34-衆-日米安全保障条約等特別委員会2024年02月19日 07:39

国立国会図書館デジタルコレクション「当見立五行相剋 心がらとて夏虫の火性寝津美幸蔵 (当見立五行相剋)」を加工して作成
34-衆-日米安全保障条約等特別…-12号 昭和35年04月05日

昭和三十五年四月五日(火曜日)
    午前十時三十四分開議
 出席委員
   委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君
  理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君
   理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君
   理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君
      安倍晋太郎君    愛知 揆一君
      秋田 大助君    天野 光晴君
      池田正之輔君    石坂  繁君
      鍛冶 良作君    鴨田 宗一君
      賀屋 興宣君    小林かなえ君
      田中 正巳君    塚田十一郎君
      床次 徳二君    野田 武夫君
      服部 安司君    古井 喜實君
      保科善四郎君    毛利 松平君
      飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君
      黒田 寿男君    中井徳次郎君
      穗積 七郎君    森島 守人君
      横路 節雄君    受田 新吉君
      大貫 大八君    堤 ツルヨ君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
        国 務 大 臣 赤城 宗徳君
 出席政府委員
        法制局長官   林  修三君
        防衛庁参事官
        (防衛局長)  加藤 陽三君
        調達庁長官   丸山  佶君
        外務事務官
        (大臣官房審議官)
      下田 武三君
        外務事務官
        (アメリカ局長)森  治樹君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
 委員外の出席者
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び
 安全保障条約の締結について承認を求めるの
 件(条約第一号)
 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び
 安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び
 に日本国における合衆国軍隊の地位に関する協
 定の締結について承認を求めるの件(条約第二
 号)
 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び
 安全保障条約等の締結に伴う関係法令の整理に
 関する法律案(内閣提出第六五号)
     ――――◇―――――

○小澤委員長 これより会議を開きます。
 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の締結について承認を求めるの件、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等の締結に伴う関係法令の整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたします。前会に引き続き質疑を行ないます。大貫大八君。

○大貫委員 私は、まず、最初に、本条約と憲法との関係でお尋ねをいたしたいと思うのであります。
 本委員会でしばしば極東の範囲ということが問題になりました。これは大へん重大な問題でありまして、後にお尋ねをいたすつもりでありまするけれども、その以前に、やはり私は、本条約が憲法違反である、こういう考え方を持っております。大体、昨年の十二月十六日に、憲法の番人であるべき最高裁判所が、砂川判決において、現行条約が合憲であるかどうかという、最もこれは重要なことなのですが、この問題について最高裁判所は判断をしてないのであります。判断を回避して、これは高度の政治性を持つものであるから、国会において論議すべき問題であり、最終的には、主権を有する国民の判断によるべきものだ、こう言って逃げておるのであります。従って、私は、本条約と憲法との関係は特にここで別らかにしなければならぬ問題だと思うのであります。私がこれから質問しようとすることは、単なる憲法の字句の解釈ではないのです。そういう意味で、私は、憲法の精神を通して、一体この条約がどうなるのかという本質的な問題をお尋ねするのでありまするから、これは主として岸総理大臣の答弁をお願いいたしたいのであります。法制局長官の答弁ということではなくて、総理大臣の答弁を主としてお願いするつもりであります。  そこで、まず第一にお尋ねしたいことは、日本国憲法は、前文において、これは申すまでもなく、徹底した平和主義を国是とするということを宣言いたしております。この前文の精神に基づいて第九条が定められております。第九条の第一項では、国際紛争を解決する手段としては戦争はもちろんやらない、武力による威嚇、武力の行使は永久に放棄すると、もう厳然と定めておるわけであります。ところが本条約では、他国から武力攻撃を受けた場合には米軍と共同してこれに対処するという第五条がこの条約の骨子となっておるのでありまするから、そうすると、戦争も武力行使もあえて辞せないというのが本条約の態度になると思う。このことは、この一九条一項に明白に違反する条約だということが言えるのでありますが、政府はどういう見解を持っておりますか。

○岸国務大臣 現行憲法が平和主義を基本の考え方としており、前文の意思を受けて九条ができておるということも大貫委員のお考えの通りであります。しかし、九条一項が、独立国として、いわゆる自衛権を持っておるかどうかという問題に関しましては、こういう九条の一項の規定は、独立国として当然持つところの自衛権というものを否認しておるものではないという考えを私どもは持っておるわけであります。従って、自衛権とは、他から不法に武力行使によって侵略されるという場合において、実力を行使してこれを排除するということを否定しておるものではない、かように解釈いたしております。

○大貫委員 そういう解釈は、政府の従来とってきたところだと思う。ところが、ほんとうに九条一項の精神というものは、そのように解釈したらこれは実はナンセンスだと思う。いわゆる三百的な法律解釈だと私は思う。というのは、いやしくも、独立回に自衛権が存在するなどということは、これは近代憲法以前の問題――独立国家である以上は必ず自衛権が存在する、これは固有の権利だと思う。つまり、自衛権とは、これは申すまでもなく、ごく素朴に言えば、自己の生存を他人に主張し、かつ守る権利だと私は思う。従って、生存するものには必ず固有の自衛権があるのは、これは当然のことであって、国家は成立と同時に自衛権があるし、人間は生まれると同時に自衛権があることは、これはもう明白な事実だと私は思う。従って、自衛権の存するかどうかなどということは、これは近代国家では憲法問題にならぬ問題じゃないですか。つまり、国家の発生と同時に主権というか、統治権、これは固有の権利でしょう。国があれば統治権が必ずある。だから、憲法で統治権があるかないかということを定める憲法はないはずです。それと同じじゃないですか。自衛権があるかないかなどということまで九条で定めたという、自衛権まで否定したことじゃないという、そういう解釈は、私は全くナンセンスじゃないかと思うのでありまして、自衛権が憲法問題になるのは、その存在するかどうかということでなくして、行使の問題じゃないかと思う。統治権だってそうでしょう。統治権があるかないかじゃなくて、統治権がだれにあるか、どう行使するかということが憲法で規定する問題だと思う。この点についてどうお考えになりますか。

○岸国務大臣 われわれもそう思うのでありまして、従って、憲法に九条の規定を置きましても、独立国として当然持っておる自衛権というものを否定する意味ではなくして、当然国家としては自衛権というものを独立国として持っておる、こういう考え方でございます。

○大貫委員 そうだとすれば、九条一項で自衛権があるかないかというようなことは定めたわけじゃない、当然に、自衛権というのは固有の権利なんだから、自衛権が存在する、従って、憲法で問題になるのは自衛権をどう使うかということなんであって、従って、九条一項の問題は、つまり自衛権の行使を私は定めておると思う。つまり、自衛権の行使としては戦争はしないのだ、武力行使はしないのだということが九条の解釈だと思う。私は、自衛権による自衛戦争を除外したのだという解釈は成り立たないのだと思うのですが、どうでしょう。

○岸国務大臣 九条一項に、いわゆる国際紛争解決の手段としてはこれは用いないということをきめておるのでありまして、大貫委員のお話のように、国が成立し、国が独立国としてある以上は、本来、自衛権というものを持っておるということをこの九条の一項で否認しておるというなにはない。ただ、自衛権という武力行使――国際紛争の解決の手段としてはこれは考えない。こういうことであります。

○大貫委員 自衛権を否認とかなんとかの問題じゃないと思う。自衛権は固有の権利です。そんな当然のことを憲法がきめるはずはない。ただ、自衛権の行使としてどうなるか、日本は自衛権の行使としては戦争はやらない、武力の行使はやらぬ、これが私は九条の一項の精神だと思う。だからこそ、これはあとで聞きますけれども、たとえば、自衛権を行使するについて、憲法問題として、軍備を持っておる国は必ず軍の統帥、軍の編成、それから兵力量の決定、宣戦、講和というような、これは戦争をやる上において、自衛権を行使する上において当然必要な事項が憲法に定められておる。ところが日本国憲法には、きわめて重要なこの統帥の問題、また兵力量の決定、常備兵額をどうするかというような問題は全く定めてない。こういう点から見ましても、これは要するに、九条一項というのは自衛権の行使を定めている。自衛権の行使として、これは兵力を使わないのだ。つまり、平和的手段によってすべてを解決するのだということが、これが憲法の精神でなければならぬと私は思うのです。それを曲げて解釈しているのが政府だと思うのですが、どうですか。

○岸国務大臣 私は、自衛権の本質は、他から武力でもって侵略を受けた場合に、これを実力をもって排除するということが自衛権の内容だと思います。従って、さっきからお話がありますように、自衛権というものは国本来の、独立国である以上・本来すべてのものが本質的に持っておるのだ、憲法がこれを持たないとかいうふうな規定を考えるわけのものでなしに、この自衛権そのものはすでに本質的に持っておる、そうして、その内容は、他から武力侵略を受けた場合に実力をもってこれを排除するということが自衛権の内容をなすものである、従って、そういう事柄は憲法九条がそれを制約しておるとか、制限しておるとか、否認しておるとかいう何らの根拠はない、かように考えております。

○大貫委員 中世紀のころならこれは別です。中世紀のころなら武力をもって他国を侵略して国を大きくする、いわゆる富国強兵ということは、侵略主義にも通じた時代があったと思う。ところが今日の近代国家では、一体侵略のための軍備というものを持っておる国がありましょうか、理念上は必ず自衛のための軍備だと思うのです。少なくとも、公然と侵略のために備える軍備を保有するところの国は世界どこだってあるはずはないのです。従って、どこの国だって軍備というのは自衛のためなんです。自衛を前提とする。日本の憲法だってそうだと思うのです。自衛権を前提として、しかも、自衛のために武力行使はやらない、戦争はやらない、こういうふうに解釈するのでなければ、九条一項というのは何と政府が強弁されても、私は三百的な法律論だと思うのですが、どう考えますか。

○岸国務大臣 いろいろな国際紛争を解釈するにあたりまして、われわれが話し合いにより、平和的手段によってそれを解釈することは当然であります。やらなければならない。しかしながら、不法に武力行使によって国が侵略されるという場合において、何ら実力を行使してこれを排除できない、すべて手をあげて外交交渉に待たなければならないというようなことは、独立国が自衛権を持っておるという本質と相反するものであって、自衛権を持っておる以上は、そういう不法な侵略があった場合に実力を行使して排除する、もちろん、国際紛争そのものを解決するのには外交的手段によって解決しなければなりませんが、現実に武力攻撃があるという攻撃そのものを黙って是認しておるということは、私は、自衛権というものの本質に反する、かように思います。

○大貫委員 私は、武力攻撃があった場合に、黙って、ただ手をあげておれ、そういうことを言っておるのではない。ただ、憲法の解釈として、政策論とは違うのですから、やはりこの憲法のできたときの気持、そういうところから憲法というものを忠実に解釈していけば、憲法を改正しなければ政府のような考え方というのは無理があるのではないかということを言っておるのです。
 そこで、それでは九条一項で放棄したというのは侵略戦争だけで、自衛戦争は放棄したものでないのだ、こういうふうに明確に解釈されるわけなんですね。

○岸国務大臣 自衛権の行使を妨げるものでないというのが、私どもの解釈であります。すなわち、他から現実に武力侵略を受けた場合において、自衛権の行使として、これを実力をもって排除するということを禁止しておるものでない、かように考えております。 ○大貫委員 同じことだと思うのですが、要するに、自衛戦争は放棄したものでない、こう解釈してよろしいのですか。

○岸国務大臣 自衛戦争という言葉にはいろんななにがありますから、私は、そういう広い言葉を使う必要はないと思うのであります。自衛権の行使、自衛権がある以上は、自衛権を必要な場合に行使するということを禁止しているものじゃない、かように解釈いたします。

○大貫委員 同じことじゃないですか。やはり向こうが侵略してきた、武力攻撃をしてきた、実力でもってそれに対抗するといえば、戦争じゃないのですか。戦争という言葉がいやならば、戦闘でも何でも結局同じだと思うのですが、どうなんですか。

○岸国務大臣 武力攻撃があった場合に、これを実力で排除するという場合におきまして、実力を行使するのですから、それは一つの実力と実力との衝突があることは当然であります。

○大貫委員 実力と実力との衝突というのは、結局、われわれの常識からいえば、戦争といっては悪いのですか、戦争じゃないのですか。

○岸国務大臣 いわゆる自衛戦争と申しますと、自衛のためには広く戦争ができるというふうな、非常な誤解を生ずると私は思います。この憲法でいっている自衛権というものは、従来独立国家、また一般のたくさんの国が持っているような広い意味においての――日本においても交戦権を持たないというようななにから申しましても、いわゆる国際上の戦争というような観念で解釈はすべきものじゃないが、しかしながら、現実に武力攻撃があった場合に実力をもってこれを排除するというときに、狭い意味において戦闘行為といいますか、たまを撃ち合うとか、実力と実力との衝突があることは当然考えなければならぬことだと私は思います。

○大貫委員 戦争という言葉を何か非常にきらっておるようですけれども、岸総理の言うように、単なる武力攻撃に対して実力で対抗するだけだというならば、これは後に条約の内容に入りますけれども、一体どうなんでしょうか。第五条によって、日本が武力攻撃を受けた場合には米軍と共同してこれに対処するというのでありますから、それはもう総理の言っているように、単なる、たとえばストライキにおける労使の激しい対立なんというものとはまるで違うと思う。内容は大がかりな戦争行為じゃないですか。

○岸国務大臣 もちろん日本を侵略する武力攻撃の内容とか規模とか、そのときの状態によって私はいろいろ考えなければならぬ、かように思います。

○大貫委員 そうでしょう。今、総理のおっしゃったように大がかりな侵略有為がかりにあったとしたらば、これはやはり一つの自衛戦争だと思う。総理がそう言っている。そうすると、大がかりな侵略行為があった場合にこれに対処して戦うというのは、客観的に見れば、やはり戦争といわざるを得ないでしょう。

○岸国務大臣 日本の場合におきましては、いわゆる国際的にいうところの宣戦であるとか、あるいは交戦法規に従っての戦争というような性質を持っているものじゃないと思います。あくまでも、実力でもってその侵略行為を排除する、それに必要な限度において実力を行使するというのが自衛権の本質である、私はかように考えます。

○大貫委員 総理は、どうも戦争という言葉を非常にきらうようですが、(「みんなきらいだよ」と呼ぶ者あり)みんなきらいだと言うけれども、実際は戦争になるような状況だと思うのです。そこで私は、自衛のためならば、かりに戦争という言葉を避けて、戦闘ができるのだ、こういう見解をおとりになっているようですが、それだとすれば、九条一項なんというのは無用の長物だと思う。というのは、侵略戦争を放棄するということは事新しく憲法九条なんかで定める必要はないのでありまして、もう幾つもそういう条約が出ております。たとえば、一九二八年の例のパリにおいて締結された不戦条約でも、これは日本でも批准しているはずなんだが、国際紛争を解決する手段としては戦争を放棄するということを明白に宣言いたしております。つまり、「相互関係ニ於テ国家ノ政策ノ手段トシテノ戦争ヲ抛棄スルコトヲ其ノ各自ノ人民ノ名ニ於テ厳粛ニ宣言ス。」こういうことを定めております。また、一九一九年のヴェルサイユでの平和条約の冒頭でも、「締約国ハ戦争ニ訴ヘサルノ義務ヲ受諾シ」と書いてあります。さらに、国連憲章ではもちろんなんです。国連憲章では「共同の利益の場合を除く外は武力を用いない」、侵略戦争なんということはどこだってやらないという建前になっておる。しかも、日本の憲法九十八条二項では「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」ということになっておるのですから、侵略戦争だけを放棄するというならば、この従来結ばれた条約で私はたくさんだと思う。わざわざ憲法に、第二章として「戦争の放棄」という表題を置いたのです。「戦争の放棄」という一章を置いて、そして九条一項を設けたのは、自衛戦争というのがいやならば、自衛のための戦闘、これは放棄しないなどという、まぎらわしい種を残したのではなくして、自衛たると侵略たるとを問わず、一切の戦闘行為は放棄する、こういうことを明確にしたのが、私は、この九条の精神だと思うのですが、重ねてこの点お尋ねします。

○岸国務大臣 九条の一項は、お話しのように、あるいは不戦条約であるとか、あるいは国連憲章の根本の精神であるとかいうものと同様なことを日本国憲法において宣言しておると私は思います。しかし、それが先ほどからの御質問にもありましたように、独立国として本来持っておる固有の自衛権を否認しておるものでないということ、また、第二項において、その実力行使につきましても、各国の憲法等に定められるとは違って、制限が設けられて、そういう限度において実力の行使をするということである、かように思います。

○大貫委員 岸総理のように、自衛のための戦闘行為は否定したものじゃない、こういう解釈をとるとすれば、これは憲法の前文を見れば、そんな議論はほんとうは成り立つ余地が私はないと思う。たとえば前文には「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」とあるのです。戦争の惨禍というのは、侵略戦争だからはなはだしく、自衛の戦闘だから戦争の惨禍がないというような議論は、今日成り立たぬでしょう。特に核兵器で武装したところの近代戦、ミサイル戦争ともなれば、これは自衛たると侵略たるとを問わず――戦争というのがきらいなら戦闘でもいいでしょう。およそ戦闘と名のつくものの惨禍というものは、私は想像に絶するものがあると思う。だから、自衛戦争たりと、戦争の惨禍が起こるようなことは政府はしてはならぬというのが、私はこの憲法の……。
    〔「それが今度の安保条約だよ」と呼び、その他発言する者あり〕

○小澤委員長 静粛に願います。

○大貫委員 これが憲法の精神だと思う。そこで、われわれはまる裸になって、もし侵略者があれば、世界の平和愛好国民の公正と信義に信頼してわれわれの生存と安全をまかせるというのが、この前文を貫く私は絶対平和主義だと思う。これがはたしていいか悪いか、これが国際関係の現実に即応するかどうかということは、別個の問題なんです。少なくとも現行の憲法のもとにおいて解釈する場合には、政策論をもってこの憲法を曲げちゃいかぬと思う。そういう状況ならば、憲法を改正すればいいじゃないか。憲法の前文を貫く精神と九条を結びつけて解釈するときは、自衛戦争ができるなどという結論は、私は出てこないと思う。だから、自衛戦闘というものを前提としての本条約の締結というものは、私は、条約自身が憲法に違反する、こういうふうに考えていますが、どうでしょう。

○岸国務大臣 国が新憲法のもとにあらゆる平和を推進し、われわれが戦争を積極的にやらないということを考えておることは、これは当然であります。しかしながら、先ほどからいろいろ御議論もありますように、われわれも、この安保条約においてもそうでありますが、憲法におきましても、他から武力攻撃をもって侵略されるという事態に対処して、われわれが手をこまねいているという性質のものではなくして、それを武力でもって最小限度に排除する、それに必要な最小限度の行動をとるということは、当然国として持っておる固有のものであり、それだけの行使はできる、これは憲法違反の問題じゃない、かように解釈しております。

○大貫委員 それでは、自衛戦闘といいますか、あなたは戦争というのをきらうから、自衛戦闘というのは一体何でしょうか。日本国の自衛線というか、その範囲は、地域的にどこまでをいうのでしょうか。

○岸国務大臣 日本の領土、国土、国民に対して他から武力攻撃があった場合においてこれを排除することが、自衛権の内容であります。

○大貫委員 私は、ついでですから、自衛権の範囲ということをこの際お尋ねしたいのです。これは非常に重要なことだ。どこまで侵されたならば自衛権を発動するのか。これは後に条約の内容に入ってから詳しくお尋ねをいたしますけれども、条約第五条では、日本の施政下と一応限定をしてありますが、これは先ほど来から当委員会で問題になっておるように、極東における国際の平和と安全というような、きわめてあいまいもこたる範囲が問題になってくるのであります。かつて日清、日露の戦争当時だって、わが国が世界的に見てきわめて弱小国であった当時でさえ、わが国の自衛線というか、防衛第一線というのは朝鮮半島だったはずです。これが侵されれば日本の自街上あやうしとして戦争になっのが、日清、日露の戦役じゃなかったでしょうか。ところが、朝鮮を併合して、それから後の防衛線は、ソ満国境になった。ところが、満州が独立してこれが支配下になると、防衛線はさらに北支、中支、南支、東南アジアと伸びて、ついには、自衛を名として大東亜戦争という破滅の泥沼に突っ込んでしまったというのが、私は日本の過去の歴史だと思う。この悲劇を再び日本国民は味わってはならぬという自覚と反省が、この憲法の前文となり、九条となり、永久に戦争放棄の条項になったはずなんです。自衛権の行使として戦争手段や武力行使に訴えない、こういうのが、私は憲法九条一項の精神だと思う。そうすると、一体、岸総理は自衛権の範囲をどこまで考えているのですか。

○岸国務大臣 かつての自衛権のように、自衛のためなら何でもできるという考え方でないということを、先ほど来申し上げてにおるのでありまして、安保条約の五条をごらんになってもわかるように、施政下にある領土が武力攻撃を受けた場合、われわれは本来持っておる自衛権というものを発動して、自衛権の行使によってこれを排除する、武力をもって排除する、こういうことがこの意味でありまして、日本の自衛のために必要な線を領土以外に拡大して、そこが武力攻撃を受けた場合においても自衛権が発動するという性質のものではないのであります。施政下にある領土が武力攻撃を受けた場合と、その範囲を明らかにいたしております。

○大貫委員 それが問題だと思う。それが、この間から当委員会で、極東の範囲ということで再々繰り返されておる問題なんです。それは、総理の言うように、なるほど、第五条だけを見れば、日本の施政下にある領域が武力攻撃を受けた場合に共同行動をとるということになっておりますけれども、四条なり六条なり、いわゆる極東における国際の平和と安全という、非常なあいまいな字句によって、日本が当然武力攻撃を誘発するような事態も起こってくる。そこが私は非常な問題だと思うのですが、これは後にお尋ねします。  そこで、第九条一項で、自衛戦闘というか、自衛戦争を除外するといたしますと、一体「国際紛争を解決する手段としては、」という字句が全く無意味になってしまうと思う。自衛権を発動するような事態が発生する場合には、例外ないほど、先行する国際紛争が必ずあると思う。国際紛争がなくて、いきなり、ばっと攻撃してくるなんということは、今日の近代的な国家では、あり得ないはずなんです。われわれ個人だって、いきなり、理由なしに頭をなぐる人はないでしょう。(「あるから困るんだ」と呼ぶ者あり)あるとすれば、それはばかか気違いだ。ところが、近代的な国家では、そんな個人とは違う。つまり、いきなり、理由なしに攻撃を加えるなんということはできないはずなんです。要するに、攻撃を正当づける国際紛争というのが、必ず前提としてあるはずなんです。大東亜戦争だってそうじゃありませんか。真珠湾攻撃は奇襲だと、当時アメリカは非難しておりましたけれども、聖戦と理由づけるために、最後には野村全権を飛行機で送って、国際紛争らしいものを平和的に解決しようという格好だけはとっておるはずなんです。李承晩大統領だってそうじゃありませんか。いきなり竹島を占領したわけじゃない。竹島については、おれのものだとかなんとか、いろいろ因縁をつけて、いざこざがあったはずなんです。国際関係では、いきなり侵略をするなんということは、今日あり得ないことなんです。そこで、国際紛争というものは、必ず武力攻撃を受ける前にある、これを解決する手段として、戦争はやらない、武力攻撃はやらないというのでありますから、自衛のための戦闘は、これは除外したのだというような解釈は、これはまことに変な解釈になると思うのですが、これはどうでしょうか。

○岸国務大臣 九条一項の、国際紛争の解決の手段としてはこれを用いないということは、国際紛争を解決するために、外交交渉もやりましょう。しかしながら、従来の例をもって見ますると、国際紛争を解決する手段として、こちらが積極的に自分の方に有利に解決せしむるために武力を用いるということは行なわれておったわけであります。これをやらないということであって、そのことと、他から侵略を受けて、現実に武力攻撃を受けて、その国がその武力攻撃を実力でもって排除する自衛権の行動というものとは別の問題だ、私はかように思います。

○大貫委員 ところが、先ほど申し上げましたように、いきなり侵略をしてくる、いきなり武力攻撃を加えるというようなことは、前世紀なら別なんです。今日、高度に国際道義というものが一応いわれる際には、いきなり攻撃をするなんということは考えられない。そこで、この憲法の精神に従って徹底した平和外交を貫けば、自衛権を行使するというような事態は起こらぬじゃないか。国際紛争を解決するために、そちらでやるならこっちでもやるぞというかまえが、この条約だと私は思う。そちらでやっても、こちらは武力でもってはやりませんぞというのが、憲法の精神だと思う。そちらでやっても、受けて立ちません、こういうのが憲法の精神であって、あくまでも平和解決をするということだと私は思う。従って、自衛戦争は否定しないのだ、自衛戦闘は否定しないのだというようなことは、私は曲解もはなはだしいと思うのですが、どうでしょう。

○岸国務大臣 日本に対してで武力攻撃が現実に加えられるという場合に、国際紛争が背後にあるかないかということは、これはもちろん各種の場合を見なければわかりませんが、われわれの問題とするのは、現実に日本が武力でもって攻撃をされた、こういう、侵略をされたという事実に対して、われわれが自衛権の行使として、実力をもってこれを排除するに必要な行動をとるということは、これは自衛権の内容として当然考えなければならぬ問題であると思います。従来の、武力を、自分の方の有利に国際紛争を解決するために、威嚇に用いるとか、あるいは、現実にそれを行使して国際紛争を解決するというようなことを、日本の憲法は認めない。われわれもそんな考えは毛頭持っておらない。ただ、現実に日本が他から武力攻撃をされておるという事態を排除するに必要な――もちろん、われわれが常に平和的外交を推進して、そういう事態の起こらないように努力することは当然であります。そのことと、現実に攻撃を受けた場合において、われわれはそれに対しては何ら武力を行使しない、ただ、向こうが聞くか聞かないかわからぬが、あくまでも外交交渉でやるのだというような性質のものではない、かように思っております。

○大貫委員 どうも岸総理、自民党さんもそのようだが、侵略を受けるのだという前提に立って、そういう考え方から解釈をするから、間違ってくると私は思う。
 しかし、これはいつまでいっても平行線のようだから、今度は……。
    〔発言する者あり〕

○小澤委員長 静粛に願います。

○大貫委員 別な角度からお尋ねをいたしますが、九条一項では、総理の見解のように、政府の見解のように、自衛戦闘を否定したものじゃないのだ、こういう解釈をかりにしても、第二項では、戦力を持たない、交戦権は否定すると定めておるのですから、軍備を増強して、米軍と共同して自衛戦争も辞せないとする本条約は、この点において憲法違反になるのじゃないか、私はこう思う。九条一項は――戦争という言葉がきらいならば、自衛戦闘と言いましょう。自衛戦闘まで否定したものではないが、第一項によって、戦力は持てないから、現行憲法のもとでは自衛戦闘もできないとする学説は、学者間においても非常に多いのであります。憲法制定当時の政府の責任者が、すでにそのような解釈を下しております。たとえば、憲法制定当時の担当大臣であった金森徳次郎氏が、そのような説を持っております。当時の帝国議会で答弁しております。しかも、最近出ました一番新しい「憲法遺言」という著書でも、こういうております。「戦力は客観的なものであり、侵略戦争たると自衛戦争たるとによって本質を異にするものはないはずで、いやしくも甲のために放棄すれば乙のためにも保持しないことになるのが論理的な道行きである。」こういうております。これは正しい議論だと思います。「従って憲法を改正することを条件としてのみ、再軍備論が成り立つ。」こう説いております。憲法を改正しなければ再軍備できない、自衛隊は作れない、こういっておる。(「その通り」と呼ぶ者あり)その通りならば、自衛隊は憲法違反ですよ。また、当時の総理大臣であった吉田茂氏は、昭和二十一年六月二十六日、帝国憲法改正案第一読会において、原夫次郎氏の、自衛のための戦争は正当なものであるから、放棄する必要はないではないかという質問に答えて、こう言っております。「戦争抛棄二関スル本案ノ規定ハ、直接ニハ自衛権ヲ否定ハシテ居りマセヌガ、第九条第二項ニ於テ一切ノ軍備ト国ノ交戦権ヲ認メナイ結果、自衛権ノ発動トシテノ戦争モ、又交戦権モ抛棄シタモノデアリマス、」と述べております。つまり、第二項の、戦力を持たないというこの原則で、第一項で自衛戦闘まで否定したものでないとしましても、事実上、自衛戦争はできないということになるわけです。これが私は憲法の正当な解釈であると思う。それにもかかわらず、自衛力の漸増を約しておる本条約、つまり、第三条によって自衛力を増強することを約しておる本条約は、明らかにこの第二項に違反し、憲法違反になると思うが、どうですか。

○岸国務大臣 今の、当時の吉田総理の答弁は、後に私は修正されておるように聞いております。要するに、問題は、自衛権を持っておるというならば、自衛権の内容としては、いわゆる他から武力攻撃を受けた場合に、実力をもって排除することができるのが、自衛権の内容でありますから、その自衛権を持っておるという以上は、それを裏づけるに必要な最小限度の実力を持つということは、当然認められておることである。ただ、それがいわゆる他の国の軍備のように無制限に持てるものではなくして、いわゆる戦力という、この程度の問題になると思います。そういう解釈を吉田総理も後に明らかにされておると私どもは承知いたしております。今度の条約の三条において、従来われわれは、日本の自衛力というものを国力、国情に応じて効果的に漸増するという国防会議の方針を自主的にきめておりますが、これを何ら変更するものではございませんで、やはりそういう趣旨に従って日本はやっていくということを宣言しておるものでありまして、決して憲法にこれが違反するという性質のものではないと思います。

○大貫委員 今御答弁のように、吉田氏が後に説を変えたのは、事実のようであります。君子豹変すというか、非常な変わり方をしております。しかし、岸総理の考えのように、政府の考えのように、自衛のための戦力は保持できるんだというような解釈は、むしろ私はこっけいなほど牽強付会の言だと思う。一項の方は、非常にゆがめて解釈すれば、なるほど、自衛戦闘はできるんだ、否定したものではないんだと解釈ができるとしても、二項の方は救いがたいじゃないでしょうか。たとえば、自衛のための戦力と侵略のための戦力というふうに絶対に区別ができないじゃありませんか。これが金森徳次郎氏も指摘したところなんです。つまり、戦力は、自衛のためならば少なくていい、侵略のためには強大でなければならぬ、こんなことはあるはずがない。戦力は、侵略のためにも自衛のためにも同じ物体なんです。特に原子兵器から国の安全を守り得るような自衛力、そういう自衛力は、他国を優に侵略し得る強大な軍事力だと私は思うのです。従って、戦力を持たないということは、自衛たると侵略たるとを区別せずに、――また実際に私はできないことであると思う。だから、理由のいかんを問わず持たないというのであって、実は自衛隊そのものが憲法違反である。いわんや、それを第三条によって増強するという約束をするようなこの条約は、憲法違反になる、こういうふうに考えるのですが、どうでしょう。

○岸国務大臣 大貫君の御意見は、現在の自衛隊を憲法違反なり、こういうふうにきめておられるようでありますが、私どもは憲法違反ではないと思います。この点について、国民の間に憲法違反という議論のあることも承知いたしておりますけれども、先ほど申しましたように、独立国として日本が自衛権を持っている以上は、ただそれは観念的なものではなくして、それを裏づけるに必要な最小限度の実力を保持するということは、これは憲法違反ではない。しこうして、その最小限度の実力を保持するという趣旨によって、やっておることが自衛隊であって、これは憲法違反ではない、かように考えております。

○小澤委員長 この際、堤ツルヨ君から関連質疑の申し出があります。これを許します。堤ツルヨ君。

○堤(ツ)委員 総理大臣と今の大貫委員との質疑応答は非常に大事なところだと思いますが、お聞きしていて明らかにならないのです。そこで、私は、言葉をかえて総理にお聞きをいたしますが、先ほどから総理がお使いになっておる言葉を私が使いますと、非常に微妙ですけれども、自衛のために、実力をもって、侵略してきたものを排除するという言葉を使っていらっしゃいますね。これは非常によくわかると思うのです。自分を自衛するために、よそから侵略があった場合に、実力でこれを排除する、これは自衛の範囲内だ、こういうことを主張しようとしていらっしゃると思うのです。そうすると、近代兵器では、竹やりやわらじをはいて波打ちぎわで自衛をやっている時代じゃないのです。ミサイルの今日、そのきわどいところで実力をもって侵略の勢力を排除しておる範囲から、瞬間に交戦状態に入って、これが自衛の範囲を出てしまう場合が実際にあるわけなんです。そうすると、総理は、この自衛のための実力行動と、そしてそれを越えたものの交戦状態とを、どこで区別しようとしていらっしゃるか、ここをお聞きしたいと思います。 ○岸国務大臣 これは自衛権の本質から申しまして、他から実力を行使して武力でもって侵略を受けた、その侵略を排除するに必要な程度の実力をこちらは行使するわけでありますから、そういう限度において、これを何か範囲をきめろと言われたって、それは要するに、あくまでも自衛のために、われわれが受けておる侵害を排除するに必要な限度に限られる、こうお答えするほかないと思います。

○堤(ツ)委員 そこで、私は、極東のおおむねという言葉も、そこにひっかかってくると思う。今ちょうど自民党の委員の方が自分で格好をなさいましたけれども、排除してきわどい一線をもってじっとしておるものじゃない。排除するために、さらに前に進まなければならないときがある。言葉をかえて言えば、日本の支配するところの領土の中で自衛をやっておる間はよろしいけれども、その範囲を越えて自衛しなければならぬ問題が現実に起こってくるということをお認めになりませんか。ちょっとそれを答えていただきたい。

○岸国務大臣 今の堤委員の御質問でありますが、自衛権というものは、日本の領土、領空、領海が他から武力で侵略を受けておるという場合に、それを排除する、われわれの領土、領空、領海が安全であり、他から侵略されてないという状態を作るということが、自衛権の内容でございますから、今御質問の御趣旨が、ちょっと私によくのみ込めないので、あるいはあなたの御質問にまともに答えておらないかもしれませんが、そういうことであります。

○堤(ツ)委員 これは岸総理がどう答えられるかによって、非常に変わってくると私は思うのです。つまり、領土、領海、領空を自衛するという場合を考えなくちゃならぬ。私たちの領土、領海、領域を自衛する場合に、それを自衛せんがために、日本の自衛隊がアメリカと手をつないで、領土、領域、領海の外へ出なければならぬ場合が起こってくるということをお認めになりませんか、これを聞いておるのです。

○岸国務大臣 領土を出て、よその領土へ行くということは絶対にありません。ただ、海と空の関係におきましては、領海、領空とこう言いますけれども、その範囲につきましても、まだ国際法上に一つの議論があるようでありますし、まだ全部国際的にきまった範囲というものは明瞭でない領海等もございますので、その場合に、領土、領空を出て、公海やあるいは公空の一部に出ていくというようなことは、これは実際問題としてはあり得ると思います。しかし、他国の領土、領空、領海に行くということは考えておりません。

○堤(ツ)委員 これは総理にもう一度お聞きしたいのですが、私の聞きたいところは、自衛のために実力をもって、侵略してきた勢力を排除するという範囲、それを出た範囲を、どこに線をお引きになるかということが問題だと思うのです。実際に線が引けますか。どこへお引きになるか、お引きになれるところがあったら教えていただきたいと思います。(「線を引こうとするからいけない」と呼び、その他発言する者あり)やかましゅう言わぬでよろしい。

