韓国:KTSSMの設計と機能2025年02月22日 20:47

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【概要】

 韓国の新型ミサイルKTSSMは、地下にある北朝鮮の砲兵陣地を破壊する能力を持つ一方で、韓国が将来的に独自の核抑止力を持つ可能性を高めるものとされている。

 KTSSMは、韓国の戦略的抑止力を強化する役割を果たすとともに、従来型と核兵器の役割の境界をあいまいにする可能性を示唆している。2025年2月、韓国はこのミサイルを配備し、北朝鮮の長距離砲兵、特にソウルを射程に収める砲兵部隊への精密攻撃能力を強化した。

 KTSSMは、180キロメートルの射程を持ち、北朝鮮の地下砲兵陣地を標的にした精密攻撃を迅速に行うことができる。このミサイルは、韓国軍に圧倒的な攻撃能力を提供し、緊急時には敵の陣地を破壊する能力を有すると韓国合同参謀本部は強調している。

 KTSSMは、2010年の延坪島砲撃を契機に開発が進められた。このミサイルは、米軍の戦術ミサイルシステム(ATACMS)に似た、比較的手頃な価格で精度の高い弾道ミサイルシステムであるが、射程が短い分、精度は向上している。KTSSMには、北朝鮮のM1978/M1989コクサン170mm砲やM1985/M1991 240mm多連装ロケットランチャー(MRL)を対象とするKTSSM-1と、KN-09 300mm多連装ロケットランチャー(MRL)やKN-02短距離弾道ミサイル(SRBM)をターゲットとする自走型のKTSSM-2の2種類がある。

 KTSSMの配備は、北朝鮮の硬化砲兵陣地(HARTS)という脅威に対応するためのものだ。これらの砲兵は、山岳地帯に隠されており、攻撃後に素早く隠れることができるため、韓国にとって大きな脅威となっている。特に、北朝鮮が韓国の主要都市に対して行う可能性のある砲撃は、韓国社会や経済に壊滅的な影響を与える可能性があるとされている。

 一方で、韓国が核兵器を保持する選択肢を取らない理由について、米国の核抑止力への依存が続いている状況がある。しかし、韓国はその抑止力が限られていることを認識し、従来型兵器のKTSSMのようなシステムに投資している。これは、米国による核抑止が必ずしも韓国の即時的な戦術的ニーズに対応できるわけではないためであり、非核的な抑止力の重要性を再認識させるものである。

 韓国の長期的な戦略は、米国からの依存度を減らし、独自の戦略的自主性を確立することにあるとされ、KTSSMのようなミサイルシステムは、核兵器の開発に向けた準備としての側面も持つ可能性がある。KTSSMの配備は、韓国が米国の核の傘の下でありながら、依然として独自の防衛能力を高める方向に進んでいることを示している。

【詳細】

 韓国の新型ミサイルであるKTSSM(Korean Tactical Surface-to-Surface Missile)は、従来型兵器としての抑止力を強化するだけでなく、将来的に韓国が独自の核抑止力を持つための基盤を作る可能性があると考えられている。このミサイルは、北朝鮮が持つ地下に隠された砲兵陣地を標的にし、精密な攻撃を行うことができるため、韓国にとって重要な戦略的資産となっている。

 KTSSMの設計と機能

 KTSSMは、180kmの射程を持ち、韓国の首都ソウル近郊に位置する北朝鮮の長距離砲兵陣地を狙った精密攻撃を迅速に行うことができる。このミサイルは、短期間で複数の標的に対して精密攻撃を行う能力を有しており、北朝鮮の砲兵が韓国の主要都市を攻撃するリスクを軽減するために重要な役割を果たす。

 KTSSMには、KTSSM-1とKTSSM-2の2種類が存在し、前者は170mmや240mmの多連装ロケットランチャー(MRL)を対象としており、後者はより大きなKN-09 300mm多連装ロケットランチャーやKN-02短距離弾道ミサイル(SRBM)をターゲットとする自走型システムである。これにより、KTSSMは北朝鮮の多様な兵器システムに対応できる柔軟性を持つ。

 北朝鮮の砲兵と韓国への脅威

 北朝鮮は、DMZ(非武装地帯)の北側に山岳地帯を利用して多くの砲兵陣地を配置しており、これらの砲兵は山から発射した後、すぐに撤退することができるため、攻撃後の反撃が難しい。そのため、韓国にとって、北朝鮮の砲兵部隊の存在は大きな脅威となっている。北朝鮮が数千門の砲兵を所有し、そのほとんどが韓国の主要都市を射程に収めるため、もしこれらが発砲した場合、韓国に甚大な被害を及ぼす可能性がある。

