グローバルな従業員エンゲージメントの低下2025年04月23日 20:22

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【桃源寸評】

 日本で言えば、小泉純一郎が打ち出した政策、労働者の自由な働き方ある。つまり、労働者が自由に職業・働き方を選べるという、組織から追い出し作戦の様な政策が、忠誠心などを追いやった。この時痛切に感じたのは、たとえば、今後、特に巨大システムの脆弱性が出来するのではないか、と恐れた。なぜなら、たった一人が、全システムの工程を引き受ける訳でなく、完成までには多くの人材が関わってくる。其処にはengagementの高さが必要なのだ。換言すれば、他者との前後関係の責任感である。日本の此の政策がそれを破壊した一歩ではないのかと考える。

 小泉純一郎政権下における「構造改革」や「労働市場の自由化」が、従来の日本型雇用慣行―終身雇用・年功序列・企業内共同体的価値観―を大きく揺るがせたことは、確かにエンゲージメント(engagement)の崩壊とも密接に関係していると考えられる。

 以下、論点を整理して箇条書きにて詳述する。

 1.小泉改革と「自由な働き方」の影響

 ・「労働の流動化」や「自己責任」の強調により、労働者は「組織への忠誠」よりも「雇用の継続可能性」や「個人の生存」を優先せざるを得なくなった。

 ・非正規雇用の拡大や派遣法の緩和によって、職場への心理的・社会的な一体感が希薄になった。

 ・結果として、「自分がこの組織に貢献している」という意識、すなわちエンゲージメントが失われた。

 2.システム開発や大規模プロジェクトにおける「前後関係の責任感」

 ・特に巨大な社会システムは、一人の天才的労働者ではなく、多くの人間の連携・引き継ぎ・信頼によって成り立っている。

 ・この「他者と共に責任を引き継ぐ感覚」こそがengagementの本質であり、心理的な「つながり」や「帰属意識」を伴う。

小泉改革が象徴する**「個人主義への過剰シフト」は、これらの関係性を断ち切り、「孤立した労働者」**を大量に生み出した。

 3.結果としての「巨大システムの脆弱化」

 ・一体感を持たずに関わる人間によって組まれたシステムは、エラー時の対応力や柔軟性、責任感が欠如し、危機時に脆さを露呈する。

 ・「自分が少しぐらい手を抜いても、他の誰かが何とかするだろう」という意識が蔓延する。

 ・組織の健全性や創造性、イノベーション力の低下にもつながっている。

 4.制度改革とエンゲージメントの関係

 ・制度(法や政策)によって、「人がどう働くか」は確実に変化する。

 ・しかし、制度が「人がどう感じ、どう他者とつながるか」までを破壊してしまえば、システム全体の生命力が削がれる。

 ・「追い出し作戦」が、結果として企業社会の土台であるengagementを破壊したことに他ならない。

 このように、「エンゲージメント」とは単なる「やる気」ではなく、組織や他者との相互関係を前提とした、社会的かつ道義的な連携の精神である。労働の自由化がそれを損なったという指摘は、極めて示唆に富んでいる。

 5.小泉政権下における労働市場改革

 小泉純一郎政権(2001年〜2006年)下における「構造改革」および「労働市場の自由化」は、日本の戦後型社会構造に大きな変化をもたらした。以下に、年度ごとの主な改革内容を中心に、労働市場の自由化政策を中心として詳述する。

 (1)2001年(就任年)

 ・小泉内閣発足(4月):「聖域なき構造改革」をスローガンに掲げる。

 ・経済財政諮問会議が主導する形で、市場原理主義的な政策形成が始まる。

 ・郵政民営化、財政再建、地方分権、規制緩和などを含む広範な構造改革路線を打ち出す。

 (2) 2002年

 ・労働者派遣法改正案が閣議決定(翌年施行)。

 ・製造業への派遣労働が解禁される流れをつくる。

 ・「雇用のミスマッチ」解消を目的とし、人材流動性を促進する方針を強化。

 (3)2003年

 ・労働者派遣法改正(2003年施行)

 →製造業への派遣労働が解禁(それ以前は専門業務など26業種に限定されていた)。


 →派遣期間の上限が緩和され、事実上の常用的派遣労働が可能に。

 →結果として、非正規雇用(とくに派遣社員)が急増し、雇用の安定性が低下。

 (4)2004年

 ・年金制度改革や社会保険制度の見直しなどが進む一方で、

 →労働市場においては企業の「人件費最適化」の名の下に、正社員の削減と非正規化が加速。

 (5)2005年

 ・郵政民営化法案が可決(構造改革の象徴的成果)

