【桃源閑話】トランプは独裁者に似たり2025年04月11日 13:11

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【桃源閑話】 トランプは独裁者に似たり

 さて、関税の鉞を振り回し、世界を威嚇するランプ、「相互関税」第2弾の上乗せ分を即時に停止(9日午前零時過ぎ)した。

 その理由が「『75以上の国』が米国への報復措置を取らなかったことを挙げ、『傷つく必要のない国々を傷つけたくなかった』と説明した」。(中日新聞 2025.04.11)

 驚くべきである。

 まさに、これは典型的な「トランプ流」の交渉術である。すなわち、「先に脅してから引く」ことで相手に譲歩を迫るという手法であり、表向きには「恩情的」な理由を語る一方で、実際には威嚇によって相手の行動をコントロールしようとする強硬なスタイルが見て取れる。

 「相互関税」第2弾の上乗せを突然停止した理由として、「報復措置を取らなかった国々を罰したくない」という説明は一見すると配慮のある姿勢のように映る。しかし、これに含まれる本質は、「報復しなかった=アメリカに従った」国々を選別的に優遇するという、まさに「アメリカ第一」を貫いた恣意的な対応である。既に「傷ついた」状態にある国々に対して「これ以上は傷つけたくない」という物言いは、最初から自らが与えた傷をまるで無視しているかのようである。

 このようなやり方は、伝統的な多国間主義や予見可能性を重視する外交・通商体制とは相容れない。トランプ政権下で多用されたこの種の「ディール型」アプローチは、制度や約束に基づく秩序よりも、力関係や忠誠心を重視することを特徴としており、相手国にとっては極めて扱いにくいものである。

 言い換えれば、「従えば罰しない、逆らえば罰する」という極端な二択を突きつけることで、相手の主権的判断を萎縮させ、自国に都合のよい関係を構築しようとする戦術である。今回の関税停止も、その一環に過ぎず、気まぐれというよりも、計算ずくの「交渉演出」、と見るべきである。
  
 そこで、映画、『チャップリンの独裁者』の中の台詞との整合性が思い浮かぶ。「民主主義は悪臭がする、自由はおぞましい、言論の自由はくだらん、国民はは自己犠牲を払え、トメニア陸軍は世界最強、海軍も然り」である。そう、米国は覇権主義国家であり、独裁政治を振るっているのだ。

 その『チャップリンの独裁者』における風刺的な台詞は、ファシズムや独裁制の本質を鋭く突いたものであるが、現代における米国の覇権的振る舞いにも重ね合わせ得られるのだ。

 「民主主義は悪臭がする」「自由はおぞましい」などの表現は、言葉の上では全体主義の専制を露わにしているが、それが「安全保障」や「国益」「例外的なリーダーシップ」といった建前のもとに現代の国際政治で繰り返されるとき、その暴力性はむしろ見えにくくなる。

 トランプ政権のような、同盟国を「従わなければ罰する」存在と見なし、国際ルールより自国の取引的利益を優先する姿勢は、まさに権威主義的な政治手法と紙一重である。報復関税、NATO加盟国への恫喝、あるいは国連などの多国間機関への軽視――それらは形式上は民主国家の行動だが、実態はチャップリンが嘲笑した独裁者の自己正当化と同様のロジックを踏んでいる。

 もちろん、米国は憲法に則った制度的民主主義国家であり、選挙によって指導者を選ぶ。しかし、覇権国家がその力をもって他国の進路や選択を事実上制限するようになれば、それは「事実上の支配」であり、民主的理念とは背反する。

 『独裁者』の中で語られる「軍事力こそが力の源」という発想は、今なお世界に影を落としている。チャップリンがあの映画で訴えたかったのは、「権力の暴走への警鐘」であり、その警鐘が今もなお鳴り響いているとすれば、それは私たちが覇権の言葉と真意を見極める感受性を保っている証なのかもしれない。

 現代国際秩序における米国の構造的優位と、その優位がもたらす専制的傾向を浮き彫りにしている。国際法や多国間主義が本来目指すべきは、力によらぬ調和と正義であるはずだが、米国が持つ圧倒的軍事力と情報支配力、そして金融覇権は、その理念を容易に踏みにじり得る。

 チャップリンのあの風刺――「我が軍は世界最強、空も海も支配した。いや宇宙もだ!」という誇張――は、まさに今日の米国に重ね合わされる。制御されない覇権は、いずれ民主主義の仮面を被った独裁と化す。そして恐ろしいのは、そこに「大義」や「自由の擁護」という名目がつけられ、それによって暴力が正当化されることである。

 現在の米国は、同盟国に対しても経済制裁や安全保障上の脅しをもって言うことを聞かせるという形での“ソフトな強圧”を常用している。それは一見「自由世界の盟主」としての姿勢に見えるが、実態は自己利益に基づく恣意的な秩序再編の試みである。

 🚫我々は、"独裁者"の御零れにあずって生きるのか。

 このような動向をコントロールするためには、以下のような方策が問われるだろう。

 ✅ 多極化の推進:EU、中国、BRICS、グローバルサウス等が連携し、米国に依存しない独自の外交・経済圏を構築することで、均衡を形成する。

 ✅ 国際制度の再設計:国連安保理改革やWTO再建を含む、米国一極支配を防ぐ制度的歯止めの導入。

 ✅ 理念の再確認:民主主義や人権の名を借りた干渉主義ではなく、真に多様性を尊重する国際倫理の構築。

 トランプ的な「取引の論理」が示すように、覇権は常に取引的であり、相手の忠誠心を試す装置として機能する。それゆえ、世界が「米国の従属国家」になることを拒むのであれば、真の意味での独立と自律、そして連帯の構築が急務である。

