北緒戦:ロシアとの軍事協力の影響が見られない経済データ ― 2025年02月05日 22:08
【概要】
2025年1月22日から23日にかけて、北朝鮮の最高人民会議(SPA)が平壌で開催された。本会議では、経済政策や予算編成に関する報告が行われたが、特筆すべき点として以下の二つが挙げられる。
第一に、北朝鮮の首相が内閣全体を代表して「憲法に忠実であり、党と人民の期待に応える」ことを誓う異例の宣誓を行ったことである。これまでに例がなく、その背景には重要な国内事情があると考えられる。会議の数日後、金正恩が温泉(オンチョン)郡の幹部を厳しく批判したこととも関連がある可能性がある。2025年に予定される朝鮮労働党第9回大会において、さらなる詳細が明らかになる可能性がある。
第二に、北朝鮮がロシアに対して行っている軍事協力が、公式な経済データや予算編成に顕著な影響を及ぼしていない点である。西側報道では、北朝鮮がロシアに武器を供給し、労働者を派遣することで多額の収益を得ていると報じられているが、2025年の国家予算における収入見通しは2%増にとどまっている。貿易データにおいても、大幅な変化は確認されていない。
その他、会議では以下の点が強調された。
・経済発展の推進
「持続的発展」などの表現が用いられ、農村経済の発展、インフラ整備、森林再生などに重点が置かれた。これらの政策は、1960~70年代の韓国の開発政策を想起させる。
・計画経済の維持
国家が経済を一元管理し、内閣の決定や指示にすべての部門が従うべきであると強調された。市場経済的な要素を縮小し、国家統制を強化する方針が続いていることが示唆される。
・党の重要行事の強調
2025年に迎える朝鮮労働党創立80周年と、第9回党大会が重要な政治的・思想的な節目として言及された。特に第9回党大会は通常の5年周期(2026年開催予定)よりも前倒しされる可能性がある。
・AIや貿易政策への言及の欠如
過去の会議では言及されていた人工知能(AI)や貿易に関する政策が今回の報道では取り上げられなかった。これは、技術革新や対外経済政策の優先度が低下していることを示唆する。
・対南・対米言及の欠如
2023年末以降の南北関係の変化や、新たに就任した米国大統領に関する言及はなかった。通常、SPAでは国際情勢についても触れられることがあるが、今回は経済関連の報告に集中した形となった。
・問題点の抽象的な表現
これまで具体的に言及されてきた制裁や自然災害についての言及はなく、「多くの障害や困難」といった抽象的な表現にとどまった。
首相の宣誓について
首相の朴泰成(Pak Thae Song)が全閣僚を代表して誓約を行ったことは、異例の事態である。その内容は以下の三点に分けられる。
1.宣誓自体が異例である点
これまでに同様の誓約が行われた記録はなく、その背景に重大な要因があると考えられる。
2.憲法への忠誠の強調
「憲法に忠実である」との表現が特に強調されており、これは韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が2024年12月3日に戒厳令を宣言したことと対比される可能性がある。韓国ではこの行為が憲法違反と指摘されており、北朝鮮があえて憲法遵守を強調したのは、南北対立の一環と考えられる。
3.国家統制の強化
経済政策を国家の「統一的指導と戦略的管理のもとに置く」と明言されており、経済分権化の流れを完全に逆行させる方針が継続していることが示された。
「ロシア効果」の欠如
北朝鮮がロシアと軍事協力を進めているにもかかわらず、経済データに目立った影響が表れていない点が注目される。国家予算の伸び率は2024年に4%増加したものの、2025年の収入見通しは2%増にとどまり、大幅な経済成長を示すものではない。
また、貿易統計(2023年までのデータ)を見ても、ロシアとの貿易による急激な増加は確認されていない。特に北朝鮮の輸入額が30億ドル未満と依然として低水準であり、大規模な外貨流入があれば貿易統計にも顕著な変化が見られるはずである。しかし、現状ではそのような兆候は見られない。
一方、韓国の武器輸出は2024年に230億ドル規模に達し、経済に大きな影響を与えている。これと比較すると、北朝鮮がロシアとの取引で得ている利益は限定的である可能性が高い。
まとめ
今回の最高人民会議では、異例の首相の誓約と、ロシアとの軍事協力の影響が経済データに表れていない点が特に注目された。経済政策においては、計画経済の維持と国家統制の強化が再確認され、対外関係についての言及は控えられた。今後、朝鮮労働党第9回大会が開催される可能性が高く、さらなる動向が注視される。
【詳細】
2025年1月22日から23日にかけて、北朝鮮の最高人民会議(SPA)が平壌で開催され、同会議では経済政策や予算編成に関する重要な報告が行われた。特に注目されたのは、以下の三つの要点である。
1. 首相の異例の宣誓
2025年のSPAで最も注目された出来事は、首相の朴泰成(パク・テソン)が内閣全体を代表して「憲法に忠実であり、党と人民の期待に応える」ことを誓う異例の宣誓を行った点である。この宣誓自体が非常に異例であり、これまでに同様の宣誓が行われた記録はない。そのため、この行為には重大な背景があると考えられる。
宣誓の中で強調された「憲法に忠実である」との表現は、特に注目に値する。これは韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が2024年12月3日に戒厳令を宣言したことに対する対抗措置としての意味を持つ可能性がある。韓国では戒厳令が憲法違反とされ、国際的な議論を呼んでいるが、北朝鮮があえて憲法遵守を強調することで、自国の政治体制の安定性や法的基盤の正当性をアピールしていると見ることができる。また、この宣誓が行われたタイミングから、国内政治における緊張や不安定性を抑えるための意図があることも考えられる。
さらに、この誓約の一環として、経済政策における「国家統制の強化」が言及された。具体的には、全ての部門は内閣の決定に従い、党と人民の利益にかなった形で経済を運営するべきだという方針が強調された。これにより、北朝鮮が掲げる「計画経済」の維持と、国の統一的な経済管理がさらに進められることが予想される。
2. ロシアとの軍事協力の影響
北朝鮮は、ロシアとの軍事協力を強化していると報じられており、特にロシアが北朝鮮に対して武器や兵器の供給を求めているとの情報が流れている。また、北朝鮮は労働者をロシアに派遣しており、これにより一定の外貨収入を得ているとも伝えられている。しかし、2025年の国家予算における収入見通しは、わずか2%増にとどまっており、ロシアとの軍事協力が予想されるような大規模な経済的影響を及ぼしていないことが確認されている。
貿易データにおいても、北朝鮮のロシアとの貿易額は急激に増加していない。特に、北朝鮮の輸入額は30億ドル未満にとどまっており、ロシアとの貿易による急激な増収がないことが示されている。もし、ロシアとの軍事協力が予想以上に影響を及ぼしているのであれば、その効果が貿易統計に反映されるべきだが、現状ではその兆候は見られない。
また、北朝鮮がロシアに対して兵器供給を行う一方で、ロシア経済の厳しい状況も影響している可能性がある。ロシアは制裁を受けており、そのために自国の軍需品や兵器の供給に制限がかかっている。そのため、北朝鮮にとっても大きな利益を得ることが難しく、相互の経済的な恩恵は限られていると考えられる。
3. 経済発展政策の継続
北朝鮮の経済政策については、引き続き国家統制を強化する方向性が示された。特に、「持続的発展」という言葉が強調され、農村経済の発展やインフラ整備、森林再生などが重要な課題として挙げられた。これらの政策は、1960~70年代の韓国の開発政策に似た構図を持つものであり、政府が指導的な役割を果たすことで経済を発展させようとする意図が見て取れる。
北朝鮮の経済政策は依然として「計画経済」に依存しており、市場経済的な要素が縮小している。内閣の決定や指示に従い、国家が経済活動を一元管理する形態が強化されると予想される。このような方針は、国家が労働力や資源を集中的に管理し、特定の産業分野に資源を集中させることを意味する。
さらに、北朝鮮が自国の経済発展において「外部依存」を減らし、内需の拡大や自給自足を目指す方針を強化していることも示唆されている。これには、外部からの制裁に依存せず、内部資源を最大限に活用するという意図があると考えられる。
4. 朝鮮労働党創立80周年と第9回党大会
2025年には、朝鮮労働党創立80周年を迎えるとともに、第9回党大会も開催される予定である。この党大会は、国内政治において重要な役割を果たし、政策の方向性や指導部の決定が発表される場である。北朝鮮はこの機会を利用して、国内外に向けて自国の経済政策や政治体制の正当性を強調することが予想される。
第9回党大会は、通常の5年周期(2026年開催予定)よりも前倒しされる可能性があり、その詳細が注目されている。特に、金正恩の指導体制の確立や、経済政策における新たな方針が示されることが期待される。
5. 外交政策の言及の欠如
今回のSPAでは、外部との外交関係や国際情勢についての言及はほとんどなかった。特に、南北関係や米国との関係についての言及がなかった点が注目される。これは、北朝鮮が内政に集中しており、外部への対応を後回しにしていることを示している。北朝鮮は、現在の国内情勢において安定を求めており、外部との摩擦を避けるために外交的な言及を控えた可能性がある。
また、南北関係についても、特に新たな進展がないことが確認された。韓国との関係においては、北朝鮮が積極的な外交を行うよりも、内政の安定に力を入れている状況である。