○小澤委員長 静粛に願います。

○岸国務大臣 私は、今はっきりお答え申し上げましたように、日本の自衛隊の本質からしまして、他国の領土、領空、領海に行って戦闘行為をする、実力行使をするというようなことは、これは自衛隊の本質に反する。あくまでも日本の領土、領空、領海を他から武力で侵略されたという行為をなくするということに、主眼があるわけであります。そうして日本の自衛隊というものは、自衛権の範囲だけ行動できるので、他国の領土や領空、領海に行くことはできない、かように考えております。

○堤(ツ)委員 私、きょうは大貫委員の関連でございますから、これでやめますが、総理ははっきり答えませんけれども、自分たちの領海、領域、領土を越えて自衛をしなければならぬ場合が、一秒の何分の一かの瞬間に生まれてしまうのです、自衛の状態にある間に。そのときに、一体どこで線を引くか、線が引けないならば、この条約は、先ほどからおっしゃっておられるように、大貫委員の言うところの憲法違反になるわけなんです。私はこの言葉を預けておきまして、私の質問時間にまたあらためて総理と問答することにいたしたいと思います。

○大貫委員 今の堤委員の質問に対しての岸総理の答えは、非常に大事なことだと思うのです。つまり、自衛隊の本質として、日本の領土、領域を守るのであって、他国の領土、領空、領海に出ていくことはない、こう言うのですが、ほんとうにそうですか。

○岸国務大臣 そういう性質のものである、こう思います。

○大貫委員 そういう性質のものだとおっしゃっても、これは後に条約の内容に入ってからお尋ねをするつもりだったのですが、第五条によって、日本の施政下にある領域が武力攻撃を受けた場合、米軍と行動するのでしょう。米軍と行動する場合に、米軍はすっと先へ出た。自衛隊は、これは日本の領空、領海から出ましたから、もう帰りますというわけにはいかぬでしょう。やはり米軍と共同して対処するのですから、これは場合によったならば、日本の領空、領海を出て他国に出るようなことがあるのじゃないですか。

○岸国務大臣 これは別に、日本軍と米軍とが共同して同じような行動をしなければならぬというものじゃありませんので、自衛隊は自衛隊の本質を守って、先ほど来申しているように行動していくつもりであります。

○大貫委員 そうすると、極論すれば、一緒に行動していって、ここは境になったから私は帰りますと言えますか。戦争というものはそんなことはできぬでしょう。どうですか。

○岸国務大臣 それは、この安保条約を結んで、米軍を駐留せしめて、米軍がそういう侵略に対して行動するという場合におきまして、日本と十分連絡をとって、自衛隊の本質から、われわれの行動の範囲というものはおのずから限られておりますから、それは任務を分担してやっていく。日本の自衛隊だけであるとすると――安保条約の必要な理由の一つ、やはり日本に武力侵略が起こってきた場合に、これを排除していく。自衛隊の行動によってできるだけのことをやることは、独立国として当然でありますが、しかし自衛隊の本質から見ても、行動の範囲というものが限局されるわけでありますから、そういう場合においては、米軍がそういう任務を分担して、そうして必要な行動をとって日本の侵略をなくすというのが、この趣旨でございます。

○大貫委員 それは後に統帥の問題に入ってからお尋ねしますから、問題を戻して、先ほどの自衛隊の違憲論に対して、もう少しお尋ねをしていきたいと思うのです。
 従来の保守党政府は、憲法なんということはおかまいなしに、いつの間にかりっぱな自衛隊という戦力を作り上げてしまった。さらに、この条約の第三条によって、より強力な戦力を築き上げることをアメリカに約束しようとしているのが、私はこの条約だと思うのです。かつて鳩山一郎氏が総理大臣であったときに、陸海空軍を持てないような憲法は反対であると述べて、問題になったことがございます。憲法九十九条によれば、「この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」という国務大臣が、憲法に反対だと言うのでありますから、もしデモクラシーの発達し、確立したヨーロッパの諸国でしたならば、この一言でも、私は、大臣のいすを追放されたと思う。日本の場合は、総理大臣がこのような放言をしても、それほど強い世論の糾弾を受けなかった。このような情勢の上にあぐらをかいて、ふてぶてしく憲法違反のもろもろの既成事実を作り上げてきたのが、私は戦後歴代の保守党政府だと思うのです。そうして、砂川の伊達判決が出れば、あれは非常識だと言う。憲法の番人たるべき最高裁判所までが、この既成事実の前にひざを屈して、あえて正しく憲法の解釈をしようとはしないのであります。かつて明治二十四年の大津事件において、当時強大なロシヤの前に、時の政府は国際問題になることをおそれて、裁判所に圧力を加えたことは、歴史上顕著でございます。ところが、時の大審院長児島惟謙は敢然としてこれをけって、正しい法律の解釈と適用をして、法治国としての面目を維持したのであります。ところが今日の政府は、憲法違反の既成事実を作り上げて、アメリカにこびておるのじゃありませんか。国民にのみ法の順守をしい、政府みずからは法を守らず、法の権威を失墜せしめているのが、私は現状じゃないかと思う。このような態度は、むしろ国民をして順法精神を麻痺せしめて、究極には暴力革命の導火線になると私は思う。これはゆゆしき問題だと思う。どのような既成事実を作っても、不当なものはどこまでいっても不当であります。たとえば、どのように財産を作ってボスになっても、それが詐欺、横領、窃盗、暴行というような不正行為を伴って築いたものであれば、その不正行為は永久に消えないでありましょう。これと同様であります。戦力を持たないというのに、米国と共同作戦をとれるようにまで戦力を増強しようとするこの条約は、憲法に明白に私は違反していると思いますが、どうでありますか。

○岸国務大臣 憲法の解釈として、かつて、九条の解釈をめぐって、自衛隊というものが憲法違反であるかどうかという議論があったことは、承知いたしておりますし、また、今日なお、そういう考えを一部において法律解釈として持っている人もあると思います。しかしながら、私は、今日の憲法解釈として、政府がとっている自衛権、その自衛権を裏づけるに必要最小限度の実力を持つということは、憲法違反にあらずという解釈は、私は憲法の解釈としては通説であり、一般に広く認められているところであると確信をいたしております。従って、今例をおあげになりましたような、違法の事実を積み重ねることによってこれを合法化しようということじゃなしに、根本において、憲法上、そういうことは当然正しい解釈としてわれわれはとっている次第であります。

○大貫委員 大体、侵略されないという議論も、侵略されるという議論も、ともに私は仮定の議論であると思う。しかしながら、平和主義に徹して、戦争を放棄し、戦力を持たないで、ほんとうに憲法の規定通りにわが国が丸裸でさえいったならば、少なくとも国連の加盟国内において、主義政策を異にする国でさえ、私は侵略の口実ができないと思う。ところが不幸にして、国際情勢というのは、岸さんが再々言うように、甘いものじゃないかもしれぬ。自由主義陣営と共産主義陣営と二つに鋭く対立しているというのが現実であります。しかしながら、核兵器の革命的な発展と申しますか、進歩と申しますか、この対立の中には、平和的共存を見出さなければならなくなったというのも、私は世界の現実だと思う。このような情勢の中に、みずから侵略するであろうという国を想定して、これに対抗する軍事同盟――もっとも政府は軍事同盟でないと強弁しておりますけれども、かりに政府の言うように、あくまで自衛のための条約だとしても、このような条約を今結ぶこと自体が、世界のこの現実の情勢に逆行するものでないか、こう私は思うのであります。どうです、その点。

○岸国務大臣 その問題につきましては、しばしばお答えをした通りでありますが、大貫委員も御承知の通り、安保体制、安保条約というものは、現在あるのです。われわれはこれによって、戦後においてとにかく平和と安全のうちに繁栄を続けてきているわけです。現在あるわけです。しかし、これは最初から日本の自主性が認められておらない。日本の意見というものは、いかなる場合においても条約上反映しないというふうになっている。一方的な安保条約をわれわれは改定しようということでありまして、全然ないものを今作るというふうな、誤解を生ぜしめるような今の御質問でありましたが、事態はそうじゃないということでございます。  それから、国際情勢のなにに関しまして、今お話のように、われわれも、全面的にすべての国際紛争を平和的に解決する、話し合いで解決しなければいかぬ、武力を行使してこれをやるということはいかぬ、また、さらにそれを進めるための軍縮の問題につきましても、われわれは熱心にこれを唱道もしておりますし、またその機運を作り上げることに協力をいたしておることも、御承知の通りであります。しかし同時に、この安保体制を持っておる。安保体制がなくなっていくとか、あるいはそれを解消するというような事態ではないことも、これも大貫委員御承知の通りでございます。われわれが持っておる安保体制というものを、より合理的なものにするための今度の改定というものは、私は、ちっとも国際情勢と相反するものではない、かように思います。

○大貫委員 今ある安保条約を改定する、それはその通りでしょう。ところが、今ある現行の条約というのは、たとえば共産主義陣営のソ連にしたって、中国にしたって、日本がアメリカから押しつけられたのだというこの事実、この歴史的事実は、まあまあ仕方がないという態度だと私は思う。ところが、今度の新安保条約というのは、日本が独立したのだ、独立して対等の地位において条約を改定するのだというのでありますから、これは大へんにニュアンスが違う。今度の条約は違うと思う。内容においても違うと思う。高度に、たとえば第五条によって、日本が米軍と共同して軍事行動を起こすというようなことが定められておるのでありますから、このことは、再々議論になったかもしらぬけれども、やはりソ連なり中国なり共産主義圏を特に刺激する口実を与える原因になりはせぬか、私はこういうように思うのですが、どうでしょうか。

○岸国務大臣 問題は、刺激する、刺激するということでありますが、この安保体制というものは、日本が現在の条約を結ぶときの客観的情勢から、日本民族としては、独立国の民族として非常に不満な点が幾多あるわけであります。これを自主的に改めるということは、これは独立国であり、その国の国力が充実してくれば、当然考えるべきことであると私は思います。そうして、いろいろな点についてでありますが、従来ならば、むしろ現行の安保体制のもとにおいては、ソ連や中共あたりでいろいろな批判を加えるような、たとえば、政府は核兵器を持たないと言っておる、また核兵器武装をさせない、持ち込ませないということを言っておるけれども、条約上何らそれは制限がないのだから、アメリカは勝手に持ち込むじゃないか、いつの間にか日本は核装備されておる、日本の意思いかんにかかわらず、アメリカはやり得るじゃないかというような欠点もあります。また、行動につきましても、日本に基地を持っておる米軍がどういう行動をするかということは、現行構成のもとにおいては、自由自在であるわけでありますが、今後は事前協議によって日本の意思によってこれを制約するという道ができておるのでありますから、むしろこの改定をもって、それらの国々の人々が非常に刺激するというふうな言動を用いるということこそ、私は、実際に誤解であり、あるいは特にこの条約の改正を曲げて何らかの意図に使用しようとする言動としか考えられないのであります。

○大貫委員 どう政府が強弁しようとも、私は、どうもこの条約というものは、少なくとも現行憲法の上に立てば違反である、こう考えるのであります。つまり、侵略されるかもしらぬ、こういうことが常に前提になっております。しかし、侵略されるかもしらぬ、それを前提として、これに対抗するような一つの力を作ろうとする本条約、これに対抗するような戦力を築き上げようとするところの本条約というのは、これは憲法九条ばかりではありません、これは前文を貫く――その前文をよくお読みになっていただきたい。読んでいると思うけれども、読んでいたって、ちょうど戦前に、日本の軍人がお勅諭を大事にしながら、読むだけでもって、精神を体得しないから、あんなことになった。この憲法の前文、この精神、平和主義に徹する前文をよく考えると、何かしら侵略されるかもしらぬ、その場合にこれに対抗するのだというこの行き方は、私は、どうしても憲法に違反するのじゃないか、この前文の絶対平和主義にも違反する、つまり、しいて火中に栗を拾うようなことを再びあなたはなさろうとするのじゃないか、こういうふうに思うのですが、どうでしょうか。

○岸国務大臣 根本において私は考えが違うのであります。平和主義、平和をあくまでも望み、また戦争に巻き込まれてはならないという考え方においては、私は非常な強い考えを持っております。今日世界の各国も、先ほどお話がありましたが、軍備をおのおの持っておりますが、この軍備でもって他国を侵略しようという意図を持ち、またそういう考えでもって軍備を拡張しておるところは、ないと私は思います。つまり、それが戦争を防ぐという戦争防止力として、これだけの犠牲を払って各国が軍備を持っておるというのが、私は現状だと思います。いろんな中立国、スイスのごときにおきましても、御承知のように、永世中立国でありながら、総予算の四〇何%という国防費を使っておるということも、決して戦争を考えてするという意味ではないと私は思う。これはあくまでも戦争を防止し、戦争に巻き込まれないようにするというために払っておる努力である。そういう意味において、われわれの自衛隊というものも考えるべきであり、また安保条約というものも考えるべきものであると、かように思います。

○大貫委員 戦争を防止するために軍備を持つのだという考え方は、これは過去の考え方です。こういう力の均衡の上に平和を見出そうとするような考え方は、これは過去の軍国主義時代の考え方で、日本はこれで失敗したのです。さんざん失敗したから、今度は永久にもう戦争はやらない、武力は行使しないのだ。そこで、戦力は持たぬのだということが、いいか悪いかは別問題です。現実に合うか合わぬかは別問題として、これは日本が世界に宣言をした唯一の憲法だと思う。軍備を持たないのだ。軍備を持たないで平和を求める。軍備を持って平和を求めるということは、力の均衡が破れたらいつかはまたたたくということになる。だから力を持たないのだということが、日本の憲法の精神だと思う。しかし、これはいつまでいってもあなたとは平行線のようだから、別の角度からお尋ねをいたします。
 そこで、かりに本条約の履行として、第五条によって自衛隊が出動するような場合を想定してお尋ねしますが、これは一体、軍の統帥というのはだれがやるのですか。

○岸国務大臣 日本の自衛隊は、自衛隊法によって行動もするし、一切自衛隊法の規制するところであります。

○大貫委員 ところが、軍の統帥というものは、きわめて重大な問題ですよ。これはおよそ世界の軍備を持っておる国で、統帥権の定めが憲法上ない国はないでしょう。これは憲法調査会が出しておる「軍事に関する各国憲法の規定の比較一覧表」というのがあります。これによって見ましても、これはもう当然なことなんです。統帥権というのは日本の場合だれが持っておるか、これは非常に重大な問題です。これだけの自衛隊ができてしまって、しかも統帥権に関する規定が憲法上何もない。これはきわめて私は重大なことだと思うのでありまして、明治憲法では、申すまでもなく、十一条で「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」と定めてあります。特に軍の統帥に関しては、あなたは御経験でしょう。あなたは、当時の商工大臣として、当時の軍部がことのほか統帥権のことはやかましかったでしょう。統帥権というのは天皇に直属するものであって、つまり国務大臣の輔弼の責めの及ばぬところが統帥だったでしょう。このことは、あなたが当時の国務大臣として非常な御苦労をなすったはずなんですが、これほど重大な統帥権が、憲法上何の定めがないじゃありませんか。この点から見ましても、戦争がいやなら、戦闘もできないというのが建前じゃありませんか。要するに、統帥権の規定も持たないということは、戦力を持たない、戦争をやらぬという建前だから、この重大な規定が憲法上はずされておるのでありますが、どうでございますか。

○岸国務大臣 これは自衛隊法において、日本の自衛隊が行動する場合のことを一切規定しております。旧憲法時代、いわゆる政府と統帥権の関係においていろいろな議論があり、また実際問題として、むずかしい問題が起こったことは御指摘の通りでありますが、現行憲法のもとにおきましてはそういう問題はないのでありまして、あくまでも自衛隊法によって、日本の自衛隊の行動についての一切のことを規定いたしておるわけであります。

○大貫委員 自衛隊法によれば、なるほど総理大臣が指揮監督とかいうような文句が出ておる。しかし、これはほんとうの意味の軍の統帥じゃないでしょう。統帥はだれがやるのですか。

○岸国務大臣 旧憲法のときのような意味において、統帥権というようなものは、いわゆる政府との関係におけるああいう根拠になるような議論は、一切現行憲法ではないと思います。しかしながら、自衛隊法によってきめられておるように、必要なことの指揮命令であるとか、あるいはそういう場合の出動の規定であるとか、あるいは編成の問題であるとかいうようなことは、それぞれ自衛隊法によってきめられておるものに従うべきものである、かように思います。

○大貫委員 自衛隊法に定めたからというのはおかしいじゃないですか。少なくとも、軍というのは憲法で定める事項であります。
    〔発言する者あり〕

○小澤委員長 静粛に願います。

○大貫委員 つまり憲法に根拠があるのならよろしい。自衛隊法というものは、憲法に根拠がないでしょう。憲法付属法規というものは少なくとも憲法に根拠がなければ、付属法規になりません。つまり憲法において、何々に関する事項は法律をもって定む、こうあれば、その憲法の条文を受け継いで、そこにできた法律が憲法付属法規でありましょう。ところが、自衛隊法は何ら憲法上根拠がないじゃありませんか。そうすると、自衛隊に対する統帥はだれがやるか。統帥権はだれが握っているか。

○岸国務大臣 大貫委員は、憲法に規定がなければ統帥というものはあり得ないというふうにお考えでありますが、そういう自衛隊というものをどういうふうに現実に統帥していくかということは、自衛隊法できめてあるところに従えばいいのでありまして、決して憲法に何か根拠がなければそういうものはあり得ないというふうな前提が、私どもとは考えが違っております。

○大貫委員 それは重大なことだと思います。憲法に根拠がなくして、一体統帥というものは、少なくとも軍事活動がある場合には用兵、作戦をやらなければならないでしょう。用兵、作戦をだれがやるのですか。

○岸国務大臣 これは旧憲法時代非常にやかましかったのは、統帥というのは、本来の本質から言うと、一つの広い意味の行政権、行政の範囲でありますけれども、それが政府の責任でなしに、軍が特別の帷握上奏の方法によってやる。従って、政府はこれに関与できないというところに議論の本体があったわけであります。従って、自衛隊法において定められておるように、その場合における作戦行動や用兵の問題につきまして、内閣が責任を持ち、内閣を代表して総理大臣が責任を持っておるということは、これできわめて明瞭だと考えまして、ちっともそれで差しつかえないと思います。

○大貫委員 ちっとも差しつかえないとおっしゃるのですけれども、文民たる総理大臣が、一体武力を持った、武器を持つた軍隊を統帥できますか。それは、かつての日本の軍部を振り返っていただきたい。たとえば日本の軍閥というのが、下剋上の風潮が強くなって、中堅の将校、佐官級あたりを、もう将軍、提督が押えられなかったじゃないですか。いわんや、しまいには、少尉、中尉、この将校連中をさえ、堂々たる大将とか、元帥というものが統制できない。できなかったことが五・一五事件になり、あるいは満州事変になり、二・二六事件になっているじゃありませんか。そしてこれは、天皇の統帥下にあった軍でさえこの通りなのです。一体、文民である総理大臣あるいは防衛庁長官の、憲法上何らの根拠もない権限に、だれが承服して服従しましょうか。これはどうもおかしいと思いますが……。
    [発言する者あり]

○小澤委員長 静粛に願います。

○岸国務大臣 旧憲法のときに、軍閥とか、いろいろ全例をおあげになりましたそういう弊害があったことは事実であります。それはむしろ、旧憲法において、統帥権というものを一般行政から離して、独立さしておったというところに私は原因があると思います。戦後の民主憲法のもとにおける自衛隊の編成及び運用というものは、民主的な立場でもって、考えられておりますから、旧憲法時代の統帥の観念をもってこれに当てはめられるということは、非常に間違っておる。その間違いを直して、これは文官たる内閣総理大臣が、最高の、最後の責任者として自衛隊というものの統制に当たるという建前になっておるわけであります。

○大貫委員 そこに私は問題があると思う。一般行政より独立させたところに過去の軍閥の横暴があったとおっしゃるのですけれども、軍隊というものは武力を持ちます。武力を持ちますから、これは普通の行政系統における指揮命令とは違うのです。なかなかこれを抑えることが困難なのです。だからこそ、当時は天皇というものでこれを抑えようとしたのです。ところが……(「それがいけなかった。」と呼ぶ者あり)それがいけなかったのはその通り。だから天皇の軍隊といわれたものでさえ、下剋上のあの風潮で押えきれないのに、文民たる総理大臣が、憲法の規定もなくして一体押えることができますか。それだからこそ、各国の憲法は、統帥権というものは必ず国王か大統領が持っておる。総理大臣が持っておるなんというところはありません。しかも、憲法上明確にしておるのはそこなのです。私の軍隊を作っちゃいかぬから、国の軍隊でありますから、統帥ということはやかましく――決して旧憲法じゃないですよ。統帥ということは、各国の憲法でちゃんと、軍隊のあるところは統帥の根拠というものをきめておる。自衛隊法にあるといったって、憲法に何ら根拠のないもので、一体それは承服できますかね。

○岸国務大臣 憲法になければできない、自衛隊法じゃできないと言われる前提が、私は間違っていると思う。民主主義の国におきまして、それはその国のいろいろなあれがありますが、日本の自衛隊法のように、時の内閣総理大臣が内閣を代表して最高の責任を持ち、これに対しては、国会がいろいろな点において監督していくという方法によって、軍の統制やあるいは軍の行動というものが規制されていくという建前をとっておるのが、この日本の法制の建前である、私はかように考えております。それでちっとも差しつかえない、こう思っております。

○大貫委員 あなたは差しつかえないとおっしゃるけれども、実際は大いに差しつかえると思う。しかも、憲法に根拠のない自衛隊法によって軍を統帥するというのは、おかしいと思う。そういう統帥などということは、少なくとも憲法事項ですよ、重要な事項ですから。憲法で定めなくていいのだというようなことは暴論です。
 それでは次にお尋ねしますけれども、軍の編成、兵力量を定めること、宣戦、講和の問題、いずれもこれは統帥権と同様に憲法事項だと思う。これまた、軍備を持っておる国で、憲法で規定されないものはありません。どうですか。

○岸国務大臣 宣戦ということは、積極的に日本が他国に対して宣言してやるわけでありまして、さっきから議論したように、日本の持っておる武力行使というものは、他から不当な侵略を受けたことを実力をもって排除するという限度に限られておりますから、そういうものはないと思います。ただ、自衛隊がどういうふうに出動していくかという防衛出動の場合は、自衛隊法の規定に従うことは当然であります。また、軍の編成につきましては、政府が予算の編成と関連して、これを責任を持ってきめていく。国会の御承認を得てこれがきめられる。これが民主的な建前であると私は考えております。

○大貫委員 ところが、本条約の第三条によりますと、日本は自助のために自衛力を増強するということを約束している。そうすると、当然この条約で日本の兵力量の問題、軍の編成の問題、こういう問題もこれは協議事項になると思う。私は、この四条によって協議事項になってくると思う。その点から見たって、憲法違反じゃありませんか。他国と自分の自衛隊の兵力を増すために協議をするというようなことは、大へんな憲法違反になるのではありませんか。

○岸国務大臣 これは条約を国会の御承認を受けて批准するわけでありますから、その意味において、法律や何かと同じように、日本国民の意思がこの批准には現われてくることは当然であります。今お話しの点におきまして、条約上、われわれは協議の義務を負うわけではございません。われわれは自主的に日本の自衛力を増強していくという決意を持っており、また決意をすでに表明もいたしております。この条約において、さらにこれを表明するという性質のものであると私は考えております。

○大貫委員 それは変な話じゃないですか。この条約三条に、現にアメリカと、自衛力を増強するということは約束するのじゃありませんか。そういうことになると、一つも自主的なことはないのじゃないですか。しかも、増強する義務を負う。アメリカと共同して戦えるだけの自衛力を増強する義務を負わされているのが本条約の二条だと思う。これまた、私はおかしなことだと思うのですが、どうですか。

○岸国務大臣 これは、言うまでもなく、独立国とし、自主的な立場においてその国をみずから守るという決意を持っており、その努力をする国とアメリカ自身が協力していくという建前をやっておるわけでありまして、日本としては、従来日本の自衛力というものを――それは反対論もあります。現に社会党等におきましては、漸減すべし、あるいは全廃すべきだという議論がございます。しかし私どもは、これを国力、国情に応じて漸増していくという基本方針をすでに定めて、それに基づいてわれわれが努力をしておるということをこれでもって明瞭にしているだけで、それ以上にわれわれが、軍隊なりあるいは防衛力というものを幾ら幾らにふやさなければならないというような、実質的の義務をこれでもって加重するものではないのでありまして、従来やってきておるような方針、これは日本が独立国としてみずから祖国を守るという決意を明らかにしており、またそのための必要な努力をしておる国であるということからそれが明らかになっておるだけでありまして、今お話しのように、これによって、従来われわれがやってきておるところの方針以上にわれわれが実質的な義務を加重するものだというふうにお考えになることは、これは三条の趣旨に沿うものではないのでありますから、誤解のないようにお願いします。

○大貫委員 総理大臣、私は大へんなごまかしだと思う。第三条をよくお読みになったら、「締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」、こういっておる。このことは、アメリカに対して、日本がそういう自衛力を増強するということを約束するのではありませんか。もしアメリカの希望通りにこの自衛力を増強しなかったならば、条約違反という問題が出てくるのではありませんか。しかもこの条文は、隠れもないバンデンバーグの決議に基づいてその精神が盛られておることは、これは何人も疑いのないところであります。そのバンデンバーグの決議によれば、アメリカが相互援助をするためには、その相手国に必ずアメリカと協力して戦えるだけの武力を増強させるということがバンデンバーグの決議の精神のはずであります。そうしますと、どうも岸総理の答弁ははなはだけしからぬと思うのですが、どうですか。そんなごまかしはいけませんよ。

○岸国務大臣 これは、大貫委員の御質問でありますが、バンデンバーグの決議というものはそういう趣旨ではないのでありまして、いろいろな条項がありますが、特に防衛力の増強の問題については、すなわち、相手国がみずから自分の国を守るという決意をして、それにふさわしい努力をするところの国とでなければ、相互防衛の条約は結ばない。みずから何ら自分の国を守り、またそれの努力をするという決意なり、あるいは行動で示しておらない国、一切をあげてアメリカにおんぶするようなところとはやらないというのが趣旨でありまして、何かアメリカからこの防衛計画を押しつけて、それの線でもって締約国の相手方に必ずやらせるというような趣旨のものでないことは、言うを待たないのであります。今度の条約の書き方も、よその条約とやや違った点が数点ありますが、特に今お話しのような、大貫委員のような御疑問も出ようかとわれわれとしても考慮して、その点に意を用いて、さっき私が御説明申し上げましたように、締約国はそれぞれ自主的に自分の国を守り、そして守るに必要な防衛力の増強というものを自主的にやっていく、それを維持し発展せしめるということを、憲法の条件に従うことを条件として、そしてそれをお互いに宣言し合うというのが、三条の趣旨でございます。

○大貫委員 ただ岸総理の御答弁のように、自主的にやっていくのだということなら、条約の必要はないのです。思い思いにふやせばよろしい。そこで自主的にやるということは、要するに、アメリカと約束をして、増強しなければならぬような義務がこの三条の内容に入っておるのではありませんか。しかも、そればかりではありませんよ。四条で条約の実施に関して随時協議するというのです。その随時協議するというのは、三条の問題も当然入ってきます。三条で、たとえばアメリカが極東戦略の上で、どうしても防衛戦で日本の自衛隊をこれこれにふやせというようなことが、必ず協議事項に出てこなければ意味がないじゃありませんか。どうですか。

○岸国務大臣 日本みずからが自助的にやるものは、これは日本が自主的にやるのは当然であります。しかし、相互援助によって、アメリカの援助によって日本がふやすというような場合におきましては、これは協議することは当然であろうと思います。

○大貫委員 これは午後条約の内容に入ってからお尋ねします。
 先ほどの憲法論に戻りまして、もう一つだけ特に重要な、たとえば軍の統帥の問題は先ほど申した通りでありまするけれども、軍の編成、それから常備兵額の決定、あるいは宣戦ということはないとすれば講和の問題、こういう重要な問題が、憲法上何の規定もないじゃないですか。これは当然憲法事項ですよ。各国で、こんな重要な事項を憲法で定めてない国はありません。政府の憲法調査会で調べておるのにも明確なんです。どうなんですか。

○岸国務大臣 講和という場合に、講和条約の内容が、そういう戦闘行為をやめた平和な状態を作り上げるための条約になれば、国会の承認を得て、これが批准されるべきことは当然でありますが、何かよその憲法の中にそういう規定があることも、立法例がたくさんあることも御指摘の通りであります。しかし、そういうことが憲法に明定されておらなければできないのだ、講和とか、宣戦とか、編成とか、常備兵額というような言葉がなければできないのだ、こういうふうな大貫委員の前提の議論が、私どもとは違っております。もちろん、編成とかいうことは、これは従来と違って、防衛庁だけが一つの特別な行政権で、一般行政権から離れておるわけじゃありませんから、一般の行政権として、一体防衛費というものをどの程度にやるべきか、編成のなにをどうするか、常備兵額をどういうふうにするかということは、年々の予算において政府が責任を持ってこれを編成し、これに対して国会の承認を得るという方法でいくことになっておるのでありまして、私は、それが最も民主的なあり方であり、また、日本の持っておる防衛力というものも、さっきから御議論がありましたように、いわゆる自衛隊という限られたものでありますから、それでちっとも差しつかえない、またそれが適当である、かように考えております。

○大貫委員 これは非常に重大な問題です。そういうことが国会の承認を得るから民主的だなんていう、そんなごまかしはありませんよ。(「承認を得るということは最も民主的じゃないか。そんな理屈に合わないことを言うな」と呼ぶ者あり)どうもうるさいな、理事のくせに何だ。
    〔発言する者多し〕

○小澤委員長 静粛に願います。

○大貫委員 まじめな質問をしているときに、こういうふまじめな態度をしていられたらいかぬ。(発言する者あり)
 議事進行についてちょっと。こういうふうな理事が隣におって妨害するのじゃ、質問が続けられない。うしろの方でヤジるならまだいいですが、すぐそばで妨害をする、しかも理事ですから、うるさくてしょうがない。注意してもらいたい。

○小澤委員長 静粛に願います。――この際、堤ツルヨ君から議事進行に関して発言を求められております。堤ツルヨ君。

○堤(ツ)委員 私は委員長に、この際徹底的に、今日以後のこの委員会の運営について、はっきりしていただきたい。というのは、きょうまで審議して参りました過程を見ましても、私はふまじめきわまる態度が自民党の中にあると思う。今国会の最も大切なこの安保審議というものは、与野党を問わず、国会議員が全勢力をかけて国民の前に審議しなければならない使命を持っております。従って、ここに質問に立ちまする社会党の議員にしても、私たち民主社会党の議員にいたしましても、何時間か図書館に入ってまじめな勉強をして、総理や外務大臣や政府と真剣な問答をやって、そして国民の前に白黒をはっきりさせて、世論を喚起して、是か非かというところの世論の決定を待って、私たちは、その世論に従ってその審議を進めていきたいと思っておる。しからば、民主主義を標榜して出てこられた国会議員たるものは、いかに自分の立場にとって不利であろうといえども、静かに謙虚な気持でこれを聞かれて、もし反論があるのならば、みずから発言の機会を求めてここで正常な発言をなさって、これに正々堂々と、理論をもって太刀打ちなさるのが国会審議のあり方だと私は思う。何時間かの勉強をしてまじめな議員――ことにわが党におきましては、時間をかせごうとか、あるいは審議の引き延ばしをやろうとか、そういう拙劣な戦術を持っておりません。一分でも、一秒でもまじめな審議をしたいというので、御存じの通り、公平な眼は民社党のまじめな勉強をしたこの質問を認めておると思う。それに委員であるところの国会議員が、みずから不利になると声を張り上げてその質問を妨害するがごときは、まことにもって国民に一票を請う権利のない国会議員だと私は思います。従って、こういう委員の不規則な発言とヤジと妨害をどうしても封ずることができないならば、与党みずからこの委員を変更されて、正常なる、委員会の運営が妨害されずに発言できるように、私は考えていただきたいと思う。これがなされない限り、私たちは、このまじめな質問を続行することはできないという考えを持つものでございまして、委員長におかれましては、優柔不断でなしに、はっきりとした態度を持ってここで宣言せられ、処置していただきたいということを、私は議事進行に関して発言をいたすものであります。

○小澤委員長 堤ツルヨ君の発言は、大体において骨子は了承いたします。従って、今後堤ツルヨ君の希望通り委員会を運営していきたいと思いますから、どうぞ皆様の御協力をお願いいたします。

○大貫委員 どうも委員長、口ばかりじゃだめですよ。椎熊君は何回も前科がある。われわれは何回もやったんだが、改悛の情がみじんもないのだから、こういう理事は更迭した方がよろしいと思う。  そこでもう一つ、先ほどの問題に戻りますけれども、先ほど岸総理の答弁の中で、何かいかにも私が、憲法上定めてなければできないのだというふうな問い方をしたように岸総理は言っておるのですが、これはなぜ各国の憲法で、軍備を持つ国が、統帥あるいは宣戦、講和、あるいは常備兵額の決定、軍の編成、こういうことを憲法事項に定めておるかというと、これは、むしろ民主的な国ほど憲法上保障されなければいかぬということなんです。憲法に根拠がなくて、勝手にそういう軍隊に類似したものを置いて、その統帥の権利まで持つということになったならば、これがたまたま一党独裁、たとえば、自民党は今多数を持っております。この多数を持っておる自民党が、一たんこの隠されたきばを出して、これが独裁政治に移行するというような場合には、軍隊を私物化するおそれがある。そういうことがおそれられるから、各国の民主憲法のもとにおいては、特に軍の統帥あるいは編成、あるいは常備兵額、宣戦、講和というようなことを憲法上の規定事項にしているわけなんです。そういう意味でも、近代憲法ではこれは憲法事項ですよ。これが定めてないことは、結局するに、わが国の憲法においては、第九条において戦争を放棄する、戦力を持たないという、絶対平和主義に立ったから、こういう定めをしなかったんだ。あとでこじつけをしているんじゃありませんか。憲法の精神から見ても、統帥の定めがなく、軍の編成の定めがなく、宣戦、講和の定めがないということ、この事態から見ても、憲法の予想するものは、自衛のための戦闘だってこれはすべきじゃないというのが、この憲法の予想だった。ところが、あとになっていろいろなこじつけをしているのが、私は政府だと思う。これはどうですか。くどいようですが、もう一度一つお答えを願いたい。

○岸国務大臣 先ほどから申し上げているように、われわれ憲法の規定において、自衛権を裏づける必要最小限度の実力を持つということ、また、それを他国からの不当な侵略の場合に行使するということは、これは禁止しているものではない、こういうのが私どもの従来からの解釈であり、私はそれが正しい解釈だと思います。しかし、今お話のようないろいろな点において、必要な軍の編成の問題であるとか、常備兵額の問題であるとか、あるいはこれをどういうふうに指揮命令していくとかというような点に関しましては、やはり勝手にこれを野放図にやる性格のものではないことは言うを待ちません。従って、必要なものは法律できめたり、あるいは予算できめたりいたしまして、それぞれ国会の承認を得ていくという建前をとっておるわけでありますから、それでもって、そういう規定がないから一切の自衛権を否認し、自衛のために必要な最小限度の実力を持つこともいけないんだ、あるいは他から侵略された場合において、それを排除するに必要な実力行使はできないんだ、こういうふうに大貫委員はお考えのようでありますが、私どもは、その前提が全然違った考えに出ておるわけであります。もちろん、そういう自衛隊の編成だとか、あるいはその額をどうするかというような問題は重要な問題であります。指揮命令の問題も必要な問題であります。だから、それに必要な法律であるとか、今申し上げたように、予算等によって国会の承認を得ていく、こういう建前をとっているのが日本の建前であって、それは決して憲法違反でもなければ、また勝手なことをそれによってやるという弊害が生ずるものでもない、かように思います。