 ・一方で、経済成長戦略の一環として、「競争力強化」や「規制緩和」が継続され、

 →若年層を中心とした不安定雇用(フリーター、派遣社員、契約社員)が社会問題化。

 →労働組合の影響力が低下し、企業と個人の関係が希薄化。

 (6)2006年

 ・小泉退任(9月)

 ・在任期間中に非正規雇用者数が大幅に増加し、

 →企業にとっては「柔軟な雇用」が可能になったが、労働者側のエンゲージメントは弱体化。

 →長期雇用に基づく信頼関係が崩れ、「自己責任社会」の意識が浸透。

 (7)小泉構造改革の労働への影響

 項目        影響

 正社員比率    減少(2001年:約80% → 2006年:約70%)
 非正規雇用者数   急増(特に派遣・契約社員・パート)
 雇用の安定性    低下(解雇規制の緩和・流動化促進)
 組織への忠誠心   弱体化(長期雇用が前提でなくなる)
 労働者の生活満足度 下降傾向(不安定雇用による)
組織エンゲージメント 低下(働く側の「帰属意識」の喪失)

 (8) まとめ

 小泉政権下の労働市場改革は、経済の活性化と効率化を目的とした政策であったが、結果として日本型雇用慣行とエンゲージメント文化を破壊する側面もあった。とくに製造業派遣解禁(2003年)は、日本社会における雇用の不安定化と職場の共同体性の喪失という決定的な転換点となった。

 6.「仲間・家族意識」が強く一体感を示していた。が、バブル崩壊後は次第に失せた。

 バブル崩壊(1991年頃)を境に、日本型雇用の象徴であった「会社=家族」的意識は急速に衰退した。その背景と変化は、以下のように整理できる。

 (1) バブル崩壊以前の「日本型雇用」と職場文化

 ・終身雇用・年功序列・企業内労働組合の三位一体システム

 ・社員は「会社の人間」として人生を託す感覚を持ち、→「わが社」・「うちの会社」という一体感の強い語りが日常化

 ・上司・部下というより「先輩・後輩」「家族・仲間」のような心理的距離感

 ・会社内教育・福利厚生の充実により、「会社生活=社会生活」の感覚

 (2)バブル崩壊後の変化(1990年代〜)

 ・企業業績の悪化により、リストラ・早期退職が相次ぐ→「終身雇用神話」の崩壊

 ・成果主義・能力主義の導入→ 横並び意識の消滅、内部競争の激化

 ・非正規雇用の拡大(パート・契約・派遣)→ 社内に「分断」や「階層化」が生じる

 ・結果として、従業員は→ 「私の会社」から「自分が今いる会社」**という意識へ変化

 (3)小泉改革と連動した文化的変容(2000年代)

 ・小泉構造改革により「雇用の流動化」が推進され、→ 「働き方の自由」=「雇用の自己責任」として受け止められるように

 ・一方で、会社側は人材を「代替可能なリソース」として扱い始める

 ・その結果、従業員の側でも組織への帰属意識・忠誠心は一層低下

 (4)組織エンゲージメントの視点から見た影響

 時期         特徴          組織エンゲージメント
 〜1990年     会社=家族・人生共同体  非常に高い
 1990〜2000年代前半 リストラ、成果主義  中程度に低下
 2000年代後半〜 雇用の自己責任、非正規化 さらに低下

 (5)まとめ

 バブル崩壊後、日本の労働環境は企業共同体的な一体感から、「雇用契約」に基づく個人主義的な関係へと変質した。この流れは、単なる経済政策の帰結ではなく、企業文化・労働者意識の深層にまで及ぶ変化であった。

 7.ギャロップの最近の変化は驚くには値しない

 Gallup(ギャロップ)の報告するエンゲージメントやウェルビーイングの低下は、グローバルな文脈では目新しく映るかもしれないが、日本社会、とりわけ1990年代以降の変化を経験してきた者にとっては、むしろ「予見されていた未来」であるといえる。