まとめ
2025年1月の最高人民会議では、首相による異例の宣誓と、ロシアとの軍事協力の影響が見られない経済データ、そして計画経済の維持が強調された。北朝鮮は今後も国家統制を強化し、国内の経済発展を推進する方針を示している。また、外交に関しては、特に南北関係や米国との関係についての新たな進展は確認されていない。今後、朝鮮労働党創立80周年を迎え、第9回党大会での新たな方針が発表されることが注目される。
【要点】
2025年1月22日から23日に開催された北朝鮮の最高人民会議(SPA)に関する主要なポイントを箇条書きで説明したものである。
1.首相の異例の宣誓
・朴泰成(パク・テソン)が「憲法に忠実であり、党と人民の期待に応える」ことを誓う宣誓を行う。
・韓国の戒厳令に対する対抗措置として、憲法遵守が強調される。
・経済政策における国家統制強化が言及され、計画経済の維持が示される。
2.ロシアとの軍事協力の影響
・ロシアとの兵器供給や労働者派遣が行われるが、貿易額は30億ドル未満と急激な増収は見られない。
・ロシア経済の制裁や厳しい状況が影響し、経済効果は限定的。
3.経済発展政策の継続
・「持続的発展」が強調され、農村経済やインフラ整備が重点課題として挙げられる。
・国家統制強化と計画経済維持が継続される。
4.朝鮮労働党創立80周年と第9回党大会
・2025年に朝鮮労働党創立80周年を迎え、第9回党大会が開催される予定。
・党大会で金正恩指導体制の強化や新たな経済政策が発表されることが期待される。
5.外交政策の言及なし
・南北関係や米国との関係についての言及がなく、外交的な進展は見られない。
・内政安定が優先され、外部との摩擦を避ける方針。
6.総括
・北朝鮮は国内の政治体制の安定と経済発展を優先し、外部との関係は後回しにしている。
【引用・参照・底本】
The January 2025 Session of the North Korean Parliament: An Unusual Oath and the Absence of a “Russia-Effect”38NORTH 2025.01.31
https://www.38north.org/2025/01/the-january-2025-session-of-the-north-korean-parliament-an-unusual-oath-and-the-absence-of-a-russia-effect/
2025年1月22日から23日にかけて、北朝鮮の最高人民会議(SPA)が平壌で開催された。本会議では、経済政策や予算編成に関する報告が行われたが、特筆すべき点として以下の二つが挙げられる。
第一に、北朝鮮の首相が内閣全体を代表して「憲法に忠実であり、党と人民の期待に応える」ことを誓う異例の宣誓を行ったことである。これまでに例がなく、その背景には重要な国内事情があると考えられる。会議の数日後、金正恩が温泉(オンチョン)郡の幹部を厳しく批判したこととも関連がある可能性がある。2025年に予定される朝鮮労働党第9回大会において、さらなる詳細が明らかになる可能性がある。
第二に、北朝鮮がロシアに対して行っている軍事協力が、公式な経済データや予算編成に顕著な影響を及ぼしていない点である。西側報道では、北朝鮮がロシアに武器を供給し、労働者を派遣することで多額の収益を得ていると報じられているが、2025年の国家予算における収入見通しは2%増にとどまっている。貿易データにおいても、大幅な変化は確認されていない。
その他、会議では以下の点が強調された。
・経済発展の推進
「持続的発展」などの表現が用いられ、農村経済の発展、インフラ整備、森林再生などに重点が置かれた。これらの政策は、1960~70年代の韓国の開発政策を想起させる。
・計画経済の維持
国家が経済を一元管理し、内閣の決定や指示にすべての部門が従うべきであると強調された。市場経済的な要素を縮小し、国家統制を強化する方針が続いていることが示唆される。
・党の重要行事の強調
2025年に迎える朝鮮労働党創立80周年と、第9回党大会が重要な政治的・思想的な節目として言及された。特に第9回党大会は通常の5年周期(2026年開催予定)よりも前倒しされる可能性がある。
・AIや貿易政策への言及の欠如
過去の会議では言及されていた人工知能(AI)や貿易に関する政策が今回の報道では取り上げられなかった。これは、技術革新や対外経済政策の優先度が低下していることを示唆する。
・対南・対米言及の欠如
2023年末以降の南北関係の変化や、新たに就任した米国大統領に関する言及はなかった。通常、SPAでは国際情勢についても触れられることがあるが、今回は経済関連の報告に集中した形となった。
・問題点の抽象的な表現
これまで具体的に言及されてきた制裁や自然災害についての言及はなく、「多くの障害や困難」といった抽象的な表現にとどまった。
首相の宣誓について
首相の朴泰成(Pak Thae Song)が全閣僚を代表して誓約を行ったことは、異例の事態である。その内容は以下の三点に分けられる。
1.宣誓自体が異例である点
これまでに同様の誓約が行われた記録はなく、その背景に重大な要因があると考えられる。
2.憲法への忠誠の強調
「憲法に忠実である」との表現が特に強調されており、これは韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が2024年12月3日に戒厳令を宣言したことと対比される可能性がある。韓国ではこの行為が憲法違反と指摘されており、北朝鮮があえて憲法遵守を強調したのは、南北対立の一環と考えられる。
3.国家統制の強化
経済政策を国家の「統一的指導と戦略的管理のもとに置く」と明言されており、経済分権化の流れを完全に逆行させる方針が継続していることが示された。
「ロシア効果」の欠如
北朝鮮がロシアと軍事協力を進めているにもかかわらず、経済データに目立った影響が表れていない点が注目される。国家予算の伸び率は2024年に4%増加したものの、2025年の収入見通しは2%増にとどまり、大幅な経済成長を示すものではない。
また、貿易統計(2023年までのデータ)を見ても、ロシアとの貿易による急激な増加は確認されていない。特に北朝鮮の輸入額が30億ドル未満と依然として低水準であり、大規模な外貨流入があれば貿易統計にも顕著な変化が見られるはずである。しかし、現状ではそのような兆候は見られない。
一方、韓国の武器輸出は2024年に230億ドル規模に達し、経済に大きな影響を与えている。これと比較すると、北朝鮮がロシアとの取引で得ている利益は限定的である可能性が高い。
まとめ
今回の最高人民会議では、異例の首相の誓約と、ロシアとの軍事協力の影響が経済データに表れていない点が特に注目された。経済政策においては、計画経済の維持と国家統制の強化が再確認され、対外関係についての言及は控えられた。今後、朝鮮労働党第9回大会が開催される可能性が高く、さらなる動向が注視される。
【詳細】
2025年1月22日から23日にかけて、北朝鮮の最高人民会議(SPA)が平壌で開催され、同会議では経済政策や予算編成に関する重要な報告が行われた。特に注目されたのは、以下の三つの要点である。
1. 首相の異例の宣誓
2025年のSPAで最も注目された出来事は、首相の朴泰成(パク・テソン)が内閣全体を代表して「憲法に忠実であり、党と人民の期待に応える」ことを誓う異例の宣誓を行った点である。この宣誓自体が非常に異例であり、これまでに同様の宣誓が行われた記録はない。そのため、この行為には重大な背景があると考えられる。
宣誓の中で強調された「憲法に忠実である」との表現は、特に注目に値する。これは韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が2024年12月3日に戒厳令を宣言したことに対する対抗措置としての意味を持つ可能性がある。韓国では戒厳令が憲法違反とされ、国際的な議論を呼んでいるが、北朝鮮があえて憲法遵守を強調することで、自国の政治体制の安定性や法的基盤の正当性をアピールしていると見ることができる。また、この宣誓が行われたタイミングから、国内政治における緊張や不安定性を抑えるための意図があることも考えられる。
さらに、この誓約の一環として、経済政策における「国家統制の強化」が言及された。具体的には、全ての部門は内閣の決定に従い、党と人民の利益にかなった形で経済を運営するべきだという方針が強調された。これにより、北朝鮮が掲げる「計画経済」の維持と、国の統一的な経済管理がさらに進められることが予想される。
2. ロシアとの軍事協力の影響
北朝鮮は、ロシアとの軍事協力を強化していると報じられており、特にロシアが北朝鮮に対して武器や兵器の供給を求めているとの情報が流れている。また、北朝鮮は労働者をロシアに派遣しており、これにより一定の外貨収入を得ているとも伝えられている。しかし、2025年の国家予算における収入見通しは、わずか2%増にとどまっており、ロシアとの軍事協力が予想されるような大規模な経済的影響を及ぼしていないことが確認されている。
貿易データにおいても、北朝鮮のロシアとの貿易額は急激に増加していない。特に、北朝鮮の輸入額は30億ドル未満にとどまっており、ロシアとの貿易による急激な増収がないことが示されている。もし、ロシアとの軍事協力が予想以上に影響を及ぼしているのであれば、その効果が貿易統計に反映されるべきだが、現状ではその兆候は見られない。
また、北朝鮮がロシアに対して兵器供給を行う一方で、ロシア経済の厳しい状況も影響している可能性がある。ロシアは制裁を受けており、そのために自国の軍需品や兵器の供給に制限がかかっている。そのため、北朝鮮にとっても大きな利益を得ることが難しく、相互の経済的な恩恵は限られていると考えられる。