 RAND Corporationの報告によると、北朝鮮の砲兵が1時間にわたって攻撃した場合、韓国では10万人以上の死者が出る恐れがあり、工業施設に対する攻撃は経済的に壊滅的な影響を与える可能性がある。しかし、韓国の軍事専門家は、北朝鮮の砲兵の精度に限界があると指摘しており、過大評価すべきではないとの見解もある。実際、2010年の延坪島砲撃では、北朝鮮が発射した400発のうち、実際に目標に命中したのは80発に過ぎなかったというデータがある。

 韓国の核抑止力とKTSSMの役割
 
 韓国は、現在も米国の核の傘の下にあり、北朝鮮に対する抑止力として米国の核兵器を利用している。しかし、米国の核抑止が必ずしも韓国の戦術的ニーズに即しているわけではなく、特に北朝鮮の挑発行動に対して迅速かつ適切に対応できない可能性がある。このため、韓国は独自の抑止力を強化する必要性を感じており、KTSSMのような高度な従来型兵器の開発が進められている。

 また、韓国は核兵器の保有に関しても独自の戦略を模索しており、KTSSMの開発はその一環として位置づけられている。KTSSMのようなミサイルシステムは、将来的に核兵器を搭載することができるため、韓国は現在の状況を基に、独自の核抑止力を構築するための準備を進めていると見られる。韓国がこのような戦略を取る背景には、米国の核抑止力が必ずしも信頼できないという不安があり、特に北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)がアメリカ本土を射程に収める状況では、韓国がアメリカに依存し続けることに対する疑念が高まっている。

 韓国の戦略的自主性とKTSSM

 KTSSMの開発は、韓国が米国の核の傘から徐々に独立し、戦略的自主性を高めるための重要なステップと位置づけられている。現在、韓国は米国との軍事同盟を維持しながらも、独自の防衛力強化を目指している。KTSSMの配備は、韓国が北朝鮮の軍事的脅威に対して迅速かつ効果的に対応できる能力を持つことを意味しており、将来的には必要に応じて核兵器を開発するための基盤を築いていると考えられる。

 このような技術的な発展は、韓国が自らの安全保障環境に柔軟に対応できるようになるための重要な一歩であり、長期的には独立した核抑止力を持つ道を開くものとされている。KTSSMの導入は、韓国の防衛戦略における重要な転換点を示すものであり、その戦略的意義は単なる従来型兵器の開発にとどまらず、未来の核戦略にも深く関わっている。
 
【要点】

 1.KTSSM(Korean Tactical Surface-to-Surface Missile)は、韓国が開発した新型ミサイルで、主に北朝鮮の砲兵陣地を精密攻撃することを目的としている。

 2.KTSSMの特徴

 ・180kmの射程を持ち、ソウル近郊の北朝鮮の砲兵陣地を狙う。
 ・複数の標的に迅速に精密攻撃を行う能力がある。
 ・KTSSM-1は170mmや240mmの多連装ロケットランチャーを、KTSSM-2はより大型のKN-09ロケットランチャーやKN-02短距離弾道ミサイルをターゲットにする。

 3.北朝鮮の砲兵による脅威

 ・北朝鮮はDMZ北側に山岳地帯を利用した砲兵陣地を多く配置。
 ・北朝鮮の砲兵は、韓国の主要都市を射程に収めており、発砲すれば甚大な被害を及ぼす恐れがある。
 ・2010年の延坪島砲撃では精度の限界も見られたが、依然として脅威。

 4.KTSSMと韓国の核抑止力

 ・韓国は米国の核の傘の下にあるが、独自の核抑止力を高めるための準備が進められている。
 ・KTSSMは将来的に核兵器を搭載できる可能性があり、韓国の核抑止力の基盤を作る役割を果たす。
 
 5.戦略的自主性の強化

 ・KTSSMの開発は、米国に依存せず独自の防衛力を強化するための一環。
 ・韓国は、米国との同盟を維持しつつ、独自の核戦略を構築し、戦略的自主性を高めることを目指している。

 6.KTSSMの長期的意義

 ・KTSSMの導入は、韓国が北朝鮮の脅威に対して迅速かつ効果的に対応する能力を向上させる。
 ・最終的には、韓国が独自の核抑止力を持つ道を開くための重要なステップとなる。

【引用・参照・底本】

S Korea’s new missile both bunker buster and nuclear hedge ASIATIMES 2025.02.21
https://asiatimes.com/2025/02/s-koreas-new-missile-both-bunker-buster-and-nuclear-hedge/?utm_source=The+Daily+Report&utm_campaign=043a5e41e7-DAILY_21_02_2025&utm_medium=email&utm_term=0_1f8bca137f-043a5e41e7-16242795&mc_cid=043a5e41e7&mc_eid=69a7d1ef3c

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