○小澤委員長 この際、受田新吉君より関連質疑の申し出がありますから、これを許します。受田新吉君。

○受田委員 総理は、今講和をする場合における国会の承認の件を発言しておられたのでありますが、この開戦、講和という規定は、大貫委員の言われる通り、憲法上のどこにも規定を発見できない。従って、宣戦の布告をされた場合に、日本がどういう立場をとるかは、この条約によって共同行動をとる以外には規定がないわけです。
 そこでお尋ねしたいことは、憲法上の規定のない開戦、講和ということを、具体的にはどういうふうにお運びなさろうとするのか、お答えを願いたい。

○岸国務大臣 開戦ということは、私は、性質上、日本の場合においては日本政府がやるということはなかろうと思うのです。これは相手方がそういう宣戦布告をするかどうか知りません。それはしようがすまいが、日本としては、現実に不正な侵略を実力でもって排除するに必要な行動をとるということでありますから、いわゆる広い意味における開戦という性格のものではないと思います。ただ、その事態を収拾するために、内容的に申しますと講和といいますか、そういう戦闘行為をやめることについて申し合わせをするということがあるだろう、それは条約であって、従って、条約としての国会の承認その他の手続を経るべきものである、かように私は思います。

○受田委員 私は、岸さんの場合、大へん危険を感ずる事柄があるのでありますが、講和の場合は、条約を国会の承認を得て締結したい、こう発言をされたのであります。ところが、国会の承認を得る段階以前に、事態は非常に急迫することになるわけです。従って、自衛隊の防衛出動を命ぜられた総理として、講和条約を締結する前に、戦争を停止する措置をとらなければならない場合が起こる。これは事実上の問題としては交戦国家として日本は立っていないのであります。総理は宣戦の布告をされた経験を持っておられるわけでございますけれども、まだ講和をおやりになった経験がないので、この点非常に心配があるのであります。特に講和の際に、条約の締結について国会の承認を得る前に、停戦措置をアメリカと相談なしに、日本だけで、独自の見解でなし得るかどうか、ここを一つお答え願いたい。

○岸国務大臣 それは私は事態によると思うのです。事態によってそういうことが必要な場合におきましては、必要な措置をとることは当然であろうと思います。

○受田委員 総理も納得しておられる昭和三十一年二月二十九日の鳩山総理の言明の中に、「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところではない」、こういうことを言っておられるので、座して自滅を待つべしということが憲法の趣旨でないということになりますならば、ここに日本はあくまでも戦いを続けるというようなことになりかねないと思うのです。日本の兵力というもの、武力攻撃に対して、よしアメリカ軍の協力があろうとも大したものではないのでありますから、自然に自滅を待つ前に講和を結ぶ、停戦をするという措置に出なければならぬと思います。このことは十分お考えになっておらなければならぬ、いかがなさいますか。

○岸国務大臣 不当な侵略があった場合におきましても、不当な侵略を、ただ実力を行使して排除するというだけじゃなしに、もちろん、そういう不当な侵略をやめろということも、われわれはあらゆる機会に言うでしょうし、また、国連の活動によりましてそういうものをとめることもやらなければならぬと思います。それは当然である。ただ、他から侵略を受けた、不正な侵略を受けた場合に、座してそのままその侵略なり武力攻撃を甘んじて受けておるというわけにはいきませんから、これを実力を行使して排除するに必要な行動をとるというのが、われわれ自衛権の行使の意義であります。そうして、そういう事態が起これば、これはもちろん国連に加盟している日本としては、国連の活動を求めるところの方法も講じますし、また、そういう事態が長引くようなことをさせないように努力することは、これは当然であります。従って、その事態に応じて、われわれは、とにかく武力が日本に加えられておるという事実をなくするというのを目標に、あらゆる行動をしていくと考えております。

○受田委員 あなたも、自滅を待つような状態になったならば、進んで敵の基地を攻撃し得ると言明をされておる。先ほどの御答弁によると、領域外には日本の自衛隊を出さぬと御答弁されておる。この問題はここで一つ考え直していただかなければならないのでございますが、敵基地を攻撃することになると、日本の兵力が領域外へ出ることになる。今度の条約のお話し合いでは、敵基地を攻撃し得る場合を了解のもとに条約が締結されておるのかどうか、一つ御答弁をお願いしたい。

○岸国務大臣 日本の自衛隊の行動する範囲は、憲法の解釈としてわれわれがしばしばお答えをしておるところの、そういう制約を受けておる。そういうものを日本が持っておるということは、すべてのことの交渉の前提になっておるわけであります。

○受田委員 敵基地を攻撃し得る場合、これは先ほどの御答弁で、領域外には日本の自衛隊は出ないというのと矛盾しておると思います。この点の御答弁を願いたい。

○岸国務大臣 これはさっき申し上げたように、日本の自衛隊としては、他国の領土、領空、領海へ出かけていって、そしてこれに対して実力を行使するということは、いたさないということを申し上げた通りであります。

○受田委員 三十一年二月二十九日の敵基地を攻撃し得る場合は、このたびの条約では容認されないと了解してよろしゅうございますか。

○岸国務大臣 ちょっと御質問の御趣旨がよくわからないのですが、三十……。

○受田委員 三十一年二月二十九日の衆議院の内閣委員会で、鳩山総理から声明がされている。これはもう一度申し上げますよ。「わが国に対して急迫不正の侵略が行われ、その侵略の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います。」、こういうことなんです。

○岸国務大臣 それは自衛権というものの本質に関する議論だと私は思います。別にその点は、条約によって自衛権の本質というものが左右されるというふうには考えておりません。

○受田委員 この本質は、条約の中に十分盛り込まれて考えられるという御答弁だと思います。このことは、結局敵基地を攻撃することが可能であるという総理の答弁であると了解してよろしゅうございますか。

○岸国務大臣 これは自衛権の本質として、かつて答えられたところのものであると思います。私どもは、実際上そういう手段を用いるか用いないかということとは、おのずから違うと思います。たとえば、日本の自衛隊がそういうところへ行ってその基地をたたくということではなくして、日本に駐留しておるアメリカ軍によって、それらの攻撃を防ぐというような手段が講ぜられるということも、当然事態としては考えなければならぬ。ただ、自衛権の本質が問題になったときにおいて、自衛権というものは、そういう他からやられた場合において、そうすれば民族及び領土というものが座して破滅するにいくまで、それは仕方ないんだという性質のものであるかどうかという、自衛権の本質に関する答えでありまして、実際にそういう事態が起こった場合にどう処置するかという問題については、事態に応じて、今申すようなアメリカの駐留する軍隊によってそのミサイル基地をたたいて、そしてそういう武力攻撃が行なわれないようにするということが、一番合理的なやり方であろうと思います。

○受田委員 この問題は、あらためて討議する大事な問題でありまするので、私はこれに関連して、もう一言総理にお答えを願っておきたいことがあります。こういう自衛権の本質論をお唱えになる総理とされましては、おそらく少々のことで講和をなさらないと私、心配しておる。この日本の自衛隊の実力を考えたときに、米軍と共同作戦をやる場合に、すみやかに講和をして停戦をするという段階が、事実問題として起こってこなければならぬと思う。そうした場合に、講和の方法に、条約の締結で国会の承認を求めるという方法のほかに、自衛隊の出動を停止させるところの国会の承認の規定がある。及び総理大臣みずからによって、これを停止させることもできるわけなんでございますが、そういう場合の停戦の方法について、総理の御見解を伺っておきたい。

○岸国務大臣 もちろん、われわれは、自衛隊によってその侵略に対して実力で対抗して、これを排除するということが非常に望ましい方法だと考えません。ただ現実にそういう侵略があった場合に、これをやむを得ずやるわけであります。従って、そういう場合においても必ず国連にこれを報告し、国連の安保理事会等の活動によって、事態を収拾せしめるようにすることは当然であります。しかし、他から現実に武力攻撃が加えられておる限りにおいて、民族を守り、国土を守る以上必要であるならば、実力を行使してこれを排除していかなければならないことは、これは当然でございます。しかしながら、それが必要の限度を越えてまで何かやるというような受田委員の御心配のようでありますが、自衛権というものの本質から見て、そういうことはあり得ないし、また、やるべきものではない、かように考えます。

○受田委員 総理が安易に考えておられるように、国連に持ち出したりなどする余裕がない段階で、早くお手あげをしなければならぬ場合が起こってくるわけです。こういう究極兵器の進歩した時代に、国連に持ち込んで、ゆうゆうとその解決を待望するようなやり方では間に合わないんで、早くお手上げをしなければならぬというような場合の措置をどうするか。

○藤山国務大臣 御承知のように、武力攻撃がございましたときには、第五条に書いてありますように、直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならないのであります。安保理事会は、要するに常時のスタンディング・コミティでありまして、報告を受けましたら直ちに、どんな時間にでも開かなければなりません。同時に、安保理事会が処置をとらなければ、二十四時間以内に総会を招集しなければならぬのは、国際連合の規定でございます。今日までの習慣でございます。従いまして、日本に武力攻撃があった、ミサイルが落っこった、われわれはそれに対する抵抗の処置をとり、直ちに国連に日米両国は訴えるわけでありますから、国連が処置をとらない前に、何かやめなければならぬとか、いろいろな問題が起こるような時間的余裕は、そうないとわれわれは考えておるのでありまして、そういう意味において、はっきりしておるものだと思っております。

○受田委員 はっきりしないのです。ゆうゆうとあなたは国連の安全保障理事会の結論を待たれるようなことでございますが、そういう時間的余裕はない。もう自滅を待つまでもなく、すみやかに停戦をして、攻撃を停止せしめるという措置をとらなければならない。それを総理みずからの手でやるのか、自衛隊法による国会の承認をとってやるのか、そういう場合の措置を総理にお答えを願っておるわけであります。

○岸国務大臣 今のお話、よくわからないのですが、他から攻撃があったら、すぐ手をあげて降伏しろ、いかなる場合においても、降伏するということが一番安全じゃないかと言われるような御意見を基礎に、御質問のように私はどうも理解できるのですが、そうでなしに、やはり武力攻撃があった場合においては、一応とにかく武力でもってこれを排除するという措置をとり、その事態そのものを収拾するというのは、何といっても国連を中心に考えていくべきである。それから、こちらがお手あげしたら――こちらから進んで武力を行使しているのじゃない、向こうから来たわけでありますから、一体その場合に、直ちに向こうがその攻撃をやめるかどうかというようなことも、これは事実上、いかなる場合においても降伏ということをすぐ言えばやめるのだ、こういう前提も私は考えられないのであります。一応とにかく独立国であって、自主的な立場から、われわれの国の領土、領空その他に対して不当な侵略がある限りにおいては、これは私は、独立国としてそれを排除する行動をとるということは、これは必要なことであります。しかしながら、その事態そのものをできるだけ早く解決して、そうしていつまでも長い間の戦闘行為を続けていくというようなことのないように努力すべきことは、これは私は当然のことである、こう思います。しかし、何でも攻撃があったらすぐお手あげをして、降伏しさえすればそれでいいんだという考え方は、私は、独立国であり、自衛国である以上は考えるべきものではない、こう思います。

○受田委員 簡単に降伏するということを、私、前提としておるわけではない。あなたのように、開戦をやられた責任者で、終結をやられた経験がない場合に、ここに戦争を停止させる、すなわち、戦いをやめるということについて自衛隊法の発動をすみやかにやる。しかしその前に、総理みずからが日本の自衛隊だけを先に戦争を停止させる、こういうような措置をとる御意思がないと、自滅を待つまでもなくて敵基地を攻撃したり、いろいろな措置をされるような手段を弄しておられると、ついに日本は講和の機会を失うおそれがある。国連による安全保障理事会の解決を待つまでもなく、その前に、総理自身の手で講和の方式をどうおとりになるか、停戦の方式をどうおとりになるかを私伺いたいのです。これはアメリカとの話し合いでやらなければならないのか、日本自身が単独に講和あるいは停戦をやることができるのか、ここもあわせてお答えを願いたい。

○岸国務大臣 停戦とか、講和とかということは、言うまでもなく、相手方のあることでありまして、相手方が、――相手方というのは、アメリカということじゃありません、実際の武力攻撃を日本に加えておる国のことであります。従って、われわれとしては、とにかくできるだけ物事を平和的に解決するということは、これはもう先ほど大貫委員にお答えした通り、憲法の精神であり、われわれの本質的な念願でございます。ただ現実に不当なる武力攻撃が加えられたその武力攻撃を、われわれはなくするというために必要最小限度の行動をとるわけでありますから、その行動がなくなれば、われわれは何も自衛隊を出動さしておる必要もなければ、それはわれわれの方から別に手出ししていく必要はちっともない。しかし、武力攻撃が継続している限りにおいて、どうも日本の方からお手あげするようなことを前提として考えるということは、私は適当でなかろう。しかし、あくまでも、武力攻撃があった場合において、こっちが武力行動でこれに抵抗していく場合においては、すぐ安保理事会に報告しますから、そういう事態を安保理事会もすぐ取り上げてこれに対する平和的解決の道を見出すということは、私は当然やると思います。また、やらせるようにいたします。

○受田委員 関連であるからこれで終わりますが、総理、私が一つ心配しておるのは、アメリカと運命共同体で、最後まで共同防衛作戦に参加するのかどうか。日本だけが単独に停戦をやって、アメリカの了解を得ることができるのかどうか、自衛戦争をやめる時期が、アメリカと一本でなければならないのかどうかを、念を入れてお尋ねしておるわけです。

○岸国務大臣 これは日本の領土、領空、領海に対する武力攻撃がやめば、これは自衛隊としての行動はいたさない。また、五条において、アメリカ軍もまたその点は行動を停止するわけでございますから、その点は、アメリカの作戦に何か引き込まれて、日本が引きずられていくというようなことは、私は、この五条の規定をお読み下さればわかるように、日本の施政下にある領土、領空、領海に対する武力攻撃がやめば、自衛隊の出動ということをやめるということは当然のことでございます。

○小澤委員長 この際、四十分間休憩をいたします。
    午後零時四千五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十一分開議

○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。大貫大八君。

○大貫委員 今度は条約の内容についてお尋ねをしていくつもりですが、まず第三条です。これは前にもちょっと触れたのですが、この第三条というのは大へんなことを約束しておると思うのです。  そこで、これは条約の内容に入りまするから、藤山外務大臣にお答えを願いたいのですが、まず第一にお尋ねしたいことは、日本は、結局この条項によって、武力攻撃に抵抗する能力を維持し発展させる義務を負うことになると思うのですが、この武力攻撃に抵抗する能力というのは一体どの程度の能力を考えておるのですか。

○藤山国務大臣 武力攻撃に抵抗する能力でございますけれども、同時に、第三条に「憲法上の規定に従うことを条件として、」ということが書いてございます。これは日本憲法の第九条でございまして、従って、自衛力の限界というものがはっきりいたしておりますので、武力攻撃に抵抗する能力というのは、自衛力の範囲だと御了解願いたいと思います。

○大貫委員 自衛力の限界といっても、限度はどうなんですか。自衛力の範囲だと言ったって、自衛力だって侵略だって、これはうらはらの問題で、物体は同じものです。そうすると、一体どの限度までその能力を高めようと考えておるのですか。

○藤山国務大臣 むろん、客観的条件はいろいろございましょうけれども、自衛のための最小の能力でございます。

○大貫委員 ところが、自衛のためと言っても、御承知のように、今日兵器の発達というのは想像に絶するものがありまして、兵器は今日まさに無限大に発達しておると思うのです。大陸間弾道弾はすでに完成していますし、月ロケットも成功しておる。いながらにして、数千キロのかなたに、ボタン一つ押せば、自由自在に水爆を撃ち込めるような時代であります。このような高度の科学戦、ミサイル戦争を予想した場合、かりにそのような武力攻撃があった場合に、これに抵抗する能力というのは、一体どの程度のことをお考えですか。これは大へんなことだと思うのです。

○藤山国務大臣 武力攻撃が起こりましたときに、先ほど総理からも答弁されておりますように、実力をもってその日本に与えられた武力攻撃を排除するということが、自衛力でございます。従って、その限度内において行なわれるわけでありまして、それをわれわれは最小限に想定しておるのでございます。

○大貫委員 だから、それは一体具体的にはどこらまで考えるのですか。今日のように非常に高度に武力、兵器が発達したときに、これに抵抗する能力というのは、考え方によっては、大へん大きなものを備えなければならぬと思うのです。ところが、そんなことは、日本の近代科学の水準、兵器科学の水準では、とうてい私は不可能なことだと思うのです。もちろん、財政的にもそんなことは不可能でしょう。もう少し具体的に、自衛能力というものは、これは満足のいく限界はないと思いますけれども、大体どの程度のことを維持し発展させる約束をしておるのですか。

○藤山国務大臣 どういう武器がどうとかいう問題よりも、むしろ、今御指摘のありましたような財政的な理由もございます。従って、おのずから限度がある。また、自衛力という意味からいいまして、限度がある、これは当然のことでございます。

○大貫委員 その限度をお尋ねしておるのです。それでは、私の方から具体的に申し上げましょう。たとえば近代的武力攻撃に抵抗する能力を維持するためには、最小限度、私は核武装をしなければならぬと思います。それでなければ、これは問題にならないと思う。相手国がかりに核兵器による攻撃を加えてきた場合、これを持たずして抵抗するなんということは、ちょうど、かつて大東亜戦争でB29を竹槍でにらんだと同じナンセンスだと思うのです。そういうふうな抵抗なら、むしろ抵抗しない方がよろしい。一体、核武装をするのかしないのか。武力攻撃に抵抗する能力というならば、そのくらいの力を持たなければ、何の意味もなさぬと思うのですが、その点どうですか。

○赤城国務大臣 お尋ねでありますが、第三条は、日本の自衛力をどの程度まで維持し、あるいは発展させるかということを約束している条文でございません。具体的には、日本の国力、国情に応じて自衛力を維持、発展させる。というのは、日本の自主的な考え方から、限度はきめていくわけであります。しからば、その限度はどの程度であるかということで、今例として、ICBM等の原水爆、こういうものを撃ち込まれるのに対しては、日本も核武装をして対抗すべきじゃないかというお尋ねがあったのでありますが、私どもの見通しといたしまして、日本に対して、ICBMとか、あるいはIRBMとかを撃ち込むという原子戦的な侵略は、これは予想されません。これは世界戦争になると思います。でありますので、私どもといたしましては、通常兵器による侵略に対抗するということで考えらるべきだと思います。しこうして、その限度いかんということでありますが、この限度という線を引くことはなかなかむずかしいと思いますが、これは日本の国力、国情に応ずるのでありますから、日本の財政的な面から考慮し、日本の生産、国民所得等から割り出して、日本の負担がどのくらいできるかというところから、おのずから制約が出てくると思います。そういう点におきまして、私どもは、財政面から見れば、国民所得の二%程度の財政力の負担をもって維持、整備していくことが必要じゃないか、こういう見通しは持っておりますが、それぞれの年々の財政、予算等に見合ってやっていくべきものだ、具体的にはこう考えております。

○大貫委員 自主的に日本の財政能力に応じてこれをきめていくのだというのは、午前中も岸総理がそのような答弁をいたしております。しかし、この第三条の条約としての内容は、そんななまやさしいものじゃないと思うのです。そんなことなら大した心配はないでしょうけれども、これは、要するに、アメリカのバンデンバーグの決議そのままがここに移されておるのであります。結局、条約上義務を負うことになるのじゃないですか。日本は、この第三条によって、武力攻撃に抵抗するだけの能力を作り上げる。要するに、日本が自衛、つまり継続的かつ効果的な自助をなし得る能力をまず作り上げる、こういうことをアメリカと約束し合うというのが、第三条の趣旨じゃないのですか。

○藤山国務大臣 午前中にも総理が答弁されましたように、この第三条は、バンデンバーグ決議の趣旨を体してはおりますけれども、バンデンバーグ決議そのものと全く同じではございません。従いまして、違っております。そういたしまして、われわれは憲法上の規定に従い、ただいま御説明申し上げているような条件のもとに、われわれがみずから自分の自衛力というものを決定して参るのでありまして、何らか新しい内容の義務をわれわれは課せられたものではございません。

○大貫委員 これは大へんなごまかしなんですよ。現行条約ならば義務はありません。期待なんです。日本がこれこれの武力を漸増することを期待すると、現行の安保条約では書いてある。これはアメリカが期待するだけで、日本が財政上のいろいろな理由から期待に沿えないといっても、条約違反にはなりません。ところが、第三条では、互いにこういう能力を維持、発展させるということでありますから、相互にそういう義務を負うということを約束するのが、第三条だと思う。そんなことは、条文の解釈として当然じゃないですか。そんなごまかしを言わずに、もっと率直に述べていただきたい。

○藤山国務大臣 独立国として自分が自衛力を持つことは、当然でございます。つまり、日本が持ちます自衛力というものは、日本の国情、経済その他の条件に従って、日本みずからが決定して参ることでございます。従いまして、何かアメリカ側から押しつけられて、新しい内容のある義務を引き受けたものではないということを申し上げておるのであって、われわれは日本国民として当然持つべき自衛力を充実していくということは、当然のことでありまして、これを宣言しておるものでございます。

○大貫委員 それでは、第三柔なんというのは意味ないじゃないですか。そんなことをアメリカが承知するはずはないでしょう。やはりこの条項に、従って、アメリカが、ある程度、日本の自助のためにこのくらいの武力を増強してくれというようなことは、当然、第四条の条約の実施に関する協議事項として出てこなくちゃならぬはずです。そうでなければ、日本は日本で自由勝手に、アメリカと何らの話し合いもせずに、日本だけの考え方で自衛力を漸増するのだと言ったら、第三条なんて置く必要はないじゃないですか。少なくとも条約第何条として置く限りにおいては、そんなばかな条約はないじゃないですか。やはり義務を負うからこそ、第三条――これは日本だけの義務じゃないでしょう。アメリカも、体裁上から言うと、そういう義務を負う、これが条約じゃないですか。双方が義務を負い合うというのが、この第三条の精神じゃないですか。

○藤山国務大臣 今申し上げましたように、日本が他から侵略を受けた場合に、それを排除するように自衛力を維持させていくということは、これは日本国民の考え方でありまして、一部に反対はあるかもしれませんが、私は当然そういう考え方におるわけでございます。従って、その考え方をわれわれは持っているということが、バンデンバーグ決議の一番大事なことでありまして、相手国がそういう決意を国民的に持っていないという国とは、バンデンバーグ決議の趣旨から見ましても、結べない。しかし、日本がそういう決意を持っている。しかし、その内容は、日本の社会事情、あるいは経済事情その他の事情によりまして、自分みずからが決定をいたしていく、こういうことでございます。

○大貫委員 これは、単なるバンデンバーグ決議の精神に基づいての決意を持っておるというだけでは、条約の意味をなさないのではないか。決意だけでなしに、そういう心がまえで日本の自衛力の継続的かつ効果的に増強していく、これを相互に義務として承認し合うというのが、第三条じゃありませんか。

○藤山国務大臣 今申し上げました通り、日本自身が持っております決意をそこに表明し、アメリカもその持っておる決意をそこに表明する、そういうことが条約においてうたわれておるわけでございます。そしてそれが、お話のように、この条約ができたために、何か新しい内容的な義務を負うものでないということを申し上げておるのでございます。

○大貫委員 それは少しおかしいのじゃないですか。決意の表明だけでいいのですか。それを確かめておきます。それじゃ、この第三条というのは、単にそういう決意を表明するだけで、アメリカに対しては、条約上、何ら日本が軍備を増強する義務を認めたものではないんだ、単に自衛力を増強する決意を表明するだけで、アメリカの希望するような自衛力を増強する義務を負うたものではないんだ、こう了解してよろしいのですか。 ○藤山国務大臣 先ほど来重ねて申し上げておりますように、新たな何か内容的な義務を負ったわけではないのでありまして、両方が、そういう決意を持っておる、その決意を表わしておるものでございます。

○大貫委員 ところが、現行条約ではこう書いてありますね。「直接及び間接の侵略に対する自国の自衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」こういっている。期待なんです。アメリカがそういう期待をするが、日本が期待通りにやらなくても、何ら文句はない。ところが、今度は、相互に協力して武力攻撃に抵抗する能力を維持し発展させるということを約束するんです。武力を漸増することを期待することと、相互に約束することとは、まるで内容が違うじゃありませんか。そういうごまかしをされないで、一つ明確に答えていただきたい。

○藤山国務大臣 今お読みになった「武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を」「維持し発展させる。」という、その中間に「憲法上の規定に従うことを条件として、」ということがございます。従って、日本におきましては自衛力を維持させるということなんでありまして、これはそれぞれの能力で日本自身がきめる限度内においてこれをきめていく。そして日本といたしましては、国防会議の決定もございます。その線に沿って進めて参るわけでありまして、何かこの条約でもって、新たにこういうことをやるのだということを義務づけられたものではございません。

○大貫委員 くどいようですが、確かめておきます。総理大臣に一つお尋ねしましょう。この第三条というのは、何ら日本が自衛力を漸増する義務をアメリカに負うたものではないのですか。ただ日本が自主的に何でもきめていいということなんですか。

○岸国務大臣 この三条によりまして、具体的内容として、われわれがどういうふうにどの程度に増強しなければならぬとか、あるいは、それについてあらかじめ米国側の承認を受けて、それだけのものを作っていかなければならぬというふうな義務を負うものではないのでありまして、日本は日本の立場において、従来の方針のごとく、国力、国情に応じてこれを漸増していくという基本方針に従って自主的に定めていいものである。これはアメリカ側においても十分了承していることでありますし、その点については何ら疑いのないことと思います。

○大貫委員 この第三条は、そういう義務じゃないとすれば、この条約の実施に関し随時協議する、この第四条の協議事項には、日本の自衛力を漸増するということは入らぬのですか。

○藤山国務大臣 第四条は、条約の実施に関して随時協議するということでございます。むろん、この種の条約を運営して参りますためには、対等の立場に立ちまして随時協議をしなければ、運営が的確にいかないことは当然でございます。従いまして、この条約の運営にあたりまして、お互いに随時協議をして参るわけでありまして、その内容については、多岐にわたっておりましょうし、一々今どういうことを協議するということは申し上げかねると思いますけれども、運営にあたって万全を期するために、当然協議をして参るわけでございます。

○大貫委員 私はそんな抽象的なお答えを聞いているのじゃなくて、具体的に質問を提起したわけなのです。第三条の、武力攻撃に抵抗する能力、これを維持し発展させるという、この自衛力を漸増するということは、四条による条約の実施に関する協議事項に入るか入らぬかという具体的なことを聞いているのです。

○藤山国務大臣 第三条では、米国は米国・日本は日本でそれぞれ決定をしていくわけでございます。従いまして、それぞれ自分が決定していきますものを、一々協議する必要はないと存じております。

○大貫委員 私は、この条約はそんな甘いものじゃないと思う。条約の解釈として、アメリカがそれを承諾するのならけっこうですけれども、まあそういうふうに確約されるならば、一応本日はその通りに聞いておきましょう。しかし、後日必ず問題が起きてくると私は思う。政府の答弁するようななまやさしいことなら、条約の第三条なんか必要はありませんよ。
 そこで防衛庁長官にお尋ねをいたしますが、核武装というようなことは考えていないというようなことでありましたけれども、かりに飛行機を持ち、あるいは大砲を持ち、軍艦を持ったところで、一体近代戦に何ほどの抵抗ができるのでしょうか。核兵器を使うような戦争は、世界戦争になるから、それは考えてないと言いまするけれども、最近では、中国だって、核武装をすると言っているでしょう。それならば、核武装に対して抵抗するのでなければ、これはそんな無理して増強したところで、何の意味もないのじゃないか。少なくとも、近代戦を想定して、その武力攻撃に抵抗する能力といえば、どうしたって核武装くらいまでしなければ――私は、しろというのじゃないですよ。そういうおそれがあるから、そう言うのですが、先ほどから申し上げますように、ほんとうに憲法を守るのならば、やはり日本はまる裸でいくというのが憲法の精神だと思うのですけれども、政府はそうじゃないと言うのだから、そこで、武力攻撃に抵抗する能力といえば、向こうが核兵器で撃ち込んでくるのに、日本は時代おくれの大砲や鉄砲や飛行機で、そんなものを作ったところで、それは抵抗する能力にならぬのじゃないでしょうか。これはどうお考えですか。

○赤城国務大臣 武力攻撃に抵抗する、こういうことであるとすれば、核武装しなければ、意味をなさぬじゃないかということでございますが、先ほどから論議されておりまするように、日本の憲法におきましては、あえて攻撃をしていくというようなことは考えておりません。もし、そういうことまで考えるのでありますならば、これは核武装ということも必要かと思います。しかし、侵略をされた場合に抵抗する能力ということを、自衛隊としては考えております。そういう点から考えまするならば、先ほどから申し上げましたように、核武装しないミサイルを装備する必要もありましょう。あるいは優秀なるサイドワインダー等をもってする戦闘機の必要も生じてきておりまするから、ロッキード等も採用しておるわけであります。そういうことによって日本に対する侵略に抵抗するための能力は整備できる、こういう立場に立っていますので、あえて核武装をするということを考えておらないわけであります。

○大貫委員 どうも防衛庁長官の考え方は少し甘いのじゃないでしょうか。近代戦争というものは、そんなものならば、きわめてのんきなものであります。かりに、今日侵略というものが予想されるといたしましたならば、近代戦というものは、そんな甘いものじゃないでしょう。従いまして、みずから防衛し得るような軍備というものは、限りがないと思うのです。しかも、かりに相手国がいろんな核武装で侵略してきたという場合に、それに抵抗するだけの能力を持っていないとしたら、これは抵抗したって、とうていむだなことなんですから、金をかけて自衛隊なんか増強する必要はごうもないと思う。抵抗するだけの能力をこれから持っていくとすれば、これはまた容易ならぬことだと思う。軍事的には、世界的にあまりにも格差ができ過ぎていると思う。現代の科学では、どこまでいっても、大丈夫という安定線が出てこないでしょう。そうすると、一体、どこまで軍事力を増強したならば、その武力攻撃に抵抗する能力にまで達するかどうかということは、際限がないと思うのです。そうすると、今は、防衛庁長官のおっしゃったようなもので、ロッキードぐらいでがまんする。ところが、だんだんやっていくと、私が言うように、相手国は核兵器の侵略もあり得るのだから、これに抵抗するものを持たなければならぬ、筋道としては必ずこういうふうになってくると思うのです。そうすると、午前中から再々質疑応答をかわしましたが、これは今の憲法ではどうしようもないことになっていくと思うのですが、そこらの内容はどうなんですか。

○赤城国務大臣 どうも、お尋ねの前提が、戦争をしてどういうふうに勝つかという前提からお尋ねのように私は聞いております。しかし、安全保障条約というものは、御承知のように、戦争を起こさせない、戦争抑制力としての機能で、戦争したら勝つためのものというような考え方からできているものではございません。核武装をしておるというのは、世界では、アメリカと、ソ連と、イギリスだけであります。世界各国とも、通常兵器によって自分の国の平和と安全を守ろう、こういう努力をしておるわけであります。でありますから、日本としても、日本に侵略があるならば、通常兵器によってこれに抵抗していく、こういう能力を維持し、発展させていくということは当然だと思います。従って、万が一、不幸にして核の攻撃を受けるというようなことがありまするならば、この安全保障条約によって、アメリカの報復力というものによってこれを排除するというのが、この安全保障条約の内容だと思います。でありますが、実はそういうことがないことを期してこの条約を結んでいくということが、この条約の本体だといいますか、趣旨だ、こういうふうに考えております。

○大貫委員 そういうことのないように期していくというならば、これは憲法の精神に従って武力なんか持たぬ方がいいんです。なまはんかな武力なんか持って抵抗するといっても、核兵器の進歩した今日、核兵器でも使われたら、どうにもならないんです。昔と違うんですよ。だから、なまはんかな武力を持たない。特にこの憲法というのは、原子兵器によって日本が攻撃をされた後に、もう永久に戦争はよしたのだということが宣言されたと思うのです。だから、防衛庁長官がそのようなお考えならば、下手な武力なんかは持たぬ方がいいんじゃないか。むしろ、大砲だのロッキードによっては防げないんじゃないですか、その点はどう考えるんですか。防衛庁長官は、責任を持って今の力で防衛できるという確信が一体あるんですか。

○赤城国務大臣 先ほどから申し上げておりまするように、世界において核を持ってやっていこうというのは、英、米、ソ三国ぐらいであります。ほかのどこの国でも、通常兵器、たとえば艦船により、あるいは飛行機により、あるいは陸上部隊もありましょう、そういうものによって、自国に対する侵略があれば、これをはねのける、こういう態様、こういう形を持っておることが、やはり侵略を招かないことになるのだ、こういう形から、世界どこの国でも、やはり自衛力というものを、その国力、国情に応じて維持、発展しているのが現状だと思います。日本もその例外でなく、そういう意味で、自衛力を通常兵器によって維持、発展していく、これが日本の平和と安全を守るためだ、こういうふうに私どもは考えておるわけであります。そうしてお話のような、核攻撃というようなことがある場合には――私どもは、ないことを期しておるし、また、世界も、そういうことをしてはいけないということで、アメリカ及びソ連などでいろいろ協議をしておるようでありますけれども、しかし、私たちも、ないことを期待しますが、もしそういうことがあるならば、この安全保障条約の趣旨に従って、核の攻撃に対しては、アメリカの核の報復力、こういうものが発動することになると思います。しかし、根本的に考えれば、先ほどから申し上げました、そういう発動がないようなことを期しての安全保障条約である、こういうように私たちは考えております。

○小澤委員長 この際、竹谷源太郎君から関連質問の申し出がありますから、これを許します。竹谷源太郎君。

○竹谷委員 核武装に関連をして、私もっと突っ込んでお尋ねをしたいのであります。実はこの間、三月十六日の本委員会において、新安保条約によって米側の力が強くなる、そうすると、戦争抑制力である武力というもの、実力というものについて、ソ連、中国は危険を感ずる、戦争抑制のために、中国に核武装しなければならないような情勢になるのではないか、そうした場合、中国が核武装をした場合、これを守るために、日本もまた核武装をするか、あるいは在日米軍の核装備を許さざるを得ないようになるのではないか、このように質問をいたしました。これに対して岸総理は、「日本が核武装をしないこと、また核兵器の持ち込みを認めないということは、一貫して私が強く声明しておる通りでありまして、」こういうふうに答弁されまして、今、大貫委員の質問に対して答えたのと同じような答弁でございました。この点は、去る三月十六日も、きょうも、総理大臣の御意見に変わりはないかどうか、お尋ねしたいのであります。