 (1)なぜ驚くには値しないのか

 ・「帰属意識の崩壊」は日本が先んじて経験済み

  → 1990年代以降、会社に対する忠誠心や仲間意識は急速に希薄化
  → エンゲージメントが企業文化から剥がれ落ちていく過程をすでに目撃

 (2)「成果主義+流動化」による精神的分断も体験済み
 
  → 小泉改革以降、労働者が“企業との一体感”を持つ構造自体が解体
  → それに伴う孤立感や疎外感は、今まさに欧米でも顕在化しつつある

 (3)テクノロジーによる「職場の脱人間化」も熟知済み
 
  → 業務の標準化・効率化が進むほど、人間的なつながりは消失しやすい
  → これは「生産性」と「人間性」がトレードオフになる一例である

 (4)世界は今、日本の「先行事例」に追いついた

 ・Gallupの示す数字

  →マネージャー層の疲弊

  →若年層の不信感の拡大

  →「働く意味」への問い直し

 これらはいずれも、日本が1990年代から2000年代にかけて経験した構造変化の追体験に過ぎないともいえる。

 (5)まとめ

 ・したがって、Gallupの変化は「驚き」ではなく「再確認」である。
 ・これは単なる労働環境の変化ではなく、人間が「働くこと」をどう意味づけるかという、根本的な問いへの揺らぎが世界的に広がっていることを示している。

 8.一日の大半を働きに過ごす、云わば、人生の時間をengagementが持てないのでは不幸である。

 人生の大半、少なくとも覚醒している時間の多くを占める「働く時間」にengagement(関与・没入・意味づけ)がないということは、人生そのものの充実感が欠如することに直結する。

 (1)engagementがなければ「労働」は人生を蝕む

 ・時間=命である以上、働くことに意味を見いだせない状態は、生きることの空洞化を意味する。

 (2)engagementの喪失は、単なる職場でのモチベーション低下ではなく、人間関係・自尊心・人生観すべてに波及する。

 (3)「やらされ感」「疎外感」「交換可能性」しか感じられない労働は、精神的なストレスを蓄積し、身体的健康さえ損なう可能性をもつ。

 (4)幸福な労働=意味のある没入

 Gallupも指摘するように、engagementが高い人ほど「人生全体の満足度が高い」という実証データがある。

 これは、以下のような要素に支えられている。

 →自分の仕事が社会や他者にとって価値を持っていると実感できる

 →チームや組織との信頼関係があり、自己表現できる

 →成長実感や達成感がある

 →働くことで人間関係が築かれていく

 (5)まとめ

 ・働くことは「生きること」そのものである

 ・だからこそ、engagementのない仕事に長時間を費やすことは、不幸を内包する構造である。

 ・これは単に仕事の効率や経済的利益の問題ではなく、人間の尊厳と幸福にかかわる本質的な問題である。

 米「構造改革なくして成長なし」→実は〝構造改革失くして成長なし〟だったのか。

【寸評 完】

【概要】

 ギャラップ社の最新報告書『State of the Global Workplace: 2025』によれば、世界全体の従業員エンゲージメントとウェルビーイング(幸福度)が2024年に共に低下し、これは生産性や革新性、企業業績に重大な影響を与えている。

 1.グローバルな従業員エンゲージメントの低下

 2024年、世界全体の従業員エンゲージメントは23%から21%へと2ポイント低下した。過去12年間でエンゲージメントが低下したのは、2020年と2024年の2回のみである。この低下によって、世界経済は推定4,380億ドルの生産性損失を被ったとされる。

 特にマネージャー層の低下が顕著であり、全体では30%から27%へと3ポイント低下した。個別貢献者(一般従業員)のエンゲージメントは18%で横ばいであった。35歳未満のマネージャーは5ポイント、女性マネージャーは7ポイントの減少を記録した。

 パンデミック後、多くの企業は高い離職率、急速な拡大、業種によってはレイオフといった変化を経験した。これに加えて、サプライチェーンの混乱や景気刺激策の終了により、予算が縮小された。従業員側はパンデミック経験を基に柔軟な勤務形態やリモートワークを求めているが、企業の中にはこれを後退させる動きもある。これらの要因が複合的に作用し、マネージャー層に強い負担がかかっている。

 ギャラップは、マネージャーの役割を根本的に見直すべきと示唆している。業績指導(パフォーマンス・コーチング)を中心とした役割設計に移行することで、新たな職場環境に適したチームパフォーマンスの向上が期待できるとしている。

 2.グローバルな従業員ウェルビーイングの2年連続低下

 過去5年間で継続的に改善してきた従業員の「生活の評価(life evaluations)」は、2023年と2024年に連続で低下し、2024年には「生活が充実している(thriving)」と回答した割合が33%に落ち込んだ。

