の「デタント」を仲介することで、国際関係における影響力を拡大する。
 ・ロシアの仲介によって、アメリカとの新たな協力関係が築かれ、地域安定への寄与が期待される。

 まとめ

 ・ロシアの仲介によって、イランとアメリカの関係が改善されると、西部ユーラシアの地政学が変わり、世界の多極化が進む可能性がある。
 ・これは、国際社会全体にとって利益をもたらし、ロシアの外交的役割がますます重要になることを意味する。

【引用・参照・底本】

Putin Might Broker An Iranian-US “New Détente” As A Reciprocal Favor To Trump
Andrew Korybko's Newsletter 2025.03.04
https://korybko.substack.com/p/putin-might-broker-an-iranian-us?utm_source=post-email-title&publication_id=835783&post_id=158426302&utm_campaign=email-post-title&isFreemail=true&r=2gkj&triedRedirect=true&utm_medium=email

世界で「百年に一度の変化」が進行2025年03月05日 19:45

Microsoft Designerで作成
【概要】

 中国の李強首相は、2025年の全国人民代表大会の開幕式で、経済成長を維持するために財政刺激策を強化する方針を示した。李首相は、世界で「百年に一度の変化」が進行しており、外部環境がますます複雑かつ厳しくなっていることを警告した。特に貿易、科学技術の分野で中国に対する影響が大きくなると指摘した。

 米国との貿易戦争が中国経済に影響を与える中、家計の需要が低迷し、負債を抱えた不動産業の問題が経済の脆弱性を高めている。これに対抗するため、中国政府は消費を促進し、経済成長を支えるための財政政策を進めている。

 消費が2025年の主要課題として技術よりも優先されることが示された。これは、以前から中国が目指していた消費主導型経済への転換を強調するものの、実際の進展には限界があると見られている。特に、消費を促進するための具体的な施策については、家計支援に関する詳細は少なく、電気自動車や家電製品の購入補助金に限られている。

 2025年の成長目標は5%で、財政赤字はGDPの4%に達する見込みである。また、超長期特別国債の発行額は2024年の1兆元から1.3兆元に増額され、地方政府は4.4兆元の特別債務を発行することが許可される。これらの措置は、米国との貿易摩擦の影響を緩和するための財政的な手段と考えられている。

 中国の家計支出はGDPの40%未満で、世界平均を20ポイント下回っている。このため、経済の成長には依然として投資と輸出が大きな役割を果たしており、内需主導の経済への転換は課題が多い。李首相は、供給と需要のギャップを埋め、地方政府の収入を増加させるための財政改革を進めることを約束している。

 貿易戦争の影響で、中国企業は米国以外の市場への依存を高めようとしており、それによる価格戦争や利益率の圧迫、貿易障壁の強化を懸念している。  

【詳細】 
 
 中国の李強首相は2025年3月5日に行った全国人民代表大会(NPC)の開幕式で、世界的な経済環境の変化に対して、財政刺激策を強化し、5%の経済成長目標を維持することを表明した。首相は「百年に一度の変化が世界で進行しており、そのペースは加速している」と警告し、特に貿易や科学技術における外部環境の影響が中国に対してより深刻な影響を及ぼす可能性があることを指摘した。

 中国経済に対する外的圧力

 中国は現在、米国との貿易戦争という長期的な圧力に直面している。アメリカのトランプ政権は関税を課し、世界的な貿易秩序に挑戦してきた。これにより、中国の広大な産業基盤が影響を受けており、特に中国の主要な輸出先である米国市場との関係が経済にとって重要な問題となっている。中国の製造業はこれに対応するため、他の輸出市場を模索しているが、これが価格競争を激化させ、利益率の低下や、他国政府が自国産業を守るためにさらなる貿易障壁を課すリスクを高めている。

 加えて、中国国内では家計の消費が弱く、特に不動産業界の問題が経済に悪影響を及ぼしている。負債の膨張した不動産セクターが経済の不安定要因となっており、これが消費者心理や投資活動に悪影響を及ぼしている。

 財政刺激と消費主導の経済成長

 李強首相は、経済成長を支えるために財政刺激策を強化し、特に消費を重視する姿勢を強調した。2025年の成長目標は5%で、これは2024年に達成した成長率と同等である。これは中国の経済が依然として輸出や投資に依存しており、内需の拡大が急務であることを反映している。

 消費の促進が最優先課題として挙げられた点は重要である。李首相は、消費を増やすための政策を強化し、特に家電製品や電気自動車の購入に対する補助金を拡充することを発表した。このような消費刺激策は、短期的には一定の効果を上げているが、長期的には中国経済全体が消費主導型経済に転換するためには、さらに深い改革が必要である。