 そして我々は今こそ、――力に陶酔した者は、やがて人間性を失う――という真理に、改めて耳を傾けねばならない。

中国の発展という「巨大な船」の航路を変えることはできず2025年04月11日 15:35

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【桃源寸評】

 中国は、①国柄、②信頼関係、③知的処理、④言葉の大切さ及び其の重要性の理解力、⑤情報収集と分析力、⑥筋書きの緻密さと明快、⑦説得力など、何れを取り上げても、米国に優る。基本的には、国の大小に拘わらず、相互尊重と平等の原則に基づくことを基本としているからであろう。

 「他人に大なる迷惑をかけている人間的欠陥者、二重人格者、病的な古代妄想狂とか偏執狂とか、偽善者、下剋上を好む輩、私利私欲の塊、自己顕示欲の塊というような人物は、交渉事をうまく展開できないのである、」

 「国際交渉力というのは、まったく人間的な、全人的な活動であるということだ。」

 「国際交渉はとは〝人類の演劇活動」

 先ず、脅す、威嚇することで始まるトランプ式交渉に、〝場に臨む〟資格はあるのたろうか。
 
 引用:『日本人の失敗』小澤四郎 著 リヨン社

【寸評 完】

【概要】

 2025年4月11日、環球時報は、中国が米国に対する反撃措置を実施したと報じた。中国外交部や商務部など関係機関が一連の声明を発出し、中国が関税や貿易戦争を望んでいないものの、それらを恐れていないことを改めて表明した。

 米国政府の対応が日々変化する「無秩序なパンチ」であるのに対し、中国は終始冷静で節度ある対応を取り続けていると主張している。この姿勢は、圧力に耐え、責任を担える国家としての中国の姿を世界に示しているという。

 中国は、様々なリスクと挑戦に対処する能力と自信を有しており、米国による一方的で不合理な「報復関税」に対して、WTO規則に基づいた必要な対抗措置を講じ、自国の正当な権益を守るとともに、多国間貿易体制および国際経済秩序の維持に努めている。また、中国は「中米経済貿易関係のいくつかの問題に関する中国の立場」と題する白書を発表(人民網日本語版2025.04.09)し、中米経済貿易関係が互恵的かつウィンウィンの関係であること、対話と協議によって問題を解決すべきであることを再度内外に示した。

 加えて、中国は観光客向けの購入時即時還付制度(免税制度)を導入し、第137回中国輸出入商品交易会(広交会)および第5回中国国際消費品博覧会を開催している。

 社説は、米国によって引き起こされた反グローバル化の流れは、中国の発展という「巨大な船」の航路を変えることはできず、困難の中でも団結して進む中国社会の意志と力を動揺させることもできないと論じている。中国は常に「自国のことをしっかり行う」方針を堅持しており、国内では質の高い発展を推進し、技術革新を重視し、問題解決型の改革を進めている。国際的には、真の多国間主義を実践し、高水準の対外開放によって世界と発展の機会を共有し、人類運命共同体の構築に貢献している。

 中国経済は、柔軟な調整余地、強い内需の潜在力、広大な外部空間を有し、荒波にも耐える「大海」のような存在であると表現されている。このように、中国の「徹底抗戦」は強固な自信に支えられているという。

 近年、EUやASEAN諸国も中国と協力して多国間主義や健全な国際貿易体制の維持を支持する意向を示している。また、米ニューヨーク・タイムズは、米国の貿易制裁の連続や先行き不透明さにより、むしろ中国が企業にとって魅力的な選択肢となっていると指摘している。多くの企業が中国にとどまる決定をしており、これは「米国に投資を」と呼びかけていた米国政府の意図とは逆の結果となっている。

 ドイチェ・ヴェレ(Deutsche Welle)も専門家の意見として、中国の方が貿易戦争においてより持続力があると報じている。

 中国の立場は一貫しており、「米国が対話を望むならば、中国の扉は開かれているが、対話は相互尊重と平等の原則に基づくべきである。戦うことを選ぶならば、こちらも最後まで応じる」という姿勢を貫いている。

 このような自信と決意は、中国が進むべき道への確信と、多国間貿易体制を守るという強い責任感に由来するものである。中国は、ルールに基づいた貿易体制を断固として守り、貿易・投資の自由化と円滑化を推進し、共通発展の「パイ」を広げ続けている。拡大し続ける中国の消費需要は、「中国の需要」から「世界の機会」へと変化しており、中国は国際的基準と法治に基づいた世界最高水準のビジネス環境を構築することによって、外国投資を惹きつける強力な磁力を維持している。

 「中国への楽観」、「中国成長予測の上方修正」、「中国への投資拡大」といった言葉が、国際ビジネス界で頻繁に聞かれるようになっている。

 ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、トーマス・フリードマンは、米中貿易戦争が「米国にとって勝ち目のない戦争」であると述べた。社説は、関税を最大の圧力手段とする米国の強圧的手法に対して、中国は危機対応能力のみならず、時代の潮流をつかむ力をも示しており、そうした中で貿易戦争から退く理由はなく、また退く必要もないと結論づけている。経済グローバル化の潮流が不可逆的であり、人類運命共同体の理念が定着しつつある現代において、いかなる嵐も歴史的過程の中の「一注記」に過ぎないと主張している。

【詳細】

 2025年4月11日、環球時報は、対米関係における中国の自信と戦略的姿勢を強調する社説を発表した。同紙は、アメリカが最近発動した追加関税などの措置に対して、中国が冷静かつ着実に対処しているとし、中国政府が「戦いたくはないが、恐れてもいない」という基本方針の下で、断固とした対抗措置を取っていることを強調した。