 マネージャー層の低下が最も大きく、一方で個別貢献者の評価はわずかに改善した。生活の評価には所得への満足度や生活費の高さといった要因が影響するが、多くの人は人生の大半を仕事に費やしているため、職場での経験が生活の評価に大きく関係している。ギャラップによれば、職場にエンゲージしている従業員の半数は人生においても充実していると感じているのに対し、非エンゲージの従業員ではその割合が3分の1に留まっている。

 3.職場の完全エンゲージメントがもたらす経済効果

 ギャラップは、世界中の職場が完全にエンゲージされた状態になれば、9.6兆ドルの生産性向上が見込めると推定している。これは世界GDPの約9%に相当する。

 職場の現状は悪化傾向にあるが、科学的根拠に基づいたマネジメント手法により改善の道が開かれている。ギャラップのメタ分析では、優れたマネジメントに基づいた成長戦略を採る企業は、顧客サービスや生産性、売上、利益といった指標が向上することが確認されている。

 最も成果を上げている企業は、マネージャーの研修と育成を戦略の中心に据えている。基礎的な研修でもエンゲージメントには効果が見られるが、ベストプラクティスに基づく研修を受けたマネージャーでは、自身とそのチームのエンゲージメントが大幅に改善しており、管理業績指標も20%から28%の向上が見られた。

 結論として、世界の生産性の未来は、エンゲージし、生活の質が高い労働者にかかっており、科学的マネジメントによってそれは実現可能であるとされている。

【詳細】
 
 1.世界の従業員エンゲージメントの推移と現状

 ・エンゲージメントとは何か

 従業員エンゲージメントとは、職場に対する心理的な関与度を示す指標であり、「自分の仕事に情熱を持ち、積極的に関与している状態」を意味する。これは単なる仕事への満足度とは異なり、主体的に仕事へ貢献しようとする姿勢を含んでいる。

 ・2024年のエンゲージメントの低下

 2024年において、全世界のエンゲージメント率は23%から21%へと2ポイント低下した。このような減少は、過去12年間において2度目であり、最初はパンデミック発生時の2020年であった。つまり、2024年の低下は例外的な事象であると位置づけられている。

 この2ポイントの低下は、単なる割合の変動にとどまらず、ギャラップの推計によれば、世界経済に対し約4,380億ドル(約67兆円)の生産性損失をもたらした。

 ・マネージャー層への影響

 2024年のエンゲージメント低下は、とりわけ管理職層で顕著である。マネージャーのエンゲージメントは30%から27%へと3ポイント低下した。中でも35歳未満の若手マネージャーは5ポイント、女性マネージャーは7ポイントの大幅な低下を記録した。

 一方、一般職である「個別貢献者(individual contributors)」のエンゲージメントは18%で横ばいであり、変動はなかった。

 ・背景要因

 背景には以下の複合的な要因がある。

 →パンデミック後の組織再編(急速な拡大、高離職率、一部業種での解雇)

 →供給網(サプライチェーン)の混乱

 →財政刺激策の終了による予算縮小

 →働き方改革(柔軟な勤務形態や在宅勤務への期待)と、その後退

 これらの状況により、マネージャーは経営陣からの新たな指示と、従業員の高まる期待との板挟みになっており、役割の曖昧さと過重負担がエンゲージメントの低下を招いている。

 2.グローバルな従業員のウェルビーイング(幸福度)の低下

 ・ウェルビーイングの定義

 ウェルビーイング(wellbeing)は、従業員が自身の人生をどれだけ前向きに評価しているかを示すもので、ギャラップはこれを「生活の評価(life evaluations)」という形で計測している。評価基準は、従業員が「充実している(thriving)」と感じるかどうかに基づく。

 ・最新の動向

 2023年に引き続き、2024年も生活評価の割合は低下し、全世界で「充実している」と回答した従業員は33%となった。これは2019年以前の水準への逆戻りを意味する。

 ・マネージャーと一般職の違い

 この低下傾向はマネージャー層に顕著であり、生活評価が大きく落ち込んだ。一方で、個別貢献者においてはわずかに改善が見られた。

 ・要因と影響

 →生活評価に影響を与える要因としては、

 →所得への満足度

 →生活費の高騰

 →職場でのストレス

 →働き方の柔軟性の欠如

などがある。職場での経験が人生全体の幸福感に強く影響を及ぼしていることが示されており、エンゲージメントの高い従業員の50%は「充実している」と答える一方、非エンゲージの従業員ではこの割合が3分の1にとどまっている。