○岸国務大臣 私の考えに変わりはございません。

○竹谷委員 しからば、お尋ねをしたいのでありまするが、昭和三十二年五月七日、参議院内閣委員会において、秋山長造君が次のように岸首相に質問をいたしました。すなわち、端的にお伺いしますが、「自衛の範囲内ならば、あるいはきわめて小型のものならば、あるいは防御的なものならばというようにワクさえつけば、核兵器を用いてもあえて憲法違反ではないというようにお考えになっているのかどうか。」こういう質問を秋山長造君がなすった。これに対して総理は、「今日われわれの普通に核兵器と考えられている原水爆やこれを中心としたようなもの、これはもっぱら攻撃用の性格を持っているものであると思いますが、そういうものを用いてはならないことはこれは当然でありますけれども、ただ言葉だけの観念でもって、核兵器と名前がつけばいかなるものもこれは憲法違反と、こういう法律的解釈につきましては、今私がお答え申し上げましたように、その自衛力の本来の本質に反せない性格を持っているものならば、原子力を用いましても私は差しつかえないのじゃないか、かように考えております。」こういうふうに原子力兵器、核兵器の是認の答弁がありました。これに対しまして秋山君は、続けていわく、「私は重大な御発言を今初めて聞くんですが、原子力を用いた兵器でも自衛の範囲内ならばかまわない、これはその通りなんですか。原子力兵器を用いてもいいのですか、自衛ということならば。」こう質問しましたところ、岸首相は「問題はわれわれがあくまでも自衛力の範囲であり、自衛力というワクを越えないということが、自衛権の範囲を越えないということが憲法の精神であって、やはりそういう意味における科学の発達というもの、技術の発達というものについてそれを一切制約するというものではなしに、自衛権という本来の本質ですべての兵器というものの性格をきめるべきものである、かように考えております。」これはそのときの質問応答の一節でありまするが、この速記録を見ますると、昭和三十二年五月には、岸首相は、自衛の範囲内ならば、兵器の日進月歩の今日においては、自衛の範囲内というワク内であるならば、原子兵器も核兵器も用いることもあり得る、こういう意味の答弁をしたものと受け取れるのでありますつるが、今首相は、核兵器は一切憲法違反である、また三月十六日の私に対する答弁においても同様のお答があったのでありまするが、この昭和三十二年五月七日の参議院内閣委員会におけるときのこの答弁を、その後変更せられたのであるかどうか。前のは間違いであった、核兵器は一切憲法違反である、このように今はお考えになっておるのであるかどうか、お尋ねをいたしたいのであります。

○岸国務大臣 私の前後の質疑応答を、竹谷委員の今の御質問で、私は混同されておるように思うのであります。私は、日本の自衛隊は、一切核武装しない、また、核兵器の持ち込みはこれを認めないということを申し上げておることは、一貫して少しも変わっておりません。ただ問題は、秋山長造君にお答えをした問題は、憲法解釈としての議論でございます。私が先ほど申し上げているのは、憲法上核兵器というものを持ち込むこと及び核武装することを、一切憲法違反なりと今日申し上げているわけではございません。こういうものをしないということを私は申しておる。憲法解釈として考えるならば、自衛権というものを持っておって、その自衛権を裏づけるに必要な最小限度の実方しか憲法上し持てないのです。その自衛権の裏づけとして必要な最少限度のものをこえているものは、これは一切できないのであります。従って、今日言う原水爆のごとき、防衛の目的ではなしに、他国を攻撃する意図を持っておるようなものが持てないことは、自衛権という内容から見まして、これは当然憲法の解釈として問題ないわけです。ただ、名前が核兵器であり、核を用いているものは、核という名がつけば一切、憲法違反だというふうに憲法の解釈をすることは、正当でないということを申し上げたわけでございます。

○竹谷委員 今大貫君の質問は、実際問題、政策として、日本が核武装をするか、あるいは在日米軍の核装備を認めるかということで、政策上、実際上のお考えとしては、そういうことは認めない、こういうのはわかります。しかし私が三月十六日にお尋ねいたしたのは、中国が核武装をする、こちらも防衛の範囲内で核武装をせざるを得ないように理論上なるのではないかと聞いておるのです。私は三月十六日のことを特に聞きたいのですが、私の質問は、日本政府がやるか、アメリカがやるかは別として、日本において核武装、ミサイル兵器による防御ということをやらなければならぬようになるのじゃないか。それは、政府のお考えで、守るための装備であるから、それは憲法の自衛のために必要な武力、実力の範囲内である、こういうふうにお考えになるであろうと思う。そういう理論に到達すると思うというふうにして、憲法の自衛のために必要な武力の中には、場合によっては核兵器も入ってくるんじゃないか。政府の自衛という観念からいえば、理論上憲法の自衛の中には核武装も入るのじゃないかと私が質問したのに対して、今の実際政策上の問題と同じように御答弁になったのです。三月十六日に私の質問したのは、これは理論上の問題であったのであります。これに対して、今実際問題、政策上、核武装はしない、こういうのと同じ答弁をなすったのであるから、この憲法上の理論として、憲法の自衛権の中身としては場合によっては核武装もあり得る、こういう理論になるのじゃないかという三月十六日の私の質問に対する答弁は、この秋山長造君に対する答弁と違うのではないか、こういうことを聞いておるわけです。今お尋ねするのは、政策、実際上の問題ではなくて、理論上のことをお尋ねしているわけです。

○岸国務大臣 私、竹谷君のこの前の御質問の趣旨を、憲法上の解釈としてこれが持てるか持てないかという議論のようには、実は承っておらなかったのであります。あるいはその点において竹谷君の御趣旨と違っておったかもしれませんが、私の考えでは、あくまでも政策の問題として一切核武装しない、核兵器を持ち込ませないという、従来一貫して申し上げておることをお答えしたわけでありまして、憲法論としての解釈としては、秋山長造君にお答えをしておる通りに私は考えております。

○竹谷委員 そうしますと、三月十六日の私の質問、すなわち、それは憲法の自衛のために必要なる武力、実力の範囲内である、こういうふうにお考えになるのであろうか、こういう質問に対しては、そのときの答弁は、政策問題で答えたのだ。理論上は、憲法上の問題としては、秋山長造君に昭和三十二年にお答えになったと同じように、憲法上の理論としては、場合によっては憲法の自衛権の範囲内で核武装もできでる、こういう解釈だ、このように了解してよろしゅうございますか。

○岸国務大臣 憲法上の解釈といたしましては、秋山長造君にお答えした通りに私も今日考えておりますから、そういうふうに御理解いただいていいと思います。しかし政策の問題として一切認めないということは、これまたしばしば申し上げておる通りでございます。

○大貫委員 今度は第四条の関係でお尋ねいたします、
 この条約の実施に関して随時協議する、これはまあ大へんなことだと思う。条約の実施といえば、非常に広い範囲になると思います。一体どの程度の内容を協議するということを予定しているのですか。これは藤山外務大臣こ……。

○藤山国務大臣 先ほども申し上げましたように、条約を結びまして、その運営をしていくという場合には、お互いに協議をしていくことは私は当然なことだと思います。従いまして、条約全般にわたりまして、実施にあたって、いろいろな面から協議をいたすという機会があると思うのでありまして、一々どういうことをどういうふうにするかということを今ここで列挙するわけには参らぬと思いますけれども、条約運営にあたっては、必ず対等の立場で話し合いをしていく、こういうことに相なろうと思います。

○大貫委員 だから先ほどに戻りますけれども、この条約の運営に関してそのつど協議していく、こういうことなんです。そうすれば、第三条も当然、これは条約の実施として話し合いになると思いますが――なるのでしょう。たとえば、日本がどのように年次計画を立てて自衛隊を増強していくかというような具体的な問題になってくると、これは日本が自主的に増強するという、そういう一方的なものじゃないでしょう。必ず第四条によって、その第三条の実施に関しての相談というか、協議が、当然なされなくちゃならぬと思うのですが、どうですか。

○藤山国務大臣 日本が自衛力をどういうふうに増強していくかということは、日本みずからの決定することでありまして、国防会議等で決定をしたものになるわけなんであります。それを一々アメリカと協議はいたしません。アメリカがどういうふうに自衛力を増強していくかということを日本に協議しないことと同じでございます。

○大貫委員 アメリカの場合はそうでしょう。アメリカの場合は、これは対等だと言ったって現実に対等じゃありませんからね。今日では残念ながら対等じゃありません。アメリカの自衛力の増強なんかについてかれこれ言うことはありますまいけれども、少なくともアメリカ側の関心としては、日本の自衛力をどのように増強するかということは、これは非常なる関心だと思う。この関心がなかったら、アメリカは好んで安保条約を改定する必要も何もないはずなんです。この新安保条約に切りかえるということは、むしろアメリカの関心が私は大きいと思うのです。日本の自衛力をどのように増強するか、それが具体的には、何カ年計画でどのように兵力を増すとか、そういうことが当然協議事項に入らなくちゃならぬはずじゃないですか。そうじゃなかったらこれは意味ありませんよ。どうですか。

○藤山国務大臣 お話のようなことは当然、協議をいたすのでなくて、日本自身が決定していく問題でございます。

○大貫委員 それはそうでしょう。日本が自主的にある程度決定するとしても、当然しかし相互防衛の立場からすれば、日本がどの程度に自衛力を増強したかどうかということは、これは協議事項に入らなくちゃ意味なさぬでしょう。協議事項に入るのでしょう。これはくどいようですが一つ――それはそうじゃなかったら、条約の意味をなしませんよ。

○藤山国務大臣 協議をしてそれが成立しなければ、日本は自衛力を増強するということを自分一人で決定できる、できないのだということではございません。日本自身が協議なしにでも、自分のことは自分できめて参るわけであります。むろん情報の交換等はございましょうけれども、それは協議じゃございません。

○大貫委員 それはかりにどの程度自衛隊をふやしていくかということは日本で自主的にきめるとしても、アメリカが希望したら一体どうですか。アメリカが、今の自衛隊では少し足りないからこういうふうにしてくれぬかという要望は、この第四条でできるんじゃありませんか。第三条で、お互いにそういう自衛力を漸増するという契約があるんですから、それはできるんじゃないですか。

○藤山国務大臣 アメリカ側が日本の自衛力の増強に対して協議をしてくれと申しましても、それは協議はいたしません。(大貫委員「いたしませんですか。」と呼ぶ)むろん協議はいたしません。日本は日本自身でもって日本の自衛力を増強するなり、あるいは維持発展させるなりいたすわけでございます。むろん友好国と友好国との関係ですから、お互いに情報の交換をし、意見の交換をすることはございましょうけれども、協議をして、協議がととのわなければきまらぬという問題では全然ございません。

○大貫委員 私はその結果を聞いているのじゃないのです。協議をして、協議がきまってからどうするとか、そういうことじゃなく、かりに、アメリカの方から日本の自衛力をこれこれ増強をしてくれというような要望があった場合には、日本はそういうことは協議いたしませんという、そんなことはできないじゃないですか。これは第三条でお互いに自衛力を増強するということを約束し合っているんですから、かりにその条約の実施に関して協議をしましょうと言われれば、それは外務大臣がおっしゃるように、いたしませんなんて簡単なわけにはいきませんよ。そんな簡単には――個人の契約だってそうでしょう。契約をした以上、こういう契約を個人間でいたして、一方的にいたしませんなんということは通りませんよ。いわんや国際間においてしかりです。

○藤山国務大臣 情報の交換等は、むろんこれはいたすわけであります。しかし決定は日本自身がいたすわけでありまして、決定に際して日本自身が決定をしない、協議によって決定をするんだというようなことはございません。日本自身が決定をいたすのでございます。むろん何か援助物資をもらいますとかいうような場合には、それは話し合いをすることは当然でございますけれども、しかし日本自身が日本の防衛力をどの程度に維持していくか、どの程度に本年は計画をしていくかというようなことは日本自身がきめることでありまして、協議によってきまることではございません。

○大貫委員 しかしこの条約から見ればどうしても協議事項に入るように思うのですが、そうじゃないですか。たとえば、それじゃ具体的に例をあげましょう。日本の自衛力のためには、この前問題になった次期戦闘機の問題にしろ、たとえば次期戦闘機はロッキードにきまっちゃったようですけれども、アメリカからロッキードが適当だという意見が出た場合にどうなんですか。協議事項になるんでしょう、第三条の実施として……。

○藤山国務大臣 たとえばロッキードについて、いろいろな飛行機があるから、それに対する情報の交換は防衛庁としていたすと思います。がしかしどの飛行機にきめるかということは、今御指摘の通り日本はロッキードということにきめたわけでございます。

○大貫委員 私は、この第三条で武力攻撃に抵抗し得る能力を維持し発展させるということは、これは政府がうまく言いのがれようとしておりますけれども、これは非常に大事なことだと思うのです。そこで、この第三条によって武力攻撃に抵抗する能力というものは、いわゆる軍事力の増強というのは、藤山外務大臣が繰り返し答えるように、日本だけで決定するんだ、協議事項に入らぬ、連絡はするけれども協議事項でない、かりにこういう見解をとるとしても、軍事力を維持し発展させる原動力というのは、これは国民の意思を統一するということが、第一の要件になると思う。これは岸総理大臣にお尋ねしますけれども、軍事力を増強するということは、単に兵器だけを増強したって何にもならぬはずなんです。あるいは自衛隊だけふやしても何にもならぬと思う。少なくともその原動力になるのは国論の統一だというようなことまで考えてくると思うのですが、そこでこのためには言論統制というようなことも当然これは問題になってくるのではないか。あるいは反軍思想、反米思想を弾圧するというようなこともこれは出てくるのだと思う。(笑声)これは笑い事じゃない、出てきます。そういう目的を達成するために言論、集会、結社等をどのように取り締まるか、こういうようなことも必ず私は条約の実施に関する協議事項としてアメリカから要望なんかあるんじゃないか。どうです、そういう点は。

○岸国務大臣 一切そういうことは考えておりません。

○大貫委員 一切考えていないと言ったって、現になんじゃないですか。政府はもうすでにまた警職法の改正を考えているというようなことを自治庁長官が談話で発表しているんじゃないですか。つまり暴力事件があった。その暴力事件を取り締まるのには、今の警職法じゃだめなんだというようなことをすでに言うんですね。今の警察官職務執行法でやろうと思えば完全にできるのだ。できるけれども、何とかして警察権力を拡大するという口実を作ろうとしている。いわんやこういう問題になってくると、いわゆる日本が武力攻撃に抵抗するだけの能力を維持し得る、発展させるというためには、どうしたって国論の統一をしなくちゃならぬ。そういうところから必ず言論に対し、あるいは集会に対する制限なんということも、これは当然警職法の経験からすれば出てくるように私は思うのですが、そういうおそれがあると思うのですが、どうです。そんな考えはありませんと簡単に答えますけれども、そういうことは過去の経験からしていろいろあるのですよ。

○岸国務大臣 警職法の改正が必要であるかないかということは、日本の社会情勢や各般の事態を見て、われわれがこれの検討をしていることはこれは事実であります。私は必ず改正しなければならぬという結論を今具体的に持っているわけでもなければ、あるいは警職法は改正してならぬという逆の議論まで、目下政府としてはいろいろな最近に起こっている事態等を見て検討していることは、これは事実であります。しかしそれは何もそういうふうなことから、この安保条約が改定されると、何か政府は言論統制か、あるいは集会の制限か、そういうものを考えているのではないか、あるいはアメリカ側からそういうことが要望されるんじゃないかというふうな御質問でありますが、日本としては一切今そういうことを考えておりませんし、またアメリカからそんなことを要望すべき筋合いのものでもなければ、もしそういうような要望があったとしましても、これは日本が日本の立場で自主的にきめる問題でありまして、決してこの条約からそういう義務が出るとか、そういうことがあった場合に、要望があれば聞かなければならぬというようなことになるわけのものでは一切ないのであります。

○大貫委員 ところがこれは、この条約が締結されて、アメリカからいろいろ日本の自衛隊の漸増ということについて、あるいは新兵器の問題などについて問題が出てくると思う。アメリカからの武器貸与なんということも必ずこれは出てくると思う。そういう場合に、アメリカは今度は必ずその兵器に対する機密、軍に対する機密、そういうことが日本ではあけっぱなしじゃないか、だから一つこういう機密を保つ軍機保護法みたいなものも日本では作ってくれというようなことを、当然これは出てくると思うのですが、どうでしょうか。

○岸国務大臣 今日MSA協定によるところの援助について、軍機の秘密を保護する法律は御承知の通りできております。将来あるいは貸与であるとか、あるいは援助を受けるところの武器につきまして、軍機の秘密をどういうふうにして保護するかということは、そういう援助契約と関連して考えなければならぬことが出てくるかもしれませんけれども、それは別にこの条約の施行として協議する広い――今の四条のおあげになっていることから当然に出てくる事項とは私どもは考えておりません。

○大貫委員 私はもう一つこの第四条に関連して重要だと思うことは、特に条約の実施として第三条における兵力の増強のこと、この問題は日本が自主的にきめるのだと先ほどから繰り返し繰り返し述べられておりまするけれども、実際は今日までも実はアメリカから要望がいろいろあったのじゃないですか。今日までこの安保条約を改定する交渉にあたって、たとえば一九五五年だったでしょうか、重光外務大臣が渡米したときの、重光・ダレス会談のときに、改定の条件としてアメリカは日本の自衛隊を少なくとも三十万ないし三十五万に増強しなければだめだというダレス長官の強い要望があったということは、今日では顕著な事実になっていると私は思うのです。ところが本条約はこの第三条によって明確に軍備増強をしなくちゃならぬ。これは義務を負っているのじゃないとおっしゃっておりますけれども、とにかく政府の答弁のように自主的なら自主的にしても、日本はこの第三条によって自衛隊を漸増しなくちゃならぬ。そういうことだとすれば、そのためには、将来当然徴兵制度というようなことも考えなければ、一体自衛隊の増強なんというのはできないじゃないでしょうか。その点はどうですか。

○岸国務大臣 私ども徴兵の問題は考えておりません。また自衛隊の増強につきましても、今お話しのような非常な大きなものを考えているわけじゃございませんで、第一次の三カ年計画、本年をもって終わるその計画をごらん下さいましても、われわれが作り上げようとしておる目標というものは明確であります。さらにこれに引き続いて目下第二次防衛計画というものを検討いたしておりますが、それにおきましても徴兵制度というようなものを前提としたようなことは一切考えておりません。

○大貫委員 それじゃ防衛庁長官にお尋ねしますが、その第二次防衛計画を今考えておると岸総理がおっしゃっておりますが、この第二次防衛計画では一体自衛隊の兵力量というものをどの程度まで増強する目標でしょうか。

○赤城国務大臣 兵力量といいますか、そういう点から申し上げまするならば、陸の方は第一次計画で十八万という計画を立てておりました。第二次計画におきましても、十八万をあまり上がらない程度、こえない程度というのを目標としております。艦船の方では第一次計画では十二万四千トンという計画でありましたが、第二次計画、これは昭和四十年度を目途としておりますが、十七、八万トンの艦船にいたしております。それから航空機では第一次計画では千三百機を目標とし、第二次計画においては、まだどの程度ということはきめておりませんが、大体その程度で、いわゆるミサイルといいますか、地対空の誘導兵器を想定いたしております。こういうふうに考えております。

○大貫委員 その陸上自衛隊について、第二次防衛計画では十八万人をあまり上がらない程度に考えておるというのですが、あまり上がらない程度というのはどの程度なんですか。

○赤城国務大臣 あまり上がらないのですから十九万まではいかない。十八万こすかこさないか――こすことはこしますが、その程度を目標にしております。

○大貫委員 しかしこの第三条によれば、武力攻撃に抵抗するに足るだけの能力を漸増するというのですが、一体今おっしゃるような十九万に達しない程度で足りるというのは、防衛計画からそのような計算が出てくるのですか。

○赤城国務大臣 兵器の近代化、効率化をはかる、こういうことを目標としておりますから、人員においては十八万をあまりこえないことで日本の陸上自衛隊としてはやっていく、こういう確信を持っております。

○大貫委員 そこで次に自衛隊の装備です。今近代化するというお話しがあった。装備をどのように強化するかというようなこと、これも当然条約の実施に関することだと思うのですけれども、どうです、そういうことについて、これは第四条に基づく協議事項になりませんか。

○赤城国務大臣 先ほどから再々総理、外務大臣から答弁しておりますように、第三条は具体的に自衛力の漸増をどの程度にするかということを義務づけられている規定ではございません。従って第四条におきましては、日本の自衛隊をどの程度にするかということは、協議事項でなく日本自体がきめることであります。ただ問題は軍事援助等によります場合には、協議の対象といいますか、協議事項になることもあり得るかと思います。そこで自衛隊をどういうふうに近代化していくかということでありますが、陸におきましては機甲化する、こういうことで進んでいきたいと思いますし、海におきましても対潜能力といいますか、潜水艦に対する能力、掃海、こういう方面に力を入れていく、あるいは空におきましては今の戦闘機のほかに、地対空の誘導兵器――ミサイル等をもって空の防備に努める、こういうふうに考えておりますが、それらのことは第四条の協議として協議の対象に入れずに日本自体がきめていいことであります。

○大貫委員 何か時間がないそうですから、私、質問を留保して次会に譲ってもけっこうです。

○小澤委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十八分散会

 34-衆-日米安全保障条約等特別…-13号 昭和35年04月06日

昭和三十五年四月六日(水曜日)
    午前十時二十一分開議
 出席委員
   委員長 小澤佐重喜君    理事 井出一太郎君 理事 岩本 信行君
   理事 大久保武雄君 理事 櫻内 義雄君
   理事 椎熊 三郎君 理事 西村 力弥君
   理事 松本 七郎君 理事 竹谷源太郎君
      安倍晋太郎君    愛知 揆一君
      秋田 大助君    天野 光晴君
      池田正之輔君    石坂  繁君
      鍛冶 良作君    鴨田 宗一君
      賀屋 興宣君    小林かなえ君
      田中 榮一君    田中 龍夫君
      田中 正巳君    床次 徳二君
      服部 安司君    福家 俊一君
      古井 喜實君    保科善四郎君
      毛利 松平君    山下 春江君
      飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君
      岡田 春夫君    黒田 寿男君
      田中 稔男君    穗積 七郎君
      森島 守人君    横路 節雄君
      受田 新吉君    大貫 大八君
      堤 ツルヨ君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
        国 務 大 臣 赤城 宗徳君
 出席政府委員
        内閣官房副長官 松本 俊一君
        法制局長官   林  修三君
        警  視  監
        (警察庁刑事局
        長)      中川 董治君
        防衛庁参事官
        (防衛局長)  加藤 陽三君
        調達庁長官   丸山  佶君
        検     事
        (刑事局長)  竹内 壽平君
        外務事務官
        (大臣官房審議
        官)      下田 武三君
        外務事務官
        (アメリカ局長)森  治樹君
        外務事務官
        (条約局長)  高橋 通敏君
        大蔵事務官
        (主税局税関部
        長)      木村 秀弘君
        運輸事務官
        (航空局長)  辻  章男君
 委員外の出席者
        専  門  員 佐藤 敏人君
    ―――――――――――――
四月六日
 委員渡海元三郎君辞任につき、その補欠として
 田中榮一君が議長の指名で委員に選任された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び
 安全保障条約の締結について承認を求めるの件
 (条約第一号)
 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び
 安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並び
 に日本国における合衆国軍隊の地位に関する協
 定の締結について承認を求めるの件(条約第二
 号)
 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び
 安全保障条約等の締結に伴う関係法令の整理に
 関する法律案(内閣提出第六五号)
     ――――◇―――――

○小澤委員長 これより会議を開きます。  日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の締結について承認を求めるの件、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の締結について承認を求めるの件、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約等の締結に伴う関係法令の整理に関する法律案、右各件を一括して議題といたします。
 前日に引き続き、質疑を行ないます。大貫大八君。

○大貫委員 昨日もお尋ねしたことでありますが、第四条の、この条約の実施に関して随時協議するという事項で、もう一度藤山外務大臣に確かめておきたいのであります。昨日再々答弁がありましたように、要するに、第三条は第四条の条約の実施に関しての協議事項じゃない、こういうふうにお答えになっている。ところが第三条というのは、バンデンバーグ決議に基づいてできておることは、藤山外務大臣も今までの御答弁でお認めになっているはずです。そうしますと、バンデンバーグの決議というのは、どう読んでみたって、平たくいえば、こういうことなんでしょう、アメリカは相互援助に基づいて相手国を援助するけれども、その場合には、相手方みずからが相当な軍備を持って自己防衛に当たらなければならない、それが前提になるのでしょう。その上で相互援助をやろうというのが、要するにバンデンバーグの決議であり、この決議がアメリカの外交方針の基本線になっておるはずなんです。これに基づいて相互防衛条約なり相互条約というものがすべて結ばれておる。相互条約を結ぶ場合には、まず相手国がみずからを守り得るだけの能力を維持する、これが前提となっている。そういたしますと、どうも昨日お答えになっているように、日本はアメリカには何ら指示されることなく、自由に、自主的に自衛力を増強すればよろしいのだ、憲法の範囲でそうやればよろしいのだ、こうお答えになっておりますけれども、このバンデンバーグ決議の精神からすれば、日本の自衛力がどの程度になるかということは、非常に重大な関心事なはずなんです。これが前提となる。そういたしますと、どうしたって第四条によって条約の実施に関する重要な協議事項になると私は思うのですが、どうですか。この点、もう一度明確にお答え願いたい。

○藤山国務大臣 御承知の通り、バンデンバーグ決議の趣旨というものは、こういうような相互援助条約を結ぶ相手国が、自分の国は自分で守るという意欲を持ち、そうして、それに対する努力をしていくということが重大な問題でありまして、その努力をいたすにいたしましても、その国の経済力あるいは社会的な諸般の事情からいたしまして、おのずから限度もございます。そういうものは、自分自身がきめることであります。そういう意思を全然持っておらないというところとは結ぶわけにいきませんけれども、意思を持っていて、それがどの程度にいくかということはその国自身がきめること、これは当然のことだと思います。

○大貫委員 ところが、あなたは、この条約締結の交渉にあたって、つまり、バンデンバーグの決議の精神を体して、要するに、武力攻撃に抵抗する能力を、憲法上の規定に従うことを条件として維持し、発展させる、そういうことを誓約したというのじゃないですか。誓約したということを新聞にも報道されております。アメリカ側に対してですね。

○藤山国務大臣 むろん、この条文にありますように、お互いに維持し、発展させていくということは、自分たちが自分の国を守る意欲を持ちまして、意欲を持っているだけに、そういうことをやっていくわけでありますが、しかし、それではどの程度の兵力を持ち、あるいはどの程度の飛行機を持つかというような具体的な問題については、何も約束もいたしておりませんし、また、これはその国自身がそれぞれの事情によってきめる問題でございまして、決して約束をいたしておるものではございません。

○大貫委員 しかし、そうしますと、第三条は意味がないのじゃないでしょうか。日本は米国におかまいなしに、自主的に、日本の思うままに自衛力を増強して、よろしい、こういうのならば、三条の意味はないんじゃないですか。そんなことはアメリカに約束しないといって、ばらばらにやればいいのですから……。それを第三条からいえば、これは日本は自衛するだけの力を維持し、発展させる、こういうことを約束している。約束した以上は、これはアメリカの重大な関心事なんです。アメリカの条約を結ぶ前提になるはずなんだ。だから、内容は自主的であろうがどうであろうが、こういうことをいたしますということを、条約の実施に関する協議事項として、当然協議の議題に上ってこなくちゃならぬはずなんです。それが協議事項にならぬなどといったら、これは第三条は意味がないのですよ。

○藤山国務大臣 今、申し上げておりますように、バンデンバーグの決議というものは、要するに、基本的にお互いに援助し合っていこうという国は、それぞれお互いの国が、自分の国は自分で守る、そのためには、その国の経済的ないろいろな条件のもとに制約はされますけれども、そういう意欲を持っているという国とでなければやらぬというわけであります。従って、経済上のいろいろな理由がございますから、それについては、自分自身の国がきめていくということなんでありまして、そういう意欲があるということをお互いに宣言し参ったのがバンデンバーグ条項の精神でもあり、この条約に入れた趣旨でもございます。

○大貫委員 そうすると、日本は勝手に、野放しに自衛力を増強してよろしいということなんですか。これはアメリカと何の話し合いもせずに、日本は勝手に、思うままに自衛力を増強してさしつかえない、こういうふうに解してよろしいのですか。

○藤山国務大臣 日本は、日本の事情によりまして、本年はどうする、来年はどうする、今後の計画はどうするということを、日本自身が決定をいたすわけでございます。むろん、そうした決定がありますれば、日本はこういうふうにやっていくのだという情報の交換をいたすことは当然でございます。しかしながら、それを決定するのに、アメリカから何か押しつけられて、こうしなければならぬ、ああしなければならぬという義務を負ったわけではございません。

○大貫委員 何か押しつけられるとかなんとか、非常にこだわっておるようですけれども、決定する前に、第四条に基づいて、当然これは条約の実施に関する重要な事項として協議をなさるはずなんです。単なる連絡なんということでは、アメリカが承知するはずがないでしょう。アメリカとしてはそんなあいまいなことであれば、バンデンバーグ決議の精神に反しますよ。こんなことで上院を通りませんよ。そうするとどうしてもあなた方は交渉に当たって、やはりこの条約の実施に関する重要な協議事項として軍備をどうするか、どの程度に自衛力を増強するかということを、これはアメリカと前もって相談する、こういうことが第三条の趣旨になるじゃないですか。

○藤山国務大臣 重ねて申し上げますけれども、アメリカの承認を得て、そうして日本の軍備の計画をいたすというようなことではございません。日本は、自分自身の経済的なあるいは社会的ないろいろな事情を勘案して自衛力の決定をいたすわけであります。むろん友好国として決定いたしたものについて、日本は本年こういう計画があるのだという程度の情報の交換はいたすと思いますけれども、決定にあたりましてアメリカの承認を得るということではございません。

○大貫委員 そうすると、この条約の効果というのは、ほとんどお互いにばらばらに計画を立てる、こんなのはもう意味がないじゃないですか。だからこういう弁解をなさらずに、ほんとうのところを言うたらどうですか。実際は今までの経過からしましても、アメリカからいろいろな注文を受けておるでしょう。実際はそうでしょう。自衛隊を増強するのだって、あるいは自衛隊の装備をどうするのだって、今までの実際の過程からしますと、一々アメリカからいろいろな注文を受けておるじゃないですか。それに基づいてやっているじゃありませんか。

○藤山国務大臣 いろいろお話がございますけれども、もし日本がどうしてもアメリカの承認を得なければ軍備ができないというなら、対等の立場でやる場合に、アメリカの軍備も日本が承認しなければできないということですが、そういうことではございません。それぞれの国が自分の経済的能力によってやって参るわけであります。むろん情報の交換等はいたすこと当然でございます。新しい兵器等の事情等についても聞くことはございますが、しかしながらそれはいわゆる協議によって承認を得てやるという問題ではございません。

○大貫委員 それではどうもいつまでいってもしようがありません。
    〔発言する者あり〕

○小澤委員長 静粛に願います。

○大貫委員 それでは協議事項として、第六条による駐留米軍の配置計画あるいは移動とか装備、こういう問題はどうなんですか。条約の実施に関する協議事項ですか、どうでしょうか。

○藤山国務大臣 そういう問題については、たとえば配置については事前協議の場合もございます。一般的に協議をして話し合いをする。情報の交換の程度もございますし、こうしてもらいたいということもあろうかと存じております。

○大貫委員 そうすると米軍の配置やあるいは移動、装備などが協議事項になるとすれば、当然日本の自衛隊の配置、そういうものも協議事項にならないのですか。

○藤山国務大臣 今お話のように、どうして日本の自衛力を増強するかということについては、私はアメリカの承認を得てやるのじゃないということを申し上げておるのでありまして、一般的に情報の交換をいたしたり、あるいは大部隊が入ってくるような場合には当然事前協議に今度はかかることになっております。従いまして、そういうようないろいろの場合その他につきましては協議をいたす必要があることむろんでございまして、今のような第三条による約束をいたしたそれが、協議でもって承認を得なければならぬという問題とは違うのでございます。

○大貫委員 ここに「極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたとき」というのは、具体的にはどういうような状態をさすのですか。

○藤山国務大臣 「脅威」がどういう形で起こってくるかということを、現在において一々想定をするわけには私ども参らぬと思います。むろんそのときそのときに判断をいたして参らなければならぬ。でありますから、そういうような場合には協議をしていくことも必要であるわけであります。今ここでこういう形でこういう脅威が右から左へくるのだということは申し上げかねると思います。

○大貫委員 そうすると、この「脅威」というのは、現実に侵略が行なわれた場合とか、武力攻撃が行なわれた場合をさすのじゃないですね。それ以外のことも含むのですか。

○藤山国務大臣 むろん今回の条約全般については、申し上げておりますようにいろいろな協議がございます。協議の内容にいたしましても、情報の交換の程度の協議もございます。あるいは異議を差しはさまなければならぬような協議もあると思います。また国際情勢その他についても情報の交換もし、あるいは意見の開陳もしていかななければならぬのでありまして、そうした広範なものを内容といたしておるわけでございます。従いまして、武力攻撃があったからというようなことだけを前提にするというものではございません。

○大貫委員 そうすると大へん問題ですね。現実に武力攻撃や侵略が行なわれた場合ばかりではなく、それ以外のことも広範にということになると、「脅威」というのは、一体どういうことなんでしょうか。私にはわからぬから、もう少し具体的に言うてもらいたい。

○藤山国務大臣 「脅威」というのは、やはり脅威なんでありまして、いろいろな事変が起こるというようなこともむろん考えられると思います。世界にいろいろな状況が絶えず変化して起こっておるのであります。それがはたして極東の平和と安全に影響するかしないかということは、やはりおのずから協議して参らなければならぬ、意見の交換もしていかなければならぬと思います。こういうことが「脅威」だという非常にはっきりした限界がございますれば、それは楽でございますけれども、「脅威」というものはいろいろな形で出てくると思いますから、常時いろいろな意味において情報の交換もし、あるいは意見の開陳もお互いにして協議をしていかなければならぬということもあると思います。

○大貫委員 そうすると「脅威」というのは一体だれが判断するのですか。これは重大な問題だと思う。「脅威」ということが、いわゆるススキを見てお化けと思うそういう受け取り方もあるはずです。だから客観的に見れば何ら脅威も何もないのに、「脅威」を名としてそれをまた協議するということも起こり得ると思う。そこでだれが「脅威」を生じたという判断をなさるのですか。

○藤山国務大臣 それぞれこういうことは、極東に対する脅威じゃないだろうかということは、お互いに判断すると思います。またそういうふうにお互いに判断したものを持ち寄って、意見の合う場合もありましょうし、合わない場合もありましょうが、意見の合った場合にはそういうような判断が成り立っていく、こういうことでございます。

○大貫委員 そうすると、日本国の安全に対する脅威、これは何をさすのですか。今は極東の安全ということを聞いたのですが、日本国の安全に対する脅威ということは何をさすのですか。

○藤山国務大臣 日本国の安全ということは、むろん広範な意味においてわれわれ考えられると思います。外から脅威を受けるということも考えられると思います。あるいは外部からの何らかの援助によりまして日本が脅威にさらされるというようなことも起ころうかと思います。従いまして、いずれか一方の締約国の要請でこれを協議をしていく、こういうことになろうと思います。

○大貫委員 ところがフィリピンとアメリカとの相互防衛条約では、こんなあいまいな言葉は使っていないのです。これは米比相互防衛条約の第三条をごらんいただければわかるのだが、「外部からの武力攻撃によって脅かされたと認めたときはいつでも協議する」要するにフィリピンとの場合においては、外部からの武力攻撃があった場合、そのときだけ協議する、こうなっておる。ところがこの第四条によると、「脅威」というような非常にあいまいな字句を使っておる。これは日本の憲法の建前から自衛権の行使でなければ、これは立ち上がることはできないはずです。きのうからもあなた方の答弁ではそうなっておる。なぜこれはフィリピンの場合はこういうふうに武力攻撃と明確にしておるのか。日本の場合どうしてこういうあいまいな言葉を使っておるのですか。