 中国政府は過去10年以上にわたり消費主導型の経済転換を目指してきたが、実際には十分な進展を見せていない。消費者信頼感や支出意欲が低迷している中で、家計支援の具体策は限定的であり、今後も消費拡大に向けたより包括的な政策が求められる。

 財政改革と地方政府の役割

 李強首相は、地方政府の収入を増加させるための財政改革を進めることを約束した。また、政府の支出を強化するため、2025年には1.3兆元(約1790億ドル)の超長期特別国債を発行し、地方政府には4.4兆元の特別債務の発行を認めると発表した。これらの措置は、外部からの圧力に対応しつつ、内需拡大のための財政支援を強化する目的である。

 中国はまた、主要な国有銀行の再資本化のために5000億元を調達する計画を発表した。このような措置は、銀行の融資能力を高め、経済の回復を支えるために重要な役割を果たす。

 技術革新とAIの役割

 李首相の演説では、人工知能(AI)の推進に関する言及が増えており、AI技術が電気自動車、スマートフォン、ロボットなどの分野での応用を促進することが期待されている。AI技術の進展は、経済の構造転換を加速するための重要な鍵となり、特に製造業の効率化や新たな消費市場の開拓に寄与する可能性がある。

 また、2025年の政策では、AIを中心にした技術革新の支援が強調され、これにより中国の産業競争力の向上が期待されている。しかし、消費市場の活性化や生活水準の向上といった目標に対して、技術面での進展だけでは十分ではないとの指摘もある。

 経済の課題と将来の見通し

 中国の家計支出はGDPの40%未満で、これは世界平均に比べて低い水準である。これに対し、投資が依然として経済成長の主な駆動力となっている。内需主導型の経済へと転換するためには、家計支出の拡大や社会保障制度の強化が必要であり、そのための政策が求められている。

 李首相は、供給と需要のギャップを埋めるための改革を行うと約束しており、特に消費を促進するための措置が重要な課題となる。しかし、現在の政策では、消費拡大に向けた具体的な施策が不足しており、より抜本的な改革が必要である。

 貿易戦争の影響により、中国の企業は新たな市場を模索しているが、これが価格競争を激化させ、利益の圧迫や貿易障壁の強化を招く可能性がある。これに対し、中国政府は、消費の促進や技術革新を通じて経済の構造を転換し、内需に依存した成長を実現しようとしている。

【要点】

 李強首相の全国人民代表大会(NPC)開幕式での演説の主な内容を箇条書きでまとめたものです。

 1.経済成長目標: 2025年の経済成長率目標は5%に設定。2024年の成長率と同等。

 2.世界経済の変化

 ・世界経済は「百年に一度の変化」が進行中。
 ・外部環境、特に貿易や科学技術の影響が中国に深刻な影響を与える可能性。

 3.貿易と米中関係

 ・米国と野貿易戦争が続いており、外部圧力が強い。
 ・中国の製造業が影響を受け、他の輸出市場を模索中。

 4.財政刺激策

 ・消費促進と内需拡大を強化するための財政刺激策を強化。
 ・家電製品や電気自動車に対する補助金を拡充。

 5.不動産業の影響

 ・不動産業界の問題が経済に悪影響を及ぼし、消費者信頼感が低迷。

 6.地方政府への支援

 ・1.3兆元の超長期特別国債発行計画。
 ・4.4兆元の特別債務発行を地方政府に認め、支出強化。

 7.国有銀行の支援

 ・国有銀行の再資本化をために5000億元を調達し、融資能力を強化。

 8.AI技術の推進

 ・人工知能(AI)技術の発展を促進し、製造業の効率化や新しい市場の開拓を狙う。

 9.消費拡大の課題

 ・家計支出がGDPの40%未満で、世界平均に比べ低い。
 ・消費拡大のために社会保障制度や家計支援策の強化が必要。

 10.今後の課題

 ・貿易戦争や外部の圧力に対応しつつ、内需主導型経済に転換するための政策が求められる。
 ・政府は消費促進と技術革新を通じて経済の構造転換を目指す。

【引用・参照・底本】

China aims to ramp up economic growth amid changes 'unseen in a century'
FRANCE24 2025.03.05
https://www.france24.com/en/asia-pacific/20250305-china-aims-to-ramp-up-economic-growth-amid-changes-unseen-in-a-century?utm_medium=email&utm_campaign=newsletter&utm_source=f24-nl-quot-en&utm_email_send_date=%2020250305&utm_email_recipient=263407&utm_email_link=contenus&_ope=eyJndWlkIjoiYWU3N2I1MjkzZWQ3MzhmMjFlZjM2YzdkNjFmNTNiNWEifQ%3D%3D