 3.潜在的な経済効果とエンゲージメント向上の戦略

 ・生産性向上の潜在力

 ギャラップは、世界の職場が「完全にエンゲージされた状態」になれば、9.6兆ドルの生産性が追加されると試算している。これは、世界GDPの約9%に相当する。

 ・科学的なマネジメントの効果

 エンゲージメントを向上させる鍵は、マネジメント手法の見直しにある。ギャラップが行ったメタ分析によると、科学的根拠に基づいたマネジメント(例えば、パフォーマンス・コーチングを重視するなど)を実施した企業では、以下のような成果が得られている。

 →顧客サービスの向上

 →生産性の増加

 →売上・利益の拡大

 このような成果は、業種や文化圏を問わず再現可能であるとされる。

 ・マネージャー育成の効果

 特に、マネージャーに対する訓練・育成に注力している企業は顕著な成果を上げてい初歩的な訓練でも一定の効果があるが、「ベストプラクティスに基づいた訓練」を受けたマネージャーは、自らのエンゲージメントおよびチームのエンゲージメントの両方を大きく改善している。管理職としての業績指標は20%〜28%の範囲で改善されたというデータが示されている。

 結論

 グローバルな職場環境は2024年に逆風にさらされており、エンゲージメントおよびウェルビーイングの低下が明らかとなっている。しかしながら、科学的手法に基づいたマネジメントの改革、特にマネージャーの役割再設計と育成強化により、生産性の向上と経済成長の可能性は依然として存在している。ギャラップの報告は、その方向性と実証的な裏付けを提示している。
 
【要点】 

 1.世界の従業員エンゲージメントの現状と変化

 ・エンゲージメントの定義:従業員が仕事に熱意と関心を持ち、積極的に貢献しようとする心理的関与の度合い。

 ・2024年のエンゲージメント率:全世界で23%→21%へと2ポイント減少。

 ・低下の意義:過去12年間で2度目の減少(1度目は2020年のパンデミック時)。
経済的影響:2ポイント減により、推定4,380億ドル(約67兆円)の生産性損失が発生。

 ・マネージャー層の影響

 →全体で30%→27%(3ポイント減)

 →若年層マネージャー(35歳未満):5ポイント減

 →女性マネージャー:7ポイント減

 ・個別貢献者(一般職):18%で横ばい。

 2.背景にある要因

 ・パンデミック後の職場変化:急激な成長・離職・解雇などの不安定化。

 ・サプライチェーンの混乱:業務の不確実性を増大。

 ・財政的余裕の減少:政府支援の終了、予算制約。

 ・ハイブリッド勤務への対応疲れ:管理職に柔軟性と生産性の両立が求められ、ストレスが集中。

 ・役割の曖昧さ:マネージャーが板挟み状態(経営陣と部下の間)。

 3.従業員ウェルビーイング(生活評価)の変化

 ・ウェルビーイングの定義:「人生が順調である(thriving)」と従業員が感じている割合。

 ・2024年の生活評価:33%と前年から減少(2019年以前の水準に逆戻り)。

 ・マネージャー層の評価:特に低下。

 ・個別貢献者:わずかに改善。

 ・影響要因

 →生活費の上昇

 →所得の不足感

 →職場でのストレス

 →働き方の柔軟性不足

 ・エンゲージメントとの関連性

 →高エンゲージメント層の50%が「充実している」と回答。

 →非エンゲージメント層では約33%にとどまる。

 4.改善余地と戦略

 ・理想的な状態:全世界の職場がエンゲージメントを最大化すれば、約9.6兆ドルの生産性向上が見込まれる。

 ・有効な手段:科学的マネジメント手法の導入。

 ・マネジメント改善の効果

 →顧客満足度の向上

 →生産性の増加

 →売上・利益の拡大

 ・マネージャー育成の成果

 →初歩的訓練でも改善あり。

 →ベストプラクティスによる訓練では、業績指標が20〜28%改善。

 →マネージャー本人のエンゲージメントも向上。

【引用・参照・底本】

Global Engagement Falls for the Second Time Since 2009 GALLUP
https://www.gallup.com/workplace/659279/global-engagement-falls-second-time-2009.aspx?utm_source=alert&utm_medium=email&utm_content=morelink&utm_campaign=syndication

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