3. 経済発展政策の継続
北朝鮮の経済政策については、引き続き国家統制を強化する方向性が示された。特に、「持続的発展」という言葉が強調され、農村経済の発展やインフラ整備、森林再生などが重要な課題として挙げられた。これらの政策は、1960~70年代の韓国の開発政策に似た構図を持つものであり、政府が指導的な役割を果たすことで経済を発展させようとする意図が見て取れる。
北朝鮮の経済政策は依然として「計画経済」に依存しており、市場経済的な要素が縮小している。内閣の決定や指示に従い、国家が経済活動を一元管理する形態が強化されると予想される。このような方針は、国家が労働力や資源を集中的に管理し、特定の産業分野に資源を集中させることを意味する。
さらに、北朝鮮が自国の経済発展において「外部依存」を減らし、内需の拡大や自給自足を目指す方針を強化していることも示唆されている。これには、外部からの制裁に依存せず、内部資源を最大限に活用するという意図があると考えられる。
4. 朝鮮労働党創立80周年と第9回党大会
2025年には、朝鮮労働党創立80周年を迎えるとともに、第9回党大会も開催される予定である。この党大会は、国内政治において重要な役割を果たし、政策の方向性や指導部の決定が発表される場である。北朝鮮はこの機会を利用して、国内外に向けて自国の経済政策や政治体制の正当性を強調することが予想される。
第9回党大会は、通常の5年周期(2026年開催予定)よりも前倒しされる可能性があり、その詳細が注目されている。特に、金正恩の指導体制の確立や、経済政策における新たな方針が示されることが期待される。
5. 外交政策の言及の欠如
今回のSPAでは、外部との外交関係や国際情勢についての言及はほとんどなかった。特に、南北関係や米国との関係についての言及がなかった点が注目される。これは、北朝鮮が内政に集中しており、外部への対応を後回しにしていることを示している。北朝鮮は、現在の国内情勢において安定を求めており、外部との摩擦を避けるために外交的な言及を控えた可能性がある。
また、南北関係についても、特に新たな進展がないことが確認された。韓国との関係においては、北朝鮮が積極的な外交を行うよりも、内政の安定に力を入れている状況である。
まとめ
2025年1月の最高人民会議では、首相による異例の宣誓と、ロシアとの軍事協力の影響が見られない経済データ、そして計画経済の維持が強調された。北朝鮮は今後も国家統制を強化し、国内の経済発展を推進する方針を示している。また、外交に関しては、特に南北関係や米国との関係についての新たな進展は確認されていない。今後、朝鮮労働党創立80周年を迎え、第9回党大会での新たな方針が発表されることが注目される。
【要点】
2025年1月22日から23日に開催された北朝鮮の最高人民会議(SPA)に関する主要なポイントを箇条書きで説明したものである。
1.首相の異例の宣誓
・朴泰成(パク・テソン)が「憲法に忠実であり、党と人民の期待に応える」ことを誓う宣誓を行う。
・韓国の戒厳令に対する対抗措置として、憲法遵守が強調される。
・経済政策における国家統制強化が言及され、計画経済の維持が示される。
2.ロシアとの軍事協力の影響
・ロシアとの兵器供給や労働者派遣が行われるが、貿易額は30億ドル未満と急激な増収は見られない。
・ロシア経済の制裁や厳しい状況が影響し、経済効果は限定的。
3.経済発展政策の継続
・「持続的発展」が強調され、農村経済やインフラ整備が重点課題として挙げられる。
・国家統制強化と計画経済維持が継続される。
4.朝鮮労働党創立80周年と第9回党大会
・2025年に朝鮮労働党創立80周年を迎え、第9回党大会が開催される予定。
・党大会で金正恩指導体制の強化や新たな経済政策が発表されることが期待される。
5.外交政策の言及なし
・南北関係や米国との関係についての言及がなく、外交的な進展は見られない。
・内政安定が優先され、外部との摩擦を避ける方針。
6.総括
・北朝鮮は国内の政治体制の安定と経済発展を優先し、外部との関係は後回しにしている。
【引用・参照・底本】
The January 2025 Session of the North Korean Parliament: An Unusual Oath and the Absence of a “Russia-Effect”38NORTH 2025.01.31
https://www.38north.org/2025/01/the-january-2025-session-of-the-north-korean-parliament-an-unusual-oath-and-the-absence-of-a-russia-effect/
北朝鮮:米国との関係改善よりも、ロシアと中国との関係を強化する方向 ― 2025年02月05日 22:23
【概要】
ドナルド・トランプ氏が金正恩北朝鮮労働党総書記に接触を試みる意向を表明したことは、驚くべきことではない。トランプ氏は任期中に金総書記と三度の首脳会談を実施し、初めて北朝鮮の独裁者と会ったアメリカ大統領となった。しかし、トランプ氏が米朝関係の緊張を解消するためには首脳会談が唯一の解決策であると認識していることは理解できるが、金総書記がすぐに会談に応じるとは考えにくい。
今日の世界は2018年とは大きく異なる。北朝鮮は、アメリカとの関係改善よりも、ロシアと中国との関係を強化する方向に舵を切っている。最も顕著な例は、北朝鮮の数千人の兵士がロシアの兵士と共にクルスクで戦っていることだ。金総書記は自国のエリートに対し、アメリカは譲歩しない敵であり、弱体化させるべきだと伝えた。
また、北朝鮮は、地域ターゲットやアメリカの都市を攻撃可能な核弾頭搭載ミサイルの配備を加速させている。この軍拡は地域の軍拡競争を引き起こし、韓国や日本もミサイル兵器の増強を進めている。韓国では独自の核武装に関する議論が続いており、日本も追随する可能性が高い。緊張が高まる中で、誤った一歩が核戦争を引き起こす可能性がある。
さらに、トランプ氏の自信は、前回の会談で金総書記を屈辱的に扱った事実を無視している。2019年2月のハノイ会談では、忍耐力を欠いたトランプ氏が会談を途中で放棄し、金総書記は激怒して部屋のドアを叩きつけて閉めた。トランプ氏も疑念を抱いたようで、ハノイを離れた際、ムン・ジェイン韓国大統領に何度も金総書記に連絡を取るよう求めた。
三ヶ月後の板門店での即席首脳会談は、広報的には成功を収めたが、政策的には失敗に終わった。二人の首脳は交渉再開に合意したが、トランプ氏は金総書記に約束した米韓軍事演習の延期を守らなかったため、金総書記はトランプ氏に対して秘密の手紙で「馬鹿にされた」と非難した。
新たな外交交渉を始めることは不可能ではないが、トランプ氏が考えているほど簡単には進まないだろう。北朝鮮はトランプ政権の外交努力に対して失望しており、30年以上にわたる米国との交渉失敗に懐疑的である。また、ロシアとの関係強化も障害となる。成功を収めるためには時間と忍耐が必要であり、魅力的なイニシアティブを次々に提供する必要がある。
トランプ氏が最初に行うべきは、金総書記との首脳会談ではなく、ロシアと中国との接触である。北朝鮮との緊張緩和には、ロシアの協力が不可欠であり、ウクライナ戦争の終結に向けての仲介役を果たすことができれば、米露関係の緩和が期待できるだろう。中国との関係は現在低調であるが、依然として北朝鮮との政治的・経済的な結びつきがあるため、中国の支持も重要である。
それでも、アメリカは金総書記に対して対話再開の意志を示すことを怠るべきではない。トランプ氏は、Fox Newsのインタビューでその意向を示したが、金総書記との書簡のやり取りを再開することが望ましい。これらの書簡には交渉を進展させるための手掛かりが含まれている。
即時の目標としては、両国間で高官、例えば国務長官との対面会談を再開し、その後、トランプ氏と金総書記の早期首脳会談を設けることが挙げられる。この会談で、具体的な交渉の進展方法を話し合うべきである。
トランプ氏は、現実的な目標を掲げるべきである。北朝鮮の核兵器増強を考慮すると、これまでの非核化を目指す近視眼的な目標は放棄し、核戦争の危険を減少させるという短期的目標に転換すべきだ。具体的には、大規模な兵器試験の禁止や、核兵器を搭載可能なアメリカ軍の航空機や潜水艦の訪問停止などが、緊張を緩和する措置となり得る。
また、トランプ氏には、交渉を進展させるための他の手段もある。制裁の解除、外交関係の確立、米韓軍事演習の中止などがそれに当たる。どの提案が金総書記の関心を引くかは、実際に会ってみなければ分からない。
最大の圧力は依然として必要かもしれないが、制裁を強化しても中国やロシアの反対が強いため、効果は薄いだろう。そこで、トランプ氏は韓国への戦術核兵器再配備をちらつかせることができるかもしれない。このリスクの高い動きは、地域の軍拡競争を煽る可能性があるが、交渉が進展すれば、核兵器の再配備停止と引き換えに進展を得ることも可能である。
もし北朝鮮が方向転換し、アメリカとの関係改善を求め、緊張緩和のために合意に達すれば、トランプ氏自身が最大の魅力となるかもしれない。アメリカ大統領が平壌に訪れることは、両国が危機的衝突を避け、70年続いた冷戦を終結させる道筋を示す証となるだろう。
トランプ氏にとって、平壌での首脳会談は、世界中でかつてない規模の視聴者を集める広報的な大成功となり得る。また、彼が長年追い求めてきたノーベル平和賞を手に入れるチャンスにもなるだろう。最終的に、ワシントンの批評家たちは宥和政策を非難するかもしれないが、一般市民は戦争の危険を減らすために行動する平和の使者としてトランプ氏を支持するだろう。