○藤山国務大臣 御指摘のようにフィリピンの場合には、外部からの武力攻撃ということはございますが、フィリピンも入っておりますSEATOの条約には、武力攻撃以外の攻撃方法で脅かされるということもありまして、フィリピンもその加盟国としてその条約に縛られておるわけでございます。われわれとしてむろん第四条の協議というのは、すぐに何か措置をとるとかとらぬとかいう場合ばかりではございません。いろいろな事情によって、脅威をされやしないかという問題を協議するわけでございますから、幅が広い形において協議が行なわれますことが日本の平和と安全に貢献するとわれわれは考えております。

○大貫委員 これは日本の立場からすれば、フィリピンでさえ外部からの武力攻撃と明確にしておるのですから、協議事項としての脅威というのは、やはり日本が現実に外部から武力攻撃を受けた場合に限るというふうに限定すべきものではないのですか。

○藤山国務大臣 外部から現実に日本国が攻撃されましたときには、第五条が発動するわけでございます。そうでないような状況のもとにおいて、われわれははたしてこれが安全に影響するのかしないのかということを協議いたすわけでございます。

○大貫委員 それでは協議をするというのは、そういう場合何をするのですか。脅威があった、そこで協議をする、何をしよう、これに対する対策をやろうというのでしょう。要するに、そうするとそういうことがかえって脅威を名として戦争を誘発し、挑発するような結果になりませんか。

○藤山国務大臣 非常に何か脅威があったときに、それについて協議する、それに対する対策がどうだ、それは外交上の問題で、平和的に話をする場合もございましょうし、一々すぐに武力行動に移るかどうかというようなことは、われわれ侵略がすぐにくるかこないかも判断しなければならぬわけでありまして、そういう点で、もしそれがあればあるいは外交機関を通じ、あるいは国際的に訴えるということもございましょうし、決して戦争にすぐに巻き込まれるというふうに日本が行動するわけではございません。

○大貫委員 それではどうですか、具体的にお尋ねしますが、この「脅威」の中には、いわゆる間接侵略は含むのですか、含まないのですか。

○藤山国務大臣 むろん間接侵略というものは日本の平和と安全に影響を及ぼすわけでありますから、含むとわれわれは解しております。

○大貫委員 そうするとこれは問題は大きくなると思うのですが、政府はしばしば本条約は、日本が独立国として自主性を獲得したのがこの条約だとおっしゃっている。その自主性を獲得したという理由の一つとして、従来の現行条約の内乱条項を削除したということをさもさも非常に自主性を獲得した証拠の一つとしてあげておられる。ところが間接侵略も含むとすれば、内乱のような状況が起きた場合に、協議するということになりますと、これはやはり同じじゃないですか。要するに内乱条項を削ったと言いながら、非常に巧みに姿を変えてこの条約の中に隠れておるのじゃありませんか。

○藤山国務大臣 全然違うのでありまして、純粋の内乱というものに対しては、むろん日本が日本みずからこれを処置していくわけでございます。お話のように間接侵略があったという御質問でございますが、間接侵略というものはやはり他国から武器が供与されるとか、あるいはいろいろな問題が起こっておるわけでありまして、そういうような場合には当然協議をするのは、私どもはあたりまえだと思います。純粋の内乱というものは、これは削除するのがあたりまえでありまして、われわれは当然それを独立国として削除したわけでございます。

○大貫委員 それはどうもおかしい答弁ですね。間接侵略だって内乱だって同じじゃありませんか。結局は、内乱だって、外国から武器が入ったのも間接侵略だ、こうおっしゃっているのでしょう。そうすれば内乱の場合には多かれ少なかれ――竹やりでやる内乱なんていうのは今ありませんよ。やはり外国から武器を入れて、そこに内乱騒擾というものが起こってくる。そういたしますと、そういう場合にはいわゆる脅威が、日本国の安全の脅威だと称して、第四条で協議をアメリカとするとすれば、内乱条項を削ったって意味をなさないじゃありませんか。現行の条約と一つも違わないじゃありませんか。そういうごまかしはいかぬと思うのです。

○藤山国務大臣 私どもごまかしを申し上げておるわけではございませんので、内乱というものは、すべて大貫委員は間接侵略による内乱だと言っておられるのでありますけれども、そうじゃない純粋の内乱というものも決して考えられないわけではございません。でありますから、そういう外部から何らかの働きかけによって起こったというものと、純粋の内部的な内乱というものもあるわけでございまして、そこを区別することは当然なことだと思います。内乱がすべて大貫委員が言われるように、現状においては間接侵略だということは、われわれは考えておりません。

○大貫委員 私は内乱がすべて間接侵略だと言うているわけではない。しかし少なくとも内乱の中には間接侵略といわれるものがあるはずなんです。それはそうでしょう。内乱というのはどの程度のことを言うか別として、つまり竹やりでは今内乱はできない。内乱というからには、少なくとも大なり小なり武器を外国から援助を仰ぐとかしなければ、これは内乱という状態には立ち至らぬと思う。そうするとやはり間接侵略の範疇に入るじゃありませんか。このことについてアメリカと協議をするということになりますと、一つの内政干渉にもなるということになるのじゃありませんか。

○藤山国務大臣 私どもは外国と関係のないような内乱というものもあり得ると考えておりますけれども、ピストル五丁を持った、それが外国製のピストルだから、それはやはり外国の援助だ、そういうふうに単純にわれわれは考えないでいいのじゃないかと思います。むろん武器を国外から援助をするということの限度というものは、非常に大きな場合を想定するということであります。しかしながらわれわれとしてそういう場合に協議をいたしますことは、決して内政干渉とは思っておりません。

○大貫委員 しかしそうすると結局こういうことになりますね。これは総理大臣にお尋ねしましょう。  結局この条約は、現行条約の内乱条項を削ったと言うておりますけれども、実質的にはこの第四条によって、内乱にも要するにアメリカが関与できるという一つの道をあけているのじゃないですか。

○岸国務大臣 現行の安保条約は御承知の通り内乱の場合に日本国が要請すれば、駐留軍が出動してこれの鎖圧に当たるということになっております。そういうふうに駐留軍が現実に武力を行使するという場合は、五条に今回はっきり書いておるわけでございます。他国から、外国から武力攻撃を受けた場合にだけするわけであります。四条は協議でございます。四条の協議において単純な内乱は、先ほど来外務大臣が言っているように、これはもうわれわれは協議する考えはございませんが、今日の国際情勢から申しますと、いろいろな各地における事態は、直接侵略、直接に武力攻撃を加えることによって他国を侵略する場合と、いわゆる間接侵略として他の外国がそのある国の内部に干渉して、あるいは武器であるとかあるいは人間を送るとか、いろいろな方法によって間接的に侵略する、そうして擾乱を起こさしめるという事態があるのであります。従ってそういう場合においては、やはり外国の影響でもって日本の安全が脅かされるということになるわけでありますから、そういう場合においてはこの四条で協議をして、それに対してそういう事態をなくするように尽くしていく。しかし駐留軍が武力を用いる、武力的な行動をするということは、五条だけでございます。

○大貫委員 そうすると今のような場合、米軍と協議をして、そういう事態をなくすようにする、ただし武力の行使はしないんだ、こうおっしゃるんですけれども、なくするようにするというのは、物心両面にわたって、米軍が協力をして、援助をすることになるんじゃないですか。そうすれば、結局この条項によって有力な内政干渉の種がここにあると思うのですが、どうでしょう。

○岸国務大臣 この条約によって日米両国が日本の安全を守り、それからさらに極東の平和、安全を守って、世界の平和のなにを確保する。これについて日米両国が協力するということは、この条約を貫いておる一つの精神であって、そういう場合において日米の間における協力関係ができたからといって、それでもって内政干渉という性質のものじゃない、私はかように思っております。

○小澤委員長 この際堤ツルヨ君より関連質疑の申し出がありますから、これを許します。堤ツルヨ君。

○堤(ツ)委員 ただいまの内乱の場合、大貫委員の御質問に対しまして、総理の答弁ははっきりしていないと思うのです。私はお伺いいたしますが、この日米安保条約の中には、日本の安全並びに脅威という場合に、外部からのみの脅威ということが明記してないんです。書いてないということは、外からの場合と内からの場合と両方を肯定しておるものだ、私はこういうふうに解せざるを得ないと思うのですが、総理はどうお考えになりますか。

○岸国務大臣 先ほど来お話を申し上げておるように、間接侵略の場合はこれを含んでおる、こういうことでございます。従ってそれを見方によって内部とみるか、私どもは間接侵略というものは、やはり外部に一つの力があり国があって、それがいろいろ形を変えて直接みずから国として侵略するという直接侵略のかわりに、他の方法によってその国の平和と安全を脅かすような行動に出る、そういうような意味において間接侵略というものが現実にあり、それに対してはこの条項は働く、かように考えております。

○堤(ツ)委員 わざと総理大臣は少し答弁をずらしておられるので、間接侵略、直接侵略という言葉を今使っておらないのです。内乱条項です。内乱という場合は、間接侵略の意味のない場合にも、国内に内乱が起こる場合がある。現行条約では内乱条項に対して米軍が勝手に出動ができるようになっている、これをなくしたのだと、こうおっしゃるのですけれども、今度の日本国の安全という点でも、これは決して今度の改正で内乱を除くということになった意味にはならないのです。これは念のために私が申し上げますると、米比条約というのがございますが、米比条約というのは、フィリピンの内乱に対してどういうふうに明記しておるか、総理大臣御研究になりましたか。答えていただきます。

○岸国務大臣 先ほど大貫委員の御質問があり、外務大臣がお答えした通りに私は了解いたしております。

○堤(ツ)委員 米比条約について、総理は御研究になっておらないようですけれども、米比条約の中には、はっきりと「外部からの武力攻撃によって」と、外部だけを指定しておるわけなんです。ところが今度の日米安保条約の中には「外部からの」という米比条約に相当する文句がないわけでございまして、ここに内乱条項に介入しないという米軍の保証がないということを、先ほどから大貫委員が突いておられるわけなんです。そのところをはっきりしていただかないと、内乱が起こった場合に対するところの日本国とアメリカの立場というものがはっきりしないから質問をしておるのでございまして、ここのところは明記されておらないということ、しかも外国とアメリカとが結んでおるところの条約に基づけば、はっきりと内乱条項を削って、外部からの侵入という意味にだけはっきりと明記しておる、ここに違いがあるのでございます。もし総理が言われるような筋合いのものであるならば、米比条約並みに日米条約もやはり外部からの侵入という言葉で表わして、内乱には在日米軍はタッチしないのだということが明記されなければ、筋が通らないわけなんです。そこを大貫委員が尋ねておられるので、もう少しはっきりしていただきたい。

○岸国務大臣 従来の、現行の条約においては先ほどお答え申し上げたように、内乱という広い文句が使ってあります。先ほど来外務大臣及び私がお答えを申し上げているように、この内乱という現在の用いている字句の内容としては、純粋の内乱とそれから間接侵略によるものと両方を含んでおると思います。そうして今回のわれわれの条約における日本の安全に対する脅威ということは、外部からの力によってそういう脅威が加えられる、米比条約のように、外部からの武力攻撃というだけの限定ではなくして、広くその原因は外部、いろいろなやり方があると思います。間接侵略の方法としては。そういう外部からの間接侵略によって日本の安全が脅かされる、この内乱のものは、これは条約において日本の安全を脅かされる内議というようなことは私どもは考えておりません。

○堤(ツ)委員 私は総理は非常にうまく逃げておられると思いますけれども、きょうは関連ですから私のときあらためてやりますが、米比条約並みに外部からのものということをはっきり明記しておらない以上、あるいはアメリカが日本に対してごまかしておるか、承知の上で岸総理が国民をごまかそうとしておるのか、いずれかであるということを指摘しておきまして、この質問は私の時間に譲ります。 ○大貫委員 これは外務大臣にお尋ねしますけれども、「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威」とこう書いてある。そうしますと、極東における国際の平和及び安全に対する脅威というのは、日本に全然関係のない場合を言うんじゃないんですか、これは。

○岸国務大臣 日本に全然関係のないかあるかというような問題も協議をいたすわけでございます。

○大貫委員 これは第四条と第六条はだいぶ違いますね。第四条の場合は、日本の安全というのと、極東における国際の平和及び安全というのをオアでつないでいますね。ところが第六条は、「日本国の安全に寄与し、並びに」と、アンドでつないでおる。日本国の安全と、それから極東における国際の平和及び安全というのは、六条の場合はアンドで、四条の場合はオアでつないである。そうしますと、四条の場合は日本国の安全に無関係なことでも、いわゆる極東の安全、国際の平和と安全という事柄で協議をさせられるんじゃないですか。

○藤山国務大臣 オアとアンドの問題につきましては条約局長から御説明を申させますけれども、極東の平和が脅かされるということは、日本の平和や安全に影響がない場合もございましょうけれども、ある場合もあろうと思います。そういうふうな事態についてお互いに情報の交換をし、また協議をいたすということは当然必要なことだとわれわれは考えております。

○大貫委員 そういう必要かどうかということよりも、この解釈としてどうなんですか。極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じた場合には、日本の安全なんかには無関係でも協議するということになるんじゃないですか、この条文からいって。

○高橋(通)政府委員 ただいまオアとアンドの言葉でございますので私から御説明申し上げたいと思いますが、第四条はオアということを使っておりますが、それは日本の安全が脅かされたときも協議し、極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときも協議する、こういう場合も協議し、こういう場合も協議するというようなことをいっておるわけであります。第六条は、二つの目的を二つながら、こういう目的とこういう目的ということを二つ掲げておる次第であります。ただアンドという言葉を出したからといって、またオアという言葉を出したからといって、日本の安全と極東における平和と安全との関係が全然別であるとか、または重なって同じでなければならないとか、そういうふうな言葉をオアとかアンドだけの言葉によって判断することはできない。これはオアとかアンドとかいう言葉がそれほどの内容を持っているとは考えない次第でございます。それはどういう関係かというのは、そのおのおのの事柄によって判断すべきである、こういうふうに考えます。

○大貫委員 それは大へんなごまかしですよ。それだけの意味がないといったところで、それだけの言葉の意味があるでしょう。それならアンドでつなげばいいでしょう。何もオアとする必要はない。オアとしておるのは、日本国の安全ということと、極東における国際の平和と安全ということは別個だから、オアでこの文章はできておる。同じならアンドでつなぐはずです。要するに日本国の安全と極東における国際の平和と安全、この二つの条件に脅威が生じた場合には協議をするということ、それならばアンドでつないであるはずです。第六条はそう読めると思う。ところが第四条の場合はオアなんですから、日本国の安全に脅威が生じたとき、これはもちろん協議する。ところが日本国の安全とは直接に関係がなくても、いわゆる極東における国際の平和と安全が脅かされた、こう認めた場合には協議ができるようになるんじゃないですか。これはどうしたって条文の解釈上そうなりますよ。

○藤山国務大臣 オアでつなぎましたことは、今おっしゃった通りの解釈で決して差しつかえはないと思うのであります。われわれは今日の実情から申しまして、地球が大へん狭くなっておりまして、いろいろな世界に起こった条件が、いろいろなところに反映していくということは、これは大貫委員もお認めになると思うのです。ましてや日本がおります極東というような範囲内におきまして何か問題が起こりましたときに、それについてわれわれは協議をしてみる。協議をしたからといって何もすぐに行動をするとかなんとかいうことはございません。協議をすることは私ども当然なことだと思っております。

○大貫委員 当然とか当然でないとかいうことを伺っておるのじゃなくして、そうするとこれは確かめてみますが、この第四条では直接には日本の安全は脅かされてないけれども、極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じた場合には協議をする、こう解釈してよろしいのですね。

○藤山国務大臣 そう解釈していただいていいわけでありまして、それがその時点においてそうであろうと、その後にどうなるかもわかりませんし、われわれとしてはやはりそういう場合には協議をして参らなければならぬと思います。

○大貫委員 そうするとこれは日本の自衛に何ら関係のないことで協議をするということになるのじゃないですか。これは総理大臣にお伺いしますが、これは大へんなことだと思う。自衛権の範囲じゃないと思うのですがどうですか。

○岸国務大臣 協議するということと何らかの行動をとるということを不可分のようにお考えになるのですが、協議はすべきものである、また今大貫君の解釈のように私ども考えております。しかし行動をするという場合においてはそれぞれ条件があり、ことに武力行動をするという場合におきましては、日本の自衛隊のなににつきましてははっきりと五条に規定がございます。従って協議したから自衛権に反するとか、あるいは何かそこに違反が出るという性質のものじゃないと思います。

○大貫委員 ところが日本の直接の自衛に関せずして、みだりに外国と脅威が生じたからというて協議をするというようなことは、それ自体が、昨日から伺っておるあなた方の憲法解釈からしても矛盾するじゃありませんか。何ら日本の防衛に関係しないはずです。それにもかかわらず外国と協議をするというようなことは、自衛に関せざることについて、しかもなるほど行動は伴わないかもしれませんが、場合によっては戦争に巻き込まれるかもしれないような事態が起こるかもしれない。そういうときに協議するというのはちょっとおかしいと思うのですがどうですか。

○岸国務大臣 われわれは平和を要求しており、また国の安全を願っておるわけであります。従って日本の安全に脅威を与える場合に、協議してこれに対する措置を講ずることは当然であります。同時に極東、これは全体的にいいますと、日本に非常に近接しておる地域でございますから、一般的に私は日本の平和と安全には関係があると考えることが正しいと思いますが、しかしそれはいわゆる間接的な関係でありますから、直接日本の平和と安全に関係しない場合も協議の対象になることは、先ほども大貫委員がお話の通りであります。どういう行動をするかということにつきましては、われわれは平和的な解決を願っておるし、その脅威を除いて武力攻撃というような侵略が起こることを未然に防がなければならぬ。その場合にはいろいろ声明を出すこともありましょうし、あるいは外交交渉によってその脅威を取り除くこともありましょうし、あるいは国際連合に提訴してそれを防ぐ、そういうようなことをするためには、やはり協議をして事情を明らかにし、実態を正確に把握して考えを統一していくということは望ましいことである。決して協議したから戦争が直ちにくるとか、あるいは戦争に巻き込まれるとか、自衛権の発動が憲法に違反して行なわれるというようなこととは、全然関係ないのであります。

○大貫委員 ところが、全然関係ないとは言えないと思うのです。少なくとも、極東における国際の平和と安全が脅威を受ける、こういうことが前提になる。脅かされておるのだ、あぶないんだ、戦争の危機があるかもしれぬ、そういうことについて協議をするというのであります。しかも、この協議は、大体においてアメリカ側がそういう判断をするのだ。この条約からいっても、日本国の安全に直接関係ないことでありますから、これはアメリカがおもに判断すると思うのです。そういう場合に日本が協議の中に入る、そうすると、アメリカはアメリカとして、こういう極東において平和が脅かされるおそれがあるのだ、だから、自衛隊の方もどういうふうな配置をしておけとかなんとかいうようなことが具体的に協議の内容にならざるを得ないと思うのです。そうすると、これは昨日から言うておった憲法九条に大へん違反してくることになると思うのですが、どうでしょうか。

○岸国務大臣 前提が私どもと非常に違っておるように思うのですが、私どもは、先ほど申し上げたように、脅威が生じた場合においては、その脅威を取り除いて、そして平和を回復する必要がある、それには事態を正確に把握し、日米の間のこれに対する意見を一致させておくことが必要である。私どもは、この条約全体が国連憲章というものを大前提として、日米ともにその安全機構というものができ上がること、また、世界平和の確保についての国連の活動というものをわれわれは支持していくという建前から申しまして、そういう事態が生じた場合において、それに関心の深い日米両国において協議をして、そして、これに対する脅威を取り除く措置を講じていくということが問題なのであります。アメリカからだけこういうことを提議するというようなことでもなければ、また、極東の平和と安全に関係している脅威を受けた場合に、日本の平和と安全に全然関係のない場合だけだというふうには、私どもは考えておらないわけであります。むしろ、極東の平和と安全が脅かされるということがあれば、日本の平和と安全にも非常に重大な関係があることであります。従って、日本から協議を求めることもありましょうし、それはどっちから求めるということは、一方的に考えるべきものじゃない、かように思っております。

○大貫委員 ところが、それは先ほども申し上げましたように、また、御答弁もあったように、第六条と第四条とは違うはずなんです。日本の安全には直接関係のない、日本の安全が直接脅威されないが、しかし、極東における国際の平和と安全が脅威された、こういう場合に協議をするというのが第四条なんです。そうすると、これは今、岸総理がおっしゃったように、日本とアメリカが共同して脅威を取り除くというようなことは、日本の安全に直接関係のないようなことでアメリカと協議をして、その脅威を取り除くというようなことは、もはや、いかなる意味からしても、政府の言うように憲法第九条を拡張解釈しても、これは自衛権の範囲を出ているものだと思うのです。自衛権というものは、やはり日本が直接脅威を受けたときでなければ、自衛権を発動できないと思うのです。やはり脅威を取り除くということが自衛権の発動でしょう。

○岸国務大臣 自衛権に関する限りは、第五条にはっきりとあるように、日本の施政下にある領土が武力攻撃を受けた場合でなければ発動できないのであります。また、憲法の自衛権の解釈から申しまして、自衛権の内容である実力行使というものはそういう厳格なものであって、それを一歩も出てはならないことはお説の通りであります。私ども、その点何らの異論も持っておりません。しかし、四条のこの「協議」というものは、これは日本を目当てとして、直接間接の侵略の危険がある、また、間接侵略が行なわれておるというような場合に、日本の安全が直接に脅威を受ける、それから極東の平和と安全が脅威を受けるという場合におきましては、日本が直接に受けているわけではございませんけれども、しかし、極東の平和と安全が他から脅かされておるというような場合におきましては、日本に近接している地域でございますし、日本も極東の中核をなしておるわけでございますから、日本の平和と安全に無関係である、こう考えるわけにはいかぬと思います。従って、そういう事態が一日も早く取り除かれるということは、私は、日本として当然考えることであり、それについて日米が協議していくということは、何ら自衛権の発動ということとは関係ないことであります。憲法や、あるいは自衛権の問題には何ら触れるものではないのであります。

○大貫委員 自衛権の発動に関係ないということは、どうもおかしな議論だと思うのです。要するに、極東における平和と安全が脅威される、それを取り除くということは、やはり日本の自衛権の発動になりませんか。そのことは自衛権の発動範囲になるでしょう。

○岸国務大臣 自衛権の発動ということは、自衛権としての内容である実力行使によってその侵略の事実をなくする、排除するというのが、私は自衛権の行使の内容だと思います。われわれが平和を望み、平和を望むためのいろいろな手段を講ずることまで、これをすべて自衛権の発動だということは、私は適当でない、こう思います。

○大貫委員 私は、それでは今度は、この条約の性質についてお尋ねをいたします。藤山外務大臣は、当委員会において、愛知委員の質問に答えて、つまり、第五条の問題について、こういうことを答弁いたしております。「この第五条は、非常に特色のある条項だと思います。今回の安保条約の一つの重要な点でございます。日本国の施政のもとにある領域ということに限定をしておりますので、いわゆる相互防衛条約ではございません。」この条約が相互防衛条約でなければ何だとおっしゃるのですか。これは条約の本質論、性質をお尋ねします。

○藤山国務大臣 私が申し上げましたように、いわゆる相互防衛条約というのは、アメリカの領土がやられたときに、日本も自衛隊が出てそれを助けるというような仕組みのものだと思います。日本の今回の条約というものは、日本の領土、施政下にあるところだけに条約地域が限定されておるのであります。これは非常に特色のある条約だとわれわれは思っております。この条約を何と呼ぶかということは、新しいこういう特殊の形の条約でありますから、何と申してよろしいのか、学説的には申し上げかねます。

○大貫委員 特殊な条約というのは、こういうことでしょう。日本がアメリカと対等なだけの実力を持っておらない、そういうところから、こういう特殊な条約になっておると思う。ところが、日本は、なるほどアメリカの本国を防衛する義務は負っておりません。負っておらぬことは、あなたのおっしゃる通り特殊かもしらぬが、これは国力の相違だ。ところが、日本におけるアメリカの基地を攻撃された場合には、これは日本に何ら関係ない。関係ない場合もありましょう。たとえば、日本の基地の中に撃ち込まれたという場合、日本の人民や日本の国民に何ら関係ない。そういう場合でも、これは発動しなくてはならぬのでありますから、やはり防衛条約じゃないですか。

○藤山国務大臣 日本にある米軍の基地がやられるということは、かねがね申しておりますように、領土、領空、領海を侵さなければやれぬ、それは日本に対する攻撃でございます。従って、当然日本としては自衛力を発動していくということに相なるわけでございます。

○大貫委員 ところが、日本にある米軍基地内には日本の行政権は及ばぬでしょう。施政権、要するに司法権が及ばぬでしょう。特別な地帯なんだ。アメリカが支配している領域なんだ。領土であっても、ほとんどアメリカに貸している土地なんだ。そういうところに攻撃を加えられる――もちろん、周辺の日本の国民に関係がある場合には、これは日本が攻撃されたということになるかもしらぬけれども、この基地内部だけが攻撃された、日本には何ら影響がなかった、日本の国民には影響は直接なかった、そういう場合にもアメリカと共同行動をとることになるのだから、これは相互防衛条約でしよう。

○藤山国務大臣 貸与しております基地は、決して、いわゆる租借地ではございません。日本の司法、立法、行政の権限がございます。ただ、その一部を駐留軍がおります便宜上、法的に特殊な条件のもとに貸与しておるということはございます。しかしながら、いわゆる租借地とは全然違います。

○大貫委員 租借地とは違うかもしれませんが、実質は同じじゃないですか。実質は、一体日本のその基地内をわれわれは自由に通行できますか。基地内に入って、自由にわれわれが、たとえば、基地の内部をわが国土だからというて自由にすることはできないでしょう。自由にできないでしょう。そうすると、その基地内は、現に完全なアメリカの施政下にあるのですよ。施政下にあるでしょう。その施政下にある基地が攻撃を受けた場合に、日本はともに共同して立たなくちゃならぬのですから、その意味においては相互防衛じゃありませんか。

○藤山国務大臣 今申し上げましたように、基地は決して租借地ではございません。従って、大貫委員の御意見とは、全然われわれは違った立場をとっております。なお、法律的に、法制局長官からはっきり御説明をいたさせます。

○大貫委員 私の質問の趣旨をあなたは了解されてない。何も抽象的に租借地だというようなことを私は言っておるのではない。ただ、現実の問題として、日本の権力が及ばぬじゃないですか。日本国民が、日本の国土でありながら自由に使用できないじゃないですか。基地内部に関しては、完全にアメリカの施政権が及んでおるじゃないですか。そうすれば、租借地とかなんとか、そういう観念じゃないのです。現実がそうじゃないか。そうすると、アメリカの支配下にある土地が攻撃をされるそれを日本に対する攻撃だとみなしてともに戦うというのは、相互防衛条約じゃないか、こういうのです。

○林(修)政府委員 今の米軍に使用を許しております施設・区域といいますものは、これは完全な日本の領土でございます。また、この施設・区域の使用を米軍に許しておる関係で、これは米軍という外国軍隊がおります関係で、米軍に対する日本の法令の適用関係は、これは特殊な関係がございます。あるいは地位協定にいろいろ規定はございます。また、そのほか、軍隊というものの特殊性質から申しまして、軍隊に日本の法令がそのまま適用にならないことは、これは当然でございます。しかし、施設・区域というものは、決して日本の行政権の範囲外にあるものではございません。これは、そこに入ることが日本人が普通できないと申しましても、これはもちろん多少事情は違いますが、日本人の所有地でありましても、他人は簡単にそこに入れない。所有地には入れないわけでございます。そういう意味で、米軍に使用を許しておりますから、米軍の都合上、そこの立ち入りがある程度制限されることは、これは当然のことでございます。しかし、それは米軍に対して、そこに行政権、施政権を許した、そういうものとは全然性質が違うわけでありまして、そこにあります土地は日本の土地でございます。日本の国有財産でございます。あるいは日本の私有財産でございます。そこに日本人も働いております。すべて租借地というような関係ではないわけでございまして、全く日本の施政権が及んでおる。ただ、軍隊というものの特殊性から、日本の法令の適用が軍隊に対してはある範囲において制限される、こういうものでございます。

○大貫委員 そんなこと言ったら、沖繩だって同じじゃありませんか。沖繩だって日本の領土でしょう。日本の領土で、潜在主権があるといっておる。しかしながら、今は、沖繩における施政権というものは、これは完全にアメリカに握られておる。ところが、日本におけるこの基地内部の施政権というか、基地内部の権利義務の関係というものは、沖繩ほどではないかもしらぬけれども、少なくとも、日本人が、日本の領土でありながら自由に使用のできないところなんです。しかも、単なる使用権だけではないですよ。ある一定の限度において、向こうの軍事裁判権も持っておるじゃないですか。その基地内におけるところの裁判権まで彼らは持っておる。治外法権がある。治外法権があるじゃないですか。笑いごとじゃないです。治外法権があるでしょう。そうすれば、日本の完全なる施政権が及ぶところじゃないでしょう。

○林(修)政府委員 沖繩は、御承知の通りに、立法、司法、行政の三権は米国が持っております。そういう意味において、今の日本の施設・区域とは全然違うわけでございます。日本の施設・区域につきまして裁判権が及ばないということはございません。これは米国軍隊あるいは米国の軍人、軍属に対する特殊性から、日本の刑事裁判権あるいは民事裁判権が及ばない点はございますが、それ自身の属地的な裁判権が及ばないということは全然ございません。

○大貫委員 ところが、日本の国土であれば、どこだって裁判権の完全なものが及ばなくちゃならぬ。とにかく、日本の施政権が制限されているでしょう。それは、要するに、アメリカの駐留軍隊によって、日本の行政権なり、あるいは司法権なりが制限されていることなんです。そうすれば、日本の支配権の及ばぬところに攻撃を受けた、そうすると、これは日本に対する攻撃とみなして、ともに軍事行動をとるということは、結局、相互防衛条約ということになるじゃないですか。 ○藤山国務大臣 私が先ほど来申し上げておりますように、この条約というものは、いわゆる相互防衛条約ではございません。基地に関しましても、今、法制局長官が言われましたようにわれわれは解釈いたしておるのでございまして、そういう意味において、決して日本以外の土地というような意味に解すべきではございません。

○大貫委員 どうも岸総理も、軍事同盟じゃないのだ、こういうことを再々言っている。しかし、私は、今言うたような、日本の施政下にある領域といいながら、米軍基地のような全く日本の支配権の及ばぬところ、そういうところに攻撃を受けた場合に、共同して軍事行動をとらなければならぬ、こういうのでありますから――なるほど、これはいわゆる攻守同盟ではないでしょう。いわゆる従来の軍事同盟の内容をなす攻守同盟でないことは確かです。しかしながら、自衛の条約だと言うてみたところで、これはたての一面を言うているだけのことです。裏をひっくり返せば、軍事同盟という範疇に私は入ると思う。入るということは、今のように、これは幾ら言っても並行線でありますけれども、要するに、アメリカの支配権の及んでおる軍事基地が攻撃されたときに一緒に軍事行動をとるというのでありますから、これは軍事同盟だと私は思う。そうすると、これはやはりどうしても憲法に違反するということになりますが、これは岸総理、一つお答え願いたい。

○岸国務大臣 先ほど来、基地の問題についての法律的な点について御質問があったようでありますが、これは政府側が答弁いたしておりますように、日本の領土でありまして、日本の統治権は一般的にここに及んでおるのであります。従って、日本の領土が現実に武力攻撃をされた場合において、日本の自衛隊が実力行使をするということは、何ら憲法違反ではないので、もしも、日本を出て何かやるとか、行動するとか、あるいは日本の領土外、領土でないところが武力攻撃をされたときに日本の自衛隊が出るということであるならば、自衛というものの範囲を逸脱しておるということでありましょうが、日本の施政下にある領土が攻撃された場合におきまして自衛隊が実力行動をするということは、何ら憲法に違反するものではございません。

○小澤委員長 この際、暫時休憩をいたします。
    午前十一時三十分休憩
     ――――◇―――――
    午後三時十八分開議

○小澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。大貫大八君。

○大貫委員 第五条に「日本国の施政の下にある領域」という、この施政下というのは、一体どういうことをいうのでしょうか。これは米韓相互防衛条約によりますと、「行政的管理の下」と、こうあります。行政管理下という言葉を使っておる。この条約では施政下という。これは法律的な用語としてはどうも非常にあいまいなんですが、これは統治権というものと同じなんですか、違うのですか。統治下ということになるのですか。

○藤山国務大臣 法律的な説明につきましては、条約局長からお願いします。

○高橋(通)政府委員 「施政の下にある領域」というのは、事実上、施政のもとにあるかどうかという問題でございませんので、法律的に施政のもとにある領域、こういうふうに解しております。統治権のもとにあるかどうかということになりますと、まあ、統治権という概念の問題になります。従いまして、そのような概念の問題になりますので、施政のもとにある、すなわち、立法、司法、行政の施政のもとにあるという法律的観念として「施政の下にある領域」、こういうふうに考えております。

○大貫委員 そうすると、米韓相互防衛条約の「行政的管理」、これとは違うのですか、同じなのですか。

○高橋(通)政府委員 これは、やはりこの条約の「行政的管理」という言葉の概念の問題になるかと思います。すなわち、領土権とか領土、そういう観念を離れまして、一つの行政的な管理にある場合、たとえば、委任統治地域とかそういう場合は、やはり「行政的管理」という表現でそういうことを含ましめたものだ、こういうふうに考えております。

○大貫委員 そうしますと、施政下にある領域ということについて、行政権の一部が行なわれるような地域は一体どうなるのですか。かりにそういうものがあったとすれば、施政下にあると言えるのですか。

○高橋(通)政府委員 施政という観念が、一部とか全部とか半分とかいう観念で考えられるかどうかということは非常に問題だと思います。ここでは一部というようなことは考えに入れておりません。

○大貫委員 現に施政権の一部が行なわれるような場合――条約上そういうのがあるでしょう。今ちょっとここにあれですが、たしか何か条約にあるはずです。そういうことは観念上あり得るはずですね。施政権の一部というか、行政権の一部が行なわれるような場合があるのです。そういう場合に、一体本条の施政下に入るかどうか、こういうことです。

○高橋(通)政府委員 そのような場合をここでは予想いたしておりません。

○大貫委員 総理大臣にお尋ねしますが、岸総理は、この前の本委員会におきまして、わが党の竹谷源太郎君の質問に答えて、「施政下にあるということは、施政権というものの本質から申しまして、全面的施政権を持っている、こう解釈すべきものと思います。」こう述べております。つまり、施政下にあるというのは、全面的な施政権が行なわれるところだ、こういうふうに解釈しておられるようですが、そういたしますと、たとえば治外法権を有する地域、これは日本の領土内においても、全面的な施政権はもちろん行なわれませんね。治外法権を持っているようなところ、たとえば米国大使館内はどうなるのでしょうか。

○高橋(通)政府委員 治外法権という法律的な用語になりますものでございますので、私からお答え申し上げます。
 たとえば外国の大使、公使館でございますが、これは一般に治外法権というふうに呼ばれております。これはエクストラテリトリアリティ、領土の外ということでございます。しかし、これは昔の古い観念から引き続きまして、そのように治外法権というふうに呼ばれてきたわけでございまして、その地域でありましても、決して日本の領土外ではない、日本の施政のもとにある地域であるということは、現在すべてそのように了解されている次第でございます。