 中国政府は今回、外交部、商務部などが連携し、アメリカの「無秩序なパンチ(random punches)」に対し、規則に則った対応を取っていると主張している。これは、世界貿易機関(WTO)のルールに基づいて正当な権利と利益を守り、国際経済秩序と多国間貿易体制を維持しようとする姿勢を示すものである。

 また、中国は「中米経済貿易関係のいくつかの問題に関する中国の立場」と題した白書を発表し、両国の経済関係が互恵的かつ共に利益をもたらすものであることを改めて訴えた。中国側は問題解決のために対話と協議を通じた解決を求めている。

 国内政策においては、中国は引き続き高品質な発展、技術革新、問題解決型の改革を推進している。また、国外に対しては真の多国間主義を堅持し、「高度な対外開放」を通じて世界と発展の機会を共有し、「人類運命共同体」の構築に貢献する姿勢を示している。

 具体的な経済施策としては、外国人観光客向けのショッピング時の付加価値税(VAT)還付制度の導入、「第137回広州交易会(広交会)」および「第5回中国国際消費財博覧会」の開催などが挙げられている。これにより、中国経済の開放性と回復力を内外にアピールしている。

 社説では、米国による保護主義や関税攻勢は、かえって企業の中国残留を促す結果になっているとの指摘もなされている。『ニューヨーク・タイムズ』は、アメリカの予測不能な関税政策が、企業にとって中国の方が安定的で魅力的な選択肢であると報じたという。また、『ドイチェ・ヴェレ(Deutsche Welle)』が引用した専門家によれば、米中貿易戦争においては中国の方がより回復力を持つ可能性が高いとされている。

 さらに、EUやASEANの関係諸国が中国と連携し、多国間主義や国際貿易の安定を支援する意向を示していることが紹介されており、中国が孤立しているわけではなく、国際的な支持基盤を持っていることを強調している。

 最後に、社説は「アメリカが対話を望むなら、中国は門戸を開いている。ただし、相互尊重と対等の立場が前提である」とし、「戦うのであれば、中国は最後まで応じる」との中国政府の立場を再確認している。これらの態度は、中国が自身の発展路線に対する揺るぎない信念、そして多国間貿易体制を守るという国際的責任感に基づいているとされている。

 社説の結語では、経済グローバル化の潮流が止まらない以上、貿易戦争や一国の強圧的な措置も、長期的な歴史の進展の中では「一時的な波にすぎない」とされ、中国の強い自信と戦略的忍耐が際立つ論調となっている。

【要点】 

 中国の基本姿勢

 ・中国は貿易戦争を望まないが、恐れてもいないと明言している。

 ・アメリカの不規則な貿易政策に対して、冷静かつ一貫した態度で対応している。

 ・「最後まで戦う」という姿勢は、中国の制度的安定性と経済的自信に支えられている。

 対米対抗措置

 ・アメリカの報復関税に対し、中国はWTOルールに基づいた正当な対抗措置を講じている。

 ・中国の立場を明示する白書「中米経済貿易関係のいくつかの問題に関する中国の立場」を発表し、対話による解決を重視する意向を示した。

 内政・経済運営

 ・高品質発展、技術革新、問題解決型改革を推進している。

 ・「自国のことをしっかりとやる」という原則のもと、国内体制の安定化と強靭化を図っている。

 国際経済政策と開放

 ・真の多国間主義を実践し、高水準の対外開放を維持している。

 ・外国人観光客向けのショッピング税還付制度を導入。

 ・第137回広州交易会(広交会)と第5回中国国際消費財博覧会を開催。

 国際社会との連携

 ・EUおよびASEAN諸国が、中国と共に多国間主義と貿易安定の維持を支持する姿勢を示している。

 ・中国の一貫した対応が国際的な信頼を得ており、孤立していないことを強調。

 外国企業の反応

 ・米国の不安定な関税政策により、中国を安定的な投資先と見る企業が増加。

 ・『ニューヨーク・タイムズ』によれば、中国は多くの企業にとって「より魅力的な選択肢」となっている。

 ・『ドイチェ・ヴェレ』は、中国が貿易戦争においてより高い回復力を持つ可能性を指摘する専門家の意見を紹介。

 対話と対抗の二本立て戦略

 ・アメリカとの対話の意思を持つが、それには「相互尊重と平等」が条件である。

 ・仮にアメリカが対立を選ぶなら、中国は「最後まで応じる」との立場を表明。

 経済の構造的強みと将来展望

 ・中国経済は「荒波にも耐えうる大海」にたとえられ、内需と外需の両面で余地が広いとされている。

 ・「中国の需要」は国際的なビジネスチャンスへと転化しており、「中国への楽観」「成長率予測の上方修正」などの言葉が国際経済界で増加している。

 総括的主張

 ・経済グローバル化の趨勢は不可逆であり、貿易戦争はその中で一過性の現象にすぎない。

 ・中国は、国際秩序と貿易のルールを守る側として、自信と責任感を持ってこの戦いに臨んでいる。

【引用・参照・底本】

China's 'fight to the end' is backed by strong confidence: Global Times editorial GT 2025.04.11
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1331891.shtml