【詳細】
ドナルド・トランプが北朝鮮の金正恩との再会を計画しているという発言は、驚くべきことではない。トランプは自身の在任中に金正恩と3回の首脳会談を行い、現職大統領として初めて北朝鮮の指導者と直接会談した人物である。しかし、トランプが「首脳会談こそがワシントンと平壌間の緊張を解消する唯一の方法だ」と考える一方で、金正恩がすぐに会談に応じるとは限らないという点で誤解している可能性がある。
現在、2018年当時の世界とは大きな違いがある。北朝鮮は、アメリカとの関係改善よりも、アメリカの主要なライバルであるロシアや中国との関係強化にシフトしている。その最も顕著な証拠が、クルスクでロシア軍と共に戦う北朝鮮軍の存在である。金正恩は、自国のエリートに対し、アメリカは容赦ない敵であり、弱体化させ、対峙すべきであると述べている。また、北朝鮮は核兵器を搭載したミサイルの配備を加速させており、これにより地域的な軍拡競争が引き起こされ、韓国や日本もミサイル開発に力を入れている。韓国では核兵器保有についての議論が激化しており、日本も同様の方針を取る可能性が高い。このような状況では、一歩間違えれば核戦争に繋がりかねない。
トランプが自信を持っている背景には、彼が金正恩との過去の会談を「成功」と見なしている点があるが、実際には彼は金正恩に対して恥をかかせており、再度会談を行うことが簡単ではないことを無視している。2019年2月のハノイでの会談は、トランプが忍耐強く座っていられず、会談を途中で打ち切ったために決裂した。この時、金正恩は非常に怒り、ホテルの部屋でドアを叩きつけたという。その後の3か月後に行われたDMZ(非武装地帯)での会談は、メディア向けには大きなPR効果があったが、政策的には失敗に終わった。トランプは、韓国との軍事演習を延期するという約束を守らなかったため、金正恩はトランプに対し「秘密の手紙でバカにされた」と非難した。
トランプが再び北朝鮮との会談を実現するためには、単純に会談を開くのではなく、時間と忍耐、そして具体的な方針が求められる。北朝鮮は、トランプが行った過去の外交努力に対する幻滅を抱えており、3十年にわたるアメリカとの交渉の失敗により、再度の交渉には慎重な姿勢を取っている。また、ロシアとの関係の深化も障害となる。
トランプが最初に行うべきことは、金正恩との会談ではなく、ロシアと中国との外交を強化することである。ロシアがアメリカ主導のイニシアチブに賛同することは、北朝鮮との関係において重要な意味を持つ。もし、トランプがウクライナ戦争の解決に向けた仲介者として積極的な役割を果たすことができれば、アメリカとロシアの関係が改善し、東アジアの問題に関しても協議を行う道が開けるかもしれない。中国についても、北朝鮮との関係は低調だが、その政治的および経済的な繋がりから、アメリカ主導の外交イニシアチブにおいて中国の支持は依然として重要である。
それでも、アメリカは金正恩に対し、対話の再開を示唆するべきである。トランプはFOXニュースのインタビューでその意向を表明したが、実際に金正恩との通信を再開することが有益である。トランプが辞任する前に終わった両者間の書簡交換には、交渉を進めるための貴重な手がかりが含まれていた。
すぐに実行可能な具体的な目標は、両国の間での対面での会談再開であり、高官レベル(例えば国務長官)や、実務者レベルでの会談が必要である。これにより、早期にトランプと金正恩の首脳会談を実現させ、その後の実質的な協議に向けた計画を立てることができる。
また、トランプは現実的な目標を採るべきである。北朝鮮の核兵器の増強を考慮し、アメリカは従来の短期的な目標であった「北朝鮮の非核化」という目標を見直し、「核戦争の危険を減らす」という新たな目標を掲げるべきである。これは、WMD(大量破壊兵器)試験の禁止を含み、新たな兵器の開発や配備の進展を止めることができる。さらに、アメリカの核兵器を搭載可能な航空機や潜水艦の朝鮮半島への訪問を停止することも、緊張を緩和するための措置となり得る。
トランプが外交の進展を促すために取るべき他の手段としては、制裁の緩和、外交関係の樹立、米韓軍事演習の停止などが考えられる。すでに6年もの間、会談が行われていないため、金正恩がどの措置に関心を示すかは、実際に会って話をすることで明らかにする必要がある。
最終的に、最大限の圧力が依然として必要かもしれないが、制裁強化は中国やロシアの反対により効果が薄いため、代わりにトランプは韓国に戦術核兵器を再配備するというリスクの高い決断を下す可能性もある。しかし、これは外交的にも機能し得る方法であり、もしアメリカが進展を得る代わりに再配備を停止するという提案を行うなら、交渉の進展を促す力となるかもしれない。
もし北朝鮮が方針を転換し、アメリカとの関係改善を望み、緊張を緩和するための合意を達成すれば、トランプ自身が最大の引き金となるかもしれない。トランプが平壌を訪れることは、両国が危険な衝突を回避し、70年間続いた東アジアの冷戦を終わらせるための道筋を示す証拠となる。
トランプにとって、平壌での首脳会談は、前例のない規模の世界的注目を集めることは確実であり、ノーベル平和賞を手にする可能性も高い。しかし、ワシントンでの批判者たちからは、宥和政策として非難されるかもしれないが、アメリカ国民の多くは、戦争の危機を減らすことができるならば、その実現を支持するだろう。
【要点】
1.トランプと金正恩の再会の背景
・トランプは金正恩との過去3回の首脳会談を成功と見なしており、再度会談を計画している。
・しかし、金正恩は過去の会談結果に幻滅しており、再度の会談に消極的な可能性が高い。
2.北朝鮮の現在の立場
・北朝鮮は、アメリカよりもロシアや中国との関係強化を優先している。
・北朝鮮は、核兵器開発を加速しており、周辺国との軍拡競争が激化している。
3.トランプの過去の交渉とその失敗
・2019年のハノイ会談は決裂し、金正恩はトランプに対して不信感を抱いた。
・その後のDMZ会談も実質的な進展はなく、金正恩は再度の交渉に慎重。
4.金正恩との会談再開のために必要な措置
・トランプは再会談に向け、ロシアや中国との外交強化が必要。
・北朝鮮は、アメリカとの会談に対し消極的であるが、状況に応じて対話再開を試みるべき。
5.現実的な目標と外交の進展
・トランプは「北朝鮮の非核化」ではなく「核戦争の危険を減らす」という目標を掲げるべき。
・制裁の緩和や外交関係樹立、米韓軍事演習の停止を交渉材料とすることが有効。
6.トランプの再会談実現に向けた手段
・高官レベルや実務者レベルでの会談を行い、首脳会談に繋げるべき。
・核兵器の試験禁止や新兵器開発停止を含む合意を目指す。
7.北朝鮮との協議の課題
・制裁強化は中国やロシアの反対により効果が薄いが、トランプは韓国に戦術核兵器を再配備する可能性もあり。
・もし進展があれば、戦争の危機を減らすための合意が可能となる。
8.トランプの平壌訪問の意義
・トランプが平壌を訪れることが実現すれば、東アジアの冷戦終結に向けた重要なステップとなる。
・平和的な解決が見込まれれば、トランプはノーベル平和賞を受賞する可能性もあり。
【引用・参照・底本】
Trump in Pyongyang? 38NORTH 2025.01.31
https://www.38north.org/2025/01/trump-in-pyongyang/
ドナルド・トランプ氏が金正恩北朝鮮労働党総書記に接触を試みる意向を表明したことは、驚くべきことではない。トランプ氏は任期中に金総書記と三度の首脳会談を実施し、初めて北朝鮮の独裁者と会ったアメリカ大統領となった。しかし、トランプ氏が米朝関係の緊張を解消するためには首脳会談が唯一の解決策であると認識していることは理解できるが、金総書記がすぐに会談に応じるとは考えにくい。
今日の世界は2018年とは大きく異なる。北朝鮮は、アメリカとの関係改善よりも、ロシアと中国との関係を強化する方向に舵を切っている。最も顕著な例は、北朝鮮の数千人の兵士がロシアの兵士と共にクルスクで戦っていることだ。金総書記は自国のエリートに対し、アメリカは譲歩しない敵であり、弱体化させるべきだと伝えた。
また、北朝鮮は、地域ターゲットやアメリカの都市を攻撃可能な核弾頭搭載ミサイルの配備を加速させている。この軍拡は地域の軍拡競争を引き起こし、韓国や日本もミサイル兵器の増強を進めている。韓国では独自の核武装に関する議論が続いており、日本も追随する可能性が高い。緊張が高まる中で、誤った一歩が核戦争を引き起こす可能性がある。
さらに、トランプ氏の自信は、前回の会談で金総書記を屈辱的に扱った事実を無視している。2019年2月のハノイ会談では、忍耐力を欠いたトランプ氏が会談を途中で放棄し、金総書記は激怒して部屋のドアを叩きつけて閉めた。トランプ氏も疑念を抱いたようで、ハノイを離れた際、ムン・ジェイン韓国大統領に何度も金総書記に連絡を取るよう求めた。
三ヶ月後の板門店での即席首脳会談は、広報的には成功を収めたが、政策的には失敗に終わった。二人の首脳は交渉再開に合意したが、トランプ氏は金総書記に約束した米韓軍事演習の延期を守らなかったため、金総書記はトランプ氏に対して秘密の手紙で「馬鹿にされた」と非難した。
新たな外交交渉を始めることは不可能ではないが、トランプ氏が考えているほど簡単には進まないだろう。北朝鮮はトランプ政権の外交努力に対して失望しており、30年以上にわたる米国との交渉失敗に懐疑的である。また、ロシアとの関係強化も障害となる。成功を収めるためには時間と忍耐が必要であり、魅力的なイニシアティブを次々に提供する必要がある。