○大貫委員 施政下にあるというのは、領土の問題じゃないでしょう。領土は領土権でしょう。施政権というのはそうじゃないはずです。従って、治外法権を有する地域には施政権が及んでないんじゃないですか。岸総理が答弁されておるように、完全なる施政権というものは及んでないはずです。どうでしょう。

○高橋(通)政府委員 大使館の領域というような場合に、治外法権と呼ばれます場合もございますし、不可侵権というふうな、いろいろな表現で呼ばれております。しかし、これはやはり日本の領土内にある地域でございますし、日本のいわゆる領土権と申しますか、統治権と申しますか、施政権と申しますか、いろいろな概念で呼ばれておりますが、そのもとにある地域であるということは、これは問題ないところだと考えております。

○大貫委員 あなたは、領土権というものと施政権というものをまるでごっちゃにしている。この施政権というのは、領土権の問題と違うでしょう。ここの第五条でいう施政権というのは、領土の問題ではなくして、要するに、わが国の施政下にあるというのは、何も領土の観念とは違うでしょう。たとえば、わが国の領土内にあっても、大使館の地域の中は、完全なる施政権が行なわれないじゃないですか。これはアメリカの大使館はアメリカの統治権が――その領事館、大使館内に限っては、アメリカの統治権が行なわれているはずなんです。この点どうなんです。

○高橋(通)政府委員 たとえば、ただいま領土権云々を申し上げましたけれども、それは治外法権という言葉の由来でございます。由来は、エキストラテリトリアリティ、すなわち、領土の外にあるというふうに考える。すなわち、ああいう地域があたかも日本の領土外であるように観念されてきたのが、これは昔の観念でございます。しかし、現在に至りましては、そのような観念はもう全然払拭されまして、日本の施政のもとにある地域であるというように考えられております。ただ、外交官として大公使が、特定の特権、免除を持っておる。また、その地域内も、特定の、国際法で認められた特権、免除を持っているわけでございますが、しかし、一般原則としては、日本の施政のもとにある、こういうふうに一般的に考えられておる次第でございます。

○大貫委員 そうすると、大使館内に日本の警察――たとえば犯罪の捜査をやる場合に、日本の警察権が自由に大使館の中へ入って捜査ができますか。できないでしょう。できないから、要するに、完全なる施政権が行なわれないでしょう。

○高橋(通)政府委員 それは大使館の不可侵権ということで、そういうふうな面におきまして保護されております。しかし、日本の犯罪が行なわれましたときは、当然われわれは大使の許諾を得て中に入って、許諾を得て、わが警察権と申しますか、権限を行使することができるわけでございます。もし、大使がその場合に拒否するとかいうことになりますと、これは外交上の問題になりますけれども、原則として、そういう場合には、大使がみずから逮捕するか、それとも、日本の警察官と申しますか、それを同意を得て中に入れまして、そして、それを逮捕することを許すか何かしなければならない、こういうことになります。

○大貫委員 どうもあなたの法律論はごまかしている。不可侵権の観念じゃないでしょう。それは要するに、この大使館なり大使館のその地域だけは、特別にその国の――たとえばアメリカ大使館であれば、アメリカの施政権というか、統治権が、その区域内に限って、人と物に対して及ぶのですね。そうでしょう。土地に対してはない。土地は日本の領土権があるのだから、土地に対しては別として、人や物に対してアメリカの統治権が及んでいるのは、これは特別な姿でしょう。どうです、施政下にあるとは言えないんじゃないですか。

○高橋(通)政府委員 それは、国際法上いろいろな特権、免除を持っておりますが、アメリカの、または外国の大使館が、その所属国の統治権がそこに及ぶというような考え方は、これはもう一般的には全然されておりません。これは国際的な考え方としては、現在においては行なわれてないところだと考えます。

○大貫委員 それじゃ、例をかえて、別な例を申し上げましょう。それじゃ、日本の領海内に来たアメリカの軍艦はどうする。アメリカの軍艦内はどうですか。これは日本の施政権は完全に及ばないでしょう。アメリカの統治権が軍艦の上には行なわれるでしょう。その場合はどうなんです。

○高橋(通)政府委員 その場合も、軍艦は軍艦の国際法上認められた特権、免除がありますから、その限度で、そのように除外されているわけでございます。しかし、日本の領海に入れば、やはり日本の施政のもとにあるというのが原則でありまして、それが軍艦や軍隊という関係上、国際法上ある程度の特権、免除が認められている、こういうことになりますので、その認められていることが、原則として先方の統治権がそこに施行されるのだというふうな考え方ではない、それは逆だと思います。原則は日本であり、例外的に免除が行なわれている。先方の統治権が原則であって、われわれがそこで例外的ななにができるという考え方は、まるで逆になるのだ、こういうふうに考えております。

○大貫委員 それはもちろん例外ですよ。日本の国土のうちですから、領土内におけるものですから、少なくとも、領土の範囲内においては、その国の統治権というものは全部に及ぶのが当然なんです。原則なんです。ところが例外として、たとえば外国の大使館、公使館の内部とか、あるいは領海内における軍艦の内部、これは普通の汽船とは違います。軍艦ですよ。軍艦の中に、日本の施政下にあるといったって、日本の施政権は現実に行なわれないじゃないですか。その点どうですか。

○高橋(通)政府委員 それは軍艦が入った場合、または大公使館の領域が外国の領域だということではないと私は考えております。すなわち、やはり日本内部の問題で、日本の施政のもとにある。そこがあたかも外国の領土と考えられて、そのまま外国のほかの領土と同じように、そこに外国の統治権が及ぶということでは決してない、こういうように考えております。

○大貫委員 それでは外国の統治権がそこに――言葉のあやのようですけれども、それでは外国の統治権がかりに及ばぬと、あなたの言う通りにしたとしても、岸総理が、この前竹谷委員に答えて、施政下というのは全面的な施政権を持っておる、そういうところである、こう解釈する、こう言っているのです。その意味においては、たとえば、わが国の領海内における米軍の軍艦には、岸総理の言う完全なる施政権は行なわれると思いますか。実際に行なわれないでしょう。日本の施政権が現実に行なわれないじゃないですか。

○林(修)政府委員 今、大貫委員の仰せでございますが、領海それ自身が、軍艦がいるために領海でなくなるというような問題ではないのでありまして、領海に対しては、もちろん、日本の施政権が全面的に及んでおります。そこに軍艦が今おれば、その軍艦の上は、軍艦の特権、免除から、そこにいろいろの不可侵権とか、特権というものがございまして、日本の施政権が全面的には及び得ない点がございますけれども、現実にその特権、免除の結果として、反射的には及ばない、こういうことになるわけであります。しかし、そのために軍艦のいる領海が領海でなくなる、日本の施政権下の領域でなくなる、こういう問題ではないと思います。

○大貫委員 そうすると、施政権が全面的に及ばないということは、今明確になったと思う。それはその通りなんです。
 そこで総理大臣、どう思いますか。この前、竹谷委員には、施政下というのは全面的に施政権が及ぶところをいうのだ、こういうことをおっしゃっている。ところが、軍艦の上は全面的な施政権が及ばぬというのが、今の法制局長官の見解です。そうすると、領海内に入ったアメリカの軍艦が攻撃されたという場合に第五条が発動するのですか。施政下にある領域が攻撃されたということになるのですか、ならぬのですか、総理大臣にお尋ねします。

○林(修)政府委員 これは先ほどから申しましたように、軍艦がそこにいようといまいと、その海のところが日本の領海であり、日本の領域下であることは間違いないわけであります。そういうところに対して攻撃があれば、まさに、これは日本の施政下にある領域に対する攻撃だ。その軍艦自身がいろいろな特権、免除を持っている結果として、日本の施政権の行使が、たとえば、向こうの許可を得なければ警察権が及び得ないとかいうことはございますけれども、それは軍艦の持つ特権からくることでございまして、その軍艦のいる海の下が日本の施政下の領域でなくなる、こういう問題ではございません。

○大貫委員 そんな三百的な言いのがれは、あなたはよされたらいい。つまり、軍艦の中には、全面的施政権が及ばないのだ、及ばないということをあなたは言っている。そうすると、その全面的な施政権の及ばない軍艦が、かりに攻撃されたという場合に、第五条による施政下にある領域が武力攻撃を受けたということにならぬじゃないか、こういうのです。

○林(修)政府委員 軍艦自身が日本の施政下の外にあるとは言えないわけであります。日本の領海にある限り、日本の施政下にある領海の中にあるわけであります。ただ、軍艦はいろいろ特権が国際法的に認められておる。そういう特権、免除の結果として、たとえば、警察官が直ちにそこに入って捜査ができないとか、そういうような問題はあるわけです。そういう意味において、普通の日本の私人に対するものと同じように日本の権力が及び得ない、それはもうおっしゃる通りであります。そのために、その軍艦のいるところが日本の施政下からはずれるという問題ではないと私は思います。

○大貫委員 ところが岸総理は、施政下というのは、全面的な施政権が及ぶところだ、こら答弁しておる。同様なことは、米国大使館内も同様だと思う。米国大使館内も、あなたは、やはり完全なる施政権が行なわれないところだと思うでしょう。これは制限されておるでしょう。

○林(修)政府委員 先ほどから条約局長がお答えいたしましたように、軍艦といえども、あるいは大使館の区域といえども、日本の施政下にある地域でございます。ただ、大使館の不可侵権あるいは大使その他の外交官の不可侵権、そういう問題から、あるいは軍艦の特権というところから、たとえば、先ほど仰せられたように、日本の法令がそのままに普通の日本人に対するように行なわれ得ないというような点はございます。しかし、それは、そういう不可侵権とか、特権からくる問題であります。その領域が日本の施政下でなくなるという問題ではない。日本の全面的な施政下にあることは間違いないことであります。

○大貫委員 そうすると、施政権というものは何ですか。もう一度明確にしてもらいたい。施政権というのはわからぬじゃないですか。特権からくる除外とか何とかおっしゃられるのですけれども、完全なる日本の行政権なり司法権なりが制限されるじゃないですか。第一、入れないでしょう。施政下にあるということは、何を言うのですか。施政権の行なわれるところでしょう。完全なる施政権の行なわれるところが施政下にある領域でしょう。そうじゃないのですか。

○高橋(通)政府委員 先ほどから申し上げておるところかと思いますが、完全な施政が法律上行なわれているわけであります。それが、国際法上または国際関係の約束によりまして制限されておる。特定の問題については、たとえば、税金の免除でありますとか、不可侵権であるとか、これは国際慣行によって免除されているわけであります。そういうように免除されておるからといって、その地域が、先ほど申し上げましたように外国であるというふうには、だれも観念していないわけでありまして、やはり日本の施政のもとにある区域である、こういうように考えております。

○大貫委員 私は、何も外国だなんて言っておるわけじゃない。日本の領土内にあるのですから、そんなことは明白なことだ。ただ、いろいろ外交上の、たとえば慣例とか、特権とか、いろいろあるでしょうが、いずれにせよ、現実の日本の施政権というものは制限されておることは事実でしょう。完全な施政権が行なわれないでしょう。制限されておるでしょう。そうすると、岸総理大臣がこの前答弁された、完全なる施政権が行なわれておる地域じゃないじゃないですか。どうです。

○林(修)政府委員 これは、どうも何回もお言葉を返すようになりますけれども、先ほどから申し上げましたように、大使館の区域あるいは軍艦の区域といえども、日本の施政権の及ぶ区域であります。ただ、特権を持ち、不可侵権を持つ関係で、たとえば、普通の日本の私人に対するような捜査ができない、あるいはそれを逮捕するについてはいろいろな許可が要るという問題があります。そういう点は不可侵権、特権等からくるわけであります。それがあるから、その領域に日本の施政権が全面的に行なわれてないということにはならないと私は思います。

○大貫委員 じゃ、一体施政権というのは何を言うのですか。これは一つ総理大臣から御答弁を……。

○林(修)政府委員 この点は、先ほど条約局長がお答えいたしましたように、立法、司法、行政の権限が行なわれる地域、かように考えます。

○大貫委員 施政権は立法、司法、行政権だというのですが、そうしますと、どうですか、米国大使館内に日本の立法権は及ばないでしょう。行政権は及ばないでしょう、及びますか。司法権は及ばぬでしょう。裁判はできないじゃないですか。軍艦の上にあるアメリカの兵隊を裁判することはできないでしょう。施政権は及ばぬじゃないですか。

○林(修)政府委員 従って、先ほどから申し上げております通りに、軍艦の特権、あるいは外交官、あるいは在外公館の特権、不可侵権、こういう問題からくるわけでございまして、そういう特権のある軍艦を、許可をして入港を認めている、あるいはそういう外国と大使、公使の交換をしている、こういうのは、まさに、日本の施政権に基づいてやっておるわけでございます。そういうことに基づいて入ってきたものに対して、国際法上にいろいろの特権がある。その特権がある結果、普通の私人に対すと同じような日本の行政権が及び得ない、あるいは司法権が及び得ない点があります。ありますけれども、これは、それなるがゆえに、その領域が日本の施政権からはずれる、こういう問題ではないと私は思います。

○大貫委員 だから、外交上の特権なり不可侵権なり、そういうことによって日本の完全なる施政権が制限されるのでしょう。行政権も制限される。特権だ特権だという裏を返せば、これは日本の行政権の制限になるわけだ。そうでしょう。司法権に対しても制限なんだ。制限されるから司法権が及ばない、行政権が及ばない。それが当然じゃないですか。そうすると、これは完全なる施政権が行なわれている領域にはならぬじゃないですか。

○林(修)政府委員 これは先ほどから申し上げているところで私は尽きると思いますが、総理が仰せられた、いわゆる施政権が全面的に及ぶ区域、そういう意味も、そういう大使館の区域とか、あるいは軍艦のものを除く趣旨でおっしゃったわけではないと私は思います。そういう日本の施政権が及ぶべき区域、こういうことについて、特権がある結果、実際の権限については、これの行使は普通の日本人に対すると同じにはできない。こういうことがあるにしても、そういうところは、いわゆる施政権の全面的に及び得る区域、こう考えておっしゃったものと私は心得ております。

○大貫委員 幾ら繰り返しても、どうもあなたは私の言うことがわからぬようだ。故意にわからぬ答弁をしている。それでは、日本の国内にある米軍の基地はどうですか。米軍基地は、完全なる施政権が、これも行なわれていないでしょう。

○林(修)政府委員 これについても、もちろん行なわれております。施設・区域として、向こうに、日本が日本の権限に基づいて、あるいは条約に基づいて与えてあるわけです。使用を認めたわけであります。これに対しても、もちろん日本の施政権は及んでいるわけであります。ただ、そこにいる外国軍隊あるいは外国の軍人、そういうものの特殊性から、いろいろの特権があるわけでございます。これは従来の行政協定あるいは地位協定に必ずしも明文がなくても、いわゆる軍隊の特権、こういうものがあるわけでございまして、日本の法令が、そういう意味において軍隊とか軍人とかにそのまま及び得ない点はございます。しかし、施設・区域が日本の施政権からはずれる、こういう問題ではないと私は思います。

○大貫委員 何べん言っても、あなたは本筋に触れないのだけれども、いずれにしろ、日本の施政権、あなたの言う立法権も司法権も行政権も、たとえば、米軍基地内にはそのまますぐ適用されないでしょう。及ばないでしょう。及ばないということは、日本の施政権を与えたにしろ、何にしろ、とにかく制限されておるのでしょう。完全なる施政権が及ばぬ地域でしょう。それは及ばないでしょう。どうなんです。その場合においては、第五条の施政下にある領域とは言えないじゃないですか。

○林(修)政府委員 その施設・区域に対して、地域的に日本の行政権、司法権、立法権が制限されているわけではございません。これは軍隊とか軍人とか、そういうものに着眼してのいろいろの特権はございます。それからまた、そういう意味において、施設・区域について、軍隊がおりますから、たとえば行政協定十七条で、米国の警察権もそこに行なわれますけれども、しかし、そういうことだからといいまして、施設・区域に対して日本の立法権が及ばない、司法権が及ばない、あるいは行政権が及ばないという問題ではないわけであります。そこにいる日本人等に対して完全に日本の司法権は及んでおるわけでありまして、これはその軍隊なり軍人、軍属の、いわゆる国際法的な、あるいは行政協定に基づきます特権からいろいろ制約はあるわけでありますが、これはそういう特権からくるものであります。人的な特権でございまして、地域的に、それが日本の施政権の範囲外にある地域、こういうことではないと私は思います。

○大貫委員 私は、何も施政権の範囲外にあるなんて言っていやしないでしょう。完全なる施政権が及ばないのじゃないかということを繰り返しているのですよ。完全なる施政権が及ばないでしょう。施政権の中で及ぶものもあるでしょう、しかし、完全には及ばぬじゃないですか。それなら、たとえば日本人があの基地内を自由に歩けますか。日本の警察が自由にあの中で犯罪捜査ができますか。税金をかけることができますか。一たびあの基地内に入れば、アメリカの支配に服さなくてはならぬのが現状でしょう。そうしますと、少なくとも、基地の内部における完全なる日本の施政権というものは行なわれないというのが現状ではないですか。これは岸総理大臣、あなたはこの見解を、この前竹谷委員に対して、そう答えておるのだから、一応お答え願います。

○岸国務大臣 この前の竹谷委員の御質問に対して私がお答えを申し上げましたことは、施政権の一部が――たしか、あれは戸籍の問題について、沖繩の、もしも戸籍に関する権利がこっちに渡されたらどうなんだ、そうすると、沖繩は全部施政下にある領土、領域として何がいくのか、こういう御質問に私は答えたつもりでございます。そうではなしに、やはり施政下にある領土、領域ということは、全面的な施政権ということを考えておる。もちろん、先ほどから御議論がありますように、ある地域に対して、あるいは外交官であるとか、あるいは軍隊であるとかいうようなことで特権を与えておる。全面的な施政権は及んでいるけれども、その一部について特権を与えておるというような場合におきましても、私は、やはり観念としては、全面的な施政下にあって、そうして、特殊のものであるから、こっちからそういう特権が与えられておる。そういう結果、実際の施政権の行使について制約を受けることがありますけれども、それによって日本の一般的な施政権下にある領域ということと矛盾するものでもなければ、それを排除するものでもないというのが私の考え方でございます。

○大貫委員 それは非常におかしい話だと思う。これは、いずれにしろ、日本の施政権というものは制限されている。だから、完全なる施政権が行なわれる領域だと、もし総理のように御解釈になるならば、米軍基地は施政下にあるとは言えないのじゃないかと私は思う。しかし、どうも、どこまでいっても同じことですから、進めます。
 そこで、藤山外務大臣は、午前中に、米軍基地は租借地じゃない、こういうことをおっしゃっておる。一体、租借地というのは、観念としてどういうことを藤山外務大臣はお考えになっておるのですか。

○藤山国務大臣 租借地の法律的解釈につきましては、条約局長から申し上げます。

○高橋(通)政府委員 昔ございましたように、関東州の租借地であるとか、ああいう地域であります。五十年だとか、九十九年だとか、長期間外国に貸し付けまして、そしてその地域は、いわばほとんど擬装された割譲地域というふうにもいわれておるわけでございますが、そこの施政権その他は、現実には借りた国が行ない、貸した国は停止になっておる。こういう状況でございます。

○大貫委員 あなたの解釈は、法律を勉強なさったらいいですぞ。租借地という観念の中には、期間の問題は条件として入っておりませんよ。租借地というのは、要するに、領土権は持っておるけれども、いわゆる貸した国の統治権というか、施政権が及ぶ地域、これが租借地でしょう。期間が五十年とか六十年、百年、そんなのは観念の中には入らぬはずなんです。租借地というのは、要するに、租貸国が租貸国の領土権は保有しておるけれども、その租借地内には、その国の統治権が及ばないというのが租借地じゃないでしょうか、どうですか。

○高橋(通)政府委員 その場合、期間が五年とか数年ということは、そのような構成でございますからないのでありまして、九十何年だとか、百年だとか、ほとんど半ば無期限、永久にそういうふうな状態が現出されるのが通常でございます。

○大貫委員 通常だといっても、法律解釈としては、まるでなっちゃいません。すべてあなたの言う租借地というのは、通常、法律的には政治的租借地といわれておるのが、今お答えになったものです。ところが、政治的じゃなく、非政治的租借地、かりに法律学者はそう言っております。そう言っておるのもあるし、戦略的租借地と言っておるのもあります。要するに、軍事目的のために基地を設定するという場合には、租借地の観念で法律学者は少なくともこれを解釈しておるのですが、どうですか。

○高橋(通)政府委員 やはり租借地になりますと、ただいま申し上げましたように、非常な長期間の問題でありますとか、それから領土権は御指摘の通りでございまして、貸した国が持っておりますが、借りた国が、全面的な統治権と申しますか、施政権と申しますか、それをそういう期間内に行なっている、こういうのが、一般の租借地の特徴と申しますか、原則的な点であろうと考えます。

○大貫委員 ところが、法律学者が普通定義しているのは、――あなたの言うのは政治的租借地なんです。そうでない租借地があるはずです。つまり、領土権、統治権――もちろん領土権はある、租貸国が領土権を持っておる、しかし、統治権も租借国に委譲しない、当然租貸国が統治権まで持っておる、ただ一時使用を許しておるような、いわゆる基地ですね、こういう軍事基地のようなのは、その観念に入るというのが、今日法律学者の通説です。つまり、非政治的租借地、こう呼んでいる学者もあります、あるいは戦略的租借地と言っておる人もあります。いずれにしろ、軍隊なら軍隊の目的で一時使用を許すという場合には、租貸国の統治権は及ぶけれども、制限される、つまり、租借国に使用を許すその限度において、租貸国の統治権が制限される、そういうのを非政治的租借地、戦略的租借地と言っておる。どうですか、そういう観念があるでしょう。

○高橋(通)政府委員 それは、そういうふうな学者のいろいろな観念の分類といたしまして、そういうことはあるいは言われることがあるかと考えます。ただ、今御指摘のように、一時使用を許すという場合に、貸した方の統治権が施行されるけれども、特定の場合に制限されているということでございます。そういうことは、ただいま申し上げましたように、一時使用を許す使用の必要上、協定により、あるいは国際慣習、国際法によって特定の特権とか免除が与えられている。しかし、貸した方の統治権と申しますか、それが原則的には及ぶのである、こういう場合は、租借地とは違う、こういうふうに考えます。

○大貫委員 いずれにしても、日本の国土内にある米軍基地というのは、これは日本の完全なる施政権は行なわれない地域のはずなんです。これはどうなんですか。私はそう思う。政府はやっぱり完全なる施政権が行なわれる、こう解釈なさるのですか。

○岸国務大臣 言葉の問題のように思います。いわゆる完全なる施政権が行なわれておるかどうか、一切の施政権の内容が、何ら制限を受けずに、特権も与えずに完全に行なわれておるというような意味において施政下にある領域ということを言っているわけではございませんで、一般的に施政権が全面的に及ぶ地域、こういうことを言っている。施政権と考えられるところの、ごく一部のものがかりに沖繩において回復されましても、この施政下にある領域ということには決してならないわけであります。今おあげになっているようないろんな事例の地域におきまして、今、大貫委員のお話のように、完全な、一切他の地域と同じように、日本の施政権が少しも制限をされずに行なわれているかというと、あるいは大使館の館内であるとか、あるいは先ほどからあがっております基地の中であるとか、あるいはまた、領海内にある軍艦の中に、他の、完全にわれわれの施政権が行なわれておる地域と同じようにすべての施政権が施行できるかといえば、それはできないことは御指摘の通りであります。しかし、それだからといって、それでは日本の施政権を一般的に持っておらない地域である、その地域においては、この外国がこれにかわって施政権を持っている地域なり、あるいは区域であるというふうに解釈すべきものではない。いろんな慣例や国際法の取り扱いその他のことから、そういうふうな特権を与えられておる。その特権を与えられておる結果として、事実上、一般的に持っている施政権の行使が制限を受けているのだ、こういうふうに私どもは解釈いたしております。

○大貫委員 それじゃ、質問をかえて、竹島は一体どうでしょうか。竹島は日本の施政下にある領域でしょうか、外務大臣。

○藤山国務大臣 竹島は日本の施政下にある領域でございます。

○大貫委員 ところが、現実には、今韓国が支配しているのじゃないですか。

○藤山国務大臣 現実には、不法に占拠をされておるのが竹島の現状でございます。

○大貫委員 私もそう思う。不法に占拠していると思うが、しかし、韓国政府はおそらくどうでしょうか。韓国政府は、不法に占有しているとは決して彼らは言うてない。というのは、要するに、竹島問題というのは、占領当時においてマッカーサーの地図の中に竹島が載っていなかったのでしょう。そこで韓国は、これは韓国の領土だという難くせをつけるに至ったのじゃないですか。沿革的に、歴史的に見ればそうなんじゃないですか。韓国の主張はそういうところにあるのでしょう。

○藤山国務大臣 日本が歴史的に竹島を領有いたしておりますことは、これはもう当然のことでございまして、日本の歴史、過去の事実から見まして、疑う余地はないわけでございます。従って、われわれ日本人としては、当然これは日本の施政下にある、こう存じておるわけでございます。

○大貫委員 われわれは、その通りでよろしい。われわれは、日本人として当然竹島はわが国の領土だと思っている。ところが、現に、韓国政府は、不法占有かどうか知らぬが、占有している。そうして韓国自身は、決して不法占有だと言うてないでしょう。正当なる領土だと彼らは主張しているんじゃないですか、どうですか。

○藤山国務大臣 韓国がいかようにいいましょうとも、われわれとしては、今申し上げたところが正しいと思っております。

○大貫委員 米韓相互防衛条約の第三条の「それぞれの行政的管理の下にある領域」という中に、竹島は入っているんじゃないですか、どうです。

○藤山国務大臣 われわれの立場からいたしまして、そういう竹島のようなものが入っているとは考えられないわけでございます。またアメリカも、今回の場合において、竹島が米韓条約の発動の対象地域になるとは了承いたしておりません。

○小澤委員長 この際、受田新吉君より関連質疑の申し出がありますので、これを許します。受田新吉君。

○受田委員 外務大臣のただいまの御答弁に関連して、お尋ねをしたいのでありますが、竹島が、米韓条約における大韓民国の施政下でないということが、アメリカで保証されている何らかの文書があれば、お示しを願いたいのです。

○藤山国務大臣 特段に文書はございません。しかしながら、われわれはアメリカに対して、竹島の問題につきましては、過去においても不法に占拠された事実を述べております。今日まで、たとえば国際司法裁判所に提訴するような場合におきましても、これらの事実をアメリカに十分話をいたしておるのであります。その過去におきますずっと歴史的な話し合いの上に立ちまして、われわれは今日アメリカに対して、そういう日本の施政下にある領域ということを主張しておるわけでございます。同時に、しかしこれは現に国際紛争になっておりますから、従って、米韓条約の適用地域にはならないのでございます。

○受田委員 国際紛争の対象になっている地域であるという意味においては、そういう理論からいうならば、日本の場合にも、これを施政下に入れることは間違いではないですか。

○藤山国務大臣 歴史的に見まして、竹島は日本の固有の領土でございますし、日本がそうしたことを主張いたしますことは一向差しつかえないことでありまして、当然われわれは入れるべきだと考えております。

○受田委員 大韓民国と米国との相互援助条約に、韓国の施政下にあると韓国自身が提唱して、これを容認して、米韓条約が形の上で結ばれておるとあなたは御判断ではありませんか。

○藤山国務大臣 米韓条約において、行政管理下という言葉が使われておるわけでございますが、この点につきましては、ただいま申し上げましたように、竹島についてはわれわれは歴史的な主張をいたしておるのでありまして、この問題は、現在韓国と日本との間の国際紛争の形をとっております。それで、米韓条約におきます行政管理下というのは、御承知の通り、韓国が二つの政府を持っておる、そういう意味におきまして、韓国の持っております行政管理の地域という意味で、これが表現されておるのでありまして、特に竹島を対象にいたしたものではございません。

○受田委員 韓国は竹島を除くという形で米韓相互援助条約が結ばれておるとはわれわれは想定しておりません。従って、韓国は竹島を領有する地域だとはっきり言明をし、日本はまた竹島を固有の領土だと主張して、すなわち、両国ともこの地域を自国の領土だと主張した形で、紛争地域として、米国が双方との間で条約を締結しようとしておるのではないですか。そういう形の解釈ではないですか。

○藤山国務大臣 むろん紛争地域でございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、竹島が日本の固有の領土であるということにつきましては、歴史的な事実からいって、われわれは証明することができます。また、過去におきます紛争の際の取り扱いにおきましても、アメリカ側とも十分歴史的に話し合いをいたしておるのでございますから、その点についていささかも間違いはないと私は存じております。

○受田委員 その話し合いは、韓国政府と米国政府との間において了解事項になっておりますか、いかがですか。

○藤山国務大臣 韓国政府と米国政府の間の了解事項になっているかいないかは存じておりません。しかしながら、少なくも米韓条約の発動の地域とは考えられておりません。

○受田委員 あなたのお説によれば、米韓条約の掲げる韓国の施政下に竹島は入っていない、かように了解してよろしゅうございますか、確認をしておきます。

○藤山国務大臣 国際紛争になっておりますから、アメリカは、この問題について米韓条約の対象とはいたしておらぬということだけは申し上げられます。

○受田委員 これに関係してあなたに、先般本委員会でも、また参議院の委員会でも、あなた御自身及び岸さんから御答弁になった中に、竹島を不法占拠しているような事態が再び繰り返される場合は、日本及びアメリカの共同防衛義務の発動の対象となると言われたことは、再確認さしていただいてよろしゅうございますか。

○藤山国務大臣 将来、竹島以外の日本の施政下にある島にああいう事態が起こりましたときには、不法なる侵略でございます。従って、ただいま申し上げておる通りでございます。

○受田委員 竹島以外ですか。竹島のことをお尋ねしたときに、竹島に再びこういう事態が起こったらという意味の御発言であったと私は了解しております。

○藤山国務大臣 竹島は、すでに現在八年間にわたる国際紛争になっておりまして、日本もこれを司法裁判所等に提訴いたすような申し出をしたこともございます。従って、国際紛争というものでありますから、できるだけ平和的に解釈するのが望ましいことであり、またしなければならぬことでございます。それを第三者の判断に待つか、あるいは国連等の機関によって判断するかは別といたしまして、そういう紛争の平和的解決――先般申し上げましたのは、竹島に起こったと同じようなことが他の場合に起こった場合には、やはり第五条の適用が起こり得る事件であるということを申し上げたのでございます。

○受田委員 私は、そのお答えは少しわれわれの質問からそれていると思うのです。竹島を現在不法占拠している人々が、一応韓国へ引き返した、その後において再びこれを不法侵略するというような場合を、あなたが示しておられるものかと思ったのでございますが、これはいかがですか。

○藤山国務大臣 むろん、今竹島を占拠している韓国が一ぺんすっかり引き下がってしまいまして、新しくまた竹島にやってくるということでありますれば、引き下がったこと自体は、国際紛争が解決したことでございます。そうして今度新しい事態として同じことが起これば、当然われわれは不当な侵略として、そのときに考えざるを得ないのでございます。

○受田委員 そうすれば、竹島の場合も含むわけですね。そうしてその場合と、竹島にもう一つ考えられる場合は、現在の不法占拠している人々から、こちらから漁船とかあるいは調査などに行ったときに、不法の攻撃を受けるという場合、これはいかなることになりますか。

○藤山国務大臣 その場合に、正当防衛をやりますことは、その人たちの当然なすべきことであろうと思うのでありまして、そういう意味における行動でございます。われわれは、あくまでも八年間の経緯でもって、この紛争を平和的に解決するということをいたしておるのでございますから、そういう意味においてわれわれは今考えておるということを先ほど来申し上げておるわけでございます。

○受田委員 この問題は、あらためてまたお尋ねすることにして、御検討を願っておく課題に残しておきます。

○大貫委員 沖繩の問題でお尋ねいたします。前回、わが党の竹谷委員から、沖繩の問題については、岸総理にいろいろお尋ねをいたしました。沖繩については、領土権は日本は放棄してない、潜在主権がある、こういうことは間違いない事実だと思うのです。そこで、アメリカの施政下に現在ある、こういうのが沖繩の現状だと思うのですが、かりにアメリカが施政権を一方的に日本に返還するというような事態の起こった場合には、これはアメリカの一方的意思表示で、日本の施政権は完全に回復することになるのでしょうね。これを総理大臣にお尋ねいたします。

○岸国務大臣 観念としては、私は、アメリカが施政権を放棄すれば、当然日本に復帰するものだと考えます。ただ、奄美大島等の実例を見ましても、いろいろな処理の問題がありますから、おそらく協定か何かによってこれが返還されるという形をとるだろうと思いますが、観念としては、アメリカが放棄すれば、当然日本に復帰するものと私は考えます。

○大貫委員 そこに、私は、この第五条というのは、おそるべき内容を持っておると思う。現在日本の施政下にある領域に対して武力攻撃を受けた場合に、第五条が発動されるわけですが、かりにアメリカが日本を沖繩の紛争にまで介入させようとすれば、沖繩に危機が到来した場合に、沖繩における施政権を放棄するという通告だけで、自動的に沖繩が日本の施政下に入るじゃありませんか。どうなります。そうすると、沖繩に対して武力攻撃を受けた場合には、当然この五条によって米軍と行動をともにしなければならなくなると思いますが、その点間違いないでしょうね。

○岸国務大臣 今お話しのように、私どもは、沖繩における施政権を一日も早く日本に返してもらいたいということをアメリカに要求もしておりますし、それがわれわれ日本国民の念願であると思います。従って、放棄して、これが日本に復帰するということであるならば、これはわれわれの完全なる日本として、また日本人の一切のことに責任を持つのが、日本国の当然のことであると私は思います。

○大貫委員 むろん当然のことです。当然のことですが、非常にあぶない事態になって、沖繩を中心として、極東の問題について非常にあぶなくなる。要するに、日本の安全には関係なく、たとえば沖繩を中心として非常に危険な状態が出てきた。その場合に、日本をして戦争に参加させようとすれば、そういう危険な状態になってから、アメリカが世界に向かって沖繩の施政権を放棄したということになると、自動的にそれが日本の施政下に入ることになって、そこで沖繩を中心としてやはり戦争に巻き込まれるという結果になると思うのです。これは大へんなことになると思うのですが、どうですか。

○岸国務大臣 さっきもお答え申し上げました通り、沖繩における施政権を放棄すれば、完全な日本のものになるわけであります。そうでなくても、われわれは、あそこにいる人々は日本人だという同胞の意識でおるわけであります。ただ、施政権を持たないから、かりに沖繩が武力攻撃を受けても、これは米軍によってその安全とそこの秩序、治安を守ってもらう以外はないのであります。しかし、これを米軍が放棄したからといって、それではわれわれも戦争に引きずられる危険があるから、そこを何もしない、そうして米軍も、それに対して施政権を放棄した以上はしない、われわれもそれを見殺しにするなんていうことは、これは私は民族としてとうていできないことだと思います。(拍手)

○大貫委員 自民党の諸君は手ばたきをされたが、私は、平和のうちに沖繩の施政権を日本に返還するというのは、問題ないのです。ところが、たとえば米華条約を考えましょう。これは日本の安全には何の関係もないという米華条約、その米華条約の発動に基づいて、たとえば金門、馬祖に非常な紛糾が起き、沖繩の基地からアメリカ軍が中国本土を攻撃した場合、そうすると、中国から必ず沖繩は報復攻撃を受けるでしょう。その場合に、アメリカが日本をして守らせようとすれば、日本の安全には関係ないけれども、施政権を放棄したと言うて日本を戦争に引ずり込めるという、そういうことをおそれておるのです。そういうことはあるでしょう。どうです。この点からいけば、そうなるでしょう。