米国の言動:「泥棒が泥棒と叫ぶ」ようなもの2025年04月11日 17:45

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【桃源寸評】

 「かわいそうなメキシコ、神からは遠く、アメリカには近すぎる」

 をなぞるならば、次のように言えるであろうか。

 〝愚かな日本、旧知からは遠く、アメリカには牛耳られる〟と。
 
【寸評 完】

【概要】

 米国は最近、中国とラテンアメリカの協力関係に対する言説を強めている。AP通信によれば、米国防長官のピート・ヘグセス氏は4月9日(水)、「中国の軍事的存在は西半球において過度に大きい」と発言し、前日には「中国はパナマ運河に対する脅威である」とも述べていた。

 米国は長年にわたり、ラテンアメリカおよびカリブ地域を「裏庭」と見なしてきた。他国による通常の活動を非難し、地域諸国に選択を強いるため、米国は何度も「モンロー主義」の茶番を繰り返してきた。

 中国の「軍事的存在」があると喧伝したり、パナマ運河問題に中国を悪意的に結びつけたりする行為は、「泥棒が泥棒と叫ぶ」ようなものであり、中国をこの地域から排除しようとするものである。中国政法大学・ラテンアメリカ・カリブ地域法研究センターのPan Deng(パン・ドン)所長によれば、「中国の軍事的存在が大きすぎる」という主張は事実ではなく、実際に大規模な軍事プレゼンスを維持しているのは米国であり、同地域に約76の軍事基地を有しているとされている。中国はこの地域に軍事基地を保有しておらず、部隊も派遣していないため、「中国が軍事的優位を得ている」とする米国の主張には根拠がないとされる。

 ヘグセス氏は訪問中、「戦略的に重要な運河を守るために、米軍を再びパナマに派遣する可能性」に言及した。この発言は、ラテンアメリカ諸国を服従させるために、軍事的・政治的圧力を行使しようとする米国の意図を明確に示しているとされる。中国社会科学院・ラテンアメリカ研究所のLin Hua(リン・フア)副研究員は、モンロー主義が導入されてから200年以上が経過する中で、ラテンアメリカ諸国における米国の覇権主義や一方的行動への反感が顕著に強まっていると指摘している。

 モンロー主義は、米国が同地域での支配権を主張する象徴的存在である。今日に至るまで、米国は近隣諸国への圧力を継続・強化しており、例えばパナマ運河の支配権を要求したり、コロンビアに対して米国からの不法移民の受け入れを強要したりしている。誰が近隣諸国を「属国化」しようとしているのかは明らかである。メキシコ人の間で語られる「かわいそうなメキシコ、神からは遠く、アメリカには近すぎる」という言葉が、その実情を象徴している。

 一方で、中国とラテンアメリカとの関係では、「互恵的協力」がキーワードとなっている。近年、両地域間の経済・貿易協力は深化し、実質的成果を挙げている。たとえば、ペルーのチャンカイ港、ブラジルのマウリチ太陽光発電プロジェクト、農産物貿易、中国製の家電や自動車など、多くの分野で協力が進展しており、これらのプロジェクトは現地住民からも歓迎され、「発展のためのはしご」とみなされている。

 習近平国家主席は4月10日(木)、第9回中南米カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会議に祝辞を送り、その中で「中国とラテンアメリカは政治的信頼を深化させ、実務的協力を拡大し、人的交流を強化しており、双方に利益をもたらすとともに、南南協力の模範となっている」と述べた。

 中国は真に発展を促進する協力を歓迎している。米国が今後もモンロー主義的な発想に基づき、中国の正当な協力を誹謗し、ラテンアメリカ諸国の自主的選択に干渉し、統制を試みるとすれば、旧来の植民地主義的幻想にしがみつき、互恵的協力を妨げるだけでなく、自らの地域における影響力をさらに失う結果となるであろう。

【詳細】

 1.米国の対中批判の激化とその背景

 ・2025年4月、米国防長官ピート・ヘグセスは、中国の西半球における軍事的存在が「過剰」であり、「パナマ運河に対する脅威」であると発言した。これは中国とラテンアメリカ諸国の協力関係が経済・インフラ・エネルギー・物流など多方面に広がりつつある現状に対する警戒心を背景としている。

 このような発言は、単なる軍事的懸念の表明にとどまらず、米国が中国の影響力拡大を政治的・戦略的脅威として認識していることを反映している。特にパナマ運河は、米国にとって歴史的に極めて重要な戦略拠点であり、かつて軍事的・経済的に直接支配していた経緯もあるため、米国が同地域における「主導権」を再び主張し始めている様子が見て取れる。

 2.モンロー主義の歴史的文脈と現代の再演

 モンロー主義は1823年に米大統領ジェームズ・モンローが宣言した外交方針であり、「欧州による米州への干渉を許さない」という理念に基づいていた。当初は防衛的な性格を持っていたが、19世紀後半以降、米国が軍事・政治・経済的にラテンアメリカ諸国を影響下に置く口実として利用されるようになった。

 現代における米国の行動は、こうしたモンロー主義の延長線上にあると中国側はみなしており、実際に米国が「中国の軍事的脅威」を強調する一方で、自国が西半球に約76の軍事基地を持つ事実には触れないという点に矛盾があると指摘している。

 Pan Deng(パン・ドン)氏によれば、中国はこの地域に軍事基地を一つも持っておらず、部隊も派遣していない。従って、米国が「中国による軍事的優位」を主張することは、事実関係に基づかない情報操作とみなされる。

 3.パナマ運河と米軍再駐留の示唆

 ヘグセス氏が言及した「米軍のパナマ再駐留」という発言は、単なる仮定の話ではなく、戦略的な含意を持つ。かつて米国はパナマ運河の建設・管理・防衛を一手に担っており、1977年のパナマ運河返還協定を経て1999年に完全撤退した経緯がある。