トランプ氏が最初に行うべきは、金総書記との首脳会談ではなく、ロシアと中国との接触である。北朝鮮との緊張緩和には、ロシアの協力が不可欠であり、ウクライナ戦争の終結に向けての仲介役を果たすことができれば、米露関係の緩和が期待できるだろう。中国との関係は現在低調であるが、依然として北朝鮮との政治的・経済的な結びつきがあるため、中国の支持も重要である。
それでも、アメリカは金総書記に対して対話再開の意志を示すことを怠るべきではない。トランプ氏は、Fox Newsのインタビューでその意向を示したが、金総書記との書簡のやり取りを再開することが望ましい。これらの書簡には交渉を進展させるための手掛かりが含まれている。
即時の目標としては、両国間で高官、例えば国務長官との対面会談を再開し、その後、トランプ氏と金総書記の早期首脳会談を設けることが挙げられる。この会談で、具体的な交渉の進展方法を話し合うべきである。
トランプ氏は、現実的な目標を掲げるべきである。北朝鮮の核兵器増強を考慮すると、これまでの非核化を目指す近視眼的な目標は放棄し、核戦争の危険を減少させるという短期的目標に転換すべきだ。具体的には、大規模な兵器試験の禁止や、核兵器を搭載可能なアメリカ軍の航空機や潜水艦の訪問停止などが、緊張を緩和する措置となり得る。
また、トランプ氏には、交渉を進展させるための他の手段もある。制裁の解除、外交関係の確立、米韓軍事演習の中止などがそれに当たる。どの提案が金総書記の関心を引くかは、実際に会ってみなければ分からない。
最大の圧力は依然として必要かもしれないが、制裁を強化しても中国やロシアの反対が強いため、効果は薄いだろう。そこで、トランプ氏は韓国への戦術核兵器再配備をちらつかせることができるかもしれない。このリスクの高い動きは、地域の軍拡競争を煽る可能性があるが、交渉が進展すれば、核兵器の再配備停止と引き換えに進展を得ることも可能である。
もし北朝鮮が方向転換し、アメリカとの関係改善を求め、緊張緩和のために合意に達すれば、トランプ氏自身が最大の魅力となるかもしれない。アメリカ大統領が平壌に訪れることは、両国が危機的衝突を避け、70年続いた冷戦を終結させる道筋を示す証となるだろう。
トランプ氏にとって、平壌での首脳会談は、世界中でかつてない規模の視聴者を集める広報的な大成功となり得る。また、彼が長年追い求めてきたノーベル平和賞を手に入れるチャンスにもなるだろう。最終的に、ワシントンの批評家たちは宥和政策を非難するかもしれないが、一般市民は戦争の危険を減らすために行動する平和の使者としてトランプ氏を支持するだろう。
【詳細】
ドナルド・トランプが北朝鮮の金正恩との再会を計画しているという発言は、驚くべきことではない。トランプは自身の在任中に金正恩と3回の首脳会談を行い、現職大統領として初めて北朝鮮の指導者と直接会談した人物である。しかし、トランプが「首脳会談こそがワシントンと平壌間の緊張を解消する唯一の方法だ」と考える一方で、金正恩がすぐに会談に応じるとは限らないという点で誤解している可能性がある。
現在、2018年当時の世界とは大きな違いがある。北朝鮮は、アメリカとの関係改善よりも、アメリカの主要なライバルであるロシアや中国との関係強化にシフトしている。その最も顕著な証拠が、クルスクでロシア軍と共に戦う北朝鮮軍の存在である。金正恩は、自国のエリートに対し、アメリカは容赦ない敵であり、弱体化させ、対峙すべきであると述べている。また、北朝鮮は核兵器を搭載したミサイルの配備を加速させており、これにより地域的な軍拡競争が引き起こされ、韓国や日本もミサイル開発に力を入れている。韓国では核兵器保有についての議論が激化しており、日本も同様の方針を取る可能性が高い。このような状況では、一歩間違えれば核戦争に繋がりかねない。
トランプが自信を持っている背景には、彼が金正恩との過去の会談を「成功」と見なしている点があるが、実際には彼は金正恩に対して恥をかかせており、再度会談を行うことが簡単ではないことを無視している。2019年2月のハノイでの会談は、トランプが忍耐強く座っていられず、会談を途中で打ち切ったために決裂した。この時、金正恩は非常に怒り、ホテルの部屋でドアを叩きつけたという。その後の3か月後に行われたDMZ(非武装地帯)での会談は、メディア向けには大きなPR効果があったが、政策的には失敗に終わった。トランプは、韓国との軍事演習を延期するという約束を守らなかったため、金正恩はトランプに対し「秘密の手紙でバカにされた」と非難した。
トランプが再び北朝鮮との会談を実現するためには、単純に会談を開くのではなく、時間と忍耐、そして具体的な方針が求められる。北朝鮮は、トランプが行った過去の外交努力に対する幻滅を抱えており、3十年にわたるアメリカとの交渉の失敗により、再度の交渉には慎重な姿勢を取っている。また、ロシアとの関係の深化も障害となる。
トランプが最初に行うべきことは、金正恩との会談ではなく、ロシアと中国との外交を強化することである。ロシアがアメリカ主導のイニシアチブに賛同することは、北朝鮮との関係において重要な意味を持つ。もし、トランプがウクライナ戦争の解決に向けた仲介者として積極的な役割を果たすことができれば、アメリカとロシアの関係が改善し、東アジアの問題に関しても協議を行う道が開けるかもしれない。中国についても、北朝鮮との関係は低調だが、その政治的および経済的な繋がりから、アメリカ主導の外交イニシアチブにおいて中国の支持は依然として重要である。
それでも、アメリカは金正恩に対し、対話の再開を示唆するべきである。トランプはFOXニュースのインタビューでその意向を表明したが、実際に金正恩との通信を再開することが有益である。トランプが辞任する前に終わった両者間の書簡交換には、交渉を進めるための貴重な手がかりが含まれていた。
すぐに実行可能な具体的な目標は、両国の間での対面での会談再開であり、高官レベル(例えば国務長官)や、実務者レベルでの会談が必要である。これにより、早期にトランプと金正恩の首脳会談を実現させ、その後の実質的な協議に向けた計画を立てることができる。
また、トランプは現実的な目標を採るべきである。北朝鮮の核兵器の増強を考慮し、アメリカは従来の短期的な目標であった「北朝鮮の非核化」という目標を見直し、「核戦争の危険を減らす」という新たな目標を掲げるべきである。これは、WMD(大量破壊兵器)試験の禁止を含み、新たな兵器の開発や配備の進展を止めることができる。さらに、アメリカの核兵器を搭載可能な航空機や潜水艦の朝鮮半島への訪問を停止することも、緊張を緩和するための措置となり得る。
トランプが外交の進展を促すために取るべき他の手段としては、制裁の緩和、外交関係の樹立、米韓軍事演習の停止などが考えられる。すでに6年もの間、会談が行われていないため、金正恩がどの措置に関心を示すかは、実際に会って話をすることで明らかにする必要がある。
最終的に、最大限の圧力が依然として必要かもしれないが、制裁強化は中国やロシアの反対により効果が薄いため、代わりにトランプは韓国に戦術核兵器を再配備するというリスクの高い決断を下す可能性もある。しかし、これは外交的にも機能し得る方法であり、もしアメリカが進展を得る代わりに再配備を停止するという提案を行うなら、交渉の進展を促す力となるかもしれない。
もし北朝鮮が方針を転換し、アメリカとの関係改善を望み、緊張を緩和するための合意を達成すれば、トランプ自身が最大の引き金となるかもしれない。トランプが平壌を訪れることは、両国が危険な衝突を回避し、70年間続いた東アジアの冷戦を終わらせるための道筋を示す証拠となる。
トランプにとって、平壌での首脳会談は、前例のない規模の世界的注目を集めることは確実であり、ノーベル平和賞を手にする可能性も高い。しかし、ワシントンでの批判者たちからは、宥和政策として非難されるかもしれないが、アメリカ国民の多くは、戦争の危機を減らすことができるならば、その実現を支持するだろう。
【要点】
1.トランプと金正恩の再会の背景
・トランプは金正恩との過去3回の首脳会談を成功と見なしており、再度会談を計画している。
・しかし、金正恩は過去の会談結果に幻滅しており、再度の会談に消極的な可能性が高い。
2.北朝鮮の現在の立場
・北朝鮮は、アメリカよりもロシアや中国との関係強化を優先している。
・北朝鮮は、核兵器開発を加速しており、周辺国との軍拡競争が激化している。
3.トランプの過去の交渉とその失敗
・2019年のハノイ会談は決裂し、金正恩はトランプに対して不信感を抱いた。
・その後のDMZ会談も実質的な進展はなく、金正恩は再度の交渉に慎重。
4.金正恩との会談再開のために必要な措置
・トランプは再会談に向け、ロシアや中国との外交強化が必要。
・北朝鮮は、アメリカとの会談に対し消極的であるが、状況に応じて対話再開を試みるべき。
5.現実的な目標と外交の進展
・トランプは「北朝鮮の非核化」ではなく「核戦争の危険を減らす」という目標を掲げるべき。
・制裁の緩和や外交関係樹立、米韓軍事演習の停止を交渉材料とすることが有効。
6.トランプの再会談実現に向けた手段
・高官レベルや実務者レベルでの会談を行い、首脳会談に繋げるべき。
・核兵器の試験禁止や新兵器開発停止を含む合意を目指す。
7.北朝鮮との協議の課題
・制裁強化は中国やロシアの反対により効果が薄いが、トランプは韓国に戦術核兵器を再配備する可能性もあり。
・もし進展があれば、戦争の危機を減らすための合意が可能となる。
8.トランプの平壌訪問の意義
・トランプが平壌を訪れることが実現すれば、東アジアの冷戦終結に向けた重要なステップとなる。
・平和的な解決が見込まれれば、トランプはノーベル平和賞を受賞する可能性もあり。
【引用・参照・底本】