ロシア・ミャンマー首脳会談2025年03月05日 20:36

Microsoft Designerで作成
【概要】

 2025年3月5日に行われたロシア・ミャンマー首脳会談後、プーチン大統領とミャンマーのミン・アウン・フライン首相は共同記者会見を実施した。会見での主な発言内容は以下の通りである。

 両国は友好関係の基礎に関する宣言署名から25周年を迎え、プーチン大統領はソ連がミャンマーの独立(1948年)を最初に承認した国の一つであったことを回想した。また、5月9日に開催される大祖国戦争戦勝80周年記念式典にミン・アウン・フライン首相を招待した。

 ミン・アウン・フライン首相は会談後、サマラ市にあるミサイル・宇宙センターを訪問する予定である。

 両国は以下の分野で積極的な協力を表明した。

 ・軍事、軍事技術、安全保障
 ・貿易、投資、再生可能エネルギー開発

 また、国際刑事裁判所の「破壊的な役割」に協力して対抗し、宇宙における軍拡競争を共に阻止することを確認した。

 さらに、ロシアはミャンマーにロシア文化センターとロシア正教会の教会を建設し、原発を建設して低価格で安全なエネルギーを供給する意向を示した。

 両国は、世界貿易機関(WTO)のルールに基づいた公正な多角的貿易システムの発展に尽力し、ロシアは2025年に予定されるミャンマーの総選挙の計画及び平和と安定の実現に向けた努力を支持することを表明した。  

【詳細】 
 
 2025年3月5日、ロシアのプーチン大統領とミャンマーのミン・アウン・フライン首相は、ロシア・ミャンマー首脳会談後に共同記者会見を実施した。会見では両国間の協力強化に関するさまざまな重要な発表が行われた。以下はその詳細な内容である。

 1. 友好関係の歴史と記念行事

 両国は、友好関係の基礎に関する宣言署名から25周年を迎えた。この宣言は、1990年代の初めに両国間で結ばれたものであり、それ以来両国は友好関係を深化させてきた。プーチン大統領は、ソ連がミャンマーの独立(1948年)を最初に承認した国の一つであったことに言及し、両国の長い歴史的なつながりを強調した。

 2. 5月9日の大祖国戦争戦勝80周年記念式典への招待

 プーチン大統領は、ミャンマーのミン・アウン・フライン首相を、5月9日に開催される「大祖国戦争戦勝80周年記念式典」に招待した。この式典は、第二次世界大戦におけるソビエト連邦の勝利を祝うものであり、ロシアにとっては非常に重要な国家行事である。ミャンマー首相の参加は、両国の関係をさらに深める象徴的な意味を持つ。

 3. ミャンマー首相の訪問予定

 会談後、ミン・アウン・フライン首相は、ロシアのサマラ市にあるミサイル・宇宙センターを訪問する予定である。この施設は、ロシアの軍事・宇宙開発における重要な拠点であり、ミャンマーとの軍事技術協力を深めるための一環として訪問する。

 4. 両国の協力分野

 会見では、両国がさまざまな分野で積極的に協力する意向を表明した。具体的には以下の分野での協力が強調された:

 ・軍事および軍事技術: 両国は軍事技術、軍事協力、安全保障において協力を強化する意向を示した。これには、防衛機器の交換や技術支援などが含まれると考えられる。

 ・貿易と投資: 経済協力の一環として、両国は貿易と投資分野での協力強化を表明した。これには、特にミャンマーのインフラ開発への投資や、ロシアからの技術的な支援が含まれる可能性が高い。

 ・再生可能エネルギー開発: 両国は再生可能エネルギーの開発においても協力を進めることを確認した。ロシアは、エネルギー分野での技術的な支援を行い、ミャンマーのエネルギーインフラの強化を支援する見通しである。

 5. 国際刑事裁判所への対抗

 プーチン大統領は、国際刑事裁判所(ICC)の「破壊的な役割」に対抗するため、ミャンマーと協力することを表明した。ロシアとミャンマーは、ICCが行う可能性のある不当な介入に対抗するため、共闘する意向を示した。

 6. 宇宙における軍拡競争の阻止

 両国は、宇宙における軍拡競争を阻止するために協力することを確認した。これには、宇宙空間での軍事的な対立や競争を避け、平和的な利用に重点を置いた協力が含まれる。

 7. ロシア文化センターとロシア正教会の教会建設

 ロシアは、ミャンマーにロシア文化センターとロシア正教会の教会を建設する計画を発表した。これにより、両国の文化交流を促進し、ロシア正教会の信者に対する支援を強化する狙いがある。