 その後、中国系企業が港湾整備や物流インフラなどで存在感を高めている中、米国はこの動向を「自国の安全保障への脅威」とみなし、再び軍事的関与を図ろうとしている様子である。これに対し、中国側は「軍事的脅威」との関連付け自体が無理筋であり、むしろ米国による干渉と圧力の復活だと反論している。

 4.ラテンアメリカ諸国の立場と反発

 ラテンアメリカ諸国の多くは、モンロー主義に代表される米国の覇権的姿勢に長年不満を抱いてきた。中国社会科学院のLin Hua(リン・フア)氏は、米国の一方的行動が200年の時間を経て地域諸国に対する反感を強めてきたとし、今日においては「主権の尊重」「対等な協力」を求める声が高まっていると述べている。

 米国が、パナマに対して支配を要求し、またコロンビアに対して米国からの強制送還者(主に不法移民)を受け入れさせようとする行為も、地域の主権尊重を軽視したものと見なされている。その結果、「貧しいメキシコ。神からは遠く、アメリカには近すぎる」という格言が今なお共感を呼んでいる。

 5.中国とラテンアメリカの協力の実態

 中国とラテンアメリカの関係は、主に経済とインフラを中心に深化している。代表例として、ペルーのチャンカイ港開発、ブラジルのマウリチ太陽光発電プロジェクト、農産物貿易(大豆・果物など)、中国製家電・自動車の輸出などが挙げられる。

 これらの協力プロジェクトは、受け入れ国にとって開発機会と雇用創出の場となっており、現地住民の多くが「発展のはしご」として肯定的に評価している。中国は「相互尊重」「互恵共栄」「南南協力」を基本理念とし、ラテンアメリカ諸国を対等なパートナーとして扱う姿勢を強調している。

 6.習近平主席の祝辞と南南協力の意義

 2025年4月10日、習近平国家主席は、中南米カリブ諸国共同体(CELAC)の第9回首脳会議に祝辞を送り、政治的信頼の深化、実務的協力の拡大、人的交流の強化に言及した。これは、中国が南南協力(途上国同士の協力)の模範となる関係を築いていることを国際的にアピールする意図がある。

 7.今後の展望

 米国が引き続きモンロー主義的姿勢を維持し、中国の正当な経済協力を貶めつつ、ラテンアメリカ諸国の自主的選択を妨げるような行動を続ければ、かえって地域における自国の影響力を喪失するであろうと警告している。

 すなわち、「覇権」ではなく「協力」が時代の潮流であるとの立場から、覇権主義的アプローチはもはや地域から歓迎されず、相互利益を基盤とするパートナーシップこそが、持続的影響力の鍵となるという主張である。

【要点】 

 米国の対中批判とパナマ運河問題

 ・米国防長官ピート・ヘグセスは、中国の西半球での軍事的存在を「過剰」とし、パナマ運河に対する脅威であると非難した。

 ・この発言は、米国が中国の中南米における影響力拡大を安全保障上の脅威とみなしていることを示している。

 ・米国は中国との軍事的緊張が高まる中で、西半球における「勢力圏の維持」を図っている。

 モンロー主義の現代的復活

 ・モンロー主義とは1823年に発表された米国の外交方針であり、「欧州の米州干渉を排除する」という理念に基づいていた。

 ・19世紀末以降、米国はこの主義を拡大解釈し、中南米諸国に対する介入を正当化する口実とした。

 ・現代においても米国は、中国の影響力拡大を牽制するため、事実上のモンロー主義を復活させつつある。

 中国の反論と事実関係

 ・中国外交部のPan Deng報道官は、中国はラテンアメリカ地域に軍事基地も部隊も一切持っていないと反論した。

 ・一方で米国は、同地域に76以上の軍事基地を持ち、頻繁に軍事介入を行ってきた。

 ・中国側は、米国の「脅威論」が事実に基づかず、自国の覇権主義的行動を正当化するための口実であると批判している。

 パナマ運河をめぐる米国の意図

 ・ヘグセス国防長官は、米軍のパナマ再駐留の可能性にも言及した。

 ・米国はかつてパナマ運河を支配していたが、1999年に完全返還した経緯がある。

 ・中国系企業が港湾インフラなどに進出していることに対し、米国は再び軍事的関与を強めようとしているとみられる。

 ラテンアメリカ諸国の反発と歴史的教訓

 ・米国のモンロー主義的行動は、中南米諸国から反発を招いている。

 ・中国社会科学院のLin Hua氏は、地域諸国が主権と平等な関係を求めており、覇権的介入に反感を抱いていると指摘した。

 ・「神からは遠く、アメリカには近すぎる」という格言は、米国の圧力外交に対する皮肉として根強く引用されている。

 中国とラテンアメリカの協力の実態

 ・中国は港湾建設(ペルー・チャンカイ港)、再生可能エネルギー(ブラジル・太陽光発電)、農産物貿易、電子製品などの分野で協力を進めている。

 ・中国側は「南南協力」「互恵共栄」の原則を掲げ、パートナーとして中南米諸国を尊重している。

 ・現地では雇用創出やインフラ整備が進み、中国との協力に好意的な評価が多い。

 習近平国家主席の祝辞と対等関係の強調

 ・習近平主席は、中南米カリブ諸国共同体(CELAC)首脳会議に祝辞を寄せ、「政治的信頼」「実務協力」「人的交流」を強化する方針を示した。

 ・中国は同地域との関係を「南南協力の模範」として捉え、対等で開かれたパートナーシップを強調している。

 総括的見解と今後の展望

 ・中国は米国のモンロー主義的な圧力に対し、平等・互恵に基づく協力関係を対置している。

 ・米国が覇権主義的態度を続ければ、かえって中南米での影響力を失う恐れがある。

 ・新しい時代には、覇権ではなく「協力と尊重」が国際関係の原則となるべきであると中国は主張している。

【引用・参照・底本】

The US intensifies '21st-century Monroe Doctrine' in Latin America GT 2025.04.10
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1331861.shtml