Trump in Pyongyang? 38NORTH 2025.01.31
https://www.38north.org/2025/01/trump-in-pyongyang/
バイデンの勝利、ゼレンスキーの敗北 ― 2025年02月05日 22:54
【概要】
バイデン大統領のウクライナ支援における「勝利」が、ゼレンスキー大統領にとっての「敗北」と見なされる理由について、以下のように説明する。
背景
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して以来、バイデン大統領は米国の対応において3つの目標を設定した。しかし、その中には「ウクライナの勝利」は含まれていなかった。ホワイトハウスが当時使用した「必要な限り支援する」という言葉は意図的に曖昧であり、具体的な目標を示していなかった。この曖昧さは、「何を達成するために必要な限り支援するのか?」という疑問を生んだ。
バイデン大統領の3つの目標
1.ウクライナの存続:ウクライナが主権国家として存続し、民主主義を維持し、西側諸国との統合を追求できるようにすること。
2.米国と同盟国の結束維持:ロシアとの対立において、米国とその同盟国が一致団結して対応すること。
3.NATOとロシアの直接衝突回避:ウクライナ戦争がNATOとロシアの直接的な軍事衝突に発展することを防ぐこと。
これらの目標は、ウクライナがロシアに占領されたすべての領土を回復することや、2014年にロシアが占領したクリミア半島や東部地域の奪還を約束するものではなかった。当時の国家安全保障会議(NSC)でロシア政策を担当していたエリック・グリーン氏によれば、ホワイトハウスは、ウクライナがこれらの地域を回復することは現実的ではないと判断していた。
バイデン大統領の「成功」とその限界
バイデン大統領は、上記の3つの目標を達成したと見なされている。しかし、この「成功」は、ウクライナの苦しみや将来の不確実性を考えると、満足のいくものではないと指摘されている。グリーン氏は、「残念ながら、この種の成功は喜びを感じるものではない。ウクライナにとっては大きな苦しみがあり、最終的な結末がどうなるか不透明だからだ」と述べている。
ウクライナ側の失望
ウクライナ側、特にゼレンスキー大統領は、バイデン政権に対する失望を強めてきた。2024年の米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利した後、その失望はより顕著に表れている。ゼレンスキー大統領は、バイデン政権がロシアに対する制裁やウクライナへの武器供与、安全保障の保証において不十分だったと批判している。2025年1月のポッドキャストでは、「米国とバイデン政権には敬意を払っているが、同じ状況を繰り返したくない。今すぐ制裁を、今すぐ武器を提供してほしい」と訴えた。
米国の支援額とウクライナの要請
バイデン政権下で米国はウクライナに対し、2022年2月のロシア侵攻以来、660億ドルの軍事支援を含む総額約1,830億ドルの援助を提供してきた。しかし、ゼレンスキー大統領やその支持者たちは、米国がロシアに対する姿勢において過度に慎重であり、特にNATO加盟への明確な道筋を示す点で不十分だったと主張している。
2024年9月のホワイトハウス訪問では、ゼレンスキー大統領は「勝利計画」として、NATO加盟の招待、ロシア領内深くへの攻撃を可能にする新たな武器供与などを求める詳細なリストを提出した。バイデン大統領は再選を目指さないことを表明しており、ウクライナ側はその「レガシー」を外交的な成果で飾るために、より大胆な決定を下すことを期待していた。
バイデン政権の対応
ゼレンスキー大統領の要請に対して、バイデン政権は部分的に応じた。NATO加盟に関しては態度を変えなかったが、ロシア領内へのミサイル攻撃を許可するなど、これまで危険視されてきた措置を承認した。また、2025年1月にはロシアのエネルギー部門に対する厳しい制裁を発動し、ロシアの石油輸出に使われる「影の艦隊」にも対象を拡大した。
結論
バイデン大統領は、任期最後の外交政策演説で、米国がウクライナ防衛の目標を達成したと主張した。しかし、ウクライナがさらに領土を回復することや、戦争の終結まで存続することについては約束しなかった。バイデン大統領は、「プーチン大統領はウクライナを屈服させることができていない。今日、ウクライナは依然として自由で独立した国であり、明るい未来の可能性を秘めている」と述べた。
ゼレンスキー大統領や多くのウクライナ国民が望む未来は、ロシアが敗北するというものだ。しかし、バイデン大統領の目標には、ウクライナを防衛することとロシアを打倒することは同じではないという含意があった。そのため、ゼレンスキー大統領の目標が未だに遠いものであることは、驚くべきことではない。
【詳細】
バイデン大統領のウクライナ支援における「勝利」がゼレンスキー大統領にとっての「敗北」と見なされる背景と経緯を、さらに詳細に説明する。
1. バイデン政権の戦略的目標とその限界
バイデン政権は、ロシアのウクライナ侵攻に対する対応において、以下の3つの主要な目標を設定した。
(1) ウクライナの存続と主権維持
バイデン政権の最優先事項は、ウクライナがロシアの侵略に屈することなく、独立した主権国家として存続することであった。この目標は、ウクライナが民主主義を維持し、将来的に欧州連合(EU)やNATOなどの西側諸国との統合を追求できるようにすることを意味していた。しかし、この目標はあくまで「ウクライナの存続」に焦点を当てたものであり、ロシアに占領された領土の完全回復や、ロシアに対する軍事的勝利を約束するものではなかった。
(2) 米国と同盟国の結束維持
ロシアの侵略に対する国際的な対応において、米国とその同盟国(特にNATO加盟国)が一致団結して行動することが重要視された。バイデン政権は、欧州諸国や他の同盟国との協調を重視し、ロシアに対する経済制裁や軍事支援の枠組みを構築した。この結束は、ロシアに対する国際的な圧力を維持する上で不可欠であった。
(3) NATOとロシアの直接衝突回避
バイデン政権は、ウクライナ戦争がNATOとロシアの直接的な軍事衝突に発展することを避けることを最優先した。このため、米国やNATOはウクライナに対して直接的な軍事介入を行わず、あくまで間接的な支援(武器供与、情報共有、訓練など)に留まった。この戦略は、戦争のエスカレーションを防ぐための慎重な判断であったが、ウクライナ側から見れば、支援に限界があることを意味していた。
2. ウクライナ側の期待と現実のギャップ
ウクライナのゼレンスキー大統領や国民は、ロシアに対する完全な勝利、つまり占領されたすべての領土の回復とロシアの軍事的敗北を望んでいた。しかし、バイデン政権の目標はこれとは異なり、あくまでウクライナの存続とロシアに対する国際的な圧力の維持に焦点を当てていた。このギャップが、ウクライナ側の失望を生む根本的な原因となった。
(1) 領土回復の限界
バイデン政権は、ウクライナが2014年にロシアに占領されたクリミア半島や東部地域(ドネツク州、ルハンスク州など)を回復することは現実的ではないと判断していた。これらの地域はロシアが強固に支配しており、ウクライナが軍事力で奪還することは極めて困難であると考えられていた。このため、米国の支援はあくまでウクライナが現状を維持し、さらなる領土喪失を防ぐことに重点が置かれた。
(2) NATO加盟への慎重な姿勢
ゼレンスキー大統領は、ウクライナのNATO加盟を強く求めていたが、バイデン政権はこれに対して慎重な姿勢を貫いた。NATO加盟はロシアとの直接的な対立を招くリスクが高く、バイデン政権は戦争のエスカレーションを避けるため、この要求に応じなかった。このため、ウクライナ側は西側諸国からの安全保障の保証を得られないまま、ロシアとの戦いを続けなければならなかった。
(3) 武器供与の制限
米国はウクライナに対して大量の武器を供与したが、その使用には一定の制限を設けていた。特に、ウクライナが米国製の兵器を使ってロシア領内を攻撃することは長らく禁止されていた。これは、戦争がロシア国内に拡大することを防ぐための措置であったが、ウクライナ側から見れば、ロシアに対する有効な反撃が制限されることを意味していた。
3. ゼレンスキー大統領の失望と批判
ゼレンスキー大統領は、バイデン政権の慎重な姿勢に対して次第に不満を募らせ、特に2024年の米国大統領選挙でトランプ氏が勝利した後、その批判をより明確に表すようになった。
(1) 制裁と武器供与の不十分さ
ゼレンスキー大統領は、バイデン政権がロシアに対する制裁やウクライナへの武器供与において不十分だったと指摘した。特に、ロシアのエネルギー部門に対する制裁が遅れたことや、ウクライナが必要とする最新兵器の供与が制限されたことが批判の対象となった。
(2) 安全保障の保証の欠如
ウクライナは、西側諸国からの明確な安全保障の保証を求めていたが、バイデン政権はこれに応じなかった。NATO加盟の道筋が示されなかったことで、ウクライナは将来的な安全保障に対する不安を抱えることになった。
(3) 「勝利計画」の拒絶
2024年9月のホワイトハウス訪問で、ゼレンスキー大統領は「勝利計画」として、NATO加盟の招待、ロシア領内への攻撃許可、新たな武器供与などを求めるリストを提出した。しかし、バイデン政権はこれらの要求の多くを拒否し、ウクライナ側の期待に応えることはなかった。
4. バイデン政権の部分的対応
ゼレンスキー大統領の要求に対して、バイデン政権は一部で譲歩を見せた。
(1) ロシア領内攻撃の許可