 8. 原子力発電所の建設

 ロシアは、ミャンマーに原子力発電所を建設する意向を表明した。この発電所は、ミャンマーに低価格で安全なエネルギーを提供することを目的としている。ロシアは、原子力技術において長い経験を持ち、それをミャンマーのエネルギー需要の拡大に活用することを目指している。

 9. 公正な多角的貿易システムの発展

 両国は、世界貿易機関(WTO)のルールに基づいた公正な貿易システムを発展させることを目指して協力することを確認した。この協力は、国際貿易における公平性を保つために重要な取り組みであり、特に発展途上国にとってはメリットが大きい。

 10. ミャンマー総選挙と平和・安定の支援

 ロシアは、2025年に行われるミャンマーの総選挙に対して支持を表明した。ロシアは、ミャンマーが平和と安定を達成するための努力を支援し、選挙が公正かつ平和的に行われることを期待している。

 これらの発表から、両国は経済、軍事、文化、エネルギー分野など多岐にわたる協力を進める意向を強く示した。

【要点】

 ・友好関係の歴史: 両国は友好関係の基礎に関する宣言署名から25周年を迎え、ソ連がミャンマーの独立(1948年)を最初に承認した国の一つであったことに言及。

 ・大祖国戦争戦勝80周年記念式典: プーチン大統領はミン・アウン・フライン首相を5月9日の戦勝80周年記念式典に招待。

 ・ミャンマー首相の訪問予定: ミン・アウン・フライン首相は、サマラ市のミサイル・宇宙センターを訪問予定。

 ・協力分野

  ⇨ 軍事・軍事技術: 防衛技術や安全保障分野での協力強化。
  ⇨ 貿易・投資: 経済協力と貿易の強化。
  ⇨ 再生可能エネルギー: エネルギー分野での協力。

 ・国際刑事裁判所(ICC)への対抗: ICCの「破壊的な役割」に協力して対抗することを表明。

 ・宇宙における軍拡競争の阻止: 宇宙での軍拡競争を防ぐために協力。

 ・ロシア文化センターとロシア正教会の教会建設: ミャンマーにロシア文化センターとロシア正教会の教会を建設する計画。

 ・原子力発電所の建設: ロシアはミャンマーに原子力発電所を建設し、安全で低価格なエネルギーを提供する。

 ・公正な多角的貿易システム: WTOルールに基づく公正な貿易システムの発展を支援。

 ・ミャンマー総選挙と平和・安定の支援: 2025年の総選挙に向けた支援と平和・安定の実現に向けた協力。

【引用・参照・底本】

ロシア・ミャンマー首脳会談、共同記者会見のまとめ
sputnik 日本 2025.03.05
https://sputniknews.jp/20250305/19622152.html

トランプ:アラスカにおける日韓とのエネルギー協力について言及2025年03月05日 20:55

Microsoft Designerで作成
【概要】

 2025年3月5日、トランプ大統領は施政方針演説で、アラスカにおける日韓とのエネルギー協力について言及した。大統領は、「我が政権はまた、アラスカで世界最大級の巨大な天然ガスパイプラインの建設にも取り組んでおり、日本、韓国、その他の国々が我々のパートナーになりたいと考えている」と述べた。これにより、米国はアラスカでのエネルギー資源開発を強化し、国際的なエネルギー協力の枠組みを拡大する意向を示した。  

【詳細】 
 
 トランプ大統領は2025年3月5日の施政方針演説において、アラスカでのエネルギー協力について詳述した。この発言では、アラスカでの天然ガスパイプライン建設に焦点を当てている。このパイプラインは、世界最大級の規模を誇るとされ、米国のエネルギーインフラの重要な一部を形成する予定である。

 大統領は、アラスカのエネルギー資源の開発が、米国のエネルギー供給能力を強化し、同時に日本や韓国、さらには他国とのパートナーシップを促進することを期待していると述べた。日本や韓国は、エネルギー資源の安定供給に対する需要が高いため、米国との協力を望んでおり、このパイプラインを通じて双方のエネルギー安全保障が強化されるとされている。

 具体的には、アラスカから輸送される天然ガスが日本や韓国などのアジア市場に供給される可能性がある。この協力により、米国はエネルギー輸出の拡大を目指し、同時にアジア市場における影響力を高めることができると期待されている。また、このプロジェクトは、米国がエネルギー生産国としての地位をさらに強固にし、グローバルなエネルギー市場での競争力を向上させることを目的としている。