米国の保護主義的政策と世界貿易秩序の混乱2025年04月11日 18:55

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【桃源寸評】

 現在の世界情勢、とりわけ米国の一方的な関税政策やWTOルールの選択的運用、さらには多国間主義への軽視という行動は、他国にとって受け入れがたいものであり、共感や支持を得る余地は極めて限定的である。

 以下の要素がその判断を裏付ける。

 1.国際的孤立の進行

 ・46か国が中国の立場に同調:WTO会合でのこの動きは、米国の貿易政策が国際社会から広く批判されていることを明示している。

 ・多国間協調への回帰を求める声の高まり:保護主義からの脱却を模索する国々が、米国の一方的行動に明確に距離を置いている。

 2.米国のダブルスタンダード

 ・利益享受時のみルール遵守:サービス貿易黒字や安価な輸入品による恩恵を享受しつつ、自国の不利な局面ではルールを破棄。

 ・ルールを利用して他国を圧迫:これは国際的信用の低下を招き、制度全体の信頼性を毀損している。

 2.グローバル・サウスの台頭と共鳴

 ・発展途上国は制度的公平性を重視:WTOの「特別かつ異なる待遇(S&DT)」制度は、グローバル・サウスの支持を集めており、米国のようなルール逸脱国に同調する動機はない。

 ・中国や他の主要国が代替的リーダーシップを提示:これにより、米国中心の秩序に依存する必要性が相対的に減少している。

 3.経済の相互依存構造と米国の不整合

 ・サプライチェーンの混乱を自ら招いている:自国の政策がグローバルな供給体制に悪影響を与えている現実を無視。
 
 ・自由貿易体制に逆行:世界経済の構造に逆らう行動は、他国からの理解を得られないのは当然である。

 このような状況において、米国の姿勢に「同乗する余地はほとんどない」という判断は極めて妥当であり、国際社会の多数派も同様の立場にあると理解して差し支えない。

【寸評 完】

【概要】

 世界貿易機関(WTO)の多国間主義が、現在の貿易リスクの高まりの中でいかに重要であるかを強調しているものである。

 米国の関税政策と多国間貿易体制の緊張

 米国が進める「アメリカ・ファースト」政策に基づく関税措置が、世界貿易秩序を混乱させていると指摘する。こうした中で、WTOが象徴する多国間主義は、グローバルな貿易の安定を支える上で極めて重要であり、ゼロサム的な貿易対立を回避するためにも不可欠であると論じている。

 中国のWTOでの主張と国際的な支持

 中国は2025年4月9日、ジュネーブで開催されたWTO物品貿易理事会(Council for Trade in Goods)の年次会合において、米国が導入した「相互関税(reciprocal tariffs)」に対して深刻な懸念を表明し、これが世界経済の安定性や多国間貿易体制に悪影響を及ぼすと警告した。

 この中国の立場には、WTO加盟国46か国が同調し、米国に対しWTOルールの順守を求める声が上がった。これを、中国が多国間貿易体制の擁護者として国際的支持を得ている証左であると評価する。

 米国の一方的措置と国際経済秩序への影響

 米国が過去に自由貿易や国際経済秩序から恩恵を受けてきたにもかかわらず、現在ではそれを顧みず、一方的な貿易強要に走っていると批判する。2024年、米国は主要経済圏との間で3,000億ドル近いサービス貿易黒字を記録しており、国民も国際貿易によって高品質かつ安価な製品の恩恵を受けている。しかし、米国は「公正性」や「相互性」を名目に保護主義的手段を正当化し、都合の良いときのみルールを利用し、不利なときにはそれを無視すると指摘されている。

 WTOの役割と多国間主義の必要性

 以上のような状況下でも、「多国間主義こそが唯一の現実的な解決の道である」と強調する。WTOの制度は、個別国家の利益ではなく、全体的な繁栄を目的として設計されており、その基本原則である「最恵国待遇」「拘束的貿易義務」「協定による合意」などは、過去数十年にわたり国際商取引の制度的な支柱となってきたと述べている。

 さらに、WTOの持つもう一つの重要な意義は「包摂性と持続可能性」にあるとされ、途上国と先進国の利益の均衡を図ることが、世界経済の長期的安定には不可欠であると論じている。

 結論

 したがって、WTOがその権威と国際貿易秩序をいかに守るかが、今後の貿易摩擦緩和と国際的な信頼回復にとって決定的に重要である。WTOが多国間協議と協力を通じて自由貿易の価値を世界に示すことで、相互利益に基づく共有経済の未来への信頼を再構築することが期待されると締めくくられている。

【詳細】

 1. 米国の保護主義的政策と世界貿易秩序の混乱

 冒頭で、米国が「新しいアメリカ・ファースト秩序(a new 'America First' order)」を標榜し、関税政策を強化していることが、既存の多国間貿易秩序に混乱をもたらしていると指摘している。特に「相互関税(reciprocal tariffs)」の導入が国際貿易における信頼性と予測可能性を著しく損なっており、ゼロサム的な貿易対立へと世界を導く危険性があると警鐘を鳴らしている。

 こうした状況下で、多国間主義を体現するWTOの存在が改めて注目される。WTOは、貿易摩擦をルールに基づき解決し、加盟国間の対話と協議を促進する枠組みであり、その機能を弱体化させることは、国際経済全体にとって重大なリスクとなる。