2024年11月、バイデン政権はウクライナが米国製のミサイルを使ってロシア領内を攻撃することを許可した。これは、ウクライナの戦略的な反撃を支援するための重要な措置であったが、ゼレンスキー大統領が求めた「全面的な攻撃許可」には及ばなかった。
(2) ロシアのエネルギー部門に対する制裁
2025年1月、バイデン政権はロシアのエネルギー部門に対する厳しい制裁を発動し、ロシアの石油輸出に使われる「影の艦隊」にも対象を拡大した。これはロシアの経済に打撃を与えるための措置であったが、ウクライナ側から見れば、これまでの制裁が不十分だったことを示すものでもあった。
5. バイデン大統領のレガシーとウクライナの未来
バイデン大統領は、任期最後の外交政策演説で、米国がウクライナ防衛の目標を達成したと主張した。しかし、その「成功」はあくまで限定的なものであり、ウクライナの完全な勝利や領土回復を約束するものではなかった。バイデン大統領は、「プーチン大統領はウクライナを屈服させることができていない。今日、ウクライナは依然として自由で独立した国であり、明るい未来の可能性を秘めている」と述べたが、その未来が具体的にどのようなものかは明らかにされなかった。
結論
バイデン政権のウクライナ支援は、ウクライナの存続と国際的な結束維持という点では一定の成果を上げた。しかし、ゼレンスキー大統領やウクライナ国民が求める「ロシアに対する完全な勝利」や「領土の完全回復」には程遠いものであった。このギャップが、バイデン政権の「勝利」をゼレンスキー大統領にとっての「敗北」として映し出している。ウクライナの未来は依然として不透明であり、戦争の終結と真の平和への道のりは長く険しいものとなっている。
【要点】
バイデン大統領のウクライナ支援における「勝利」がゼレンスキー大統領にとっての「敗北」と見なされる理由を箇条書きで説明する。
1. バイデン政権の戦略的目標
・ウクライナの存続と主権維持
⇨ ウクライナがロシアに屈せず、独立した主権国家として存続することを最優先。
⇨ 領土完全回復やロシアの軍事的敗北は目標に含まれず、あくまで現状維持が焦点。
・米国と同盟国の結束維持
⇨ NATOや欧州諸国との協調を重視し、ロシアに対する国際的な圧力を維持。
・NATOとロシアの直接衝突回避
⇨ 戦争のエスカレーションを防ぐため、米国やNATOの直接介入を避け、間接的な支援に留まる。
2. ウクライナ側の期待と現実のギャップ
・領土回復の限界
⇨ バイデン政権は、クリミア半島や東部地域の奪還は現実的ではないと判断。
⇨ ウクライナ側は全領土回復を望んでいたが、米国の支援は現状維持が中心。
・NATO加盟への慎重な姿勢
⇨ ゼレンスキー大統領はNATO加盟を強く求めたが、バイデン政権はエスカレーションを懸念し拒否。
⇨ ウクライナは西側諸国からの安全保障の保証を得られず。
・武器供与の制限
⇨ 米国はウクライナに武器を供与したが、ロシア領内攻撃の使用を長らく禁止。
⇨ ウクライナ側は効果的な反撃が制限されると不満を表明。
3. ゼレンスキー大統領の失望と批判
・制裁と武器供与の不十分さ
⇨ ロシアに対する制裁や武器供与が遅れ、不十分だと指摘。
・安全保障の保証の欠如
⇨ NATO加盟や明確な安全保障の保証が得られず、将来への不安が増大。
・「勝利計画」の拒絶
⇨ 2024年9月のホワイトハウス訪問で提出した「勝利計画」(NATO加盟、ロシア領内攻撃許可など)の多くが拒否される。
4. バイデン政権の部分的対応
・ロシア領内攻撃の許可
⇨ 2024年11月、ウクライナが米国製ミサイルでロシア領内を攻撃することを許可。
・ロシアのエネルギー部門に対する制裁
⇨ 2025年1月、ロシアのエネルギー部門と「影の艦隊」に対する厳しい制裁を発動。
5. バイデン大統領のレガシーとウクライナの未来
・限定的な「成功」の主張
⇨ バイデン大統領は、ウクライナ防衛の目標を達成したと主張。
⇨ ただし、領土回復や戦争終結については具体的な約束を避ける。
・ウクライナの未来への不透明感
⇨ ゼレンスキー大統領やウクライナ国民が求める「ロシアに対する完全な勝利」は未だ遠い。
⇨ 戦争の終結と真の平和への道のりは不透明で険しい。
結論
・バイデン政権の「勝利」は、ウクライナの存続と国際的な結束維持という点では一定の成果を上げた。
・しかし、ゼレンスキー大統領やウクライナ国民が求める「領土完全回復」や「ロシアの軍事的敗北」には程遠く、このギャップが「バイデンの勝利」を「ゼレンスキーの敗北」として映し出している。
【参考】
☞ 関連:越水桃源BLOG「米国:ロシアの核の威嚇を受けその目標を放棄」
https://koshimizu-tougen.asablo.jp/blog/2025/02/05/9752509
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Why Biden’s Ukraine Win Was Zelensky’s Loss TIME 2025.01.19
https://time.com/7207661/bidens-ukraine-win-zelensky-loss/
バイデン大統領のウクライナ支援における「勝利」が、ゼレンスキー大統領にとっての「敗北」と見なされる理由について、以下のように説明する。
背景
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して以来、バイデン大統領は米国の対応において3つの目標を設定した。しかし、その中には「ウクライナの勝利」は含まれていなかった。ホワイトハウスが当時使用した「必要な限り支援する」という言葉は意図的に曖昧であり、具体的な目標を示していなかった。この曖昧さは、「何を達成するために必要な限り支援するのか?」という疑問を生んだ。
バイデン大統領の3つの目標
1.ウクライナの存続:ウクライナが主権国家として存続し、民主主義を維持し、西側諸国との統合を追求できるようにすること。
2.米国と同盟国の結束維持:ロシアとの対立において、米国とその同盟国が一致団結して対応すること。
3.NATOとロシアの直接衝突回避:ウクライナ戦争がNATOとロシアの直接的な軍事衝突に発展することを防ぐこと。
これらの目標は、ウクライナがロシアに占領されたすべての領土を回復することや、2014年にロシアが占領したクリミア半島や東部地域の奪還を約束するものではなかった。当時の国家安全保障会議(NSC)でロシア政策を担当していたエリック・グリーン氏によれば、ホワイトハウスは、ウクライナがこれらの地域を回復することは現実的ではないと判断していた。
バイデン大統領の「成功」とその限界
バイデン大統領は、上記の3つの目標を達成したと見なされている。しかし、この「成功」は、ウクライナの苦しみや将来の不確実性を考えると、満足のいくものではないと指摘されている。グリーン氏は、「残念ながら、この種の成功は喜びを感じるものではない。ウクライナにとっては大きな苦しみがあり、最終的な結末がどうなるか不透明だからだ」と述べている。
ウクライナ側の失望
ウクライナ側、特にゼレンスキー大統領は、バイデン政権に対する失望を強めてきた。2024年の米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利した後、その失望はより顕著に表れている。ゼレンスキー大統領は、バイデン政権がロシアに対する制裁やウクライナへの武器供与、安全保障の保証において不十分だったと批判している。2025年1月のポッドキャストでは、「米国とバイデン政権には敬意を払っているが、同じ状況を繰り返したくない。今すぐ制裁を、今すぐ武器を提供してほしい」と訴えた。
米国の支援額とウクライナの要請
バイデン政権下で米国はウクライナに対し、2022年2月のロシア侵攻以来、660億ドルの軍事支援を含む総額約1,830億ドルの援助を提供してきた。しかし、ゼレンスキー大統領やその支持者たちは、米国がロシアに対する姿勢において過度に慎重であり、特にNATO加盟への明確な道筋を示す点で不十分だったと主張している。
2024年9月のホワイトハウス訪問では、ゼレンスキー大統領は「勝利計画」として、NATO加盟の招待、ロシア領内深くへの攻撃を可能にする新たな武器供与などを求める詳細なリストを提出した。バイデン大統領は再選を目指さないことを表明しており、ウクライナ側はその「レガシー」を外交的な成果で飾るために、より大胆な決定を下すことを期待していた。
バイデン政権の対応
ゼレンスキー大統領の要請に対して、バイデン政権は部分的に応じた。NATO加盟に関しては態度を変えなかったが、ロシア領内へのミサイル攻撃を許可するなど、これまで危険視されてきた措置を承認した。また、2025年1月にはロシアのエネルギー部門に対する厳しい制裁を発動し、ロシアの石油輸出に使われる「影の艦隊」にも対象を拡大した。
結論
バイデン大統領は、任期最後の外交政策演説で、米国がウクライナ防衛の目標を達成したと主張した。しかし、ウクライナがさらに領土を回復することや、戦争の終結まで存続することについては約束しなかった。バイデン大統領は、「プーチン大統領はウクライナを屈服させることができていない。今日、ウクライナは依然として自由で独立した国であり、明るい未来の可能性を秘めている」と述べた。
ゼレンスキー大統領や多くのウクライナ国民が望む未来は、ロシアが敗北するというものだ。しかし、バイデン大統領の目標には、ウクライナを防衛することとロシアを打倒することは同じではないという含意があった。そのため、ゼレンスキー大統領の目標が未だに遠いものであることは、驚くべきことではない。
【詳細】
バイデン大統領のウクライナ支援における「勝利」がゼレンスキー大統領にとっての「敗北」と見なされる背景と経緯を、さらに詳細に説明する。