○岸国務大臣 私は、実際問題として、そういうことがあり得るとは実は思いません。観念の問題であって、そんなことがあり得るとは実は思いません。むしろわれわれとしては、もしもそういうことがあった場合において、日本国政府として、沖繩の平和と安全のためには、国をあげてこれを防衛するということを言うことが、私ども民族の確信であると思います。

○大貫委員 それだから、私は問題だと思う。そこで、そういうことはあり得ないと言うが、現にあったじゃないですか。一九五八年、あの金門、馬祖向島をめぐって、非常な戦争の危機が到来しておったわけです。幸いにして戦争にならなかったからよろしいけれども、あのようなことが再び起こらないとは、何の保証もないでしょう。そうしますと、結局今申し上げましたように、この米華条約の発動として、アメリカが日本の安全に何の関係もなく、中国と戦争を開いた、中国から攻撃を受ける、苦しまぎれに、そういう事態になってから日本に防衛させる。そんなことはそれこそ玉砕ですよ。ちょうどあの大東亜戦争の玉砕と同じだ。そういう役割を再び日本国民にさせるという、そういう危険を、この第五条は含んでおると私は思う。つまり、そういう苦しくなった場合に、施政権をいきなり放棄する、日本が自動的に施政権を回復する、そして日本が出動してそれを守らなくてはならぬ、そういう結果になるでしょう、どうです。

○岸国務大臣 米華あるいは米韓条約等の条約から見ますと、施政権を日本に返しますれば、これらの条約地域からは除かれるわけであります。アメリカが何らの権限を持たぬ地域でありますから、完全に日本の国として、従って、いわゆる米韓、米華等の条約からこの沖繩を中心に連鎖作用が起こってくるということは、向こうの条約から除かれるわけですから、これはあり得ないことであります。今お話しのような事態が起きた場合に――これは質問者と答弁する人が逆なことを言ってもいけないでしょうが、しかし、大貫委員は、そういうときにどうすればいいというお考えで御質問になったのか。私どもがさっきから明瞭に申し上げておることは、そういう場合においては、日本政府が、日本国が、沖繩の安全と平和を守るために全力を尽くす、これはわれわれの当然の義務であるということを申し上げておるのでありまして、それが大へんだから、それはやっちゃいかぬというような御議論のようでございますが、それは私どもが沖繩をそういう場合に見捨てるというような結果になるのであって、われわれとしては、とうていそういう考えになり得ない。もちろん、沖繩の施政権を返してもらうのは、なるべく平和的な状態において返してもらうことがわれわれは望ましい。しかしながら、そういう場合に、危険であるから、なにの方はわれわれは施政権を引き受けない、われわれは知らないのだ、そんな不人情なことはとうていできるものじゃないと私は思います。

○大貫委員 それは岸総理は大へんなことを言っておるのですが、引き受けないとかなんとかいうのじゃないのですよ。日本の当然の領土ですから、一日も早く沖繩の施政権を回復するという熱意において、われわれも変わるものじゃない。ないけれども、いよいよあぶなくなって、アメリカ自身もほんとうにどうにもならなくなった場合に、日本を引き合いに出して玉砕をさせられるような事態になるのじゃないか。そういう場合に一体どう考えるか。それは沖繩を守るために、日本が焦土になってしまうかもしれない。日本の一億近い国民が、これによって戦争に巻き込まれて、焦土になってしまうかもしれない。全滅してしまうかもしれない。そういう事態を憂えるから、私はお尋ねしておるのです。

○岸国務大臣 どういう事態でありましょうとも、かりに平和なうちに沖繩を返されて、そうして沖繩が攻撃された場合と同じように、私どもは、沖繩の運命については強い民族的な関心を持っておりまして、いかなる場合においても、われわれは、沖繩が完全に復帰する――それが平和な時代に返してもらうことが一番望ましいことは、言うを待ちません。しかし、そういう危険な場合におきましても、われわれは施政権を返してもらって、完全な日本国として、日本自身がこれを防衛するということは、私は当然だと思います。

○小澤委員長 この際、堤ツルヨ君から関連質問の申し出がありますから、これを許します。堤ツルヨ君。

○堤(ツ)委員 私は、総理にもう一つよく聞かしていただきたいと思いますし、それから聞いていらっしゃる自民党の議員の中には誤解があるようでありますから、わが党の思想も織り込みながら、お伺いしたいと思います。(「よけいなことを言うな」と呼び、その他発言する者あり)それならば、黙って聞いていらっしゃって、今度質問のときに、自民党の沖繩問題に対する見解を聞かせていただいたらいいわけでございますから、そういうふうに御了承いただきます。
 そこで、私たちは、今大貫先生が言われたように、いざこざの最中にアメリカが施政権を放棄することは、絶対にあり得ないとは言えないことであって、あった場合を考えておかなければならぬ。そのあった場合に、自動的に日本の施政下になったものと領土であるということになりますと、これは何も沖繩の人を見捨てて、日本の領土を捨てておいて、これの防衛に当ってはいけないとは私たちは言っておらない。これは当然やらなければならぬ。自民党の天下であろうと何党の天下であろうと、やらなければならぬことには、総理の御答弁と少しも変わらない。よろしゅうございますか。少しも変わらない。ところが、これはやらなければならぬのだけれども、米華の問題でなしに、日本の本土の安全のために、沖繩をむしろ助けるというよりも、私たちが防衛しなければならぬ場合が起こってくる。こういうことに自動的になると思うのです。そうしたときに、私たちはアメリカとの安全保障条約に従って、事前協議の対象になるか何か知りませんけれども、共同防衛を沖繩に対してやらなければならぬという現実が生まれてきますが、それをどうお考えになりますか。

○岸国務大臣 それは施政権を放棄しましても、アメリカはこの日米安保条約によりまして、今度は日本の施政下にある領土になる、それが武力攻撃されるわけでありますから、その施政権を放棄したことによって、アメリカが防衛の第五条の義務を免れるという問題じゃございません。これはアメリカがやはり義務を負わなければならないことは当然でございます。

○堤(ツ)委員 よくわかるのです。どちらの場合の施政下にあったとしても、アメリカ、日本が共同防衛をしなければならぬ問題です。しかし、これは今の条約の場合には、日本の施政下に入らないという見解のもとに、たとえば内乱の場合とか、日本のあらゆる範囲を考えるときに、沖繩というものを除外して考えていらっしゃるでしょう。ところが、今度政治的に沖繩の置かれる場所が変わってくるわけです。そうでしょう。そういう変更のあったときには、これは今結ぶ安保条約の現状における沖繩と、アメリカが施政権を放棄して、日本に自動的に施政権を返したときの沖繩の処置の問題とは、日本側からいえば、変わってくるわけですが、それをお認めになりますか。

○岸国務大臣 それは日本側から見まして、日本が現在は施政権を持たない領域であるが、施政権を持つ、完全に施政下にある領域、こういうふうに変わってくると思います。

○堤(ツ)委員 そうすると、今は沖繩の問題を除外するといっている。そして今度は日本の施政下に入ってきましたら、これは変わってくるわけですから、沖繩を中心としての日本の安保条約に臨む態度というものが変わってくるはずなんです。ですから、そこに、きわどいいざこざの最中に、この安保条約の一つの盲点になっておる沖繩というところに、局部的に問題が起こったときに、どうするかということを私たちが心配して、尋ねておるわけです。しかも、この沖繩というのは、日本に返さないという観念のもとに、アメリカがアメリカの極東軍事作戦のうちの最も心臓部として、これを握って放さないわけです。この握って放さない沖繩というものを、日本の場合これを除外して条約を結ぶということは、大へんな片手落ちじゃないですか。そこをどうお考えですか。

○岸国務大臣 合意議事録にも、沖繩に関するものをきめておりますが、要するに、日本はここに潜在主権を持っており、従って、一日も早く施政権を返してもらうというかねての考え方を、われわれはずっと持続して持っておるわけであります。しかし、ここにおいてはアメリカが完全に施政権を持っておる地域でありますから、ここにおいてもしも危険が生じた場合に、直接にわれわれがその防衛に当たるというわけにはいかないと思います。しかしながら、ここの安全と住民の福祉のためには、日本政府としてはできるだけのことをする。また、これに対してアメリカは、その防衛についてはアメリカが責任を持ってやるが、また、日本政府と協力して、そういう住民の福祉のことを考えるというような意味の合意議事録を作っておりますが、この施政下にある領域と、こう書いてありますから、今は施政下にないわけでありますが、他日この沖繩が施政下に入れば、当然条約の解釈として、五条の施政下にある領域、こういうことになることをわれわれは実は予想しておるわけであります。そうしてそれが一日も早く平和的に返されることを望んでおる。しかし、それができないが、今お話のような場合に放棄されるならば、これは当然潜在主権を持っておる日本に一切の施政権が返ってくる。そうすれば、施政下にある領域として、われわれが日本の他の本州、九州と同じように自衛すべき地域である。ただ、ここに武力攻撃があれば、日本も自衛権の発動としてこれを防衛すると同時に、アメリカはこの条約上の義務として、共同防衛すべき義務がある、こういうふうに解釈しております。

○堤(ツ)委員 日本の国からいえば、沖繩は施政権の届かないところであるから、日本の自衛隊が、アメリカ軍と行動をともにして沖繩まで出かけていくことができない。従って、これを合法化するために、アメリカがいざこざの最中に沖繩を捨てて、日本の自衛隊の海外派兵が実質的に沖繩に行なわれるように持っていく手が、アメリカ側にあるわけです。これはどうですか。

○岸国務大臣 沖繩の施政権をそういう場合に放棄されまして、おそらくそうなると、これは一つの例でありますが、沖繩県というものができると思います。そうすれば、鹿児島県が武力攻撃を受けたと同じように、自衛隊が当然これを自衛権の発動として守らなければならぬということは、私ども考えております。

○堤(ツ)委員 おのおのの憲法に基づいてということがうたってありますから、日本の憲法では行けないところの沖繩に、日本の憲法で行けるように、自衛隊を、日本の兵隊をうまく使わんがために、いざこざの最中に施政権を日本に返すということは、絶対にあり得る。これは今までの戦争の始まりというものを見てみたらわかる。どこかの国境でいざこざが起こった場合に、自分の方は正しくて、向こうの方が悪いのだということばかりではありませんか。たとえば朝鮮動乱にしましても、北からいえば南が悪い、南からいえば北が悪いといって、原因がうやむやになってしまう。それと同じような手が使われないという保証は絶対にないのでありまして、もしもそういうことを頭に置いていないならば、まことにおめでたいか、頭の中に置いておられるならば、ごまかしておるということでございまして、私は受田委員に関連質問を譲りますが、また私の質問のときに残しておきます。

○岸国務大臣 せっかくの御質問ですから、お答えいたします。先ほど堤委員の御議論のうちには、沖繩というものが、これはそうであるかどうか疑問でございますけれども、アメリカの極東戦略の中心の地域であって、これをしっかり握っていることが、極東戦略の上から重要な地域のようにお話しになっております。そういえば、それをそうやすやすと放さないというのが実質上の問題。それからなお、これをかりに施政権を放しましても、アメリカが沖繩を防衛する義務は安保条約には厳としてあるわけでありまして、自分たちが逃げて自衛隊だけにまかすというようなことはできないのであります。それからまた、はなはだ残念でありますが、今の日本の自衛隊の力からいって、アメリカが非常に高くこれを評価しておって、これが来て助けてくれなければ困るというような事態に実はないのです。従って、今のお話は、私は、理論の問題であって、実際問題としてはあり得ないと思います。私どもは、理論の問題としては、完全に日本国に復帰するということは、いかなる状態においても歓迎するものであるという考えを貫きたいと思います。

○堤(ツ)委員 もう一つ、それはいかなる場合においても日本の政府が責任を持って守らなければならぬことは、異議なしであります。ただし、私が申し上げるのは、日本国の憲法というものをアメリカから見たときに、日本国憲法内におけるところの、制約された自衛隊の行動範囲というものがございまするから、従って、日本国憲法違反でないというところの、日本に筋を通させてやらなければならない場合が生まれたときには、アメリカは沖繩をいざこざの最中に返して、日本の自衛隊が施政、支配下にある沖繩に出ることは憲法違反でないという理屈を、日本の政府をしてつけさしめるところの理由をこしらえてやる。それからもう一つは、原子戦争などという大きな戦争はあり得ないのでございますから、いずれ局部的なものでございます。この局部的なものをおさめるのには、日本の自衛隊を使って、日本人の血を流させた方が、便利であり、得であるということが、アメリカの観念であるということは、忘れてはいけないと思うのでございまして、この辺に沖繩の問題があるということを申し上げておきたいと思います。

○小澤委員長 受田新吉君より関連質疑の申し出がありますから、これを許します。受田新吉君。

○受田委員 岸さん、私、今大貫君、堤さんの質問で総理がお答えになられたことの中に、はなはだ危険な観念がひそんでいることを心配しているのです。それは沖繩から米軍が撤退をしても、なお焦土作戦で、施政権が返った日本の自衛隊がこれを守るというこの考え方には、非常に問題がある。米軍が沖繩から撤退をする場合は、おそらく日本の基地におる米軍も撤退をして、日本の自衛隊だけがこの国土で防衛の任務に当たるという事実上の問題が、私は起こってくると思う。こういう場合に、私がきのうお尋ねした問題が関連してくるわけです。米軍とあくまでも共同作戦をとって、武力攻撃がとどまらない限りは、日本の自衛隊の防御的な共同防衛作戦は停止しないのだという御発言があったわけです。従って、たといいかなる不正な攻撃であっても、日本の国土が焦土と化する事態が起こるというときには、米軍は後方へ退いて、ただ単に優秀な兵器をもって攻撃をするだけで、戦争をやめない。日本は国内を焦土と化して、九千万総死滅するというような段階にまで戦わされておるときに、日本が単独講和をして、たとい不正な攻撃であろうとも、日本の尊い生命を守るために、このあたりで適当に講和をしたい、戦いをやめたいという事態を、私は考えていかなければならないと思うのです。この点においては、米軍とあくまでも共同作戦をとるという観念は――米軍が沖繩を捨て、日本本土を捨てて後退をしたときには、日本の自衛隊は第一戦で苦労するというような、そういう形の観念は、はなはだ危険であって、戦争の開戦の責任者になられたけれども、戦争を終わる責任者になられなかった岸さんとしては、十分ここを考えて、そういう場合に日本だけが単独講和をするという、そういう方式も考えて、そして一億総死滅などと大東亜戦争をやって、とことんまでいくおそれがあったのを、天皇陛下の命令一本でこれを停止した日本の歴史も考えられて、日本の単独講和という事態も十分検討すべきだと思いますが、いかがですか。

○岸国務大臣 第一の前段として、アメリカが、今回の安保条約におきまして、日本が武力攻撃を受けた場合に、日本の国土を防衛する義務を明らかに規定したということ、この条約を守るということから申しますと、今御議論の前段のようなことは、私はあり得ないと思います。しかし、もちろん、日本がいかなる場合においても、日本の施政下にある領土が武力攻撃をされておる、アメリカと最後まで共同作戦をしなければならないということは、何も規定してありません。アメリカはアメリカとして、日本に対する武力攻撃を排除するために、必要な行動をとるということを宣言しておりますし、また、日本は、当然日本の自衛権として、国土を守るということを考えているわけであります。もちろん、この前の戦争の時代とは違いまして、国連の問題もございますし、また、われわれはあくまでも戦争を避けようという念で、これは国民の考え方もそれに徹しているわけでございまして、一日も早くその兵火がおさまることを望むことは、もちろんのことであります。私は、そういう意味において、たとい武力攻撃をし、実力行使をしてこれを排除するけれども、ただお互いに撃ち合っているばかりを続けていくというのが、われわれの政治的の行動じゃありません。ただ、法律の解釈として、自衛権というものはどういうものであるかというような議論から申しますれば、そういう武力攻撃がある限りは、武力を持ってこれに対抗して、これを排除するというのが、自衛権の本質であり、また、第五条で約束しているアメリカの責任であります。しかしながら、その場合において、外交上どういうなにをとるか、あるいはわれわれが国の運命を考え、民族の運命を考えて、どういう処置をとるかということは、もちろん、われわれとして自主的に考えていかなければならぬ問題でありますから、決してアメリカと運命を共同にして、最後まで日本が滅亡するまで武力を行使しなければならぬというようなことは、絶対に考えておりません。

○受田委員 岸さん、私は、今あなたの最後のお言葉で、やや納得せざるを得ない点があるのですが、しかし、あなたの言われるように、日本が単独に講和をし、戦争をやめることができるという規定は、新条約に書いてないわけです。これはどういう方法で――今申し上げたような事態に日本が遭遇して、日本が九千万総死滅というような段階になった場合に、たとい不正な攻撃でも、日本の残された人命を守るために、講和をしたい、停戦をしたいという気持を表わす方法は、この新条約のどこでどういう措置をとればいいのでしょう。

○藤山国務大臣 どうも受田委員のお話を伺っておりますと、第二次世界大戦後に国際連合ができまして、そうしてこの戦争に対する処置をするということを、全然念頭に置かないでの御議論ではないかと思うのでありまして、武力攻撃がありましたときに、それを排除する行動をとりましたときには、直ちに国連の安保理事会に、きのうも申し上げましたように、通知をいたすわけであります。安保理事会は即刻に、これはスタンディング・コミティでありますから、何時間の余裕を持たずして開くのであります。また、それが決をとれないときは、総会は二十四時間以内に開くことに慣例でなっております。従って、それがいろいろな処置をとって平和を維持するような方法をとるわけでございます。その場合には、あるいは国連軍を出す場合もございましょうし、あるいは国連総会、あるいは安保理事会が決議をいたしましてやる場合もございます。でありますから、無制限にそういう状態が続いていく、しかも、全然国連も何も放置されて、そうして何か侵略してきた国と、日本なりアメリカとがそこで無制限に戦争をしていくという状態は、今日の国際連合のできました場合におきましては想定されないのでありまして、以前のようなことを想定されるから、今お話しのようなことが起きてくる。従って、われわれは、条約に国際連合憲章を順守して参るということをうたっておるわけでありまして、そういう点から見まして、私は今のような御心配は全然ないと思っております。

○受田委員 あなたは非常に安易な気持で御答弁されておるのですが、第五条の後段の規定は、お説の通り、国際連合の機関でこれを処理する規定が書いてあるのです。しかしながら、二十四時間にしても、六時間にしても、その時間的な余裕も許されないような段階でこれからの戦いが展開される、攻撃が加えられるという情勢であることも、あなたはよく御存じのはずなんです。そういう場合のことを考えて、国連の措置を待つ前に、そういう事態が起こり得る可能性があるじゃありませんか。そういう場合のことを考えて、今岸総理にお尋ねしているわけです。従って、総理御自身で今御答弁になったように、そういう措置をとるいとまがないような最近の近代戦における様相から見て、そういう場合には、日本は総死滅をする、そういう手を打つべきでなくして、事前に適当な単独講和でもやりたいと今総理はお答えになった、そういうことに私は了解をしておったわけです。

 もう一つ、自衛隊法七十六条の規定に、一たび出動した自衛隊に対して国会の不承認という場合には、当然この自衛隊の出動を停止し、撤退しなければならないという規定がある。国内法を憲法上の手続と規定ということで、あなたは条約で約束して帰られておるのでございますから、そういう意味の場合も起こり得るわけですね。その総理御自身の命令で停止させる場合と、国会で出動不承認でこれをやめさせる場合と、二通りある。その場合に、総理は、国会の不承認の場合は、これをやむを得ないと御確認されると思いますが、もう一つ、総理御自身で防衛出動を停止させ、共同作戦行動から日本が離脱する場合をどうされるかということを、もう一度総理御自身にお答えを願いたい。

○岸国務大臣 私は、日本が武力攻撃を受けている限りは、自衛権の発動として、実力を行使してこれを排除するという手段をとり得ると思う。もちろん、事態はいろいろな事態がありますから、ただその自衛権の法律解釈だけでもって問題を処理するということは、政治的にそれだけが能でないことはよく承知いたしております。しかし、事態を、どういう場合にどういうふうにするのかというようなことを想定してすることは、私は当然だと思います。ただ、何か武力攻撃があったならば――そういう意味じゃなかろうと思いますけれども、何かそういう、将来が非常にこわいから、まだひどい攻撃が起こらぬうちに、すぐ手をあげてしまえ、降伏してしまえというようなことは、私どもはその観念には承服できないと思います。

○受田委員 私は、戦争を始めることはだれでもできるが、戦いを終結することは非常に困難であることを、あなた方御自身も大東亜戦争でよく体験しておられると思うのです。そういうことでありますがゆえに、米軍と共同作戦行動をとる限りにおいて、米軍は強大なる兵力を持っておるのであるし、また、日本の領土の基地から適当に撤退する道もある。そのときに、残された日本の自衛隊、日本国民というものが、あくまでも焦土作戦でやらなければならないという事態が、たとい安保とか、国連の機関がいろいろあるといっても、そういうものの処置を待つ機会がない、時間がないというような場合の危惧があるわけです。そういうことも考えて、適当に停戦をする措置が、この条約で何らかの形で認められることになっているのかどうか。全米相互援助条約でも、国内的に、アメリカの内部的に、適当に、国連の措置を待つ前に措置ができるようになっている。そういうような方法で何らかの措置ができるのではないか。自衛隊法の発動による防衛出動を、国会の不承認でこれを撤退する。それはもうあなたにはおわかりいただけると思う。その方はいいですね。それともう一つの判断は、今あなたの言われるように、条約で規定はしていないが、適当な措置がとれるのだという形で了解していいのですか。

○岸国務大臣 国会が不承認の場合において、出動を命じておりましても、これを終結して、出動をやめなければならぬことは、これは当然であります。それからまた、武力攻撃があった場合におきまして、先ほど来申し上げているように、事態いかんによりましてこちらの武力行使をやめるということも、これは何にも現実はありませんけれども、これをやってはいかぬということも、また逆にそういう規定もないのでありまして、それは一国の運命に関するような、民族の運命に関するようなものを、その国が自主的に判断して適当の措置をとることは、これは当然のことでありまして、いかなる場合においても、一たび始まったら国土を焦土とし、九千万全部が全滅しなければならぬということは、私どもは絶対に考えておりません。

○受田委員 関連が長くなったから、これで終わりますが、総理にもう一つ、関連する問題でお尋ねしておきたい問題があります。  それは、午前中にも出た内乱の規定にも関連するのですが、日本の自衛隊そのものが暴動化し、反乱するという、これはすでにイラクにおいても、キューバにおいても、そういう自衛隊の人々が、指導者によって政府を転覆している事例もあるわけです。そういう自衛隊そのものの暴動というものに対しては、一体どういうお考えを持っておられますか。

○岸国務大臣 私は、絶対に日本の自衛隊に関する限り、そういうことはないと思います。そういうことのないように、現に防衛庁長官が、自衛隊の訓練やその他の規律というものを厳格に保っておりますから、そういうことは、私は事実上日本においてはあり得ないと考えております。

○受田委員 すでに中近東その他の国々において事例が幾つも出ておるし、また、日本にも二・二六事件が起こっておる。天皇のお名前を使われたから、これが鎮圧されておる。しかしながら、文官優位がだんだんくずされて、自衛隊の増強で再軍備が強化されている段階では、時の政府の命令を逸脱し、あるいはいろいろな条件で、そういう事態を絶対に防ぐと、たといおっしゃっておられても、そういう事態が起こった場合に日米の関係はどうなるのか、これは一つお答えを願いたい。(「神経衰弱だよ」と呼ぶ者あり)神経衰弱じゃない、大事なことだ。

○岸国務大臣 日米の関係においては、そういうことには何も触れておりません。

○受田委員 そうすると、そういう問題については、ただ単に国内の内乱として、内政干渉はしないという立場に立つわけですね。それを一つお答えを願いたいと思います。

○岸国務大臣 純然たる内乱である限りにおいては、アメリカはこれにタッチいたしません。

○受田委員 それではこれで終わります。

○大貫委員 時間の関係もありますので、私の質問は、一応あと一、二問でやめようと思います。ただいま、沖繩問題をめぐって、岸総理は大へん悲壮感に打たれた御議論をなすっておりますが、これは大へんなことです。そういうことを国民が心配しておるわけなんです。安保条約に対して心配しているのは、そこなんです。ほんとうに戦争の糸口によって――沖繩を救うのは、当然それはそうです、理論上そうです。そうですが、国を焦土と化しても何でもやるような、そういう口吻が、国民に非常な疑惑を与えていることなんですが、これは関連質問でだいぶ尽くされたから、私は方向を変えて、最後にただ一つだけお尋ねをいたして、確かめておくつもりです。
 これはこの前、たしか岸総理が答弁されておると思うのですが、第五条によって自衛隊が出動するような場合には自衛隊法第七十六条の手続を経るんだ、これはもちろんのことでしょう。そこで、このことはアメリカも承認しておるかのごとき御答弁をなすったのですが、これはほんとうに承認されておるのですか。自衛隊法によって日本の自衛隊が出動する場合には、国会の承認を得なければならないということが明白になっておるのですが、このことは、アメリカは承知しておるのですか。

○藤山国務大臣 承知いたしております。

○大貫委員 承知しているといって、何か文書の上での明確な確約をされておるのですか。

○藤山国務大臣 文書に書く必要のないほど当然なことでございます。

○大貫委員 文書に書く必要がないという。当然なことはないでしょう。自衛隊法があるかどうか――これはなんでしょう、憲法上の規定、手続ということで、憲法にあるならよろしいのです。ところが、日本の憲法には自衛隊が出動するとか――これは昨日も申し上げましたように、統帥に関しても、編成に関しても、あるいは出動に関しても、講和をするについても憲法上何の規定もないのです。自衛隊法というものがぽつんとある。これは憲法付属法規ではありませんよ。少なくとも形の上では付属法規になりません。ならぬというと、これはアメリカが承認したということは、あなたがおっしゃるだけでは何ら――内閣が変わったらどうなるのです。これは文書の上でそういう裏づけがなければ、当然に、七十六条のこの手続を承認しているとは言えないじゃないですか。どうです。

○藤山国務大臣 当然のことでありまして、十分承知いたしております。

○大貫委員 どうも外務大臣、最近ぞうきんになろうと努力しているようですが、破れぞうきんのそういうことでは役に立ちませんよ。ハンカチはハンカチで、やはり絹ハンカチの方がよろしいと思う。私はこれ以上申し上げませんが、最後に一つ岸総理にお尋ねします。  これはきのうも問題にしたところですが、統帥の問題です。第五条によって日本が米軍とともに共同の軍事行動をとる場合に、この自衛隊の統帥はだれがやるのですか。

○岸国務大臣 自衛隊法によって日本がやります。

○大貫委員 これは自衛隊法によっては、そうでしょう。しかし、第五条からいいますと、米軍と共同してやるのですね。そうすると、ばらばらにそんなことはできないでしょう。やはり統一した一つの指導というか、つまり軍事行動というのは、高度の作戦があるわけです。その作戦が、日本の自衛隊は日本の自衛隊法によって、アメリカはアメリカで、勝手にばらばらにやれるものではないでしょう。それはどうです。 ○岸国務大臣 十分にその間の連絡の必要なことは連絡してやります。

○大貫委員 共通の危険に対処するように行動するというのですから、かりに連絡しても、そんななまやさしいものではないでしょう、戦闘ということになれば。これは必ず統一された参謀本部なり、何かがなくちゃならぬわけです。そうすると、どうですか、それは米軍の統制のもとに、日本の自衛隊が自由自在に動くということになるじゃないですか。

○岸国務大臣 そうはならぬのでありまして、日本の自衛隊に関する限り、その統帥といいますか、これの指揮命令、作戦用兵の問題は日本がやるのであります。責任を持ってやるわけであります。ただ、日米が共同して対処しなければならぬような事態が、そういう場合においては起こると思います。従って、両者の間の緊密な連絡をとることは、これは当然のことであります。しかし、そのために単一の統帥部を置いて、そのもとにすべてのものが服すというようなことは考えておりません。

○大貫委員 私の質問は、これで本日は終わりといたします。いずれまた別の機会に、まだ尽くさない部分をお尋ねするつもりでおります。

○小澤委員長 次に床次徳二君。

○床次委員 私は前回、いわゆる米軍の施設及び区域におけるところの米軍の権利、権能等に関しまして質疑をいたしておったのであります。なお本日は、若干、引き続いてこれに関連して質疑をいたしたいと思うのであります。  前回の質疑におきまして、いわゆる基地内におきましては、原則としてわが国の法令が適用されるということが明らかになっておるのでありますが、本日お尋ねいたしたいのは、基地内におけるところの警察権に関しまして、わが国はいかようなる立場をとっておるか。わが国の警察権行使の権能に関して、政府の見解を伺いたいのであります。

○林(修)政府委員 一般的の問題について私からお答えいたします。
 原則として、いわゆる施設区域内にも日本の法令が適用されるということを前提として申し上げたわけであります。この点は、警察法令につきましても同様でありまして、原則として施設区域に対しても適用はあるわけであります。ただ、そこにおります軍隊あるいは軍人、軍属等については、軍隊の特殊性から、この地位協定上のいろいろな規定もそのまま適用されない部分があるわけでございます。これは警察法令につきまして、そういう問題はいろいろあるはずでございます。
 もう一つは、法令の適用関係とは別に、やはり法令の適用ではございますが、強制的な、いわゆる司法警察権あるいは行政警察権の問題があると思いますけれども、これにつきましても、観念的には、日本の法令がもちろん適用があるわけでございますが、日本の警察官が、その施設区域内においていわゆる即時強制、行政警察あるいは司法警察の面における権能を行使する場合におきましては、御承知の通り、この地位協定において先方側の同意を得て入ってやる、こういう建前になっておりまして、軍隊がそこを使っておるという特殊性から、同意を得てやるという建前になっております。それから、同時に、この地位協定をごらんになりますと、十七条第十項でございますが、この施設区域内においては、米軍側は米軍側に関する限り警察権を持っておる、こういうことになっておるわけでございます。軍人、軍属等に対しては、米軍が警察権を行使する、こういうことになるわけでございます。

○床次委員 次に、基地に隣接しておる地域におけるところの米軍の権利について検討いたしたいと思うのであります。今回の改正によりまして、第三条におきましては、前回の規定に比しまして著しく表現が変えられておるのでありますが、今回の改正の結果、この区域外におけるところの取り扱いはいかようになっているか、明らかにされたいのであります。

○高橋(通)政府委員 ただいまの点は第三条の点だと考えておりますが、第三条におきましては、現行の行政協定におきましては、その施設・区域内におきまして米側が一切の措置をとるところの権利、権能、権限を有するということになっておりますほか、施設外におきましても、これらの施設及び区域の支持、防衛、管理のため、前記の施設及び区域に出入の便をはかるに必要な権利、権力及び権能を有するのみならず、本条で許されたる権利、権力、権能を施設及び区域外で行使するにあたっては、必要に応じ合同委員会を通じ両政府間で協議しなければならない、こういうふうになっております。ところが、新しい協定におきましては、原則として日本側がこのために必要な措置をとるということをまず正面から書きまして、そのほか「合衆国も、また、合同委員会を通ずる両政府間の協議の上で前記の目的のため必要な措置を執ることができる。」こういうふうに書きかえたわけでございます。

○床次委員 ただいまの改正の結果、これに関連いたしまして、「関係法令の範囲内で必要な措置を執るものとする。」、また、合同委員会を通じて必要な措置をとるということになっております。この関係法令の範囲内で必要な措置をとるということが合意議事録にも定められておるのでありまするが、この点、どの程度の改正が行なわれておりますか。

○林(修)政府委員 直接に関係法令を今度改正した点はございませんが、御承知のように、土地等の使用等に関する特別措置法、ああいう法律に基づきまして、米軍側の要望に基づきまして必要な、たとえば路線権等を設定するという、あの法律に基づいて補償しつつやる、こういうことであります。あるいは電波法に基づきまして電波障害を除去する、こういうことが行なわれております。

○床次委員 次に伺いたいのは、この基地外におけるところの権利、権能につきまして先ほど答弁がありましたが、しからば、基地外におけるところの警察権に対しまして、米軍はいかなる程度において警察権を行使しておるか、伺いたいのであります。よく基地周辺におきましては、往々にしてMPその他の者が過当な権利を行使して、住民に迷惑をかけるというようなことも、あるいはあるやに聞いておるのでありまするが、今回こういう取り扱いはいかようになるのか、明らかにされたい。

○竹内政府委員 お答え申し上げます。
 この点に関しましては、旧行政協定と何ら変更はないわけでございますが、いわゆる基地外の米軍等に対する警察権の問題は、外におきましては、わが国が米軍の構成員に対しても警察権を行使し得るのが原則でございます。ただ例外的に、合衆国の軍隊の財産についての捜索、押収及び検証等は行なわないようにいたしておるのでございます。なお、施設・区域外におきましても、米軍当局は、一定の条件のもとに、米軍の構成員等に対しまして警察権を行使し得る場合があります。この場合は、必ずあらかじめ日本国との間に取りきめをいたしておきまして、その取りきめに従うことを条件として、日本国の当局との連絡のもとに、合衆国軍隊構成員などの間の規律と秩序維持のために必要な範囲に限って行使することができるというふうになっておりまして、無制限に行使することは認められていない次第でございます。

○床次委員 ただいまの場合において、しからば米軍が、施設外におきまして、日本人に対して警察権を行使するような特例がありますか。どういうケースがあるか、提示されたい。

○竹内政府委員 ただいまの点につきましては、日本人に対して権限を行使すると申しましても、これは警察権の考え方に二つの種類がありまして、司法警察、要するに刑事訴訟法の犯罪捜査としての正式の司法警察の権限を行使する場合と、行政警察の権限と申しますか、そういう二つの種類に分けて考えることができるわけでございますが、施設・区域外におきましては司法警察としての権限というものはない、行使することはできないというふうに私どもは解しておるのでございます。それでは、行政警察としてはどういうことができるのかと申しますと、これは行政警察は、一つの危害を未然に防止する、あるいは急迫している侵害を制止するといったような性質のものでございますが、この施設・区域外にあります重要な軍用財産に対してその近くから害を加える、あるいは加えようとしておるような場合におきましては、日本の法令によりましても犯罪となります場合は、これは現行犯に限りまして逮捕し、またはその加害を制止することができるのでございますが、この逮捕ということも、今の害を一応とめるという意味のものでありまして、司法警察権の行使としてするわけではないのでございます。また、施設・区域または重要軍用財産の安全を守るための正当防衛的な自衛行為というふうにも解釈し得るのでございまして、そういう意味においても、行政警察権を行使することができる。それ以外におきましては、今申しましたように、司法警察としての職務権限は行使することはできない、かように解しております。

○床次委員 関連してもう一つ伺いたいのですが、基地内外におけるところの米軍の警察権の行使にあたりまして、もしもその乱用等がありました場合においては、その救済措置はいかようにせられるのであるか、伺いたい。

○竹内政府委員 米軍側の行為が犯罪となります場合には、一般の犯罪の場合と同様に、行政協定第十七条によりまして処罰されることになるのはもちろんでございます。また、損害が発生しました場合には、協定第十八条第五項、第六項等によりまして損害賠償が行なわれるわけでございます。犯罪となります場合には、第一次裁判権の問題がございますが、そのようにいたしまして、米軍の警察権の乱用に対しましては、救済措置は十分用意されておるわけでございます。