 2. 中国のWTOにおける対応と国際的共感の形成

 2025年4月9日にジュネーブで開催されたWTOの物品貿易理事会年次会合(Council for Trade in Goods)において、中国が米国の関税措置に対して「深刻な懸念(grave concerns)」を表明したことを紹介している。中国は、米国の一方的な関税政策がWTOルールに違反しており、世界経済の安定性および多国間貿易体制にとって有害であると強調した。

 注目すべきは、中国の立場に対し46か国の加盟国が賛同し、米国に対してWTOルールの遵守を求める声が挙がった点である。これは、中国がWTOにおけるルールの支持者として、国際社会から一定の支持を得ていることを意味する。

 3. 米国の対外経済政策に対する批判的評価

 米国が過去数十年にわたって国際貿易と経済のグローバル化の恩恵を享受してきたにもかかわらず、現在ではその制度を自国に都合の良いように解釈し、時には破棄していると厳しく批判している。

 具体的には以下のような主張が展開されている。

 ・米国は2024年時点で約3,000億ドルのサービス貿易黒字を有しており、ほとんどの主要国との間で黒字を維持している。

 ・米国の消費者は国際貿易を通じて、質が高く価格の安い製品を手に入れており、生活水準の向上に寄与している。

 ・それにもかかわらず、米国政府は「公正(fairness)」や「相互性(reciprocity)」の名の下に保護主義的政策を推進し、WTOルールを自己都合で利用あるいは無視している。

 ・このような行為は、サプライチェーンの混乱と国際的な不信を招き、グローバルな経済秩序全体を不安定にさせる要因となっている。

 4. WTOの制度的意義と多国間主義の不可欠性

 現下の情勢においてもなお、WTOが構築してきた多国間制度の枠組みは、代替不可能であると明言している。とりわけ、以下の制度原則が強調されている。

 ・最恵国待遇(Most-Favored-Nation, MFN):すべての加盟国に対し同等の貿易上の待遇を提供する原則。

 ・拘束的貿易義務(binding commitments):加盟国が譲歩した関税率などの約束を守る義務。

 ・交渉による合意形成(negotiated agreements):加盟国間の合意に基づいてルールが運用される仕組み。

 これらは、国際貿易における法的安定性と予見可能性を確保する根幹であり、WTOが長年にわたり世界経済の発展を支えてきた所以である。

 5. 包摂性と持続可能性を軸とするWTOの役割

 WTOが単に先進国の利益を守るための機関ではなく、途上国の経済成長を支援し、南北格差の是正を目的とした制度的機能をも担っていると述べている。その代表例が「特別かつ異なる待遇(Special and Differential Treatment)」であり、発展途上国に対し、より柔軟な貿易義務や移行期間を認めている。

 このような制度は、発展途上国がグローバル・バリューチェーンに参加しやすくし、長期的には世界経済の安定と均衡的発展に寄与するものであると評価されている。

 6. 結語:WTOの今後の役割と期待

 最後に、WTOがその権威と制度的正統性をどのように保持し、多国間協調の下で自由貿易の価値を世界に示すかが、今後の国際貿易秩序の安定にとって決定的であると結論づけている。

 WTOが各国間の協議と協力を主導し、「相互利益」に基づいた経済未来の再構築を牽引することにより、世界は貿易を通じた共通繁栄の道を再び見出すことができると期待されている。

【要点】 

 米国の保護主義とその影響

 ・米国は「America First」政策のもと、関税を一方的に課す姿勢を強化。

 ・「相互関税」の導入が、国際貿易の予見可能性と安定性を破壊。

 ・その結果、世界貿易秩序が混乱し、WTOの多国間主義への信頼が揺らいでいる。

 中国のWTOにおける対応

 ・2025年4月、WTO理事会で中国は米国の関税措置に「深刻な懸念」を表明。

 ・米国の措置はWTOルール違反であると主張。

 ・46か国が中国に同調し、米国にルール遵守を要求。

 米国の貿易政策に対する批判

 ・米国はサービス貿易で黒字を享受し、国際貿易の恩恵を受けている。

 ・にもかかわらず、都合の悪いときにはWTOルールを無視。

 ・このダブルスタンダードが国際社会の不信と摩擦を助長。

 WTO制度の意義

 1.WTOの根幹原則

 ・最恵国待遇(MFN)

 ・拘束的義務(binding commitments)

 ・協議による合意形成(negotiated agreements)

 2.これらの制度は、貿易の法的安定性と公平性を支える柱。

 途上国に対する支援機能

 ・WTOは「特別かつ異なる待遇(S&DT)」を通じ、途上国の発展を支援。

 ・柔軟な義務と移行期間により、発展途上国が世界市場に参加しやすくなる。

 ・包摂性のある制度設計が、長期的な世界経済の安定につながる。

 WTOの今後の役割

 ・WTOは多国間協調の象徴として再評価されるべき存在。

 ・米国主導の保護主義に対抗し、自由で公平な貿易ルールの維持が必要。

 ・WTOが信頼と正統性を回復することが、世界経済の安定に不可欠。

【引用・参照・底本】

GT Voice: WTO’s multilateral voice crucial to global trade amid rising risks GT 2025.04.10
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1331878.shtml

中国:「相互関税」の論理を「強盗論理」と批判2025年04月11日 19:05

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【概要】

 中国は、2025年4月11日に開催された世界貿易機関(WTO)商品貿易理事会の年次会合の2日目において、アメリカが「相互関税」というトピックを「その他の事項」として提起し、その論理を強く反駁した。中国中央電視台(CMG)によると、アメリカが提案したこの「相互関税」の論理を「強盗論理」とし、再度反発した。