 トランプ大統領の発言は、米国が自国のエネルギー資源を最大限に活用し、重要な国際的パートナーとの協力を深化させる姿勢を示すものであり、エネルギー安全保障の観点からも重要な意味を持っている。

【要点】

 ・トランプ大統領は2025年3月5日の施政方針演説で、アラスカでのエネルギー協力について言及。
 ・アラスカにおける天然ガスパイプラインの建設を進めており、このパイプラインは世界最大級の規模を誇る。
 ・米国は日本、韓国、その他の国々とのパートナーシップを強化したいと述べた。
日本や韓国はエネルギー資源の安定供給に関心があり、このパイプラインを通じて米国との協力を進めたいと考えている。
 ・アラスカから輸送される天然ガスが日本や韓国に供給される可能性があり、両国のエネルギー安全保障が強化される。
 ・米国はエネルギー輸出の拡大を目指し、アジア市場での影響力を高めることを期待。
 ・米国のエネルギー生産国としての地位を強化し、グローバルなエネルギー市場での競争力を向上させる目的がある。

【参考】

 ☞ アラスカには豊富な地下資源が存在しており、その採掘は米国のエネルギー供給において重要な役割を果たしている。主要な地下資源とその採算性については以下の通りである。

 1. 石油

 ・主要な資源:アラスカは、特に北部のプルドー湾(Prudhoe Bay)地域に豊富な石油埋蔵量を有している。この地域は米国で最大の陸上油田の一つであり、アラスカの石油生産の約80%を占めている。

 ・採算性:石油採掘のコストは比較的高いが、技術革新と高い市場価格に支えられ、採算は取れている。ただし、採掘可能な油田は年々減少しており、採掘のコスト削減と新たな油田の発見が求められている。

 2. 天然ガス

 ・主要な資源:アラスカには大量の天然ガスも埋蔵されており、特にプルドー湾と周辺地域には大規模なガス田がある。アラスカは米国最大の天然ガス埋蔵地を有しており、その開発はエネルギー供給の一環として注目されている。
 ・採算性:天然ガスの採掘コストは高いが、パイプラインの整備やLNG(液化天然ガス)の輸出インフラの整備により、アラスカからのガス輸出の採算性が向上している。特にアジア市場における需要の高まりが採算性向上の鍵となる。

 3. 鉱鉱資源

 ・主要な資源:アラスカは金、銀、銅、亜鉛、鉛などの鉱鉱資源にも恵まれている。これらの資源は主に州南部や内陸部に分布しており、特に金鉱山の採掘が行われている。
 ・採算性:鉱鉱の採掘は採掘コストが安定しており、金属価格が高騰すれば採算性が向上する。金鉱山は特に有望であり、世界的な金需要の増加が採算性を支えている。

 4. 石炭

 ・主要な資源:アラスカには石炭も豊富に存在し、主に州南部で採掘されている。石炭は米国のエネルギー源として使用されており、輸出先としても利用される。
 ・採算性:石炭の採掘は他のエネルギー源に比べて採掘コストが低いが、現在の石炭市場は低迷しているため、採算性には挑戦が伴う。環境規制や再生可能エネルギーの普及も影響を及ぼしている。

 5. 希少金属

 ・主要な資源:アラスカはまた、リチウムやコバルトなどの希少金属の埋蔵が期待されている地域でもある。これらの金属は、特に電池技術や再生可能エネルギーに関連する需要が増している。
 ・採算性:希少金属の採掘はまだ初期段階にあるが、将来的な需要の高まりにより採算性が高まる可能性がある。
 
 採算性に関する課題

 ・採掘コストの高さ:アラスカの過酷な気候や地理的な条件、交通インフラの整備が不十分な地域が多いため、採掘コストは他の地域に比べて高い。
 ・環境規制と社会的課題:環境保護の観点から、採掘活動に対する規制が厳しく、社会的な反発もある。これが採算性に影響を及ぼす可能性がある。
 ・市場の変動:石油や天然ガス、鉱鉱資源などの価格は国際市場に左右されるため、市場の変動によって採算性が不安定になることがある。
 ・アラスカの地下資源は豊富であり、特にエネルギー資源に関しては高い潜在能力を持っているが、採掘のコストや環境規制、国際市場の影響が採算性に大きな影響を与える。

【参考はブログ作成者が付記】

【引用・参照・底本】

米国はアラスカで日韓とエネルギー協力=トランプ大統領 sputnik 日本 2025.03.05
https://sputniknews.jp/20250305/19621597.html