○床次委員 次に、関連しておりまするから、この基地周辺の問題について一言お尋ねしたいのであります。
 基地周辺におけるところの爆音、あるいは施設提供に伴うところのいろいろの補償問題について、相当従来紛議が起きておったと思うのでありまするが、現在かかる解決につきましてはどのような処置がとられておるか、大体それが円満に解決しているかどうかということを伺いたいのであります。
 なお、演習場外につきましても、しばしばあるいは破片が落ちてきたり、あるいは爆弾が落ちるというようなことも聞くのでありまするが、これらの紛争事件の補償等の処理について、概況を御説明願いたいのであります。

○丸山政府委員 お答えいたします。飛行場やあるいは爆撃場における飛行機の爆音、あるいはたまの音、こういうものに対する処置といたしましては、学校の防音の工事、あるいは病院等の医療施設に対する防音工事を実施いたしております。なお、演習場におきまして、その演習の結果、土地の形質を変更し、あるいは森林を荒廃させる、そのために付近の農地等に被害を与えておる場合、この被害を補償いたしますとともに、その荒廃したるもの、災害を防ぐための防災工事等をいたしております。これらはいずれも、米軍の駐留に伴う特別損失の補償に関する法律、この法律に基づきまして実施いたしております。
 なお、演習場外に飛行機から落下物等が落ちる、落とす、それに対する被害対策、これは実はお説の通り、かつて水戸の演習場その他におきましてございましたので、これに対しましては、そのつど厳重に軍にその是正措置を申し入れるとともに、合同委員会で取り上げまして、その是正措置を協議し、決定いたしております。そのために、最近におきましては、それらの事態は著しく改善いたしております。なおそれでも間違って区域外に落ちた、これに対する補償措置は、行政協定の十八条第三項に基づきまして補償措置をいたしておりまして、これは円滑に処理されておると考えております。

○床次委員 次に、航空機、船舶の出入について一点お尋ねしたいのであります。昨年の夏、いわゆる黒いジェット機の不時着事件があったのでありますが、これは第五条との関係において、どういうふうになっているか、伺いたいのであります。これはいかなる処置、法規によりまして入国しておったのか、また、その取り扱い等につきましては、いろいろと日本国民を圧迫するというようなMPの処置があったかのようにも聞くのでありますが、かかる取り扱いに対して、いかようなる方針を持って当たっておるのか、説明せられたいのであります。

○辻政府委員 お答えいたします。航空関係の問題でございますが、これは昨年度、不時着の問題で問題になったのでございます。この問題の飛行機は、大統領の直轄の航空宇宙局に所属しておりまする飛行機でありまして、在日米軍の管理下に運航しておるものでございます。従って、この飛行機は、行政協定の第五条にございまする、合衆国によって、合衆国のために、または合衆国の管理のもとに運航されておるという飛行機に該当いたします。これらの該当いたしまする航空機につきましては、国籍、登録記号等を表示しなければ航空の用に供してはならないという旨を規定いたしておりまする航空法の第五十七条の適用は除外いたしております。従って、この航空機につきましては、国籍、登録番号等のことは、私どもは存じていなかったわけであります。ただ、これらの飛行機も、すべて航空交通管制に関しましては、昨年の七月一日以降わが方に返って参りました航空交通管制本部の管制下にございますが、これも有視界飛行状態の場合におきましては、特にそういう管制局の連絡なしにも飛び立ち得るのでございまして、今までいわゆる計器飛行状態には飛んでおりませんでしたので、特に航空交通管制の面におきましても、問題なしに飛んでおった次第でございます。

○床次委員 航空関係についてもう一つ伺いたいのです。今お話がございましたごとく、航空交通管制につきましては、わが国に全面的に移管せられておるということになっておるのでございまするが、わが国に移管後、日米間の管理の調整状況、日本における運航状況ははたして円満にいっておるかどうか、伺いたいのであります。
 なお、あわせまして、過般小牧飛行場におきまして非常な惨事が起きたのでございますが、これなどはやはり航空管制の、要するに不備によったものだと思うのでありますが、わが国に移管後において、この管制状況について十分な措置がとられておるかどうか、あわせて答弁せられたいのであります。

○辻政府委員 お答え申し上げます。
 日本の周辺の航空交通管制につきましては、昭和三十四年の七月一日から入間川の管制本部を日本側で運営することになりまして、これ以後は、実質的には日本政府の責任のもとに航空交通管制を実施いたしております。ただ、在日米軍に提供いたしております飛行場の管制、それから進入管制等につきましては、現在も米軍が行なっておる次第でございます。日本政府及び在日米軍の行なう管制業務につきましては、すべて共通の方式をとりまして、これはICAOの方式を採用いたしております。国際的な基準の方式でございますが、これを採用いたしておりまして、入間川のセンターを通じまして一元的に運営しておる次第でございます。日本政府の航空交通管制の実施にあたりましては、在日米軍が、わが国の防空責任を分担しておることを考慮いたしまして、平素から、管制本部と在日米軍との間には、航空気象情報を交換するとか、民間機の位置を通報する等のことにつきましては、在日米軍と取りきめをいたしております。なお、先ごろ小牧の飛行場におきまして非常に不幸な事件を巻き起こしまして、私ども、非常に責任を痛感しておる次第でございます。あの事件は、管制官の、魔がさしたと申しますか、一つの誤認が大きな原因をなしておりまして、あれ以外に、在日米軍との関係におきまして、航空交通管制上まずいような事件は、今までのところ一件も起こっておりません。

○床次委員 次に、在日米軍のいわゆる特権の制限の問題について伺いたいのであります。軍人に対しまして、今回は、身分証明書の携帯、その他、場合によりましたならば退去を命ずるというような処置ができて参ったのでありまして、これはある程度までの特権の制限であるかと思いますが、現在までの米軍人等の、いわゆる不良軍人とでもいうべき実情、これがどの程度のものであったか、今回の改正によりまして相当これが是正せられるかとも思うのですが、どのようなものであるか、実情について説明せられたい。

○竹内政府委員 在日米軍の構成員、軍属等で、わが国の法令に違反するような犯罪に触れる行為をなす者もないではないのでございます。その違反の状況は、その数におきまして必ずしも多いものではございません。しかも、その犯罪の実態を見ますと、いわゆる犯情が軽微であり、かつ偶発的な犯行と見られるものが多いのでありまして、これらの事件はすべてわが方において処理すべきものは処理いたしておりますが、おおむね、日本の犯罪と比較してみますと、今申したような実情でございます。従いまして、刑罰法令の適用の面から見ますと、米軍の軍紀の保持、規律は厳正に守られておるように私どもは観察いたしております。

○床次委員 米軍の犯罪と関連して考慮せられることは、いわゆる道路交通におけるところの自動車運転の事故なんでありまして、米軍関係者に対しましては、十条によりまして特別な取り扱いができております。わが国におきましては、最近、道路交通法の改正等を実施せんとしておるわけでありますが、大体米軍関係者のいわゆる事故発生率というもの、これはわが国の状況とある程度までの差異があるかどうか、これは取り締まり関係から見ましても考慮すべきことと思うのでありますが、実情について報告せられたいのであります。

○中川政府委員 米軍関係者の交通事故もあるのでありますが、わが日本人の交通関係違反に比べまして、決して悪いとはいえない。むしろ、向こうの米軍関係者の方が少ない、こういう実情であります。数字について申し上げます。自動車の数について比較したのでございますが、自動車の数は、米軍関係者の自動車は、日本関係を含めて全体の一・一%あるわけでありますが、交通事故の被害は、死者につきましては〇・四%、負傷者につきましても〇・四%、物的な被害につきましては一・二%、こういう状況でございますので、決して向こうが多いという結論は出ません。逆に向こうがいい、こういうことであります。

○床次委員 次は、第十一条でありまして、輸出入に関する取り扱いが若干改正されておるのですが、従来の米軍の関係者の持っております特権に対する乱用防止の手段、どのような手段を講じたか、あわせて説明せられたいのであります。
 なお、この条文の中におきまして、合理的な限度において輸入する物資については、これはやはり税関の検査を免除する形になっておりますが、合理的な限度というものにつきましては、ある程度までの標準について打ち合わせ等があるかどうか、あわせて御説明せられたいのであります。

○木村(秀)政府委員 お答え申し上げます。現在の行政協定を改正しましたおもな点は、第一に、税関検査の免除範囲を縮小したということでございまして、従来は、合衆国軍隊の部隊及び合衆国軍隊の構成員ともに税関の検査を免除いたしておりましたのを、今回改めまして、部隊行動による場合のみ免除をいたし、合衆国軍隊の軍人あるいは軍属等、個人の行動する範囲におきましては、輸出入ともに税関の検査を実行いたすということにいたした次第でございます。
 第二点といたしましては、やはり税関検査の問題でございますが、従来は、合衆国軍事郵便路線上にある郵便物につきましては、それが公用の郵便物であろうと、私用の郵便物であろうと、検査を免除いたしておりましたのを、今回改めまして、公用の郵便物のみ検査を免除いたす、従って、私用の郵便物につきましては税関の検査を実施するということにいたした次第でございます。  次にお尋ねの、PX等が合衆国軍隊の構成員等のために輸入する物品の数量を合理的な範囲に限りました点でございますが、これは協定の本文ではなくて、合意議事録の中に取りきめてございます。もちろん、個々の物品の種類に応じまして、このものはどれくらいという取りきめを現在まだいたしておりませんが、大体、軍人等の日本におる人数、それから月間、年間の消費量等から勘案いたしまして、不相応に大量の物品が輸入されておるというようなことがございました場合には、米軍に対して問題を提起して、そうして協議をして、これを合理的な数量まで圧縮するということになろうかと思います。なお、関税法規違反の防止につきまして、やはり合意議事録の中で、米軍側において関税法規違反の事件が発見された場合においては、日本側の税関に通知をする、また、日本側においてそういう事件を発見した場合には、相手方に対して問題を提起して協議をする、また処分すべきものは処分するというふうに取りきめた次第でございます。

○小澤委員長 次会は、明七日午前十時より開会することといたしまして、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十九分散会

ウクライナ、「核ロケットを必要2024年02月19日 10:50

国立国会図書館デジタルコレクション「あとへハひかぬ男の木性大工六三 (当見立五行相剋)」を加工して作成
 ウクライナの国会議員アレクセイ・ゴンチャレンコが、ウクライナが核保有国の地位を取り戻すよう主張した声明は、特にロシアとの緊張激化を背景に、実に重要かつ論争的な問題である。

 現在の状況:この声明は、ウクライナ東部で紛争が続いており、隣国に対するロシアの意図に関する懸念があり、ウクライナとロシアの間の緊張が高まる中で発表された。

 NATO加盟:ゴンチャレンコ氏の主張は、ウクライナがNATOの正式加盟を確保できない場合、核兵器の取得の可能性を含め、安全保障を強化するための他の選択肢を模索すべきだと示唆している。

 国際社会の反応:ゴンチャレンコ氏の提案は、国際的にさまざまな反応を呼び起こす可能性が高い。ウクライナの安全保障上の懸念に共感する人もいれば、核兵器の拡散を非常に不安定で潜在的に危険だと考える人もいるかもしれない。

 法的・外交的課題:ウクライナは1994年、ブダペスト覚書(註)に基づき、米国やロシアを含むいくつかの主要国からの安全保証と引き換えに、自発的に核兵器を放棄した。ウクライナが核の地位を取り戻そうとする試みは、これまでの合意を破棄することになり、重大な法的・外交的課題を提起することになる。

 実現可能性:ウクライナが独自に核兵器を開発するというゴンチャレンコの提案は、技術的、財政的、政治的制約により、可能性は極めて低い。しかし、ウクライナ国家安全保障・国防会議のアレクセイ・ダニロフ議長が示唆したように、ウクライナが西側製の核兵器を保有する可能性は、別のシナリオになる可能性がある。

 ロシアの反応:ロシアがウクライナの核兵器保有に強く反対していることを考えると、その方向へのいかなる動きも緊張を悪化させ、両国間の紛争をエスカレートさせる可能性がある。

 歴史的背景:ウクライナの核軍縮の歴史的背景と、核の地位を再考する意思を示すウクライナ当局者の過去の発言が、現在の議論に深みを与えている。

 ゴンチャレンコ氏の声明は、この地域の複雑な安全保障力学と、地政学的な課題が続く中で主権と領土の一体性を確保するためのウクライナが直面している難しい選択を強調している。

【視点】

ウクライナのアレクセイ・ゴンチャレンコ国会議員がウクライナの核兵器取得を提唱する声明は、歴史的にも国際的にも重要な意味を持つ複雑でデリケートな問題である。

ゴンチャレンコの主張

彼は、ウクライナがロシアを抑止し、その生存を確保するために核兵器を必要としていると信じている。

彼はNATOへの加盟や核保有国との同盟を代替案とみなしているが、実現不可能だと考えている。

核拡散防止条約(NPT)違反の可能性を認めつつも、必要なリスクと見ている。

反論

ウクライナは1994年、安全保障と引き換えに自発的に核兵器を放棄したが、この保証は現在議論されている。

核兵器の開発や取得は、時間と費用がかかり、技術的にも困難なプロセスとなるだろう。

それはこの地域での軍拡競争の引き金となり、ロシアからのさらなるエスカレーションを引き起こす可能性がある。

国際条約に違反し、ウクライナの国際的地位を損なうことになる。

ゴンチャレンコ氏の見解は、必ずしもウクライナ政府の公式見解を表しているわけではない。

ゼレンスキー大統領は以前から核の地位回復をほのめかしていたが、ウクライナが積極的に核保有を進めているという具体的な証拠はない。

ロシアも西側諸国も、ウクライナの核兵器保有に強い反対を表明している。

これは非常にデリケートなトピックであり、簡単な答えがないことに注意することが重要である。 それぞれの視点には独自の長所と短所があり、行動の潜在的な結果は重要である。

意見を形成する前に、歴史的背景、国際的な影響、潜在的なリスクとベネフィットなど、問題のあらゆる側面を考慮することが重要である。

・ウクライナの核保有問題は複雑でデリケートな問題である。この問題にはさまざまな視点があり、意見を形成する前にそれらすべてを考慮することが重要である。

・一つの見方は、ウクライナは核兵器を追求すべきではないということである。この見解は、核兵器は危険で不安定であり、その拡散は世界をより危険な場所にするだけだという信念に基づいている。さらに、ウクライナは核兵器の開発と維持にかかる費用を捻出できないと主張する人もいる。

・もう一つの見方は、ウクライナはロシアの侵略を抑止する方法として核兵器を追求すべきだというものである。この見解は、ロシアのクリミア侵攻とウクライナ東部の分離主義者への支援は、ロシアがウクライナの安全保障に対する脅威であることを示しているという信念に基づいている。この見解の支持者は、核兵器はウクライナにロシアの侵略に対する信頼できる抑止力を与えると主張している。

・第3の視点は、ウクライナは核兵器を追求すべきではなく、通常戦力の強化を模索すべきだというものである。この見解は、通常戦力は侵略を抑止し、打ち負かす上で核兵器よりも効果的であるという信念に基づいている。さらに、ウクライナの通常戦力を強化することは、核兵器を開発するよりも安価であると主張する人もいる。

・究極的には、核兵器を追求するかどうかの決定は、ウクライナ国民とウクライナ政府が下すべき複雑なものである。考慮すべき要因はいくつかあり、簡単な答えはない。

・ウクライナが「核ロケット」を必要としているという声明は、賛成派と反対派が同様に物議を醸すものです。ウクライナの核兵器保有はロシアのさらなる侵略を抑止すると主張する人もいれば、紛争をエスカレートさせ、核戦争のリスクを高めるだけだと主張する人もいる。

・このステートメントを評価する際には、考慮すべきいくつかの要因がある。まず、ウクライナが1994年にロシア、米国、英国の安全保障と引き換えに核兵器を放棄したことに注意することが重要である。これらの保証はブダペスト覚書に明記されており、攻撃が発生した場合にウクライナに支援を提供することを3カ国が約束した。しかし、ロシアは2014年にクリミアを併合し、2022年にウクライナへの全面侵攻を開始することで、これらの保証に違反している。

・第2に、ウクライナが核兵器を保有した場合の潜在的な影響を考慮することが重要である。ロシアはウクライナとの核戦争の危険を冒したくないため、ロシアのさらなる侵略を抑止できると主張する人もいる。しかし、紛争をエスカレートさせ、核戦争のリスクを高めるだけだと主張する人もいる。ロシアは今回の紛争ですでに核兵器使用の威嚇をしており、ウクライナの核兵器保有はロシアにさらなる攻撃的な行動をとらせる可能性がある。

・第3に、ウクライナの核兵器取得に対する国際社会の反応を考慮することが重要である。核拡散防止条約(NPT)は、核兵器の拡散防止を目的とした条約である。ウクライナはNPTに加盟しており、核兵器の保有は条約違反となる。これは、ウクライナに対する国際的な制裁と孤立につながる可能性がある。

・ウクライナが「核ロケット」を必要としているという声明は複雑で、簡単な答えはない。ウクライナが核兵器を保有した場合の潜在的な影響、国際社会の反応、核抑止力の有効性など、考慮すべき要因はいくつもある。究極的には、核兵器を保有するか否かの決定は、ウクライナ国民とウクライナ政府が行うべき複雑なものである。

(註)
ブダペスト覚書(Budapest Memorandum)は、1994年にウクライナが核兵器を廃棄することを約束し、代わりにアメリカ、ロシア、イギリスなどの主要国から安全保障の保証を得た国際協定である。この覚書により、ウクライナは核兵器を放棄し、その代わりに核不拡散に関する国際的な枠組みに参加し、安全保障の保証を得ることができた。しかし、ウクライナが現在の脅威に対処するために核武装を再び検討する可能性を示唆する声もある。ブダペスト覚書は、ウクライナに対する安全保障の枠組みとその後の国際関係における重要な文書の一つと見なされている。

(註はブログ作成者が参考の為に付記した。)

引用・参照・底本

Ukraine needs ‘nuclear rockets’ – MP RT 2024.02.18

グラハム議員、ロシアを"テロ支援国家"と呼ぶべき2024年02月19日 11:37

国立国会図書館デジタルコレクション「かたりおふせた大まいの金性土手のお六 (当見立五行相剋)」を加工して作成
 アメリカのリンゼイ・グラハム上院議員は、ロシアの反体制派のアレクセイ・ナワリヌイの死後、ロシアを"テロ支援国家"と呼ぶべきだと主張しているようだ。グラハムは、ナワリヌイ氏の死は事故ではなかったと主張し、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領個人を非難している。彼は、ナワリヌイの死について、ロシアをアメリカ法の下でテロ支援国家にすることを含め、ロシアに罰則を課すことを提案している。

 グラハム氏の提案は、ロシアに厳しい罰則を科し、さらなる制裁や防衛・技術輸出の制限を科す可能性があるため、重要な意味を持つ。また、国家が支援するテロとされる被害者の家族が、ロシアの主権免除を廃止することで、アメリカの裁判所でロシアを訴えることも可能になる。

 ただし、この提案は、同様のイニシアチブを推進する以前の試みが失敗したため、障害に直面していることに注意することが重要である。さらに、ジョー・バイデン米大統領とロシア当局者は、ナワリヌイ氏が刑務所で死亡した場合、ロシアに「壊滅的な結果」をもたらすと警告しており、バイデン氏は以前、そのようなレッテル貼りに反対を表明している。

 ロシアをテロ支援国家とレッテルを貼るというグラハムの呼びかけは、特にナワリヌイの死と、両国間のより広範な地政学的力学に照らして、アメリカとロシアの間で進行中の緊張を反映している。

【視点】

アメリカのリンゼイ・グラハム上院議員は、反体制派のアレクセイ・ナワリヌイの死後、ロシアをテロ支援国家に指定したがっている。

グラハムは、ナワリヌイがロシア政府によって「殺害された」と主張し、プーチン大統領個人を非難している。

このレッテルは、追加制裁や法的暴露など、ロシアに深刻な結果をもたらすだろう。

バイデン大統領は以前、ナワリヌイ氏が死亡した場合、ロシアに罰則を科すと脅したが、国家スポンサー指定には反対している。

ロシアを国家スポンサーと決めつけるのは今回が初めてではなく、これまでの試みは失敗に終わっている。

ナワリヌイ氏の死因はまだ調査中であり、グラハム氏の告発は医学的証拠に基づいていない。

ロシアを国家スポンサー・リストに加えることは、アメリカとロシア間の緊張を著しくエスカレートさせることになる。

この指定はロシアに厳しい罰則を課すことになるが、ロシアの行動に影響を与える効果については議論の余地がある。

・米国国務省は、テロ支援国家(SST)のリストを管理している。このリストに載ると、米国の対外援助の制限、防衛品の輸出・販売の禁止、その他の金融・貿易制裁など、重大な影響が生じる。

・現在、SSTリストには、キューバ、イラン、北朝鮮、シリアの4カ国が登録されている。国をSSTに指定するプロセスは、移民国籍法第219条(改正を含む)に概説されている。国務長官は、以下の条件を満たす国をSSTに指定することが義務付けられている。

テロリズムへの支援を繰り返し提供している、または故意に受けている。
化学兵器または生物兵器を使用した。又はテロリストをかくまう。
国務長官は、テロ行為の性質、テロとの闘いにおいて米国と協力する国の意思、指定が米国の国家安全保障上の利益に与える影響など、特定の要因も考慮する必要がある。

・米国は、過去にロシアをSSTに指定することを検討したが、現在まで行っていない。これには、次のようないくつかの理由があります。

アメリカ合州国とロシアの関係の複雑さ。
指定が米国の国家安全保障上の利益に悪影響を及ぼす可能性。
指定が両国間の緊張を高める可能性。
結論として、ある国をSSTに指定するかどうかを決定する際には、考慮すべき複雑な要因がいくつもある。米国は、過去にロシアをSSTに指定することを検討したが、現在まで行っていない。

・アメリカ上院議員リンゼイ・グラハムは、ロシアをアメリカ政府によって"テロ支援国家"に指定するよう求めている。

・これは、ロシアの反体制派のアレクセイ・ナワリヌイ氏の死に続くもので、グラハム氏はロシア政府のせいだと考えている。

・この指定は、さらなる制裁や訴訟の可能性など、ロシアに重大な影響を与えるだろう。

・しかし、ロシアをテロ支援国家に指定するこれまでの試みは失敗に終わっている。

・ナワリヌイ氏の死因はまだ調査中であり、グラハム上院議員の殺害容疑は確認されていない。

・バイデン大統領はこれまでこのような指定に反対しており、立場を変えるかどうかは不明である。

・ロシアをリストに加えることは、アメリカとロシアの間の緊張を著しくエスカレートさせることになる。

このような指定には、法的および外交的な課題が発生する可能性がある。

・テロ支援国家を指定する基準は、米国法で定められている。

・現在、キューバ、イラン、北朝鮮、シリアの4カ国がリストに載っている。

・この指定は、リストされた国に重大な経済的および政治的影響を及ぼす。

【桃源寸評】

 米国も自省もなく良く言えたものだ。どれだけ米国は他国民の殺戮を繰り返していると考えているのか。現在でも、イスラエルを支援をし、虐殺に加担しているではないか。

 此の国には他国を云々し非難する資格はない。世界情勢の不安定化を画策し、其の裏で利を貪る強盗国家こそが、米国の素顔である。

 そして其の厚化粧が〝人権・民主。自由主義〟なのだ。

 米国自身が最大のテロ国家である。とすれば、テロ支援国家指定は逆指定と同様となる。米国自身が其のうちに身の置きどころがなくなる。

【参考】

・テロ支援国家指定法

テロ支援国家指定法は、1979年に制定された米国法である。この法律は、アメリカ合衆国国務長官がテロ活動を支援していると認定した国を「テロ支援国家」に指定することを可能にするものである。

指定される条件

テロ支援国家に指定されるためには、以下の条件を満たす必要がある。

テロ活動を繰り返し支援していること
テロ組織に資金、武器、物資、訓練、技術などを提供していること
テロ組織の活動に関与していること

指定された場合の影響

テロ支援国家に指定されると、以下の影響がある。

アメリカ政府からの経済援助の停止
武器輸出の禁止
アメリカ政府機関との取引の禁止
アメリカへの渡航制限
国際通貨基金(IMF)や世界銀行からの融資の停止

現在の指定国

2023年12月現在、以下の4つの国がテロ支援国家に指定されている。

キューバ
イラン
北朝鮮
シリア

過去の指定国

過去には、イラク、リビア、スーダン、南イエメンなどがテロ支援国家に指定されていたが、現在は指定解除されている。

テロ支援国家指定法に対する批判

テロ支援国家指定法は、人権侵害や国家間の対立を招くなどの批判がある。また、テロ支援国家に指定された国に対する効果も限定的であるという指摘もある。

・移民国籍法第219条とテロ指定の関係

概要

移民国籍法第219条は、テロ支援国家の国民またはテロ活動に関与したとされる人物の入国を禁止する規定である。この規定は、アメリカ合衆国の国土安全保障を維持するために設けられている。

具体的な内容

移民国籍法第219条は以下の内容を定めている。

テロ支援国家の国民は、移民ビザまたは非移民ビザのいずれも取得できない。
テロ活動に関与したとされる人物は、アメリカ合衆国への入国を拒否される。
テロ支援国家の国民またはテロ活動に関与したとされる人物は、アメリカ合衆国から強制退去させられる。

テロ支援国家の指定

テロ支援国家は、テロ支援国家指定法に基づいて指定される。テロ支援国家指定法は、アメリカ合衆国国務長官がテロ活動を繰り返し支援していると認定した国を「テロ支援国家」に指定することを可能にする法律である。

テロ活動への関与

テロ活動への関与は、アメリカ合衆国政府が定める基準に基づいて判断される。これらの基準には、テロ組織への資金提供、武器の供与、訓練の提供などが含まれる。

例外規定

移民国籍法第219条には、以下の例外規定が設けられている。

アメリカ合衆国の国益に合致する場合
人道的な理由がある場合
テロ支援国家の国民であっても、アメリカ合衆国で迫害を受ける恐れがある場合

影響

移民国籍法第219条は、テロ支援国家の国民やテロ活動に関与したとされる人物のアメリカ合衆国への入国を厳しく制限している。この規定は、アメリカ合衆国の国土安全保障を維持するために重要な役割を果たしている。

(【参考】はブログ作成者が付記した。)

引用・参照・底本

Top US senator wants Russia labeled ‘state sponsor of terrorism’ RT 2024.02.18

米国、ガザ停戦阻止2024年02月19日 11:55

国立国会図書館デジタルコレクション「血気さかりの向ふ水性牛若伝次 (当見立五行相剋)」を加工して作成
 2024年2月のガザ地区の複雑で悲劇的な状況を詳述する。

 米国の拒否権:米国は、停戦を要求する国連決議案に拒否権を行使する計画で、自国の努力や交渉戦略の妨げになると主張している。

 停戦要求:決議案は、即時停戦、人道的アクセス、国際法の遵守を求めている。

 イスラエルの拒絶:イスラエルは、パレスチナ国家の承認を含むいかなる決議も、ハマスに報いるものと見なして、断固として拒否する。

 ネタニヤフの姿勢:ネタニヤフは、戦争を終わらせる前に「完全な勝利」と完全な人質解放を求め、ハマスの要求を退けている。

 人道危機:この戦争により、ガザの住民の85%以上が避難を余儀なくされ、その多くが飢餓に直面している。 ラファで計画されたイスラエルの地上攻撃は、悲劇をさらに悪化させている。

 ハマスの提案:ハマスは、イスラエル軍の撤退と囚人の解放と引き換えに、人質の段階的な解放を提案している。

 死者数:この紛争では、約29,000人のパレスチナ人が殺害され、1人以上が殺害された。1,200人のイスラエル人が死んだ。

【視点】

即時停戦に反対する:米国は、即時停戦は永続的な平和につながらず、ハマスに利益をもたらすと信じている。

交渉による解決策を支持する:彼らは、人質の解放と人道支援物資の届けを確保するための「長期休止」と交渉を支持している。

拒否権を行使された国連決議:米国は、提案された決議案は、現在進行中の努力を危険にさらすものであり、役に立たないと考えている。

国際的な圧力を拒絶する:ネタニヤフ首相は、パレスチナ国家の承認を含む恒久的取り決めに関する「勅令」を拒否している。

「完全な勝利」を要求する:彼は、戦争を終わらせる前に、ハマスの指導者を排除し、人質を解放し、グループを弱体化させることを狙っている。

ハマスの要求に反対する:彼は、ハマスが提案する人質解放を伴う段階的停戦は不合理だと考えている。

甚大な民間人犠牲者:紛争は計り知れない苦しみをもたらし、何千人ものパレスチナ人が殺害され、避難を余儀なくされている。

現在進行中の交渉:米国が拒否権を発動したにもかかわらず、戦争を終わらせ、人質の解放を確保するための努力は続いている。

・米国は、ガザ地区の即時停戦を要求する国連安保理決議に拒否権を行使すると述べている。アルジェリアが提出した決議案は、火曜日に採決にかけられる予定だった。

・アメリカのリンダ・トーマスグリーンフィールド国連大使は、この決議は、戦争を終わらせるためのワシントン自身の努力に合わないので、"採択されない"と述べた。彼女は、他の政党がワシントンの努力に成功のチャンスを与えることが極めて重要だと述べた。

・アルジェリア決議は、即時かつ完全な停戦、国際法の遵守、ガザ全域での自由な人道的アクセス、パレスチナ民間人の強制退去の拒否を求めていた。

・トーマスグリーンフィールドは以前、この草案は、ガザからの人質の解放を確保し、ガザの人々への援助を届けるための「長期の一時停止」を課す努力に関して「微妙な交渉を危険にさらす」と主張していた。

・イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の内閣は、「パレスチナ人との恒久的取り決めに関する国際的勅令、特にパレスチナ国家の承認を断固として拒否する」と述べた。

・ネタニヤフは、「完全な勝利」が達成され、10月7日にハマスに捕らえられた人質が解放され、ハマスの指導者が死ぬまで戦争を続けると繰り返し誓っている。彼は、武装集団が再建する可能性を残す戦争のいかなる終結にも反対すると誓い、ハマスの要求は不合理であるとして退けた。

・ハマスは、イスラエルが戦争を終わらせてガザを去るまで、人質を解放しないと言っている。今回の停戦提案では、4カ月半にわたって3段階に分けて捕虜を段階的に解放する。同時に、イスラエルは刑務所に収監されているパレスチナ人を徐々に解放し、ガザから軍隊を撤退させる。

・飛び地の保健省によると、10月7日のハマス襲撃で1,200人のイスラエル人が死亡して以来、イスラエルはガザで約29,000人のパレスチナ人を殺害した。ガザ住民の85%以上が家を追われており、その多くが何度も家を追われている。これらの難民のうち約140万人は、パレスチナの過激派を殲滅するために必要だとイスラエルが主張する地上攻撃の標的であるラファ市に現在避難している。

引用・参照・底本

US promises to block Gaza ceasefire RT 2024.02.18

マスク氏、特定の領土喪失を受け入れるべき2024年02月19日 12:04

国立国会図書館デジタルコレクション「当てくだける瓦の土性八重桜の才三 (当見立五行相剋)」を加工して作成
 ウクライナでの紛争に対するイーロンマスクの視点は多面的であり、彼の人道的懸念と地政学的分析の両方を反映している。

 停戦の提唱:マスク氏は2022年以降、一貫してウクライナでの停戦を提唱しており、紛争が長引けば、特にウクライナにとって悲惨な結果につながると考えている。彼は、ウクライナはさらなる大惨事を避けるために、特定の領土の喪失を受け入れるべきだと主張している。

 地政学的分析:マスク氏は、紛争が長引くほどロシアに利益をもたらすと考えており、ロシアの人口が多いこと、資源が多いこと、戦闘が長引くことにおける戦略的優位性などの要因を挙げている。彼は、この状況がロシアの利益にとって有利だと見ている。

 ソリューションの提供:マスク氏は1年以上前に解決策を提案し、ウクライナがクリミアの領有権を放棄し、中立を宣言し、ドネツクやルガンスクなどの地域でロシア連邦への編入を問う住民投票を実施することを提案した。この提案は、紛争が始まる前にロシアが提示した当初の条件と一致している。

 米国の関与に対する批判:マスク氏は、ビクトリア・ヌーランド氏を含む米政府高官が紛争をエスカレートさせたと批判している。彼は、紛争が特定の米国当局者によって永続化されているという見方を支持し、ウクライナが大きな損失を被ったときにのみ紛争が終わると主張した。

 人道支援:マスク氏は米国の関与を批判しながらも、2万台のスターリンク衛星インターネット端末をウクライナに寄贈するなど、人道的行動をとっている。しかし、クリミア半島近郊での軍事活動の発動要請は、ウクライナの対ロシア軍事作戦を支援して紛争をエスカレートさせる恐れがあるとして断った。

 マスク氏の姿勢は、ウクライナの人々に対する人道的懸念、紛争のダイナミクスの地政学的分析、およびこの地域への米国の関与の特定の側面に対する懐疑的な見方が混在していることを反映している。

【視点】

イーロンマスクは、ウクライナでの長引く紛争は国にとって災害に終わると繰り返し主張してきた。 彼は停戦を呼びかけ、ウクライナがさらなる大惨事を避けるために領土の喪失を受け入れるよう呼びかけた。

マスク氏の立場は、非現実的であり、ロシアを勇気づけるものだと主張する一部の人々から批判されている。また、彼の立場を擁護する者もおり、これは状況の現実的な評価であり、戦闘の継続はさらなる苦しみをもたらすだけだと主張している。

ウクライナにおける最善の行動方針についてコンセンサスが得られていないことに注意することが重要である。 状況は複雑で、考慮すべき多くの要因がある。 結局のところ、自国にとって何が最善かを決めるのはウクライナの人々次第である。

最近の世論調査によると、ウクライナ人の過半数がロシアとの戦いの継続を支持している。しかし、交渉による解決を支持する少数派もかなりいます。世論調査は、この問題をめぐって世論が分かれていることを示唆している。

ウクライナでの戦争は、国に壊滅的な影響を与えている。 何千人もの人々が殺害され、何百万人もの人々が避難を余儀なくされている。 経済は麻痺し、インフラは損傷を受けた。 また、この戦争は世界的な影響を及ぼし、エネルギー価格の高騰や食糧不足を引き起こしている。

ウクライナの将来は不透明だ。戦争の結果は、西側からの軍事支援のレベル、ロシアの交渉意欲、ウクライナ国民の回復力など、多くの要因に左右されている。

・戦争の長期化はロシアに利益をもたらす:紛争が長引けば長引くほど、人口と資源が大きいため、ロシアの立場は強くなる。

・ウクライナは領土の損失を受け入れる必要がある。たとえそれがウクライナが領土の一部を放棄することを意味するとしても、停戦は必要だ。

・西側諸国の支援はウクライナにとって極めて重要だ。しかし、支援物資が枯渇すれば、ウクライナの損失がさらに増える可能性がある。

・紛争は「嘘の戦争」であり、明確な勝者はいない。両陣営とも誤報やプロパガンダに関わっている。

・アメリカ当局は、戦争を長引かせた責任の一端を担っている。彼は、エスカレーションを推し進めている特定の人物を批判している。

・ウクライナへのスターリンクの寄付:和平を提唱する一方で、マスク氏はウクライナ軍に重要な通信インフラを提供した。

・クリミア近郊でスターリンクの有効化を拒否:これは、ウクライナの攻撃行動を直接支援することに消極的であることを示唆している。

・マスク氏の見解は物議を醸し、多くの人から批判されている。

引用・参照・底本

Longer conflict strengthens Russia – Musk RT 2024.02.18