1. バイデン政権の戦略的目標とその限界
バイデン政権は、ロシアのウクライナ侵攻に対する対応において、以下の3つの主要な目標を設定した。
(1) ウクライナの存続と主権維持
バイデン政権の最優先事項は、ウクライナがロシアの侵略に屈することなく、独立した主権国家として存続することであった。この目標は、ウクライナが民主主義を維持し、将来的に欧州連合(EU)やNATOなどの西側諸国との統合を追求できるようにすることを意味していた。しかし、この目標はあくまで「ウクライナの存続」に焦点を当てたものであり、ロシアに占領された領土の完全回復や、ロシアに対する軍事的勝利を約束するものではなかった。
(2) 米国と同盟国の結束維持
ロシアの侵略に対する国際的な対応において、米国とその同盟国(特にNATO加盟国)が一致団結して行動することが重要視された。バイデン政権は、欧州諸国や他の同盟国との協調を重視し、ロシアに対する経済制裁や軍事支援の枠組みを構築した。この結束は、ロシアに対する国際的な圧力を維持する上で不可欠であった。
(3) NATOとロシアの直接衝突回避
バイデン政権は、ウクライナ戦争がNATOとロシアの直接的な軍事衝突に発展することを避けることを最優先した。このため、米国やNATOはウクライナに対して直接的な軍事介入を行わず、あくまで間接的な支援(武器供与、情報共有、訓練など)に留まった。この戦略は、戦争のエスカレーションを防ぐための慎重な判断であったが、ウクライナ側から見れば、支援に限界があることを意味していた。
2. ウクライナ側の期待と現実のギャップ
ウクライナのゼレンスキー大統領や国民は、ロシアに対する完全な勝利、つまり占領されたすべての領土の回復とロシアの軍事的敗北を望んでいた。しかし、バイデン政権の目標はこれとは異なり、あくまでウクライナの存続とロシアに対する国際的な圧力の維持に焦点を当てていた。このギャップが、ウクライナ側の失望を生む根本的な原因となった。
(1) 領土回復の限界
バイデン政権は、ウクライナが2014年にロシアに占領されたクリミア半島や東部地域(ドネツク州、ルハンスク州など)を回復することは現実的ではないと判断していた。これらの地域はロシアが強固に支配しており、ウクライナが軍事力で奪還することは極めて困難であると考えられていた。このため、米国の支援はあくまでウクライナが現状を維持し、さらなる領土喪失を防ぐことに重点が置かれた。
(2) NATO加盟への慎重な姿勢
ゼレンスキー大統領は、ウクライナのNATO加盟を強く求めていたが、バイデン政権はこれに対して慎重な姿勢を貫いた。NATO加盟はロシアとの直接的な対立を招くリスクが高く、バイデン政権は戦争のエスカレーションを避けるため、この要求に応じなかった。このため、ウクライナ側は西側諸国からの安全保障の保証を得られないまま、ロシアとの戦いを続けなければならなかった。
(3) 武器供与の制限
米国はウクライナに対して大量の武器を供与したが、その使用には一定の制限を設けていた。特に、ウクライナが米国製の兵器を使ってロシア領内を攻撃することは長らく禁止されていた。これは、戦争がロシア国内に拡大することを防ぐための措置であったが、ウクライナ側から見れば、ロシアに対する有効な反撃が制限されることを意味していた。
3. ゼレンスキー大統領の失望と批判
ゼレンスキー大統領は、バイデン政権の慎重な姿勢に対して次第に不満を募らせ、特に2024年の米国大統領選挙でトランプ氏が勝利した後、その批判をより明確に表すようになった。
(1) 制裁と武器供与の不十分さ
ゼレンスキー大統領は、バイデン政権がロシアに対する制裁やウクライナへの武器供与において不十分だったと指摘した。特に、ロシアのエネルギー部門に対する制裁が遅れたことや、ウクライナが必要とする最新兵器の供与が制限されたことが批判の対象となった。
(2) 安全保障の保証の欠如
ウクライナは、西側諸国からの明確な安全保障の保証を求めていたが、バイデン政権はこれに応じなかった。NATO加盟の道筋が示されなかったことで、ウクライナは将来的な安全保障に対する不安を抱えることになった。
(3) 「勝利計画」の拒絶
2024年9月のホワイトハウス訪問で、ゼレンスキー大統領は「勝利計画」として、NATO加盟の招待、ロシア領内への攻撃許可、新たな武器供与などを求めるリストを提出した。しかし、バイデン政権はこれらの要求の多くを拒否し、ウクライナ側の期待に応えることはなかった。
4. バイデン政権の部分的対応
ゼレンスキー大統領の要求に対して、バイデン政権は一部で譲歩を見せた。
(1) ロシア領内攻撃の許可
2024年11月、バイデン政権はウクライナが米国製のミサイルを使ってロシア領内を攻撃することを許可した。これは、ウクライナの戦略的な反撃を支援するための重要な措置であったが、ゼレンスキー大統領が求めた「全面的な攻撃許可」には及ばなかった。
(2) ロシアのエネルギー部門に対する制裁
2025年1月、バイデン政権はロシアのエネルギー部門に対する厳しい制裁を発動し、ロシアの石油輸出に使われる「影の艦隊」にも対象を拡大した。これはロシアの経済に打撃を与えるための措置であったが、ウクライナ側から見れば、これまでの制裁が不十分だったことを示すものでもあった。
5. バイデン大統領のレガシーとウクライナの未来
バイデン大統領は、任期最後の外交政策演説で、米国がウクライナ防衛の目標を達成したと主張した。しかし、その「成功」はあくまで限定的なものであり、ウクライナの完全な勝利や領土回復を約束するものではなかった。バイデン大統領は、「プーチン大統領はウクライナを屈服させることができていない。今日、ウクライナは依然として自由で独立した国であり、明るい未来の可能性を秘めている」と述べたが、その未来が具体的にどのようなものかは明らかにされなかった。
結論
バイデン政権のウクライナ支援は、ウクライナの存続と国際的な結束維持という点では一定の成果を上げた。しかし、ゼレンスキー大統領やウクライナ国民が求める「ロシアに対する完全な勝利」や「領土の完全回復」には程遠いものであった。このギャップが、バイデン政権の「勝利」をゼレンスキー大統領にとっての「敗北」として映し出している。ウクライナの未来は依然として不透明であり、戦争の終結と真の平和への道のりは長く険しいものとなっている。
【要点】
バイデン大統領のウクライナ支援における「勝利」がゼレンスキー大統領にとっての「敗北」と見なされる理由を箇条書きで説明する。
1. バイデン政権の戦略的目標
・ウクライナの存続と主権維持
⇨ ウクライナがロシアに屈せず、独立した主権国家として存続することを最優先。
⇨ 領土完全回復やロシアの軍事的敗北は目標に含まれず、あくまで現状維持が焦点。
・米国と同盟国の結束維持
⇨ NATOや欧州諸国との協調を重視し、ロシアに対する国際的な圧力を維持。
・NATOとロシアの直接衝突回避
⇨ 戦争のエスカレーションを防ぐため、米国やNATOの直接介入を避け、間接的な支援に留まる。
2. ウクライナ側の期待と現実のギャップ
・領土回復の限界
⇨ バイデン政権は、クリミア半島や東部地域の奪還は現実的ではないと判断。
⇨ ウクライナ側は全領土回復を望んでいたが、米国の支援は現状維持が中心。
・NATO加盟への慎重な姿勢
⇨ ゼレンスキー大統領はNATO加盟を強く求めたが、バイデン政権はエスカレーションを懸念し拒否。
⇨ ウクライナは西側諸国からの安全保障の保証を得られず。
・武器供与の制限
⇨ 米国はウクライナに武器を供与したが、ロシア領内攻撃の使用を長らく禁止。
⇨ ウクライナ側は効果的な反撃が制限されると不満を表明。
3. ゼレンスキー大統領の失望と批判
・制裁と武器供与の不十分さ
⇨ ロシアに対する制裁や武器供与が遅れ、不十分だと指摘。
・安全保障の保証の欠如
⇨ NATO加盟や明確な安全保障の保証が得られず、将来への不安が増大。
・「勝利計画」の拒絶
⇨ 2024年9月のホワイトハウス訪問で提出した「勝利計画」(NATO加盟、ロシア領内攻撃許可など)の多くが拒否される。
4. バイデン政権の部分的対応
・ロシア領内攻撃の許可
⇨ 2024年11月、ウクライナが米国製ミサイルでロシア領内を攻撃することを許可。
・ロシアのエネルギー部門に対する制裁
⇨ 2025年1月、ロシアのエネルギー部門と「影の艦隊」に対する厳しい制裁を発動。
5. バイデン大統領のレガシーとウクライナの未来
・限定的な「成功」の主張
⇨ バイデン大統領は、ウクライナ防衛の目標を達成したと主張。
⇨ ただし、領土回復や戦争終結については具体的な約束を避ける。
・ウクライナの未来への不透明感
⇨ ゼレンスキー大統領やウクライナ国民が求める「ロシアに対する完全な勝利」は未だ遠い。
⇨ 戦争の終結と真の平和への道のりは不透明で険しい。
結論
・バイデン政権の「勝利」は、ウクライナの存続と国際的な結束維持という点では一定の成果を上げた。
・しかし、ゼレンスキー大統領やウクライナ国民が求める「領土完全回復」や「ロシアの軍事的敗北」には程遠く、このギャップが「バイデンの勝利」を「ゼレンスキーの敗北」として映し出している。
【参考】
☞ 関連:越水桃源BLOG「米国:ロシアの核の威嚇を受けその目標を放棄」
https://koshimizu-tougen.asablo.jp/blog/2025/02/05/9752509
【参考はブログ作成者が付記】
【引用・参照・底本】
Why Biden’s Ukraine Win Was Zelensky’s Loss TIME 2025.01.19
https://time.com/7207661/bidens-ukraine-win-zelensky-loss/