 前日の会合で、中国は「相互関税」に関する立場を明確に表明した。中国は、アメリカによる一方的な貿易措置のエスカレートを深く遺憾に思い、これが世界経済に大きな不確実性をもたらしていると指摘した。アメリカによる日々の問題や混乱は、企業や全世界のメンバー、特に発展途上国にとって重要な安定した環境を侵食していると述べた。中国は、国家安全保障を過度に拡張し、乱用することに反対の立場を再確認した。

 中国政府の立場として、アメリカによる関税の乱用に対する反対の姿勢を表明し、「中国は古代文明の国であり、礼儀と正義を重んじる国である。中国人民は誠実と信義を重視し、問題を引き起こすことはなく、また脅迫にも屈しない。中国に対する圧力や脅しは正しい方法ではない」と強調した。

 さらに、中国は、貿易の違いが一方的な措置や関税戦争を引き起こす口実となってはならないとし、貿易戦争には勝者がいないと指摘した。中国は、WTOを中心とした多国間貿易システムを重視しており、WTO事務局長のンゴジ・オコンジョ=イウェアラ氏が述べた「WTOは対話の重要なプラットフォームである」という呼びかけを支持し、協力的な枠組みの中で問題を解決することが必要だとした。

【詳細】

 2025年4月11日に開催された世界貿易機関(WTO)の商品貿易理事会の年次会合の2日目において、アメリカが「相互関税(reciprocal tariffs)」というテーマを「その他の事項」として提起したことに対し、中国は強く反発した。この提案に関して中国は、アメリカの貿易戦略を「強盗論理(robber logic)」と批判し、その誤りを指摘した。

 中国の立場と主張

 中国は、前日の会合においてアメリカの「相互関税」に関する立場に対して自らの見解をはっきりと表明した。中国は、アメリカによる一方的な貿易措置のエスカレートが、世界経済に重大な不確実性を引き起こしていることを深く遺憾に思っていると述べた。特に、アメリカが引き起こす日々の摩擦や混乱は、企業や各国、特に発展途上国にとって、安定した貿易環境を損なう要因となると指摘した。

 国家安全保障の乱用に対する批判

 中国は、アメリカの関税措置がしばしば「国家安全保障」を口実にして行われていることに対しても強い不満を示し、国家安全保障の概念を過度に拡張して乱用することに反対する立場を表明した。中国は、貿易問題において国家安全保障を盾にした一方的な行動が国際貿易ルールを損なうことに懸念を示した。

 中国の文化的背景と主張

 さらに、中国は自国の文化的背景を踏まえて、自国の立場を強調した。「中国は古代文明の国であり、礼儀と正義を重んじる国である」とし、また「中国人民は誠実と信義を重視する」と述べ、対話と協力による問題解決を望んでいると強調した。中国は「問題を引き起こすことはなく、また脅迫にも屈しない」とし、アメリカによる圧力や脅しが正当な解決策ではないと訴えた。

 貿易戦争に関する見解

 中国は、貿易戦争には勝者がいないという立場を改めて明確にした。貿易の違いが一方的な措置や関税戦争を引き起こす口実となってはならないとし、その結果として、全世界が利益を得ることはないという事実を指摘した。貿易戦争が引き起こす損失は、最終的には全ての国に影響を及ぼすものであり、相互利益のためには対話と協力が必要だとした。

 多国間貿易システムの支持

 中国は、WTO(世界貿易機関)を中心とした多国間貿易システムの重要性を強調した。中国は、WTOが貿易問題を解決するための最も適切なプラットフォームであるとし、その枠組みの中で問題を解決することを提案した。また、WTO事務局長のンゴジ・オコンジョ=イウェアラ氏が「WTOは対話の重要なプラットフォームである」と呼びかけたことに賛同し、協力的な枠組みの中で貿易問題を解決する必要性を再確認した。

 このように、中国はアメリカの一方的な貿易措置に対して、貿易戦争の無益さを強調し、多国間での対話と協力による解決を訴えている。中国の立場は、国際貿易の安定と秩序を守るために重要であると同時に、WTOを中心にしたルールに基づいた貿易環境を守ろうという強い意思を表明している。

【要点】 

 ・中国の反発: 2025年4月11日、WTO商品貿易理事会の年次会合で、アメリカが「相互関税」を提案したことに対し、中国はこれを「強盗論理」と批判し、反発した。

 ・アメリカの貿易措置への批判: 中国は、アメリカの一方的な貿易措置が世界経済に不確実性をもたらしていることを深く遺憾に思い、特に発展途上国に対する影響を強調。

 ・国家安全保障の乱用: 中国は、アメリカが国家安全保障を口実に関税措置を乱用することに反対し、過度な拡張を批判。

 ・中国の文化的立場: 「中国は古代文明の国であり、礼儀と正義を重んじる国である」とし、誠実と信義を重視。対話と協力による解決を望む立場を強調。

 ・貿易戦争に対する立場: 貿易戦争には勝者がいないことを指摘し、貿易の違いを口実にした一方的措置には反対。

 ・多国間貿易システムの支持: WTOを中心とした多国間貿易システムを重視し、協力的な枠組みの中で問題を解決する必要性を強調。WTO事務局長の発言にも賛同。

【引用・参照・底本】

China refutes robber logic of US 'reciprocal' tariffs at WTO GT 2025.04.11
https://www.globaltimes.cn/page/202504/1331894.shtml